White Paper 高速金属切断に適した 費用対効果の高いレーザ Coherent 社の METABEAM レーザ切断システムは、ガ ス封じ切りスラブ放電 CO2 レーザ技術を採用することで、 りスラブ放電 CO2 レーザの低運用コストを改めて検証し ます。 かつて無い小型で低コストの金属切断加工を実現しまし た。今日、1 kW 出力の登場により METABEAM はよりハ 切断性能 イパワーのガスフローレーザ搭載装置と同レベルのスピ スラブ放電共振器設計は、適切なレーザ光学設計との ードで、従来よりも厚い材質を切断します。 組み合わせにより、高品質ガウシアン(M2 < 1.2)のレーザ ビームを出力します。この特性はビームの高い集光性 はじめに 能を生み出し、小さい集光スポットを作り出すことでほと CO2 レーザは金属切断と溶接で数十年に渡って使われ んどのレーザパワーが有効に利用されます。またこのレ てきました。しかし、伝統的なガスフローCO2 レーザの大 ーザのデザインの持つ自然な特長として、極めて早いパ きな装置寸法と高い運用コストは、装置の大量導入の ルス立上り/立下り時間を持つ矩形パルスを出力します。 妨げとなっていました。最近、Coherent はガス封じ切り スラブ放電 CO2 レーザ技術に基き、1 kW の出力を生み 出す新しいレーザ切断システムを発表しました。スラブ 放電 CO2 レーザは、より小型で、信頼性が高く、コスト効 果の高い切断装置を実現します。その性能は金属切断 に加え、プラスチック、布、フィルム、木、その他有機素 材の切断応用での実績に示されています。 優れたビーム品質、矩形パルス、高ピークパワーの組 み合わせは、高い切断品質を与え、それによりこの封じ 切りスラブ放電レーザが、より大きなパワーのガスフロ ーレーザと競合し得るものとなっています。特に、 DIAMOND E-1000 (1 kW)は、2 kWガスフローレーザと一 般的に同等の金属切断スピードを得ます。それは、レー ザパワーに頼る力任せの加工よりも、高度に制御され 新しい METABEAM 1000 システムは、1 kW の DIAMOND たレーザパワーが薄板切断で有効なことが理由です。 ガス封切り CO2 レーザ E-1000 を搭載しており、2 kW ク ラスのガスフローレーザと同等の切断速度を得ています。 METABEAM 1000 は、金属切断をより広い市場に広げ、 その様々な利点から、小規模生産およびジョブショップ にとって魅力的な製品となります。このホワイトペーパで は、一般的な素材の切断性能比較、および、ガス封じ切 コヒレント・ジャパン株式会社 http://www.coherent.co.jp/ 1 この事は、図1の冷延鋼板の切断速度で示されていま す。図1はCoherent社DIAMOND E-1000(1 kW)と2 kWガ スフローレーザの、酸素アシスト切断速度の比較です。1 kWの封じ切りスラブ放電レーザは、約6 mm以下の幅広 い材料で2 kWガスフローレーザと同等(正確には少し上 回る)の結果を得ています。 図 2. ステンレス切断(窒素アシスト) ステンレス切断における DIAMOND E-1000(1 kW)と 2 kW ガス フローレーザの比較 小さいスポットに高ピークパワーを集光することで、極め て大きなパワー密度が非常に小さい領域に作られま 図 1. 軟鋼切断(酸素切断) 冷延鋼板切断における DIAMOND E-1000(1 kW)と 2 kW ガス す。これらの効果はDIAMOND CO2レーザの価値を高め フローレーザの比較 ています。一方で、窒素は反応性が無く、アシストガスと して使用する場合は加工領域の冷却効果が得られま す。この結果、レーザの平均出力が大きいことは若干有 窒素アシストでのステンレス切断でも、1 kW DIAMOND 利に働きます。 E-1000は切断速度で2 kW ガスフローレーザと競合しま す(図2参照)。冷延鋼板切断とステンレス切断の違い 図3は、同様に2種類のレーザによるアルミ切断結果で は、ほぼアシストガスの違いに依ります。酸素をアシスト す。この場合、DIAMOND E-1000 (1 kW)の切断速度は ガスに使用する場合、発熱反応が発生し、それが切断 1.8 mm厚以下では2 kW ガスフローレーザの速度を上回 を促進します。さらに、酸素アシストでは発生する溶融粒 ります。薄板切断では高い集光性能による効果が重要 がより大きいサイズとなり、レーザ照射部位からより容 であることが理由です。一方で、厚い材質では出力を要 易に吹き飛ばされます。 求します。 