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基調講演
『ユニバーサルデザインで飛躍するうつくしま』
∼星の王子さま、打ち出の小槌と
白石
福
の島∼
正明
日
時:平成17年7月24日(日)
場
所:ビッグパレットふくしま
それでは、始めさせていただきますけれども、大変ご丁重なご紹介をいただきましてありがと
うございました。
本日は「ユニバーサルデザインで飛躍するうつくしま」、ユニバーサルデザインというのは、
何かの目的のために当然、使うわけですけれども、そのことによって福島県が大きく飛躍する
と、
日本をリードするという形で使っていこうという合意がまず必要なんじゃないかと。ただ、この
辺を交通機関とかいろんなところを整備するだけではしょうがない。もっと大きな目標にしよう
じゃないかという意味がこれによって「飛躍するうつくしま」というぐあいにしたいと思ったわ
けです。
それから、2番目が星の王子様を使いました。「星の王子様、内ち出の小槌と 福 の島」と
ありますけれども、なぜ氷山が出てきたのかということですね。疑問に思っていらっしゃる方も
いらっしゃると思います。二つ目的があります。決して場所が郡山だと、だから氷の山を持って
きたんじゃないんです。
二つの目的は、氷山をごらんになった方、私は見たことがありませんけれども、少なくとも聞
いていらっしゃる方が多いと思いますけれども、氷山として水の上に出ているところは非常に少
ない。これはご存じですよね。そのために例のタイタニック号が沈没するという悲劇が起きてお
ります。つまりある方は10分の1にも満たないというぐらい下の水面下にあるものの方が大き
いということがございます。それが一番の目的です。つまり水面下にあるものの方が大事である
ということですね。それからもう一つは、たまたま28度Cというエネルギーの問題がありまし
たけれども、きょうは少し暑くなってよかったなと思っておりました。きのう、おとといのよう
な気温だったら皆さん、震えちゃって困るかなという心配がありましたけれども、幸い間に合い
ましたが、せめて見るだけでも涼しいような出だしにしていただきたいという二つの願いで実は
氷山を使ったわけでございます。
そこで、私の願いというのは、氷山と絡みましてこういうことなんですね。お手元のレジュメ
にも書いてありますけれども、やはり人間の潜在能力というのは非常に大きいんだと。恐らく脳
にしましても中には1千億を超えるような脳細胞があると言っておりますけれども、それをフル
に使っているかと言ったら、使っている人はだれもいないと思います。アインシュタインの脳が
我々一般の人の脳よりもグラム数が少ないということは皆様、ご存じですよね。それと同じよう
に我々が持っているこの大きな潜在能力、それをまだまだ使っていない。これを使うということ
が飛躍の大きなポイントになるだろうと、そう考えているわけです。
ですから、持っている人と町、我々自身、それから福島県が持っている膨大な資産がある、そ
れを発見して使うようにしていくということが飛躍のエネルギーになるだろうと、こう考えてい
るわけです。このエネルギーというのは昭和から平成というわずかな期間でつくったのではなく
て、やはり我々の先祖から営々とした営みの上に培われてきた遺産であり、そして、それは未来
へつないでいく大事な大事な遺産であるということがまず皆様、十分おわかりでしょうけれども
まず確認したい第1点でございます。
そこで、星の王子様でございますけれども、星の王子様の作者が書いた最初の絵というのはこ
の絵です。この絵を見せたら、彼は「怖いだろう」と言って見せたというストーリーなんですけ
れどもちっとも怖くないと、帽子が何で怖いんだということになるわけですね。このつば広の帽
子を縦に切ったという断面の図で黄色く塗っているだけですね。
ところが、実は彼はここの中にあるものを入れたんです。何が入ったかといいますと、象が入
っているんです。外側は何かというと、うわばみ、つまり大きな蛇ですね。象を飲み込んだ大き
な蛇、それを彼は書いたんだというわけです。しかし、時に大人は中にあるものを見えないし、
見てくれない。これが星の王子様の話の最初の導入部です。これはいかがでしょうか。うっすら
と見えていますね。星の王子様が言っていることは、肝心なことは見えないんだよということを
繰り返し繰り返し言っています。ぼやけていますとストレスがたまるといけませんから本物を見
せます。これが星の王子様の表紙です。多分、版権が切れましたから今度は新しい表紙の本が出
るとは思いますけれども肝心なことは見えないんだということを繰り返し繰り返し言っている。
これが実はユニバーサルデザインの次のステップ、実は心の問題なんですね。
お手元のレジュメをちょっと見ていただきたいと思うんでございますけれどもレジュメに肝心
なことを見るということで、ご存じですかという設問が幾つかありますけれども、第1番目、
福島県はユニバーサルデザインの先進県である。その理由というのは、お手元の厚い方の指針、
そこの5ページに出ております。ユニバーサルデザイン推進の視点ということで4番目にありま
すのがユニバーサルデザインについて未来の世代の信託である。つまり、この都市というのは、
我々が遺産相続したものではない。これはアーミシュという人たちがアメリカにおりますけれど
もその人たちの言葉の中にあるんですね、考え方です。したがって、未来の世代から借りている
ものなんだというのが彼らの考え方なんです。これはアメリカインディアンの考え方にもあるよ
うです。つまり未来の世代から借りているんだからもっといいものにして、もっといいすばらし
い福島県にして、郡山市にして、あるいはそれぞれの町にして戻していかなければいけないと。
自分のものだから自分で処理してもいいんだと、売ってもいいと、こういう考え方ではいいもの
はできないというのがアーミシュの人たちの考え方です。
したがって、私は福島県が視点の中に未来世代から信託を受けているんだと、そういうすばら
しい発想を大きく掲げられたということは実にすばらしいこと、心から敬意を表します。日本の
すべての県の指針を見たわけじゃありませんけれども、大体がユニバーサルデザインの7原則を
掲げているところが多いんです。それをきちんと県で咀嚼、かみ砕いてそこに新たな視点を確立
していると、この姿勢というのは実にすばらしいなと。住んでいらっしゃる皆さんは、私はお幸
せだと思います。
2番目、福の島ですね。私はうつくしま、うつくしま、うつくしま、福島、うつくしい福島
と、
こういう言葉を繰り返していたんです、このお話をいただいてから。そのときにふっと気がつい
たのは、福という字のつく県というのは幾つあるんだろうと思ったんです。そこにとりあえず二
つ出してあります。ほかにあるかもしれませんが皆さん、後で書いてみてください。町でいきま
すと、福山という町がありますね。この間、事故を起こした福知山というところもあると。しか
し、県としては、私が見つけたのは二つだけです。答えは後でご自分で探していただきたい。
3番目、福島県が誇るべき断トツの統計があります。これは日本で2番目です、沖縄県に続い
