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第6号 - 新潟大学教育学部

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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要
教育実践総合研究
第
6
号
現代中国社会の理解を深める社会科授業開発研究
-黒龍江省へのスタディ・ツアーを通して-
宮薗 衛,児玉康弘,田中一裕,岩見 泰,明石 卓,丸山信昭
.......................................................................................................1
2004 年新潟県中越地震を地域素材として取り上げた「地震の伝わり方」の授業実践
結城義則,藤林紀枝
........................................................................................................29
小学校中学年におけるなわを使ったリズム体操の学習
-なわの特性にふれ,主体的に運動にかかわる子を目指して-
滝澤かほる,鹿目雅子 ........................................................................................................47
民謡の教材性と授業プラン -長岡甚句を例に-
伊野義博
...........................................................................................................................55
ジョン・ケージ作品の指導:中学校音楽科授業における現代音楽の展望
森下修次,吉村智宏,和田麻友美,菊地雅樹
............................................................83
「学校インターンシップ」実施報告(平成 17~18 年度)
新潟大学大学院教育学研究科学校インターンシップ委員会
教育実践総合センター活動報告
.....................................93
..............................................................................................179
2007年
新潟大学教育人間科学部
附属教育実践総合センター
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
現代中国社会の理解を深める社会科授業開発研究
-黒龍江省へのスタディ・ツアーを通して-
宮薗 衛(新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター)
児玉康弘(新潟大学教育人間科学部)
田中一裕(新潟西高等学校・新潟大学大学院)
岩見 泰(新発田第一中学校・新潟大学大学院)
明石 卓(燕中学校・新潟大学大学院)
丸山信昭(新潟大学大学院)
Developing a Social Studies Plan for Contemporary Chinese Society Understanding
― Through Study-Tour to Heilongjiang Province ―
Mamoru MIYAZONO, Yasuhiro KODAMA, Kazuhiro TANAKA, Yasushi IWAMI,
Suguru AKASHI, Nobuaki MARUYAMA
目 次
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.中学校社会科・総合学習の授業開発
Ⅲ.高等学校公民科の授業開発
Ⅳ.おわりに
Ⅰ.はじめに
平成18年度新潟県国際交流協会の事業(ふれあい基
ツアーの概要と、学んだ主な点は以下の通りである。
金助成プロジェクト)として、子どもたちに現代のアジ
9月11日(月) 新潟空港発ハルビン空港着。バスに
アを理解してもらうためのプログラム開発が新潟大学教
て社爾伯特蒙古族自治区泰康鎮グロリア陽光ホテルへ5
育人間科学部に委嘱された。これを受けて、宮薗衛(新
時間かけて移動。大都市ハルビンの発展の様子、満州の
潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター教授)
大地に伸びる高速道路、トウモロコシ畑の地平線に沈む
と児玉康弘(同大同学部人間社会ネットワーク講座教授)
赤い夕日、連綿と点在する大慶油田の油削機などから中
は、新潟県日中友好協会に協力を要請し、現代中国社会
国の広大さと多様性の一端を学ぶ。また、交差点の真ん
の理解を深めるための社会科授業開発を社会科教室の院
中で道順を訪ねる運転手さんのバイタリティーに驚く。
生・ゼミ生とともに実施することとした。授業開発にお
9月12日(火) 午前中、白音諾勒村小学校を訪問し、
いて最も重要なポイントになったことが、中国黒龍江
子どもたち・先生方と交流。教育支援の着実な成果に触
省・吉林省へのスタディ・ツアーである。この場をお借
れることが出来た。また、子どもたちの持つ大きな夢の
りして、快く協力要請に応じていただくとともに、ツア
すばらしさと、若い校長先生の教育への情熱をひしひし
ーの企画とお世話をいただいた日中友好協会常任理事・
と感じた。午後は新店林場のJICA技術協力試験区で
事務局長の今野正敏さんに深く感謝申し上げたい。また、
荒漠化の実態と植林支援の実際を研修。整然と並ぶ樹木
現地では黒龍江省外事弁公室および黒龍江海外旅遊総公
の姿に緑化への希望を持つとともに、せっかくの樹木の
司のみなさん方に通訳やガイド、迎賓館での歓迎会など
中を牛が歩いていく姿に学生は驚いていた。新しく植え
過分なるお世話をしていただいた。参加者を代表して厚
替えているという種目の苗や腐葉土を食べてしまうこと
く御礼申し上げたい。
を心配したのである。林場のはずれからの遠景は、樹木
1
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
がほとんど見られない文字通り荒漠としたものであった。
の事例の一つであると思われた。この点に注目した学生
その後、教育局にて新しい教育政策である愛心工程の説
たちは「なぜ農村部では荒漠化の原因となる過放牧、過
明を受ける。わが国の教育行政と同じく、地方の小規模
耕作、薪炭採取が行われるのか?」という問いを考えさ
校の統廃合を、合理化・効率化の観点で向上させるとい
せる授業構成を行った。問いの答えは「農民が貨幣を必
う説明として受け止めた。なおこの地域のバスからの景
要としているから。なぜなら、経済発展によって中国で
観として湖の多さに驚いた。塩分濃度が高く、魚がいな
は貧富の差が拡大しており、相対的に貧しい農民たちは
いというのが惜しまれる。
生活の向上や子どもの教育のためにより多くの所得を望
9月13日(水) ハルビン市へ移動。駅前のホテルで
んでいるので。
」というものである。この授業プログラム
昼食、にぎわいに触れる。午後は731部隊記念館を見
は12月21日(木)に新潟県立村上中等学校2年生2
学・研修した後、長春市へ移動。731部隊については、
クラスに対して各2時間の実践を行った。
学生達は事前研修をかなり行ってきていただけに、現場
第三は、内容的には上記第二のものと同様であるが、
に身を置くという体験は得難いもののようであった。頭
方法的に二つの手段を組み入れた授業である。一つは,
を垂れて同国人の非人道的な所行を改めて深く反省する
貧富の差を生徒たちに実感させるために、全員にお茶の
のみ。
不平等な配分を行って飲ませ、飲める量の違いから貧富
9月14日(木) 午前中、旧満州映画製作所、偽皇宮
の差の意味をわからせようとする手段である。二つは、
博物館、旧国務院(吉林大学医学部)を訪問、見学。満
農民の立場と環境保護の立場という対立する立場の違い
州国の歴史的残像と現在の姿に、事の是非を越えた感慨
を、寸劇によって理解させようとする手段である。この
を覚えた。午後、ハルビンヘ移動。黒龍江省外事弁公室
授業は,12月8日(金)に新潟大学教育人間科学部附
の徐廣明処長さんたちより迎賓館にて心温まるおもてな
属中学校3年生1クラスにおいて2時間の実践を行った。
しを受ける。さらに、ホテル到着後、ガイドの呉澤鋒さ
第四は、高等学校公民科用の対中国ODA問題を考え
んのご好意でキタイスカヤ(中央大街)を案内いただい
させる授業である。我々の見聞の中でも、ハルビンの発
た。ロシア風の石造りの町並みの幻想的な夜景の中で、
展ぶりはODA削減の根拠として、白音諾勒村小学校な
楽しいひとときを過ごすことができた。また、伊藤博文
ど農村の教育環境はODA継続の根拠として挙げられる
の暗殺されたハルビン駅を見学したグループもあった。
ものであった。こうした2面性をより幅広い資料を活用
9月15日(金) ハルビン空港発新潟空港帰着。時差
して生徒たちに認識させ、資料の比較検討や重みづけを
の関係で早朝の出発でも到着時はお昼。全員無事の帰国
通して生徒たち自身にODAの是非を主体的かつ合理的
を喜ぶと共に、所期の目的を達成したことを確認して解
に判断させる授業構成を行った。この授業は、10月2
散式を行う。
4日(火)に新潟県立新潟西高等学校3年生1クラスで
以上のスタディ・ツアーでの研修等に基づいて、我々
3時間の実践を行った。
は以下の4つの授業プログラムを開発した。
以上のように、実践は実験的・試行的な投げ入れ授業
第一は、小学校社会科用の現代中国の地理的概要、特
として行ったものである。しかし、全体は発達段階を考
に人口、面積、民族構成、言語分布などを子どもとの対
慮して、小学校では地理的アプローチを、中学校では環
話や作業によってつかませるとともに、日中関係の一端
境問題の経済的側面からのアプローチを、高等学校では
を教育・植林支援の様子から伝えていく授業である。特
政治的・政策的アプローチをとるようにプログラムを配
に、中国が多民族国家であることは、我々も社爾伯特蒙
列している。
古族自治区で実感したことであり、まずこの点をしっか
なお、このうち本稿では大学院生が中心になった授業
り理解させることが大切であると考えている。この授業
開発研究の成果を提示する。大学院生が中心となって開
プログラムは平成18年12月1日(金)
・12月5日
発したものは、第二の中学校社会科・総合学習用の授業
(火)に新潟市立万代長嶺小学校にて、3時間の小単元
と、第四の高等学校公民科用の授業である。
(児玉康弘)
として2つのクラスで実践した。
第二は、中学校社会科・総合学習用の現代中国の環境
問題を経済構造の観点から考えさせる授業プログラムで
ある。我々は今回の学習を通じて、荒漠化の大きな原因
が農村部での過放牧、過耕作、薪炭採取などであること
を知った。新店林場で目撃した牛の群れはまさに過放牧
2
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
Ⅱ
中学校社会科・総合学習の授業開発
外資系企業の誘致が行われ急速に発達を遂げ、また内陸
1. 授業開発の目的
部でも従来の生産集団である人民公社の解体が行われ、
本単元計画は中学校総合的な学習の時間における国際
生産責任制に移行することになっていった。これら諸政
理解の単元として設定した。なお、本単元計画は 2006
策により中国経済は近年にいたるまで著しく成長を遂げ
年 12 月 21 日(木)に新潟県立村上中等教育学校2年生
ていくことになる。
しかし、そうはいっても多くの農業人口を抱える中国
を対象に研究授業実践をふまえたものである。
国際理解をねらいとする総合的な学習の時間の多くは、
は、農村の経済的発展が遅れているのが現状である。農
他国のモノ、言語に実際に触れる活動や、ゲストティー
村部においては都市部との格差の解消、自らの生活の豊
チャーを招いての交流活動、または生徒による他国の調
かさを求めて、都市部への出稼ぎのほか、より多くの自
査活動などが現在広く行われている。これらの授業では
然環境を搾取して農業を行わなければならない状況であ
実際のモノや人々との交流を通して生徒の関心が大いに
る。特に、内陸部の国家級貧困県と呼ばれる地域におい
高まることが期待される。しかし、これらの授業によっ
ては、年間収入が国家平均を大きく下回り、よりよい教
て高められた生徒の関心を社会的問題への関心に高めて
育や生活環境の向上のために農業生産を上げるよう努力
いくことが国際理解学習の一つの課題としてあるのでは
がなされている。
以上のように、砂漠化問題にアプローチする一つの手
ないだろうか。
国際理解学習において生徒がその国の社会の内実に目
段として、経済構造の変化や影響を認識することは重要
を向けていくための方策として、その国の社会的問題を
である。
教材として取り上げることが有用であると考えられる。
生徒がその国の社会的問題について多様な立場から追究
(2) 農民の立場と環境保護の立場の対立を考察する
し、その社会的問題について意思決定や価値判断をする
砂漠化問題の要因を形成している農民の立場と、環境
ことで、その国の社会についてより深く知る必要性が生
保護の立場を対立軸として考察することで、前述の経済
まれてくるからである。
構造の観点から砂漠化問題へのアプローチが可能になる
そこで、今回のスタディ・ツアーを通して、本単元計
と考えられる。
画では砂漠化問題を教材化することを試みた。砂漠化問
農民側の立場の主張は、自らの生活の向上、都市部と
題の要因の追究から中国社会が抱える格差の問題を追究
の格差是正のための農業活動は環境を多少悪化させても
することを目的としたのである。
仕方がないという論理になる。その根拠として、都市部
本章では、中国東北地方における砂漠化問題を題材と
との経済格差、年間収入の低さ、教育設備等の不足など
して取り上げ、以下、それについて述べていく。なお別
が考えられる。特に、経済の資本主義化による農民の生
掲資料において、研究授業で用いた指導計画を掲載する。
活への影響は計り知れないものがあり、その影響は拡大
の一途を辿っていることを認識する必要がある。
2. 教材化のねらい
逆に、環境保護の立場の主張として、都市部の生活環
境の悪化、日本も含めた他国への悪影響の拡大などの論
(1) 経済構造の視点から砂漠化問題を考察する
理となるだろう。その根拠として、砂漠化の急速な進行
砂漠化はその土地の従来の植生が失われることによっ
とその被害の拡大の様子などがあげられる。どちらかと
て発生、進行する。植生が失われる要因は自然的要因、
いうと、この立場の主張は、中国における都市部の住民
人為的要因など多様であるが、本単元計画では人為的要
や日本の住民に立った主張であるといえる。
これら二つの立場の主張を対立軸として考察していく
因を取り上げて教材化する。
中国における砂漠化の要因は後述するが、過放牧や過
ことで、より深い認識形成が促されると考えられる。し
耕作などによるものである。これらの人為的要因を理解
かし、どちらの主張も人間生活の豊かさを目指している
するためには中国における経済構造の変化や、それに伴
点において共通しているので、価値判断は極めて難しい
う影響を理解する視点が必要となってくる。
問題であるけれども、中国の砂漠化問題を考える際には
中国では従来の社会主義経済から1970年代後半に
避けて通れない重要な点であることは間違いない。
は経済の資本主義化が進み、沿岸部では経済特区を設け
3
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
3. 教材内容の概要
ある。
(1) 中国東北地方における砂漠化の概要
(3) 過放牧・過耕作・薪炭採取の概要
中国東北地方のハルビンや長春、大慶といった地域は
中国の諸都市と同様、近年都市部を中心に高度経済発展
を遂げている。一方で郊外の農村地域では急速に砂漠化
が進んでおり、人々の生活に支障をきたしている。
砂漠化とは植生が失われ、乾燥した荒地になることを
指すが、中国における砂漠化の要因には人為的影響が大
きく関連しているのである。本単元計画の参考にした資
料によると、郊外の農村に住む人々による過剰な薪炭採
取や過放牧、過耕作といった生活活動が砂漠化問題の原
因の 9 割を占めるとも言われている。1)これら砂漠化の
主たる要因については後述する。
これらの砂漠化問題の人為的要因の背景の一つには農
村の経済的発展の遅滞の問題が存在すると考えられる。
この農村の経済的問題は今回のスタディ・ツアーで植林
場と農村地域を視察して実感し、考えなければならない
問題として捉えた。また、都市部と農村部の所得格差の
広がりは、中国の社会主義市場経済化によって急速に広
がっているともいわれている。この砂漠化問題に対して、
法の整備や森を守るための事業など中国政府の取り組み
が各地で行われている。また、日本も植林事業などの協
力・支援を行っているが、砂漠化の急速な拡大や、前述
の中国社会の経済的問題などが存在し課題も多いといえ
るだろう。
1)過放牧
一般的に中国東北地方の気候条件においては、適度な
放牧が最も適しているといわれている。しかし、スタデ
ィ・ツアーでも目の当たりにしたように、植林場の中ま
でも放牧が行われている現状である。これら過剰に放牧
された家畜により植林場の若芽や下草が喪失している。
また、今回視察してきた地域は、中国の砂漠化が進行し
ている内陸地域と同様に年間降水量に乏しく乾燥した地
域であり、植生がもともと乏しいのである。植林場以外
でも放牧されている家畜により植生破壊が進んでいる現
状であるといえる。
2)過耕作
中国東北地方は本来肥沃な穀物生産地帯である。しか
し、近年穀物生産に必要不可欠な土壌が流出または痩せ
てきているのである。それにより植生が失われ砂漠化が
進行しているのである。
その原因は、過剰な穀物生産によるところが大きい。
スタディ・ツアーでは一面のトウモロコシ畑を目の当た
りにしたが、過耕作による土地の劣化が現在問題になっ
ているのである。長年の単一作物の栽培は土地を疲弊さ
せ、そのために大量の化学肥料の投下が必要になってく
るのである。また、植物による水の吸い上げ、地下水の
くみ上げにより土地がアルカリ化する問題も生じている
現状も指摘されている。
(2) 砂漠化による影響の概要
耕作という農業活動が砂漠化に結びつくということは、
中国における砂漠化の影響や被害は近年かなり深刻な
生徒としては認識に苦しむ点であるが、土地の疲弊、多
問題であるといえる。中国国内においては、砂嵐による
量な肥料の必要性という観点から分析することが有効で
健康被害や交通機関への影響について、日本でもニュー
あると考えられる。
スで流されており周知のことである。また、砂漠化によ
3)薪炭採取
り植生が失われ、肥沃な土壌流出も深刻な問題であると
中国の農村部においてはいまだにライフラインの整備
されている。そして、洪水の発生数の増加など人々の生
が進んでいない状況である。都市部はガス使用率がほぼ
活が砂漠化によって脅かされているのである。
100%であるが、農村においては生活用の燃料源を薪炭に
しかし、これら砂漠化による影響は中国国内の問題だ
頼っている現状がある。そのため、特に寒さが厳しい東
けではなく、日本にまで影響していることを認識する必
北地方においては薪炭利用の必要も大きく、スタディ・
要がある。日本には中国に砂漠化によって乾燥した地域
ツアーにおいても屋外に薪を積んである家が目立った。
の土壌は、春先の風によって舞い上がり、
「黄砂」として
しかし、植生の少ない地方であるだけに過剰に薪炭を採
飛来してきているのである。さらに、日本への黄砂飛来
取することにより砂漠化が引き起こされるのである。こ
日数はここ数年で拡大してきている傾向にあり、交通機
の薪炭採取の現状は、農村の生活の厳しさと合わせて認
関や日常生活への影響が懸念され始めている。特に近年
識する必要があるだろう。
の調査では、黄砂に汚染物質が付着する恐れも指摘され
(4) 中国の国内格差の概要
ている。韓国では黄砂の被害は日本よりも深刻であり、
中国では 1970 年代後半から経済の資本主義化が進み
いずれ日本も同様な状況にならないとはいえない状況で
4
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
格差の問題が深刻化していることは前述した通りである。
(5) 指導上の留意点
特に沿岸部を中心とした都市と、内陸部の農村部との格
本単元計画の指導上の留意点は以下の点である。
差は大きく、年間平均収入の差も歴然としている。
1)授業時間数の問題
しかし、経済の資本主義化により農村においても生産
増大が可能となったことは事実である。より豊かな生活
本単元計画は2時間という時間枠であったので、教育
を求め、また都市との格差を解消するために、農村では
内容に対して授業がかなり足早に進む感が否めなかった。
家畜飼育頭数を増やしたり、耕作地を拡大したりするな
特に終結部の砂漠化問題の解決策を十分に吟味するので
ど農業活動が行われている。
あれば時間数を検討する必要がある。したがって、生徒
これら中国国内の格差問題が前述の砂漠化問題の要因
の実態にもよると考えられるが、3時間から4時間ほど
である過放牧・過耕作・過剰な薪炭採取の背景のひとつ
の単元として再構成すると余裕を持った指導が可能にな
となっていることを認識することは重要である。
ると考えられる。
2)対象学年の問題
本単元計画は中学校2年生を対象に構成した。
前述の 2
(5) 視聴覚教材の概要
本単元計画開発に当たり、教材・教具の工夫として、
時間という時間枠もあったので、中国の社会主義市場経
Google Earth(衛星写真)の利用や、写真資料やグラフ
済化について授業では特別に取り上げないことにした。
資料を多く用いた。授業ではこれら視聴覚教材の利用に
しかし、過放牧や過耕作の問題、農村と都市の格差とい
より、生徒の学習への関心を高められたと考えられる。
った問題を考えるには中国における経済の資本主義化は
特に今回は中学校2年生が対象の授業開発であり、社
必要な観点となってくる。対象学年が3学年であれば、
会科公民的分野の学習に入っていない状況であった。ま
また時間に余裕があれば 2 学年であっても単元の内容に
た、2時間という時間的制約もあったので、前述の砂漠
組み込む必要がある。
化問題の原因・影響などを理解するために、写真やグラ
3)切実性の問題
フ等の視聴覚教材を有効に活用することで、より生徒の
中国における砂漠化問題や農村の貧しさなど、生徒に
とっては他人事のように感じてしまうかもしれない。国
思考がスムーズに流れるように工夫を加えた。
今回利用した視聴覚教材を広く共有化することで、共
際理解の学習では往々にしてそのような問題が生じる恐
有化できる教材を用いることで、国際理解の授業の汎用
れがある。本単元計画では黄砂を取り上げて、中国の問
性が高まると考えられる。なお、本単元計画で用いた教
題が日本にも影響を及ぼしていることを理解することで、
材・資料は別掲資料に掲載する。
生徒が自分に近づけて考えられる動機付けを行っている
が、その他にも工夫が必要な部分である。
4)1 時間目の授業の工夫
4. 単元開発
本単元計画の 1 時間目の授業では砂漠化の要因につい
て資料から理解する内容となっている。
2 時間目には生徒
(1) 単元名
砂漠化問題と中国社会(対象:中学校 2 年生)
の意思決定や意見交流活動、お茶の体験などが組み込ま
れているのに対して、
1 時間目は授業が間延びしてしまう
(2) 単元のねらい
可能性がある。したがって、資料の精選や、生徒の興味
中国東北地方における砂漠化問題の要因の追究から、
を引くような提示の仕方を工夫したりする必要がある。
その根本に中国社会に内在する経済的格差があることに
5)ワークシートの工夫
2 時間目の授業では、
「農民は過放牧をやめるべきか?」
気付き、砂漠化問題の解決策を考察する。
という問いに対する生徒の意思決定を中心に授業が展開
(3) 単元の位置づけ
されていく。本単元計画で使用したワークシートでは、
本単元計画は中学校における「総合的な学習の時間」
教師と生徒が思考の変容を読み取れるように、授業の展
の国際理解の単元として構成されている。
開と合わせて対立軸を左右に分けて記述欄を設けてある。
また、価値判断が難しい問題でもあるので、第 2 段階
(4) 活動計画
の意思決定の際に、現段階では「決められない」という
本単元は全2時間で構成する。活動計画の展開例は別
選択肢を設けることで、意思決定を留保している生徒に
掲資料にて述べる。
も配慮した。
5
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
5. 成果と課題
本章では現代中国の環境問題、特に砂漠化問題を中国
の経済構造の観点からアプローチする授業プログラムの
開発について述べてきた。
今や飛ぶ鳥を落とす勢いで経済成長を続ける中国では
あるが、その一方で大気汚染や砂漠化などの環境問題が
懸念されている。その背景には、本章で述べたように経
済構造の問題が関係している。人々の生活や、国家経済
の問題もあり、環境保護だけを唱えるだけでは解決は難
しいのである。特に日本は資源に乏しく食料自給率も海
外に大きく依存している現状がある。先進国の一つとし
て自国の利益だけを考えるのではなく、国際社会の中で
どのように協調して発展していけるのか総合的に考察し
ていかなければならない立場にあるのではないか。
日本と中国を取り巻く状況はいまだに難しい問題を
多々含んではいるが、生徒には他所事、他人事と考える
のではなく、アジアの良きパートナーとして今後も中国
と手を携えて未来を築いていくために主体的に考え、判
断ができるように促していくことが重要である。そして、
単に授業だけの思考や認識で終わるのではなく、つねに
問題について考え続ける姿勢をもってもらいたい。
最後に本単元計画を研究授業として実践させていただ
いた新潟県立村上中等教育学校に心より感謝の意を表し
たい。
【註】
