1年生 校外学習 - 広島なぎさ中学校・高等学校

~五感を最大限に呼び起こすなぎさの自然体験学習とは~
自然体験は、鶴学園の教育、本校の教育を語るときの重要なキーワードです。本校の教育目標「創
造力の錬磨」を具現化していくオリジナル授業の「森」などは、まさにそれを象徴した授業です。
さて、中学校 1 年生が秋休みに行う校外学習は鶴学園が所有する八千代キャンパスで展開され
ます。このキャンパスで、火や水はもちろんのこと、樹木や岩石、泥や土や星など と次々に出会い
を重ね、かつ適度な不自由さの中で過ごします。そして、教員のちょっとした働きかけによって五
感が開かれ、気付き、工夫する姿勢が育まれていきます。
そんな校外学習の一端を紹介します。
※八千代キャンパス
学園創立者鶴襄の言葉「不自由からの発想」を根底に置き、五感を呼び起こす本物の体験の場と
して、八千代町の山林一帯を関係教職員が知恵を出し合いながら手作りで作り上げてきた施設。
今年で設立 20 周年を迎えました。
【森の物語】
森には様々な色があり、鳥や虫の鳴
き声が聞こえてきます。それだけではありません。
生き物が残した痕跡など音の出ないサインがいく
つも転がっています。土のにおいや獣のにおい、馬
蹄形ではない2本のひづめの跡や樹皮にできたか
じりあと等々、挙げるときりがありません。これら
の小さなサインから生徒たちの五感を最大限に駆
使して、イマジネーションを掻き立てながら真相を
探っていく活動が「森の物語」です。
この活動は、午前中の屋外編に続いて午後から
の屋内編が設定されています。探り出した森の
姿、その時の印象などを模造紙で1枚にまとめま
す。自分たちは森から発せられたメッセージをど
のように受け取り、どのように理解したのかをグ
ループ内で深め合い、まとめ、プレゼンしてその
時の発見や感動をクラス全員で共有していきま
す。
【森の村づくり】この活動は、イメージしたことが形になっていくところに魅力があります。今年
は以下の4つのプログラムがあり、生徒は2つを選択して体験します
なぎさガーデン・・・制作の過程では物事をコンパク
トにまとめる技術、繊細さが要求されます。また、
“材
料は自然の中から少しずつ借り集めること”、“元の
場所を復元できること”、“生き物の生命を脅かさな
いこと”など環境にも気を配ります。この活動で、
「水
を石で表現することができた。」「今までよく見てい
なかったところをしっかりと見ることができた。」な
ど生徒は五感を研ぎ澄すことで作品を仕上げます。
たたき染め・・・初心者にもできる草木染めとして多
くのたたき染め愛好者がいると言われています。八
千代校舎では藍の生葉を使い、緑からジャパンブル
ー(藍色)への色の変化を楽しむことができます。そ
して、本物の藍色をみることで、他の植物でも試して
みようとするわくわく感につながり、生徒は色や形
への関心を一気に高めます。
「わーっ、葉脈がくっき
り!」
「色が変わっていく。」などの声がそのことを物
語っています。
レンコン畑・・・ハスの地下茎であるレンコンは、泥
の中で茎や根の中にすき間(穴)を作って空気を保っ
て育ちます。なぜ、そのような穴が開いているのか授
業で学び知識としては理解していますが、それをあえ
て身動きの取れない泥の中を体験することで、より鮮
明な知識として体に刻み込まれます。泥の色やにお
い、歩く時の音、埋もれたレンコンに触れた時の感触、
どれも五感を呼び起こす貴重な体験となっています。
メモリアルメンテナンス・・・先輩たちが手掛けたト
ーテムポールも紫外線や風雨の影響で色あせていま
した。今年度はこれらのメモリアルポールをよみが
えらせるべく、メンテナンスにチャレンジしました。
当時の先輩たちの想いをくみながら、筆を走らせま
す。塗料が木にしみ込んでいく感触や鮮やかな色合
い、復元されていく実感など楽しみながら作業は進
んでいきました。足場やヘルメット、命綱を装着して
の高所作業も生徒にとっては普段味わうことのでき
