タイムスケジュール - 日本口腔顎顔面技工研究会

タイムスケジュール
9:00~
受付開始(ホール)
9:30~
開会式
9:40~
協力口演
会長挨拶,大会長挨拶
座長: 山口能正(佐賀大学)
「日本人の下顎骨形態:その変遷と問題点」
(大会長推薦)
重松正仁 (佐賀大学医学部歯科口腔外科学講座) ・・・・・・・・・・・・14
9:56~
一般口演
Ⅰ
座長: 田光 創(近畿大学)
1.
「CP 患児のジストニアによる口唇口傷への口唇プロテクター製作経験」
陶山日出美 (久留米大学医学部歯科口腔医療センター) ・・・・・・・・・15
2.「サイバーナイフのための舌固定を目的とした口腔内装置の試作」
早川浩生 (横浜市立大学附属病院 歯科・口腔外科 技工室) ・・・・・・・16
3.「久留米大学病院歯科口腔医療センターでの顎骨骨折に使用するシーネの製作方法」
原 福子 (久留米大学医学部歯科口腔医療センター) ・・・・・・・・・・17
4.
「無歯顎の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する吸着義歯型口腔内装置の一治験例」
伊佐次厚司(愛知医科大学病院歯科口腔外科技工室) ・・・・・・・・・・・18
10:48~
休憩
10:58~
特別講演
Ⅰ
座長: 山口能正(佐賀大学)
テーマ:
講師:
12:15~
「顎顔面補綴治療における歯科技工士の役割」
後藤昌昭 先生(佐賀大学医学部歯科口腔外科学講座教授)
・・・・・・・・11
昼食,総会
弁当予約を行った方は,1階小講堂にて弁当引き換え券をもってお受け取り下さい.
弁当での食事は,大講堂会場もしくは小講堂でお願い致します.
1
13:15~
宿題講演
座長: 西川圭吾(北海道大学)
テーマ:
講師:
14:25~
「口腔外科における三次元実体モデルの活用」
畠中利英 先生(奈良県立医科大学附属病院口腔外科技工室) ・・・・・・・・13
一般口演
Ⅱ
座長: 早川浩生(横浜市立大学)
5.
「医学生に対する臨床実習への歯科技工士の参画」
森 正文 (兵庫医科大学病院 歯科口腔外科) ・・・・・・・・・・・・・19
6.「ウレタンゲルを用いた創部保護装置の開発」
森下裕司(愛知医科大学病院歯科・口腔外科) ・・・・・・・・・・・・・・20
7.
「エピテーゼ彩色におけるエアブラシテクニックの応用」
西川圭吾(北海道大学病院
15:05~
一般口演
歯科診療センター生体技工部) ・・・・・・・・21
Ⅲ
座長: 田中清志(秋田大学)
8.「トリートメントコーディネーターが関って治療を進めた症例」
(会長推薦)
徳永恵美子 (フリーランス・熊本県歯科技工士会) ・・・・・・・・・・・22
9.「即時負荷インプラントにおけるガム付プロビジョナルレストレーション作製の工夫」
庄野紀代美 (金沢医科大学病院・医療技術部) ・・・・・・・・・・・・・23
10.「上顎臼歯部へのインプラント術式選択法の確立」
園山
潤 (島根大学医学部歯科口腔外科学講座) ・・・・・・・・・・・・24
15:44~
休憩
16:01~
特別講演
Ⅱ
座長: 山口能正(佐賀大学)
テーマ:
講師:
「重力と咬合
-重力に支配されている身体-」
笠茂享久 先生(笠茂歯科医院
17:46~
次大会のご案内
17:56~
閉会式
19:10~
懇親会
生体構造調律研究所)
ホテルマリターレ創世
2
・・・・・・・・・・12
・・・・・・・・・・・・・3
特別講演
Ⅰ
顎顔面補綴治療における歯科技工士の役割
佐賀大学医学部歯科口腔外科学講座
教授
後藤昌昭(ゴトウマサアキ)
1980 年代に,顎骨と直接結合するチタン製のデンタルインプラントが我が国へも紹介され,
通常の歯牙欠損症例に応用されるようになった.佐賀医科大学歯科口腔外科では,1988 年から
デンタルインプラントを口腔外科疾患患者の術後機能の回復に応用している.オッセオインテグ
レイテイッドインプラントは,顎骨切除症例の顎義歯の固定源として十分に使用できるものの,
過去 10 年間の間には,種々の問題も経験している.これまでにインプラントを用いて咬合機能
の回復を行った自験例を検討し,臨床上の問題と原因,対応について報告する.
