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丸紅、カザフスタン共和国・ アティラウ製油所近代化

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概況 NOW:カザフスタン
丸紅、カザフスタン共和国・
アティラウ製油所近代化
——17年間にわたる取り組み、二勝一敗——
根岸 邦夫
丸紅株式会社
エネルギー・環境インフラ本部
エネルギー・化学プラント部 部長代理(前アスタナ出張所長)
近代化フェーズ1の成功
1991年にソ連邦より独立したカザフスタン共和国は、
(経済協力・油田開発・民間案件としての製油所近代
化)のひとつとして日本政府の後押しを受けつつ案件
形成を進めた。その結果、99年にカザフスタン政府と
同国西方のカスピ海に面するアティラウ製油所の近代
丸紅の間で近 代 化 案 件 推進に関する覚 書を締結、
化を国家の優先事業として選定した。アティラウ製油
2000年にJBICの支援を得ながら日揮・丸紅にてFSを
所は1945年に米国による対独援助の一環として建設さ
実施し、丸紅が資金を手配してFEEDを行ったうえで
れた製油所であり、独立時には原油精製能力日量10万
01年12月にアティラウ製油所と日揮・丸紅コンソーシ
バレルとカザフスタン最大規模を誇っていたが、設備
アムの間でEPC契約が締結された。近代化の内容は常
の老朽化により低減した生産量の回復および製品品質
圧蒸留装置の改造、高オクタン価ガソリン製造装置建
の改善が求められていた。
設、環境規制への対応、硫黄除去装置の建設であり、
丸紅は1993年にアルマティ出張所を開設し、98年よ
り国営石油ガス会社であるカザフオイル社との間でア
契約金額は約2億ドル、対カザフスタン向け初となる
JBICのバイヤーズクレジットが適用された。
ティラウ製油所の近代化に関する協議を開始した。遷
その後、客先カザフオイル社がトランスネフテガス
都されたばかりのアスタナに足しげく通いつめ、ナザ
社との再編成を経てカズムナイガス社として再出発し
ルバエフ大統領との個別面談時に案件推進を支援する
た関係で、契約発効は2003年3月まで遅れた。35カ
との言葉を得て、日本・カザフスタン両国間の3分野
月の工期が開始された後も厳しい冬季の気候、旧ソ連
の社会主義体制が色濃く残る官僚的な制度などさまざ
まな困難が立ちはだかったが、予定工期通り06年2月
に無事完工し、日本に対する高い信頼を勝ち得ること
ができた。また、この際に培ったカズムナイガス社・
アティラウ製油所との人的関係はいまだに継続してお
り、後続の近代化フェーズ2・フェーズ3商談の際に
大きく寄与している。
近代化フェーズ2の挫折
近代化案件の成功を受け、丸紅はアティラウ製油所
のさらなる近代化を進めるべくカズムナイガス社へさ
まざまな提案を続けてきた。CCR(連続触媒再生式接
触改質装置)
、芳香族生産設備(パラキシレン年間50
万トンおよびベンゼン年間14万トン)の新設を中心と
する改造計画を近代化フェーズ2と位置づけてコスモ
エンジニアリング・丸紅共同で2006年にPre-FSを実
施し、08年にカズムナイガス社は同提案の推進を正式
に決定した。
近代化フェーズ3、日立造船Cr-Moリアクター据付工事
48 2015.7
丸紅は日揮とともにEPCおよび融資計画を提案し、
【スポット研究】概況 NOW:カザフスタン
2006年完工の近代化フェーズ1同様の展開を図るべく
るアイデアを持ちかけた。当初SEGは丸紅の提案に対
活動を続けてきたが、リーマンショックに端を発した
して消極的な姿勢をみせたが、海外EPC契約履行の
カザフスタン金融危機に対して中国が支援を表明、09
経験不足、特に不慣れな海外機器調達に対する不安
年4月に油田権益獲得資金も含めた100億ドルの融資
を鑑み、丸紅およびKSSとの間でコンソーシアムを組
契約を締結し、うち35億ドルが中国品タイド融資と
んで応札することに合意した。
かんが
なったことにより状況は一変した。カザフスタン政府
2011年11月25日に応札したのはSEG・丸紅・KSSコ
よりカズムナイガス社へ「中国品タイド資金の使途を
ンソーシアムおよび韓国企業の2グループ。12月5日
早急に策定せよ」との指示が下り、中国シノペック・
にアティラウ製油所より「SEG・丸紅・KSSコンソー