ない体験です。
【森の晩餐会】夕食は火起こしから始まります。もち
ろん味付けや臭みを取るのにも先人から受け継がれ
た自然の素材が使われます。幸いこの森にはホオノキ
やサルトリイバラが自生しており、朴葉焼きや芝もち
の食材として使用します。燃料の薪も当然のことなが
ら自然のものを使います。着火時は細く割った肥え松
を使い、火持ちを良くしたいときは太めの樫材を使う
など理にかなった使い分けを身につけます。普段は見
ることのない丸鶏を使い、本物の鳥肌を肌で感じなが
ら下ごしらえをして、ダッチオーブンでじっくり焼き
上げた丸ごとローストチキンは格別です。
また、ヤマメのぬめりを取って、踊り串を指すとい
う手の感触も多くの生徒にとっては初めての体験で
す。盛り付けで下に敷くヒノキの「かいしき」からは、
植物の抗菌効果や季節感を大切にする日本人の美学
を学びます。このように屋外では体験を通じて「習う
より慣れろ」の精神で進めていきます。教科書にはな
いこれらの学びはいつか必ず役立つときが来ます。
【銀河鉄道の夜朗読会】夜は、クラス全員が建物の屋
上に寝そべって、満天の夜空を見上げながら朗読会を
行います。孤独な少年ジョバンニが友人のカンパネル
ラと銀河鉄道で旅をするという宮沢賢治の作品です。
秋の夜は少し肌寒いのですが、真上に見える白鳥座が
最高の演出をしてくれます。声の出演は、クラス内の
有志です。放課後や昼休憩に練習して臨むので、どの
クラスも最高の作品に仕上がりました。
【森の朝食会】翌朝は、ピザ生地をこねるのと同時に
石窯に火を入れます。発酵を待つ間には窯内で熾火を
つくったり、野菜を切ったり、寝具を干したりと各工
程をみんなで分担して進めていきます。このように全
員が朝から体を動かすので、お腹はペコペコです。
熱々のピザを味わうのはほんのひとときですが、そこ
に至るまで時間や手間暇を何倍もかけています。これ
が朝食の味を最高のものにしてくれる要因の一つと
なっています。
【生徒の「振り返り」を紹介します】
1.五感を開いて自然の中での暮らしを作る体験から感じたこと
*普段の生活で考えれば何気ないことでも、自然の中
にいることでとても豊かに感じることができました。
「嗅覚」について調べた時、普段は何気なく「におう」
という行動をとっていましたが、班の一人が「体全体
でにおう」ことを提案すると、普段は「におう」こと
のないたくさんのものを感じることができて、豊かな
気持ちになりました。自然は「何気ない」ことを「深
く考えられ、豊かにできる」ところだと思いました。
(森の物語:1組
田中登偉)
*いつもとは少し違う自然の多いところで、危険なところもありました。しかし、自然の中には、
風や葉の音、鳥や動物の声、生き生きとした緑色、木のザラザラとした触感、自然の中で食べるこ
とでいつもと少し違う気がした味、葉の青くさいにおいなど、五感で感じられるものは活動によ
って様々ありました。感性が磨かれた気がしました。
(森の物語:3組
竹村碧海)
*家族とたまに山に入り自然の中で過ごすことがあります。その時には五感を使うということを
していませんでしたが、今回は五感を使って山に入ることができてよかったです。五感を使う時
と使わない時では森の動きや音などが違うということが、五感を使ってみて分かりました。また
山に登る機会があれば、積極的に五感を使うことをしてみたいと思いました。
(森の物語:4組
石原颯太)
*八千代校舎の山の中で目を閉じると、今まで感じられなかった自然の味を感じることができ ま
した。朝起きたとき、眠気が残り少しスッキリしていませんでした。しかし外の空気を吸うと、
スッキリして今日も一日がんばろうという気持ちになりました。自然の力はすばらしいなと思い
ました。
(森の朝食会:6組
樋口聖流)
2.仲間と一緒に過ごして感じたこと
*校外学習に一人で行って一人で帰ってきても全然楽しくないと思います。みんなで 行ってみ