て。どなたかおわかりの方がいらっしゃいますか。骨髄バンクの登録、ごめんなさい。それは私
は知りませんでした。違うところなんですよね。それもすごく大事だと思いますけれども、きょ
うの問題はこれからいかに高齢化が進むかということなものですからちょっと違う分野で考えて
みてください。断トツのすばらしいことがあります。これは後ほど正解を出します。
スライドにもう一度戻りますけれども、やはり福の島という、例えばこの表題でもありません
けれども、海の真ん中に素敵な島があってそこには福が詰まっている島だと、こういうイメージ
を実は私はしたんですね。そうしますと、皆様方は福の島の住民でいらっしゃるんですよ。
そう思いませんか。福のつく福川という名前がある、あるいは福田という姓名がありますよね。
でも、福の島という島の持ちイメージというのは、やはり人間に何かロマンを与えるものだと、
そこに福が詰まっているんだと、そういう世界に一つしかないんじゃないでしょうかね、福島と
いうのは。その名前というのは本当にすばらしいと私は思いました。皆様、いかがでしょうか。
スライドに戻ります。
福島県の駅ゼロ分、誇るべき世界に一つというのはプラネタリウムですね。これはギネスに登
録されていますけれども世界一高い建物の上にある、高層ビルの23階、104.25メート
ル、
私も2回ほど行きましたけれども実にプラネタリウムというのはすばらしいですね。そこは駅ゼ
ロ分のところに持っているという町は恐らく日本にはないはずですし、世界にもないだろうと思
います。このプラネタリウムが宇宙というすばらしい空間に対するあこがれを誘ってやまない、
そのプラネタリウムを駅ゼロ分に持っているというのは私はすばらしいなと思います。
その次、答えを先に出しましたけれどもこれは回答が出ましたね。福島県が東北のウィーンで
あるということはホームページの中にも出ていますし、私は実績からいってもそのとおりだと思
いますね。中学校、高校、小学校もそうだと思いますけれども、全国制覇を何回も何回も、しか
も連続して遂げている。この合唱というハーモニー、しかも人間の最も美しい声という世界最高
の楽器を上手に調和して使うと。みんながそれぞれが持っている声を一つの目的を持って使って
いくという合唱という地盤を持っている、これはユニバーサルデザインの非常に大きな資産だと
思います。その資産を生かしてほしいというのがこの願いでございまして、次は福島県の花で
す。
ご存じですよね。ハナカツミ、このハナカツミを商品化したものが実はここに香水といいます
か、オーデコロンとして出ております。しかし、もっと出てもいいんじゃないかと私は思いま
す。
これは郡山市の花ですから、ほかのところにもたくさんあると思います。でも、これをもっと生
かすためにはどうすればいいかということは後ほどもっと触れられると思います。
じゃ、木は何ですか。ケヤキが多いけれどもケヤキじゃないんですよね。市の木、すばらし
い、
ほかのは大丈夫できましたか、eメール期待していますから。山桜ですね。私も初めて学名を見
ましたけれども発音でいくと山桜ですね。山桜がそのまま学名になっていると。その前にプラナ
スというのが入っているバラ科の花。この山桜を郡山は何本あるんでしょうね。それはどのよう
な市の産物になっているのかなというのが私が持っているちょっとした疑問てす。
次にいきます。うわばみの中にある見えないもの、これからどういう変化が起きてくるのかと
いうことを考えてみたいんですね。つい先日ですけれども、超音速旅客機、それがいずれ本格化
すると。コンコルドは失速しましたけれども。そうしますと、日本からアメリカ西海岸まで2時
間で行けるそうです。2時間ですよ。どういう世の中が起きてくるか。これは20世紀の場合は
パソコンが起きましたね。ですから、パソコンで世の中のシステムが全部変わっちゃったと言っ
てもいいぐらいです。2時間でアメリカと日本がつながったらどういうことが起きてくるか。我
々のライフスタイルというのは大きく変わると思います。なぜならば、パソコン、私でさえいろ
んなパソコンを使っている。そうしますと、2時間で二つの国、太平洋がつながったらどのよう
な大きな変化が世界全体に起きてくるかということは想像できません。ぜひ皆さん、長生きして
100年後の世界、あるいは50年後の世界を見てほしいなと、そう思います。天国でお会いし
たらそのときに教えてください。
そこで確実に起きる変化があります。それはこれです。これだけは絶対間違いなく起きるとい
う変化です。人口の問題だけは、今いる人口が一挙に半分になるということはありません。した
がって、人口がどうなっていくかという問題だけはどこの国でも一番確実な変化です。変化はグ
ラフですけれども、2006年、1億2,774万人でピークに達した後は一気に下がっていき
ます。1920年の大正9年以来、このとき5,596万人だったものが7,000万人ふえて
やっと1億2,774万人になったと思ったら、そこがピークで後はどんどん下がっていく。
赤、
青、緑の3本の線がカーブがあるということは、うまくいった場合、それから中間の場合、下手
すればという3本の実は予測ですが、これを見ると、2050年には日本の人口は1億825万
人というのはうまくいってという数字です。約2,000万人減るということですね。
しかし、この数字は基準がこの後、変わったんです。それは大きな問題が一つあったんです。
その後の厚生労働白書によりますと、1億59万人、これは一番いいのか、中間なのか、下なの
かというのはわかりません。いずれにしても、相当大きな減少というのがあることは間違いな
い。
そして、地方都市圏の人口減少はこれからの25年間、つまり2000年をベースにして203
0年では10.7%減るという数字が出ているぐらいです。確実に都市の人口は減ってきます。
これは大都市だって同じです。
したがって、人口が減るということがどのような影響を持ってくるのかということを考えなけ
ればいけないというのが第1点でして、第2点、人口が減ることの一番大きな原因は出生率が減
ることです。したがって、先ほどごめんなさいね、骨髄バンクの登録じゃなくて出生率なんで
す。
出生率は福島県をごらんください。1.57です。沖縄に継いで第2位です。東京は1.00
か、
たしかそれを割ったはずです。ですから、2人にプラスでもってやっと現在の人口が維持できる
ところに、ことしは1.29ですね。切り上げて1.29ですね。実際には1.28ですね。そ
して、50年にどうなるかというと、1.39という数字なんですが、先ほどのカーブの基礎に
なっているのは1.60になるという予想なんですよ。ですから、もっと減るということは覚悟
しておかなければならない中で福島県は1.57なんですよ。これは非常に誇るべき数字で、こ
れをぜひ上げてほしい。そのためにはどうすればいいかというと、後で触れますけれども、子育
てに優しいまちづくりを進める必要が私は一番効率的だと思っております。
これだけ人口が減るとどうなるか、社会にどんな影響が出るかといいますと、例えば東京では