エンジニアリング・グループ(以下SEG)が急きょ近
シアムとの交渉を進める」との連絡を受け、契約交渉
代化フェーズ2EPC商談に名乗りを上げることとなっ
を開始。12月15日契約調印という非常にタイトなスケ
た。日揮・丸紅とSEG・KSS(地場建設会社)の2グ
ジュールを提示され、ほぼ連日徹夜でアティラウ製油
ループが応札した国際競争入札の結果、約10億ドルを
所との交渉を実施。気温マイナス40℃近いアスタナに
提示したSEG・KSSの受注が決定し、09年10月にア
てロシア語・中国語・英語が飛び交うなか激しい議論
ティラウ製油所とSEG・KSSコンソーシアムの間で
を重ねたが14日深夜になってもまとまらず、調印日を
EPC契約が調印されることとなった。
2週間延期して交渉を続けた結果、12月29日に16億
近代化フェーズ3への取り組み
8000万ドルのEPC契約への調印を実施するに至った。
その後、引き続き融資契約に関する交渉をカズムナ
イガス社・アティラウ製油所とJBICおよび中国輸出入
2010年1月にロシア・カザフスタン・ベラルーシの
銀行の間で実施し、2012年8月に融資契約が締結さ
3国は、ユーラシア関税同盟を発足させて域内関税障
れてEPC契約は正式に発効し、16年中旬の完工を目指
壁を撤廃し、相互関係を深めて将来的にはユーラシア
して現在契約履行中である。すでに一部機器は黒海・
経済連合にまで昇華させることに合意、このなかに
ボルガ川・ドン川ルートを経てカスピ海北部のアティ
「2016年1月以降、域内の石油製品は環境負荷の低い
ラウへ到着している。近代化フェーズ3完工後、アティ
ユーロ5規格に統一する」との合意が含まれていた。
ラウ製油所は原油精製能力日量15万バレル、ユーロ5
アティラウ製油所は近代化フェーズ2が完成するとパ
規格の石油製品を生産する予定である。
ラキシレン・ベンゼンを生産することによりガソリン
アティラウ製油所の近代化はこのフェーズ3をもっ
基材が減少するため、カズムナイガス社は石油製品の
て終了、別途カザフスタン国内ではパブロダール製油
増産およびユーロ5規格への品質改善を目的とし、原
所・シムケント製油所の近代化案件も進んでいるが、
油重質部留分を高品質の石油製品に転換させるFCC
カザフスタンは豊富な天然資源を有する国であり、1
(流動接触分解装置)ユニットを含む12ユニットの新
次産品輸出への依存から脱却すべく各種産業の育成
設・2ユニットの改修を近代化フェーズ3として早急
振興を進めている。丸紅はアティラウ製油所近代化
に推進することを11年春に正式決定した。
フェーズ1およびフェーズ3の経験を生かし、同国で計
近代化フェーズ2の契約履行を進めていたSEGは
画されている各種案件への取り組みを進めてゆく。
連続受注を狙い官民合わせた攻勢をかけてきたが、丸
紅はアティラウ製油所幹部が漏らした「われわれは近
代化フェーズ1で納入された日本製機器を信頼してい
る、三井造船のコンプレッサーは15年間まったく故障
していない、近代化フェーズ2では中国製機器ばかり
導入されているが近代化フェーズ3で日本製機器を導
入することはできないのか?」との言葉に活路を見出
した。カズムナイガス社も近代化フェーズ2が完工し
ていない状況下、中国企業単独へ大型案件を連続発
ちゅう ちょ
注させることに対する躊 躇もみられたため、丸紅は
SEGに対して、丸紅が機器調達スコープを請負うかた
ちでコンソーシアムを結成し、日中共同融資を手配す
2011年12月29日、近代化フェーズ3契約調印式、手前左より
KSSラム副社長、丸紅内山部門長、SEG朱社長、
アティラウ製油所バイタジエフ社長(肩書きは調印式当時のもの)
2015.7
49
概況 NOW:カザフスタン
豊田通商、
中央アジアに商機あり
——日本企業初の自動車生産事業と
豊田通商初の農業事業——
市橋 卓也
豊田通商株式会社 海外地域戦略部
ロシア・中央アジア戦略室 室長
豊田通商の開発重点国 カザフスタン
カザフスタンの人口は約1700万人と小規模だ=「そ
のため、経済発展が進み一人当たりのGDPが約1万
豊田通商はカザフスタンを「開発重点国」と位置づ
3000ドルに達した現在でも爆発的な内需拡大は見込み
け、新興国の中でも全社的に優先して取り組む重要国
にくいが、同国は2014年5月、ロシアやベラルーシと
としている。これまでトヨタ車やフォークリフトの輸