口腔外科疾患を有する患者では,病巣を切除した後に骨移植や各種の皮弁を使った再建を行い,
移植骨や残存顎骨へオッセオインテグレイテイッドインプラントを植立する.骨移植の方法,イ
ンプラントの埋入時期口腔外科疾患の種類,患者の状態などによって選択すべきである.しかし
いずれの方法であれ,骨移植が良好な経過であれば,移植骨に埋入したインプラントの成績も良
好であった.
インプラントを顎骨再建に使用する場合には,対合歯とのクリアランスが必要であるため,あ
まり高い顎堤は望ましくない.また下顎骨は下縁が外側に張り出しているために,再建時の移植
骨はややもすると頬側あるいは唇側に位置する傾向があり,下顎のインプラントは上顎歯列より
も外側に位置しやすい.かといって,移植骨を内側に位置させると顔貌形態に問題が生じる.こ
れらの問題を解決するために,光造形法による頭蓋顔面骨模型やコンピュータグラフィックスを
使った手術シミュレーションを行い,最適の位置に骨移植とインプラントを埋入するようにして
いる.
インプラントを併用した顎顔面補綴治療においては,外科手術前からの口腔外科医と技工士と
の綿密な連携が重要である.
略
歴:
1977 年 九州大学歯学部卒業
1981 年 佐賀医科大学歯科口腔外科助手
1983 年 佐賀医科大学歯科口腔外科講師
1987 年 佐賀医科大学歯科口腔外科助教授
2000 年 佐賀大学医学部歯科口腔外科教授
現在に至る
3
特別講演
Ⅱ
重力と咬合
―重力に支配されている身体―
笠茂歯科医院 生体構造調律研究所
歯学博士 笠茂享久(カサモタカヒサ)
地球上に存在する物は地球の重力に逆らって存在している.そして,人工物も含め,全てのも
のは重力に最小限の対応で存在しようと進化してきた.
私たち人間も例外ではない.健康で過ごせるということは重力に最小限の力で対応できている
ということに他ならない.四足動物を例にとると4本の足が均等に大地についているために体全
体は重力に対して安定している.しかし,何らかの原因で足のバランスが取れなくなりそれが続
いてしまうと野生動物であれば地球上に存在できないことになる.
私たち人間は唯一完全直立二足歩行できる動物である.この為,手を自由に使うことが出来る
ようになり,大きな脳を獲得し高い知能を得ることが出来たと言われている.しかし,全体重を
小さな2つの足底で分散させなければならなくなり,地球上に存在するには非常に不安定になっ
た.この為,敏感な姿勢維持機構を発達させてきた.
口と腸しか持たなかった腔腸動物から進化したと言われている私たちの身体の成り立ちから
考えると,口腔は最も原始的な器官と言える.口から肛門までの消化器官の入り口である口腔は
発生学から見ても生命維持の根幹である内臓と密接な関係にある.生命維持にとって欠かせない
ものは栄養摂取と呼吸である.この二つは消化管の基である原腸から発生した.当然ながら,栄
養摂取は口腔から行われる.呼吸は鼻から行われるがこれも,もともと口腔から発生したもので
ある.つまり生命維持にとって欠くべからざるこの二つは,口腔から始まると言うことである.
口腔は咀嚼器官として働くために歯牙を持っている.この歯牙は体の中で唯一外に飛び出した骨
格である.骨格であるということは姿勢維持機構に組み込まれた器官であると言える.