1)定方正毅『中国で環境問題に取り組む』岩波新書 2000 年
P61
(岩見泰 丸山信昭)
6
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
<別掲資料>
単元計画(全2時間)
第一次 中国東北地方の砂漠化問題の原因を理解する。
第二次 砂漠化問題の要因の追究を深め、農村の貧しさの問題に気付く。
単元の展開
【第一次 中国東北地方の砂漠化問題の原因を理解する。
】
発問
教授・学習活動
資料
生徒に定着させたい知識
・ 中国東北部の都市はどのような
T:投げかける
1
・ 新潟よりも大きくな都市である。都
展開
S:予想する
市部は経済発展が進んでいる。
・ 都市部の経済発展の一方で郊外
T:説明する
・ 都市部では経済発展が進んでいる
導
ではどのような問題が起こって
T:発問する
入
いるか。
S:予想する
様子だろうか。
2
が郊外では砂漠化問題が深刻化し
ている。
T:説明する
・ 今日は、中国の砂漠化問題につ T:テーマ提示
いて考えます。
・ 砂漠化とは何か。
T:発問する
3
S:答える
・ 植生が何らかの要因でなくなるこ
とである。それによって植物が生育
できない土壌になることである。
・ 中国の砂漠化問題は人々の暮ら
しにどのような影響を与えるの
T:発問する
4
S:答える
・ 土地が痩せ、農業や畜産業ができな
くなる。砂嵐が起こる。日本にも黄
だろうか。
砂として飛来して年々増加してい
る。様々な場面で生活に支障をきた
している。
展
開
・ なぜ、緑が破壊される状況が起
きるのだろうか。
T:発問する
5
S:調べる
・ その主な要因(9 割近く)は過放牧や
過耕作や過剰な薪炭採取など、人為
【ワークシート①配布】
的要因によるものが大きい。
・ 砂漠化問題の解決へ向け緑を取
T:発問する
り戻すために中国や日本はどの
S:予想する
を推進する。森林保護を目的とした
ような対策をしているのだろう
T:説明する
法律を作っている。また、日本(新潟
6
・ 砂漠化地域への植林をして、緑地化
県や日中友好協会)も中国に支援を
か。
している。
・ 中国における砂漠化問題は解決
に向かっているのだろうか。
T:投げかける
・ 解決策を講じているのだから、解決
S:予想する
に向かっている。砂漠化は深刻な問
終
題だから解決に向かっていないの
結
ではないだろうか。
・ 授業のまとめをしよう。
T:指示する
【ワークシート②配布】
S:まとめる
【2時間目】
・ なぜ、植林場の中を牛が放牧さ
導
れているのだろうか。
T:投げかける
S:考える
入
7
・ せっかく砂漠化防止のために植え
たのに意味がない。協力していって
いる植林事業と矛盾しているので
はないか。
7
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
・ 誰が牛を放牧させているのだろ
うか。
T:発問する
・ 地域の住民(農民)が放牧を行って
S:答える
いる。
【ワークシート③配布】
・ 過放牧を行っている農民は放牧
をやめるべきか。
T:発問する
・ すぐにやめるべきである。(なぜ過
S:答える
牧しているかわからない。
)
【意思決定①】
・ なぜ、農民は植林場にまで放牧
をしているのだろうか。
T:発問する
・ 農民にとって、放牧は収入を得るた
S:答える
めの仕事であり、より多くの収入を
獲得したいから。
・ 砂漠化の原因の過放牧の背景に
展
開
T:投げかける
何があるのか、資料や体験から
考えましょう。
・ 諸資料(体験)が意味する内容を
簡潔にまとめなさい。
T:発問する
S:調べる
8
・ (代表者は貧富の差を示すお茶を飲
んで)、うらやましい。もっと飲みた
い。農民は貧しい。日本人はすごい
量だ。(その他の資料読み取り作業)
・ 農民が過放牧を止めるとどのよ
うな影響が考えられるか。
T:発問する
S:答える
・ 砂漠化問題は解決に向かうかもし
れない。しかし、都市部の富裕層と
は違い、農民は非常に貧しく、放牧
や耕作は生活の糧である。今の生活
の維持が難しくなる。
・ 農民が過放牧を続けるとどのよ
うな影響が考えられるか。
T:発問する
S:答える
・ 砂漠化問題は解決に向かわないと
考えられる。また、農民の将来の生
活に支障が出るかもしれない。しか
し、経済的に厳しい農民にとっては
現在の生活は何とか維持できる。
・ 過耕作や過剰な薪炭採取も貧し
T:投げかける
・ 砂漠化防止には農民の生活を犠牲
い農民にとって、生活の糧であ
にしなければならないが、農民は貧
る。(それが砂漠化問題の要因と
しく過放牧・過耕作・薪炭採取をや
なっていることは事実である。)
めることは難しいのではないか。
・ 農民は過放牧・過耕作・薪炭採
取をやめるべきか。
T:発問する
S:考える
【意思決定②】
・ やめる(砂漠化を止めないと農民の
将来の生活自体も危険になる)。やめ
ない(農民の生活は貧しく、過放牧・
(発表活動をする。)
過耕作をしなければ生活を維持で
きない)。決められない(砂漠化問題
も解決しなければならないが、現在
の農民の生活を考えると、過放牧・
過耕作を止めることは難しいので
はないか)。
・ 中国の砂漠化問題の要因である
T:発問する
・ 農民に対する経済的支援の必要が
終
過放牧・過耕作・薪炭採取はど
S:まとめる
あるのではないか。日本も経済支援
結
のように解決していけばいいの
をすべきではないだろうか。農民に
か自分の考えをまとめよう。
他の職業の機会を与える。
8
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
[教授資料]
1-1
Google earth(村上中等教育学校上空 → 中華人民共和国上空)
1-2
経済成長率(GDP)の国際比較
参考:WDI(91 年まで西独は OECD 資料)
内閣府(日本)
GDP(国内総生産)
国内で生産された財・サービスの合計額 ー 中間生産物の額
1-3
哈爾浜(ハルビン)市
2 砂漠化地帯(本日の課題提示)
出典:ツアー写真
出典:日中友好協会
http://www.niigata-inet.or.jp/njcfa/
3 黄砂の影響
① 黄砂に煙る街並み
出典:ECI ネット http://www.eic.or.jp/library/pickup/pu050217.html
② 黄砂の嵐で死者2名・呼吸器の異常で病院一杯(中国)
出典:livedoor news 写真ニュース http://news.livedoor.com/
③ 車に積もる黄砂(神戸) 出典:神戸の賃貸・ハウスプランニング 御影店
http://blog.fudoukun.com/hp-mikage/2006/04/
④ 日本への影響
出典:環境省及び気象庁 http://www.env.go.jp/earth/dss/kousa_what/kousa_what.html
出典:中国新聞コラム http://www.chugoku-np.co.jp/Nie/question59.html
⑤ 新潟市への影響
出典:沢田アナウンサーの気象コーナー
http://www.nhk.or.jp/niigata/program/kisyo/kisyo_91.html
9
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
4
5-1 薪炭採取
砂漠の要因
中国農村部の生活用燃料の構成
参考:定方正毅『中国で環境問題に取り組む』岩波新書 参考:日中友好協会
5-2 過放牧
アメ リカ
中
国
5-3 過耕作
牛
山羊・ 羊
国土面積
9700万頭
80 0万頭
963k ㎡
1億600万頭
2 億9 8 0 0 万頭
960k ㎡
参考:ワールドウォッチニュース
出典:ツアー写真
http://www.ecology.or.jp/wwn/0401.html
6 砂漠化への対応(中国)
7 植林地の状況
○三北防護林計画「緑の長城計画」
中国の官僚の指導の下、移動砂丘に大面積にポプラを、地
下水位の低いところにポプラや旱柳(カンリュウ)を植樹
○「退耕還林・還草」政策
耕作を中止して森林や草原に復旧する事業
○伐採・開墾の禁止,家畜頭数の制限
伐採・開墾の禁止,家畜頭数の制限を制度化
○土地の囲い込み
生産性の劣化した土地などをフェンスで囲み,家畜・人間の
農牧地内への立ち入りを禁止して,自然復元を目指す方法
など
参考:黄砂対策
出典:ツアー写真
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jec/ecinfo/taiki_a_1_3_3.htm
10
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
教授資料8
体験資料①
組
ウーロン茶:量は所得(財産)を示している。
中国の農民:(すごく貧しい
)
番 名前
資料③
農村の仕事の内訳
産業
割合
第 1 次産業
中国の富裕層:(農民に比べたら多い
)
89.4%
(農林牧漁業)
(その内、専業農家 96%)
日本人:(すごく所得が多い
)
第 2 次産業
3.1%
(工業)
資料②
第 3 次産業
1人当たりの収入推移と格差
7.5%
(サービス業・商業)
・農村では農業しか収入を得ることができない。
・農村の人々は,工場で働いたり商業したり
できない。
資料④
急速な砂漠化の進行
中国では、 1秒間
に、
72 ㎡
(教室 1 個分)が砂漠化しています!!
・農村と都市の所得格差は大きく,年々拡大している。
・農村の所得の伸び率は低い。都市の伸び率は大きい。
資料⑤
特に中国の砂漠化のスピードは、
世界に比べて早いのです。
7.2m
10m
黄砂の悪影響
・中国では砂漠化が激しく進行している。
分野
具体例
・世界に比べても中国の砂漠化は深刻だ。
産業
工場の空調(特に精密機械工場に被害)
輸送
視界が悪くなり、飛行機が飛べない。
道路や鉄道が埋まる。水道や給水施設への被害
資料⑥
中国の砂漠化の主要因
砂漠化の要因
割合
学校
休校になる。(通学の安全確保や健康への配慮)
建築
建築物の埋没・倒壊、送電線への被害
草原の過度の農地開墾
25.4%
農業
家畜の死亡。果樹園・畑への被害。
草原の過度の放牧
28.3%
ビニルハウスへの被害
過度の薪炭採取
31.8%
呼吸困難による死亡や健康被害
工業・交通・都市建設による植生破壊
0.7%
水資源の不適切な利用
8.3%
風力作用による砂丘の前進
5.5%
健康
・黄砂によって生活や社会に悪影響が出ている。
・健康被害も黄砂によって起こっているので問題だ。
・中国における砂漠化の要因は過放牧や過耕作,
※体験資料①:烏龍茶(農村,中国都市部,日本)を所得を基準に分けて飲む活動
参考資料:山本良一『1 秒の世界』ダイヤモンド社
2003 年
薪炭採取である。
・農村の暮らしが砂漠化の原因である。
11
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
組
番
名前
●中国の砂漠化問題について考えよう!!1.
1.なぜ、緑が破壊されるのだろうか?
A
B
過放牧
予想・・・
C
水資源
1位 (都市化)
1位を選んだ理由:
D 薪炭採取
過耕作
2位 (水資源)
E
都市化
3位 (過放牧)
・中国は経済成長しているので,都市化による森林破壊が大きい。
・中国は人口が多いので,住宅地のために森林を切るから。
実際・・・ 1 位(薪炭採取)(31.8%)
2 位 (過放牧) (28.3%)
3位
(過耕作)(25.4%)
2.砂漠化問題は解決に向かっているのか?
Yes
理由:
or
No
YES・・・砂漠化に対して植林などの対策が行われているので解決に向かっている。
No・・・・砂漠化は急速に進んでいるので,解決に向かっていない。
・ 植林活動
○ 黄砂が起こ る
・ 森林伐採を やめる
○ 家畜・ 人間への
被害大
影響
影響
砂漠化とは
・ 植生が何ら かの要因で な く な る
対策
対策
・ 過放牧を やめる
・ 過耕作を やめる
・ 植物が育成で き な い土壌にな る
など
しっかり考えるね
(
薪炭採集
過
%) (
12
放
過
牧
%) (
耕
作
%)
2年 組 番
など
氏名
要因
因
要
○ 学校が休みに
なる
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
組
番
名前
●中国の砂漠化問題について考えよう!!
1.農民は過放牧はやめるべきか?
そう思う
そう思わない
Q:農民が過放牧を止めるとどのような
影響が考えられるか?
砂漠化問題:
Q:農民が過放牧を続けるとどのような
影響が考えられるか?
止まるかもしれない。
砂漠化問題:
砂漠化が遅くなるかも。
農民の生活:
さらにひどくなる。動
物や人が住めなくなる。
他の仕事に就かない限り
農民の生活:
生活できなくなる。
今の生活は続けられる。
結局農業ができない。
2.農民は過放牧・過耕作・過剰な薪炭採取を止めるべきか?
そう思う
決められない
そう思わない
理由:
理由:
・過放牧を止めれば,砂漠化
が解決し,放牧もよくなる。
理由:
・止めると砂漠化は止まってい
くが,農民の生活は苦しくな
・農業にとっては辛いけど,
るから。逆に止めなければ,
地球にも影響を与えてしま
農民の生活は豊かになるが,
うから止めるべきである。
砂漠化が進むから。
・人の生活がかかっている。
・農民にも生活があるので,何
か解決策を考えるべき。
・私たち日本人が中国産の割り
箸を使うのをやめるべき。
・どちらにも言い分があるから
難しい。
3.他の立場の主張を聞いてどのように思いましたか?
・やっぱりどちらも大切だから,どちらも困らない程度になるような解決策を考えたらよい。
・自分とは違う意見で,その人たちの意見もその通りだな~と思い,どれが正しいのか迷い
ました。
4.過放牧・過耕作・薪炭採取はどのように解決していけばいいのだろうか?
・少しずつ節約し,森も少しずつ増やせばいい。
・他の国任せにせず,私たちも植林などをたくさん手伝うといいと思う。
・日本人はウーロン茶8本分もあるのだから,募金するべき。
13
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
Ⅲ.高等学校公民科の授業開発
1.授業開発の目的
本単元計画は高等学校「政治・経済」における国際理
意思決定の開始
解の単元として設定した。なお、本単元計画は 2006 年
11 月 24 日(火)に県立新潟西高等学校 3 年生を対象に
研究授業を実施した。
資料の分析
近年、政府開発援助(以下ODAと略す)を取り巻く
資料の内容、資料が削減・打ち切り論または継続
状況が大きく変化をしている。2001 年 4 月に誕生した小
論のどちらを支持する資料か、また資料が、日本
泉内閣は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針
側または中国側のどちらの視点からみた資料か。
2006」
(通称「骨太の方針」
)の歳出改革の一環として、
*デシジョンテーブルの利用
2006 年度一般会計予算では、ODA 予算を前年度比 3.4%
減の 7,597 億円としており、また過去 9 年間では 35%減
となっている。こうした ODA の見直しの中で、対中国
優先順位(プライオリティ)の決定
ODA は、中国経済の発展や核実験などの軍事費の増大等
意思決定をおこなう上で、
6つの資料の優先順位
の理由により削減・打ち切り論がすすみ、対中国援助の
(プライオリティ)を決定する。
大部分を占める円借款の供与額は、2002 年度は 1212 億
*デシジョンテーブルの利用
円と対前年度比で約 25%減少(2004 年政府開発援助
(ODA)白書)することが決定されている。また、2003 年
改訂された新ODA大綱では、援助の目的を「わが国の
優先順位にもとづく意思決定
安全と繁栄確保」と謳い、国益重視を初めて明記した。
*デシジョンツリーの利用
そこで、本章では南北問題とその経済的背景、国連の
ミレニアム開発目標などの概要をとり上げ、また対中国
ODAに対する削減・打ち切り論と継続論について、資
意思決定の表明
料分析を中心として、意思決定をさせる。生徒に意思決
班内で自分の意思決定結果と、
そのプロセスにつ
定を迫ることにより、強いインセンティブを与えること
いて発表。
をねらいとし、また多数の資料分析のプロセスで、資料
の優先順位(プライオリティ)をつけさせることにより、
意思決定プロセスを明確化させる。その際に、思考プロ
意思決定の振り返り
セスを手助けする分析ツールとして、コンピュータシス
資料分析の視点を振り返る。
*デシジョンマップの利用
テム作りの手法であるデシジョンテーブルや、オペレー
ションズ・リサーチの手法であるデシジョンツリーなど
を利用する。資料分析から意思決定までの思考プロセス
(1)歴史的視点から南北問題、対中国ODAを考察す
を、意識的に振り返ることにより、資料の吟味や問題へ
る。
の深い洞察力、多様な視点から問題を考察する力を身に
南北問題の歴史的成立は、先進諸国の植民地政策の歴
つけさせたい。
史から始まり、第2次世界大戦後の開発途上国の独立を
経た現在でも、政治的にも経済的にも大きな影響を残し
2.教材化のねらい
ている。南北問題の基本的構造が、すでにこの時期から
作られていることを認識し、問題の原因や解決を考察す
合理的意思決定の流れ
る。
基礎的概要の学習
対中国ODAは、1900 年代における日本の中国大陸侵
南北問題・モノカルチャー経済・国連ミレニアム開発目標・政
略を背景に、1979 年の大平総理(当時)が訪中の後、開
府開発援助・日中の歴史的背景・対中国ODAなど
始されている。日本政府は「賠償につきまして、中国は
14
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
崩壊し、欧米諸国が「援助疲れ」で ODA の量を減らす
賠償を請求しないということが決められたわけでござい
ます。したがって、賠償とか賠償にかかわるもとか、そ
中、日本は 1991 年から 2000 年までの 10 年間、世界最
ういう考え方に立脚して日中関係を考えることは正しく
大の援助供与国となった。2)
ない、また中国の意図でもないと私は考えております」
2)政府開発援助大綱(ODA 大綱)
(1992 年)
と、戦後賠償ではないという内容を、大平首相は国会で
1991年ODA4指針を策定し、
1992年には日本のODA
答弁しているが、2000 年に来日した中国の唐外相は、日
政策の基本文書である政府開発援助大綱(ODA 大綱)を
本記者クラブの講演で、
「中国に対するODAは、戦後賠
策定した。重点地域としてアジアを、重点項目として環
償に代わる行為である」という認識を示している。1)
境問題をはじめとする地球規模課題への対応が取り上げ
しかし、日本政府は円借款について「2008 年の北京オ
られている。
リンピック迄に、新規の供与を終了する方向で、日中両
1990 年代後半から現在に至るまで、日本経済は経済的
国政府間で協議が行われている」としている。この姿勢
な停滞にともなう厳しい財政状況の中で、ODA 予算規模
に対して、中国温家宝首相が、2004 年 11 月ビエンチャ
も縮小された。また援助対象としてもアフリカ等の開発
ンでおこなわれた日中首脳会談の席上で、
「対中国ODA
途上国の問題に焦点が当てられようになり、環境・感染
を一方的に中止するなら、日中関係は『雪上加霜』(泣き
症など地球規模の課題へ支援をおこなった。3)
面に蜂)になる」と述べ、日中関係を今後こじらせるこ
3)国連ミレニアム開発目標(MDGs)
とになると牽制した。
このような状況の中、2000 年の国連ミレニアム・サミ
このように、歴史的視点から考察することによって、
ットでは国連ミレニアム宣言や、ミレニアム開発目標が
現在の対中国ODAの日中関係における両国の立場を認
まとめられ、また開発途上国の貧困削減に対する取り組
識することが重要である。
みが最優先の課題とされた。このミレニアム開発目標に
は8つの目標と 15 のターゲットが掲げられている。4)
(2)日本の視点から南北問題、対中国ODAを考察す
4)政府開発援助大綱(新 ODA 大綱)
(2003 年)
る
2003 年に改訂された政府開発援助大綱
(新 ODA 大綱)
1)日本の政府開発援助(ODA)の変遷
は、ODA の目的を「国際社会の平和と発展に貢献し、こ
日本の ODA 草創期は、二つの大きな役割があった。
れを通じて日本の安全と繁栄の確保に資すること」と規
第一の役割は、当初の資金協力がアジア諸国、具体的に
定し、新しく「国益」重視を明記している。また、
「平和
は賠償協定を締結したビルマ連邦(現ミャンマー)
、フィ
の構築と人間の安全保障」の視点に基づき、貧困削減、
リピン、インドネシア、ベトナム共和国(現ベトナム社
持続的成長、地球規模の問題への取り組み、平和の構築
会主義共和国)等に対する戦後処理としての賠償支払い
を掲げている。また、日本の技術協力により相手国の経
とそれに平行する経済協力であった。第二の役割は、中
済成長に貢献することは、日本の影響力の確保や信頼の
長期的に ODA がアジア地域の発展に寄与することが、
獲得につながり、国際貿易の恩恵を享受し、資源、エネ
日本の輸出振興政策になるとした。これは賠償とそれに
ルギー、食料などを海外に大きく依存する日本にとって、
平行する経済協力に調達される物資、役務の対象を日本
これら物資の安定的な供給確保の観点から重要な意義が
のものに限定することで、日本の輸出に直接つながって
あるとしている。5)
5)対中国 ODA の変化
いたことがあげられる。
1970 年代には、基礎生活分野(BHN)に対する援助が
日本は、1979 年の大平総理(当時)訪中の際、中国の
重視されるようになり、この分野への支援を増加してい
近代化努力に対して日本として出来る限りの協力をする
った。1980 年代には、石油危機及び一次産品価格の下落
ことを表明して以来、中国が安定して発展し、また、日
を要因として、発展途上国の国際収支が悪化し、自国の
中間に友好な二国間関係が存在することは、日本のみな
経済状態に照らし維持できないほどの債務を抱えること
らずアジア太平洋地域の平和と繁栄にとり極めて重要と
になった国が多数生じた。このため日本は世界銀行の構
の考えの下、ODA 大綱を踏まえ、中国の援助需要、経済
造調整融資等への協調融資もおこないつつ、その一方で、
社会状況、日中二国間関係を総合的に判断の上、対中経
経済発展における政府の役割も重要であり、引き続きプ
済協力を実施してきた。
ロジェクトを中心とした援助も必要であるとの独自の考
2001 年 10 月には、対中国経済協力計画を策定し、対
え方に基づいた支援をおこない、東アジアにおいて目覚
中国 ODA を大幅に見直した。具体的には、
「今後5年間
ましい経済発展に貢献した。1990 年代には、冷戦構造が
の経済協力の方向性」として、次の五つの方向性を経済
15
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
協力の基本としている。6)
のかを考察させ、また資料は日本側の立場の視点からの
(a)日本国民の理解と支持の下で、国益をふまえるこ
資料か、中国側の立場の視点から見た資料であるかを分
と
析させる。
(b)中国が自ら実施できることは自ら実施すること
資料を分析することは、資料の作り手の視点を抜きに
(c)民間資金とも連携をはかること、
しては、正確に読みとることはできない。ひとつの資料
(d)中国が市場経済化に向けて努力を促していくこと
から、多面的な分析ができる場合も多い。複数の資料を
(e)日本のODAが中国の軍事力強化に結びつくこと
分析し、意思決定する場合に、どの資料を重視するのか。
ないこと
その理由はどこにあるのか。常に批判的な視点を持って、
また、円借款については「2008 年の北京オリンピック
資料を分析する必要がある。
迄に、新規の供与を終了する方向で、日中両国政府間で
このように情報分析は意思決定の一環として位置づけ
協議が行われている」とした。7)
られている。そのためには次の3つの理由により、その
また、無償資金協力・技術協力で重点分野・課題別経
範囲を拡大し質的に転換する必要がある。
済協力方針として、次の6つをおこなうとしている。8)
第一に、情報が溢れる現代では情報は常に複数の情報
(イ)環境問題
源の裏付けや異なる媒体の情報の融合が必要である。
(ロ)改革・開放支援
第二には、意思決定には様々な形の不確実性が避けら
(ハ)相互理解の増進
れず、それを明らかにするのが情報活動であるが、その
(ニ)貧困克服
ために情報分析は得られた情報の解釈と関連状況と整合
(ホ)民間活動への支援
性の理解に止まらず、さらに全体情勢や将来の事態の展
(ヘ)多国間協力の推進
開予測、最善の対応処置等まで考慮する必要がある。し
かし、断片的な情報の恣意的な解釈や思いこみのリスク
(3)経済的視点から南北問題、対中国ODAを考察す
は避けられない。その客観性・合理性を担保するために、
る
理論モデルを援用した対象の要素分析や、構造分析、将
植民地政策下において実施されたプランテーション農
来予測、シミュレーションによる総合的な不確実性分析
業は、現代においても開発途上国で固定化された経済シ
の理論分析が不可欠となってくる。その理論分析によっ
ステムとして引き継がれている。価格が低く、不安定な
て情報活動は初めて意思決定を支援できるものとなる。
特定の一次産品に支えられているモノカルチャー経済が、
第三に、意思決定に際しては、現象に対する個人的経
開発途上国の経済を低迷化させ、工業化を遅らせている
験による判断の限界を超えた複雑性を解明することが重
一因となっている。
要であり、これを理論モデルによって補完することが必
日本の対中国ODAは、1960 年代から 1970 年代にか
要となってくる。10)
けて、日本の経済的自立を目的とした輸出促進政策の一
今回は分析ツールとしてデシジョンテーブルデシジョ
環として、経済協力を効果的に行う側面があり、タイド
ンツリー、デシジョンマップを意思決定の手段としても
援助が大部分を占めていた。しかし、DAC で 2001 年 5
ちいた。
月、後発開発途上国(LDC)向けの ODA のアンタイド
また、資料の分析をもとに、優先順位(プライオリテ