ともにユーラシア経済連合(EEU)条約に署名。
」3
出・販売など、特に自動車分野で強みを発揮し同国の
カ国の連合経済圏でみれば人口は同国の約10倍(1億
経済発展に寄与してきたが、2014年6月30日、当社
7000万人)
、GDPは同国の約12倍(2兆4000億ドル)
はカザフスタン共和国の農業法人コクテム社へ出資す
と大きく規模が広がることになり今後の発展が期待で
る基本契約を締結し、当社として初めて同国での農業
きる国だ。2015年1月にはアルメニアもEEUに正式加
事業に参入した。カザフスタンでの大規模な農業生産
盟しており、域内経済統合の流れはいっそう加速して
事業は当社にとって新たな歴史をスタートさせたとい
いく。
えよう。
豊田通商の歩み
カザフスタンの魅力
カザフスタン共和国は1991年12月に独立した国。わ
カザフスタンといえば開けた広大な土地が思い浮か
れわれの同国での歴史は、93年に商都アルマトイに事
ぶように、同国はユーラシア大陸の中央部に位置し、
務所を開設し自動車の輸入販売およびサービス業務を
面積272万km という、日本の7倍、CIS諸国の中でも
開始したことから始まる。98年にトヨタ車の販売店と
2番目に大きい国土をもつ。石油・非鉄金属などの豊
してトヨタツウショウ・カザフスタン・オートを設立、
富な資源を有し、ソ連崩壊・独立後に経済成長を遂げ
その後二輪車販売代理店を設立した。2007年にはア
た同国は、脱資源経済を掲げ産業の近代化を国家ビ
ルマトイ市に駐在員事務所を開設するとともに、自動
ジョンに打ち出し、製造業の振興を通じた経済の多角
車以外の分野では日本企業として初のカザフ産大麦を
化を目指している。
日本へ輸出するなど事業拡大を進めてきた。
2
は しゅ
カザフスタンでの播種の様子
50 2015.7
年間3000台を現地生産するフォーチュナー第1号
【スポット研究】概況 NOW:カザフスタン
大きな事業拡大のきっかけは2008年、同国のイセケ
類、油糧作物や、ニンジン、ジャガイモなどの野菜の
シェフ元副首相(現投資発展省大臣)自ら当社に自動
多品目生産を行っている。また当社はこれまで、日本
車産業誘致の打診があったことだ。国家の一大事業に
と中国で農業事業に参入し、人員配置効率化や農業機
われわれが貢献できるチャンス。当社はトヨタ自動車
械の稼働率向上などを支援している。このたび当社が
とともに、日本企業として初めてカザフスタンでフォー
コクテム社に資本参加し、農業事業へ参入することに
チュナーのCKD(Complete Knock-Down)生産事
より、コクテム社の栽培・生産管理、収穫物の保管か
業 注 への参入を取り決めた。当社の役割は、シンガポー
ら販売過程の業務改善に取り組むことで生産効率を高
ル・タイ・日本から合計3000近くにもなる設備や部品
め、収穫量の安定化につなげることができる。また当
を同国に輸送する部品物流を担うこと。通常の欧州経
社としても、本出資を通じて大規模農業生産事業の知
由での海上輸送ではなく、ロシアまで船で運んだ後、
見を蓄積し、今後の大規模農業事業ニーズに対応して
カザフスタンの工場まで鉄道で運ぶ「海陸複合一貫輸
いきたいと考えている。
カザフスタン鉄道との物流網活用により、将来大規
送」を提案し実現、14年6月生産を開始した。
2010年には首都アスタナに分室を開設、12年にはカ
模生産で小麦などの輸出競争力が高まれば中央アジア
ザフスタン鉄道と、同社のアジアと中央アジアを結ぶ
向けの輸出も検討し、地域の食糧安定供給に貢献する
物流網の活用を目的とした相互協力の覚書を締結し、
ことも視野に入れている。
物流事業参入の検討に入った。
カザフスタンのさらなる発展のために
カザフスタンの国づくりの一役を担う
注:CKD生産:部品を海外から運び、現地で生産・加工を行う方法。
総合商社として世界の食糧安全保障へ貢献
するために――カザフ農業法人へ出資――
屋カザフスタン共和国名誉領事」に就任し、当社名古
カザフスタン政府は2013年、同国の農業分野の道筋
館」を開設した。事業でのさまざまな取り組みを進め
を定めた国家戦略「アグロビジネス2020」を策定した。
るなか、官民連携によるカザフスタン政府と当社の絆
同国は穀物耕作面積世界6位、日本の農地面積の約5
はいっそう深まりつつある。今後もカザフスタンのよ
倍もの畑作農地を有するにもかかわらず、農業生産性
きパートナーとして、全社一丸となって両国政府のよ
