2013 年 7 月 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 【調査レポート】賃貸オフィスビルにおける喫煙スペースの実態 テナントのニーズが強い喫煙所の設置・改善 ビル管理会社の意識とは大きなギャップも ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ■要旨 ◇ 賃貸オフィスビルにおいては、テナントからの喫煙スペースの設置・改善ニーズは強い。 アンケート調査によると、喫煙スペースの設置を希望するテナントのニーズは、コンビ ニエンスストアや銀行の ATM と同水準だった。 ◇ テナントもビル管理会社も、喫煙スペースを設置したほうがいいとの考えが主流になっ ている。テナントが感じている喫煙スペースのメリットは「従業員の満足度向上」 「快適 なビルづくり」。デメリットは「コスト負担」「賃貸スペースがもったいない」というも のだった。 ◇ テナントニーズとビル側(管理企業)の意識との間には以下のようなギャップがあった。 1)ビル側(管理企業)が考えているほど、テナントは喫煙スペースの機能を評価してい ない。 2)テナントの満足度を高めるための適切な改善計画がなされていない。 3)テナントのニーズが管理企業に届いていない可能性がある。 ◇ ビル側(管理企業)が改善に着手できないハードルは「費用」「建物上の制約」 。 ◇ ビル側(管理企業)への調査によると、 「非喫煙者からの声」 「他企業の事例」 「低コスト 手法」などの情報があれば、喫煙スペースの設置・改善に踏み切る可能性がある。 ■調査結果 日経 BP インフラ総合研究所は 2013 年 2 月~3 月、全国主要都市にある賃貸オフィスビ ルのテナントとビル管理企業を対象に、 「オフィスビル喫煙スペース実態調査」を実施した。 テナントとビル側(管理企業)の喫煙スペースに関する意識などを把握することで、喫煙ス ペースを設置することのメリットやデメリット、喫煙者と非喫煙者が求める喫煙所の機能、 分煙のハードルなどを明らかにする(「オフィスビル喫煙スペース実態調査」は以下のアド レスを参照) 。 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/infra/pdf/オフィスビル喫煙スペース実態調査.pdf 1)喫煙スペースのニーズ 賃貸ビルのテナントが喫煙スペースを設置してほしいというニーズは、コンビニエンス ストアや銀行の ATM と同水準――。 テナントの喫煙スペースのニーズを調べるため、調査では「ビル側で設置していてほしい 設備や施設」について尋ねた。 「全テナント向けの屋内喫煙スペース」については、 「設置し ていてほしい」と「どちらかと言うと設置していてほしい」の回答の合計が 64.4%に達し た。 「屋外の喫煙スペース」も 62.5%とほぼ同じ割合を示した。この水準は「コンビニエン スストア」(64.9%)、「銀行の ATM」(60.9%)に匹敵する。 (「オフィスビル喫煙スペース 実態調査」の 20 ページのグラフ参照。以下同じ) 実際に、喫煙スペースが必要かどうかについて聞いたところ、テナントも管理企業も約半 数が「屋内に喫煙スペースが必要」と回答している。「屋外にあればいい」との回答も含め ると、8 割を超える企業が必要だと認識していた。「ビル側とテナント側のどちらが喫煙ス ペースを設置すべきか」については、テナントの 54.3%が「ビル側が設置すべき」、31.3% が「ビル側、テナント側の両方が設置すべき」と答えた。テナント側では、ビル側が設置す べきとの考えが主流になっている。 (12 ページ) 分煙を実践している管理企業と、ビルを完全禁煙にしている管理企業に対して、それぞれ の理由を尋ねた。分煙ビルでは「入居テナントからのニーズがあるため」(64.3%)、「非喫 煙者の受動喫煙防止のため」 (59.2%)、 「利用者に快適な喫煙環境を提供するため」 (44.9%) といった理由が多かった。