糖尿病領域でのプレゼンス向上に挑む

ステージ別 事 業戦 略
育薬ステージ
Close Up
This is Ne
糖 尿病 領 域でのプレゼンス向上に挑む
初の日本オリジンの DPP-4 阻害剤である「テネリア」の発売を契機に、田辺三菱製薬は
国内で糖尿病領域に参入しました。第一三共との共同販売に取り組み、1 年が経過。
投薬期間制限が解除されるなど、本格的な成長に向け動き始めています。
期待の新薬である SGLT2 阻害剤「カナグル」の発売も見込まれる中、
当社は糖尿病領域でのプレゼンス向上に挑んでいきます。
DPP-4 阻害剤「テネリア」の発売を機に、
本格的な成長フェーズへと移行
糖尿病領域に参入
競争環境が厳しい中、2013年度のテネリアの売上高は8億円
2012年9月に、当社は2型糖尿病治療剤「テネリア」を国内で
と、本格的な拡大には至っていません。しかしながら、発売か
発売し、糖尿病領域に参入しました。国内において糖尿病の
ら 1 年が経過し、2013 年 9 月には投薬期間制限が解除されま
患者数は、予備軍を合わせると 2,000 万人を超えるといわれ
した。さらに、同年 12 月には追加併用療法に関する効能一部
ています。テネリアは当社が創製し、開発まで行った初の日
変更承認を取得しています。全ての経口糖尿病薬およびイン
本オリジンの DPP-4 阻害剤であり、1 日 1 回の投与で 24 時間
スリン製剤との併用が可能となり、国内で販売されている
にわたり血糖降下作用が持続するという特長があります。競
DPP-4 阻害剤の中でも使いやすい薬剤へと進化を遂げまし
合する治療薬が多数ある中で、この薬剤が
た。既存薬からの切り替えシェアでは No.1 を獲得し、新規
もつ価値を、確かな情報とともに一人でも多
シェアも先行する DPP-4 阻害剤を追い上げるなど、本格的な
くの患者さんに届けるため、当社は第一三
成長フェーズへと移行しており、2014 年度の売上高は 67 億
共との共同販売契約を締結し、国内最大級
円を見込んでいます。
の MR 数で情報提供活動を行っています。
2 型糖尿病治療剤「テネリア」
当社が創製し、開発まで行った
初の日本オリジンの DPP-4 阻害剤
DPP-4 阻害剤
近年各社から新製品が発売され、現在糖尿病治療のベース薬として使われている薬剤です。DPP-4 とは、インスリンの分泌を
強める作用がある消化管ホルモンを分解する酵素です。DPP-4 阻害剤は、この酵素の働きを抑制することにより、血糖値を下
げる効果があるインスリンの働きを強め、血糖降下作用を発揮します。
SGLT2 阻害剤
次世代の経口糖尿病治療薬として期待される薬剤です。SGLT2 とは、腎臓において原尿に含まれるブドウ糖を血液に取り込む
働きをするタンパク質の一種です。SGLT2 阻害剤はその働きを阻害することによって、尿中のブドウ糖排泄を促進し、高血糖
の状態を改善します。インスリンを介さないという、これまでにない新しいメカニズムを有し、強い血糖低下作用に加え、低血
糖リスクが低いなどの特長があります。
54
田辺三菱製薬コーポレートレポート 2014
w Value
期待の新薬 SGLT2 阻害剤「カナグル」
カナグルは、数多くの競合品が同時期に発売されるという
(カナグリフロジン)
厳しい競争環境の中でのスタートとなります。しかし、テネリ
ア同様、第一三共との提携のもと、十分な適正使用情報の提
テネリアに加えて、糖尿病領域での飛躍を支える新薬として
供を行い、大型製品化に取り組んでいきます。
早期の上市をめざしているのが、2014 年 7 月に承認を取得し
た SGLT2 阻害剤「カナグル」
(開発コード:TA-7284)です。
糖尿病領域でのプレゼンスを向上
SGLT2 阻害剤は、DPP-4 阻害剤と同じく今後の糖尿病治療の
薬物治療にパラダイムシフトをもたらす可能性がある薬剤で
カナグルの発売により、当社は、将来の経口糖尿病治療薬の
あり、糖尿病専門医をはじめ、多くの医療関係者や患者さん
主軸になるといわれているDPP-4 阻害剤とSGLT2 阻害剤の両
から期待を寄せられています。カナグルは当社が生み出した
方を自社オリジンで有することになります。この 2 剤を自社で
「過剰な血糖を、直接体の外に排泄する」というコンセプトに
有しているのは、国内外合わせても、当社を含めて 2 社のみ
基づいて創製されたSGLT2阻害剤です。その研究業績が認め
です。この優位性を活かしながら、作用機序の異なる 2 剤の
られ、2014 年 3 月に日本薬学会創薬科学賞を受賞しました。
「育薬」に注力し、糖尿病患者さんに貢献していきます。将来
カナグリフロジンは、海外ではヤンセンファーマシューティ
的には、テネリアとカナグルの配合剤の開発も視野に入れ、2
カルズ(米国)に導出しています。2013年3月に米国で初めて
剤の価値を最大化することで、糖尿病領域でのプレゼンス向
承認を取得した SGLT2 阻害剤であり、製品名「インヴォカナ」
上、さらには「糖尿病の田辺三菱製薬」というブランドの確立
として発売されました。国内では、2014 年度上期中に発売を
をめざしていきます。
見込んでいますが、米国において既に販売実績があることは、
発売後の情報提供活動において大きな強みとなります。
糖尿病領域の成長戦略
カナグルの上市
テネリアとカナグルの
合剤開発
継続的なエビデンス構築によって
糖尿病領域に貢献
’13
’14
テネリア・カナグルの
売上最大化
テネリアとカナグルの 2 剤が糖尿病治療薬のベース薬として浸透し、
「糖尿病の田辺三菱製薬」というブランドを確立
’15
’16
’17
’18
’19
’20
(年度)
田辺三菱製薬コーポレートレポート 2014
55