で世界113位と、収量や生産性に課題がある。カザフ
りいっそうの友好関係強化に大きく貢献していきたい。
スタン政府は現在の主要品目である麦類以外の生産品
2010年9月29日、当社会長の清水順三が「在名古
屋本社内に「在名古屋カザフスタン共和国名誉領事
(2015年5月末、記)
目への多様化を推奨
し、安定的な食料供
給を目指している。
豊田通商は、こう
したカザフスタンの
農 業 発 展に貢 献し
課題解決の一助とな
るべく、農業法人コ
クテム社に20%の出
資を行った。コクテ
ム社は、カザフ北部
に山手線内とほぼ同
規 模 の 約6000ヘ ク
タールの農地を持ち
大規模農業に取り組
む 企 業 だ。2007年
の事業開始以来、麦
在名古屋カザフスタン共和国名誉領事就任披露式であいさつする清水会長
2015.7
51
概況 NOW:カザフスタン
カザフスタンの潜在性と挑戦
—— 豊富な資源と今後の成長期待——
今井 憲
国際協力銀行 モスクワ駐在員事務所
駐在員
「カザフスタン」といわれると一般の方は旧ソ連の
民の保健・教育・福祉、エネルギー資源、インフラ(特
国、よく知らない国といった印象をもつかもしれない
に運輸・通信分野)
、高度化した国家、という7つの
が、経済においては日本と相互に補完し合う非常に有
優先分野を規定した。この優先分野が別途作成される
望な協力関係が期待できる国と筆者は考えている。筆
具体的なアクションプランの土台となっている。
者は昨年10月にカザフスタンの首都アスタナで行われ
「カザフスタン2030」の実施に当たり、第1段階と
た第5回日本カザフスタン経済官民合同協議会に参加
して2001年12月に2010年までのカザフスタン共和国発
した。同会議には急きょマシモフ首相が参加してあい
展戦略(カザフスタン2010)が策定・実行され、現在
さつするなど、同国の日本に対する関心の高さがうか
はその次の段階である2020年までのカザフスタン共和
がえた。世界第10位の原油埋蔵量に加え、ウランやク
国発展戦略(以下「カザフスタン2020」
)を策定、実
ロムなど鉱物資源も豊富なカザフスタン。ユーラシア
行段階にある。
経済同盟に参加し、ロシアとも友好関係を築く一方で、
「カザフスタン2020」では2008年9月に起きたリー
ロシア一辺倒ではなく、アメリカやヨーロッパ諸国と
マンショックを踏まえ、経済の後退期への対応および
も良好な関係を維持し、また中国も視野に入れたバラ
その後の発展への準備の観点を含むのが興味深い。な
ンス外交を実施している。日本からではイメージがわ
お、
「カザフスタン2020」の基本方針は以下の5点に
きにくい国ではあるが、昨年7月より試験的に日本を
より構成されている。
含む10カ国についてビザを撤廃するなど、日本への窓
①経済危機後の発展への準備
を開けつつある。今回はカザフスタンの経済、そして
②工業化とインフラの発達を通じた多角化の促進によ
日本との今後の協調の可能性について、筆者の現地で
の印象を踏まえつつ紹介してみたい。
カザフスタン国家発展計画
カザフスタンは1997年10月、2030年までのカザフス
る持続的経済成長
③将来への投資、安定した経済成長、繁栄、カザフス
タン人の社会的福利厚生実現を目的とした人的資本
の競争力向上
④質の高い社会・住宅公営サービスの国民への提供
⑤民族間合意、安全、国際関係の安定の強化
タン共和国発展戦略(以下「カザフスタン2030」
)を
「経済危機後の発展への準備」ではビジネス環境の
策定、国家の安全保障、国内政治の安定、外国投資
整備や金融部門の発展をうたい、今後の持続的経済成
の促進と市場経済に基づく経済成長、カザフスタン国
長を見据えて、経済の多角化を目指している。ビジネ
ス環境の整備では、カザフスタンは世界銀行のビジネ
ス環境調査でのスコアが48.4(2005年調査)から64.5
(14年調査)と上昇したものの、順位としては77位に
なっており、今後税制などの改革が期待されている。
また、日本、アメリカ、韓国などの計10カ国について
15日以内の滞在でビザを免除するなど海外からの人
第5回日本カザフスタ
ン経済官民合同協議会
に登壇したマシモフ・
カザフスタン首相(筆
者撮影)
52 2015.7
的・金銭的資本の導入体制を整備しつつある。また、
経済の多角化においては先進技術の導入に意欲的で
あり、後述のとおり日本への期待および日本企業に