化をすすめる勧告を採択し、
同勧告は 2002 年 1 月に発効
ィ)をつけることを重点とした。複数の資料を検討して、
したため、それにともない日本も見直しをはじめた。日
意思決定にもちいるためには、資料の重みづけが必要で
本のアンタイド化の実施状況は、2003 年約束額ベースで、
ある。漠然と資料を検討するのでは不十分であり、自分
LDC 向け ODA では 65%、二国間 ODA 全体(技術協力
の意思決定の根拠となる資料を選択していくプロセスを
と行政経費を除く)では 96.1%となっており、勧告の要
常に意識することが必要である。あれかこれかの選択で
求を満たしている。9)
はなく、複数の資料に優先順位(プライオリティ)をつ
けることにより、資料を総合的に分析することが必要で
(4)意思決定をおこなうための、情報分析と、理論 モ
ある。
デル、優先順位(プライオリティ)
今回は優先順位(プライオリティ)を視覚化するため
対中国ODAについて意志決定するために、複数の資
に、得点化しそれを意思決定に利用した。
料を分析し、資料の内容の分析、資料が削減・打ち切り
論の根拠となるものか、それとも継続論の根拠となるも
(5)デシジョンテーブル
16
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
デシジョンテーブル(decision table)とは、本来コン
化して描いたもので、起こり得るすべての結論とそれぞ
ピュータのソフトウェアテストを行うために利用される
れの期待値を算出し、期待効用が最大となる選択の経路
決定表と呼ばれるものである。これは入力が複数の条件
を求めるものである。11) (表2参照)
表2
デシジョンテーブル例
(変数:パラメータ)から構成されている場合に、入力
と出力の関係を表形式で表したものである。(表1参照)
表1
デシジョンテーブル例
レポート1~3の提出状況から、成績A~Cをつける場
合の条件入力表と結果表
レポート1提出
レポート2提出
レポート3提出
Y Y Y YN N N
Y Y N NY N N
Y N Y N YY N
成績A
成績B
成績C
X
削減論
日本の財政赤字の解消
新ODA大綱の遵守
中国からの支援
継続論
中国の劣悪な教育状況改善
中国の環境を守ることが、
日本との関係は良好
財政負担増
新ODA大綱に抵触
授業では、資料分析後、6つの資料が意思決定をおこ
X
X
X X
X
なう上で、どのような関係性や、対立性を持ち、削減・
X
打ち切り論と継続論のどちらを支える根拠となるかを、
視覚的に捉えるために図示する目的で構成した。
授業では、最初にデシジョンテーブルを利用し、6つ
次に優先順位(プライオリティ)の高い順に高ポイン
の資料を分析し、分類する目的で構成した。
トを与え、合計したポイントが削減・打ち切り論と継続
まず生徒に提示した6つの資料それぞれについて分析
させた。
論のどちらが大きくなるかを比較する。複数の資料が、
①資料分析をおこなう
それぞれの削減・打ち切り論と継続論の重きづけの根拠
資料の内容をデシジョンテーブルに的確にまとめる。
となり、その重きづけが優先順位(プライオリティ)と
表やグラフを読み取る
なり、合理的に意志決定をおこなう過程を数字化するこ
とを、明確化させるためにもちいた。
②どの資料が自分の意志決定重要か、優先順位(プライ
オリティ)をつける
(7)デシジョンマップ
対中国ODAについて、削減・打ち切り論、継続論
を意思決定する上で、重要と思われる資料から、1
デシジョンマップは、今回新しく構成した情報分析を
位~6位まで優先順位(プライオリティ)をつける。
振り返るツールである。このデシジョンマップは、デシ
ジョンツリーを利用して、意志決定をした後、自分が優
③それぞれの資料が削減・打ち切り論を支持する資料か、
先順位(プライオリティ)をつけた資料が、日本と中国
継続論を支持する資料か判断する
6 つの資料は、どちらを支持する根拠となるのか。
のどちらの視点に立った資料であったのかを考察させる
ことをねらいとしている。
④それぞれの資料が日本側の視点にもとづく資料か、中
デシジョンマップから、自分が根拠とした資料の選択
国側の視点にもとづく資料か、をデシジョンテーブル
は、どちらかの側に偏っていなかったかを確認させる。
に記入させる。
6 つの資料は、
どちら側からみた資料と考えられるか。
意思決定のもとになる資料が、どのような視点から作ら
れたものかを意識させ、根拠となる資料を批判的に見る
視点や、資料の作成先などを考察させることによって、
(6)デシジョンツリー
デシジョンツリー(decision tree)とは、決定木 、意
今後の意志決定時の資料分析のあり方について再認識さ
せるためにもちいた。
思決定ツリー と呼ばれる。これは、意思決定の“決定”
や命題判定の“選択”
、物事の“分類”などを多段階で繰
3.教材内容の概要
り返し行う場合、その「分岐の繰り返し」を階層化して
樹形図(tree diagram)に描き表したグラフ表現、ある
(1)南北問題の概要
いはその構造モデルのことである。
決定理論におけるデシジョンツリーは、意思決定者が
「人工衛星から地球の光をとらえた写真」を提示するこ
取り得る選択行動と、相手(不確実性)の発生確率(主
とにより、貧困に苦しむ多くの開発途上国が南半球に集
観確率)の分岐が多段にわたる際、これら分岐点を階層
中し、一方北半球には先進工業国が集中していることを
17
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
地理的観点から確認し、また南北問題という言葉の由来
目標
(Millennium Development Goals: MDGs)
である。
を認識する。次に「世界がもし 100 人の村だったら」の
MDGs は、2015 年間で達成すべき8つの目標と 15 のタ
動画を視聴して現状を確認する。先進国と開発途上国と
ーゲットを掲げている。13)
の格差や、開発途上国の貧困を 100 人という数字によっ
(5)日本の対中国ODAの概要
てわかりやすく認識させ、関心を高める活動にもちいた。
日本は、1979 年の大平総理(当時)訪中以来、中国へ
の二国間ODAとして、累積で約 3 兆 472 億円の政府貸
(2)モノカルチャー経済の概要
次に歴史的背景では、南の開発途上国は、列強諸国に
し付け(円借款)と、約 1461 億円の無償資金供与、約
より植民地支配を受け、現在もプランテーション農業か
1146 億円の技術協力を実施しており、インドネシアに次
ら脱出できていないことを理解させる。一次産品に生産
いで第二位の支援をおこなっている。
を集中しているモノカルチャー経済は、天候や価格変動
しかし 2001 年 10 月の対中国経済協力計画では、対中
に左右される不安定な商品であり、付加価値も工業製品
国 ODA を大幅に見直し、また、円借款については「2008
に対して低いことなどを考察させる。地図から、開発途
年の北京オリンピック迄に、新規の供与を終了する方向
上国の分布を地理的観点から確認させる。
で、日中両国政府間で協議が行われている」としている。
また、無償資金協力・技術協力で重点分野・課題別経済
協力方針も策定された。このように日本国内では、中国
(3)食糧問題の概要
経済の発展や核実験などの軍事費の増大などの理由によ
国連食糧農業機関(FAO)の推計では、今日開発途
り削減・打ち切り論がすすんでいる。
上国で飢えに苦しんでいる人々は、8億2千万人にのぼ
り、1992 年の 8 億 2300 万人と比較してわずか 300 万人
Ⅳ.単元開発
減少したに過ぎないとしている。2015 年までに、今後1
年間で 3100 万人の飢餓人口を減らしていかなければ、飢
餓を止めることができないという厳しい現実に地球が直
(1)単元名
面していることを認識させる。12)
南北問題と政府開発援助(ODA)
穀物換算食料表示で各国の年間一人あたりの消費量は、
インドは年間 200 キロ、
日本は 400 キロ、
アメリカは 800
~対中国ODAは削減・打ち切りするべきか、継続する
べきか~(対象:高校3年生)
キロで、倍倍になっており、この消費の差は、穀物を家
畜に与え、肉類の生産に大量に消費していることが原因
(2)単元のねらい
であり、世界の貧困と飢餓は食料分配の不公平さと、先
南北問題の歴史的成立過程とその経済システムの認識
進諸国の食生活に大きく関係していることを考察させる。
と、日本のODAの現状の追究から、対中国ODA問題
こうしたなか国連「世界食料サミット」
(1996 年)の
の概要を把握し、デシジョンテーブル、デシジョンツリ
ローマ宣言では、2015 年までに世界の飢餓人口の半減を
ー、デシジョンマップをもちいて合理的意志決定をおこ
目指すことが提起され、これが国連ミレニアム開発目標
なうための思考プロセスを視覚化・明確化することで、
(2000 年)に引き継がれたことを認識させる。
生徒自身が合理的に意思決定をおこない、その決定につ
いて表明をおこなう。
(4)国連ミレニアム開発目標の概要
2000 年 9 月ニューヨークで開催された国連ミレニア
(3)単元の位置づけ
ム・サミットに参加した 147 の国家元首を含む 189 の加
「学習指導要領」との関係では、高等学校公民科「政
盟国代表により、21 世紀の国際社会の目標として国連ミ
治・経済」において、
(3)現代社会の諸課題のイで、
「地
レニアム宣言が採択され、平和と安全、開発と貧困、環
球環境問題、核兵器と軍縮、国際経済格差の是正と国際
境、人権とグッドガバナンス(良い統治)
、アフリカの特
協力、経済摩擦と外交、人種・民族間問題、国際社会に
別なニーズなどを課題として掲げ、21 世紀の国連の役割
おける日本の立場と役割について、政治と経済を関連さ
に関する明確な方向性を提示した。そして、この国連ミ
せて考察させる」として、国際理解のねらいのみに留ま
レニアム宣言と 1990 年代に開催された主要な国際会議
らず、
「日本の立場と役割」を積極的に考察し、公正かつ
やサミットで採択された国際開発目標を統合し、一つの
客観的な見方や考え方を深めさせる」としている。14)近
共通の枠組みとしてまとめられたものがミレニアム開発
年大きく変化をしているODAについて、削減・打ち切
18
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
りをすすめるか、継続していくのかを生徒が合理的に意
ができたのか。資料をどれくらい批判的に見ることがで
志決定をするプロセスを視覚化することにより、その本
きたのか。得点だけではなく資料分析そのものを深く考
質的問題に迫り、深い洞察力を身につけることができる
察するプロセスを、今度さらに充実させていきたい。
単元計画を作成した。
【註】
(4)活動計画
1)対中国ODA(政府開発援助)見直し論議(国立 国会図
書館 ISSUE BRIEF NO.468)
本単元計画は全3時間で構成する。活動計画の展開例
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0468.pdf
は別掲資料にて述べる。
2)政府開発援助(ODA)白書 2006 年版
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/06
(5)成果と課題
_hakusho/index.html
豊かな日本に生活している生徒にとって、地球的規模
の貧困の拡大を理解することは容易ではない。開発途上
3)政府開発援助(ODA)白書 2006 年版
国の貧困を知ることが、国際理解の第一歩である。そし
4)政府開発援助ODAホームページ「ミレニアム開 発目標」
て、知るだけではなく、日本をはじめとする先進国が、
2015 年に向けた日本のイニシアティブ
その貧困に大きく影響していることをしっかりとらえさ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kouhou/
せたい。開発途上国の現状とその歴史的背景を学ぶこと
pamphlet/pdfs/mdgs_03.pdf
で、地球規模の貧困に対して、私たちが積極的に支援を
5)政府開発援助(ODA)白書 2006 年版
おこなう必要があることに気づいてもらいたい。
6)政府開発援助ODAホームページ「対中国経済協 力計画」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kunibetsu/enjyo/c
一方、日本の対中国ODAが削減に向かっているが、
hina._h.html
この選択は日本として正しい決定なのか。今回訪れた農
村の貧困は想像以上のもので、その一方で都市部は急激
7)在日中国大使館「日本の対中国経済協力(概観)
」
http://www.cn.emb-japan.go.jp/oda_j/summary_j.htm#2
な発展を続けている。マスメディアによる中国の発展は、
限られた都市の一部であることをあらためて痛感した。
8)政府開発援助ODAホームページ「対中国経済協 力計画
日本の新ODA大綱では「日本の国益重視」の方針が決
概要」
められたが、経済面でも政治面でも中国との関係は今後
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kunibetsu/enjyo/c
の日本にとってさらに重要になっていくのではないのか。
hina_gai.html
確かに日本の財政赤字は巨額になっており、国内では問
9)EIC ネット「タイド援助」
題が山積している。しかし一方で国境を越えた日本企業
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=3314
の活動により、世界中で得た利益を巨額の富として日本
10)飯田耕司「意思決定分析の理論」
(意思決定分析の基礎理
に還流させている。また日本の ODA を多くの国が期待
論)
している現状もある。
11)@ITweb「デシジョンツリー」
このように南北問題と ODA をめぐる問題は、政治・
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/decisiontree.html
経済・歴史など総合的な視点から考察することにより、
12)FAOプレスリリース「2006 年世界の食料 不安の現状」
より深い理解が得られる。この問題で意思決定をおこな
http://www.fao.or.jp/news/documents/2006.10.30.pdf
うためには、複雑な条件を正確に分析し、多様な視点か
13)外務省 web 「ミレニアム開発目標(Millennium
ら考察し、分析ツールを利用することで、最適な決定を
Development Goals:MDGs)
」
おこうことが可能となるように工夫した。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/
mdgs.html
生徒自身が意思決定することが最終目標ではなく、意
志決定のプロセスで、資料の選択、資料の考察、優先順
14)高等学校学習指導要領解説公民編
位の決定などを通して、問題の本質に迫り、複合的に判
(田中一裕 明石卓)
断できる力をつけさせたいと考えている。
今回は、優先順位(プライオリティ)を得点化したが、
重みづけの方法を異なった方法でも実施することが可能
であった。生徒自身が重きづけや優先順位(プライオリ
ティ)をつける際に、資料の内容にどれくらい迫ること
19
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
<別掲資料>
単元計画(全3時間)
第一次 南北問題の歴史的成立過程とモノカルチャー経済、国連のミレニアム目標開発
第二次 対中国ODA問題の概要の把握と資料分析にもとづくデシジョンテーブルの編集
第三次 デシジョンツリーとデシジョンマップの編集、思考の可視化、意見の形成と表明
単元の展開
【第一次 南北問題の歴史的成立過程とモノカルチャー経済、国連のミレニアム目標開発】
発問
展開
教授・学習活動
資料
生徒に定着させたい知識
◎題材への関心を高める活動
○「人工衛星から見た地球の夜」 T:投げかける
導
入
の写真から、どのようなことが
1
S:予想する
進国に集中していること、また南半球に
T:説明する
わかるか?
○光の帯が、都市からの光で、北半球の先
集中している開発途上国の暗さに気づく
○「動画で見る100人の村」を
T:発問する
視聴し、開発途上国と実態はど
S:予想する
状にあり、先進国との格差が大きいこと
うなっているか?
T:説明する
を理解する
2
○開発途上国の人々の生活が、厳しい現
T:テーマ提示
◎問題を認識させる活動
○南北問題の歴史的背景はどの
T:発問する
3
S:答える
ようなものか?
○インドネシア、スマトラ島のア
ブラヤシの続く写真は、人為的
○1945 年の植民地の世界地図から、植民地
が集中しているところを確認する
T:発問する
4
S:答える
○生態系を無視したアブラヤシだけのジャ
ングルが、かつての宗主国のプランテー
ション農業が残したものであることを理
なものか?
解する
○プランテーション農業とは何
T:発問する
○単一の一次産品を主な生産物として経済
か?現地に与えた影響はどの
S:予想する
的に依存している経済であり、天候や相
場により価格が不安定であり、独立後も
ようなものか?
展
○モノカルチャー経済とは何
T:発問する
モノカルチャー経済から脱出できない開
開
か?開発途上国の経済システ
S:予想する
発途上国の状態を理解する
ムはどのようなものか?
T:説明する
生
T:発問する
しているが、私たち先進国は関
S:予想する
めに、その数倍の穀物が消費されている
係ない出来事なのか?
S:答える
ことから、開発途上国の貧困が先進国と
T:説明する
無関係ではないことを理解する
○食糧不足により飢餓が発
5
○先進国で消費されている肉類の生産のた
◎資料から情報を獲得させる活動
○ミレニアム開発目標(MDGs) T:発問する
6
○2000 年 9 月ニューヨークで開催された国
とは何か?
S:答える
連ミレニアム・サミットで制定された目
標であることを理解する
○ミレニアム開発目標が、 目指 T:発問する
○2015 年まで世界から貧困と飢餓を撲滅す
しているものはどのようなも S:答える
るための8つの目標と15のターゲット
のか?
を定めていることを理解する
◎日本と中国の歴史的背景に注目させる
7
○日本と中国との歴史的関係は T:発問する
○1941 年の日本の中国大陸における勢力図
20
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
S:答える
どのようなものか?
8
から、日本が戦中に中国大陸深く攻め入
ったことを理解する。また第 2 次世界大
戦時日本の最大勢力図から、アジアの多
くの国に、日本が攻め入ったことを理解
する
○中華人民共和国成立後の中国
の経済はどのようなものだっ
T:発問する
○経済分野で学習した社会主義経済の特
S:答える
徴を再確認する
たか?
○1993 年の社会主義市場経済導入が、中国
国内の都市と農村における経済格差が拡
大したことを理解する
次の時間へ向けて資料から情報を獲得させる活動
○日本のODAはどのようなも
終
T:投げかける
9
S:予想する
のか?
○ODAには、
「無償援助」
「技術協力」
「政
府貸付(円借款)
」の3つがあり、それぞ
れの特徴を理解する
結
○日本のODAには、どのような
問題点があるか?
T:発問する
○問題点として、グランドエレメントが、
S:答える
日本がDAC加盟国中最低であること、
タイド援助が多い、経済インフラ中心で
あること、情報の不透明性・不正問題な
どを理解する
【第二次 対中国ODA問題の概要の把握と資料分析にもとづくデシジョンテーブルの編集】
展開
発問
教授・学習活動
資料
生徒に定着させたい知識
◎題材への関心を高める活動
○スタディーツアーで中国を訪れ
た際のハルビンの写真を提示、
T:投げかける
10
S:考える
○新潟市と姉妹都市のハルビン市の都市
化と、農村部の格差に気づく
また白音諾勒(バイヌル)村小
○白音諾勒(バイヌル)村小学校へ、新潟
学校の写真を提示する
県日中友好協会の支援で、教育環境が向
上したことに気づく
導
入
◎対中国 ODA 累積額の推移を提
示し、
また日本による ODA 打ち
◎題材への関心を高める活動
T:発問する
○対中国 ODA 額が2000年代になると
11
S:答える
12
13
切り政策と中国首相の継続希望
の発言を紹介し、両国の考え方
減少傾向にあることを理解する
○日中間に削減・打ち切り論と継続論の対
立に気づく
はどのように異なっているの
(以下「削減・打ち切り論」を「削減論」と略
か?
す)
小単元の主題の提示
対中国 ODA の、削減論と、継続論のどちらを支持するべきか
21
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
◎デシジョンテーブルに情報をまとめる活動
展
開
○資料A~Fから、どのような情
T:説明する
資料
○資料A~Fから情報を読みとり①欄に整
報が得られるか?それぞれにつ
S:デシジョン
A
活
いて、表の①欄にまとめる。
テーブルに記入
B
動
○②欄にはA~Fの資料が対中国
する
C
○②欄には、資料からの読み取りをもとに
1
ODAの削減論・継続論を判断
D
して、対中国ODAの削減論・継続論を
する際に、自分が重要と考える
E
判断する際に、自分が重要と考えるもの
ものはどれか? 重要な順に1
F
に、プライオリティ(優先度)を決定し
位~6位の優先順位をつける
理する
優先順位をつける
○A~Fの資料は削減論、継続論
○A~F 資料は削減論、継続論のどちらを支
のどちらを支持する根拠と考え
持する根拠と考えられるか、資料の分析
られるか?③欄に○をつける
から、判断をする
○A~Fの資料は、中国側の視点
○資料の分析から、
にもとづく資料か、日本側の視
日本側の視点か、中
点にもとづく資料か、どちらか
国側の視点か、判断
に○をつける
する
【第三次 デシジョンツリーとデシジョンボードの編集、思考の可視化、意見の形成と表明】
展開
発問
教授・学習活動
資料
生徒に定着させたい知識
◎デシジョンツリーによる意見の形成と意思決定
◎デシジョンテーブルの③欄の情
T:説明する
活
報を、デシジョンツリーに削減
S:デシジョン
動
論と継続論に分類して、優先順
ツリーに記入
2
位の高い順に整理する
する
◎資料を削減論、継続論で分類し、情報を
整理する。また優先順位のポイントを合
計する
○③爛のシェアリングにより、自分の決定
○③欄のシェアリングを行う。
22
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
とその根拠を選択した理由を表明する。
他の生徒は聞いて確認する。
○デシジョンツリーをもとに、自
○デシジョンツリーをもとに、自分は削減
分は削減論と継続論のどちらの
論と継続論のどちらの考えを支持するか
考えを支持するか、筋道立てて
を筋道立てて意見を表明する
意見を表明する
◎デシジョンマップを使って問題意識を高める活動
活
動
3
◎デシジョンマップ上の、ポイン
トの合計ラインに自分のマーク
を入れる
T:説明する
S:デシジョン
マップに記入
する
◎デシジョンマップ上の、ポイントの合計
ラインに自分のマークを入れる
○1位、2位に注目して、デシジョンマッ
プ上でマークを移動させて、自分の意志
決定が、①どのような情報を重視して、
②どちらを支持しているのかを、明確に
する
○1位、2位に注目して、デシジ
ョンマップ上でマークを移動さ
活
動
4
せてみる
○班のメンバーに、自分の位置を
T:説明する
S:デシジョン
マップに記入
○自分が高い優先順位をつけた情報につい
て、なぜその情報を選択したのか振り返
る
○自分が日中両国の情報について、どのよ
する
表明し、班の中で各自の位置を、
うな立場から決定をおこなったかを、班
表にマークする
内で表明する
資料の視点を確認
削減論と、継続論への意思決定をおこなった、最初の資料分析は日中双方の資料を考慮した決定であ
ったか? もう一度資料分析へ戻って、考察する
23
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
活動3 デシジョンマップをつかって問題意識を高めよう
ポイントの多い方の数字の上に○をつける
中国(相手側)の立場を重視
中国(相手側)の立場を重視した削減論
中国(相手側)の立場を重視した継続論
2
1
14
13
12
11
11
12
13
14
15
継続論
削減論
15
1
2
日本(自国)の立場を重視した削減論
日本(自国)の立場を重視した継続論
日本(自国)の立場を重視
1.自分の選んだ1位と2位が中国側・・・中国(相手国)側の立場を重視 ↑へ2コマ進める
2.自分の選んだ1位だけが中国側・・・・中国(相手国)側の立場を重視 ↑へ1コマ進める
3.自分の選んだ1位と2位が日本側・・・日本(自国)側の立場を重視
↑へ2コマ進める
4.自分の選んだ1位だけが日本側・・・・日本(自国)側の立場を重視
↑へ1コマ進める
自分が重要視した資料が、上記のどの事象にあてはまる資料であるか確認する。
また今回の意志決定で不足している部分を、記入する
(中国側の継続論を支持する資料を最も重視した。
また 6 つの資料の中で削減論を根拠付ける資料が 3 つ、継続論を根拠付ける資料が 3
つあると考えた。また 6 つある資料の中で、日本側の資料が 4 つ、中国側の資料が 2
つあり中国側の根拠となる資料が少ないと思われる)
◎複数の情報を分析し、プライオリティにもとづき複合的に意思決定をおこなう
ま
◎意思決定にいたる情報分析の方
T:発問する
と
法として、内容の分析や資料の
S:振り返る
め
視点を明らかにすることができ
◎意思決定をおこなうために、正確に情報
分析する
○内容や視点に注目し、より深い分析をお
たか? また複数の資料の優先
こなう
順位(プライオリティ)づけを
◎複数の情報を、多面的に分析し、プライ
意識的に、おこなえたか?
