ドナー資金の 財務運営と管理 世界銀行 1818 H Street, NW Washington, DC 20433 U.S.A 財務管理局 譲許資金・グローバル・パートナーシップ 副総裁室 www.worldbank.org/cfp 2010年5月 譲許資金・グローバル・パートナーシップ(CFP) 世界銀行 目次 ドナー資金の財務管理における世界銀行の役割 / 1 財務管理の実践 / 3 ドナー資産の管理における豊かな経験 / 3 ドナー資金の財務運営と管理 / 4 ドナー資金の投資運用 / 6 資本市場での仲介サービス / 8 リスクの監視と抑制に関する枠組み / 9 財務諸表の定期的作成と独立監査 / 11 財務・情報システムの提供 / 11 品質保証とコンプライアンス監視 / 12 プロジェクトやプログラムの独立評価 / 12 世銀の理事会と委員会を通じた監督 / 12 ガバナンスおよび腐敗防止(GAC)に関するアジェンダ / 12 情報公開および情報へのアクセス / 13 はじめに 世界銀行という総称で知られる国際復興開発銀行(IBRD)と国際開発協会(IDA )には、経済・社会開発向け の予算や他の資金の運営・管理に関する依頼が多数のドナー国政府や組織から寄せられています。本冊子は世 界銀行がこうした資産の運営・管理をいかに行っているかを説明するものです。 世銀機関のうち最貧国への支援に携わるIDAが1960 年に設立されて以来、IDAや一連の信託基金に資金を供 与する主権国家、 財団、 非政府組織(NGO)、 民間援助機関などの数はおよそ245件へと飛躍しました。 低中所得国での経済開発や貧困削減の促進を目的とする、こうしたドナーからの資金は2010 年度だけをとっ ても200 億ドルに達すると推定されます。2010 年 3月末現在、世界銀行は、IDAや信託基金が保有する流動資 産総額431億ドルを運営・管理しており、この資金を様々なセクターに幅広く配布しています。 世界銀行は一連の財務管理手法を駆使してドナー・パートナーから寄せられた資金が慎重に管理されるよう万 全を期しています。過去10 年間にドナー資金を受けた開発イニシアティブが増大したのは、受託者として高 度な財務管理基準を一貫して固守してきた世銀に対するドナーの深い信頼の証といえましょう。 ドナーからの資金は、一般銀行業務から、投資運用、通貨リスク管理、財務報告書作成にいたる数々の財務サ ービスを用いて運営・管理されています。これらの資金の管理に当たり、世銀は、安全な情報技術システムを維 持し、内部統制の包括的枠組みを保守しているだけでなく、委ねられた資金が世銀の方針と手続きに従って実 行されていることをドナーに確約するための監査を内外の両方で行っています。ドナー資金の健全な財務管理 は、経済・社会開発を目的とする納税金や他の資金を適切に活用するうえで是非とも必要なプロセスであり、 世銀の価値観の重要な一環をなすものです。私どもは、開発途上国や経済移行国において持続可能な形で成 果を上げるべく、ドナー・パートナーとの協力を惜しみなく行っていく所存です。 アクセル・ヴァン・トロットセンバーグ 副総裁 譲許資金・グローバル・パートナーシップ(CFP) 世界銀行 2 譲許資金・グローバル・パートナーシップ(CFP) 世界銀行 ドナー資金の財務管理 における世界銀行の役割 ドナーは、開発プロジェクト /プログラムの資金を ドナー資金の財務管理には世銀の他の部門も関 世銀に供与するに当たり、その資金が実行される 与しています。それには、法務局、 コントローラー、 までの間、適切に管理されることを期待していま 財務局、 コーポレート・ファイナンス局、情報技術局 す。すなわち、世銀が遂行する財務管理とは、 ドナ などが含まれます。 また、 世銀の資金を受けた開 ー資金の受領から、受け取った財務資産の投資、 発プロジェクトの評価と監督は地域やセクターな そして被援助国への資金実行までのプロセスを指 どの担当副総裁の責任下に置かれています。 しています。 