駅に人がいなくなっています。駅員さんがいなくなるんです。したがって、これは私の友人が車
いす、しかも重い電動車いすだけで100キログラム超えているんですね。それで、六本木の駅
に来たんです。どうしたか、駅員さんが総出で7人がかりでやっと下までおろしてくれました。
しかし、これからはもし20年後といったら六本木駅にこれだけの人数はいなくなるはずです。
駅の無人化はどんどん進みます。おまけに今の駅員さんが、何とかこれはいいですけれども20
年後、どうなっているかといいますと、みんな年をとっているじゃないですか。そうしたら、こ
れをおろせるかですよ、おろせませんね。おろせるという自信はありますか。絶対おろせません
よ、絶対をつけてもいいぐらい。おまけに1人しか出てきていないんです。しかし、例えばご夫
婦で、あるいは友達という形でグループで動き出したら今だってどうしょうもないですよ。7人
の方がやっとおろしたと。上に戻ったら次というようなことで2人、3人と待っていたらどうす
るんですか。どうしようもないですよ。駅員さんが仕事できないし、もう終わった後はがくっと
してしまってということは間違いないじゃないですか。
ですから、これから大事なのはエレベーターしかないんです。車いすが乗れるエスカレーター
というのがありますけれどもあれは日本しかありませんけれども、あれはお金がかかって、かつ
スペースがとられて効果なしです。これからはあれが使えなくなります。ここにはないと思いま
すけれども、東京のを私は早速見にいったんです。海外の会議で「おまえのところでできたとい
うけれどもどんなのがあるか情報をくれ」と言われたんです。びっくりして探して見にいってび
っくりしました。さらにびっくりしたのは、まず駅員さんを探してどうやって動かすか見てくだ
さい、教えてくださいと。駅員さんがまずかぎをとりにいきました。かぎを取り出してこのエス
カレーターの一番上か下のところにいきましてかぎでもって一応エスカレーターの流れをとめて
しまうんです。その間、人はみんなこっち側です。乗客はだめです。そして、あるところまで動
かすとパネルが3枚一緒になるんですね。そのストッパーが上がると。それからずっと行くんで
すけれども、上がっていく、あるいはおりてくるんですけれども、その間、一般の人は乗せない
んですよ。そうすると、みんなが、ここで外国の人が珍しそうに見ているように冷たい目で見な
がら上がったりおりたりしなければいけない。駅員さんがいなかったらだれがやるんですか。し
たがって、例えば乳母車の人でも、車いすの人でも、荷物を持った人でもだれでも自分で押して
乗れると、そういうものでないと社会はやっていけないんです。しかし、メーカーは高いものを
売りたがりますから3点セットでどうですかというのがありますけれども、少なくともお金とか
効率ということを考えたら、それはエレベーターです。ただ、人を運ぶという能力ではエスカレ
ーターの方が間違いなく上です。しかし、人に頼んで乗せてもらわなければいけないというのは
自立じゃありません。
人が減る、さらに大衆長寿社会です。今までも100歳を超えた人たちというのはたくさんお
ります。歴史上にも現在も。しかし、それらの人たちはある意味では長寿の家系に生まれていた
とか、あるいは長寿の意味合いがあったと思いますが、これからは我々のようなごく普通の人間
が80歳を超える。昨年の10月1日の統計によりますと、90歳以上が既に101万6,00
0人、0.8%です。したがって、これからはどんどん80年人生というのは普通になって90
年、100年になるということは間違いない。そういう社会が来ようとしているんです。これは
2000年だったと思いますけれども、8月25日だったか、アメリカの研究所が2050年に
日本人の平均寿命は90歳になるという予測をしております。同じ年のさらに少し3カ月ぐらい
おくれまして同じくアメリカの違う研究所は93歳です。ということは、平均ですからその年に
生まれた人がそこまで生きるということなんですから、我々生きている人たちはもっと生きてい
るわけです。そうすると、人生80年の延長ということじゃなくて本格的にこれから第4、第5
の人生があるんだという前提で考えなければいけない時代だろうと。そういう生活設計が大事に
なると思います。
そこで、三つの「もし」ということを皆様方に考えてほしいんです。もし100歳まで生きた
らどうなんだろうか。例えば蓄えの問題がありますね。もし100歳まで生きたらという可能性
は否定できないはずです、どなたも。どうするか、もしそのときに1人だったらどうするか。例
えば配偶者が亡くなっている、子供も海外に行って住んでいる、あるいは沖縄に住んでいるとか
北海道に行っていないと。そして、そのときに、もし皆さんが住んでいるところが生まれ育った
国じゃなかったらどうするのか、生まれ育った町じゃなかったらどうするのか。つまり私のよう
に根なし草になりますと、東京でコミュニティーの中で巻き込まれて生きているというわけじゃ
ないですね。そういうところで1人で100歳を迎えたということを考えたどうなんだろうとい
う生活設計を実は見てみなくてはいけないと思っているんです。
皆様ご存じのサラリーマン、島耕作君、今、やっと常務になりましたね。あの弘兼さんが昨年
9月25日の日経に「入院島耕作」というイラストを発表しております。ごらんになった方もい
らっしゃると思いますが1面に出ております。このときには入院というのは最終の入院なのか途
中の入院なのかは言っておりません。ただ、弘兼さんが常々言っていることは、自分の人生は8
0歳で終わるんだということを言っていらっしゃるんですが、どっこい80歳で終わるというこ
とはないだろうと思うんですが、注目して見てください。ですから、このベッドの上に彼は寝て
いて周りの3人の看護婦さんがいるわけですけれども、看護婦さんの国籍は日、中、韓とありま
すから恐らく日本と中国と韓国ということだと思いますが、先ほど申し上げたように、日本の看
護師さんが減るとすれば、多分ここにはフィリピンとかタイとかという形が出てくる可能性があ
ります。そうすると、言葉を伝えたくても微妙なニュアンスは伝えられないということになるで
しょうね。こういう人生というものを終わりにするのか、それともいや、私は絶対自分の家で最
後を迎えるんだという決断をするのか、それがこれからの人生の中に私は大きく影響すると。し
たがって、演繹的とか、帰納的というのは今の積み重ね、80歳の積み重ねで90歳、100歳
まで伸びるというのじゃなくて、100歳まで生きるという前提で、例えば家をつくるにしたっ
て少し無理をすればいいものが入るということになったら、100歳まで生きるという前提だっ
たらお金をかけるということになるじゃないですか。日本の住宅は26年しかもたないというの
はとんでもない話ですね。余計なことを言いました。
こういう変化がどのようなインパクト、衝撃を受けるのかということを福島県の例で見てみた
いんですが、これは県の統計からとりましたが、2005年のときに209万7,000人の人
口がある。高齢者65歳以上は22%です。これが2010年が208万5,000人、23.
