地域経済研究所の姿 地域経済研究所は,本学建学の基本理念の一つである「地域と連携した開かれた大学」の 実現を目指し2001年4月に開設した。これまで地域産業および行政機関等との密接な連携・協 力により、地域の抱える諸問題を研究対象とし、研究を通した地域貢献(情報提供・研修・ 相談)を行う研究機関として着実に成果をあげてきた。 また、グローバリゼーションのさらなる進展等、経済・社会の大きな構造変化が進む中、 成長著しい東アジア地域の経済を地域経済の発展に取り込むため、2012年度から地域経済部 門とアジア経済部門を創設して研究所の機能強化を図った。 さらに2014年末に政府が人口減少克服・地方創生を提唱したのを受け、2015年度には人口 減少対策プロジェクトチームを新設し、福井県の人口減少克服を包括した地方創生の課題に も取り組み、福井県の特性を踏まえた長期ビジョンと総合戦略の策定に資する調査研究に着 手した。2015年度に実施した具体的な事業内容は下記のとおりである。 1.調 査 研 究 調査研究については、評価委員会の提言を受け、2014 年度から新たに地域経済部門とアジ ア経済部門とが一体となって福井県経済の国際化に向けた課題に取り組んだ。地域研究とア ジア研究の融合を目指し、研究所の全研究員が共通テーマ「躍進・変貌するアジア経済と福井 県企業・産業界等の対応」に取り組み、全員で5件の論文・リポートを『ふくい地域経済研究』 に連載したほか、雑誌・新聞、シンポ・セミナー等で幅広く情報発信した。 また、アジア経済部門では所長を含む研究者4人が8本の研究課題に、地域経済部門では 研究者3人が7本の研究課題に、人口減少対策チーム 2 人が4本の研究課題に取り組んだ。 2015 年度に公表した論文・著書・寄稿等の業績は、アジア経済部門が論文6件、共著5件( 「文 眞堂」3点、「日本評論社」、「明石書店」各1点)、寄稿13件(福井新聞『新アジアの風』 9件)、地域経済部門が論文8件、著書1件(単著 1 点「晃洋書房」) 、寄稿30件、人口減少 対策チームが著書1件(共著1点「有斐閣」)、論文6件、寄稿3件である。なお、昨年度出 版した著書(井上武史『原子力発電と地方財政』)は自治体学会より研究論文賞を受賞した。 (1) 研究所全体で取り組む課題 研究課題 1. 躍進・変貌するアジア経済と福井県企業・産業界等の対応 担当 全員 (2)アジア経済部門:研究課題 研究課題 担当 1. 地方創生と国際化・イノベーション-北陸地域の産業競争力強化に向け た政策的含意-(新規)(学長裁量枠研究費A) 2.福井県企業のアジア事業展開支援に資する政策課題と情報提供 -地域経済分析システム(ビッグデータ)等を活用した分析-(新規) (地域貢献研究推進事業) 丸屋 3.ASEAN 地域統合と産業集積:越境フラグメンテーションの影響(新規) 4.ASEAN における電機電子産業:変化する市場とアジア新興企業の伸張 春日 (新規) 5.ASEAN における韓国企業の動向(新規) 松尾 6.アジアのビジネス環境調査(新規) 7.現地適応政策を中心とするアジアへの日本的人的資源管理の移転可能性 (新規) 齋藤 8.アジアと日本の人的資源管理の比較研究 (3)地域経済部門:研究課題 研究課題 1.平成27年度県民双書の出版(新規) 2.伝統的工芸品産業の振興による福井県経済の発展に関する研究 3.原子力発電所立地地域における新たな対応策の動向に関する調査研究 4. 「地域力」の向上方策と効果に関する調査研究(新規) 担当 南保 井上 5.地方版総合戦略と人口減少対策に関する研究(新規) 6.高速交通体系の整備とまちづくりに関する研究(新規) 7.あわら温泉と坂井市三国町を中心とした地域における観光まちづくりの 江川 推進に関する研究(新規) (4)人口減少対策プロジェクトチーム:研究課題 研究課題 担当 1. 福井県における人口減少の要因分析と具体・実践的施策の提言(新規) (大学連携リーグ連携研究推進事業) 2. 