気密と換気、外断熱、内断熱 住宅に欠かせない4つの要素 目的 断熱 住宅の内外に適切な温度差をつける ポイント 温暖地では夏場に温室効果を招かないように注意する。 夏の日射を配慮して屋根天井の断熱を強化する。 気密 エネルギー消費の把握 計画換気の確立(効率的な空気清浄 化) 計算できない隙間からの熱損失を減らす 換気経路を確立するために隙間風を減らす。 換気 暖冷房費の定量化 室内空気汚染の回避 換気による熱損失の定量化 効率よく空気を入れ替えるために24時間換気を実施する 遮蔽 温室効果の防止 庇による日射遮蔽が効果的 カビだらけの天井断熱材 断熱材を漫然と置くだけは、充分な断熱効果 を得られないばかりか、断熱材表面にカビを はやしてしまいます。床壁天井を隙間無く 包み込み、屋根裏の通気を充分確保すること が大切。 間仕切り上部の無断熱 間仕切り壁上部に断熱材が詰められていないと、 外気温はそのまま間仕切り壁の中に入り込み、 結果的に天井をいくら断熱しても、壁が外気温を そのまま室内へ伝えてしまいます。これでは 冷暖房費の無駄使いですね。 床下断熱材の結露と垂れ下がり 床下の湿気が抜けにくいと、断熱材内部に溜まり その重みで垂れ下がり脱落します。断熱材と床や 壁の室内側との間に隙間があると、その隙間に 外気温が入り込み結露してその重みでさらに 垂れ下がるという悪循環になります。 断熱なしの床暖房リフォーム せっかくの床暖房も、床下に断熱材を敷かず に使えば、ザルのように熱が逃げてしまいます。 このお宅では、ガス代(給湯床暖房代)がかさむ ので、今では使っていないとのことでした。 メーカーさん、売ればいいっていうものではないでしょう。 内壁のカビ 断熱効果が発揮されないと、いくら断熱材が入っていても結露し てカビが生えます。家具と外壁との隙間の空気が滞留するとカビ が生じやすいのはご存じの通り。同じことが壁や屋根裏、 床下でも起きています。 屋根裏の結露 屋根裏の通気がよくないと、東北や北海道のような寒冷地でなくても、 この例のように屋根裏に結露します。結露して乾きにくい状態が続くと、 カビが生えたり、わるくすると建物の寿命を縮めてしまいます 外壁の通気層 断熱材の外に外気が流れやすいように空間を開けて外装材を貼れ ば、万一雨や壁体内結露が生じても乾きやすく、木を腐らせる危険が 現象します。下端の金具は通気金具で、通気層への外気の導入口に なります。 基 断 熱 礎 知 高気密高断熱住宅 内断熱工法 外断熱工法 充填工法 パッシブ換気とアクティブ換気 24時間換気 二重通気工法 Q値・C値・K値、 結露の仕組み 換気の形態 断熱材の種類 外断熱外張り断熱のウソ・ホント まとめ 識 ■断熱の基礎知識 (人類の英知) 実は、下の材料の断熱性能は、全て同じです。もちろん、すきま風が入りやすい か、表面の肌触りなどからの体感温度・材料自身の表面温度など、断熱性能以 外の部分の影響も無視出来ませんが、単に、断熱性能だけを考えれば同じです。 たった100年前に生まれたコンクリートも、自然の材料にはかないません。 強度も木材と同じです。 空気もたった8mmの厚みで、上の材料と同じ断熱性能を持っています。 意外な事実は、木の5cmの厚さとコンクリートの55cmの厚さの断熱性能は同じなのです。 丈夫でしっかりしていそうなコンクリートも、断熱材がなければ厚さ、寒さは全くしのげないのです。 そして木は、わずか5cmの厚さで、他の土やレンガの厚み20cmと同じ断熱性能を持っています。 ■断熱の基礎知識 (材料の性質) ■熱を伝える。熱を蓄える。 地球上の全ての材料・素材には、熱を伝え やすい、あるいは、伝えにくい等の固有の 性質があります。そして、熱を蓄えやすい、 蓄えにくい性質も同じように持っています。 