オリティにもとづき意思決定をおこなう
振
◎意思決定までの思考プロセスを
T:発問する
◎意思決定がすすめられていく思考プロセ
り
具体的に認識することができた
S:振り返る
スを視覚的にとらえることで、客観的な
返
か?
意思決定をおこなうことができたか、振
り
り返る
24
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
[教授資料]
1.
「人工衛星から見た地球の夜」
(出典:フリー百科事典「ウィキペディア」
)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Earthlights_dmsp.jpg
2.
「動画もし世界が100人の村だったら」
(動画提供:NPO法人オアシス)
http://www.oasisjapan.org/100nin.html
3.
「1945年の植民地の世界地図」
(出典:フリー百科事典「ウィキペディア」
)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Colonization_1945.png
4.
「インドネシア、スマトラ島のアブラヤシの続く写真」
(東南アジア地域研究専攻:インターネット連続講座
2000年度第22回「水産資源の養殖と放流」より作成)
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/special/022-05.html
5.
「肉類の生産と穀物消費の関係」
(出典:最新図説現社(浜島出版)より作成)
6.
「ミレニアム開発目標(MDGs)
」
(出典:外務省,政府開発援助 ODA より作成)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kouhou/pamphlet/pdfs/mdgs_03.pdf
7.
「1941 年の日本の中国大陸における勢力図」
(出典:最新世界史図表(第一学習社)より作成)
8.
「第 2 次世界大戦時日本の最大勢力図」
(出典:最新世界史図表(第一学習社)より作成)
9.
「政府開発援助の種類」
(出典:政治・経済資料集(東京法令社)より作成)
10.
「ハルビン市、白音諾勒(バイヌル)村小学校訪問の写真」(スタディーツアーで撮影)
ハルビン市内
25
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
内モンゴル自治区 白音諾勒(バイヌル)村小学校
白音諾勒(バイヌル)村周辺
11.
「対中国 ODA 累積額の推移」
(出典:外務省,政府開発援助 ODA)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/kondankai/senryaku/21_shiryo/pdfs/shiryo_2_1.pdf
12.
「小泉首相、対中国 ODA 削減を表明」
(出典:国立国会図書館 ISSUE BRIEF 対中国政府開発援助(ODA)
見直し論議 経済産業調査室)
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0468.pdf
13.
「温家宝首相、円借款は中国経済建設に貢献した、発言」
(出典:NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/seiji/20041224e3k2400a24.html
資料 A「日本の債務残高」
(出典:財務省 我が国の財政事情について)
http://www.mof.go.jp/seifuan14/yosan005.pdf
資料 B「環境保全(環境ODAは自分を守る道)」(出典:国際協力プラザODA新聞)
http://www.apic.or.jp/plaza/oda/study/20060518-01.html
資料C「経済成長率(アジア各国の経済成長率と世界平均)」(出典:総務省統計局より作成)
http://www.stat.go.jp/data/sekai/03.htm
資料 D「中国の教育環境(希望工程)」(出典:新潟県日中友好協会より作成)
http://www.niigata-inet.or.jp/njcfa/pj-hope-houdou.htm
資料 E「一人当たりの GDP(APEC 各メンバーエコノミーにおける一人当たり GDP 比較)
」
(出典:外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/apec/tokei/gdp.html
資料 F「中国の軍事費(中国軍事費は公表の2~3倍、周辺脅威に(米国防総省))
」(出典:外交防衛委員会調査室
「中国の軍事力」より作成)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/kounyu/20061027/20061027080.pdf
26
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
Ⅳ.おわりに
1.研究の特徴/成果
供することにある。日常の教育実践では、現地取材を実
施することは容易なことではないが、現地の人々の姿や
本研究は、大学院教育学研究科における授業として、
事象に直に触れ、感じたこと、考えたことを手がかりに
幾つかの特徴を有する取り組みである。一言で表すなら
して、教材開発や授業開発に取り組むことは、社会を学
ば、
「学部や地域と連携した大学院教育研究活動」である。
び社会について考える社会科教育実践者にとって重要な
アプローチである。
(1)新潟県国際交流協会委託事業を大学院授業内容に
現場の雰囲気や生活者の実態や息吹を感じ取ることで、
組み込んだ取組
その生活者や現地の課題意識や生活現実をくぐり抜けた
「現代中国社会の理解を深める社会科授業開発研究」
学習テーマ・学習問題の設定(生活現実の課題化的把握)
(以後「開発研究」と称する)への取り組みは、平成1
が可能となる。わずかな時間ではあったが、中国東北部
8年度新潟県国際交流協会委託事業「大学&NGOと連
の農村に立ち、子どもの学習の様子や村の姿、植林場で
携した国際協力ユース育成事業」の一環である。本委託
の放牧の実態等に触れるという学びのアプローチは、第
事業の内容は、①市民・大学生向けの平和講座の開講、
三者的に対象を分析して捉えるデスクワークの在り方を
②大学生対象のスタディ・ツアーの実施、③国際理解教
方向付ける役割も時には果たすことになる。フィールド
育のためのガイドブック作成、の3つからなる。
ワークとデスクワークの往還関係を十分に深めるまでに
本「開発研究」は、この②と③を有機的に結びつけた
は至らなかったが、両者の次元の異なるアブローチを生
ものである。既に、
「Ⅰ はじめに」にてその経緯は説明
かした授業開発体験を組織できたし、またその成果が現
してあるので、ここでは詳細は省くが、中国黒竜江省ス
れた内容となった。
タディ・ツアー体験を通して、大学生・大学院生の中国
理解や中国との交流を深めるとともに、その体験で掴ん
(4)地域の学校と連携した実践を踏まえた授業構想の
だ課題を現代中国社会理解のための授業開発の核として、
検証・モデル化
ガイドブック作成に取り組んだ。
本「開発研究」では、学部生の取り組んだ授業も含め
ると社会科若しくは総合的な学習のための4単元の授業
(2)学部授業と大学院授業の連携を図った授業開発研
開発に取り組んだ。
究の取り組み
学部生は、新潟市立万代長嶺小学校と新潟大学教育人
大学院教育学研究科の授業としては、
「社会科教材開発
間科学部附属新潟中学校での授業実践に取り組む機会を
研究特論」の一環として本「開発研究」を位置づけ、1
得た。大学院生は、新潟県立村上中等教育学校と新潟県
年次院生4名がこの授業開発研究に取り組んだ。一方、
立新潟西高等学校で実践した。いずれも、授業者は学部
学部開講授業でも、学部生を中心にした本「開発研究」
生もしくは大学院生であり、その実践を分析・評価する
に取り組んだ。そして、必要に応じて、大学院授業と学
活動に取り組んだ。大学院及び学部の授業内容を実践と
部授業との交流や学生・大学院生との共同作業の場を組
結びつけ、その成果を検証するためには学校との連携が
織した。大学院生には、現職派遣教員が3名含まれてお
不可欠である。そのようなつながりが、今回は各学校長
り、現職教員院生とストレートマスター、及び学部生の
及び学級・教科担任教員の理解の下に進められたことは、
学びの場を組織した。そこに大学教員のみで組織すると
幸いであった。
きとは異なる多様で有効な教育機能が発揮されることと
なった。
(5)研究成果の学校への還元
(3)フィールドワークとデスクワークを組み込んだ授
める社会科・総合的な学習の時間―授業プログラム活用
業開発方法の試み
ガイド―』
(2007年1月)としてまとめ、新年度に
②と③の結合は、授業開発におけるフィールドワーク(現
新潟県内の全小中学校に配布して、国際理解教育実践の
地取材)とデスクワーク(文献研究)を有機的に繋ぐも
参考にしていただくことになっている。
本「開発研究」の成果は、
『現代中国社会の理解を深
のである。本「開発研究」は、国際理解授業モデルを提
活用ガイドを手にして、また実践した先生方から、意
27
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
見や批判が寄せられることで、その内容を更に高めてい
くと同時に、大学・大学院授業と小・中・高校との交流
や連携が発展することを期待している。更に、各学校で
のカリキュラム開発・授業開発の一助となれば幸いであ
る。
2.課題
授業構想力、授業実践力、授業評価能力を高めていく
ためには、アクション・リサーチ的に計画(plan)
、実践
(do)
、評価(check)
、再実践(action)の一連のサイク
ルの中で、授業開発研究に取り組むことが求められる。
本「開発研究」では、そのようなサイクルの中で取り組
んだ。スタディ・ツアーを挟んで、事前学習、授業構想、
実践、分析・評価、修正という一年近くに及ぶ活動であ
った。しかし、本論では、開発した単元内容の記述にと
どめ、実践の概要記述や実践を通しての児童・生徒の知
識の獲得や認識の変容・深まりの分析記述、更にそれら
による開発単元の評価と修正に関する記述が省略されて
いる。
読者の皆様には、その部分がブラックボックスとなっ
ていることをお断りしたい。今後の課題として取り組み
たい。
3.謝辞
本「開発研究」には、多くの方々の協力と支援をいた
だいた。
まず、授業の場を提供していただいた、新潟市立万代
長嶺小学校、新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校、
新潟県立村上中等教育学校、新潟県立新潟西高等学校の
校長先生に、心から感謝し、御礼申し上げたい。また、
貴重な時間を割いていただいた各担当教員の皆さん、ま
た私どもの授業に参加してくれた児童・生徒の皆さんに
心から感謝申し上げたい。また、本「開発研究」の機会
を提供していただいた新潟県国際交流協会に御礼申し上
げたい。
最後に、参加してくれた大学院生・学部生に感謝した
い。特に、現職派遣院生として実践等のご協力をいただ
いた田中一裕先生、岩見泰先生、明石卓先生、そして論
文編集作業等を快く引き受けてくれた丸山信昭君には感
謝したい。
2007年3月
(宮薗衛)
(平成 19 年 3 月 20 日受理)
28
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
2004 年新潟県中越地震を地域素材として取り上げた
「地震の伝わり方」の授業実践
結城義則 *・藤林紀枝 **
Teaching on propagation processes of seismic waves,
using the 2004 Chuetsu Earthquake, Niigata Prefecture.
Yoshinori YUKI・ Norie FUJIBAYASHI
*
新潟大学教育人間科学部附属長岡中学校, 長岡市学校町 1 丁目 1-1, [email protected]
**
新潟大学教育人間科学部自然情報講座, 新潟市五十嵐 2 の町 8050, [email protected]
1.はじめに
理由から、「変動する大地」の中の小単元「ゆれ動
く大地」の教材として 2004 年新潟県中越地震(以下
科学的探求心と科学的なものの見方・考え方をは
「中越地震」と呼ぶ)をとりあげた。
ぐくむことは、科学技術教育の基本であり、小中学
「変動する大地」の単元は、一般に観測・実験を
校の理数教育における現代的課題である。また、地
通して科学的なものの見方・考え方を養うことが難
球環境の危機を防ぐことが緊急的な課題となってい
しい単元であるが、小論では、附属長岡中学校の幼・
る昨今においては、地域の自然環境、生活環境を保
小・中連携教育課程研究「創造的な知性を培う」の
全する意識の高い人材の育成が必要である。地域と
研究授業として行った授業の実践例を紹介する。
密接に結びついた自然素材を活用した理科の教育実
践は、
このような人材育成の観点からも重要であり、
かつ生徒の科学的探求心を高揚させ、高い学習効果
2.「変動する大地」の単元と教育カリキュラム
が期待される。
2004 年新潟県中越地震は、
2004 年 10 月 23 日午後
中学校第 1 学年理科「変動する大地」の単元では、
5 時 56 分に川口町を震央として発生した。マグニチ
「ゆれ動く大地」、「火山の活動」、「地層のつく
ュード 6.8 の規模の大きな地震(最大震度 7)で、
り」の小単元を学習する過程で、大地の活動の様子
しかもその後も大きな余震を伴った。余震の数は、
や身近な地形、地層、岩石などの観察を通して、地
2004 年 12 月 18 日までに 876 回、そのうち震度 5 弱
表に見られる様々な事物・現象を大地の変化と関連
以上の地震が 19 回発生している(豊島他,2005)。
付ける見方や考え方を養う。
長岡市はこの震央から 15 ㎞の距離に位置し、
大きな
また、本単元は附属長岡中学校の幼・小・中連携
被害を被った。しかし、この地震からほぼ 2 年が経
教育課程研究「創造的な知性を培う」における科学
過し、生徒たちも地震を客観的にとらえられるよう
教育カリキュラムの中学校D「地球と宇宙」に区分
になってきている。そこで、長岡市や周辺地域に大
され、4つの柱のうちの「時間的・空間的な広がり
きな被害をもたらした地震というものを、生徒自身
についての概念」形成に位置づけられている(新潟
が知ることは重要なことであると考えた。これらの
大学教育人間科学部附属長岡中学校,2005)。4つ
29
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
の柱は、(1)幼稚園の身近な自然の季節による変化
今回教育対象とする生徒たちは、これまでの学習
への『親しみ』から、(2)小学校第3学年「日なた
を通じて、自然の事物・現象の性質や規則性につい
と日かげ」における空間の把握、第5学年「流水の
て、提示された課題に取り組んで解決するだけでな
働き」「天気の変化」、第6学年「土地の作りと変
く、疑問を抱き、理由付けのある予想をして解決す
化」を通して、時間的・空間的な広がりについての
る学びに意義や価値があることに気づき始めてい
『概念』の獲得を目指す。そして、(4)中学校第 1
る。また、中には、自然の事物・現象について、根
学年「変動する大地」において、大地と時間・空間
拠のある予想や条件設定を変えて、観察や検証実験
の関連についての『概念』、第2学年「天気とその
を行い、性質や規則性を見いだそうとしている生徒
変化」における気象現象が起こる仕組みと規則性に
もいる。
ついての『概念』、第3学年「地球と太陽系」にお
「ゆれ動く大地」の小単元では、「地震は、震源
ける地球の自転・公転による相対的運動についての
から遠くに徐々に伝わる」という既有の概念を「地
『概念』を形成することである。「創造的な知性を
震は、初期微動、主要動の2種類のゆれがあり、2
培う」ためには、これらの柱を構成する単元の学習
種類の波によって徐々に伝わる」という新たな概念
1)
と「科学的なもの
を形成していくことがねらいである(図2)。この
の見方・考え方」 をはぐくむ取り組みが必要とさ
小単元において、「科学的な感性」は、原理・法則
れる。
を導き出す見通しとなり、「科学的なものの見方・考
過程おいて、「科学的な感性」
2)
そこで、「変動する大地」の 3 つの小単元ごとに
え方」は、実験したデータをもとに原理・法則を導
次のような目標を設定し、図 1 に示すような単元の
き出す力としての役割を果たす。その「科学的な感
追究過程を構想した。
性」「科学的なものの見方・考え方」を働かせるた
○「ゆれ動く大地」:中越地震の地震計の記録や過
めに働きかけ①~④を行う(図1)。働きかけ①<
去の地震の資料などを基に、ゆれの大きさや伝わ
焦点化>として、地震計の記録を提示して、問題点
り方の規則性、地球内部の構造や動きとの関連を
を発見させ、「科学的な感性」を働かせる。ここで
考える。
学習意欲の高揚を狙って、生徒たちが 2004 年 11 月
○「火山の活動」:火山の形や活動の様子、火山噴
に体験した中越地震のデータを活用する。次に、働
出物の観察や記録をもとに、火山の形や噴火活動
きかけ②<視点の転換>として、生徒が実験の条件
とマグマの粘性や火成岩の種類やでき方について
設定を構想する検証実験を設定して、「科学的な感
知る。
性」「科学的なものの見方・考え方」を働かせる。
○「地層のつくり」:身近な露頭の観察を通して、
そして、働きかけ③<協働>によって、班で検証し
地層の重なりや構成物、広がり等を手がかりにし
た方法と結果を重ね合わせ、課題を解決していき、
ながら過去の大地の様子や変動を知る。
総合化された概念を形成する。最後に、働きかけ④
これまでの「変動する大地」の学習過程において
<自己化>により、地震データの図式化・グラフ化
は、露頭の観察や堆積岩、火成岩、化石などの観察
を通して概念を再構成する。ここで、再び中越地震
を中心とした学びが主体であり、探究していく価値
のデータを活用する。
を感じさせる実験はなかなか設定しにくかった。し
より具体的な働きかけの内容は、次の(1)から
たがって、予想を立てて観察・実験していく教材を
(4)に示す。
開発したり、単元における学習過程を工夫したりす
る必要がある。そこで今回、「ゆれ動く大地」の教
(1) 働きかけ① <焦点化>
材として生徒たちが実際に体験した中越地震のデー
新潟県長岡市、上越市、そして震央から 154.5 km
タや手作りのモデルを活用し、地震波の伝わり方を
離れた埼玉県久喜市における中越地震の地震計記録
追究させることを試みた。
を「平成 16 年(2004 年)新潟県中越地震調査報告」
(気象庁, 2005)から抜粋・編集して、資料 1 に示
すワークシートを作成した。これらの地震計の記録
3.中越地震を地域素材として活用した小単元「ゆ
を比較し、そこから問題点を発見させて、単元の学
れ動く大地」における「学習過程」と教師の働き
びを方向付ける。そして、地震計の「ゆれの大きさ」
かけ
「震央からの距離」「振動開始時刻」に違いがある
30
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
①
②
③
<観察対象生徒Aさん>
<観察対象生徒Bさん>
初期微動と主要動のゆれ始める 地震のゆれの大きさに注目する
時間に注目する生徒
生徒
【1次 ゆれ動く大地】
中越地震の地震計の記録からどのようなことが分かるか。
ゆれの大きさ
ゆれ始めの時刻
2種類のゆれ
距離
初期微動、主要動の定義
⑥
⑦
⑧
<②視点の転換>
○地震波モデルを用いて、条件を設定
する学びの組織
【
「科学的な感性」
】
【検証実験】
震央からの距離が2倍になると 震央からの距離が大きくなると
初期 微動と主要動の差が2倍に ゆれの大きさが小さくなる。
なる。
班ごとの実験結果の共有
P波、S波の伝わる速さを求めよう。
(グラフ化)
グラフ化
データをもとに、地震の伝わり方を確かめよう。
(図式化)
中心から、順々に輪のように伝わ 円を描くように伝わる。
る。
地震はどのようにして起こるか。
西方に向かって震源が深くなっ 震源が帯状に分布している。
ている。
⑨
世界のプレート、ヒマラヤ山脈の誕生
中越地震を引き起こしたプレートの可能性
⑩
パフォーマンステスト
⑪
【2次 火山の活動】
マグマのねばりけと火山の形はどのような関連があるか。
ねばりけが大きい
ねばりけが小さい
マグマのねばりけによって火山の形が決まる。
【3次 地層のつくり】
⑲ ◎地層のつくりや重なりを観察しよう。
重なり方の違いは、地層のでき方 地層の重なり方が途中で変わっ
が違うからである。
ている。
30
○
○地震の伝わり方を実証する場の設
定
【「科学的なものの見方・考え方」
】
<③協働>
<④自己化>
○初期微動の始まった時刻のデータ
の活用
【「科学的なものの見方・考え方」
】
○日本付近で発生した地震の震
央と震源の分布の活用
【「科学的なものの見方・考え方」
】
○宮城県沖地震のデータの提示
【
「科学的な感性」
】
【「科学的なものの見方・考え方」
】
⑬ ◎マグマからできた岩石を調べよう。
火山灰の鉱物と火成岩をつくる 火成岩の鉱物の中にもきらきら
鉱物は同じものである。
光るものがある。
⑱
27
○
<①焦点化>
○地震のゆれの伝わり方と震央との
距離を関係づけるデータの提示
【
「科学的な感性」
】
地震波モデルを用いて地震のゆれを再現しよう。
最初のゆれとあとのゆれでは時 最初のゆれは小さく、あとのゆれ
間差があり、地震計のゆれ方と一 は大きい。
致する。
震源、震央の定義
④ ◎地震はどのように伝わっていくか。
【実験の構想】
・震央からの距離とゆれが伝わる時刻の関係
・震央からの距離とゆれの大きさの関係
・2種類のゆれの伝わり方の違い
・震源の違いとゆれの伝わり方の違い
⑤
<教師の働きかけ>
○火山灰と砕いた火成岩の比較
【
「科学的な感性」
】
○双眼実態顕微鏡での観察
【「科学的なものの見方・考え方」
】
○露頭のスケッチから地層の重なり
を説明する学びの組織
【「科学的なものの見方・考え方」
】
○化石から環境を推定する場の設定
【
「科学的な感性」
】
地層から何がわかるだろうか。
現在、生物が生育している環境か それぞれの生物の生息する環境
ら、昔の環境を推定できる。
が異なる。
図1 「変動する大地」の追究構想図(全 30 時間)
31
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
再構成
された概念
地震は、初期微動、主要動の2種類のゆれがあり、2種類の波によって徐々に伝
わる。
図式化・グラフ化
働きかけ④
<自己化>
「地震のゆれの伝わり方をグラフ化・図式化して表そう」
総合化
された概念
初期微動と主要動のゆれ方の違いは、伝わり方の違いから生まれてくる。
働きかけ③
<協働>
「課題追究の方法と結果からの考察を重ね合わせて、課題を解決しよう」
班単位の課題解決
地震の伝わり方には規則性が
ありそうだ。
「科学的な感性」
働きかけ②<視点の転換>
学習課題Ⅱ設定
・初期微動と主要動の伝わる時
間の違い(速さ)
・初期微動継続時間の差
・ゆれの大きさや長さに着目す
ると解決できそうだ。
地震波モデルを活用して、地震
の伝わり方について実験をして
確かめよう。
試行実験
初期微動と主要動は、同時に発
生し、伝わり方に違いがありそう
だ。
学習課題Ⅰ設定
震央との距離の違いによっ
て地震の伝わり方が変わるの
ではないか。
「科学的なものの見方・考え方」
学習課題追究Ⅱ
実験の結果から、初期微動、
主要動の伝わる時間と震央か
らの距離との関係、初期微動継
続時間と震央からの距離の関
係を見いだそう。
(分析的な思考力)
地震の伝わり方になぜこのよ
うな違いがあるのだろうか。
学習課題追究Ⅰ
初期微動と主要動との関係
を見いだそう
(分析的な思考力)
問題点の発見
働きかけ①
<焦点化>
既有の概念
「各地の地震計の記録から、地震の伝わり方についてどのようなことが
いえるか」
地震は、震源から遠くに徐々に伝わる。
図2 小単元「ゆれ動く大地」において地震のゆれの伝わり方の新たな概念を形成する「学習過程」
32
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
ことに気づかせる。また、「地震の伝わり方を解明
らの距離とをグラフ化し、P波、S波の速さを求め
しよう」と継続した追究を可能にする課題を設定し
時間的概念を形成する。そして、各地の初期微動の
て、事物・現象を自分の問題としてとらえさせる。
伝わり始めた時刻を図式化し、地震が同心円上に伝
わっていく空間的概念を形成する。これらの図式化
(2) 働きかけ② <視点の転換>
・グラフ化により、「地震は初期微動、主要動の2
初期微動と主要動のゆれ方や速さの違いをわかり
種類のゆれがあり、2種類の波によって徐々に伝わ
やすくするために、ここでは村山ほか(1998)の「地
る」という新たな概念を創りあげていく。ここで、
震波モデル」を参考にして、長さ約 2 m の地震波観
中越地震の観測データ(気象庁,2005に基づく)か
測装置
(以下地震波モデルと呼ぶ)
を 10 個製作した。
ら、東日本の39地点における初期微動と主要動が伝
「科学的な感性」を働かせるため、この地震波モデ
わった時刻と震央からの距離、そして震度を表にま
ルを用いて次のアからオのような実験条件を生徒の
とめて提示し、観測点を示した地図に震度分布とゆ
発想を生かして設定させ、それらの検証実験を構想
れの始まった時刻を記載させるワークシートを今回
させる。そして「科学的なものの見方・考え方」を
作成した(資料2、3)。また、初期微動と主要動
働かせるため、それぞれの構想をもとにした検証実
の速さの違いを実感させるため、それらと震央から
験を行う。これらの働きかけによって、地震計の記
の距離の関係をグラフ化させることを試みる(資料
録について見方を変えて検証していくことになる。
4)。
ア. 地震波モデルの震央の位置を変えて、初期微
以上のような「学習過程」は、自然を科学的に調
動、主要動の伝わる時間と震央との距離の関係
べていく基本的な過程であるばかりでなく、生徒が
を調べる。
主体となって科学的な思考力を伸ばす学びである。
イ. 地震波モデルの震央の位置を変えて、初期微
実験によって分析的な思考力を働かせ、地震の伝わ
動継続時間と震央との距離の関係を調べる。
り方を実証的に導き出す点において有効であると考
ウ. 地震波モデルの震央の位置を変えて、ゆれの
えられる。
大きさの違いやゆれる時間を調べる。
エ. 地震波モデルの震央の位置を変えて、ゆれが
続く時間を調べる。
4.