人口減少への政策対応のあり方に関する研究(新規) 佐々井 (地域貢献研究推進事業) 3. わが国を取り巻く国際人口移動の動向と社会経済的要因(新規) 4.日本における人口移動と結婚行動との関連性(新規) 丸山 2.地域貢献(情報提供・研修・相談) 【アジア経済部門】 セミナー・シンポジウムなどによる情報提供、海外視察・要人招聘、グローバル人材の育 成・確保へ向けた研修、企業相談などのチャネルを通じて地域貢献に努めた。具体的には、 各商工会議所・自治体等の協力を得て「アジア経済フォーラム」、「アジア塾」、「大学連携リ ーグ連携講座」を開催したほか、「海外視察ミッション」、「アジア要人招聘」、大学生を対象 にした海外インターンシップ研修を実施した。また、海外ビジネスに携わる県内企業を頻繁 に訪問し、海外展開支援ニーズを聴取するととともに、アジア関連情報の提供にも努めた。 2015 年度に実施したアジア経済部門の事業内容は次のとおりである。 (1)講座・セミナー・フォーラム ①「アジア経済フォーラム」の開催 企業から要望の多いミャンマー、タイを始めとしたアセアン地域、及び中国、韓国のビ ジネス環境を中心に全6回開催した。会場は商工会議所会議室、主な講師は下記のとおり。 椎野幸平(ジェトロ海外調査部国際経済課長) 、石田正美(ジェトロ・アジア経済研究所 開発研究センター長)、丸屋豊二郎(地域経済研究所所長)、春日尚雄(同教授)松尾修 二(同准教授)等 ② 「アジア塾」の開催 経営者・幹部がアジア(世界)の最新動向について理解を深め、洞察力を養うのを目的 に、ディスカッションに重点を置いた少人数による塾形式のフォーラムを全 4 回開催した。 会場及び講師は次のとおり。 ・福井商工会議所、塾生45社(63人) 「海外に向かう地方の小売、飲食、サービス業」 講師:北川 浩伸(ジェトロ東京本部) ・福井商工会議所、塾生10社(13人) 「ベトナム・カンボジア視察製造業向け説明会」 講師:池部亮(ジェトロ東京本部) ・地域経済研究所、塾生 1 団体、1 社(17人) 「TPP交渉大筋合意 -その概要と意味-」 講師:石川 幸一(亜細亜大学アジア研究所) ・地域経済研究所、塾生 1団体(9人) 「TPPと地方創生」 講師:丸屋豊二郎(地域経済研究所所長) (2)海外視察・招聘 ①「海外視察ミッション」 第 1 回:ベトナム、カンボジア視察(平成 27 年 10 月 18 日~23 日) 福井商工会議所「アジ研Ⅲ!(製造業編) 」との共催、 県内 11 社・団体から 16 名が参加。 第 2 回:ベトナム、タイ視察(平成 27 年 11 月 13 日~18 日) 福井商工会議所「アジ研Ⅲ!(非製造業編)」との共催、 県内 4 社・団体から 10 名が参加。 第 3 回:ミャンマー、タイ視察(平成 27 年 11 月 15 日~21 日) 鯖江商工会議所国際化委員会との共催、県内 5 社・団体から 9 名が参加。 ②「アジア要人招聘」 第 1 回:ミャンマー(平成 27 年 7 月 31 日~8 月 3 日) ミャンマー政府の外資受入機関のキー・パーソンである投資企業管理長のアウ ン・ナイン・ウー氏と在日ミャンマー大使館商務官のミン・ゾー・ウー氏を招聘 し、セミナー及び意見・名刺交換会を開催。ミャンマーに関心のある企業・団体 総勢 45 名が出席。福井県の基幹産業である繊維、眼鏡、機械、化学を中心に 9 社を訪問。 第 2 回:ベトナム(平成 27 年 10 月 13 日~14 日) 政策研究大学院大学(GRIPS)と共同で、ベトナム政府からレ・ソン・ハイ民族 委員会副委員長(副大臣級)をはじめ副大臣・局長クラスを 19 名招聘し、福井 県経済界との経済交流会を開催。セミナー・交流会には総勢 80 名が出席。福井 県を代表する企業 3 社を訪問。 (3)グローバル人材の育成・確保へ向けた研修 ①県内大学生向け研修(大学連携リーグ講座「グローバル人材養成講座」) 5/23(土)~6/13(土)に計7コマの講義を行い延べ57名が参加した。