6%、2020年が199万人と。高齢化率はさらに上がって28.7%と変化してきます。
これがさらに変化してきたらどうなんでしょうね。この統計は皆さんのお手元のレジュメに全部
出ています。
次ですけれども、収入です。自治体の収入はどう変わっていくのか、これも郡山市の統計です
けれども、既に2000年が474億円、これが2001年、471億円、2002年が460
億円、2003年が446億円と減ってきています。これは人口が経ればこういう税金が減るの
はもっともですね。そして、ここには内訳は出していませんが固定資産税、固定資産の価格はど
んどん落ちているわけですからこれだって市税が減っていく当然の結果になりますし、自動車が
1人が2台も3台も持つかというと、それは持つ人もいるでしょうけれども自動車の台数も減る
だろうと。ということになれば、自動車税も減ると、こういう悪循環に陥ってくるので、どのよ
うに税収をふやすかということになれば、新たな産業を興す、あるいは人をふやす。それ以外に
手はないはずです。
もっと大きな問題があります。それは少子化の影響です。これは県中の統計です。皆さんが住
んでいらっしゃる県中の統計、県の現在人口の5年刻み、5歳刻みの人口でいきますと、現在、
75歳以上、後期高齢者の人口といいますのは5万1,393人です。それを支えるというのは
働き盛りということで20歳から64歳というぐあいに仮に考えてみたわけです。そうします
と、
現在の人口は33万2,308人です。しかし、20年後の状況はどうなるかといいますと、7
5歳以上の人たちが15万1,929人になるのに対して20歳から64歳という支える方の人
口は30万1,331人です。現在は6人に1人という割合が2人に1人になると。これはどの
ように考えたらよろしいんですか。たとえお金があってもヘルパーが来てくれないということだ
ってあるかもしれないと。こういう人口の統計の動きというものを見ていきますと、やはり我々
が最後をどうするかということは非常に大事な問題になる。
そこにもう一つ、男女共同参画社会ということですが、ここには二つの顔があるんですね。女
性が社会に進出する。これはもちろん大変結構なことで日本がおくれている分野です。しかし、
反面として今まで女性が主な職場になっていたところは人が来なくなるということです。既に起
きているのが看護師です。ですから、先ほど弘兼さんのイラストを見ていただいたように、やは
り外からの人がふえてくるような状況になるというのは間違いないということは言えるんじゃな
いでしょうか。
どうすればいいかということになりますと、やはり自宅で、地域で最後まで元気に生きるんだ
というぐあいに決意すると。そして、そのためにどうすればいいかということを真剣にみんなで
知恵を出し合って考えていくということが必要じゃないだろうかと私は考えるわけです。その一
つが、やはり生きている環境を整備する。ですから、所長のお話があったように、公共施設とい
うものが人が一番利用するところというのは絶対に人に優しい施設にしなければいけないと、こ
こにユニバーサルデザインの大きなニーズがあって、これが進展するかしないか、さらにいいも
のにできるかできないかに皆さんたちの後期の人生、第4、第5の人生がかかってきていると申
し上げても言い過ぎじゃないと思うんです。
ただし、後期、75歳以降100歳までの人生をどう考えるかということですが、特別養護老
人ホームに入って迎えると。それを希望するという人はだれもいないと思うんです。例えばこの
100歳時代というのはどういう時代なのかというビジョンを明確にしてああいう100歳に私
もなりたいと。若い人たちがうちのおばあちゃん、おじいちゃんのように元気に生きたいという
ような模範を示さなければならないというのは今の高齢者たちの大きな大きな役割であって、も
う定年退職したと、社会の役割は終わった。これからはゆったりというのもいいですけれども、
実はこういう大きなもう一つの役割を持っているということはやはり声を大にして叫ぶべきこと
じゃないかと思うんです。
例を挙げましょう。この方、樋口ツネミチさん、1890年生まれ、妻子は当然、もう亡くな
っているでしょうね。これは「100歳王」という写真集が出たんですけれども、それに載った
中からお二人だけの紹介です。亀山ツルさん、弓道が9段、師範です。当時、現役の弁護士、亀
山ツルさん、この人は主婦ですが1888年生まれ。ですから、100歳のイメージというもの
を変えていかなきゃいけないし、今は変わっているんです。
例えばアメリカの例をお見せします。これ一昨年、シカゴで行われた3,700人が参加した
アメリカの高齢者の団体の会議があるんですけれども、そこでの最終日の閉会式のスナップなん
です。前で撮ったんですけれどもこの赤いジャケットを着たヘレンさん、106歳です。そばに
いる黒いジャケットの素敵な男性、白いひげを蓄えて頭は少し薄いですがしっかりした男性です
が87歳のビルさんです。お二人の関係は何だと思いますか、いかがですか。(「ご夫婦」の声
あり)正解、ご夫婦です。しかも、100歳を過ぎてから結婚していらっしゃるんですよ。10
0歳になってもう隠居だなんていうのはおかしなこと。そういう時代になってきているというこ
とをぜひ皆様、見ていただきたいんです。
もう1人、チャンピョンをお見せします。この人はシドニーさんというんですけれども、サン
フランシスコのレストランでいらっしゃいませ、ようこそいらっしゃいましたと。席にどうぞ。
本日のランチメニューはこうこうですということをご案内していた人でテレビのショーにも出た
と。そして、20代の若者にも負けないくらいのてきぱきとした応対をしたというのはこの新聞
の記事で出ているんですね。ですから、「シドニーさん、いつまでも」ということを標語にして
出しているんですが、この方、何歳だと思いますか、いかがですか、一言。(「102歳くらい
」の声あり)いい線ですね。しかし、言っちゃって悪いですね。これは例の正解の方には関係な
いから後でeメールください。109歳です。ですから、109歳になってレストランで、しか
もこのレストラン、彼がいたレストラン、私も去年、行ってきたんですけれども、ケーブルカー
がぐっと上がるところにあるんですよ。ですから、かなり段差があります。ユニバーサルデザイ
ンでありません。地下もあります。そこで働いていたんですよ。ちゃんと給料をもらって税金を
払ったんです。そういう人生が可能になっているんですね。日本の新聞は、ごめんなさい、マス
コミの方がいらしたらごめんなさいね。こういういいことというのは、今までは割合に出ないこ
とが多いんですね。なぜですかと聞きますと、そういうのは読者が読まないと言うんですね。や
っぱり悲惨なストーリーの方がいいんだと。確かに津波があったとか地震があったというとみん
なはわっと見ると。これは日本だけかと思いましたら、実は海外もそのような傾向があるようで
