百まいのドレス』と 【インビクタス】 文・眞鍋 『百まいのドレス』エレナー・エスティス作、岩波書店 ワンダはいつも青い木綿のワンピースをきている、ちょっと意固地な女の子。 服のことで他の子にからかわれたとき、カッとして、うちにはドレスが百まいあ ると言ってしまいます。明らかに服や靴を持っていないのに、ウソをついている ワンダはポーランド系の移民の子で名前がヘン、というだけで、いつもいつもか らかわれてクラスの笑い者でした。ある日彼女は転校していきます。そして彼女 が他の子にのこしたのはとてもスカッとするプレゼントでした。(このクレヨン の色がヒントね。) ちょっと気の毒に思いながらいじめを止められなかった子や、いじめになって いるのに無神経にはやし立てていた子に対して彼女は卑屈にではなく、おおらか に自分を表現したプレゼントをする・・・自分をいじめている相手にやさしくなれ ますか? ちょっと前にみた映画「インビクタス 負けざる者たち」もそれがテーマでし た。南アフリカの、悪名高い人種差別政策で27年も投獄されていた黒人政治家ネ ルソン・マンデラが普通選挙で国のトップ、大統領に選ばれます。彼を投獄して いた白人たちは報復されると恐れますが、そんなことはせずに、一緒に国を作っ ていこうと呼びかけます。そして黒人たちから国の恥とまで言われていた白人主 体の弱いラグビーチームを黒人の仲間からはいろいろ言われながらも応援し、絶 対無理と言われたワールドカップで奇跡が起こるのです。自分を陥れ、ひどい目 にあわせた相手を自分が優位に立ったときに許すことができる…すごいことだと 思うんですよね。この映画は実話です。ワールドカップで優勝してしまうなんて 本当に信じられないことなんですけど。タイトルはマンデラ大統領が牢屋のなか で心の支えとしてずっと読んでいた詩から来ています。 インビクタス−負けざる者たち− ウィリアム・アーネスト・ヘンリー INVICTUS - William Ernest Henley 私を覆う漆黒の夜 鉄格子にひそむ奈落の闇 私はあらゆる神に感謝する 我が魂が征服されぬことを Out of the night that covers me, Black as the Pit from pole to pole, I thank whatever gods may be For my unconquerable soul. 無惨な状況においてさえ 私はひるみも叫びもしなかった 運命に打ちのめされ 血を流しても 決して屈服はしない In the fell clutch of circumstance I have not winced nor cried aloud. Under the bludgeonings of chance My head is bloody, but unbowed. 激しい怒りと涙の彼方に 恐ろしい死が浮かび上がる だが、長きにわたる脅しを受けてなお 私は何ひとつ恐れはしない 門がいかに狭かろうと いかなる罰に苦しめられようと 私が我が運命の支配者 私が我が魂の指揮官なのだ Beyond this place of wrath and tears Looms but the Horror of the shade, And yet the menace of the years Finds, and shall find, me unafraid. It matters not how strait the gate, How charged with punishments the scroll. I am the master of my fate: I am the captain of my soul.
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