(14 ページ) 禁煙ビルでは、 「必要なテナントは自前で設ければいい」 (46.4%)、 「入居テナントからの ニーズがないため」 (37.7%)、 「建物上の制約や場所の制約があるため」 (27.7%)、 「屋内・ 屋外ともに禁煙が現在のオフィスビルの主流であるため」 (27.5%)が主な理由だった。 (15 ページ) 一方、先にも述べたとおり、テナントに対する調査では 8 割の企業が喫煙スペースが必 要であると回答している。「喫煙スペースはビル側が設置すべき」との考えが主流になって おり、テナントが自前で設けるべき、テナントのニーズがないとの考え方は、テナントの意 向を把握しきれていない可能性がある。 2)喫煙スペースのメリット・デメリット テナントと管理企業に喫煙スペースのメリットとデメリットを聞いた。 テナントが喫煙スペースのメリットとして挙げたのは、「たばこを吸う従業員の満足度を 高める」「たばこを吸う従業員、吸わない従業員が、ともに快適と感じるビルづくりに寄与 する」「たばこを吸わない従業員の満足度を高める」などだ。喫煙スペースを設け、分煙職 場を実現することで、非喫煙者にもメリットがあると認識していることがわかる。 デメリットについては、 「設置・管理・維持に相当な費用を要する」 「賃貸スペースがもっ たいない」「たばこを吸う従業員に仕事をサボる口実を与えてしまう」という回答が多かっ た。(18 ページ) 一方、ビル管理企業が挙げたメリットで最も多かったのは「喫煙者、非喫煙者が、ともに 快適と感じるビルづくりに寄与する」。このほか「非喫煙者や近隣からのクレームの防止に 有効である」 「防災面で有効である」 「入居テナントの満足度が向上する」という回答も多い。 喫煙スペースの設置が、テナント満足度の向上やビル運営の円滑化に一定の効果があると みている。デメリットで多かったのは「設置・管理・維持に相当な費用を要する」だった。 (19 ページ) 3)喫煙スペースに対する改善ニーズと管理会社とのギャップ ビル側が設けている喫煙スペースに対するテナント満足度は 55%と、約半数にとどまっ た。喫煙スペースのタイプ別に見ていくと、特に屋外のスペースの満足度が低い。 喫煙スペースの機能や特徴などについて、テナントと管理企業の評価のギャップを調べ てみた。管理企業の自己評価とテナントの評価に比較的、大きな差があったのが「非喫煙者 に迷惑がかからない場所にする」 「たばこの煙やにおいが外に漏れないようにする」 「たばこ の煙やにおいがこもらないようにする」などの項目だ。これらの機能については、管理企業 が考えているほどテナントは評価していない。むしろ、これらの項目については、テナント からの改善要望が高かった。(23、24 ページ) 喫煙スペースのタイプ別に、テナントの満足度と管理企業の改善予定を整理すると、以下 のような状況にある。 【喫煙スペースのタイプ】 屋内専有部 : 満足していないテナント(42%) > 管理企業の改善予定(37%) 屋内共有部 : 満足していないテナント(39%) ≒ 管理企業の改善予定(37%) 屋外 : 満足していないテナント(54%) > 管理企業の改善予定(30%) 屋内専有部と屋外の喫煙スペースで、テナントのニーズに見合った改善が進んでいない ことがうかがえる。(25、26、27 ページ) テナントの改善ニーズに対して、ビル側が応えられていない理由も尋ねた。屋内のタイプ では「費用を確保することが困難だから」「ダクト工事やスペース拡張など、建物上の制約 があるから」などが多く、屋外では「場所の制約があるから」「費用を確保することが困難 だから」との回答が目立つ。(28、29、30 ページ) コスト面が充実した分煙環境の実現の大きなハードルとなっている。 4)改善が進むための条件 管理企業に、どのような情報があれば、喫煙スペースの設置や改善を進める動機になるか を尋ねた。最も回答が多かったのが「たばこを吸わない人によるオフィス内の喫煙スペース を必要とする声や要望」 (69.1%)だった。次いで、 「喫煙スペースの設置に伴い、従業員の 仕事の生産性が高まった企業の情報」(66.0%)、「低コストで簡易に質の高い喫煙スペース を作る方法に関する情報」(65.6%)と続く。