左の表は、代表的な材料の熱に関する データです。 ■窓やドアの知恵 時代劇を見ていると、当然ガラスなどはなく、和紙を貼った障子か、 ふすま、そして、外部との遮断は今では雨戸と言われる、 木戸しかありません。欧米では、ある時期からガラスが出始めましたが、 中世ヨーロッパの窓も木戸でした。私たちが、ひどい住宅環境だと思う、 それらの住まいは、本当に寒かったのでしょうか。 もちろん、その時代に住んだこともなければ、住まい全体の断熱性能 そのものが違いますから、一概に比較できませんが、科学的には、次のようになります。 意外なことに、私たちが普通に使っているガラス戸よりは、 障子やふすまの方が寒さを遮ります。 すきま風は入ってきますが、彼らは、何らかの方法ですきま 風を防ぐ方法を知っていたのかもしれません。 茶室に見られるような、小さな空間で、周囲が土壁で作られ、 入り口も狭く、雪見障子のような小さな窓しかない部屋。 そして、お茶のための熱源があるこの部屋は、実はその時代の 最高に贅沢な空間だったのかもしれません。 いずれにせよ、人類はその土地で快適に過ごすために、 科学の根拠はなくても、利用できる最大の材料を一番有効に使っていたのかもしれません。 贅沢さはなくても、寒さを遮断し、家の中央の囲炉裏が部屋を暖め、 意外と寒くなかったのかもしれませんね。 そして、障子もふすまも取ってしまえば、夏には自然の 風通しが十分暑さをしのいだのかもしれません 用語解説 熱伝導率 熱容量 その材料の熱の伝わりやすさです。単位はKcal/(m.K)又はW/(m.K)です。 その材料の熱を蓄えられる大きさです。熱しやすく、冷めやすい。 熱しにくく、冷めにくい。という言葉で言い表せます。 空気 水 アルミニューム 熱を伝える力が最も小さく、熱を蓄える力もありません。 夏でも、木陰が涼しく感じるのはこのためでしょうか。 もし、空気の熱を蓄える力が大きければ、地球温暖化はあっという間に進みます。 また、断熱用のガラスの中間を空気層にするのは、断熱材として空気を使っているからです。 熱を伝えにくく、かつ、非常に熱を蓄える力の大きい材料です。 氷点下になってもなかなか凍結しませんね。 風呂のお湯が、夏場は朝になってもほんわかと温かいのは、この性質によるものです。 自然界で最大の熱容量を持つ水を、地球温暖化で海水温が上昇したとき、もはや人類に海水 温を下げる力はありません。 もっとも熱を伝えやすい材料。 アルミニュームの鍋が、家庭用の鍋の中で一番早く沸騰するのはご存じですね。 鉄 木材 土 断熱材 鉄は、アルミよりは熱を伝えにくいけれど、アルミよりは熱を蓄える力があります。 ステーキやお好み焼きなど、鉄板料理に1cm程度の熱い鉄板を使うのは、鉄の持つ保温力 を利用しているのでしょう。 木も意外と自然素材の中では、熱を伝えにくい材料です。 しかし、熱を蓄える力はありません。 土は程々に熱を伝え、また、熱を蓄える力もあります。 冬の鍋料理に土鍋が欠かせないのは、その保温力、なかなかさめにくい、という土鍋の性質を 利用したものです。 地熱を利用するという言葉がありますが、土の持つ保温力を利用したものでしょう。 地下室や洞窟のひんやりした温度、冬眠動物が生存していけるのも、土の保温力、言い換えれ ば急激な温度変化のない世界があるからでしょう。 この表の断熱材は、グラスウールやウレタン、ポリスチレンフォームなど、一般的な断熱材を入 れています。 各材料や建材メーカーは、0.001単位の熱伝導率を競っていますが、表には入らないため、大 きな位置づけとして見てください。 パッシブ換気とアクティブ換気 断熱性と気密性を高めた家では、効率よく換気するように設計することが出来ます(暖まった空気が上 昇するという自然の原理を用いて、屋内の汚れた空気を家の最上部に設けた排気口から出し、出た分 の新鮮な空気を吸気口から取り入れるしくみが、パッシブ換気(自然換気)です。