コヒレント・ジャパン株式会社 http://www.coherent.co.jp/ 2 れに相当する電力を節約します。加えて、スラブ放電レ ーザはウォームアップ時間が無く、必要時のみレーザを 発振し、時間と電力を節約します。 ガスフローレーザでは、連続的なガスの入換えが要求さ れます。これはレーザガスにオイル蒸気が含まれること が理由です。そのため、新しい予混合ガスをシステムに 注入し、また、ほぼ同量の使用済ガスをバキュームポン プで廃棄します。加えて、タービンオイルは時としてレー 図 3. アルミ切断(窒素アシスト) ザ光学系に付着し、定期的に清掃、もしくは時に交換を アルミ切断における DIAMOND E-1000(1 kW)と 2 kW ガスフロ 要します。 ーレーザの比較 これら全ての問題は封じ切り共振器においては除外さ 運用コスト れます。特に、ガスは40,000時間に及ぶユニット寿命全 非常に優れた性能に加え、封じ切りスラブ CO2 レーザは、 般で汚染の無い状態を保ち続けます。つまり、ガス交 特に 3 つの点でガスフローレーザよりも優れた運用コス 換、ガス取扱、ガス保管、ガス供給、ガスタンク交換の作 ト性能を提供します: 消費電力コスト、ガス消費コスト、メ 業による装置停止時間と、これら全てのコストが無くなり インテナンスコスト。 ます。また、ガスフローレーザでは頻繁な点検とオイル 交換の必要な、ポンプに関連するメインテナンスと消耗 ガスフローレーザが消費する電力の多くの割合が、ガス コストが発生しません。加えて、コヒレントの封じ切りCO2 の循環と冷却を行うための、ポンプ、ブロワー、熱交換 レーザの冷却水は循環式チラーを使用するため、外部2 器に使われています。加えて、ガスフローレーザそのも 次冷却水供給が不要です。 のの効率は相対的に低く、実際のところ、切断加工を開 始する前に、電力消費を伴う長い時間のウォームアップ 封じ切りスラブ放電構造は、また、機械的に安定で、大 を必要とします。 きなパワー /サイズ比とパワー/ 重量比を備えるレーザ を実現しました。例えば、コヒレントのDIAMOND E-1000 対して、ガスフローレーザ運用コストの生じる全てのポイ レーザは、1 kW出力を持ち、RF電源を含んだヘッド寸法 ントにおいて、スラブ放電レーザはコストを低減します。 は1497 x 384 x 471 mm、重量はたった173 kgです。この 特に、スラブ放電レーザにはポンプが無く、ポンプとそれ コンパクトな寸法は、実装を容易にし、全体のシステム に付随する電力消費がありません。スラブ放電方式は、 価格を低減し、装置設置面積をより小さくできます。 ガスフローレーザよりも約50%効率が高く、この結果、こ コヒレント・ジャパン株式会社 http://www.coherent.co.jp/ 3 DIAMOND E-1000と典型的な2 kWガスフローレーザの た様々な自動化ツールは、本装置を製造現場に組み入 運用コストを表1にまとめ比較しています。8時間/日の れることを可能とし、生産性向上の手段を提供します。 運用であっても、スラブ放電レーザは初年度の運用で数 機能、柔軟性、コストカットのユニークな組合せは、ジョ 千ドルを節約します。 ブショップや金属切断センター、金属加工メーカにとって 表1 比較表 METABEAM 1000 を魅力的な物にしています。簡易操 運用コスト (1 時間あたり) 作性と自動化機能は、家電、自動車、航空宇宙、建設 電気 1 ガス 2 保守 3 年間累積 コスト 4 DIAMOND E-1000 162 円 0円 98 円 54 万円 高速軸流 2 kW 204 円 96 円 168 円 97.3 万円 形式 1. 等、幅広い産業分野の内製金属切断用途にも役立ちま す。 米国平均電気代 5.6 円/kWh に基づく。レーザとチラーの 消費電力を含む 2. 2 kW ガスフローレーザは 25 リットル/時のガスを消費。 3/1/1 混合比を仮定。 3. ガスフローレーザの保守は光学系、オイル、ポンプ(ブロ ア)もしくはタービンを含む。封じ切りレーザは 40,000 時間 で交換すると仮定。 4. 1 日 1 シフトの稼働時間(2000 時間/年)で算出 METABEAM 1000 図 4. コヒレント製 METABEAM 1000 は 1 kW DIAMOND CO2 レ METABEAM 1000 は1 kW CO2レーザを搭載したターン ーザを搭載し、その自動切断制御システムは数多くの便利な キー自動制御加工機です。コスト効果の高いシートメタ 特長を提供します。 ル切断(ステンレス、軟鋼、アルミ、真鍮)と有機素材切断 (木、プラスチックを含む)が可能です。