「学習過程」におけるみとり
オ. 地震波モデルを斜めに傾けて、震源の直上と
斜めの地点でのゆれの違いを調べる。
本小単元における「学習課題」の各段階のみ
とりは、図3に示す4回にわたって行った。
(3) 働きかけ③ <協働>
まず単元始めのみとり1では、既有の概念である
各班の検証実験の結果を集約し、発表をもとにし
「地震は震源から遠くに徐々に伝わる」についての
た協働により、「初期微動は、主要動の半分の時間
知識と理解を確かめる。
で伝わる」「初期微動が続く時間は、震央からの距
みとり2は、新たな概念を形成させるための働き
離が大きくなると大きくなる」「震央からの距離が
かけ①<焦点化>の過程で行った。ここで、今回新
2倍になると初期微動、主要動の伝わる時間が2倍
たに教材化した「中越地震」の地震計の記録(資料
になる」「震源からの角度が変わっても伝わり方に
1:ワークシート②)を提示し、震央からの距離と
変化がない」ことを見いださせる。そして、地震の
初期微動継続時間との関係、
振動開始時刻との関係、
ゆれ方と伝わり方のかかわりを実感させていく。
震央からの距離とゆれの大きさとの関係等に気づか
ここでの協働は、検証実験の結果だけにとどまら
せる。
ず、実験の構想、結果からの考察の過程を意見交流
みとり3は、働きかけ①によって発見した問題点
することによって、新たな概念の形成に向かう思考
から学習課題Ⅰ「地震の伝わり方には震央からの距
の共同基盤を形成していく。
離による違いがあるのか」を設定し(図2、図3)、
試行実験を行う。次に、視点の転換による学習課題
(4) 働きかけ④ <自己化>
Ⅱ「地震波モデルを活用しての地震の伝わり方につ
総合化して見いだした地震の伝わり方の規則性を
いて、実験をして確かめる」の設定・実験(働きか
基に、初期微動と主要動の振動始めの時刻と震央か
け②<視点の転換>)、班単位の課題解決(働きか
33
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
け②<協働>)
を通して再構成された概念について、
リックと定義して、具体的に評価していった。
発表用パネルを班ごとに作成させてみとるものであ
る。
みとり4では、グラフ化、図式化(資料2~4の
5.みとりの結果
ワークシート5-①、②、③)によって概念の自己
化(働きかけ④)についてみとる。
今回構想した学習過程について、抽出した次の2
また、小単元末に「科学的な感性」「科学的なも
人の生徒の学びの姿で示す(表2)。
のの見方・考え方」のはぐくみのみとりの補完をね
抽出生Aさんについて
らったパフォーマンス評価を位置付け、実施する。
(分析的な思考力…地震のゆれの伝わり方の規則性を
このパフォーマンス評価は、技能面の習得を主なね
振動が徐々に伝わるととらえている生徒)
らいとする現在のパフォーマンステストとは異な
Aさんは、単元始めのみとり1から、「地震のゆ
り、思考力・判断力をみとるための評価として導入
れは、
ゆれの中心から円を描くように振動が伝わる」
したものである。まず、学習課題「地震の震央を求
ととらえている。課題設定後の実験計画立案の段階
めなさい」を提示し、図式化することによって震央
では、地震波モデルを傾けることによって震源から
を求めさせるものである(図4)。ここでは、震央
の伝わり方の違いを調べていこうとする「科学的な
を求めるための見通しを問う「科学的な感性」と図
感性」の働きを期待する。課題追究の場面では、ゆ
式化から震央の位置を見いだしていく「科学的なも
れの大きさやゆれが伝わるまでの時間の違いを比較
のの見方・考え方」をみとる評価を行った。パフォー
する「科学的なものの見方・考え方」を働かせて検証
マンス評価は、表1に示すように評価基準をルーブ
していく姿が期待される。
→パフォーマンス評価
「宮城県沖地震の伝わり方」
新たな概念の形成
地震の伝わり方についての知識・理解(みとり4)
→ワークシート⑤-1,2,3 作図
地震の伝わり方についての知識・理解(みとり3)
→ワークシート④ 他の班から学んだこと
技能・表現
→実験,発表の仕方,ワークシートのまとめ方
「科学的なものの見方・考え方」
→ワークシート④-2
検証実験からの考察
「科学的な感性」
→ワークシート③ 問題の共有
④-1 検証実験の構想
地震の伝わり方についての知識・理解
(みとり2)
→ワークシート② 問題の発見
地震の伝わり方についての知識・理解
(単元始めのみとり1)
→ワークシート①
図3 みとり構想図
34
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
1 課題提示
(1) 実験によって,課題が解決できる,または,解
決の方向へ導く内容である。
(2) 既有の概念を活用できる内容である。
2 生徒が構想した解決方法の立案
(1) 見通しをもった予想を立てる。
(2) 課題を解決する具体的な方法を明記する。
3 実験と考察
(1) 実験を行い,結果を導き出す。
(2)
結果から考えられることを図式化,モデル
化して説明する。
図4 パフォーマンス評価の基本的骨子と評価用紙
宮城県沖地震のデータを提示し,図式化することによって震央
を求めさせるものである。震央を求めるための見通しを問う「科
学的な感性」と図式化から震央の位置を見いだしていく「科学的な
ものの見方・考え方」をみとる評価である。
表1 「変動する大地」のルーブリック(高浦他, 2006)と評価基準
段 自然事象への関心・意欲
階
・態度
「科学的な感性」
「科学的なものの見方・
考え方」
大地の変動の仕組みやそ
の成因について
興味・関心をもち、
積極的に観察・実験に取
り組んで明らかにしよう
A とする。
大地の変動の仕組みやそ
の成因について、予想を
立てて十分な見通しをも
つ。
地層およびこれを構成す
る堆積岩の観察や火山と
火山の成因、構成物であ
る火成岩、地震とその成
因など、それらを大地の
大きな変動と関係付けて
考える。
パ震央は、ゆれ初めの時
刻を結んだ同心円の中心
であることを記述するこ
とができる。
パゆれ始めの時刻結んだ
作図ができており、震央
を表示することができる
。
大地の変動の仕組みやそ
の成因について、実験の
予想を立てられるが、見
通しは不十分である。
地層およびこれを構成す
る堆積岩の観察や火山と
火山の成因、構成物であ
る火成岩、地震とその成
因など、それらを大地の
大きな変動と自分なりに
関係付けて考える。
大地の変動の仕組みやそ
の成因について興味・関
心をもち、観察・実験に
取り組む。
B
観察・実験の
技能・表現
自然事象への
知識・理解
野外観察の基本的な仕方 大地の変動の仕組みやそ
を習得し、その結果や自 の成因について十分理解
分の考えを的確にまとめ している。
たり発表したりする。
野外観察の基本的な仕方 大地の変動の仕組みやそ
を習得し、その結果や自 の成因についてある程度
分の考えをまとめたり発 理解している。
表したりする。
パ震央は、円を描いた中 パゆれ始めの時刻を結ん
心であることを記述する だ作図に一部誤りがある
ことができる。
が、震央を表示すること
ができる。
C
大地の変動の仕組みやそ
の成因について興味・関
心をもたず、観察・実験
への取組も人任せである
。
大地の変動の仕組みやそ
の成因について、実験の
予想が思いつきであり、
見通しをもつためには援
助が必要である。
地層およびこれを構成す
る堆積岩の観察や火山と
火山の成因、構成物であ
る火成岩、地震とその成
因など、それらと大地の
大きな変動との関係付け
が不十分である。
パ震央の求め方について パ震央は表示することが
記述することができない できるが、作図が誤って
。
いる。
35
野外観察の基本的なの仕 大地の変動の仕組みやそ
方が不十分であり、その の成因についての理解が
結果や自分の考えをまと 不十分である。
められなかったり発表で
きなかったりする。
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
抽出生Bさんについて
(2) 「科学的なものの見方・考え方」について
(分析的な思考力…地震のゆれの伝わり方の規則性を
Aさんは、地震波モデルを水平にした時と斜めに
地震波の伝わり方ととらえている生徒)
Bさんは、単元始めのみとり1から、「地震のゆ
した時とでは違いがないことを計測し、モデルの距
れは震源から地震波によって伝わる」ととらえてい
離が変わらないことと結びつけて考えた。そして、
る。課題設定後の実験計画立案の段階では、地震波
地表では、震源から斜めにゆれが伝わる時には、直
モデルの震央からの距離を変えた時の初期微動継続
上(震央)に伝わる時と比較すると距離が変わるの
時間の違いを調べていこうとする「科学的な感性」
で、斜めにすると地震が伝わるまでの時間が長くな
の働きを期待する。課題追究の場面では、震央から
ることまで図示した。これらの活動から、「科学的
の距離と初期微動継続時間の関係を見いだしていく
なものの見方・考え方」が十分働いたと考えられる
「科学的なものの見方・考え方」を働かせて、検証し
(表3)。
ていく姿が期待される。
Bさんは、震央からの距離を半分に変えると、初
期微動継続時間も約4秒に対して約2秒と 1/2 倍に
(1) 「科学的な感性」について
なることを導きだした。さらに、震央からの距離を
生徒たちが経験したばかりの中越地震を教材とし
2倍にすると初期微動継続時間が約4秒の2倍の約
て提示したことにより、生徒たちは身近な問題とし
8秒になることを導きだした。そして、震央からの
て課題をとらえることができたようである。
Aさん、
距離と初期微動継続時間は比例関係であることを見
Bさんともに、
震央に近いほうがゆれは大きいこと、
いだした。これらの活動から、「科学的なものの見
震央に近いほうが早くゆれること、地震の波形には
方・考え方」が十分働いたと考えられる(表3)。
共通性があることに気づいている。Bさんは、さら
に「地震のゆれはだんだん大きくなってまた小さく
(3) <自己化>における概念の再構成について
なる」こと、「震央に近い方が初期微動継続時間は
中越地震の観測データを図式化、グラフ化させた
短い」ことに気づいている(表2)。
結果、A さん、B さんともにゆれが震源から遠くに
また、<視点の転換>のために「地震波モデルを
徐々に伝わっていく様子を正確に表現した(図 5)。
活用して、地震の伝わり方について実験して確かめ
また、初期微動、主要動それぞれの伝わる時刻と震
よう」という課題を提示し、予想と解決方法を考え
央からの距離は比例することに気づいており、B さ
させた結果、Aさんは、「⑤震源からの伝わり方の
んは。初期微動は主要動の 1/2 倍の速さで伝わるこ
違いがあるか」という学習課題を解決するために、
とを見いだしている(図 6)。
地震波モデルを水平にした時と、斜めにした時とい
このようなみとりの結果から、
地震には初期微動、
う条件を設定した。また、ゆれの大きさと速さの違
主要動の2種類のゆれがあり、2種類の波によって
いに着目して「伝わり方の違いを実証できる」と見
徐々に伝わるという新たな概念は再構成されたと評
通しをもって実験に取り組んだ。大きさと速さの測
価できよう。
定方法については記述がないが、検証実験の中で初
期微動、主要動がゆれ始める時間について比較して
(4) パフォーマンス評価の結果
おり、学習課題設定の時点から働いた「科学的な感
以上のような「地震の伝わり方」の学習過程で「科
性」は、検証実験の中でも継続して働いていた。
学的な感性」がはぐくまれたかどうかについては、
Bさんは、「②震央から遠いと初期微動継続時間
Aさんは、「同じ時刻でゆれた場所を曲線で結び」
が長くなるのはなぜか」という学習課題を解決する
「中心の位置」「そこが震央」という記述から、「科
ために、地震波モデルの端からゆらした時とおもり
学的な感性」がAの段階の位置にいると考える(表
11 個目(半分の距離)からゆらした時の初期微動継
4)。Bさんは、「ゆれ始めた時刻が同じ位置を線
続時間の違いに着目することによって、「時間の長
で円状に結び」「円の中心が震央」という記述から、
さの違いを実証できる」と見通しをもって実験に取
「科学的な感性」がAの段階の位置にいると考える
り組んだ(表2)。このような目的にあった実験操
(表4)。学級全体としては7割近くの生徒がAの
作は、「科学的な感性」を十分働かせている姿と考え
段階の位置に至った。
られよう。
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
表2 <焦点化>と<視点の転換>における抽出生の「科学的な感性」の働き
学習過程、教師の働きかけ
【焦点化】
・震央からの距離が異なる3地点に
おける地震計の記録の提示。
・発問「地震計の記録からどのよう
なことがわかるか」
Aさんの学び
Bさんの学び
・震源地に近い方が震度が大きい。 ・震央に近い方がゆれが大きい。
・近い方からゆれる。
・震央に近い方がゆれが早く来る。
・地震計の形が似ている。
・ゆれはだんだん大きくなり、一番
・その位置から円状に広がってゆれ 大きくなったら、だんだん小さくな
る。
る。
・震央に近い方が初期微動が短い。
【視点の転換】
<課題>
・学習課題Ⅱ「地震波モデルを活用 ⑤震源からの伝わり方の違い
して、地震の伝わり方について実験
をして確かめよう」の提示
<課題>
②震央から遠いと初期微動継続時
間が長い
「なぜそうなるか」予想を立てさせ <予想>
た上で、
「どのような方法で解決し ・震源からの伝わり方には違いがあ
ていくか」その方法を考えさせた。 り、縦にゆれたり、横にゆれたりす
ると思う。
<予想>
・大きなゆれが伝わるまでに時間が
かかる。
・震源からの距離を半分にする→初
期微動継続時間が半分になる。
<実験計画>
ゆれの伝わり方の大きさ速さの
どちらに注目するか助言をした。
<実験計画>
地震波モデルの角度を変えて、地 地震波モデルの端からゆらした
震のゆれの大きさと伝わる速さの 時と11個目(半分の距離)からゆら
どちらとも違いがあるか調べた。 した時の初期微動継続時間を5回
測定し、平均値を算出した。
距離を2倍にすると初期微動継
続時間はどうなるか。
どのような装
置にすればよいか。
初期微動継続時間は2倍になる
だろうと予想した。他の班のモデル
とつなげると距離が2倍の条件が
できると考えた。
37
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
また、「科学的なものの見方・考え方」については、
からと考えられる(表4)。B さんは、ゆれ始めた
Aさんは、初期微動の始まった時刻を結び、同心円
時刻を 10 秒ごとに結び、同心円の中心を×で記載
状に地震が伝わる様子を描いた。そして、同心円の
した。さらに、震央の場所、方角、距離についても
中心を×で記載した。さらに、震央の場所、方角、
特定し、正確である。「科学的なものの見方・考え方」
距離についても特定した。このことから「科学的な
は、かなり高い A の段階の位置にいると考える(表
ものの見方・考え方」は、Aの段階の位置にいると考
4)。学級全体としては、5割を超える生徒が A
える。なお、方角の南南東は誤りであるが、テスト
の位置に至った。
に方位が記されていなかったため、上を北と考えた
表3 <視点の転換>における抽出生の「科学的なものの見方・考え方」の働き
学習過程、教師の働きかけ
Aさんの学び
Bさんの学び
【視点の転換】
・学習課題を解決するために構想し
た検証実験を行わせ、実験結果から
の考察を導きださせた。
・各班の実験結果と考察をホワイト
ボード(発表用パネル)に書かせた
。
・地震波モデルを斜めにしても水平
にしても伝わる速さはほとんど同
じ。
・水平にした時と斜めにした時とで
↓
は、距離がどうなるか確かめるよう ・モデルでは距離が同じだからであ
に助言した。
る。
↓
・
「震央からの距離を2倍にした時、・実際には斜めにした方が、距離が
初期微動継続時間はどうなるか」問 長いので伝わるまでの時間が長く
うた。
なる。
38
・震央から遠いと初期微動継続時間
が長い。
↓
・震央からの距離と初期微動継続時
間は、比例関係。
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
図6 B さんのグラフ化の結果
図5 B さんの図式化の結果
表4 2人の抽出生のパフォーマンステストの結果
Aさんの学び
Bさんの学び
課題:下の図で表された地震の震央を求めなさい。
1 震央を求めるにはどうしたらよいか。説明しなさい。
(「科学的な感性」)
ゆれ始めた時刻が同じ位置を線で円状に結び、その
同じ時刻でゆれた場所を曲線で結び、それが円にな
円の中心が震央。
ったらその中心の位置を出す。そこが震央である。
2 震央を求めなさい。
(「科学的なものの見方・考え方」)
3 震央はどこですか。
石巻から南南東にあって、約90㎞離れている海の
上。
39
石巻から約100㎞東の地点。
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
6 成果と課題
る「科学的な感性」「科学的なものの見方・考え方」
を働かせ、新たな概念を形成することができると考
(1) 成果として
えている。
① 「ゆれ動く大地」の「学習過程」と働きかけの
本小単元では、地震波モデルという共通の実験器
有効性
具を用いて生徒の発想した条件設定による検証実験
本小単元では、「地震は、震源から遠くに徐々に
を構想させた。「科学的な感性」は、ワークシート
伝わる」という既有の概念から「地震は、初期微動、
や授業中における発言、行動より、条件設定をする
主要動の2種類のゆれがあり、2種類の波によって
中で最も大きく働くことがわかった。一方、「科学
徐々に伝わる」という新たな概念を形成していくこ
的なものの見方・考え方」は、生徒が構想する検証実
とがねらいである。今回の学習過程を通して、Aさ
験の結果から考察をすることよって十分働かせるこ
んの「地震のゆれは、ゆれの中心から円を描くよう
とができたと考えられる。このことは、生徒の自己
に振動が伝わる」という概念は、「地震が最初に発
評価(表5)の結果、「実験の方法を考えたり、考
生した所で同時にP波とS波が発生する」「P波の
えた計画にしたがって実験を進めたりすることがで
速さは、S波の2倍」という概念へ、Bさんの「地
きたか」という問いに「かなりできた」と「だいた
震のゆれは震源から地震波によって伝わる」という
いできた」と答えた生徒が 97%に達し、また「班の
概念は、「同時に波が立ち、P波(初期微動)が先
実験の結果より、学習課題は解決できたか」という
に伝わり、S波(主要動)が後から伝わる」という、
問いに対して「かなりできた」と答えた生徒が 69%
ねらいとする概念へ変化していった。
に達し、残りの全員が「だいたいできた」と答えて
今回計画した学習過程の中で、4 つの教師による
いることからも支持される。したがって、今回の検
働きかけを設定し、「科学的な感性」と「科学的な
証実験において生徒たちは「科学的な感性」「科学的
ものの見方・考え方」をはぐくむよう試みたが、こ
なものの見方・考え方」を働かせることが十分にで
れらは新たな概念を形成する上で有効であったとい
きたとみとることができる。
える。
また今回、一斉の発表という形態ではなく、各班
② 生徒が構想する検証実験の意義
が出店方式で検証実験の方法を実演する場を設けて
理科においては、生徒が構想する検証実験を単元
互いの考えを交わすことによって、協働の場が成立
内に設定することによって、科学的思考の要素であ
していた(写真 1、2)。
表5 検証実験における「科学的な感性」「科学的なものの見方・考え方」の生徒の自己評価
評 価 の 観 点
A
B
C
D
実験の方法を考えたり、考えた計画にしたがって(修正したり)実験を進めたりできたか。(「科学的な感性」)
33
64
3
0
班の実験の結果より、学習課題は解決できたか。(「科学的なものの見方・考え方」)
69
31
0
0
A…かなりできた、B…だいたいできた、C…あまりできなかった、D…できなかった(%)
写真1
写真2
Aさんの協働
40
Bさんの協働
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
③ 地域素材として中越地震を用いた授業内容に
ついて
今回、単元の導入として、生徒が体験をした中越
地震のデータを活用した。中越地震は、地域素材で
もあり、
即時性のある事象を活用したことによって、
導入時点より、生徒の学ぶ意欲の高揚が見られた。
地震波形の記録は、観測地点によってゆれ幅のス
ケールが異なる。そのため、上越市のゆれの大きさ
が相対的に小さく、埼玉県久喜市のものが相対的に
写真3
大きく表現されてしまうといった問題がある。しか
ゆれについて
し、初期微動および主要動の開始時刻、初期微動継
の実験結果の
続時間の長さの変化は、今回作成したワークシート
例
(資料 1)上に明瞭に示せた。それにより、生徒た
ちが初期微動と主要動の 2 つの存在を身近な素材で
ータであった。見通しをもつことは大切であると評
認識できたことは、みとり 2 の結果からも明らかで
価しながらも、実験結果を十分尊重できるように、
ある。そして、これが探求の動機づけとなり、また、
実験の精度を高める指導が必要である。
地震波を観察できる自作モデルや類型化された検証
② パフォーマンス評価の信頼性の向上
実験によって、全ての班が、地震の伝わり方の規則
単元始めに設定したルーブリックは、パフォーマ
性を見いだしていった。そして、最後に再び中越地
ンス評価を実施した生徒の実態と合わずに書き換え
震のデータを活用したワークシートで新たな概念の
ることになった。このようなルーブリックの見直し
自己化を働きかけたことで、
「導入」にたいする「帰
と複数の評価者による評価をしていき、パフォーマ
結」
という一連の流れを作ることができたと考える。
ンス評価の信頼性を高めていきたい。
地域素材として中越地震を用いた教材を作成し活
用したことは、生徒の学習意欲を高め、成功であっ
<注および引用・参考文献>
たといえよう。
1)
④ 複数の評価方法による妥当性の向上
法則性などの価値を感じとり、分析的な探究に必要な見通
「科学的な感性」…自然の事物・現象に対する規則性・
小単元末に「科学的な感性」「科学的なものの見
しをもつ力
方・考え方」をみとるパフォーマンス評価を実施し
2)
た。検証実験のワークシート、自己評価、パフォー
究して、自然の事物・現象の性質や規則性を見いだす力
「科学的なものの見方・考え方」… 実証的,論理的に探
マンス評価など、複数の方法によって評価すること
により、単元における「科学的な感性」「科学的な
堀 哲夫, 2004,学びの意味を育てる理科の教育評価,
ものの見方・考え方」の評価の妥当性を高めること
東洋館出版社,p156.
ができた。
気象庁, 2005, 平成 16 年(2004 年)新潟県中越地震調査
報告,気象庁技術報告, 第 127 号, 気象庁,p90-93,
(2) 課題として
p129-133.
① 精度の高い検証実験の実施
文部科学省, 2006, 小学校理科・中学校理科・高等学校
検証実験に見通しをもたせたために、数回の実
理科指導資料 PISA2003 (科学的リテラシー)及び
験結果の中から、予想とかけ離れた実験結果を使わ
TIMSS2003(理科)結果の分析と指導改善の方向,東洋館
ずに、予想に近い実験結果を採用している班があっ
出版社,p9,37-38.
た(写真3)。「①震央からはなれるとゆれが小さ
村山勉・渡辺国宏・栢森耕太郎・小川義実,1998,中学校
くなる」という課題に取り組んだ7班は、距離を変
第2分野ゆれ動く大地-地震-編,理科指導資料集,15
えていくと 0.2 ㎝ずつゆれが小さくなることを複数
~21 集,新潟県地区理科教育センター研究協議会,p192
回行った実験結果から採用した。しかし、1回目に
-203.
測定した実験結果の方が、距離とゆれの大きさが2
新潟大学教育人間科学部附属長岡中学校, 2005, 創造的
乗に反比例するという規則性があり、精度の高いデ
な知性を培う(第 3 年次研究会紀要),156p.