これには換気扇やファ ンなどの人工的な動力は使いません。自然の力で換気します。でも自然力がたよりですので、季節や 風向き敷地条件によって、換気量が違ってきます。でも、もしビルなど不特定多数の人が利用する建築 物では換気量の定量を確保しなければいけませんが、住宅であれば換気量のある程度の変化は受容 できます。 家が息をするというイメージです。空気の流れは人に感じないほど微妙な動きなので、家のつくり自体 を入念に設計して工事をしないといけません。床下から天井裏屋根裏に至る換気経路に、外壁の内側 や間仕切り壁内部などを使います。また換気のコントロールは、スイッチひとつでというわけにはいかず、 排気口などのあけ具合を季節や時刻によって人が調節するようになります。 パッシブ換気に対して、換気扇やファンを使う方法をアクティブ換気(機械換気)といいます。24時間換気や熱 交換機換気、OMソーラーなどもアクティブ換気です。アクティブ換気は、人工的な動力を使って強制的に空気 を動かしますので、季節や風向き敷地条件などには影響されず、スイッチひとつで一定量の換気を確保するこ とができます。ただ、しくみ上、空気が集中する部分にどうしても埃やゴミが詰まりやすく掃除が欠かせません。 あるメーカーの追跡調査によるとアクティブ換気住宅購入後1年間に換気口の掃除をしたことがある世帯はわ ずか1%だったという結果があります。アクティブで、吸気口に埃が詰まると換気は機能せずすぐ換気不良に なってしまいます。 パッシブ/アクティブともに、まったく人の手を借りずにはいきません。季節や時刻によって両方を使い分ける 方法もあり、<ハイブリッド換気>といいます。パッシブで換気量が足りなくなる季節や時刻はアクティブとする ことで、できるだけ電気も使わないし、空気の集中も少ないので掃除頻度も減らすことにもなります。 家づくりにはいろいろな工夫ができます。あなたの「わが家」にもっともふさわしい換気方法を考えてください。 24時間換気 屋内の換気を、専用のファンとダクトパイプの組み合わせた設備で、強制的に行い続ける方法をいいます。換 気のコントロールは、一箇所のコントロールスイッチで行います。セントラル換気と呼ぶ場合もあります。 もっとも一般的な方法は、各室天井に取り付けた排気口から、天井裏等に設置した排気ファンへダクトをつない で、汚れた空気をいつも送り出す方法です。新鮮空気は各室に設けた吸気口から自然に入ってきます。天井裏 のファンから、騒音が室内へ漏れ出ないように工夫されています。 屋内の涼しい空気や暖かい空気をそのまま捨てるのがもったいないとか、各室に直接外の冷たい空気が入っ てくるのを防ぎたいときには、排気の熱を吸気へ移して空気だけを入れ換えるという全熱交換機を用いる場合も あります。 また、天井裏に強制ファンをつけるのではなく、各室にセンサー付きの換気扇を設ける方法もありますが、これ は24時間換気とは呼ばれていません。一般的に工事費は安くなりますが、ファンの騒音は避けられず屋外気温 がそのまま屋内へ入って来ます。 いずれにしても、24時間換気は、換気システムとして吸排気口やダクトなどと一式で販売されることが多く、一 般に高価です。また空気の流れが集中しますので、埃やゴミが各部に溜まりやすく、メンテナンスは欠かせませ ん。 一方では、騒音が皆無でないため、ふだん家にいることが多い主婦の方には電気の無駄遣いのように思えてし まうことから、スイッチを切ってしまうことが多いようですが、24時間換気に頼っている家ではスイッチOFFは換 気不良に直結します。ずーっと動かし続けることが基本です。 