髪質とパーソナルカラー診断結果の因果関係の検証

髪質とパーソナルカラー診断結果の因果関係の検証、およびヘアカラーの際の
色の再現性における髪質の違いの重要性
Analysis on the use of hair texture differences as one of the determinants for
choosing the best hair colors, and the importance of hair texture consideration for
the color reproduction in hair coloring.
中根かつみ
吉澤 陽介
Katsumi Nakane
(株) BABカラーキャリア研究所
Yosuke Yoshizawa
BAB Corp. Color Career Institute
Evolutional Blue/千葉大学 Chiba University
Evolutional Blue / Chiba University
【① 背景と目的】
似合う色を提案する手段としてパーソナルカラーが存在し、髪色、瞳の色、肌の色、ほくろの色などを分析、ドレープ(色の布)によりシーズン判別するものである。しかし(パーソナルカラーリ
スト、美容師としての経験を通し)これらの各要素の色だけでなく、髪質によって似合う色が変わるのではないかと考えられる。例えば、スプリングにはクセ毛が多い、縮毛はサマーの傾向が強
い、また退色についてはスプリング→黄・オータム→オレンジ・サマー→赤オレンジ・ウインター→赤と変化するなどが考えられる。また、髪質がシーズン判別に影響を与えるか否かに関する研究
は行われていないのが現状である。
これらを踏まえ、本研究は「髪質とパーソナルカラーの因果関係」についての検証を行うものである。これにより「ヘアカラー後の退色とクセ毛」が、どのようにシーズン決定に影響を与えるか
を確認したい。
【② 似合う色の提案とその要素】
髪質は大きく分けて直毛とくせ毛に分類される。くせ毛は毛根の影響が大きく反映され、多くの日本人のくせ毛の場合、毛根がすでに曲がった状態である場合は髪がねじれたくせ毛になる。
また、髪に含まれるメラニン量の割合により、髪のレベル(明るさ)は異なる。下図は、直毛、波状毛、縮毛の髪質、及びメラニン量と髪のレベルを示したものである。
髪の特徴
直毛
波状毛
髪のレベルスケール
縮毛
6レベル
Personal Color
イエローアンダートーン
Spring
8レベル
10レベル
12レベル
14レベル
16レベル
18レベル
ブルーアンダートーン
Autumn
Summer
Winter
髪
肌
目と
リング
瞳
唇
肌の赤み
ほくろ
爪と掌
こげ茶
黒
赤毛
図1:パーソナルカラー診断要素
図2:パーソナルカラー診断要素「髪の特徴」
髪に含まれるメラニンの量の違いから、ヘアカラー後の退色がそれぞれ存在し、その
特性が似合う色を診断する要件になるのではないかと推測する。ヘアケア知識が豊富で
顧客の毛髪診断が的確にでき、それに対する処置アドバイスも的確に行えるヘアケアマイ
スター(一般社団法人日本ヘアケアマイスター協会公認)が判定する毛髪要素と、パーソナ
ルカラーリストが判定する4シーズンの間にどのような関係がみられるかを判定する。
・被験者33名(男性15名、女性18名:年齢19∼20歳)
・ヘアケアマイスター3名(資格取得後1年程度)
・パーソナルカラリスト4名(職務経験3∼10年)
・観察条件:昼白色蛍光灯
(ナショナル製FHF32HE−N−H、照度 約1100lx)
頭髪特性
②質疑応答
50%
25%
25%
こげ茶
赤
オレンジ
黄
25%
25%
30%
20%
オレンジ 50%
赤+こげ茶 25%
黄+薄黄 25%
モデル
33 名
頭髪特性とシーズンとの
関係を解明
シーズン
スプリング・サ マー