41
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
高浦勝義・松尾知明・山森光陽, 2006, ルーブリックを
活用した授業づくりと評価②中学校編, 教育開発研究
所,p219.
気象庁ホームページ 強震波形平成 16 年(2004)新潟県
中越地震
(http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/kyoshin/jish
豊島剛志・小林健太ほか, 2005, 新潟県中越地震における
in/041023_niigata/1756/nigata_main.htm)
地震断層と地表変状の構造地質学的調査, 新潟大学中
(平成 19 年 3 月 20 日受理)
越地震新潟大学調査団「新潟県連続災害の検証と復興へ
の視点」-2004.7.13 水害と中越地震の総合的検証-,
新潟大学, p21-31.
42
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
【資料1 地震計の記録】
ワークシート②
43
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
【資料2 各地の初期微動振動開始時刻と震度の大きさ】
44
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
【資料3 各地の初期微動・主要動振動開始時刻,震央からの距離,震度の大きさデータ】
ワークシート⑤-2(データ)
観測点名
初期微動の伝わった時刻
主要動の伝わった時刻
震央からの距離
震度
1 長岡
17"56'04
17"56'06
15.1
6弱
2 川西
17"56'05
17"56'08
17.2
6弱
3 六日町
17"56'06
17"56'11
28.9
5強
4 下田
17"56'07
17"56'12
35.8
5弱
5 牧
17"56'10
17"56'17
49.5
5弱
6 弥彦
17"56'09
17"56'17
49.7
5弱
7 湯沢
17"56'10
17"56'20
53.9
4
8 村松
17"56'10
17"56'19
54.1
4
9 伊南
17"56'11
17"56'20
59.4
4
10 笹神
17"56'12
70.7
4
11 能生
17"56'14
79.3
4
12 群馬六合
17"56'15
83.3
4
13 会津高田
17"56'15
85.6
4
14 足尾
17"56'15
90.2
4
15 栃木塩原
17"56'18
99.8
3
16 松代
17"56'17
101.8
4
17 熱塩加納
17"56'18
102.1
4
18 足利
17"56'19
109.1
4
19 珠洲
17"56'21
134.8
4
20 山形白鷹
17"56'24
147.6
3
21 山形温海
17"56'26
162.6
3
22 常陸太田
17"56'27
169
3
23 福島川内
24 宮城丸森
17"56'29
178.8
4
17"56'29
181.5
3
25 仙台大倉
17"56'31
198
3
26 山形金山
17"56'34
223
3
27 石巻大瓜
17"56'37
253.5
3
28 岐阜美山
17"56'39
261.4
2
29 秋田雄和
17"56'41
275.8
3
30 一関舞川
17"56'41
276.6
3
31 秋田六郷
17"56'42
280.1
2
32 大船渡猪川
17"56'46
315.6
2
33 岩手大迫
17"56'47
321.7
1
34 福井美浜
17"56'48
324.3
1
35 滋賀永源寺
17"56'49
326.8
1
36 秋田比内
17"56'51
356.6
1
37 岩手葛巻
17"56'53
367.9
1
38 岩手田野畑
17"56'57
393
1
39 青森市浦
17"57'01
439
1
17"56'31
17"56'51
45
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
【資料4 初期微動、主要動振動開始時刻のグラフ化】
ワークシート⑤-3
中越地震のゆれの伝わり方をグラフで表そう
1年
組
番 氏名(
)
<手順>
①長岡の初期微動,主要動が伝わった時刻を例に,各地の初期微動,主要動が伝わった時刻を記入しま
しょう。(初期微動を●,主要動を▲で表しましょう。)
②初期微動,主要動の伝わる時刻をそれぞれ線で結びましょう。
(初期微動は
,主要動は
で表しましょう。)
震央からの距離
300
(㎞)
200
100
50
↑
17’56”00
↑
10
↑
20
↑
30
↑
40
↑
50
時刻(秒)
○グラフからわかることを書きましょう。
○地震が発生した時刻は
時
分
○地震はどのようにして伝わるか説明しなさい。
46
秒
↑
57”00
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
小学校中学年におけるなわを使ったリズム体操の学習
~なわの特性にふれ,主体的に運動にかかわる子を目指して~
滝澤 かほる∗
鹿目 雅子∗∗
Teaching Rhythmical Gymnastics with Rope to the middle years of Primary School
Kaoru TAKIZAWA∗, Masako KANOME∗∗
Ⅰ 研究目的
なわを使った運動は,なわ跳び運動だけではなく,振る,回す,投げるなどの動き方を工夫したり,人数を変え
たりして楽しむことができる運動である。また,なわは,なわの動きに合わせて体を動かすためにタイミングや動
き方など自分の体を意識して運動することのできる手具である。しかし,児童は,低学年においてなわを使った多
様な運動の経験が少なく,前回し跳び,後ろ回し跳びなど主になわ跳び運動を行っている。その結果,上手く跳ぶ
ことができなかった児童は,なわを使った運動の楽しさを十分に味わうことができず消極的になりやすい。
リズム体操の学習は有機的な動きの学習として位置づけられ,いろいろな動きを経験するとともに,からだの正
しい使い方を学び,よい動きへと質的に高める練習の中で,心から動く喜びを知り,楽しみながら結果として総合
的に体力を高めていくことにねらいがある1)。よって,基本の運動においてリズム体操の学習を行うことで,児童
はなわの特性にふれ,なわを使った運動の楽しさを十分に味わうことができると考える。本研究では,なわを使っ
た運動の授業実践を行い,児童の実態と成果および課題を明らかにし,今後の学習指導の一助にすることを目的と
した。
表1 リズム体操の運動技能と学習の方法1)
運動技能の発展
流れ
リ
短 い
単独の運動
多
様
性
質
→
→
初めの段階
一連の運動
変化・組み合わせ
低 い
ム
学習の方法
操
連続した運動
複 雑
基本的な運動
おおざっぱな動き
進
→
簡 単
ズ
体
長 い
高 い
→
リズミカルなよい動き
進んだ段階
多様な動きの経験 →
動きの発展
→
発 表
め
↑ ↑
↑ 動きの質 ↓
↑
方
↑ ↑
↑
↓
↑
↑ ↑
↑
↓
↑
流れ
一連の運動(作品)
ね
ら
い
∗
∗∗
思いきり動く → 心をこめてよりよく動く
↑ ↑
↑ ↑
動くことを楽しむ
新潟大学教育人間科学部
長岡市立希望が丘小学校
47
よりよい動きを身につける
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
Ⅱ 単元構成
1 学習の方法1)(表1)
リズム体操の課題は,動きの基本学習,動きの発展,一連の運動の構成である。まとまりをもった一連の運動は
「ゲーム」にあたるもので,達成感を味わい,リズミカルで全身的な動きを身につけていくことができる。学習を
進めるにあたっては,
(1) 多様な動きを経験する。
(2) 個々の動きを高める練習を行う。
(3) 一連の運動の練習の中で動きの質を高めると同時に,姿勢やからだの形態,基礎体力(柔軟性・調整力・
筋力・持久力など)を高める。
2 授業実践の概要
(1)対象 小学校3年生30名 2006年12月~2007年1月
(2)単元の目標
○なわを使った運動を楽しんで行い,思いきり動いたり運動を工夫したりして意欲的に取り組むことができ
る。
【関心・意欲・態度】
○なわを使った運動を考えたり,上手くなわを操作するために自分の身体がどのようになっているのかを考
えたりすることができる。
【思考・判断】
○自分の考えた運動を行ったり,全身的な動き方でなわを操作して運動したりすることができる。
【技能】
○なわの特性やいろいろななわを使った運動を知ることができる。
【知識・理解】
(3)授業の構想
児童はリズム体操の学習を初めて経験する。
そこで,
第一次では,
初めの段階である多様な動きの経験を重視し,
思い切り動いたりなわを使って動くことや動きを工夫することを楽しんだりすることをねらいとする。
児童が多く
経験している「跳ぶ」以外の動きを教師が提示して児童に経験させ,その後,音楽に合わせて一連の運動を行う(表
2)
。この一連の運動は,準備運動として単元を通して行う。
第二次では,児童が動きを工夫したり新しく考えたりする。その後,よりよく動くことを意識させることをねら
いに加え,児童に「上手に動くこつ」を考えさせる。本単元では,
「上手に動く」ことを「大きく動く」
「スムーズ
に動く」と説明し,部位だけを動かすのではなく,はずみをつかいながら体全体で動くこと,またリズミカルに動
くことを重視する。そして,こつを見つけるために次の視点を児童に与える。
表2 なわを使った体操 使用曲「テトペッテンソン」
①
②
③
④
⑤
8×2
なわを二つ折りにし両手で持ち,上へあげる。左右へ側屈。
8×2
なわを上へあげたまま体を後ろへひねる(左右へ)
。なわをまたぎ越し,肩返し。
間 奏
(準備)
8×4
体回旋4回
間 奏
(準備)
8×4
なわを二つ折りにして両手に持ち前後回旋。右4回左4回,右 2 回左2回,右1回左 1 回×2
間 奏
(準備)
8×4
いろいろな跳び方で跳ぶ。
間奏
8×4
⑥
6
二人組みを作り,なわの両端を持つ。
左右振からかさまわりを4回。
二人でポーズ。
48
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1) 自分や友達の体の動き
2) なわの動き
3) 自分の体となわの動き(タイミング)
第三次では,第一次から行っている一連の運動をもとにグループで動きを工夫して行う。表2③~⑤の部分につ
いて3つの動きを考えさせる。
Ⅲ 研究方法
1 学び方と運動内容
授業記録,ビデオ映像,児童の観察により,児童が行ったなわを使った運動内容について調査する。
2 学習効果
学習カードによる形成的授業評価により,成果,意欲・関心,学び方について学習効果について調査する。
(図1)
3 児童の意識
学習カードの授業の感想,学んだことについての自由記述を分類することにより,授業における児童の意識を調
査する。
(図1)
1ない
2あまり
3まあまあ
4とても
学習をふりかえろう
1 めあてをたっせいできましたか。
2 体をたくさん動かしましたか。
3 楽しく運動できましたか。
4 友だちとなかよく運動できましたか。
5 新しいなわをつかった運動を考えたり
知ったりすることができましたか。
6 運動のコツがわかりましたか。
できた!わかった!きらり発見!<自由記述>
図1 学習カード
Ⅳ 結果と考察
1 授業の実際と児童の様子
(1) 第一次(1・2時間目)
【ねらい】なわに親しみ,楽しくなわを操作したり音楽に合わせて友達と楽しく運動したりするこ
とができる。
1 多様な動きの経験
以下の内容を提示し,全員で行った。
(1)なわを置いて
・なわを結んで置き,その上で足踏みをする。
・伸ばしたなわの上を落ちないように前,横,後ろに歩く。
・友達となわをつなげてその上を歩く。
・なわをいろいろな形に置いて前,横,後ろへ跳びこす。
49
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(2)回す
・なわを持って体回旋をする。
・頭の上で回す(水平回旋)
。体の前で回す(左右回旋)
。体の横で回す(前後回旋)
。
(3)なわを持って柔軟
・なわを両手に持って伸ばし,前後屈,側屈などの柔軟運動をする。
(4)投げる,受ける
・なわを結んで投げる(振りから)
。
・二人でなわを投げて交換する。
(5)跳ぶ
児童にいろいろな跳び方を考えさせ,自由に行わせた。
・一人で跳ぶ。
・一人がなわを回して,二人で一緒に跳ぶ。三人で一緒に跳ぶ。
・なわをつないで長なわにし,大勢で跳ぶ。
・なわの両端をそれぞれがもって一緒に跳ぶ。
2 一連の運動(使用曲「テトペッテンソン」
(表3)
)
一斉指導により一連の運動の行い方を学習した。
3 学習計画を立てる
今後どのように学習を進めていくのかを話し合い,学習計画を立てた。
(1)動きを考えたり友達の真似をしたりしてたくさん練習する。
(2)一人で,あるいは友達と上手に動くことができるようにする。
(3)自分たちの考えた動きをつなげて音楽に合わせて行う。
児童は,
初めて経験する動きに意欲的に取り組み,
なわの置き方を工夫したり友達と一緒に運動したりしていた。
次の運動を提示するまで運動し続ける姿が見られた。1(5)でいろいろな跳び方を児童に考えさせた。児童は,
人数,回し方,向き,なわの長さや持ち方など工夫をして跳んでいた。友達の跳び方を見て真似したり,他の人が
やっていない跳び方を考えようと話し合ったりする姿が見られた。
学習計画を立てる話し合いでは,
「もっといろいろな動きをやってみたい。
」
「自分で新しい動きを考えてみた
い。
」という願いが多かった。また,
「なわを使った運動を上手く行うためには何かこつがありそうだ。
」という気
づきも見られた。
児童の全員が音楽に合わせてなわの運動を行うことが初めてであった。初めは,動きの順番を覚えること,音
楽に合わせることにとまどっていた。しかし,繰り返し行うことで音楽に合わせて動く楽しさを感じることができ
た児童もおり,
「最後に自分たちで作品を作ってみたい。
」という願いも出た。
多様な動きに経験により,なわ跳び運動で苦手意識をもっていた児童も意欲的に取り組むことができた。
(2)第二次(3・4時間目)
【ねらい】動きを考えたり上手にできるコツを考えたりすることができる。
<3時間目>
1 動きの工夫の仕方
前時に児童が考えた動きをもとに動きの工夫の仕方を説明した。
(1)方向を変える (2)人数を変える (3)動きを組み合わせる (4)動きを連続する
2 動きを工夫して練習する
児童が行っていた動き
(1)跳ぶ
1)一人で跳ぶ・・・サイドクロス,走りながら跳ぶ,なわを踏んで跳ぶ
2)二人で跳ぶ・・・前後に並んで跳ぶ,左右に並んで跳ぶ
50
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3)三人で跳ぶ・・・左右に並んで跳ぶ
4)円回し(なわを持った人が回転して,そのなわを跳ぶ)
5)水平回旋したなわを跳ぶ。
6)二人がなわを持ち,いろいろな高さのなわを跳ぶ。
(2)引く
1)長座をしてなわを引き合う。
2)座って,なわを引きながらシーソーのように交互に体を倒す。
3)座ってなわをもった人を引いて移動する。
(3)回旋
1)回旋して足を抜く・・・立って行う,座って行う,二人で行う
(4)バランス
1)なわを足にかけ,バランスを行う。
2)二人でなわをもち,バランスをとる。
(5)投げる+とる
1)一人で結んだなわを高く投げ上げてとる。
2)二人でなわの交換をする。
(6)跳ぶ+投げる+とる(3人で)
1)一人が跳んでいるなわの間を通すようになわを交換する。
児童は,教師が提示した動きや前時に友達が行っていた動きを真似したり,友達から教えてもらって練習したり
していた。一つの動きに取り組み始めると,その動きが自分の考えたようにできるようになるまで繰り返し練習し
ていた。
ほとんどの児童が,友達と一緒に練習を行っていた。また,同じ動きをやっているグループが集まって練習し
ていた。グループ編成をせず自由に練習を行わせたが,自然と友達とのかかわりが生まれた。そして,ただ行う
だけでなく,考えた動きを上手に行うこと,なわ,自分の体,友達の動きに目を向けるようになっていった。こ
れは,自分が考えた運動像をイメージし,それに近づけようとしている姿である。このような姿から動きを工夫
することは,児童の意欲的な学習への取り組み,体への意識を高めるのに有効であった。
<4時間目>
1 前時の学習の振り返り
前時の学習カードの自由記述欄から児童が見つけた上手にできるためのこつを発表させた。
・なわの動き方をよく見て,それに合わせて動く。
・声をかけて友達と合わせる。
2 上手にできるこつを考える
前時までの自分が考えた動きや友達が考えた動きを練習しながらこつを考えた。
児童が考えた上手にできるこつ
・タイミングを合わせるために声をかけるとよい。
・二人でリズムをいっしょにとって合わせるとタイミングが合う。
・なわを交換する時は,ひざを曲げてタイミングを合わせるとよい。
・足抜きをする時は,手と足だけではなくて,体全体を動かすようにするとよい。
・引っ張り合いをする時は,体重を後ろにかけるとバランスがとれる。
複数で行う動きを練習していた児童は,声をかけることでタイミングを合わせている児童が多かった。一人で行
う動きを練習している児童は,なわの動きや自分の体の動きに意識を向け,こつを考えている児童が多かった。自
分の体に意識を向けさせて練習を行うためには,一人で行う動きを取り上げて行う方が効果的であると思われる。
51
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
初めは上手にできるためのこつを考えていたが,次第に友達が行っている動きを練習したり,新しい動きを工夫
したりする児童が増えてきた。これは,上手に動くことより「もっとやってみたい。
」という思いが強かったと思
われる。
(3)第三次(5時間目)
【ねらい】グループで動きを考え,音楽に合わせて一連の運動を行う。
今まで練習してきた動きをもとにしたり,グループで新しい動きを考えたりして表3③~⑤を考え
た。
A班の考えた動き
③8×2 長座をしたまま足先から腰まで脚の下を通してなわをぬき,肩をぬく。
8×2 繰り返し
④8×2 足になわをかけ,足をあげてバランスをする。
8×2 反対の足になわをかけ,足をあげてバランスをする。
⑤8×4 自分の好きな跳び方で跳ぶ。
B班の考えた動き
③8×4 一人がなわを持ち回転する。他の人は,その場で回旋するなわを跳ぶ。
④8×4 ③と同じように,なわの回転する方向と反対の方向へ移動しながら跳ぶ。
⑤8×4 二人がなわを伸ばして持ち,他の人は跳び越える。
3つの部分について動きを考え,音楽に合わせて一連の運動を行うことができたのは,5グループ中2グループ
であった。他のグループは,考えた動きをみんなで経験する時間が長くなり,動きを絞りこむ段階までいたらなか
った。また,
「自分の動きを取り入れたい」という思いが強く,動きを選べないグループもあった。
授業後,
「友達と考えたら自分では考えられない動きを考えることができてよかった。
」という感想があった。一
連の運動を作るというねらいは達成できなかったが,
グループで一連の運動を考えることが多様な動きの経験とな
った。
4時間目,5時間目の児童の実態から,児童は多様な動きの経験を求めており,リズム体操の学習段階における
初めの段階であると思われる。リズム体操の経験の少ない児童が学習する際は,多様な動きの経験をねらいとし,
手段として一連の運動を行うとよいと思われる。
2 学習カードによる形成的授業評価
図2は,学習カードによる4段階評価について学級全体の平均値を表したものである。
単元を通して評価が高く,児童が意欲的に学習に取り組んでいたことが分かる。特に,多様な運動を経験した2
時間目において評価が一番高かった。2時間目の授業後の感想から,経験したことのない新しい運動と出会ったり
自分で工夫したりする楽しさ,友達と運動する楽しさ,一連の運動を行うことの楽しさにふれることができたと思
われる。
グループで一連の運動を考える5時間目については,めあての達成,楽しさ,運動量,運動のこつについて評価
が低かったが,友達となかよく運動する,新しい動きを知ることについては最も高かった。これは,友達と一連の
運動を考えることで友達の考えた動きを経験することはできたものの,
まだ個々で運動することに意欲が向いてお
り,一連の運動を作ることより多様な運動を経験したい段階であったと思われる。
52
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
1時間目
めあて達成
楽しさ
運動量
友達となかよく
新しい動き
運動のこつ
2時間目
3.96
3.96
3.89
3.96
3.89
3.86
3.86
3.86
3.79
3.86
3.55
3時間目
3.69
3.92
3.92
3.88
3.81
3.77
4時間目
3.73
3.92
3.92
3.88
3.85
3.73
5時間目
3.34
3.79
3.79
3.97
3.97
3.69
※1時間目はオリエンテーションを行い,運動の経験をする内容であったため,めあてを立てずに学習を行った。
図2 学習カードによる形成的評価
3 学習カードの感想からみる児童の意識
5時間の学習カードの授業の感想,学んだことついての自由記述を表4のように分類した。児童は,なわを使っ
たリズム体操の学習を通して,運動する楽しさ,運動を工夫する楽しさ,友達と運動する楽しさ,音楽を使って運
動する楽しさを感じていた。また,なわを使って運動する時に自分の体に意識を向けたり,運動後の自分の体の変
化を感じたりしていた。
導入時に運動例を提示したのみでなわの使い方を指導することはなかったが,
児童に多様な動きを経験させたり
自分で動きを考えさせたりする学習を通して,なわの扱い方について考えることができた。
学習が進むにつれ,
「いろいろと自分で考えることができることが分かった。
」など自分の可能性への気づきが見
られるようになった。
本単元を通して,なわの扱い方や運動の仕方だけでなく,
「できる自分」と出会えたり,友達と運動する楽しさ
感じたりすることができたことが分かる。
表3 授業の感想,学んだこと
内
容
数
児童が書いた文の代表例
・いろいろな運動をすることは楽しい。
運動する楽しさ
18
・いろいろな動きを考えたり工夫したりすることは楽しい。
・息切れするまで運動するのは楽しかった。
友達と運動する楽しさ
8
音楽を使って運動する楽しさ
2
・友達といっしょに運動すると楽しい。
・友達と運動すると,もっとなかよくなれる。
・音楽に合わせてできると初めて知った。ダンスみたいで楽しい。
・体のバランスとなわのバランスがむずかしい。
自分の体の動かし方,体の変化
19
・体全体を使うと上手にできた。
・いろいろなところを動かすと,やればやるほど体が柔らかくなる。
・こんなにいろいろな動き方があるとは思わなかった。
なわをつかった体操や動き
29
・一人でだけでなく何人でもできるし,みんなですると楽しい。
・こんなに体をつかうと思わなかった。
なわを使った体操の行い方
30
・少し変えるだけで新しい動きができることが分かった。
・跳ぶ時は,なわの動きをよく見て跳ぶと上手く跳べる。
53
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
リズムやタイミング
5
・タイミングを合わせると上手くできる。
・声がけをするとリズムがかわる。
・体操は体のバランスをとらないといけないと思いました。
・いろいろなことを自分で考えることができる。
学習を通して分かったこと
18
・友達と協力すると,上手くできたりたくさんの動きを考えることができる
・みんなで心をあわせるとかんたんにできる。
・こつをつかむと上手くできるようになる。
未記入
3
Ⅴ 成果と課題
1 成果
多様な動きの経験,個々の動きを高める練習,一連の運動の練習の学習過程,また動きの発展や質の向上をね
らいとしたリズム体操の学習により以下の成果が得られた。
(1)教師が多様な動きを提示することで,児童は動きを工夫したり新しい動きを考えたりすることができた。ま
た,練習する過程でなわの動き,自分の動き,友達の動きに目を向けるようになった。
(2)多様な動きの経験は,学習意欲を高め,主体的に運動にかかわらせることができた。
(3)なわを使った運動の行い方だけでなく,自分の体の動かし方を意識することができた。また,学習を通して
運動する楽しさ,工夫する楽しさ,友達と運動する楽しさを味わうことができた。
2 課題
初めてリズム体操を学習する3年生の段階において,多様な動きの経験や動きの工夫への意欲が高かった。
よって,単元を構成する際には,多様な動きの経験を中心とし,動きや用具に十分浸らせることが必要であると考
える。動きの質の向上や一連の運動の構成については,低学年「基本の運動遊び」から高学年「体づくりの運動」
まで系統的に学習過程を考えていくことでリズム体操の学習課題を達成することができると思われる。今後,学年
の発達段階,運動経験を踏まえた単元構成を検討することが課題である。
<引用・参考文献>
1) 滝沢かほる 心と体の統合をめざした体育プログラムと実践的な評価方法の開発 2002 第 3 章第 1 節
「リズム体操の学習指導」
2) 滝沢かほる 編著「体操の学習指導」不昧堂出版 1997 年
3) 滝沢かほる 心と体の統合をめざした体育プログラムと実践的な評価方法の開発 2002 第2章第1節「自
然運動によるこころとからだの統合―人間性の回復を目指したリズム体操の確立」
54
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
民謡の教材性と授業プラン
〜長岡甚句を例に〜
伊野義博\
Value as Teaching Material of Japanese Folk Songs and a Teaching Plan of Nagaoka-Jinku
Yoshihiro INO
目
Ⅰ
はじめに
Ⅱ
長岡甚句とその周辺
Ⅲ
捉えようのない民謡の何を捕らえるか
1
次
捉えようのない民謡
1)
総称としての民謡
2)
時代と変容
3)
可変性・多様性・大衆性⇔正調・固定化・専門化
4)
くらし(信仰、労働、コミュニティなど)との密接な関係⇔乖離
5)
伝承・伝播の様相と方法の変化
6)
身体性・総合性⇔歌の独立傾向
7)
範囲(郷土〜日本)
2
何を捕らえるか
1)
民謡の定義に立ち返る
2)
民謡の現状から考える
3)
可変性・即興性を生かす
4)
身体性・総合性を生かす
5)
民族音楽の基本的性格を持つ「うた」として
Ⅳ
授業構成
1
題材名 「発見!