二重通気工法 高気密高断熱住宅で、外断熱材の外側と内側に通気層を持ち、それぞれが独立して外壁内部の空気対流や湿 気の放散を行うよう工夫された工法です。 断熱材の外側の通気層は、雨水の浸入や内部結露による湿気を放散し、外壁表面の日射による熱気も排出す る機能を持っています。断熱材の内側の通気層は、床下と屋根裏につながって空気を循環させて室内の温度変 化を押さえる役割をします。 建材メーカーによっては、ソーラーサーキット/エアサイクル/エアパスという呼び名が付けられています。断熱 材や吸排気口、屋根裏換気扇などの建材や設備をまとめて、フランチャイズ工法として商品化されています。各 社により細部に違いがあるようですが、基本的なしくみは上に見たとおりです。 二重通気とはいっても、外側の通気層で熱気や湿気を排出するしくみは、ほぼどんな住宅工法でも採用されつつ あるものです。内側の通気層は、外壁から伝わる屋外の高熱を屋根裏から外へ出すことで、特に夏に効果を発 揮し、冬には床下と屋根裏の空気の循環の経路として使われますが、この空気循環は通常のパッシブ換気住宅 でもおなじです。 フランチャイズの二重通気工法では、冬に床下通気口を完全に遮蔽してファンを用いて屋内の空気を強制循環 させます。このことで床下を蓄熱層として利用するのですが、このとき床下への吸気をシャットアウトするために、 別の室内換気が不可欠となります。通常のパッシブ換気では冬には最も効率よく自然換気ができるのですが、こ の工法では冬でも動力が必要です。結果的に年間を通して、24時間換気等の換気設備を併設することが多いよ うです。 換気の形態 換気の形態の種類換気の形態には次に示すように4種類あります。 1.第一種換気 給排気とも機械ファンによって強制的に行う事。室内の圧力は外気に対して正圧(+)、 負圧(−)どのようにでもコントロールできます。 2.第二種換気 給気を機械ファンによって強制で行い、排気は排気口から自然に送り出されます。 室内の圧力は正圧(+)になり、外気を入れにくくするために クリーンルームなどでメリットがあります。 3.第三種換気 排気を機械ファンによって強制で行い、給気は給気口から圧力差で自然に取り入れます。 室内の圧力は負圧(−)になる。壁体内(断熱層)に室内の水蒸気を 入れにくくするというメリットがあります。 4.第四種換気 給気と排気を自然動力(内外差圧、風圧)で行う自然換気の事です。 パッシブ換気とも言います。 市場で、採用されている住宅の換気システムは第一種換気と第三種換気が殆どです。 断熱化住宅では、第2種換気は使ってはいけません。室内を加圧すると湿った 空気が壁体内に流入して内部結露を起こし躯体の耐久性が低下するためです。 高気密高断熱 気密化住宅とは、気密シートなどで気密化工事を行った住宅のことを指します。 気密性能は住宅から空気が圧力差などによってどの程度出入りするのかを評価 するもので、施工精度に大きく左右されるため机上の計算では把握できません。 そのため実際に大型のファンを使って建物に圧力をかけ、外部との気圧差を測定する ことにより「相当隙間面積」を算定します。それを建物の面積で割り「m2当たりの相 当隙間面積」を算定し、その数値でその建物の気密性能を評価します。 実際には5cm2/m2程度以下の住宅を「気密性能がある住宅」と考えているようです。 (国土交通省の次世代省エネ基準) 気密化に対して断熱化の必要性は理解しやすいと思いますが、断熱化工事の目的は、 室内と屋外の熱の移動を押さえるためです。断熱化された壁、床、天井や窓部分など の開口部からの熱損失を把握することで、建物から逃げて行く(もしくは屋外から取り込 む)熱の計算を行うことが可能です。それを部位毎に計算すれば、そのトータルとしての 建物の熱損失を算定することが可能です。