す。それはリザスター、天災ですね。リザスターのストーリー、物語というのはみんな好むんだ
というのは書いてありました。いずれにしても、109歳まで大丈夫ということがあるんです。
でも、そのためには二つあります。体のがたつきと頭のさびつきは防がなければならない。特
に頭のさびつきがだめです。それで人間というのはどういう状況の中で生きるかといいますと、
つながりの中で生きているんです。人とつながる、人と会って話をする。だから、大脳も活性化
するんですよ。したがって、1人になれば間違いなくぼけは始まります。したがって、社会との
接触が豊かな人ほど元気で長生きというのは日本でも海外でも実は立証されている調査研究の結
果です。
ここに実は同心円があります。自分を中心にして幾つの縁が、人間の縁の縁ですね。つながり
の縁が書けるかということ。恐らく今、皆様がお書きになる職場の関係、地域の関係、親戚の関
係というたくさんの縁があると思うんですけれども、例えば年をとるほど、例えば定年退職を迎
えたときに東京なんかのような大都市は肉親の縁のほかは大体、例えばお酒を飲むのも麻雀をす
るのもゴルフをするのもみんな職場の関係。そうすると、定年退職をするのと同時に人間の輪と
いうのはパッと消えてしまう。残るのは一つしかないということで濡れ落ち葉とか、わし族と言
われてもくっついて歩かなければならんという事態があるんですね。これは大学なんかで話して
いますと、わし族とは何ですかと言われまして、今の若い人、わかっていないんだな、幸せだな
と思っていますけれども、いずれにしてもつながりの中で生きる。1人になれば必ず老います。
頭は使えば使うほどよくなります。年をとれば大脳は1日10万個ずつ死んでいく。脳は活性化
しない、再生しないと言われていますが、それは間違いです。1998年だったと思いますけれ
どもアメリカと北欧スウェーデンの学者がそれを立証しております。
したがって、私がお薦めしたいのは、料理とかおしゃれです。「40歳からの素敵」という本
がありますけれども、これはカッパブックスですが、ご関心のある方、ぜひお読みになっていた
だきたいと思いますが、加藤みどり子さんという資生堂のメーキャップアーティストが書いてお
ります。パリコレをやった人です。実に私は関心したんですけれども、彼女はいかにおしゃれと
いうことは頭を使うということを私も十二分に理解しました。そして、おしゃれといいますの
は、
やはり男性の場合、よく理解していないかとは思いますけれども、おしゃれをする、お化粧して
いる中に心がときめくんですね。例えばきょう、だれかに会うと。そうすると、やたら彼か彼
女、
男性は、若い人、最近やりますけれども、いずれにしても彼と会うということにしましょう。そ
うすると、服は何にして、靴は何にして、バックはあれにして帽子はあれこれといろいろ服装を
考える。髪形はどうしようか、きょうは傘を差しているか、帽子をかぶっているから髪形はこう
しなきゃならんとか、じゃ口紅はどうしようか、やれバックはどうすると。いろんなこと、いろ
んなことを考えると。実はこの間、会ったときは何を着ていったかしら、そのときは場所はどう
で、じゃきょうはレストランだからああしようとか、ビッグパレットだからこうこうこうした方
がいいとかいうことを大脳のコンピューターを過去にさかのぼってフル回転させているはずで
す。
違いますか、女性の方。大体皆さん、うなずかれた。男性は理解しないんです。私も理解してい
なかったんですよ。でも、この本を読んでこれは大変なことだというぐあいに理解しまして家内
に一生懸命やれやれと言っているんですけれども、いずれにしても、それが心のときめきを期待
して、そしてそれがうまくいったと、そういうときの喜び、工夫すると。こういうものが自分の
心を高揚させますね。つまりそのときに免疫力という目に見えない力が強化されるんです。ほか
にも感動するとか、感激するとか、あるいはやったという感じ、そういうことによっても免疫力
は強化されます。あるいは笑いもいいんですね。ですから、気がふさいでいるときは音楽を聞く
のもいい。しかし、落語のビデオをかけるということでも大笑いをするということは免疫力が増
します。こういうところに人間の可能性の豊かなものがあるということじゃないんでしょうか。
お料理もそうです。お料理のときも大体子供たちが成長してご主人が定年退職して、あるいはご
主人が先にどこかに行ってしまうと女性の方の場合は長生きするんですがぼけが始まるケースが
多いんですね。あるところでこの話をしていまして、女性が多かったんですけれども終わった後
に、「白石さん、そうだと」というんです。「私の友達が有料老人ホームに入った。入ってすぐ
行ったら、全部上げ膳据え膳でやっと料理から開放されてすばらしい。生活は快適だと言ったん
ですが、その後、6カ月後かに行ったら顔がだらっとだらけちゃった」と言うんです。つまりせ
っかく時間があってもその時間をどう使うことの準備はできていなかったんだと思います。です
から、へたをすると認知症への近道になりかねません。
したがって、もう一度出しますけれども、介護亡国、介護保険が栄えて栄えて利用者がふえて
若い人たちがその負担をすることによって、もういいやというような事態は絶対避けなければい
けないと思います。人もいなくなるわけですから、日本を、国を、県を、町を滅ぼすか滅ぼさな
いか、それはやっぱり我々の日常生活にかかってくるんじゃないでしょうか。
お金は有限です。これはどこの国でもそうですけれども、しかし、知恵は無限なんですね。
打ち出の小槌と同じように幾ら使っても使っても知恵は枯れません。豊かになります。ただし、
1人では限界があるんです。やはり大勢が寄って知恵を出し合うところに余計に一人一人の打ち
出の小槌がどんどん大きくなって豊かになっていく。ですから、ご提案ですけれども、皆さんた
ちがいろいろ知恵を出すときにはぜひ郡山の張り子細工が有名ですけれども、あれで打ち出の小
槌ができていますか。売っていますか。あったら帰りに買っていこうと思っているんですけれど
も、安積神社もあることですし、何か打ち出の小槌を名物にしたらどうですかね。それで、会議
のあるときにはみんな、打ち出の小槌を買ってそれを振りながらアイデアを出すということをや
ったら、恐らくかなりいいアイデアが出てくるかなと。これは全部ただでできますから。そこ
で、
人間の創造性、日本人は独創性が少ないと言うんですが、それはうそです。私の少なくとも体験
からいって日本人は非常に独創性豊かです。
しかし、足りないものは三つあります。それは刺激がないんです。同じ国の中でごちゃごちゃ
やっていたっていいものは出ません。それから人と人とのネットワークがないです。特に海外、
縦割りです。縦割りですからやむを得ませんね。しかし、日本人の創造性はすばらしいものがあ