今回は,これらのことを踏まえ運動器としての身体と重力の関係.特に私たちが管理する顎顔
面の身体における位置づけと重要性.そして,咀嚼器官の最も重要な要素である咬合と重力との
関係について生物学的,力学的に解説する.
略
歴:
1956 年 北海道生まれ
1984 年 日本大学歯学部大学院卒業
1989 年 笠茂歯科医院開業
1999 年 生体構造調律研究所併設
現
著
在 笠茂歯科医院院長 生体構造調律研究所所長
書:
「歯はいのち!」文藝春秋社
歯医者さんが書いた歯とカラダの本」オオクラ出版
4
宿題講演
口腔外科における三次元実体モデルの活用
奈良県立医科大学附属病院 医療技術センター
口腔外科技工室
畠中利英(ハタナカトシヒデ)
近年,歯科領域におけるデジタル技術の進歩に伴い CAD/CAM システムによる充填物や補綴物
の設計および加工が注目されるようになってきている.一方,口腔外科ではラピッドプロトタイ
ピング技術による光造形三次元実体モデルが 1990 年代から注目され,疾患の診断や治療に活用
されてきた.続いて,3D プリンターのよる石膏系三次元実体モデルが普及し,さらに画像等手
術支援加算という形で三次元実体モデルの活用が保険導入されたこともあり,この技術は今後よ
り多くの活用が予想される.また,三次元実体モデルの普及は,頭頸部領域の術前シミュレーシ
ョンを含め手術支援等において歯科技工士が関与する新しい分野に繋がると期待される.
当科では 1994 年より,下顎骨区域切除術に伴う顎骨再建や顎変形症における顎矯正手術を中
心として光造形三次元実体モデルを用いた術前モデルサージェリーにより計画的手術を行って
きた.2008 年からは造形コストや造形速度を考え 3D プリンターによる石膏系実体モデルを CT
データ編集から造型までを院内で行い活用している.
今回,これまでの三次元実体モデル活用経験から,血管柄付き遊離腓骨皮弁移植による下顎骨
の再建を中心として審美的かつ機能的再建を考慮した当科での術前シミュレーションの方法を
紹介するとともに,シミュレーションを実際の手術に効果的に反映させるサージカルガイドの作
製と役割を示し,この技術の有用性を提示する.また今後,審美的で機能的な再建に加えて再建
後の強度をも考慮した最適な手術をシミュレートできる方法,またシミュレーションからナビゲ
ーションにつなげるための三次元実体モデルの活用法から,より正確で手術時間の短縮に繋がる
方法についての検討を示していきたい.
ラピッドプロトタイピング技術は口腔外科に関連した技工に変化をもたらし,口腔外科技工士
としての能力を発揮できる新たな分野になると考えられる.そこで,病院で働く歯科技工士とし
て存在意義を高めるため今後必要になってくると思われる役割や新たな可能性について,皆様と
共に意見交換できれば幸いである.
略
歴:
1982 年 大阪歯科大学歯科技工士専門学校 本科卒業
1983 年 大阪歯科大学歯科技工士専門学校 専攻科修了
1983 年 香川医科大学附属病院 歯科口腔外科
技官
1984 年 奈良県立医科大学附属病院 口腔外科
技師
2011 年 奈良県立医科大学附属病院 医療技術センター
現在に至る
5
係長
協力口演
日本人の下顎骨形態:その変遷と問題点
1)佐賀大学医学部歯科口腔外科学講座
2)北里大学医学部解剖学研究室
○重松正仁 1),山下佳雄 1),後藤昌昭 1),埴原恒彦 2)
下顎骨の形態を規定する要因については,食性を含む生業形態,環境,遺伝など様々な因子が
考えられる.本研究では,下顎形態の規定因子をより具体的に検討するため,現生人類集団(世
界 16 主要地域 123 集団,約 5000 個体の下顎計測値 7 項目)について,形態的変異・多様性を
分析し,その自然的・文化的背景を考察した.さらに,日本列島における縄文時代から現代まで
の経時的変化についても調査・分析し,生業・生活形態との関連について検討した.