んなで帰ってきたからとても楽しかったのだと思います。だから、今回の校外学習で仲間がい
ることの幸せや仲間の大切さなどを学ぶことができたと思います。
(森の村つくり:1組
余越暖)
*協力することが大切なのだと思いました。たとえば、布団をたたむのもシーツを敷くのも二人
でする方が早くきれいにできるし、森の晩餐会で料理を作るときも、みんなで分担して作ったか
ら、おいしく食べることができました。校外学習を通して、協力することの大切さをあらためて
感じることができました。困っていたら誰かが一緒にやるよと声をかけてくれたり、手伝おうか
と言ってくれたりして、とてもうれしかったです。
(森の晩餐会:1組
前田聖)
*まず、グループでの活動のことです。自然の中で一緒に材料を集めて発表をした時、自分では
思いつかないようなまとめ方や工夫を新しく知ったり、二日間楽しく活動することができたりし
たのは、班の仲間がいたからだと改めて思いました。二つ目は、規律・責任・協力の大切さです。
たとえ一人でも規律を守れなかったり責任を果たせなかったりすると、班の中で協力できず、ク
ラスのみんなにも迷惑をかけてしまいます。チームワークがなければ、物事が進みません。校外
学習で学んだこれらのことは、集団で行動する時にとても大切なことであり、そのことを忘れず
にこれからも学校生活を送っていきたいと思いました。
(森の物語:2組
木村春香)
*二日間仲間と過ごして改めて感じたことが二つあります。一つ目は、協力することの大切さです。
なぜなら、班の仲間たちと協力することで、一人ではたくさん時間がかかってしまう作業を短時間
で終わらせることができたからです。二つ目は、自分から行動することの大切さです。このことは、
校外学習へ行く前から先生たちが何度もおっしゃっていました。自分から行動することで、仲間と
もたくさん協力でき、もっと仲良くなれると思いました。
(森の晩餐会:3組
鷹取心音)
*私が一番仲間というものを意識したのは、森の晩
餐会の準備のときです。私は炊き込みご飯の担当だ
ったのですが、炊飯釜の調子が悪くうまく炊くこと
ができませんでした。このとき仲間が、準備が遅く
なったのを見ておにぎりにするのを手伝ってくれた
り、カチカチのご飯を「おいしい」と言って残さず食
べてくれたりしたことがとてもうれしかったです。
(森の晩餐会:5組
本賀愛海)
*「協力することで幸せが生まれる」、そう思いました。夕食のときは、みんなで作ったご飯が「お
いしい」、これが幸せ。他にも、レンコン畑で足がはまったとき助けてあげると、「ありがとう」、
これも幸せ。こんなちっぽけな幸せはいろんなところにちょっとずつ存在していることに気づき
ました。友達は幸せをくれるもの、そして幸せを返すもの、これからも友達を大事にします。い
つか報われるようなことがおきる気がするのです。
(森の村つくり:6組
味園正暁)
3.この一泊二日を通して成長したと思うこと
*一人ではできないことも、同じ班、同じクラス、同じチームのメンバーと協力 すれば成し遂げ
ることができると分かりました。また、虫が大嫌いな私がレンコン畑に自ら入ったり、森の中を
サクサク歩いたりするなんて八千代に着くまで思ってもみなかったので、少し成長したなと思い
ました。
(森の村つくり:2組
相賀優希)
*この二日間、自分たちで料理を作るなど、自分たちが動かないと進まないことが多く、改めて
いろいろな人、物、食べ物に感謝していこうと思 いました。また、次のスケジュールで必要な物
を考えて、準備しておくこともとてもよかったと思います。様々な面で成長できたと思います。
(森の晩餐会:4組
大橋一輝)
*今自分に何ができるか、今自分は何をしなければい
けないかと、仲間のことを考えて行動することができ
るようになったと思います。「みんながこうしている
から、じゃあ自分はこうしよう。」と思えるようにな
ったことで、その先のことも考えられるようにな りま
した。
(銀河鉄道の夜:5組
津間諒介)