当然換気扇からの熱損失も換気量が把握で きれば、その熱損失に加えることができます。そうやって計算した熱損失を、建物の面積 で割ることで「熱損失係数=Q値」を求めることができます。この熱損失係数を持って、 どの程度の断熱性能を持った建物なのかを知ることができます。 Q値は値が小さいほど熱が逃げにくい 住宅の省エネ性能を決める最も重要な指標がQ値である。Q値は「熱損失係数」といって「室内外 の温度差が1度ある時、家全体から1時間に床面積1㎡あたり逃げ出す熱量」を示し、値が小 さいほど熱が逃げにくいことを表す。 これは外からの熱の侵入にもあてはまる。夏、暑くなった部屋をエアコンで過ごしやすい温度に 冷やしても、エアコンを止めるとすぐにまた暑くなれば、Q値が大きいことを示している。 Q値は住宅の保温性を示す目安の値といえる。 天井や屋根の断熱は夏を過ごしやすくするためにも必要だが、夏の冷房エネルギーを軽減す るためには、日射遮蔽が極めて大切。 従来の省エネ基準で試算すると、夏の昼間の冷房時、室内に侵入する熱量の71%が窓からと 言われている。南面のひさしや軒を深くして日差しを遮るなど昔ながらの知恵を活かすほか、 複層ガラスや断熱サッシの採用も効果的だ。 最近では、特殊な金属皮膜により夏は日射熱を半分にカットし、冬は暖房の熱を反射して逃が さない遮熱複層ガラスも登場している。複層ガラス(ペアガラス)の採用は50%程度まで高まる といわれている。 このように機密性能を高めると言う事は、カビは湿度60%以下、ダニは湿度50%以下では、 ほとんど発生しませんので湿度管理をする事により、ダニの発生を防ぎ、快適・健康に過ごす 事が出来ます。 同時に、従来のような風による外との圧力差や温度差による成り行き任せの換気から、計画的 に換気することで、室内の空気を常に清潔に保ち、冷暖房した空気を外に逃がさないつために も、24時間換気システム(第1種機械換気)の導入もお勧めしたい。 C値は値が小さいほど気密性が高い C値とは、建物の延べ床面積に対する隙間面積の割 合を表す数値。床面積1㎡あたりに何センチの隙 間があるかを示す。この値が小さいほど気密性が 高い事を意味する。 K値は小さいほど断熱性が高い事を示す 室内外の温度差が1度Cの時に壁や床等各部位1㎡ あたり単位時間で、家から逃げていく熱エネルギー 量を表した数字。この値が小さいほど断熱性が高 い事を意味する。 次世代省エネルギー基準値 Q値 C値 Ⅲ地域 基準 Ⅳ地域 基準 2.4 W/ ㎡K 2.7 W/ ㎡K 5.0c㎡/㎡ 結露 人間の体の60%は水分で出来ていると言われています。 空気の中にも水分が存在しています。 天気予報でよく言われる湿度○○%と言う言葉が、実はその温度の時、 空気中に含まれている水分の割合です。 天気予報では、湿度○○%と言う表現を使いますが、 実際には、ある温度の空気中に含むことが出来る水分の量を100%とし、 それに対して何%の量であるかを言っています。 それは、それぞれの温度によって空気中に含むことが出来る水分の量は 異なっているからです。高温になるほど多くの水分を含むことが出来、 低温になるほど少ない水分しか含むことが出来ません。 次の表は温度とその温度の空気が含むことが出来る水分の量を表した表です。 上の表から、室温18度の時の空気中に含むことが出来る水蒸気の量は約 16mmHgという単位ですが、室温が10度に下がると、約10mmHgという量 の水分の量しか含むことが出来ません。 室温が下がり、その部屋の水分の量に変化がなければ余った約6mmHgの水分は 空気中に含むことが出来ず、水滴など目に見える形になって現れてきます。 これが、結露という現象です。 たとえば、冷凍庫でグラスを入れて冷やし、暖かい部屋に出してしばらくするとと表面 にたくさんの水滴が現れます。 