電化製品の普及と家庭の電力消費量の変化との関係分析 ―芝浦工大生

電化製品の普及と家庭の電力消費量の変化との関係分析
―芝浦工大生の家庭を事例として―
R07088 山野 篤史
指導教員 中口 毅博
1.研究の背景・目的
現在、地球温暖化が深刻になっている。その原因とな
っているのが温室効果ガスといわれている。中でも二酸
化炭素排出量は高い伸びを示している。産業部門におい
て排出量が減少している一方、家庭部門での排出量は
2009 年において京都議定書の基準年である 1990 年と比
べて 26.9%増加している。その要因として世帯数の増加、
電化製品の普及率の増加・大型化、生活サイクルの多様
化などがいわれているが電化製品の普及と家庭の電力消
費量の変化との関係はほとんど明らかにされていない。
そこで本研究は芝浦工大生の家庭を事例として 2002
年度から 2010 年度までの電化製品の普及と家庭の電力
消費量の変化との関係を分析することを目的とする。
2.研究の方法
初めに本研究の流れを図 1 のように示す。
表 1 エコロジー応用受講者数
の割合は 10%以下と
世帯人数(人)
回答
低くなっている。各
年度
1 2 3
4
5 6 7 8 者数
(人)
02年度 47% 4% 8% 26% 11% 4% 1%
86 年度の回答者数をみ
03年度 35% 3% 18% 34% 10%
71 ると最も少ないのが
04年度 34% 4% 9% 38% 13% 1% 1%
82
05年度 39% 3% 13% 26% 12% 6%
89 10 年度の 62 人、最
06年度 31% 4% 18% 26% 11% 8% 2%
103
07年度 32% 2% 13% 34% 10% 5% 3%
93 も多いのが 06 年度
08年度 23% 3% 18% 29% 17% 8%
2% 65 の103人と40人程度
09年度 40% 2% 7% 21% 21% 7% 2%
87
10年度 47% 3% 5% 31% 5% 6% 3%
62 差があるが、世帯人
数の特徴は全ての年度において比較的に同じといえる。
4.電化製品の保有台数の変化
1 世帯あたりの電化製品の合計保有台数と製品別の保
有台数の平均を年度別にまとめたものが図 2 である。
と世帯人数の割合
図 2 1世帯あたりの電化製品合計保有台数と製品別
保有台数の平均の変化
図 1 研究のフローチャート
本研究で扱うデータは2002年度から2010年度本校シス
テム理工学部生対象の「エコロジー応用」を受講した
学生の家庭の電化製品のデータを使用する。
まず電化製品種類別に消費電力、保有台数、使用日数
の変化を分析する。続いて主成分分析を用いて電化製品
の使用パターンの分析をする。最後に使用パターンの類
型化と特徴の分析を行い 9 年間の電力消費量の変化の分
析をする。
3.調査対象者の特徴
各年度の回答者の世帯人数を割合でみると 20%ほど差
があるが、どの年度においても 1 人世帯と 4 人世帯の学
生の割合が高い。また 2 人世帯と 6 人世帯以上の学生
08 年度において電化製品の合計保有台数が大きいの
は 1 人世帯が少ないためであり、保有台数が増加してい
るとはいえない。電化製品別にみるとパソコンは 1.1 台
から 1.9 台、DVD プレーヤ 0.1 台から 0.4 台に増加して
おり、ビデオデッキ 1.6 台から 0.1 台、ラジカセ 1.7 台
から 0.6 台に減少していることが分かる。このことから
合計保有台数は増加していないが保有している電化製品
の種類が変化していることが分かる。
5.電化製品の使用パターンの分析
次に電化製品の使用パターンを分析するために 47 種
類の電化製品ごとの使用日数を変数とする主成分分析を
行う。サンプル数は各年度の回答者数を合計した 737 で
ある。
表 2 は,電化製品の主成分負荷量を示したものであり、
寄与率は第1 主成分が 9.42%、
第 2 主成分が 6.45%である。
型、Ⅲ型、Ⅳ型の 4 つの類型に分ける。
表 2 電化製品の主成分負荷量
第1主成分
電化製品名
電話
炊飯器
掃除機
洗濯機
扇風機
パソコン
プリンタ
ウオッシュレット
ガス風呂給湯器
ファンヒータ
DVDプレーヤー
食器乾燥機
DVDレコーダー
アダプタ
ディスプレイ
オーブン
ホットプレート
チューナーアンプ
ドライヤー
換気扇
テレビ
ルータハブ
乾燥機
CSチューナ
アイロン
冷蔵庫
携帯電話充電器
空気清浄機
ビデオデッキ
ストーブ
ルータ
コーヒーメーカー
スピーカー
ゲーム機
FTTHモデム
ラジカセ
蛍光灯
ガス警報器
電気カーペット
電磁調理器
電気ケトル
電気ポット
シャワー
白熱球
給湯器
エアコン
こたつ
第 1 主成分は
Ⅰ型は通年で個人的に使用される電化製品、Ⅱ型は季
電話、炊飯器、
節性があり個人的に使用される電化製品、Ⅲ型は季節性
掃除機のように
があり共用で使用される電化製品、Ⅳ型は通年で共用に
通年して使用さ
使用される電化製品に分ける(表 3)。
第2主成分
主成分
負荷量
0.655
0.582
0.545
0.512
0.505
0.488
0.471
0.451
0.446
0.434
0.430
0.430
0.428
0.401
0.377
0.368
0.330