現代日本人の下顎骨形態は世界的に見ると,平均的な大きさと形を示す.一方,縄文時代人は
現代日本人よりも,下顎枝幅が大きく,下顎角が発達するなど,咀嚼筋の発達を示唆する形態的
特徴が認められ,さらに,歯槽骨は厚く,discrepancy は顕著ではないといった特徴を示す.一
方,農耕文化の担い手と考えられる渡来系弥生集団には,縄文時代人ほど頑丈な下顎形態の特徴
は認められず,以後,時代が下るに従って,形態の華奢化が認められた.
江戸時代における江戸庶民と武士階級との比較からは,下顎骨にもその形態に「貴族形質」
(華
奢化,矮小化)が認められ,一部の貴族集団には現代日本人の形質をさらに近代化させた超現代
化的な形質も認められた.ごく最近,これらの形態的特徴と睡眠時無呼吸症候群との関連が指摘
されており,下顎骨の華奢化は,現代人の軟食嗜好だけではなく,小顔ブームもその原因のひと
つと考えられる.
6
一般口演1
CP 患児のジストニアによる口唇口傷への口唇プロテクター製作経験
久留米大学医学部 歯科口腔医療センター
○陶山日出美,原 福子
≪緒言≫
厚生省脳性麻痺研究班では「受胎から新生児までの間に生じた脳の非進行性病変に基づく,永
続的な,しかし変化し得る運動,および姿勢の異常である.その症状は満2歳までに発現する.
進行性疾患や一過性運動障害,または将来正常化するであろうと思われる運動発達遅延は除外す
る」と定義され,原因は多岐にわたり,多方面からの総合的援助,療育が必要とされている.
今回 脳性麻痺患児(cerebral palsy:CP)への口唇口傷へのプロテクターを製作する機会を得た
が,不随意運動を伴い,印象採得など極めて困難な症例であった.口傷の原因となる歯牙を覆う
装置も歯冠部が小さいため脱離しやすく Castillo-Morales plate も有効な結果を得ることができ
なかった.そのため,新たな装置が求められ,口唇自体を覆う装置で対応し親族の満足をえられ
たのでその概要を報告する.
≪症例と経過≫
患児は 4 歳女児で傷病名は舌,口唇口傷.主訴は舌および口唇の口傷と治療とその防止.既往
は出生時に新生児仮死があり,その後けいれんとてんかんをみとめた.2 歳 3 カ月より頻度,持
続時間ともに増悪傾向を認めけいれんのコントロールのため某大学小児科にて治療をうけてい
た.けいれん時に舌や口唇を咬み,出血を繰り返し,潰瘍も形成したため某歯科大学歯学部小児
歯科紹介となる.転居に伴い,2010 年 2 月,当センター受診となった.
当初,口傷の原因となる歯牙を 2.0mm のエチレンビニルアセテートシート
(以下 AVE という)
で 覆 う 装 置で 対 応し た が ,乳 歯 の ため 脱 離 しや す く 目的 を は たせ な か った . そ のた め,
Castillo-Morales plate を試みたが,長時間の使用には不向きであった.その後,口唇自体を AVE
で覆い,テープで頬部に固定し新たな口傷受傷はなくなった
≪結果≫
口唇を覆う装置で親族の満足をえられ,患児の症状は軽減された.のちにジストニアの診断が
確定し,薬物療法で症状は改善された.
7
一般口演2
サイバーナイフのための舌固定を目的とした口腔内装置の試作
横浜市立大学附属病院歯科・口腔外科技工室
○早川浩生
≪緒言≫
脳神経外科および頭頸部領域に於いて,CT・MRI などから得られる3次元画像情報とロボッ
ト技術とを利用して精密な放射線照射を行うサイバーナイフが注目されている.患者の動きに対
応したピンポイント照射を行うために,身体の動きを検出して適正位置に照射する事を目的に開
発された放射線治療装置であり,コンピューター制御の多関節工業用ロボットとリニアック装置
(直線加速器)とを組み合わせた“病変追尾システム”によって任意の位置・方向から照射することが
出来るものである.