この価値連鎖(バリューチェーン)の枠 内で、世銀は、財務報告書作成、ビジネス・プロセ ス実施、必要なシステムと統制上の枠組み堅持と いった多岐にわたる財務・リスク管理の活動やサ ービスを展開しています。 世界銀行の財務管理の概要 n ドナー資産の管理における豊かな経験 n ドナー資金の財務運営と管理 また、世銀内に設置された譲許資金・グローバル・ n ドナー資金の投資運用 パートナーシップ副総裁室( CFPVP)は、資金動 n 資本市場での仲介サービス 員、広報、方針策定、助言サービスを担当するほ n リスクの監視と抑制に関する枠組み か、国際開発協会( IDA )、金融仲介基金( FIFs)、 n 財務諸表の定期的作成と独立監査 そして世銀と被援助国の両方が実施する信託基金 n 財務・情報システムの提供 の財務管理とリスク管理の責任も負っています。 n 品質保証とコンプライアンス監視 n プロジェクトやプログラムの独立評価 n 世銀の理事会と委員会を通じた監督 n ガバナンスおよび腐敗防止(GAC)に関するアジェンダ n 情報公開および情報へのアクセス ドナー資金の財務運営と管理 1 2 譲許資金・グローバル・パートナーシップ(CFP) 世界銀行 財務管理の実践 ドナー資産の管理における豊かな経験 出の権限を有するのに対し、被援助国実施型の 世界銀行は、長期融資を無利子で行って最貧国を は業 務上(評 価および 監 督)の役割だけを担う 支援するIDA が1960 年に設立されて以来、ドナー 資金の動員と管理を手がけてきました。IDAの原 資は主にドナーからの拠出金で構成されており、そ れに、過去のIDA 融資に対する借入国からの返済 金と世銀の純利益からの移転、そして最近では国 際金融公社(IFC)からの贈与金で補完されていま す。IDAの第15 次増資では、中所得国や以前の借 入国(卒業国)を含め、合計 45か国が資金を拠出 しています。2009年度末には、世銀の財務局はお よそ213 億ドルに上る現金と投資案件をIDA に代 わって運営・管理しています。 場合は、資金を第三の被援助国に移管して、世銀 というものです。また、ここ10 年ほど、ドナーは、 一連の金融仲介基金(FIFs)を通じて開発業務を 推進するという別の形態の運営・管理も世銀に委 ねています。この基金の下では、世銀が財務管理 や助言の役割を担う一方、プロジェクトの実施は 他の機関や事業体によって行われます。現在、世 界77か国、245 ものドナーが、1,045 に上る信託 基金(FIFも含む)口座を通じて、こうした基金の財 政を支援しています。2009 年度末の時点で、世銀 は合計およそ199 億ドルの流動資産をこれらの口 座に保有しています。 1980 年代以降、ドナーは、世銀が実施する信託 このような多額のドナー資金を管理するに当たり、 基金を 通じて、二国 間 援 助なども行ってきまし 世銀は慎重な財務方針と手続きに従っています。そ た。こうした資金の多くは、世銀の資金を受けた の際、適切な業務上の方針や、プロジェクトの評価 開発プロジェクトに共同で資金を拠出することを と監督に関する既定のビジネス手続きの遵守規定 意図したものです。信託 基金とは一般に、1件以 を定めているだけでなく、セーフガード、プロジェク 上のドナーの拠出金で設立された金融上の取決 トの資材調達、被援助国の財務管理といった受託 めを指します。世銀が管理する信託基金は、世銀 者としての業務上の枠組みも設定しています。 実施型と被援助国実施型の信託基金で構成され 世銀機関の中でも中所得国と信用力のある低所 ています。世銀実施型の信託資金では世銀が支 得国を支援するIBRD は、トリプルAの信用格付 ドナー資金の財務運営と管理 3 を活かして、国際資本市場で IDAや信託基金のた 財務の運営と管理は、被援助国側におけるドナー めの信頼のおける金融仲介機関として機能してい 資金業務にも及びます。世銀は、贈与契約書やプ ます。