ります。それを立証したのがジーン・コーエンというアメリカの先生なんですが、この方は老年
学あるいは老年医学、老年神経学の権威ですけれども、その方C=MEの二乗という公式をつく
り出したんです。これはアインシュタインの万有引力の公式ですね。Cというのはクリエーティ
ビィティー、創造力、創造性、Mというのはmass of knowledgeというのは知
識、あるいは経験の集積ですね。マスプロダクションというぐあいに大量にあるということ。そ
して、eというのはエネルギーです。よし、やろうじゃないかという皆さんの団結力、決意があ
るかどうか。それがクリエーティビティーをつくり出す源泉になるという公式なんです。ぜひこ
の公式を活用して打ち出の小槌をどんどん大きく豊かにしてほしい。つまり多様多彩な分野と
か、
年代の人たちが積極的に参加すると。そのときにすばらしい知恵が出てくる可能性が大だという
ことを申し上げたいんです。
私の尊敬する知人の谷口正和さんという人が書いた本の中に新しい価値の創造は異なる文脈の
出来事や情報が衝突して起きると言われていると。これはお手元のレジュメに書いてあります。
言いかえれば自分のジャンル、業種、業態の中だけ幾ら堀り下げても新しい価値はなかなか見え
てこないと。ですから、ユニバーサルデザインの場合に地元の地域の人たち、関係者ができる限
り多く年代も越えて参加していただくと。それがすごく大事だと。つまりすべての人のニーズと
いうものを、たとえどんなすぐれた建築家でも知るということは不可能です。ですから、多くの
人が参画をしてまちづくりを進めると。そこが大事だということを申し上げたいわけです。
そこで、特に21世紀のまちづくりのときにどうするか,ユニバーサルデザインに関係してく
るんですけれども、私はモビリティーというのを申し上げたいんです。
なぜかといいますと、人間というのは先ほどお話ししたように1人は生きられないんです。群
れで生きます。これはすべての人間がそうです。群れて生きる。群れることによって町ができて
くる、コミュニティーができてきますね。そのときには当然ですけれどもモビリティー、人が移
動してくるわけです。
もう一つ、すべての人間に共通なのは群れて生きるということと、動けば疲れるというのはだ
れでも疲れます。疲れない人はいないです。ロボットでない限り。ロボットだって動力が切れた
らだめですね。そうすると、疲れたらどうなるかというと憩いの環境をつくらなければ町になり
ません。ですから、すべての共通するような群れで生きる、それから動くと疲れるという事実が
あるとすれば、憩いの環境をつくる、町の中に憩いの環境をつくる、ここにユニバーサルデザイ
ン、つまりユニバーサルな事実に対してユニバーサルなデザインという発想もあるんだというこ
とをまず申し上げたいわけです。例えばこれが欲しいんだということになったらeメールくださ
れば添付して送ります。
次に行かせてください。まちづくりの中で今、一番深刻な問題は中心商店街の衰退です。なぜ
中心商店街は衰退するのか。特に各地で、例えばこのような赤信号があります。商店街振興組合
が破産を始めています。あるいは借金をどうして返していったらいいかという深刻な問題が出で
いる。東京都の商店街の実態調査が3年ごとに行われているのがありまして、最近のによります
と、区内23区とその周辺の市とあわせて2,781の商店街がありますけれども、そのうちう
まくいっている、繁盛していると言えるのは142カ所です。
(テープAからB)
あとはどうなのか。これぐらいシャッター商店街への赤信号が出始めている。しかし、商店街
の方がいたらお許しください。私は商店街の不振というのは町の人々にどのように、彼らのニー
ズにどうこたえているかということ、それは疑問じゃないかと思うんですね。つまり今、二つあ
りますけれども、20世紀というのはものが物がどんどんできてそれをただ中間に立って売って
いくだけでよかったと。しかし、今は消費者、コンシューマーがもはやコンシューマーからプロ
シューマー、プロのコンシューマーになってきている。今度の専門知識を持ったコンシューマー
になってきているんだということを商店街の人が本当に理解しているんだろうかというのが私の
疑問です。多くの商店街がやっているのはイベントです。しかし、イベントというのは刺激です
から一時的で必ずより強い刺激を求めるという悪循環なんです。私があることでタウンモビリテ
ィーという後ほど申し上げることの中である商店街と話をいろいろした中でイベント疲れという
現象が起きております。つまり町の商店街の人は全員でやるんではない。特定のリーダーたちだ
けがやる。やればやるほど自分たちの仕事に食い込んできている、重荷になってきていると。
こういう状況でただお金を使って有名人を呼んで目新しいことをやっていると。日本中がこのよ
うな商店街が展開したらどんなことになるのかと。私はイベントよりももっと大事なことがある
と思っております。
次はこれからのマーケットですけれども、当然ですが団塊の世代、今の団塊の世代は今の高齢
者とは全く違う新しい人種だと。65歳以上の高齢者がどのくらい県中にいるのかといいます
と、
現在、10万9,234人です。率でいくと約20%、うち75歳以上は5万1,157人で
す。
これらの人たちのニーズが本当に理解され、把握されているんだろうかと。これらの人たちはお
金は全くないんだろうかと。
一つはっきりしているニーズがあります。それは75歳以上の人に共通するニーズはモビリテ
ィーのニーズです。つまり車の運転はもうできなくなっている人が多くなります。例えば皆さ
ん、
100歳になっても私は運転できるという人はいらっしゃいますか。今までいろいろ聞きました
けれどもたった1人だけいらっしゃいました。歩行の力が落ちます。特に最後の50メートルと
いうのはかぎなんです。ここの理解がないんですね。町までのモビリティー、これはトランジッ
トモールだとか、パーク・アンド・ライドとか、ごめんなさいね、英語で。トランジットモール
というのは町の真ん中をバスだけしか通過させない、市電だけだというような考え方、それから
パーク・アンド・ライドというのは町の外でパーキングしてその後はバスに乗ってきてもらう
と、
こういういろんなのがあるんですが、町までのモビリティーはあるんですけれども町の中でのモ
ビリティー、特に最後の50メートルがないんです。
ごらんください。これからふえる人口というのは杖の人口なんです。東京にはきょうはお見せ
しませんけれども杖専門店がありまして間口がちょうどこの半分ぐらいあります。全部杖だけで
す。そういうお店が実際に新宿に出てきたんですね。杖をついています。暑い日です。広島で
す。
木陰が全くないに等しいです。汗を拭きたいと周りを見回してもどこにもベンチはありません。
水を飲みたいと思っても水もない。雨が降ってきたらどの手に傘を持ちますか。杖をついて片手