これは、グラス表面の温度が室温より低く、その周辺の空気は当然0度近くになり、 含まれきれない水分がグラスの水滴となって現れる現象と同じです。 結露には、目に見えている結露(表面結露)と建物の内部で起こる結露(内部結露) の二つがあります。 飽和水蒸気量 内部結露 ある温度の空気が水蒸気を含む限界の量 前の図のカーブが各温度の飽和水蒸気量 押入の床や壁のクロスからかびが生え、あるいは じとじと湿気ている。 畳をめくると畳の裏面と床がべたべたしている。 これら床や壁によく現れる、建物内部から発生して くるもので、内部結露と呼んでいます。 用語解説 飽和水蒸気量 露点 ある温度の空気が水蒸気を含む限界の量 上の図のカーブが各温度の飽和水蒸気量 ある温度と湿度の時、飽和水蒸気の限界となる温度 のこと。その温度より下がると結露が発生する。 たとえば、温度28度、湿度80%の時の露点は、 約24度。しかし温度28度、湿度60%の時の露点 は、約19度と、温度と湿度によって異なってくる。 内断熱工法 コンクリート構造躯体の内側に断熱材を取り付ける工法で、 この構造においては最も一般的な断熱方法です。外断熱に比べて、 断熱工法のバリエーションが豊富で、安価なことが特徴です。 ① ② ③ ④ ヒートブリッジになる。 ヒートブリッジになる。 結露が発生しやすい。 ①∼③を改善するため④の 方法があります。床版や梁などで 断熱材が不連続になる部分の ヒートブリッジを防ぐために、 断熱補強します。 外断熱工法 コンクリート構造躯体の外側に断熱材を取り付ける工法で、内断熱に見られた 熱橋もなくなり、躯体の保護をするなど利点が多い。 寒冷地では、外断熱の採用が望ましい。 ① ヒートブリッジになるが室温の影響を 受けるので、内断熱の同じ部位より 温度は高い。 ② 温室に近い温度で一定する。 ③ 結露が発生しにくい。 充填工法 グラスウール、ロックウールなどを柱・間柱間、根太・大引間、 天井裏または屋根に充填する工法で、全国的に広く普及しています。 ① 断熱材が不連続になり易い箇所は、施工がしずらく、 目に付き難い部位です。出窓、外壁の上部と下部、 天井裏等がこれに相当します。 これらの箇所の断熱は、省略されがちであるが、 エネルギー損失となるばかりでなく、結露を局部的に 集中させ、被害を増大させる結果となるので、絶対に 手を抜かないように施工管理を徹底することが必要です。 ② 外壁上部の取り合い部や間仕切り壁上下の 取り合い部が開放されたままで、壁内通気が 生じていては、断熱効果は上がりません。 無機繊維系断熱材 グラスウール ガラス系鉱物原料から作られる断熱材。 グラスウールは細い繊維の集まりで、 空気の中に封じ込められ、 断熱効果を発揮します。 断熱性のほか、不燃融点約 500℃、吸音、施工、運搬性 の四つの特徴を持っている反面、 圧縮や沈下による 有効厚の減少や、含水 による断熱性低下の危険があります。 また、低湿抵抗が ないため、 防湿層を設けるなどの防露対策が必要となります。 ロックウール 高炉スラグおよび玄武岩などの鉱石原料から作られる 断熱材ロックウー ルの形状は、マット状とフェルト状があり、 ほかに吹込み用とボード状があります。 原料が鉱石ということを除けば、 物理的性能と特徴はグラスウールとほぼ同じです。 寸法、表面材などの規格が進んでいます。 発泡プラスチック系断熱材 フォームポリスチレン スチロール樹脂を原料とする発泡系断熱材。熱伝導率が少なく、 断熱効果が高いのが特徴で、水や湿気を通しにくい性質も持っています。 軽量なため、運搬、施工性に優位な特徴を持つ反面、高湿や紫外線に 弱いという性質もあります。 