IBRD は、信託基金や IDA の資産を別途に ロジェクト契約書を作成し、途上国や他の被援助 維持しており、自己の資産と混合することはあり 国との間でこれらの契約を締結します。金融仲介 ません。 基金(FIFs)の場合は、他の機関あるいは事業体 がプロジェクトの実施に携わります。また、基金の ドナー資金の財務運営と管理 残高は、プロジェクトに対する贈与承諾額が利用 可能な予想資金額を超えることがないよう確実に ドナー資金の財務運営と管理は、IDAまたは信託 追跡されています。将来のプロジェクトへの資金実 基金に対する資金拠出プロセスを経てドナーを適 行をにらんで、基金が現在どれほどの贈与を承諾 切に指導することから始まります。これには、必要 できるかを予想するフォーキャストも作成されま な法的文書やドナー拠出契約書の作成などが含ま す。さらに、実行時に必要資金が必ずあるよう、キ れます。次に、世銀は、分割支払いの請求書をドナ ャッシュフロー管理と流動性管理が行われます。 ーに送付し、その後、受け取った現金や約束手形 なお、被援助国への資金実行は、ドナー資金の受 を処理するプロセスを踏んで、資金の徴収と管理 領状況によって左右されます。 に当たります。 世界銀行の実行額の推移(∼年度) 単位:億米ドル 年度 年度 信託基金 年度 *%" 年度 年度 *#3% *#3%、*%"、信託基金の実行総額に占める世銀グループ信託基金の実行額の割合(%) 4 Financial Management of Donor Funds 5 世界銀行の実行額の推移(∼年度) 単位:億米ドル 特定の贈与に対する資金配分は、 信託基金のタス ク・マネージャーが記録し追跡します。そうした配 局は、投資目的を達成するための戦略的資産配分 分には、贈与または融資の承諾、管理予算、プロジ ェクト監督料、その他のコミットメントが含まれま 適切なポートフォリオ基準(ベンチマーク)が設定 を策定します。また、投資目的の実現に当たり、 され、パフォーマンスが綿密にモニターされます。 す。承諾額は、適格な支出である限り、被援助国へ さらに、承認された市場相手方との間の投資持高 の資金移転という形で後に実行されます。 投資 年度 年度 年度は、投資ガイドラインに従って決定されます。 年度 年度 ドナー資金の投資運用 ガイドラインには信用リスクの上限が設定されて おり、エクスポージャーの動向が常に監視されて *#3% *%" 信託基金 います。 *#3%、*%"、信託基金の実行総額に占める世銀グループ信託基金の実行額の割合(%) ドナーから資金を受け取り、贈与受入国に支払わ れるまでの間、世銀の財務局はその資金を資本市 信託基金の資産は、異なるリスク・リターンのシナ 場で流動資産に投資します。 この業務は、基金の資 リオに基づき3つのトランシェに分けて投資されま 金保全を第一の目的として慎重に行われます。 す。どの信託基金においても、各々のリスク・リター ンを配慮した数年にわたるキャッシュフロー予想 投資プロセスはまず、資産運用戦略を確立するこ を基準として、異なる投資トランシェに資金をどれ とから始まります。この戦略が適切な局や財務委 だけ配分するかが審査されます。IDA における投 員会によって審査され承認されると、世銀の財務 資の枠組みは、異なる投資目的、投資の見通し、リ ポートフォリオの投資リターンの推移(∼年度) 年度 年度 年度 信託基金ポートフォリオのリターン *#3%投資リターン 6 年度 年度 *%"投資リターン Financial Management of Donor Funds 7 世界的な金融危機の発生時における資産運用 2008~2009年の世界的な金融危機に際し、世銀は、ドナー資産の保護と投資パフォーマンスの確保に向けた対策をいくつか 講じました。以下はその一例です。: n 住宅ローン担保資産に対するポートフォリオのエクスポージャー低減。 n 与信スプレッドの増大に対する感受性を抑制するため、ポートフォリオの償還期間を削減。 n 危機の影響を最も受けた金融機関に対するエクスポージャー低減。 