新たな挑戦で 活路を見出す

新たな挑戦で活路を見出す
地域経済・産業の
特徴と課題
狙うべき分野は
どこに⋮
済 圏 と 呼 ば れ る 小 県 な が ら、
分野展開が急務となりますが、
知れない環境変化にさらされ
材料・部品価格の上昇など数
の増加、受注単価の低下、原
需不振や構造的な競合輸入品
け消費ニーズの変化による内
構造変化と需要不振、とりわ
の状況をみますと、世界的な
増えています。しかし、最近
かし事業展開を試みる企業が
分野で多様な保有技術を活
と傾斜を強めるなど、様々な
産業でも近年医療機器開発へ
などの非衣料分野へ、眼鏡枠
スタイルやハイテク産業資材
中堅企業を中心に高機能テキ
産業システムや生産体系の変
中小企業にとっては、従来の
立 た さ れ て い ま す。 つ ま り、
ど、今世界は大きな転換点に
術や循環型社会への注目な
中から国際分散化へ、環境技
ネルギーへの転換、生産の集
石エネルギーから再生可能エ
産業だけではありません。化
う。このような動きは自動車
一つの機会につながるでしょ
って、自動車産業へ参入する
な技術や商品を持つ企業にと
ますが、こうした動きは新た
業もその対応が求められてい
える中、既存の自動車関連企
の際、品質だけではなくサー
狙うことも必要でしょう。そ
ている新興国など海外市場を
いくには、建設需要が高まっ
要が減少する中で生き残って
ですし、今後、さらに国内需
業の技術や品質は非常に高い
設業も同様です。日本の建設
に向け動き出すべきです。建
業、産業としての農業の確立
要です。ビジネスとしての農
地域の農業分野でも変革が必
はできないでしょうか。また、
針を地域全体で取り組むこと
略的な支援を行うといった方
発を集中的に進める或いは戦
これを活かして環境技術の開
は、今以上にグローバル化の
に依存度が高いこれらの企業
加が具体化すれば、地域経済
現在交渉中のTPPなどの参
も、 大 変 革 が 求 め ら れ ま す。
える卸・小売・サービス業等
なものへ挑戦する気概を醸成
ャレンジ精神を醸成し、新た
には、企業のトップ自らがチ
こうした企業行動を実践する
成 長 ベ ク ト ル で す。 し か し、
が、下図で示したアンゾフの
れを分りやすく説明したの
どこにあるのでしょうか。こ
外部環境への適合力をつける
今後、地域企業に求められ
る姿は、時代変化に合わせて
ていくのです。
自社への熱い信頼へと繋がっ
ステークホルダーにとっては
の集団として機能し、これら
通そのものを見直し、品質や
いえます。例えば、自社の流
ローバル化﹂を実践すべきと
グローバル化する﹁内なるグ
う。つまり、国内に居ながら
第 のポイントは、自社独
自の企業文化を創出するこ
入することが必要でしょう。
れた﹁総力経営﹂を今一度導
は、かつての日本企業でみら
関係性構築であり、具体的に
第 のポイントが、トップ
と従業員の立場を乗り越えた
望を実現する原動力につなが
性を生みだし、自社の夢、希
ンスが新たなビジネスモデル
再構築された自社の経営スタ
が重要と考えます。その結果、
普遍的法則を見つけ出すこと
業態、規模を超越した企業の
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本 州 中 部、 日 本 の〝 へ そ 〟 こ う し た 中、 地 域 企 業 に と
に位置する福井県は、 % 経
っては新たな需要を求めての新
て、内需型企業を中心に厳し
化、流通の高度化等の多様な
ビ ス や 機 動 力︵ デ リ バ リ ー︶
影響を受けることが予想され
することが求められます。言
コスト面で競争力の高い海外
と。かつての日本企業は、こ
っていくものと考えます。特
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狙うべき分野はいったいどこに
あるのでしょうか。それは、ま
い経営環境を強いられる例も
変化が新分野進出の絶好のチ
を売り物にすることも考えな
関 連 施 設 の 一 大 拠 点 で す し、
多く、結果として地域の経済
ャンスとなる様に思えます。
るためです。ですから、こう
葉を換えれば、新分野成功の
こと、それは時代を先取りし
品に目を向けたり、そのため
の企業文化が最大の競争力と
粘り強い気質、旺盛な独立心、
に 、 福 井 県 は 勤 勉 な 県 民 性、
け れ ば な り ま せ ん。 そ の 他、
規模縮小へとつながっている
した企業では先進国と振興国
のポイントは﹁ト
事実も見逃せません。
間での技術・ノウハウの相互