押出発泡ポリスチレン スチロール樹脂を原料とし、雑燃剤、発泡剤などを加えて押出機に入れ、 溶解混錬後発泡させた板状の断熱材です。特理的性質はフォームポリスチレンと ほぼ同じです。ある程度の透湿抵抗が期待できるため、結露の危険性が高くない 地域では防湿性の役割を果たすこともできます。 硬質ウレタンフォーム ポリウレタンフォーム樹脂を発泡、成形した有機発泡体(独立気泡構造)の断熱材。 発泡系材の特質である成形、加工の自由度に加え、 優れた熱伝導率と耐熱性を持ちます。自己接着性と機密性を利用して、 冷凍倉庫や設備機器、または施工が難しい箇所などに使われます。 高発泡ポリエチレン 高発泡ポリエチレンはポリエチレン樹脂に発泡剤を用いて、5∼40倍 に発泡させた断熱材。形状はミート状、ブロック状、筒状のものがあります。 熱伝導率が小さく、高い断熱性があると同時に防水、耐薬品、耐候性があります。 フェノールフォーム フェノール樹脂を発泡、硬化させた有機、発泡系の断熱材。 形状は板状品で、ラミネードボードや複合成形パネルなどがあります。 住宅や工場、倉庫などの断熱材や内装材として用いられます。 木質繊維系断熱材 インシュレーションボード 木材を解繊したものを主原料とする有機、繊維系の板状断熱材。 調湿性や防音性に優れ、また断熱下地や仕上材として用いられます。 素板の製造過程でアスファルトを含浸、また塗布したシージングボードは 断熱性のほか、通気性や耐久性を備えています。 セルロースファイバー パルプ、新聞古紙など木質樹脂を主原料とする有機、繊維系の 断熱材で、防燃、撥水、防錆、防鼠等の加工がされています。 吸音性、吸放湿性、防錆性など断熱性とともに多くの特徴を持っています。 結露防止用に鉄板屋根へ接着剤と共に吹き付ける工法、 天井や壁、床へ吹き込む工法に大別されます。 アイシネン断熱材 オゾン層破壊と地球温暖化の原因の一つといわれるフロンガスは、 これまで冷蔵庫やクーラー、スプレー等の日用品だけでなく、住まいの断熱材 (プラスチック系)の多くにも使われていました。この問題を解決するために世界 的な規制が進んだ結果、2003年の特定フロン全廃に続き、2020年には代替 フロンの廃止も決まっています。アイシネン気密・断熱システムは、特定フロン、 代替フロンはもちろん、第三世代のフロン系発泡剤も一切含まない地球環境に 優しい理想のシステム。水をベースにしたテクノロジーで、レジンとイソシアネート という2つの液体を混合させ、水との反応で形成された炭酸ガスによって100倍 に発泡させる2液性変性ポリマー断熱材です。 その他の断熱材 羊毛を使ったもの ポリスチレン系断熱材 発泡剤成分、発泡助剤成分、難燃剤、樹脂モノマー(スチレンモノマー)の放散があります 外断熱。外張り断熱のウソホント 今や住宅は外断熱ブーム状態。そのブームを巻き起こしたのは「史上最大もミステーク」と 「『いい家』が欲しい。」の二つの本でした。そして両者共に内断熱を欠陥工法のように激しく否定することで 論旨を進めています。このため、消去法で判断するのが好きな日本人は、 内断熱は危険だと決めつけて、住宅断熱の方法論から削除しかねない勢いがになっています。内断熱と いえばこれまで当たり前のように施工してきたもので、断熱材はグラスウール等繊維系のものでした。住宅 断熱の70%近くのシェアももつグラスウール業界はこの激しい内断熱パッシングに抵抗しようと、ホーム ペイジ上で内断熱とグラスウールの性質を述べ、外断熱との戦いに必死です。 こんな内×外そして素材同士の欠点だけを取り上げた戦いは消費者に対して分かり易い錯覚を与える のと同時に断熱不信を招くことになります。 史上最大のミステークの内容は・・日本のコンクリート集合住宅は内断熱で進められてきたが、そこで内 部結露が発生し不健康を招いている。