n 多数の機関の信用格下げが行われる中で、信用格付に対する制限を固守するため、ポートフォリオの定期的審査を実施。 n 取引先の破綻によるリスクを最小限に抑えるため、強力な財務基盤をもつ相手先だけに取引を制限。 n 取引相手に対するエクスポージャーを低減するため、担保に関する方針や手続きを強化。 スク許容度をもつ3つの流動性トランシェに基づい 世銀はまた個々のニーズに見合った財務サービス たものです。信託基金とIDAの投資リターンは毎月 も提 供しています。例えば、 「予防接種のための 分析され、投資の方針や資産配分を評価する話合 国際金融ファシリティー」のように、市場での借 いが定期的に開かれます。 入戦略を策定・評価し、基金が保有する債券の取 引執行サービスを提供することもその一例です。 資本市場での仲介サービス また、もう一つの例として、炭素基金への参加者 IDAと信託基金は、通貨の為替レートや金利の動 協定(ERPA )」を結ぶことが挙げられます。世銀 きに起因する市場リスクにさらされており、信託資 はまた、基金に代 わって受け取った炭 素排出権 産の価値は常にその影響を受けています。こうし (CER)の貨幣価値換算も実施しています。このプ た市場のリスクは特定したうえで、それを緩和する ログラムは、CERを金銭的な価値に換算して、それ ためのヘッジングや他の代替的手段を講じること を基金のプロジェクトの承諾や資金実行の支援に ができ、その承認は適切な局と財務委員会が行い 利用しようというものです。旱魃に見舞われた最貧 ます。信託基金の場合、世銀は、重要性に応じて、 国に対しては、世銀は、資本市場で旱魃保険の購 外部機関と協議してから、その承認を求めます。 入を仲介して、その保険料をドナー資金で賄ってい その後、世銀の財務局が市場取引の仲介を手配し ます。個々のニーズに合わせた他の金融仲介サービ ます。例えば、ドナーから受け取った資金の通貨と スについては、ドナーからの要求に応じて提供可 IDA が承諾した融資または贈与の通貨が異なる場 能です。 に代わり、世銀が「温室効果ガス排出量取引購入 合に行われる通貨ヘッジ契約はその一例として挙 げられます。 8 譲許資金・グローバル・パートナーシップ(CFP) 世界銀行 リスクの監視と抑制に関する枠組み リスク・マトリックスに基づいて、各基金、各プログ 世銀は、組織・基金レベルでリスクをモニターし、 作成される一連のリスク報告書へのインプットとし それを報告しています。その際、世銀は、総括的な て利用されています。 ラムのリスク評価が掲載されており、世銀全体で リスク管理の枠組みを活用して、リスクを組織の 観点から分析・管理し、それを理事会や運営陣に 世 銀は、強固な内部 統制と、ドナー資 産を 保 護 伝えるための、システム全体を網羅し、しかも先を するプロセスを通じて財務上、業務上のリスク軽 見越した継続的なプロセスを設定しています。これ 減も図っています。内部統制は、国際的に認めら には、定期的なリスク見直しや、リスクに関するワ れ、広く受け入れられている「トレッドウェイ委員 ークショップのほか、世銀の内部監査局、独立評価 会支援組織委員会(COSO )」の内部統制枠組 局、倫理局によって実施された組織的リスク評価 みを用いて評価されます。世銀は、あらゆるビジ やレビューを基にした、世銀全体にわたるリスク報 ネス・ユニットを評価するためのプログラムを設置 告書の作成などが含まれます。 して、内部統制とビジネス・プロセスの強化と簡素 化に向けた措置を講じています。つい最近、CFP 基金レベルでは、担当のタスク・マネージャーが基 は、金融取引の処理が高度な業務基準を遵守し 金の存続期間を通じてリスク評価を行い、基金の たものであり、しかも効果的な統制と独立した監 監督と監視に関する貴重な情報(インプット)を提 督の下で各取引が十分に隔離されていることを 供しています。また、IDAと信託基金に対する受託 期するための財務管理レビューを実施しました。 