主な講師は、以 下のとおり。 福井大学教授 小幡浩司氏、東京外国語大学 教授 澤田ゆかり氏、仁愛大学教授 モーリス・ルイス・スプリチャル氏、 ㈱九門事務所 代表取締役社長 九門崇氏、 福井県立大学教授 丸屋豊二郎など ②県内大学生向け研修(大学連携リーグ講座「県内企業が求めるグローバル人材とは」) 9/12(土)~13(日)に1泊2日の集中講義を行い20名(福井大5、県立大5、福井工 大2、仁愛大2、高専6)が参加した。アジェンダは以下のとおり。 ・県内企業動向、経済情勢、海外で働く意義について講義 ・県内企業の海外事業担当者(シャルマン、日本商運、福井鋲螺)の講話 ・福井青年会議所との討論ディスカッション ・全編英語での討論プレゼンテーション など ③ 海外インターンシップ研修(ベトナム、タイ) 8/30(日)~9/7(月)の9日間、日系企業や台湾系企業の海外拠点において、工場視 察や現地駐在員との意見交換などを行う海外視察研修を実施し、11名(経済学部4年(2)、 3年(2)、2年(7))が参加した。訪問先は以下のとおり。 ベトナム:YKK、ワコール、第一ビニール、徳本工業(台湾)、バルカン(台湾)、ジェトロ タイ :日産自動車、セーレン、福井鋲螺、日本AMC、E&Hプレシジョン、 アマタナコン工業団地事務所、ジェトロ、SMIトラベルベトナム (4)企業への相談支援・情報提供 相談・情報提供企業:27社 業種内訳 :繊維(5)、金属加工(4)、化学(2)、機械(1)、眼鏡(1)、建設(1)、 サービス(4)、物流(1)、農業(2)、食品(6) 対象国内訳:タイ(3)、ベトナム(2)、ミャンマー(1)、カンボジア(1)、ラオス(1)、 台湾(3)、韓国(3)、アジア全般(6)、アセアン全般(7) 個別支援企業(事業展開具体化)の7社中、2社が海外企業との取引を開始。 (5) アジア諸国のマクロ経済等データ・ベースの作成 ① アジア諸国のカントリー・リスクに関するデータ・ベース(更新) アジア諸国のカントリー・リスクに関するデータ・ベースを更新しウェブサイトに公 開。 ② アジア諸国のビジネス環境比較に関するデータ・ベース アジアビジネス環境情報比較として、各国主要都市の賃金、工業団地代、レンタル工 場代、電気・水道代、コンテナ輸送代に関するデータ・ベースを作成しウェブサイトに 公開。 【地域経済部門】 地域経済部門では、セミナー・シンポジウム、相談・情報提供業務を中心に地域貢献に努 めた。具体的には、各商工会議所・自治体等の協力を得ながら、地域に直接出向いて地域の 人々を交えて、あるいは学外の著名な研究者や政策担当者等を多数招聘して、 「地域経済フォ ーラム」、 「地域経済研究会」 、 「北陸地域政策研究フォーラム」などを開催したほか、行政機 関・経済団体・企業等への相談支援・情報提供、社会経済・統計データの編纂を実施した。 2015年度に実施した地域経済部門の事業内容は次のとおりである。 (1)講座・セミナー・フォーラム ①「地域経済研究フォーラム」の開催 行政や経済団体、企業、県民から要望が多い地域経済・地価の動向について情報提供し たほか、地域の課題を地域で議論する出張フォーラムを行い、学外から著名な研究者や政 策担当者等を招聘し、また専任教員による研究成果を広く還元するなど全6回開催した。 会場は交流センター多目的ホール国際交流会館、大野市役所など、主な講師は下記のとお り。 ・江藤公彦(日本銀行福井事務所長) ・森山茂樹(クールジャパン機構 専務執行役員) ・寺西重郎(一橋大学名誉教授 元一橋大学副学長 日本大学客員教授) ・林逸男(株式会社林不動産鑑定所 不動産鑑定士) ・齋藤毅(地域経済研究所) 大野市役所開催「地元フォーラム(結の故郷推進シンポジウム)」 ・岡田高大(大野市長) ・巣守和義(福井和泉リゾート株式会社 代表取締役) ・中川陽如(地域ブランドデザイン's ブランディングプロデューサー) ・山本恭子(うおまさ cafe オーナー) ・井上武史(地域経済研究所) ②「地域経済研究会」の開催 研究途上のテーマについて関係者との密接な意見交換を行うことによって、これまで以 上に地域のニーズに応じた研究内容や地域貢献に資する研究成果に結びつけることを目的 に、本年度は 2 回開催した。 ・「越前漆器産業の現状と今後の方向性」 報告者:土田直(越前漆器協同組合 理事長) ・ 「「地域を支える会社の特徴点」~福井を含め日本各地の中小企業の強さと重要性を考える~」 報告者:中沢孝夫(福山大学 教授、一般社団法人経営研究所シニアフェロー、 福井県立大学名誉教授) ③「北陸地域政策研究フォーラム」の開催 北陸地域の大学が連携して毎年開催される地域政策を研究課題とするフォーラムに参加。 本年度は2016年3月5日に富山県で開催され、福井県や石川県の大学教員などが参加した。 ④大学における講義 研究成果を活かした学生指導の一環として、学内外からの要請を受けて講義を担当した。 本年度の開講状況は、本学8件、他大学3件(仁愛女子短期大学、福井大学・東京工業 大学)。 (2)行政機関・経済団体・企業等への相談支援・情報提供 国や地方自治体などの行政機関、商工会議所や経済同友会などの経済団体、企業から個 別に電話や面談・出張等により、随時、相談や情報提供を積極的に行った。 (3)各種委員会・審議会・講演会・セミナーへの委員・講師派遣 2015 年度の実施状況は、地域経済部門において公職(審議会・委員会活動)計 84 件、 産業団体の委員 13 件、講師派遣(講演・セミナー・研修等)80 件、マスコミ対応 60 件で ある。なお、公職や委員のうち主に委員長や部会長など審議を総括する立場として活動し たのが 35 件である。 なお、公職や委員のうち主に委員長や部会長など審議を総括する立場として活動したの は、以下のとおり。 ・日本銀行「福井県金融広報アドバイザー協議会」 ・福井県安全環境部「福井県消費生活審議会」 ・福井労働局「福井県労働審議会」「地域訓練協議会」 ・福井市「福井市行政評価(外部評価)委員会」 ・坂井市「総合戦略推進会議」「地域づくり支援に係るソフト事業検討委員会」 ・敦賀市「男女共同参画プラン策定委員会」「指定管理者選定委員会」 (4)社会経済・統計データの編纂 地域が直面する様々な課題について、その方向性を見出すための基礎資料として、自治 体や支援機関、さらには民間企業のマーケティング活動に資するため、2015年度も社会経 済・統計データを作成し、データの蓄積と活用を図った。 【人口減少対策プロジェクトチーム】 (1) セミナー・フォーラム・講座等の開催 ① 「人口減少対策フォーラム」の開催 ・「人口減少社会と地方創生 -課題と挑戦-」(平成27年10月2日) 報告者:金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所 副所長) ・「『生涯活躍のまち(CCRC)』構想について」(平成28年3月18日) 報告者:森田 朗(国立社会保障・人口問題研究所 (2) 各種委員会・審議会・講演会・セミナーへの委員・講師派遣 ・福井県「ふくい創生・人口減少対策推進会議」本部支援 ・勝山市「まち・ひと・しごと創生総合戦略会議」委員 ・越前町「総合振興計画審議会」委員(兼議長) ・おおい町「創生総合戦略有識者会議」委員 所長) ・永平寺町「まち・ひと・しごと創生総合戦略策定委員会」オブザーバー ・総務省、内閣府等主催の委員会・審議会等における委員、ならびに講師 【研究所全体での取り組み】 (1)地域経済研究所「eメールマガジン」の配信 平成 27 年 4 月~平成 28 年 3 月(Vol.121~132)毎月末発行 コラム、報告、案内、編集後記 (2)『ふくい地域経済研究』の発刊(年 2 回) 第 21 号 平成 27 年 9 月 第 22 号 平成 28 年 3 月 平成 28 年 4 月
© Copyright 2024 Paperzz