ための第
た市場創造型企業へと変身す
には目まぐるしく変化する国
なっていました。では、企業
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繊維、眼鏡枠、 つの伝統的
工芸品産業など全国屈指の地
さに今進展する構造変化の中に
隠されているように思えます。
場産業が集積する地域として
も知られています。それだけ
例えば、自動車燃料がガソ
に 保 有 す る 技 術 水 準 は 高 く、
リンから電気へと転換期を迎
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内需型産業の代表で地域を支
例えば、繊維産業では大手・
∼新分野展開を探る∼
企業事例
タイヨー電子㈱/㈱ホソダSHC/㈱東協/
㈱米澤物産、日本特殊織物㈱/㈱谷口工務店
“福井発!ビジネスプランコンテスト”
受賞作品に見る 新分野展開へのヒント
新事業への糸口 福井県の取組みを活かす
福井県立図書館が選ぶ、ビジネス書の超定番
具体的に、その可能性を見
ますと、福井県はエネルギー
移動、すなわちリバース・イ
ップ自らの風土改革﹂を実践
ることです。さらに人材育成、
むすびにかえて
ノベーションの動きを逆手に
することではないでしょう
組織体制の整備など内部の革
際情勢の情報収集力を高める
文化とは何か。それは、社員
優れたモノづくりのDNAを
新 性 を 高 め る こ と と、 業 種、
意味から、海外との関係性強
が持っている共通の理念や価
保有する地域だからこそ、革
る手法を検討すべきでしょ
化を図る手立てを早急に検討
値観、社員に一人一人に根付
新的企業が育つ可能性も高い
を産み、さらなる発展の可能
することも重要と考えます。
いた暗黙知の集合体です。そ
地域と考えられます。
が全社的な意思の統一を生
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0.6
して、これら独自の企業文化
新分野展開に向け、
自社は何をなすべきか⋮
み、それはやがて取引先或い
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特集 新たな挑戦で活路を見出す
01
7
とり、うまく活用しながら国
地域研究、地場産業論、地域経済論を専門とし、産学連携の
あり方に関する研究を進めている。「地方圏の時代(2013 晃
洋書房)」
「地場産業と地域経済(2008 晃洋書房)」など数々
の著書、論文も発表。経済学博士。第 6 回福井県科学技術大
賞特別賞受賞。2013年度金融知識普及功労者賞受賞。
か。
勝氏
福井県立大学 地域経済研究所 教授
内需要の掘り起こしに役立て
執筆者 南保
は顧客などをも巻き込んだ個
vol.9
1
ヤマトタカハシ㈱
完成への道のり
㈱長田工業所
若手のチカラ
飛躍する経営者たち 木田 祐子 氏 アンジュール㈱
地方の挑戦
デザイン∼少し気になる日常風景∼
インフォメーション 他
1
vol.9
2
近年の社会経済環境を外観しますと、少子高齢化社会の進展や格差
社会の到来など様々な構造変化が進む中、地域企業では激変する経
営環境を先取りしながら存続、発展に向けての新たな挑戦により活
路を見出そうとする企業が増加しています。それは、いわゆる新分
野の展開ということになりますが、本稿では、こうした企業活動に
着目し、狙うべき分野のヒント、新分野展開に向け何をなすべきか
等、そのポイントを探りたいと思います。
2
3
CONTENTS
注:アンゾフとは、米国の経営学者イゴール・アンゾフ(H
Igor Ansoff 1918年生まれ)のこと。企業の成長戦略を市
場と製品を軸にして、既存商品の「市場浸透」「市場開拓」
と、新商品の「製品開発」「多角化」の 4 つに分類し、企
業の成長の方向性を示した。具体的には、
1 .市場浸透
あくまで既存事業分野で変革を行って、競争力を高める
戦略。
2 .新技術・新製品開発
既存の市場・顧客を対象に、新たな技術・ノウハウを提
供することにより、他社と差別化を図る戦略。
3 .市場開拓
自社が保有している既存の技術・ノウハウをベースに、
新しい市場や顧客を開拓していく戦略。
4 .多角化
本来の意味の新分野展開戦略。市場も技術・ノウハウも
まったく新規の領域に取組むものと、市場や技術・ノウハウ
面で関連性がある分野へ進出する2つのケースに大別できる。
∼新分野展開を探る∼
では、実際に新分野展開を
成功に導くためのポイントは
図 アンゾフの成長ベクトル
新たな挑戦で
活路を見出す