者としての監督上、財務管理上の責任の一環とし 世 銀は、ドナー資 金を受けた業 務 のモニタリン て、リスク報告書がCFPによって別途に作成されま グ、監督、統制を継続的に強化することに力を注 す。この報告書には、個々の状況に合わせた一連の いでいます。 ドナー資金の財務運営と管理 9 ドナーのための情報システム ドナー ・ センター/クライアント ・ コネクション : セキュアな ウェブサイト(http://clientcon-nection.worldbank.org) を通じて、信託基金の最新財務情報を各ドナー国・機関に 提供しています。 n 財務情報は毎日更新 ならびにポートフォリオ全体のドナー拠出額 n 信託基金別、 支出カテゴリー別実行額 n 信託基金ごとの国別、 n ドナー資金管理契約書へのアクセス 完了報告書、監査報告書 n 進捗状況報告書、 n ユーザー・アクセスはドナー国の機関により管理 ドナーの援助 AidFlows :OECDと世銀のデータに基づいて、 額に関する情報を掲載しています。ドナー 58 か国の情報も 入手可能です。 ( www.worldbank.org/cfp > Financial Management > Donor Aid Contributionsを選択) n 政 府 開 発 援 助( O D A )が 国 民 総 所 得( G N I )に占 める 割合(%) n 世銀や他の多国間銀行への拠出額 n IDAと世銀が管理する信託基金への拠出額 資 金 用 途 に 関 する 被 援 助 国 別 情 報 を 掲 載 する た め の AidFlowsの第二次開発段階が現在進行中です。 10 譲許資金・グローバル・パートナーシップ(CFP) 世界銀行 財務諸表の定期的作成と独立監査 財務・情報システムの提供 財務トランザクションは、適切な会計システムを用 世 銀 は、財 務トランザクションの 初めから終わ いて計上され記録されています。世銀は、 IDAと りまでを 処 理 する 統 合 化 さ れ た 情 報 システム 信託基金の会計記録や文書が適切かつ安全に維 を活用しています。こうしたトランザクションに 持されているよう万全を期しています。 は、資 金 の 補 充・拠出契 約 、ドナーからの資 金 召集 、外 国 為替、投 資収 入の配 分、資 金 実 行、 ドナ ー に 対しては 、世 銀 の「クライ アント・コ 契約書に基づくドナーへの関連報告書などの記 ネクション」と呼 ばれるウェブサイト( h t t p: // 録 が含まれます。この 情 報システムは 、世 銀 の clientconnection.worldbank.org)に一連の財 受託者としての責任の一環として、一連のデータや 務報告書を定期的に掲載しています。各会計年度 カスタマイズされた報告書を、ドナー、実施機関、 末には、修正現金主義ベースで会計処理された全 そして事務局に提供します。 信託基金を一つにまとめた監査報告書がドナーに 送られます。この報告書には、(i) 修正現金主義ベ 成に対する内部統制の有効性を記した外部監査 IDAと信託基金が受け取るドナー資金の大半は、 「資金追跡・会計システム(STAR)」を通じて処理 されます。STAR は、トランザクション・コストの低 人の署名付き証明書と運営陣による所見、(ii) 外 減、ビジネス・コントロールの強化、業務上・金融上 部監査人の報告書付き連結財務諸表が含まれま のリスク軽減を可能にする、柔軟性に富み、個々の す。ドナーが個別に資金を供与している一部の大 状況に合わせたインターフェースとなっています。 型信託基金については、世銀は、ドナーからの要 複雑で、しばしばカスタマイズされたドナー資金イ 請に応じ、財務諸表の外部監査を別途に手配し ニシアティブの数が増大する中で、STARは、こうし ます。一方、IDAにおいては、財務諸表が四半期ご たイニシアティブを支援するための情報技術の強 とに、また監査済み財務諸表が毎年作成され、委 力な基盤となっています。