0.310
0.310
0.293
0.252
0.246
0.221
0.197
0.172
0.169
0.164
0.136
0.135
0.131
0.099
0.076
0.065
0.052
0.050
0.044
0.043
0.030
0.021
-0.001
-0.007
-0.019
-0.019
-0.031
-0.078
-0.097
-0.133
電化製品名
携帯電話充電器
ドライヤー
DVDプレーヤー
パソコン
チューナーアンプ
DVDレコーダー
電気ケトル
ゲーム機
CSチューナ
スピーカー
ルータ
換気扇
ルータハブ
電話
コーヒーメーカー
扇風機
掃除機
ストーブ
アダプタ
電磁調理器
ガス警報器
ホットプレート
プリンタ
炊飯器
FTTHモデム
空気清浄機
ディスプレイ
食器乾燥機
ガス風呂給湯器
冷蔵庫
アイロン
こたつ
乾燥機
シャワー
ウオッシュレット
ファンヒータ
電気カーペット
給湯器
電気ポット
テレビ
エアコン
オーブン
洗濯機
ラジカセ
蛍光灯
ビデオデッキ
白熱球
主成分
負荷量
0.513
0.460
0.288
0.245
0.233
0.172
0.144
0.125
0.106
0.105
0.092
0.091
0.083
0.079
0.077
0.076
0.067
0.057
0.054
0.045
0.033
0.027
0.024
0.022
0.017
0.010
-0.004
-0.136
-0.140
-0.142
-0.143
-0.145
-0.160
-0.173
-0.253
-0.254
-0.304
-0.311
-0.341
-0.374
-0.402
-0.415
-0.435
-0.449
-0.464
-0.488
-0.553
れるものとこた
回答者の特徴としてはⅠ型が 8 人から 98 人、Ⅱ型が
つ、エアコンの
48 人から 83 人に増えていることが分かる。一方、Ⅲ型
ように季節の変
が 127 人から 4 人、Ⅳ型が 55 人から 29 人に減っている
化によって使用
ことが分かる。
されるものとを
6.2 電力消費量の変化
分ける軸として
最後に類型別年度別に分け02年度-04年度、
05年度-07
解釈することが
年度、08 年度-10 年度の回答者数と年度別電力消費量を
出来る。第 2 主
示したものが表 3、表 4 である。
成分は携帯電話
表 3 年度別回答者数
充電器、パソコ
ン、のように個
人的に使用する
ものと白熱球、
ビデオデッキの
類型
第1主 第2主 02年度- 05年度- 08年度成分 成分 04年度 07年度 10年度
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
+
-
-
+
ように共用して
とを分ける軸と
類型
して解釈するこ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
年度別
平均(kw)
6.使用パターンによる類型化と特徴
6.1 使用パターンの類型化と特徴
8
48
127
55
38
92
69
86
98
83
4
29
表 4 年度別平均電力消費量
使用されるもの
とが出来る。
+
+
-
-
02年度- 05年度- 08年度- 類型別
04年度 07年度 10年度 平均(kw)
3,957
1,963
5,090
7,311
4,527
2,990
6,212
7,141
5,681
2,682
3,933
9,195
4,935
5,228
4,961
5,281
2,655
5,454
7,546
年度別に見る
と年間の電力消
費量の変化はあ
まり見られない。
しかし、類型別
みると電力消費
量 は Ⅰ 型は
3,957kw か ら
5,681kw、
Ⅳ型は
7,311kw か ら
9,195kw に増え
ている。このこ
とから通年型の
続いて電化製品の使用パターンの変化の特徴の分析を
世帯の電力消費量が増えていることが分かる。一方、Ⅲ
行う。まず 737 サンプルの第 1 主成分と第 2 主成分のス
型の電力消費量は 5,090kw から 3,933kw に減っている。
コアを求め年度別の平均値を算出し 2 つの成分で示され
7.まとめ
る空間上にプロットしたものが図 3 である。
電化製品の普及による保有台数の変化、年度による電
力消費量の変化はあまりないことが分かった。しかし電
化製品の使用パターンに変化があることが分かり、電化
製品の保有している種類が変化しており、通年で個人的
に使用される電化製品の電力消費量が増えたことが分か
った。
参考文献
1) 環境省 2009 年度の温室効果ガス排出速報値
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=
16703&hou_id=13313
2) 中村昌広、乙間末廣(2004)
「家計消費に由来する
二酸化炭素排出量‐世帯属性による差に着目して
図 3 主成分得点の散布図
さらに類型化を行うために表 4 のように第 1 主成分、
第 2 主成分のプラス、マイナスの変化によってⅠ型、Ⅱ
‐」環境学会誌 17(5)
、389-401
3) 大野髙裕(1988)
「多変量解析入門-自由自在に使い
こなすコツ-」同友館