オータム・ウィンター
パーソナルカラリスト
パーソナルカラリスト
① 被 験 者の要 件を診断する
②シーズン診断
赤+こげ茶
オレンジ
黄
薄黄
オレンジ
黄
薄黄
20%
30%
30%
20%
25%
50%
25%
黄
薄黄
白
20%
70%
10%
図3:パーソナルカラー診断要素「髪のレベルスケール」
予測の設定
ヘアカラーマイスターが判定した要素とパーソナ
退色
赤
クセ毛
ルカラリストが判定したシーズン間にどのような関係
があるのかを確認するために予測を設定した。シーズ
ン判定は、退色のみならずクセ毛によってどのような
影響を与えるかが焦点となる。
直毛
橙
黄
ウインター
オータム
オータム/
ウインター
オータム/
ウインター
ウインター
オータム
スプリング
スプリング
スプリング
スプリング
ウインター
オータム
スプリング
サマー
サマー
サマー
波状毛
縮毛
スプリング
オータム/
ウインター
上段
退色の予想
下段
クセ毛の予想
表 1:予測の設定 【退色】
赤→ウインター
橙→オータム
黄→スプリング
【退色+クセ毛】
赤+直毛→オータム/ウインター
赤+波状毛→ウインター/スプリング
赤+縮毛→ウインター/サマー
橙+直毛→オータム/ウインター
【クセ毛】
橙+波状毛→オータム/スプリング
直毛→オータム/ウインター 橙+縮毛→オータム/サマー
波状毛→スプリング
黄+直毛→スプリング/オータム/ウインター
縮毛→サマー
黄+波状毛→スプリング
黄+縮毛→スプリング/サマー
ヘアケアマイスター
退 色・クセ毛
図 4:実験の流れ
① 頭 髪を診 断
こげ茶
赤
オレンジ
【④ 予測】
【③ 実験方法】
ヘアケアマイスター
50%
25%
25%
【⑤ 結果】
【退色】
(a)からわかるように、赤がウインター、橙がオー
タム、黄がスプリングと予測通りの結果となった。
結 果
【クセ毛】
(b)
からわかるように、
直毛がオータム、
波状毛がス
プリング、
縮毛がサマーと予測通りの結果となった。
【退色・くせ毛】
「黄・縮毛」では85%がサマーとなった。9パターン
中4つに於いてクセ毛が4シーズンに評価に影響を
与えることが示唆され、3つで退色とクセ毛の評
価が強めあい4シーズンを導く結果となった。
図 5:実験結果
【⑥ 考察】
実験結果から退色及びくせ毛の種類における4シーズンの割合の順位に関しては予測通りとなった。
退色とくせ毛において9パターン中4つにてクセ毛が4シーズン評価に影響を与えることが示唆された。
【⑦ 結論】
シーズン決定に於いて髪質は重要な要素となる。
②診断決定
② 診断 決 定
・スプリング:クセ毛率が高く、退色すると
黄色が残る傾向が強い。
・オ ータム:クセ毛率が低く、退色すると
オレンジ色が残る傾向が強い。
・サ マ ー :クセ毛率が高く、退色すると
赤オレンジ色が残る傾向が強い。
・ウインター:クセ毛率が低く、退色すると
赤色が残る傾向が強い。
Spring
くせ毛率は高く、前髪に
ウェーブ毛。
パ ー マ は か か り や す く、
ウェーブパーマのもちが
よい。退色すると黄っぽく
なる。
メラニン
薄
Summer
くせ毛率は高く、髪全体に
縮毛のクセ。パーマはかか
りやすく、ウェーブパーマ
のもちがよい。ヘアカラー
が退色すると赤オレンジっ
ぽくなる。
黄
赤
Autumn
くせ毛率は低く、表面につ
るっとした艶のある直毛。
パーマはかかりにくい。
ヘアカラーが退色するとオ
レンジっぽくなる。
Winter
メラニン
濃
くせ毛率は低い。薬剤の
吸い込みが悪く、はじく。
ヘアカラーが退色すると
赤っぽくなる。
図 6:結論
今回は退色と髪質という要素を取り上げたが、その他の要素(毛量、白髪など)によってもシー
ズン判別は変わるものと予測される。今後は更にサンプル数を増やし、毛量や白髪の要素も
織り込んで分析をしていきたいと思う。