2
題材と教材
長岡甚句のおもしろさ」
3
題材のねらいと学習の方法
4
学習指導要領との関連
5
授業の構造
6
授業の計画と評価
7
展開
*学習プリント
Ⅴ
おわりに
\ 新潟大学教育人間科学部音楽科教育研究室
55
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
Ⅰ
はじめに
音楽科教育において,日本の伝統性をどのようにとらえ,授業を構成し,実践していくかと
いうことについて,研究実践を継続している。本稿は,この流れの中で,民謡,具体的には,
長岡甚句を教材にアプローチしたものである。新潟県は特に甚句の本場ともいわれ、名の知れ
た甚句がたくさん存在し、民謡(甚句)をキーワードに教材化を試みることは意義のあること
と考える。
後述するように,民謡は,その持つ性格故に考慮し整理しなければならない点がたくさんあ
る。まずこのことについて、長岡甚句を例に考察し、次に民謡の教材性を探りながら授業につ
なげていきたい。
なお,本稿は,公開を目的とした授業の構成案であり,平成 18 年 10 月 18 日に,新潟大学教
育人間科学部附属長岡小学校4年1組の児童を対象に実施したものである。参観者にわかりや
すい記述を目指したため,いわゆ「です,ます調」で書かれている。
また,研究は,平成 17 年度文部科学省科学研究費(萌芽研究)
「義務教育9年間にわたる日
本の子どものための日本伝統音楽学習カリキュラムの開発」
(課題番号 17653113
研究代表者:
伊野義博)の研究成果の一部である。
Ⅱ
長岡甚句とその周辺
長岡甚句は、長岡地域に伝承されてきた民謡です。全国的にも知られた人気のある名曲で、
毎年8月の長岡まつりでは、市民参加の盛大な民謡流しが行われ、多くの人に親しまれていま
す。歌詞は、長岡の歴史や風土そして人々の生活を感じさせるものがふんだんに盛り込まれて
おり、これに踊りがつきます。味わいのある笛や三味線、重厚な雰囲気を持つ太鼓が伴奏とな
っています。
・ハーアエーイヤー 長岡柏の御紋
(ハーヨシター
ヨシター ヨシター)
七万余石のアリャー城下町 イヤーサー余石のアリャー城下町
(ハーヨシター
ヨシター ヨシター)
司馬遼太郎の小説「峠」では、長岡藩家老河井継之助が長岡甚句を歌い踊るシーンが何度も
登場します。そこでは、妹の浴衣をつんつるてんに着て、頭をほうかむりしてこっそりと盆踊
りにでかけた甚句好きの継之助の様子をみることができます。
56
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
戦前までの長岡甚句は、長岡のいろいろな地区の盆踊り歌として歌われていました。時節に
なると毎日のようにあちこちの村で盆踊りが行われ、老若男女が集まり楽しんでいたわけです。
鳥羽省吾氏は、昭和初期の記憶として「日が暮れて盆太鼓の音が何處からか聞えて来ると若者
達は矢も楯もたまらず、夕飯もそこそこに盆踊りに行くと云って家を飛び出し、毎晩のように
夜明けまで甚句の唄や奇声を張り上げて踊りまくって居た」と記しています1。当時のことにつ
いては、
「となりの村で盆踊りがあると聞いて、浴衣を背中にくくりつけ、ランニングシャツ一
枚の姿で自転車に飛び乗ってかけつけた。」といった話も聞きました。特に若者にとっては、エ
ネルギー発散の場であり、相当な熱の入りようだったことがわかります。
こうした盆歌としての庶民の甚句の他に、長岡藩士によって歌われた節回し(御家中節)も
あったそうです。町方風の甚句とは違って、
「唄い方が、雄渾で踊りの形もきわめて壮快、しか
も飄逸洒落の趣」2があったそうです。
長岡甚句はまた、お座敷でも歌われていました。日本民謡大観3には、昭和 18 年収録の玉勇、
玉菜、小浪による演奏があります。当然のことながら、現在歌われている長岡甚句とは異なっ
た雰囲気や節回しを持っています。また、
「峰村利子の演唱による」とされた採譜(楽譜)を見
ても、異なった歌い方の部分を確認することができます。
歌詞もまた、地区によって人によっていろいろ歌われていました。以下はその一例です4。
・酒は室酒値段は二十四文 あまり高いよまけやれ番頭
・栖吉成願寺はおなごの出どこ 柿の沢から聟が出る
・高山の色どりもみじ わたしゃ日かげのうすもみじ
・山でネンネコせば木の根がまくら 落ちる木の葉が夜具ぶとん
歌い手がその時の気持ちや状況、土地の生活の様子を歌詞として自由に作り上げている様子
がうかがえます。民謡はもともとこうした自由性と即興性を持ち合わせているのです。
さて、長岡甚句の周辺は、戦後様変わりします。終戦後、長岡市と商工会は、
「長岡復興祭」
と銘うって戦後復興を祈念した全市の祭りを実施します。この「長岡復興祭」は、昭和 27 年「長
岡まつり」と改称され、こうした流れの中で長岡甚句流しを行うこととなり、そのための統一
甚句ができあがりました。これが、現在親しまれている長岡甚句に直結していきます。戦争の
1
2
3
4
鳥羽省吾「長岡甚句の由来と想い出」平成 17 年
奥倉幸作「長岡甚句の由来」昭和 57 年
『日本民謡大観』日本放送出版協会
前掲注2
57
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
後の復興に市民の心の支えとして長岡甚句があったのです。
長岡大空襲のあった8月1日、空襲で旧市街地は焼け野原となり、1470 余名の命が失われま
した。そして、鎮魂と復興の願いを込めて長岡甚句が歌い踊られてきました。盆踊りは、もと
もと盆に招かれた精霊を慰めるために、共に歌い共に踊り共に送るものですが、毎年8月1日
に甚句流しが行われることは、長岡の人々にとって単なる楽しみ以上の意味があるのです。こ
うした事実は、人間と歌との関係について私たちに多くのことを教えてくれます。平成 18 年度
の長岡市市制だよりの長岡まつり特集号では、次のような一文を見ることができます。
この祭によって長岡市民は心を慰められ、励まされ、固く手を取り合いながら、不撓不屈の精神でまち
の復興に臨んだのでした。今年も8月1日がやってきます。空襲で亡くなられた方々への慰霊の念や、長岡
再興に尽力した先人への感謝、また恒久平和への願いを、私たちはいつまでも、この長岡まつりで伝えて
まいります。
さて、この甚句統一の実際について、奥倉幸作氏は詳しく書き残しています。
今までの踊りは輪踊りで、流し甚句には向かないので、踊りも変えなくてはならなくなった。長岡甚句
の持つ素朴さと土の香を生かし、郷土芸術として恥ずかしくないものと、新しい感覚も織込んで、若い人
達にも受ける踊りにしようと、商工会議所の小林専務と話し、市内の踊りの師匠のお力添えを得て、現在
の踊りが出来た。踊りが統一されたから、甚句の句節も統一しようと思い立ち、長岡民謡囃子部員と話合
って、各地の笛の名士から集まって戴くことになり、宮内町、蔵王、大工町、神田囃子、四郎丸、川崎、
浦瀬地区、川西地区等から、笛の名人と称される方達十五、六名、集って戴き、囃子の一節ずつ吹いてい
ただいたが、同じ節は一つもなかった。その時、竹垣老人(七十才)が自分が子供の時から聞き覚えて居
た節はこれであると、四郎丸方面の節が取り上げられた。その節を基礎とし、各地の良いところ取入れ、
現在の笛の節が出来上がったのである。踊りの師匠方と話合いの上、長岡甚句の笛一節に甚句踊りが六回
入るように作ってある5。
たくさんあった歌詞もこの時に選定され、現在歌われているものに落ち着いています。
その後長岡市民謡連盟による「長岡甚句大会」が開催されるようになり、コンクール形式に
よる甚句の競演が毎年行われてきました。平成 18 年の第 15 回のプログラムによれば、コンク
ール高年の部 10 名、熟年の部 10 名、壮年・成年の部 10 名によって本選が競われています。こ
の大会での歴代チャンピオンの声は、長岡まつりにおいて聞くことができます。
5
奥倉幸作「長岡甚句の由来」昭和 57 年
58
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
長岡甚句はまた長岡の代表的民謡として、いわゆるプロの歌手によって歌われ全国に紹介さ
れています。例えば私の手元には、北島三郎の歌う長岡甚句があります。一人歌いを楽しむこ
とのできるカラオケつきのこの甚句は、長岡まつりの甚句とは、ひと味違った趣と形式になっ
ています。
終戦
現在
長岡大空襲→長岡復興祭→長岡まつり
(盆踊り)
(甚句流し)
長岡甚句大会
(優勝者)
統一甚句
↓
句節,笛,踊り…
(村々の甚句)
・プロ歌手の甚句(例:北島三郎)
(お座敷の甚句)
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
Ⅲ
1
捉えようのない民謡の何を捕らえるか
捉えようのない民謡
このようにして長岡甚句を見てきますと、そこには、時代や場所、歌い手などにより変容し
てきた様々な長岡甚句の姿を確認することができます。しかし、長岡甚句の持つこうしたいろ
いろな側面が、教材としてこれを用いる側を時として困惑させます。例えば、教材として提示
する時には、
「統一甚句」を扱うべきでしょうか、お座敷甚句も取り上げるとよいのでしょうか、
それとも村々・個々で歌われていたという甚句を考えた方がよいのでしょうか?
笛の節回し一つとっても、
「宮内町、蔵王、大工町、神田囃子、四郎丸、川崎、浦瀬地区、川
西地区等から、笛の名人と称される方達十五、六名、集って戴き、囃子の一節ずつ吹いていた
だいたが、同じ節は一つもなかった」わけです。一つの「曲」というものに対して、固定化さ
れた旋律を対応させて考えるのが一般的な現代人の発想ですから、そこからすると「長岡甚句
の正体がわからない!」と思うのは当然でしょう。
民謡の持つ性格故に生ずるこのような「捉えようのなさ」は授業構成に大きな影響を与えま
す。それ故に、まずこの「捉えようのなさ」を整理しようと思います。
1)総称としての民謡
「民謡」とは、民衆が生活の中で歌ってきた歌の総称です。ですから、現在の一般的な歌の
ように誰が作ったかというのは、問題にされません。誰かが歌い出して、それが「良し」と認
められてだんだんと形になってきたのです。
もともとが、歌の総称ですから、そこには、多くの種類の歌が混在しています。ちなみに、
柳田国男は、①田歌、②庭歌、③山歌、④海歌、⑤業(わざ)歌、⑥道歌、⑦祝歌、⑧祭歌、
⑨遊び歌、⑩わらべ歌といった 10 の分類をしています。また、文化庁による民謡緊急調査報告
書においては、A 労作歌 B 祭り歌・祝い歌 C 座興歌 D 語り物・祝福芸の歌 E 子守
歌 F わらべ歌 といった分類がなされています。仕事の歌からわらべ歌までスタイルは多様
ですし、用いられる場所や目的も様々な歌を一括りにして「民謡」と言っているわけです。従
って、民謡の取り上げるといっても、それが、わらべ歌なのか祝歌なのかで授業内容はかなり
異なったものとなることでしょう。
2)時代と変容
民謡は時代によって変わります。これは、長岡甚句の変遷でも確認した通りです。また、歌
と人との関係性が変化することに伴って、歌そのものも変容していきます。例えば、もともと
は大木を曳く時の歌であった木遣り唄は、ある所では、祭りの山車を曳く歌になったり、また
60
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
ある所では、漁撈の歌になったりしていますが、そうした関係性によって節回しや声の合わせ
方も自由に形を変えています。
3)可変性・多様性・大衆性⇔正調・固定化・専門化
民謡はもともと可変的であり多様性を持ち民衆の中で育まれてきました。つまり、わが村の
唄い方と隣の村の唄い方は違っていてあたりまえなのです。現に新潟市内野の盆踊り歌は、す
ぐとなりの五十嵐2の町とは節回しが一緒ではありません。笛の節もいわゆる陽音階に対する
陰音階で、誰が聞いても分かるくらい相違があります。十日町及びその周辺にまたがる妻有地
方で歌われる名曲「天神囃子」は、その名前がついたお酒があるほどに有名ですが、地区によ
って唄い方や合わせ方がそれぞれで、これがまた素晴らしい特徴になっています。
しかし、このような形で残っている歌ばかりではありません。明治・大正の頃からのラジオ・
レコード等メディアの普及は、多くの民謡の性格を一変させてきました。そこでは、
「これが正
しい節である」といった考えが生まれ、旋律が固定化され、また歌い手も専業の歌手によって
担われることがあたりまえになってきました。歌によっては、時として小節の数やブレスの場
所まで限定されることも当然のように行われています。
こうした民謡の姿を考える時、民謡そのものの持つ性格をどのように捉えるか、ということ
が必然的に問われてきます。
「民謡」を教える際、歌に対してどのような考え方を持っておくべ
きなのでしょうか。ともすれば「それでは民謡を教えたことにはならない」といったことにな
りかねません。このような批判に教師はきちんと応えなければなりません。
4)くらし(信仰,労働,コミュニティなど)との密接な関係⇔乖離
確かに、民謡は人々の生活と密接な関わりを持って成立してきました。しかしながら、現代
の民謡が必ずしもそうしたつながりを持っているとはいえないでしょう。例えば、貝殻節や大
漁節が歌われてきた生活を現代では見ることはできません。酒造り歌は、酒造の過程において
はなくてはならないものでしたが、機械化によって歌を歌う必要性はなくなってしまいました。
今歌い継がれている民謡は生活とのつながりではなく、むしろ乖離の上で、歌そのものの独立
性を重視してきたことにより存在しているものが多いといってよいでしょう。長岡甚句には、
「お前だか左近の土手で
背中ぼんこにして豆の草取りゃる」の名句がありますが、この歌詞
が現実の生活と結びついて子供に届いていくでしょうか。実際、豆の草取りをしたことのある
児童はどれだけいるでしょう。こうした時に、
「民謡は生活と結びついているんだよ」と教師が
いくら叫んでも、その言葉は教室にむなしくこだまするだけでしょう。
5)伝承・伝播の様相と方法の変化
61
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
伝承・伝播の様相も大きく変化しています。元来が口伝え、聞き伝えによって人から人へ、
土地から土地へと広がってきたのが民謡です。従って、土地によって個人によって自在に変容
するのが本来の姿であったわけです。そうした民謡のあり方を人々はまた認めていました。と
ころが、現代における歌の伝承は、書かれたものが重視され(時には五線譜となって)
、録音・
録画によって寸分違わぬ歌の姿を伝えるようになっています。そのままの形をコピーし、そこ
からの逸脱が敬遠されるとしたら、民謡が本来持っている本質的な動的エネルギーが枯渇して
しまう危険性があります。
6)身体性・総合性⇔歌の独立傾向
民謡は、元来たくさんの「もの」や「こと」とむすびついて総体として存在してきました。
動くこと、踊ること、遊ぶこと、働くこと、あるいは、信仰や交通、時にコミュニケーション
ツールとして一連の文脈の中で生きてきたわけです。しかるに現代の民謡の楽しみ方は、そう
した文脈から切り離されたところで成立することが可能であり、また、それが一般的な傾向で
もあります。例えば、テレビの民謡番組などを思い出してください。舞台歌謡や芸術歌謡など、
歌曲としての自立性を主張する民謡の姿がそこにあります。授業では、このような民謡の有り
様をどのように捉え教えていくべきでしょうか。
7)範囲(郷土〜日本)
民謡はどれも郷土の音楽として、人々がくらす土地や地域に根ざした歌といった顔を持ちま
す。一つの民謡の出現の必然性は、その土地や風土、人々生き方や考え方に内包されているの
です。一方で、それぞれの民謡は、日本の民族を代表する歌にもなることができます。例えば、
富山県の「こきりこ節」は五箇山地方の民謡ではありますが、視点を変えれば、日本を代表す
る「民族音楽」でもあるわけです。
そうした場合、同じ民謡を教えるのでも、土地の民謡を扱うのと他地域のものを取り上げる
のとでは、意味が異なってくるのは当然でしょう。ちなみに、長岡の学校では、
「長岡甚句」を
教えたらいいのでしょうか、
「こきりこ節」を教えたらいいのでしょうか、あるいは、両方を扱
うべきなのでしょうか。それぞれのねらいは、どのように異なるのでしょう。
2
何を捕らえるか
以上、捉えようのない民謡の様相を取り上げてみました。つかみ所のないように見える民謡
です。しかし、こうした性格であるからこそ、そこに民謡のきわめて重要な教材としての価値
が潜んでいると思います。「捉えようのない民謡の何を捕らえるか」、以下に私の考えを整理し
62
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
ます。
1)民謡の定義に立ち返る(民衆,作者不問,くらし,歌い継がれる)
①民衆がくらしの中でうたってきたということ
民謡の定義に立ち返って考えます。民謡は、ごく普通の人々のくらしの中で生まれ歌い継が
れてきた歌です。誰が作ったのかということも関係ありません。
であるが故に重要なのは、歌に生活の「思い」を込めた人がいて、その歌を受けとめる自分
や仲間がいるという事実でしょう。特にその民謡を育んできた土地の人々の思いは、大切にし
たいものです。歌に対するこうした姿勢や意識を改めて認識することは意味があります。
②くらしとのつながり感覚(過去〜現在)
長岡甚句では、豆の草を取ったり、盆なのに茄子の皮の雑炊を食べなくっちゃいけないこと
を嘆いたりする歌詞が盛り込まれています。また、
「踊り子がそろた、稲の出穂のようによくそ
ろた」といった歌詞もあります。
(
「茄子」
「稲の出穂」の歌詞は、長岡甚句だけではなく、いろ
いろな地域で節を変えて歌われています。)これらは、過去の事象とも言えますが、こうした歌
詞を生み出した自然や風土、生活の基盤は、今でも共通したものがあり、また現に存在してい
ます。何よりもそこの土地そのものは動きません。長岡の広大や田園風景や主食としての米は
市民の生活を支えており、この意味においては、過去から現在につながるくらしに対する直結
した感覚を共有することができるはずです。長岡甚句の「左近の土手」は現在も長岡にとって
はなくてはならないものです。長岡まつりにおける甚句流しが鎮魂の意味をもつことも同様で
す。時代を経ても、他人の歌ではない、自分や自分たちにつながる歌としてあるのが民謡です。
附属長岡小学校の児童にとっても、長岡甚句は身近な存在です。長岡甚句は、長岡まつりの
民謡流しにおいて歌い踊られますが、間近に見聞きしたことのある児童も多いことでしょう。
加えて、毎年小学校の運動会では、全校生徒が一緒になって踊ってきました。今回授業を行う
4年生の児童も1年生の時から甚句を踊っています。まさに今に生きている親しみのある歌と
踊りということができるでしょう。
③そこに歌っている人・歌い継いでいる人がいる
特に郷土の民謡の場合、重要なのは、そこに歌っている人・歌い継いでいる人がいるという
事実でしょう。歌に魅力を感じ、歌うことを生き甲斐に生きている伝承者の歌やお話はそのま
ま生きた教材になっていきます。歌っている「人」への魅力、その「人」と自分とのつながり
感覚の中で学んだとき、民謡は一層輝いてきます。
2)民謡の現状から考える
現在の民謡は、ステージ化されたり、舞台上で歌われたりすることが多くなってきました。
63
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
生活のにおいが薄くなってきているわけですが、それ故に歌として芸術性を高めてきたものも
多くあります。
①舞台民謡、芸術民謡
民謡が舞台化され、プロの歌い手や地域の専門の担い手によって洗練されてくると、そこで
は、それまで歌が併せ持っていた種々の要素は捨象されますが、音楽や歌そのものの持つ魅力
は極められていきます。こうした場合、歌の持つ芸術性、音楽性を生かし、歌そのものの素晴
らしさを学習することができます。
②地域(あるいは方言)民謡⇔共通民謡6
梁島章子氏は、民謡について「同じ歌でも,郷土色がわずかでも認められる地元のものを<
地域(あるいは方言)民謡>,地元以外の歌手による,郷土色のないステージあるいはレコー
ドのものを<共通民謡>と区別するのも一考であろう。」として、地域民謡と共通民謡といった
概念を示しています。この場合、地域民謡においては、地域の人々とのつながりのうえで(い
わゆる郷土の民謡)
、舞台民謡としては、歌そのもののおもしろさや日本人の歌としての教材性
が見えてきます。
3)可変性、即興性を生かす
可変性や即興性は、民謡を歌い楽しむ時の醍醐味です。新潟県は甚句の本場と言われていま
す。例えば、長岡甚句と新潟甚句を比較した際、その共通性と違いがおもしろいところですが、
もともとは同じルーツであろうこうした唄の変容は、その変容の姿そのものが教材として注目
されます。
また、先に述べたように、民謡は、その時の歌い手の気分やその場の雰囲気や条件によって、
即興的に歌詞を作ったり、時に旋律を変化させたりして歌われてきました。例えば、酒造りの
過程では、桶を洗う時の歌があります。ここでは、それぞれの蔵人が「ささら」という道具を
使って桶を洗いながら自由リズムの歌を歌います。その歌は、節の流れの大枠は一緒でも、細
かな節回しは、個人によって異なります。また、その個人もその時の体調や息づかい、あるい
は歌詞によって節回しが異なったりするのです。あるいは、歌を自分で作ることもしばしば行
われてきました。小さい頃、
「どれにしようかな 神様のいうとおり〜」の後にいろいろなこと
ばをつけて歌った記憶のある人は多いと思います。こうした「歌を作る」ことは、民謡の世界
では、ごく自然な行為です。この8月、新潟市内野の盆踊りについて、講演と実演をする機会
がありましたが、その際、歌い手の一人が、見事な即興を披露してくださいました。長年盆踊
6
梁島章子による次のような区別:「同じ歌でも,郷土色がわずかでも認められる地元のものを<地域(あ
るいは方言)民謡>,地元以外の歌手による,郷土色のないステージあるいはレコードのものを<共通民
謡>と区別するのも一考であろう。
(『邦楽百科事典』吉川英史監修,音楽之友社,昭和 60 年第3刷,p.965)
64
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
り歌を歌ってきたことにより、自然に歌を作る力を身につけていらしたのです。
ことばをつくる、歌を作り替える、思いを歌いあげる、人に伝える…。私たちの中にはこう
した「歌を作る」文化が脈々と生きています。
「民謡は(わらべうたも含みます)子どもに教えるには適当ではない。何故なら歌詞が良く
ないから。」といった声を時々聞きますが、これは歌の本質をとらえていない意見です。即興性、
自由性を持ち、その時の状況によって、常に再創造されるのが歌の姿ですから、このことに目
を向けた時に民謡の教材性はぐんと拡がり、歌詞への教育的な心配もなくなります。
ちなみに、今年の運動会では、私が学生とともに甚句を生演奏しました。その時の歌詞には、
即興的に次のような歌を入れ込みました。
ハーアエーイヤー
(ハーヨシター
長岡附属の運動会
ヨシター ヨシター)
晴れたお空にみなぎる力 イヤーサーお空にみなぎる力
(ハーヨシター ヨシター ヨシター)
4)身体性・総合性を生かす
民謡の持つ身体性・総合性はまた歌自体をも生き生きとさせます。例えば、仕事の歌は、力
を合わせて網をあげる、綱を引っ張る、櫂を突くなどの作業の動きを伴った時に、歌の持つ決
定的な性格が現れてきます。踊りが伴うものは、踊りの動きと歌とが影響しあい、歌い手は時
に歌を微妙に変化させます。こうしたことだけではなく、手を打つ、ひざを叩くといった単純
な動作を付け加えるだけでも歌の表現は生きたものになってきます。例えば、こきりこ節を歌
う際に、こきりこを打つという所作を加えることにより、歌のもつ拍感はきわめてよく理解で
きるのです。
5)民族音楽の基本的性格を持つ「うた」として
当然のことですが、民謡は、民族音楽(民俗音楽ではなく)の基本的性格を持つ歌として教
材としての価値を持ちます。しかも、いわゆる芸術音楽とは違い、プロではない一般の人々が
くらしの中で歌ってきた、だれでもが歌える歌として、また、それゆえに、日本人の基層とな
る声の表現法や創作法を学ぶことができます。声の出し方や声の音色、節回しや小節の表現、
音のめぐり、ことばと節の関係、リズム感、間、息遣い、合わせ方、そして歌の作り方等々、
日本人の声の表現の基本がすべてここに内包されています。
以上、民謡の教材性について整理してきました。民謡は、生きた教材として現代の子どもに
65
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
伝えるのに十分な価値をもっています。なお、実際の授業は、こうしたことを考えながら、扱
う民謡の種類や授業のねらいなどによって、ねらいを精査していくことにより進められること
となります。
66
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
Ⅳ
1
題材名「発見!