今回我々は併診により 5 症例の顎顔面口腔領域の腫瘍に対する照射にあたり,不用意な舌に対
する照射を避けるために舌背の固定を目的とした口腔内装置を試作し,臨床応用したのでその概
要を報告する.
≪材料と方法≫
PET( ポ リ エ チ レ ン テ レ フ タ レ ー ト ) 製 の 熱 可 塑 性 樹 脂 シ ー ト ( 商 品 名 Erkodur®- 独
ERKODENT 社.
スマートプラクティスジャパン輸入)の厚さ 1.0 ㎜のものを上顎石膏模型上に成
型し,舌背の陰型の形態にパテ状技工用シリコーンで盛り上げ,さらに上から同様の熱可塑性樹
脂シートを加圧成型した.技工用シリコーンを取り除き,2枚を常温重合レジンで封鎖し中空体
とし軽量化を図った.
≪結果≫
試作した口腔内装置は,随意または不随意に運動する舌を照射野より排除または固定すること
に有用であった.
8
一般口演3
久留米大学病院歯科口腔医療センターでの顎骨骨折に使用するシーネの
製作方法
久留米大学医学部歯科口腔医療センター
○原
福子,陶山日出美
≪緒言≫
顎骨骨折は顔面下部の変形をもたらすだけでなく咀嚼機能に障害をきたす.顎骨の骨折は外傷
によるものが多く,近年は交通事故による受傷が多数をしめる.治療処置は顎骨の接合とともに
咬合の正しい回復が求められる.
その治療方法は観血的法,非観血的法があり口腔外科技工では非観血的手法となるシーネの製
作になる.今回,当センターで使用しているシーネの製作方法と臨床症例を報告する.
当センターでは過去より市販されているシュハルトシーネ(三金社製)にフックをろう着し使
用している.市販のシュハルトシーネはニッケル 99.0%以上でそのろう着は難しいために,32
年前より,シーネ自体を重ねて仮固定し,ろう着している.ろう着後に通法により歯列にあわせ
屈曲し,口腔内にセットされる.
≪方法と症例≫
市販のシュハルトシーネはニッケル 99.0%以上であるため,仮着機でのスポット溶接が困難で
ある.そのため,2 本のシュハルトシーネを向き合わせ,5mm 間隔にずらせて,仮固定を行う.
その後,銀ろうを用いてブローパイプでろう着を行う.ろう着後,2 本の中間部位を切断する.
市販のシーネのフックは 7 本であるが,ろう着により,14 本のフックがあるシーネが 2 本でき
る.その後希硫酸にて洗浄,研磨し模型にあわせ屈曲し完成となる.
臨床症例の患者は 34 歳女性,2010 年 11 月,交通事故による頤部裂傷,上下顎骨の開放骨折.
徒手による整復後,シュハルトシーネをセットされた.
≪まとめ≫
市販のシュハルトシーネはニッケル 99.0%のため柔軟であるので屈曲は容易である.しかし,
フックの間隔が広く,個々の歯牙結さつには充分ではない.そのため,当センターではフックを
増設し間隔をせばめ,シーネ自体のその固定を強めている.
畠中は,顎骨骨折は様々な症例があり,線副子や床副子を単独で用いる場合だけでなく,それ
ぞれを組み合わせて用いる場合もある.歯科医師との連絡とコミュニュケーションを密にし,そ
れぞれの患者に細かく対応した技工物製作をすると述べている.今後,症例を経験しその対応を
していきたい.
9
一般口演4
無歯顎の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する吸着義歯型口腔内装置の
一治験例
愛知医科大学病院 歯科口腔外科技工室
○伊佐次厚司
≪目的≫
本邦における口腔内装置(oral appliance ; OA)の適応外症例に無歯顎者が含まれる.日常臨
床で,無歯顎者の中には nasal continuous positive airway pressure (NCPAP)の使用も困難な場
合があり,このような場合には治療方法の選択肢は少ない.今回,無歯顎の閉塞性睡眠時無呼吸
症候群(OSAS)患者に対して吸着義歯型 OA により改善傾向を認めたので報告する.