財務機能やクライアント 細にわたる「運営陣による考察と分析」と共に、 との関係管理のほとんどは自動化されています。 各出資国に送付されます。 さらにSTARは完全に統合化されているため、各ト ースで会計処理された信託基金の財務報告書作 ランザクションをSAP総勘定元帳に滞りなく記帳し 内部監査局は世銀総裁の直属下に置かれていま ます。 す。IDAと信託基金のビジネス・プロセスとその担 当部門についての内部監査は定期的に実施され み、ガバナンス・プロセスに関する既存のシステム STAR は、 IDAや信託基金に対するドナーの拠 出 だ けで なく、 I B R D 、多 数 国 間 投 資 保 証 機 関 (MIGA)、 国際投資紛争解決センター(ICSID) を第三者が独立した立場で評価する機能を担って へ の 世 銀 加 盟 国 に よる 出 資 に も 利 用 さ れ て います。 い ま す。世 銀 は 、情 報 の 安 全 性 確 保 に 多 額 の ています。内部監査は、リスク管理、統制上の枠組 ドナー資金の財務運営と管理 11 資 金 を 投 入して おり、世 銀 の 情 報 シス テム の 学び、開発プロジェクトやプログラムの成果と結果 管理力と安全性は常に高められています。 を評価する際の客観的基準を導き出すためのもの です。評価作業から引き出された教訓は一般に公 ドナーは、IDAや信託基金への拠出に関する財務 開されています。 情報を掲載した数件のシステム・アプリケーション にアクセスすることができます。ウェブベースのアプ リケーションとしては、世銀のウェブサイト「クライ アント・コネクション」に設置された「ドナー・セン ター」と、AidFlows(詳細は囲み参照)の2つがあ ります。 世銀の理事会と委員会を通じた監督 ドナー資金を受けたプログラムの組 織面の監督 は、世銀の理事、理事会の委員会、世銀総裁、そし て上層運営チームが担っています。IDAと信託基金 の財務管理を監督する最高運営グループは、世銀 品質保証とコンプライアンス監視 の最高財務責任者(CFO)を議長とする財務委員 世銀は、専門のチームや部門を通して、IDAと信託 略、リスク管理とパフォーマンスを監督する小委員 基金の業務の結果測定と品質保証を行っていま 会がこのグループを補佐しています。 会です。さらに、新規の財務イニシアティブ、財務戦 す。また、該当する世銀の方針や手続きの遵守状況 の監視については、信託基金の財務トランザクショ 大型の信託 基金の多くは、外部の監督機関とそ ンに関する定期的なコンプライアンス・テストなど れに関連した委員会を別途に擁しています。世銀 がすでに設置されています。IDAにおいては、内部 は、こうした監督機関のメンバーあるいはオブザ 統制の大掛かりな見直しがここ数年にわたって実 ーバーとして様々な機能を果たしたり、これら機関 施されてきました。この見直しの中にはコンプライ に受託・財務報告書を定期的に提出しています。 アンスに関連する部分が含まれています。コンプラ イアンスは、世銀の方針と手続きが遵守されてい ることをドナーに保証するための全体的な統制の 枠組みの一部をなしています。 ガバナンスおよび腐敗防止(GAC)に 関するアジェンダ 世 銀 は 、開 発 プ ロジェクトの 実 施 国 に お ける プロジェクトやプログラムの独立評価 ガバナンスや 財 務 上の 監 督を 強 化 するため の 世銀の資金を受けた開発プロジェクトや、被援助 腐 敗 防止に関 するアジェンダ は 、こうした 努力 国が実施する信託基金プロジェクト/プログラムは の中 心 的 柱 をなしています。それ はまた、腐 敗 定期的に評価されています。独立評価グループは と闘うため の 加 盟 国 の 能 力 構 築 対 策 や、世 銀 世銀の運営陣に属するのではなく、世銀理事会の 業務の倫理性を守り強化するための措置を特徴と 直属下に置かれています。評価作業は、経験から するものです。 12 努力を常に重 ねています。