特に、低運用コス まとめ ト、簡易操作、小設置面積を封じ切りスラブ放電技術に 切断応用は、レーザ切断システムのより小さい設置スペ よって実現しました。さらに、本装置は様々な便利な機 ースと、より少ない CO2 排出量の両方から恩恵を受けま 能を備えています。電気容量センサは金属表面とノズル す。非金属および薄厚金属切断応用は、封じ切りスラブ のギャップ距離を一定に保ち、オートフォーカス機能によ 放電レーザの小寸法、高い電力利用効率、高い切断効 り再現性の高いきれいな切断結果を得ます。装置は2系 率の恩恵を長らく受けてきました。今日、これらのレーザ 統の独立した高圧レギュレータを備え、アシストガスの の出力は、キロワットレベルに増加し、より厚い金属シー 切り替えを速やかに行い、最小限の準備時間で様々な ト(8.5 mm まで)の切断に対応し、その特長からくる重要 素材切断を可能とします。例えばパレットシャトルといっ な恩恵を享受できるようになりました。 コヒレント・ジャパン株式会社 http://www.coherent.co.jp/ 4 CO2 レーザ技術の解説 高速軸流ガスフローレーザはプラズマ放電チューブ を持ち、その名前の示すとおり、その中を高速ポンプ 運用コスト、性能、信頼性、寿命におけるガスフロー (roots blower)を用いて速度400 m/sにもなる混合ガ CO2 レーザと封じ切りスラブ放電CO2レーザの際立っ スが流れます。高速のガス流は、ガス冷却を効率良く た違いは、これらのレーザの構造が直接反映したも 行うために使われます。これは基本的に重要で、レー のです。このコラムでは、それぞれの形式のレーザが ザ発振媒体であるガス温度の上昇は、レーザ発振出 どのような構造で作られているかを簡単に説明しま 力を大きく低下させます。そのため、ガスは放電チュ す。 ーブ内を通過した後、熱交換器で冷却され、再び放 電チューブを通るという過程を何度も繰返します。 ガスフローレーザは、元々は航空宇宙と自動車の金 属切断、穴あけ加工における、大きな平均出力の要 高速ガス流と効果的な冷却は、放電チューブの単位 求によって開発されました。ガスフローCO2レーザに 長さあたりのレーザ出力を大きく増加させます。実際 は大きく分けて2つの異なる構成(直交型と同軸型)が のところ、この構造でのレーザ出力は、放電チューブ 存在し、それぞれにバリエーションがあります。この の長さよりも、システム内に流すガス流速により依存 文書では単純に、高速軸流ガスフローCO2レーザを します。ガス流速と量もしくは圧力を大きくすることで 指し、コストと運用特性はこの形式の代表的なものを レーザ出力が増加します。数kW出力のCO2レーザは 示します。 この方法により簡単に構築可能です。 この力任せのガス冷却の手法では、必要であればか なり大きなレーザ出力を得ることができます。しかし、 幾つかの望ましくないコスト因子、特に、電気と消耗コ ストに加え、現場でのメインテナンス技術を伴う人員 が必要となります。 封じ切りスラブ放電CO2レーザは、もともとは様々な 素材、例えばプラスチック、布、木、金属シートの精密 図 5. 高速軸流ガスフロー CO2 レーザの単純化した構成 切断用に開発されました。これらの加工では、切断品 質、外観(例えば焦げの無いこと)、精度が第一に重 要であり、切断速度は二番目になります。この精密切 断を要求する市場では、装置寸法、重量、ランニング コヒレント・ジャパン株式会社 http://www.coherent.co.jp/ 5 コストも同様に重要なポイントです。これらの加工応 用には長年にわたり 100 W – 500 W クラスの封じ切 りスラブ放電レーザが使われてきました。封じ切りス ラブ放電レーザの出力が 1 kW クラスになり、上記応 用で使われてきた利点が、より厚みのある素材加工 に適用できるようになりました。 封じ切りスラブ放電レーザは、2枚の長方形電極板に 挟まれた隙間に共振器を形成します。電極間にRF放 電を加えるとプラズマがこの電極に挟まれた空間全 体(レーザ発振媒体領域)に発生し、電極の両端に配 置されたミラーが全プラズマ領域でのレーザ発振を 誘起します。電極は水冷却され、電極の広い面積と、 電極間の近接した距離は、ガス循環を必要とせずに 効率的にプラズマを冷却します。この単純な構成は、 ガスフローレーザで必要とする多くの部品を使いませ ん。 図6. スラブ放電CO2レーザの基本構成 コヒレント・ジャパン株式会社 http://www.coherent.co.jp/ 6
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