≪対象および方法≫
症例は 53 歳女性.睡眠中のいびきと熟眠感の欠如を主訴に愛知医科大学病院 睡眠科・睡眠
医療センターを受診.NCPAP を試みるも継続的に使用できないため,当歯科口腔外科を紹介さ
れ受診した.初診時の Epworth Sleepiness Scale (ESS)は 8 点,AHI=22.4/h,Min SpO2=79%,
Arousal index=18.5/h,夜間中途覚醒回数 2 回であった.このため,Biofunctional Prosthetic
System (BPS®)を応用した吸着義歯型 OA を前方位 3 ㎜で作成し,その治療前後での睡眠ポリグ
ラフ検査(PSG)による諸指標の比較を行った.
≪結果≫
吸着義歯型 OA を装着したあとの PSG では AHI=14.7/h,Min SpO2=84%,Arousal index=
14.1/h であり,治療後の AHI で 34.3%の改善を認めた.
≪結論≫
本症例における改善率は 34.3%と決して高くはなかったが,理論的には,より十分な下顎前方
移動量を確保できれば,BPS®を応用した吸着義歯型 OA は無歯顎の OSAS 患者の有効な治療法
となりうる.
10
一般口演 5
医学生に対する臨床実習への歯科技工士の参画
兵庫医科大学歯科口腔外科技工室
○森 正文
一般に医学生の教育は 1 年次を中心に教養教育が行われ,2~4 年次において専門教育(基礎・
臨床),そして 5~6 年次には臨床実習が組み入れられている.兵庫医科大学も同様の医学教育が
行われているが,臨床実習としては内科,外科では診療参加型臨床実習,クリニカルクラークシ
ップと,その他の科では見学型臨床実習,ポリクリが併用されている.
当科である歯科口腔外科はポリクリを担当し,主な授業内容は外来・手術見学,症例検討,講
義である.このうち歯科技工士である私が担当しているのは外来見学に付帯した歯科技工見学で
あり,授業では歯科技工士の仕事の紹介と各種技工物の説明などを行っている.また授業終了後
学生の評価も行っている.
今回医学生に対するポリクリの一翼を歯科技工士として参画し,貴重な機会を得ることができ
たので報告する.
11
一般口演 6
ウレタンゲルを用いた創部保護装置の開発
愛知医科大学病院 歯科口腔外科
○森下裕司
≪緒言≫
ウレタンゲルは柔軟・弾性・耐久性を備えた超軟質のエラストマーゲル状物質であり,エネル
ギー吸収性に極めて優れているため,電気,機械,精密機器,医療,介護,スポーツなどの衝撃
吸収材,防振材,緩衝材など幅広い用途に使用されている.今回,我々はウレタンゲルの持つ高
い緩衝性,衝撃吸収性能,自己粘着性に着目し,小耳症耳介形成術の術後保護装具を開発し,一
定の効果を得たので報告する.
≪目的≫
小耳症は耳介の先天異常の一型で耳介の大半の欠損と外耳道閉鎖,中耳の低形成を伴う先天異
常の一つである.出生 12,500 に 1 例という報告があり,比較的多い疾患である.患児は整容的
問題だけではなく,マスクや眼鏡をかけるという機能面での障害を伴い,頻回の耳介形成術が必
要である.耳介形成術の基本型は,側頭部に作製した極薄の皮弁下に形状保持を目的に正常耳介
の形状を模した自家肋軟骨製フレームを埋入させ,数ヶ月後に耳起し術として側頭面より切り離
し全層植皮を行うものである.手術時期は肋軟骨の熟成度,採取可能なボリュームを考慮して,
8~10 歳に行われる.術後は創部の安定を図るため,創部は包帯やスポンジ等によって保護し,
運動や生活に制限を強いることがある.今回,エクシール社製ウレタンゲル素材・透明タイプを
用い,創部保護と積極的な運動参加を目的とした.
≪結果≫
ウレタンゲルの持つ自己粘着性は水洗によって容易に回復することができ,衛生的に保つこと
ができた.そのため装着に保護者や介助者を必要とせず,学童でも容易に装着することができる.