世 銀 のガバナンスと 譲許資金・グローバル・パートナーシップ(CFP) 世界銀行 世銀の倫理担当副総裁室は、腐敗との闘いで中 心的な役割を果たしています。そこでは、詐欺や汚 職、職員の違法行為の可能性を調査しています。 さらに、世銀の職員やクライアントに対し、個々の 状況に見合った助言や研修など、開発プロジェク ト内で様々な予防措置を構築するためのガイドラ インを提供しています。 「詐欺・汚職対策ハンドブ ック」は、世銀職員やクライアント側関係者が、プ ロジェクトの策定中あるいは実施中に露呈しそう な詐欺や汚職の陰謀を識別するうえでの助けとな ります。 情報公開および情報へのアクセス 世銀は、情報へのアクセスを拡大し、透明性を一 段と高めるための対策を常に講じています。2010 年7月1日付で実施に移される新設の「情報アクセ スに関する方針」は、それまでの情報公開について の世銀のアプローチを根本的に塗り替え、例外項 目として掲載されていない限り、世銀が保有する情 報は一般に公開するというアプローチへと移行し ました。この新たな方針により、準備中あるいは実 施中のプロジェクトに関する情報や理事会の議事 録など、以前にもまして多くのデータにアクセスす ることができるようになりました。 ドナー資金の財務運営と管理 13 ドナー資金の財務運営と管理 世界エイズ・結核・マラリア対策基金:世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)は、三大感染症といわれるHIV/エイズ、 結核、マラリアによる感染、罹患、死者の削減に持続可能な形で貢献するために 2002 年に設立されました。この世界基金の 設立当初から、世界銀行は、これらの疾病と闘う開発パートナーとして、そして同信託基金の受託者として、この組織と協力して きました。世銀は、受託者としての機能で、同基金の事務局からの指示に従って贈与の承諾と実行に携わります。 適応基金:適応基金は、京都議定書の締約国である途上国のニーズ、見解、優先順位に基づいた途上国主導型の気候変動適応 プロジェクトやプログラムに資金を供出するものです。地球環境ファシリティー(GEF)の事務局がこの基金の事務局として機能 し、世銀が受託者としての役割を担っています。この役割の中で、世銀は、(i) 信託基金の運営・管理と (ii) 炭素排出権(CER)の 金銭的価値への換算という2つの中心的機能を同基金に代わって遂行しています。 世界基金と適応基金に対する世銀の財務管理業務には以下のようなサービスが含まれます。 n ドナーとの法的契約書の作成と交渉 n ドナーによる拠出プロセスの管理 n 信託基金に拠出された現金の投資運用(これには通貨換算も含まれる) n 資金の承諾と実行 n トランザクションの会計記録の維持と適切な報告書の提出 n 必要な情報技術インフラストラクチャーの提供 14 譲許資金・グローバル・パートナーシップ(CFP) 世界銀行 目次 ドナー資金の財務管理における世界銀行の役割 / 1 財務管理の実践 / 3 ドナー資産の管理における豊かな経験 / 3 ドナー資金の財務運営と管理 / 4 ドナー資金の投資運用 / 6 資での仲介サービス本市場 / 8 リスクの監視と抑制に関する枠組み / 9 財務諸表の定期的作成と独立監査 / 11 財務・情報システムの提供 / 11 品質保証とコンプライアンス監視 / 12 プロジェクトやプログラムの独立評価 / 12 世銀の理事会と委員会を通じた監督 / 12 ガバナンスおよび腐敗防止(GAC)に関するアジェンダ / 12 情報公開および情報へのアクセス / 13 ドナー資金の 財務運営と管理 世界銀行 1818 H Street, NW Washington, DC 20433 U.S.A 財務管理局 譲許資金・グローバル・パートナーシップ 副総裁室 www.worldbank.org/cfp 2010年5月 譲許資金・グローバル・パートナーシップ(CFP) 世界銀行
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