(31 ページ) 調査では、テナント、管理企業から喫煙スペースに関する考え方も聞いた。この結果、テ ナントは、喫煙スペースの設置について、特に「非喫煙者の利益」を考慮したうえで、従業 員全体のメリットのバランスを重視していることがわかった。例えば、テナントから改善要 望が最も高かったのは「非喫煙者に迷惑がかからない場所にある」というものだった。喫煙 スペース全般の考え方を尋ねた設問でも、「喫煙者のためのスペースを設けるのであれば、 非喫煙者のためのリフレッシュスペースも設けるのが望ましいと思う」との意見が多かっ た。(32 ページ) また、テナントが非喫煙者と喫煙者とが共存できる快適なオフィス環境づくりを模索し ている姿も浮き彫りになった。テナントが考える喫煙スペースのメリットとして、「喫煙者 の満足度向上」に次いで多かったのが「たばこを吸う従業員、吸わない従業員がともに快適 と感じるビルづくりに寄与する」というものだった。考え方全般を聞いた設問でも「たばこ の煙やにおいが漏れない喫煙スペースであれば、非喫煙者もあってよいと考えていると思 う」との意見が多い。(18、32 ページ) 今回の調査では、喫煙スペースがクレームの防止やテナント満足度の向上につながると の考え方を持つ管理企業が多いことがわかった。この一方で、テナントの改善ニーズとは一 定のギャップも見られた。このギャップを解消・縮小するためには、ビル側がテナント企業 の声、なかでも特に非喫煙者の要望を汲み上げる仕組みを整えることが求められる。 非喫煙者と喫煙者とが共存できる快適なオフィスづくりが進むためには、分煙の取り組 みによってテナント満足度を向上させた事例や、低コストによるスペース設置・改善手法な どの情報を広く周知することも必要になっている。こうした情報をテナントや管理企業で 共有することで、分煙環境の実現、ひいては快適なオフィスの実現を一層、促すことになる。 *調査結果の詳細をまとめている「オフィスビル喫煙スペース実態調査」(グラフ集)につ いては、以下のアドレスからお読みになれます。 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/infra/pdf/オフィスビル喫煙スペース実態調査.pdf ■調査概要 ●調査の趣旨: 全国主要都市の賃貸オフィスビルの喫煙所の設置状況、ビル管理者・テナントの喫煙スペ ースに関する意識などを把握することで、喫煙スペースを設置することのメリットやデ メリット、喫煙者と非喫煙者が求める喫煙所の機能、「分煙」の実施を妨げている要因な どを明らかにする。 ●調査対象: テナント企業=売上規模 1 億円以上かつ従業員規模 50 名以上のオフィスビル入居企業 管理企業=売上規模 1 億円以上のオフィスビル管理企業の喫煙設備の設置・管理担当者 ●調査方法:WEB 調査 ※調査への協力を依頼するレターを郵送で配送、回答用 WEB ページに誘導 ●回答状況: テナント企業=対象企業数 管理企業=対象企業数 3997 件、回収数 4512 件、回収数 ●調査日程:2013 年 2 月 22 日 ~ 253 件(回収率 6.3%) 262 件(回収率 5.8%) 2013 年 3 月 18 日 ●調査企画:日経 BP 社 ●調査実施:日経 BP コンサルティング ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ■日経 BP インフラ総合研究所について 日経 BP インフラ総合研究所は、日経アーキテクチュアなど建設系の No.1 定期刊行物とウ ェブ(ケンプラッツ)を傘下に有する、日本で初めてのシンクタンクです。建築・住宅・不 動産分野のメディアを擁するシンクタンクとして、社会インフラ関連ビジネスのためのソ リューションを提供します。 問い合わせ先 調査に関するお問い合わせは、日経 BP インフラ総合研究所 電話 03-6811-8835 担当: 徳永までお願いいたします。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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