剣道での打撃防御やラグビーのスクラムなどの衝撃吸収に効果があり,耳介形成術術後の学童期
や青年期の運動を制限することがなく,学校でのクラブ活動や試合参加が可能となった.またラ
グビー協会によるヘッドギア規定に違反することもなく体外試合にも参加可能となった.
12
一般口演7
エピテーゼ彩色におけるエアブラシテクニックの応用
1)北海道大学病院生体技工部
2)北海道大学大学院歯学研究科口腔機能学講座リハビリ補綴学教室
○西川圭吾 1),上田康夫 2),輪島克司 1),高木敏彦 1)
阪野
充 1),道田智宏 1),大畑 昇 2),大澤
孝 1)
≪緒言≫
北大生体技工部におけるエピテーゼの製作は開始してから7年が経過した.当初の耳介エピテ
ーゼの製作から,現在の眼窩エピテーゼ製作に至るまで本研究会において製作方法の工夫に関す
る発表を続けてきた.今回はエピテーゼ製作当初より演者らが苦労し続けているエピテーゼの着
色方法について,エアブラシを使用した着色方法について臨床ケースを交えて報告したい.
≪目的≫
エピテーゼ製作工程における外部彩色方法の難しさを軽減する.
≪方法≫
臨床ケースにおいての眼窩エピテーゼ製作工程での筆による外部彩色方法とエアブラシ導入
による外部彩色方法を比較検討する.臨床写真を彩色の参考としたエアブラシテクニックと臨床
使用での注意点,工夫について考察する.
≪結果≫
外部彩色は筆による方法を実践してきた演者らにとってエピテーゼの完成度にムラがあるこ
とが問題点であった.今回エアブラシを導入したことで,エピテーゼの完成度を標準化すること
ができた.今後はエアブラシ使用時のマニュアルを製作して外部彩色方法の標準化を図っていき
たい.
≪考察≫
外部彩色はエアブラシによる方法が筆による方法のように熟練を必要とせず,満足できる眼窩
エピテーゼを製作することができた.
13
一般口演8
トリートメントコーディネーターが関わって治療を進めた症例
フリーランス・熊本県歯科技工士会
○德永恵美子
≪緒言≫
私は,歯科技工士であり,TC(トーリートメントコーディネーター)の認定を持ち,その TC
業務内容を紹介し,TC が携わる事で患者さんにどのような歯科治療を進めることができるのか
紹介する.
≪症例≫
今回の症例は,初診時カウンセリングを行った際,自虐行為を行う若い女性で,歯科治療に恐
怖心を抱きながらも歯科治療をしたいと切望し,精神科に併設されている歯科ではなく,個人歯
科医院で治療する事を切望し,当院を来院した.
≪結果≫
患者さんのさまざまな切望に傾聴しながら TC が関わる事で,この患者さんの心の状態,体の
状態を把握し,かかりつけ医との連携を綿密にし,ご家族の協力のもと,治療スタッフと歯科治
療を行った.
≪考察≫
TC 業務の一つである “初診時カウンセリング”は,患者さんの真の悩みや歯科治療で何を求め
ているか,また最終的にはどのようになりたいのかを聴く事により患者さんの背景を知る入り口
であり,大変重要な作業であると考える.
≪結論≫
TC は,患者さんの信頼の基に情報を共有し,診療室に伝える架け橋であり,患者さん側と診
療室側のより良い関係性を構築する第一歩を担っていると言って過言ではありません.
14
一般口演 9
即時負荷インプラントにおけるガム付プロビジョナルレストレーション
作製の工夫
金沢医科大学病院 医療技術部
○庄野紀代美,浜崎孝子,庄野浩史
≪緒言≫
インプラント治療患者の多くは可徹型義歯ではなく固定式補綴物を,そして早期の補綴物を期
待している.最近当科でも即時負荷インプラント埋入術の施行症例がみられるようになった.演
者らはこれに関連してフィクスチャー埋入術直後のプロビジョナルレストレーション(PVR と略
す)を,チェアサイドで短時間に作製する方法を考案し,第 33 回歯科技工学会で発表する予定
である.しかし前歯部多数歯欠損の場合,本方法でも術後の歯肉退縮などで良好な審美性を得る
ことが困難な場合がある.