北欧では外断熱が法政化している国もあるというのに、日本では施 工費が高くなるなどの理由で内断熱を続けてきた、それは行政と業界の史上最大のミステークだというわ けです。 確かにコンクリート造の外断熱は結露の安全性、室温の安定、耐久性の項目で内断熱に比べて優れて いるといえます。しかし、それは全室・連続・暖冷房を基準にした場合で、現状の日本の常識である個別・ 間欠・暖冷房の下では、逆に外断熱の方が表面結露の危険をもち、室温のコントロールで蓄熱性が邪魔 になることさえあります。史上最大のミステークは内断熱にあったというよりは個別間欠暖房にあったとい えるのです。 ※内断熱、外断熱という用語はコンクリート造のように蓄熱体に断熱をする場合の呼び方で、鉄骨造や 木造のように蓄熱体の存在しない場合の断熱は充填断熱(内断熱)、外張断熱(外断熱)と呼ばれて区別 されます。 木造住宅における断熱材の問題点(鎌田紀彦の指摘) 発泡系断熱材の可燃性・・・外張り断熱に多用される発泡系断熱材は難燃性謳うものもあるが、火災時には結 局燃えるのである。もっとも難燃性が高いといわれる旭化成のネオマフォーム、もある一定の条件下での性能 であってその住宅が火災になれば勢いよく燃えてしまう。また現場発泡ウレタンは現在でも難燃化が遅れてお り最も延焼性が高く着火すると勢いよく火が走る。その爆発的燃焼性によって北海道ではウレタン吹きつけ工 事の現場で多くの人が死亡している。しかも可燃性のある断熱材は考えにくいような状況でも燃焼する。松井 修三氏は著書の中で通気層工法があるから隣の家が火事になっても大丈夫と書いているが、今年新潟で松 井氏の推奨する工法の住宅が隣家の火災で通気層から火が入り延焼してしまった。 またこれらの断熱材は燃焼時有毒ガスを発生する。硬質ウレタンフォームはシアン系のガスを出すしそのほ かの断熱材もでも一酸化炭素が発生する。あるメーカーは秋刀魚を焼くときと同じくらいと指摘するがそんな 問題ではない。日本中の住宅の大半が発泡系断熱材を使うようになったら大地震時の火災はとても悲惨なこ とになるこれが外張り断熱で懸念される最大の問題点だ。 グラスウールは不燃材料としての認定がある。この点から欧米では繊維系断熱材が主として使われている 発泡時のフロンの問題・・・発泡系断熱材は発泡ガスとして代替フロンが使われている脱フロン化が急がれて いる、ネオマフォームは最初から脱フロンで開発されている。 グラスウールは吸水するのか・・・グラスウールは吸水すると言われているが保水するというほうが正しい、 木材から発散される水分を保水してそれが木材の腐朽の原因であったが、通気工法が開発されて保水水分 を発散することによってその問題も解決できている。 発がん性の問題・・・問題点は生産時および施工時において指摘されているが現在はコーヒーの発ガンレベル と同じランクになっている。 まとめ 1、住宅の性能を決めるとき自分たちがどこまで必要かを設計士と共に考えま しょう。 2、ひさしを有効に使い直射日光を遮蔽することによって夏涼しい家になります。 3、外断熱は万能な断熱工法ではありません。ケースバイケースで 断熱工法を選びましょう 4、高気密化は室内環境を汚染します。必ず換気計画といっしょに考えましょう。 5、先人の知恵は大いに学びましょう。特に地域によって気候の特徴があります。 全国一律ではないので地域にあった工法を建築士と共に選びましょう。 6、省エネルギーを考えるのはこれからのおきなテーマです。 省エネルギーは環境をコントロールするのではなく、四季の味わいを感じれ ることが省エネルギーにつながると考えます。 ご静聴ありがとうございました。
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