に袋をぶら下げている。雨が降ってきたらどうやって傘を差しますか。このままずっと行かない
と休むところがないはずですけれども、こういう杖をついている人が何メートル継続して歩ける
かという統計がイギリスにあるんです。統計は杖をついている人が継続して歩ける距離は一応5
0メートルと考えてくださいと言っているんです。
皆様、お考えください。皆様の住んでいらっしゃる町の商店街の長さは何メートルあります
か。
例えば300メートル、200メートルとしますと、50メートル歩くごとに立ちどまって腰を
伸ばして叩いてまた歩き出すと。そうすると、200メートルとすると端から端まで4回立ちど
まらなければいかんということですよ。しかも、荷物を持って。商店街に買い物に行ってもあっ
ちこっちになかったと。向こうにいこうと思ってもいけないじゃないですか。その町の中のモビ
リティー、最後の50メートルということをわかっていないと商店街は絶対に栄えないはずで
す、
これからこの人口がふえてくるんですから。おまけに脊椎をやられますと足のしんからがしびれ
て歩けなくなる。そういうケースがまたあるわけですね。
このモビリティーにつきましてスクーターを島根県の岩見町と桜井町という町は使っているん
ですが、スクーターを使っている人、使っていない人の行動半径の差がここに出ているんです。
使っている人は4キロメートルと3.5キロ、歩いている人は1.5キロです。田舎の町ですか
ら足は健脚家なはずですよ。赤い点というのは、実は自分の自宅を中心としてどういうところに
行っているかということを点々と図で示しているんですが、Aさんは20カ所行っています。
Bさんは11カ所、Cさんは農協とプラザ、つまり買い物と銀行しか行っていないんです。
社会との接点がこれだけ大きな違いが出てくるということでこの町ではスクーターの購入を補助
してスクーターを利用しなさいということを言っているんですね。
タウンモビリティーというシステムがあります。これは私がイギリスから持ってきたんですけ
れども、これは足の弱い人が乗るものだという印象が大きくなったんですが、実は違っておりま
して時間の節約プログラムです。節約していかに効率よく使うかということですから、若い方だ
って例えば大きな荷物を持ったら、例えばお米を買った、肥料を買ったらどうやって持っていき
ますか。スクーターであれば下においても歩けるわけですね。したがって、すべての人にとって
時間を節約できる、うまく使うことができるというプログラムなんです。しかも楽々と。
時速は最高6キロ、普通は4キロから二、三キロですね。ですから、早足で町の中を一生懸命歩
いてもスクーターですから全然疲れないと。これは免許要りません。バーテリーで動きます。こ
ういうのはこれはダイエーさんが自社用に開発した立ち乗りのスクーターです。足が悪くなくて
もこれくらい重量級になりますとのしのしと歩くわけですから長距離を歩くのは大変ですね。で
すから、このようにしっかりした四輪のスクーターを借りて買い物に行くわけです。こういう人
は結構いるはずです。この人は買うだけ買ったと。これだけ買ったらどうやって持っていきます
か、スクーターがなかったら持っていけませんよね。これは人間サイズしていますけれども町の
中のウインドーショッピングです。本人はいないんですね。つまりいいものがあったということ
で立って中に歩いていって見ているというぐあいにベンチつきの移動システムです。ですから、
広島で実験をやったときに一番は最初に使った人の1人は展覧会です。写真展に行って見ている
んですね。静かで音がしないと。どこで休んでもベンチは自分が持って歩いていると。バッテリ
ーですから音もしないと。空気も汚さないと。こういうことでいろんな用途があるわけです。
そして、現在、日本でも今、38カ所くらいあるんですけれども、その中でどういう使い方が
されているかという先進的な図は先ほどのようにつながりをつくる、たまり場になっているとい
うことです。そこに行くと血のつながりは薄れますけれども社会とのつながりがふえてくると。
そして、そこでは町の駅という表現をとっていますけれどもそこに行ってお茶を飲むこともでき
る、お菓子をつまむこともできるし、だれかもいるんだと。いろんな相談も扱ってくれるし、そ
して、商店街と町とをつなぐ役割ということも果たしております。
その例を幾つかお見せしますけれども、これは山口県です。それでここにスクーターがあって
入ってきますと、入口から入りますと右側にテーブルがあってそれを囲んで人がいると。奥にト
イレも見えますね。どうぞ使ってくださいということで。これがちょっと中に入っていきますと
このとおりですね。男の人もいれば女性もいるし、ボランティアの人、お店の人が話している。
入ってみますと、男性、これは次の日ですけれども家にいるようにお茶を飲んでお菓子をつまみ
ながら話をしている。奥さんたちは3人いますけれどもそれぞれ何か一生懸命つくっているとい
うことですね。おもしろいものが一つあるんですね。それはここにこういう仕切りがあるんで
す。
仕切りの中に何があるかといいますと、保健婦さんが毎日来て血圧測定、それから栄養相談をや
っているんです。これは次に待っている人です。奥には体重計もありますでしょう。ですから、
プライバシーを保護するためにこのような形があって毎日10人以上の利用が進んでいるんです
ね。その中にいろんな話が出てくる。こういうのがあると多分振り込み詐欺も起きないですね。
これが町のギャラリーということで95歳の男性、井上さんが自分が撮ってきた写真を展示して
いる。あるいはこちらにいきますと、世界を知るということで同じくギャラリーになって、それ
から壁の下には畳み敷きの縁台になって綿の薄い布団があると。縁台の涼み台、ここには桐のた
んすがあって人形もあると。本はだれでも持っていってもいいというような仕組みになって、さ
らに桐のたんすのわきにわらじまで掛けてある。つまり昔の雰囲気がここにあるわけで入ってく
ると落ち着くということになりますね。そして、毎月のここでやっている講座の作品集がここに
あるわけです。これは販売もしているんです。そうすると、子供、孫を連れてくる。友達も連れ
てきていいわということで買ったり、励みになっていると。こういう展示の場でもあるわけで
す。
したがって、こういうのが町の中に広まってくるということがすごく大事なわけですけれど
も、
最後に心のユニバーサルデザインというところで終わりにしたいと思っているんですが、先ほど
もお話ししましたように、これからのユニバーサルデザインというのは使い手が中心にならなけ
ればいけない。そうすると、使い手のニーズというもの、心というものをどう知るかといいます
と、そのニーズを一番知っているのはだれかといいますと、高齢者のために、あるいは高齢者と
一緒に仕事をしている人たち、その二つの団体が実は大きな会議を開きます。世界高齢者団体連