とってのビジネスチャンスは大きい。
【スポット研究】概況 NOW:カザフスタン
EXPO2017とクリーンエネルギーの導入
カザフスタンの首都アスタナでは2017年にEXPOの
開催が予定されている。EXPOではクリーンエネル
ギーによる環境面での持続的経済成長が主なテーマと
なる予定であり、アスタナでは、会場の準備が着々と
進んでいる。筆者が10月に会場予定地を訪れた際に
は、建設事務所ができ、基礎工事が進んでいるところ
であった。カザフスタンは環境への取り組みについて
はほかの中央アジア諸国に比して先進的で、アスタナ
アスタナ・ソーラー社(筆者撮影)
にはアスタナ・ソーラー(Astana Solar)と呼ばれる
太陽光パネルの製造会社・工場があり、筆者が昨年10
なかには上述の油田開発やウラン開発といった資源プ
月に訪問した際も太陽光パネルの製造を行っていた。
ロジェクトへの日本企業の投資案件やその開発に必要
アスタナ・ソーラーの太陽光パネル製造工場自体はフ
な建設機械類の輸出、また後述の産業の多角化(石油
ランスの技術によるものであるが、クリーンエネル
化学産業)に向けた設備の輸出も含まれている。
ギーに関心の高い同国においては、日本の高度な環境
技術は一目置かれている。アスタナはEXPOの準備だ
けでなく、次々と高層住宅の建築が進んでおり、都市
開発が進んでいる。
カザフスタンの豊富な資源
カザフスタンはカスピ海からアルタイ山地に広がる
産業多角化と日本企業の協力の可能性
上述のとおり「カザフスタン2020」では工業化とイ
ンフラの発達を通じた多角化による持続的経済成長が
うたわれており、豊富な資源を背景に石油化学産業は
有力な分野となろう。また、経済成長による電力需要
増加に伴う発電事業も、日本企業の高性能タービンな
国土をもち、カスピ海では原油、南部ではウラン、北
ど機器設備を取り入れる可能性が高い分野でもある。
西部ではクロム、鉄鉱石、亜鉛といった鉱物が産出す
さらにカザフスタンは1人当たりGDPが約1万2000ド
る。原油についてはINPEXがカスピ海沖カシャガン油
ルと比較的高所得である一方、人口自体は1640万人と
田開発に投資を行っており、ウランについては丸紅が
まだまだ消費市場としては大きい規模ではない。しか
国営カザトムプロムとともに投資を行っている。カザ
し国民の人的資本の向上(質的側面だけでなく、量的
トムプロムは東芝が買収したウェスチングハウスの株
側面も含む)が「カザフスタン2020」でうたわれてお
式を一部引き受けるなど資源部門での日本とカザフス
り、人口増加に向けた医療、社会保障の充実といった
タンの交流は従前からあり、今後両国の交流が増える
政策がとられ、実際に人口は増加している。加えて、
に従いますます深化していくことを期待したい。ステ
ユーラシア経済同盟参加による1億6000万人の消費
ンレス素材の原料となるクロムについてもカザフスタ
市場へのアクセス、それに伴う製造業の活性化も十分
ンは世界第2位の生産量を誇り、また、質もよいため、
に考えられる。2015年4月には大統領選挙が行われ
日本とも貿易が活発であり、今後も引き続き堅調な取
るが、現状ではナザルバエフ大統領の再選が有力視さ
引が見込まれる。
れている。同大統領の長期的なビジョンにのっとった
政策が実施されていくことにより産業の多角化がいっ
JBIC のカザフスタンにおける取り組み
そう進み、同国の信頼と期待の厚い日本企業の高品質
な製品・高度な技術の輸出あるいは日本の製造業企業
JBICはこれまでカザフスタンに対し、1994年以降
の進出を期待してやまないし、その実現に向けてJBIC
合計25件、3018億円の融資を承諾している(平成26
モスクワ駐在員事務所としても全力でサポートしてい
年12月末)
。94年の国際通貨基金との構造調整プログ
きたい。
ラム融資から始まり、日本企業の輸出に伴う輸出金融
や日本企業とカザフスタン企業との合弁企業向け投資
金融など現在では多方面の融資を承諾している。その
(2015年3月末日記)
※筆者略歴:2002年国際協力銀行入行。09年サンクトペテルブ
ルグ大学にてロシア語研修。13年12月から現職。慶應義塾大学
経済学部卒。休日は公園の多いモスクワを散歩している。
2015.7
53
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