今回,予め技工室で作製したラミネートコア(LC と略す)に簡易的ガムを付けた基本枠組みを用
い,歯科医師と連携し,審美的にも良好でかつチェアサイドの処置時間を短縮出来る PVR 製作
方法を考案したので報告する.
≪材料・方法≫
PVR の人工歯部はコンポジット系レジン,歯肉部は即時重合レジンを用いた.LC 作製は加圧
成型器で熱可塑性シート 1.0mm を用いた.
技工室で術前模型欠損部に人工歯排列後,副模型を作製する.歯冠部分の外形線が最大豊隆部,
欠損部分のそれが齦頬移行部までの LC を 2 枚作製する.1 枚目は歯冠欠損部にコンポジット系
レジンを充填する.さらにインプラント埋入術直後の模型で,退縮歯肉部分に即時重合レジンを
充填し仕上げる.診療室ではインプラント埋入術後,もう 1 枚の LC を口腔内に試適し,テンポ
ラリーシリンダー(TC と略す)の位置と方向を確認しそれに印記する.技工室で作製した 1 枚目の
ガム付 PVR を 2 枚目の LC にセットし,TC のための穴を開ける.そのガム付 PVR を口腔内に
試適し,穴に即時重合レジンを填入,口腔内に挿入する.硬化後ガイドピンを緩め PVR を取出
しトリミングと研磨を行う.
≪結果≫
LC を利用した本方法は,多数歯欠損の場合でも審美性の改善と咬合の再現が容易で,かつ作
製時間を大幅に短縮することが出来た.
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一般口演 10
上顎臼歯部へのインプラント術式と上部構造選択法の確立
1)
島根大学医学部歯科口腔外科学講座,
同附属病院顎顔面インプラントセンター
2)有限会社 エス・デンタルアトリエ
○園山 潤 1),成相義樹 1),佐藤寛幸 2),関根浄治 1)
≪目的≫
本研究は, 上顎洞底挙上術と通常埋入をしたインプラントにおける術前の残存骨量と術後の経
時的骨量の変化ならびに骨への応力解析を指標として, 上顎臼歯部への術式と上部構造を検討す
る目的で企画した.
≪対象および方法≫
当科ならびに関連施設で上顎臼歯部へインプラント義歯を作製し, 荷重後最低3年を経過した
40名(男性10名, 女性30名, 平均年齢58歳)を対象とした. 上顎臼歯部69側に, Brånemark
System® MKⅢ(TiUnite®) 141本が埋入された. 全症例2回法で, インプラント埋入後半年で2次
手術が行われた.
1. 術式の適応と骨吸収の検討
Lateral approach(45本), Crestal approach(21本), 通常埋入(75本)がなされたインプ
ラントに対して, 術直後, 術後1年, 術後3年のパノラマX線写真を用いて以下を検討した.
1)歯槽骨頂から上顎洞底までの歯槽骨幅(垂直的高径)
2)フィクスチャー先端部から上顎洞挙上粘膜底部までの距離
3)フィクスチャーショルダー部の垂直的, 水平的骨吸収量
2. 有限要素法解析
通常埋入と上顎洞底挙上術症例における, 荷重時の骨への応力分散をMechanical Finder®を
用いて解析した.
≪結果≫
残存骨が平均5mm以下ではLateral approach,平均6mmではCrestal approachが選択されてい
た. それ以上では, 通常埋入がなされていた. 骨吸収は, いずれの場合も同じ傾向を示した. 有限
要素法解析では, 通常埋入症例, 上顎洞底挙上術症例ともに, 上顎骨頰骨突起部に咬合力の応力
が集中していた.
≪まとめ≫
上顎臼歯部には, 残存骨量に応じた術式を選択すればよいこと, また, 上部構造は咬合圧によ
る応力集中部位を考慮した咬合滑走経路の支持が必要であると思われた.
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