盟IFAというんですけれども、これが来年、コペンハーゲンでやりますが第8回です。このエ
クスポというもの、万博、それを国連とWHOのサポートを得て2008年の5月にやるわけで
すけれども、ここではデザイナー、デザインをする人と高齢者の実態をよく知っている人たちと
が協力して新しいいいデザインをもっとつくっていこうということです。
この団体が実は1999年にモントリオールに会議をやったときに私がユニバーサルデザイン
の企画をしたんですが、そのときの会長が私の親しい人で、彼は実は私にも秘密のことを一つ用
意してくれたんですね。それは行ってプログラムをあけましたら大会に1,800人集まったん
ですがその大会の一番最初の基調演説がユニバーサルデザインだったんです。これは世界初で
す。
そして、そのとき10の分科会をしたんですが、それ以降、この団体がすべてユニバーサルデザ
インを大会の大きなテーマとしております。私もそのプログラムミングをやっているということ
です。
高齢者や障害ということだけから発想するようでは心のユニバーサルデザインにはなりませ
ん。
すべての人に共通する何かから発想することが大事だということで例をお見せしたいんですが、
ちょっと時間も過ぎてしまいましたが、これはカナダのオンタリオ州政府がつくったモデルハウ
スのバスルーム、トイレと洗面が一緒になったところです。非常にきれいなワイン色とブルーで
す。しかし、これは子供から大人まですべての人にとってこういう色を使っちゃいけない色を実
は使っています。なぜか、おわかりですか、どなたか。多分おわかりですね。時間がないから言
いますね。これはもし血尿が出たらどうしますか。見えませんでしょう。ですから、絶対使っち
ゃいけないんです。ところが、カナダなんかの先進国でさえこういうことをやっているんです。
したがって、生活全体、人間の生活とは何か、健康とは何かということを知っているとこういう
ことにはならんということです。
デザインの力を見ていただきたいと思うんですが、これはイギリスの低床バスです。日本と違
います。ここで今、白いヤッケの人がバスの中に車いすに乗って押し入れられようとしているん
ですが、2枚目でガラッと違うんです。ごらんのとおり、自分で手をかけて自分の力で入ろうと
しているじゃないですか。後ろにいる人はお尻を出していますでしょう。押す体制じゃないんで
すよ。黙ってみている。これはすばらしいことですね。日本だったら必ず押します。なぜ彼女は
態度を変えたのか、それがデザインなんです。これがバスですね。ステップが出てきていますけ
れども地面の上にステップが出てきています。ここにボールペンが置いてありますが、このボー
ルペンが実は私がここに置いておったんです。長さは14センチメートルです。ここまでバスが
下がってきてくれたからこれならば行けそうだと本人が思った、これが第1点です。2番目、手
すりのデザインが違うはずです、日本にあるのとは。逆L字型になっています。ですから、小さ
な人でも車いすの人でも手が出せます。したがって、すっと手が出たわけです。これは別に考え
ずに。色がオレンジ色ではっきりしています。細いですね。そして、入っていく道がすっと車い
すでも抵抗なく入っていける。だから、やろうという気が起きたんですよ。それがデザインの力
なんです。つまりすぐれたデザインというのは人間の心の奥底深くに眠っている本来の力を呼び
覚ますんです。人間はすべて自立という意識を強く持っています。でも、それは普段は氷面下、
氷の下に、海の下に眠っているんですけれどもデザインがそれを呼び覚ます。だから、やったと
いう達成感、それが次の挑戦につながるんです。ユニバーサルデザインと言いませんけれどもデ
ザインの持っている大きな力というのはここにあるんです。
そこで、心のユニバーサルデザインのまちづくりをするときには、やっぱり深層意識、人間の
表に出てきていないところ、例えば音楽とか香りとか味覚、それに注目する必要がある。特に私
はコーラス、あれをぜひ生かしてほしい。例えば80歳のコーラス、90歳のコーラス、100
歳のコーラスがあるんですよと。郡山に来たら駅で皆さんやっているから一緒に歌ってください
と。こういうことがあったらほかのところはできないじゃないですか。私も来ますからぜひそう
いうふうにやってほしいなと思うんですよ。
それからこれは福山、先ほど申し上げませんでしたけれども、広島県の福山の町はバラ100
万本のまちづくりをしています。このバラを毎年、バラのグッズをコンテストを選んでいるんで
す。ですから、町の花がまちおこしになってそれが人を呼ぶというよい循環ができている。町の
花である以上、やはり町の産業と町の未来に役に立つというような花を私は選んでほしいし、そ
れは20世紀は今のハナカツミでいいと。だけど、21世紀はもっとすばらしいものに変えたら
いかがかなと思うんです。
このように人間の目に見えないもの、特に感性というものを豊かにする町というのはこれから
大きく人を呼び込めると思います。子育て日本一の町なんですよというようなことが言える時代
に持っていくべきじゃないか。
例えばこれは茨城県の商店街に私が提案したんですけれども、絵本のまちづくりを提案してい
ます。これは空き店舗に絵本を集めようと、早く言うと図書館をつくろうと。ただし、これはリ
サイクルですから家の中に眠っている昔の絵本を集めましょう。そこに子供と学生、筑波大学が
絡んでいます。親と高齢者と4世代の交流のプログラムにできると。そこには高齢者も来て質問
があった場合に高齢者の知恵で答えてもらうというようなこともできるわけですし、高齢者もど
うしても長い人生の中でだんだん薄れていった感性を取り戻す力を絵本というものは持っていま
す。私も今、これ以来、絵本にはまっているんですね。一生懸命絵本を読んでいます。感動しま
す。子供たちに読んでやりながら自分も読んでもらったということを回想する。そういう中で高
齢者自身も元気になっていく。ですから、それは高齢者のプログラムでもあるわけですね。ここ
では民間と市民と大学と商業と公とが連携している。こういう子供を育てるには日本一の福の県
なんだと、あるいは山なんだと、あるいは三春だとか、こういうことを訴えていけるような町に
するべきじゃないか。
最後に、今までは人に優しい。これはハードの整備ですので不可欠です。しかし、これからは
人が優しくならないといけないということです。ハードはどうしても限界があります。それはや
っぱりお互いに思いやり、そして助け合って生きていくと。それが実は地域力というのは人なん
ですね、源泉は。ですから、人が磁石となってどんどん福を打ち出してそれをまた呼び込むと、
こういう美しいうつくしまの福の島であってほしいなということを祈念して、ちょっと時間をオ
ーバーしてすみません。終わらせていただきます。皆さんもぜひ素敵な美しい、人の心も美しい
福島をつくってください。楽しみにしております。ありがとうございました。