授業構成
長岡甚句のおもしろさ」
長岡甚句を聴いたり、歌ったりすることによって、児童とともにその魅力を発見していきま
す。教師側の師範やレコードによる師匠の規範を何度も繰り返し聴き、それに近づくためにど
のようにしたらいいのか、といった模倣と思考の繰り返しの中から、長岡甚句の歌や歌い方の
特徴を仲間とともに見つけ出し、自分(たち)の長岡甚句を表現していく活動です。
2
題材と教材
今回は、附属長岡小学校の運動会での経験を突破口としながら、長岡甚句の歌としてのおも
しろさに焦点を当てます。甚句の歴史的背景や人々の生活とのかかわり、伝播・変容などは付
随する事項として重視しますが、基本は、歌詞や節といった歌そのものの魅力、そしてその歌
を歌うこと、作ることの楽しさにおきます。基本的に現在歌われている長岡甚句を対象としま
す。
長岡甚句は三味線や太鼓のリズム、篠笛の節と歌との合わせ方など魅力は様々にありますが、
歌としてのおもしろさについて、およそ授業の流れにそって整理しておきます。
○ことば
授業はまず甚句ではどんなことば(歌詞)が歌われているか、児童に聞き取りをさせるとこ
ろから始めたいと考えます。現在歌われている主な歌詞を以下に書き出します。便宜上番号を
付します。なお、授業では、このうち①と③に焦点を取り上げます。また、数頁後に楽譜があ
るので、ご参照下さい。
①ハーアエーイヤー 長岡柏の御紋
(ハーヨシター ヨシター ヨシター)
七万余石のアリャー城下町 イヤーサー余石のアリャー城下町
(ハーヨシター ヨシター ヨシター)
②ハーアエーイヤー お山の千本桜 (以下
囃子略)
花は千咲く 成る実は一つ イヤーサー千咲く 成る実は一つ
③ハーアエーイヤー お前だか左近の土手で
背中ぼんこにして豆の草取りゃる イヤーサーぼんこにして豆の草取りゃる
④お前イヤー川西 わしゃ川東
中を取り持つ アノ長生橋 イヤーサー取り持つ アノ長生橋
⑤ハーアエーイヤー揃たよ 踊り子が揃た
稲の出穂より アリャ良く揃た イヤーサー出穂より
⑥ハーアエーイヤー流れます 細谷川よ
重ね箪笥が 七棹八棹 イヤーサー箪笥が
67
七棹八棹
アリャ良く揃た
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⑦ハーアエーイヤー お前さんの声だと聞けば
眠い目も醒め その気も勇む イヤーサー目も醒め その気も勇む
⑧ハーアエーイヤー 踊りの 太鼓打つ人は
昔ならした アノ腕の冴え イヤーサーならした アノ腕の冴え
⑨ハーアエーイヤー
さんやの三日月様は
宵にちらりとアリャ出たばかり イヤーサーちらりとアリャ出たばかり
⑩ハーアエーイヤー 夜は良し 忍びに出たが
夕立村雨 片袖絞る イヤーサー村雨 片袖絞る
⑪お前イヤー百まで わしゃ九十九まで
共に白髪の アリャ生えるまで イヤーサー白髪の アリャ生えるまで
⑫ハーアエーイヤー 盆だてがんね茄子の皮の雑炊だ
余りてっこ盛で 鼻のてっぺん焼いた
⑬ハーアエーイヤー デンデラデンとでっこいかか持てば
二百十日のアリャ風邪よけに イヤーサー十日のアリャ風邪よけに
⑭あまり長いは踊り子(唄い手)が大儀
まずはここいらでちょいと一休み
全国の甚句の詩型には、いわゆる近世小唄調短詩型といわれる7,7,7,5調 26 文字が共
通してみられます。⑪番の「お前百まで(7)
」「わしゃ九十九まで(7)
」「共に白髪の(7)
」
「はえるまで」
(5)などがその良い例です。もっとも、字余りや字足らずもたくさんあります
ので、この 26 文字はあくまでも基本の型であり、むしろこれを基に自由に歌詞を入れ込むとい
った意識の方がいいでしょう。
長岡甚句の場合、特筆すべきは、最初の7文字を数文字欠落させ「①ながおか」
「②おやまの」
「③おまえだか」のように4〜5文字の短いことばとしていることです。最初に「ハーアエー
イヤー」と歌い出してこの数文字を続ける節回しが特徴的です。なお、最初が7文字になった
時は、この歌い出しではなく⑪番や⑭番のようになっていきます。
こうした詩型は、節のまとまりと直接関係し、単位化されていきます。すなわち、「(ハーア
エーイヤー)ながおか」
「かしわのごもん」
「ななまんよこくの」
「じょうかまち」という歌詞の
単位が節のまとまりとなっているのです。ことばの区切りが歌い手の息と連動しながら節とな
っているわけです。
このことばをもう少し詳しく見ていきましょう。「ながおか」「かしわ」といった歌詞のシラ
ブルはそれぞれ「な」
「が」
「お」
「か」といったように、日本語の音韻としての特有な響きを持
っています。これらは、実際発音される際、nna(な)、ka(か)、go(ご)、nmo(も)といった
68
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
ように子音が強調される傾向にあります。また、
「じょーオーかーアまーちー」
「よこくのーオ」
といったように、うまれた子音(産み字と言います)を改めて発声して歌うこともあります。
これが、日本語の歌らしさを感じさせる要因にもなっています。
○声
声は、児童一人一人が持っている自分の声が基本となります。それぞれの持っている声の音
色や響きを一番大切にします。これに、歌詞(ことば)のせていきます。授業のはじめに発声
練習をして一定の響きを作り出していくという方法はとりません。日本語の言葉をふしにのせ
て、自分の持っている自然な声の出し方をしながら、師匠の歌い方、すなわち発音の仕方や節
回しやこぶしの付け方、あるいは、あごの位置や口の開け方などを学習者自身が真似ていくこ
とにより、次第に、民謡風な声の出し方をつかんでいきます。「たかしさんの声」「かおりさん
の声」といった世界に一つしかない「自分の声」を互いに大切にしながら歌を覚えてきます。
民謡の場合、日本の歌の多くがそうであるように、歌い出しの音高は、個人に合わせるのが
普通です。西洋的に例えば、ト長調の曲はト長調で歌う、ということにはこだわりません。そ
の人の歌いやすい高さで練習して結構です。三味線や笛の伴奏もそこに付けて行くわけです。
ただ、長岡甚句の張りのある歌声を出すには、児童が節を覚えた時点で次第に音高をあげてい
くことも民謡らしさを出すという点においては、効果があるでしょう。授業でも無理のない程
度に声の張りを目指していきます。
○息
息遣いと節のまとまりは密接な関係があります。先ほどもふれましたが「
(ハーアエーイヤー)
ながおか」
「かしわのごもん」
「ななまんよこくの」
「じょうかまち」といったことばのまとまり
が呼気の状態と不可分にあります。基本的には、息を吸って吐く時の呼気の流れが、節の上下
の動きに対応します。このことは、
「(ハーアエーイヤー)ながおか」
「かしわのごもん」〜とい
ったひとまとまりが、それぞれ自然に上方〜下方となめらかに推移していることで理解してい
ただけると思います。人間の自然な呼吸運動に対応した歌いやすい旋律となっています。
ハ
か
な
ア
ー
ア
し
な
リャ
エー イ
わ
の
ま
ん
ー じ
ヤー
ご
よ
ょ
な
が
お
ん
く
も
こ
う
か
か
の
ま
ち
こうした息の使い方は、歌う際に重要になってきます。
○リズム、拍子:表間・裏間
基本となるリズムに目を向けてみましょう。試しに手拍子をつけて打つとよく分かりますが、
69
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
この歌は、二つの拍のまとまりが基本となっています。
|なーがー|おーかー|ア かしー|わーのー|ごーもー|ん ー|
|○ ○
|○ ○ |○ ○
|○
○ |○
○ |○
○|
1 2
1 2
1 2
1
2
1
2
1
2
表 裏
表 裏
表 裏
表
裏
表
裏
表
裏
ただ、これはいわゆる西洋風の2拍子とは性格がまったく異なります。
日本人が手拍子を打つとき、しばしば「いちトーにぃトー」と口で言って刻むことがよくあ
りますが、この時のリズム感です。この場合、「いち」「にぃ」を表間(おもてま)、「トー」を
裏間(うらま)と言って区別をします。この表間と裏間の関係は、1拍めの表間が強く下方に
重心を感じ、2拍めの裏間では、「トーにぃ」といった形で、「トー」が伸び気味になるのが特
徴です。従って、歌もこうした拍の性格を反映して歌われます。日本の歌のリズムの基本がこ
こにあります。ちなみに、呼吸を合わせて何かをする時に「イッセーノーデー」といいますが、
このリズム感です。日本語を話す日本人の中には、こうした感覚がいつのまにか染みこんでい
るのです。
○ふし
ふしの大きな動きは、先ほどのことばのまとまりの息の流れに対応してきます。次の楽譜で
は、スラーで示しておきました。このふしは、
「かしわのごもん」までは、下から構成音を並べ
るとミソラドレミの音でできています。最初「ソラレ」と一気に高音に上がって音を保ち「な
がおか」の「かーア」で一旦「ミ」の音まで次第に下降し、
「ごもん」の「んー」のラで落ち着
きます。「ミ」
「ラ」
「レ」が核音となります。
「ヨシタヨシタ」の囃子言葉のあとは、
「ドレミソラド」の構成音で、この歌では最も低い「ド」
から「ななまんよこくの(ドレミソラドラソミ)」と進み、「じょうかまち」の「ち」で一旦落
ち着くと、「ヤーサー」と裏間から「ドードラソミ」と下降し、再び「じょうかまち」の「ち」
で「ラ」に終止します。「ミ」「ラ」が核音となります。
全体的にみるならば、「ドレミソラドレミ」の音階で、特に「ミソラ」「ラドレ」といった4
度の枠組みが核となってできていることがわかります。
なお、今回の授業では触れませんが、笛の音階は、別な音組織でできており、この両者の組
み合わせがまた長岡甚句の魅力の一つともなっています。
70
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
(唄:長岡市観光協会民謡部,採譜:伊野義博)
次に音を多彩にしている歌い方についても触れておきましょう。
個々の音の移行は基本的に曲線的なラインを描きます。例えば、冒頭「ハーア」や「よこく
の」の「くー」の場合、ピアノの鍵盤のような階段状の移行の仕方をしません。
ア(ラ)
×
ア(ラ)
ハー(ソ)
○
ハー(ソ)
—(ド)
×
く(ラ)
—(ド)
○
く(ラ)
これに加えて、音の移行の間には、しばしば小節(こぶし)が入って、旋律を飾ります。典
型的なのは、「ハーアエーイヤー」「ながおーかーア」「よこくーのーオ」「イヤーサーー」など
71
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
です。こうした箇所を楽しんで歌うことは、民謡を歌う醍醐味です。
ゥ
く−
の−ォ−
よこォ−
ォ−
ォ
○囃子言葉
民謡においてかけ声や囃子言葉は、旋律のきっかけや区切りを示したり、リズムを作ったり
する重要な役割を果たします。長岡甚句の場合、児童がまず歌の中に入ってくるのは、この囃
子言葉の部分ではないでしょうか。「ハァーヨシタヨシタヨシタ」の囃子言葉がうまく入ると、
歌は調子を整えられ、雰囲気が盛り上がります。全体の気持ちやアンサンブルを円滑にするた
めに不可欠なこの囃子言葉は同時に、初めて民謡に挑戦する児童にとってとっつきやすい箇所
でもあります。
○形式
歌は、最初一人の歌う手が歌い出し(ハーアエーイヤー
子言葉が入ります(ハーヨシター ヨシター
長岡柏の御紋)、直後に周囲から囃
ヨシター)
。そしてまた歌い手に戻り(七万余石
のアリャー城下町)、その後「イヤーサー」で受けとめ、全員が歌詞の後半を返して歌い(イヤ
ーサー余石のアリャー城下町)
、囃子言葉で締めとなります(ハーヨシター ヨシター ヨシタ
ー)。一人で歌う楽しみ有り、全員で囃して歌う楽しみ有りの構成となっています。
○つくる
長岡甚句の今ひとつの魅力は、歌を作り出すことにあるでしょう。今一度古い時代の歌詞を
思い出してみますと、地域や個人によって、様々な歌詞が歌われていたことがわかります。
・酒は室酒値段は二十四文 あまり高いよまけやれ番頭
・山でネンネコせば木の根がまくら 落ちる木の葉が夜具ぶとん
字余りもたくさんありますが、これが歌のもつ自由性、即興性です。その時の気分や状況を
どんどん歌い上げていった様子がしのばれます。
こうした歌詞の創作だけではなく、節回しも相当に変化相違があったことは、先のお座敷甚
句の録音を聴いても明白です。このような歌を作るおもしろみも長岡甚句の魅力の一つに入れ
72
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
てよいでしょう。
3
題材のねらいと学習の方法
「長岡甚句を何度も聴いて歌い、その音楽的な特性を感じ取って表現する。
」ことがねらいで
す。この場合の長岡甚句の音楽的な特性とは、前項で触れた内容(魅力)を指しますが、整理
して記述すれば次のような項目があげられます。
・自分の声を大切にした自然な歌い方
・囃子ことばの入れ込み
・ことばやふしの表現
(発音、発声、旋律、節回し、小節)
・息遣いや身体技法
・表間、裏間の感じ取りの表現
・友達とのアンサンブル
・自分の歌詞の創作と節への入れ込み
肝心なのは、こうした音楽的な特性が、規範を何度も聴いて真似ることにより、児童の体験
を通して、にじみ出てくるように授業を組織することにあります。リズムはどうだろう、旋律
は…?といったような分析的な進め方をしません。師匠(今回は、授業者)の歌はどんな特徴
があるのだろう。
」
「どのようにして歌っているのだろう。
」といった知的な好奇心と思考を促し
ながら、その秘密を友達と一緒に解いていく方法です。この模倣〜繰り返し〜習熟といった学
習の流れは、日本の音楽の伝統的な学び方でもあります。授業では結果として浮かび上がった
特性への気づきを整理していきます。
4
学習指導要領との関連
直接的には、次の項目に相当します。
(1)ア 範唱や範奏を聴いて演奏すること。
(2)イ 拍の流れやフレーズ、強弱や速度の変化を感じ取って、演奏したり
身体表現したりすること。
(3)ア 呼吸及び発音の仕方に気をつけて、自然で無理のない声で歌うこと。
5
授業の構造
本授業の構造は図のようになっています。先述しましたが、私は日本の伝統音楽の学習方法
として、できあがった作品に対してあらかじめ何らかの音楽の諸要素(特に西洋音楽の尺度と
73
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
しての)を用意し、それを分析ツールとして用いながら分解していくやり方を採用していませ
ん。音楽は文化的産物ですから、それを把握、認識、理解するには、それを培ってきた文化の
中で了解された見方をしていくのが妥当であると考えています。したがって、日本語を話し、
日本の風土の中で育ってきた児童がもともともっている音楽性や感性をよりどころにし、音楽
を自分のものとしてきたやり方(模倣、繰り返し、まるごと学習)を用いながら、そこに立ち
現れてくる音楽的な特徴をつかまえ、再認識していく方法を重視します。実際に甚句を歌った
とき、それがどのような「息遣いや動き」を基としているのか(これは例えば、手拍子が好材
料です)、「ことば」はどのように発せられ「ふし」となっていくのか、そしてどのように「音
色やひびき」をとらえ、また生み出しているのか、といった体験的・生成的なアプローチです。
観察、模倣、繰り返し、身体の型
身体を使う、身体に聴く、身体を通してわかっていく
↓
↓
教 材 の 丸 ご と 体 験
教材体験の中での試行錯誤
(唱歌を用いる)、唱える、真似る、
規範に近づくための表現の工夫、立ち現
自分化
れる特徴への気づき、吟味、反省、思考、 →
新たな認識
歌う、たたく、弾く、吹く、聴く、
→
動く等
判断
↑
↑
「音色・ひびき」「動き・息」「ことば・ふし」からの体験的・生成的アプローチ
身体から音楽が生み出されるとき、それがどのような「息遣いや動き」を基としているのか、「ことば」はどのよう
に発せられまた「ふし」となっていくのか、そしてどのように「音色やひびき」を捉え、また生みだしているのか、
図:授業の構造と方法
具体的には、まず教材を丸ごと体験するのが基本となります。今回は、教師の歌う長岡甚句
が規範となります。教師の師範を何度も聴く中で、対象を少しずつ捉えていきます。例えば、
今回児童は、まず「ハーヨシター
ヨシター
ヨシター」という囃子ことばから入ってくるも
のと予想しています。そして、次に歌詞に注目する。どんなことばを言っているのだろう、と
いったことです。こうしたことから、だんだんと甚句そのものの歌い方に注目していくものと
思われます。
師範に近づこうとして表現を工夫する中で、立ちあらわれる甚句の特徴に気づき、
「どのよう
にしたら師匠(この場合は教師)を乗り越えることができるだろう」といった試行錯誤を繰り
返します。対象を吟味し、自己の表現を反省しながら、思考・判断していく過程です。
74
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
この際、観察、模倣、繰り返しといった方法が重視されます。また、甚句を歌っているとき
の身体技法、例えば姿勢や呼吸法などにも注目させます。身体を使い、身体に問い、身体を通
してわかっていくやり方です。
このように、身体技法と知的な作業を一体化させながら次第に長岡甚句の特徴に気づき、そ
のおもしろさを味わい、甚句を自分のものとするとともに甚句に対する新たな価値観や認識を
培っていきます。
6
授業の計画と評価
全3時間の授業計画です。甚句の師範の模倣を繰り返す中で、児童は少しずつ甚句の「何か」
をわかってきます。具体的には、2〜3項で述べてきた内容です。以下に授業の流れとともに
整理します。
時
授業の流れ
評価
1
○長岡甚句の拍の特徴やふしのまとまりをつかむ。
<全体を聴く、身体を使う、真似る>
・教師の歌う甚句の演奏を聴く
・手拍子をつけて聴く
・囃子ことばをつけて参加する
・歌詞を聞き取る
・後半の返しの部分を歌って参加する
・ふしの全体を歌う。
・発見した長岡甚句のおもしろさを記録する。
・甚句を聴きながら、表間・裏間の
感じを手拍子で打ったり囃子こと
ばをつけたりすることができる。
(表間・裏間の拍感)
・長岡甚句の一節を先生と一緒に歌
うことができる。(自然な声の出し
方、節回し、発音、響き)
2
○長岡甚句の節や歌い方の特徴をつかみ、表現を工
夫する。<模倣、気づき、思考>
・歌詞譜を作成する。
・教師の師範を聴いて、歌詞譜に節の特徴や表現
の工夫を書き込む。
・歌詞譜を参考に全体で練習をする。
・気づいた表現の工夫を随時書き込む。
・個人やグループで練習し、意見交換をしながら
表現を練り上げる。随時、教師の師範を聴く。
・発見した長岡甚句のおもしろさを記録する。
・師範を聴いて、表現の工夫を歌詞
に書き込むことができる。
・師範を聴いたり、個人や仲間と一
緒に練習したりする中で、どうした
ら良い演奏に近づくことができる
か、工夫することができる。(声の
出し方、細かな発音、産み字、小節、
息の遣い方など)
・一人で歌うところや全体で歌うと
ころを分担し、友達と合わせること
ができる。
3
○長岡甚句の表現を練り上げ、発表会をする。
<発表、自分化、価値の再認識>
・前時の学びを共有する。
・教師の師範を聴き、全員で歌う。
・個人での追究やグループでの交換練習をする。
・発表の形態を決める。
・発表会をする。
・発見した長岡甚句のおもしろさを記録する。
・工夫した長岡甚句を歌って、個人
またはグループで紹介することが
できる。
・長岡甚句の魅力について、学習カ
ードに具体的な事項として書き留
めることができる。
本
時
75
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
評価は二つの側面から実施します。一つは、児童の表現(身体、身体知)と、もう一つは言
語・記述による表出です。前者は、パフォーマンス評価(表現の工夫の実際、発表)、後者は、
発言や記録による評価です。
<題材の評価規準>
ア
度
音楽への関心・意欲・態 イ
夫
音楽的な感受や表現の工 ウ
表現の技能
長岡甚句の歌の特徴や表現の 長岡甚句の音楽の特徴を感じ 長岡甚句の音楽の特徴を生か
仕方に興味をもって、意欲的 取って、師範に近づくように した表現ができる。
に練習しようとする。
表現を工夫する。
<具体の評価規準>
○1時間目
①長岡甚句に興味を持って覚 ①長岡甚句の拍の特徴と節の ①長岡甚句の拍の特徴を生か
えることに意欲的である。
全体的な特徴を感じ取る。
して、およそ歌えるようにな
る、
○2時間目
②長岡甚句の節の特徴をつか ②長岡甚句の節や歌い方の特 長岡甚句の節や歌い方の特徴
んで意欲的に表現しようとす 徴を感じ取って、声の出し方、 を生かし、声の出し方、発音、
る。
発音、産み字、小節、息遣い 小節、息遣いなどのポイント
などのポイントをつかみ工夫 を 工 夫 し て 歌 え る よ う に な
できる。
る。
○3時間目(本時)
③長岡甚句の表現を自分の歌 ③長岡甚句の節を自分の工夫 ③ 長 岡 甚 句 の 表 現 を 練 り 上
として練り上げることに意欲 を生かした表現として練り上 げ、自分の工夫を生かして歌
的である。
げる。
いあげることができる。
④長岡甚句の音楽的特徴を感
じ取って、学習カードに書き
出す。
7
展開
1)1時間目:平成 18 年 10 月 12 日(木)
(1)ねらい
<全体を聴く、身体を使う、真似る>
・長岡甚句の拍の特徴やふしのまとまりをつかむ。
(2)展開
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学習内容
教師の働きかけ
児童の活動
留意点【規準<方法>】
○長岡甚句の全体
○長岡甚句の演奏を聴か
○教師の歌う長岡甚句を聴
・運動会等の話から、長
像の把握
せ、全体像をつかませる。 いて、節の流れや歌われてい
岡 甚 句 と児 童と の つ な
・三味線、太鼓、笛の伴奏
る歌詞について全体的にと
がりを意識させる。
により、3回ほど歌う。
らえる。
・「歌」に注目させる。
○拍の特徴の感受
○長岡甚句の拍のまとま
○手拍子をつけたりや囃子
【ア①イ①<観察・演奏
(表拍と裏拍)
り(表間・裏間)と性質を
ことばを歌ったりして、拍の
>】
感じ取らせる。
感じをつかむ。
・教師の手の動きの性質
○歌詞の把握
・表間、裏間を手の動きで ・教師の手の動きをよく見て
に注目させる。必要であ
表現させる。
合わせ、歌のリズム感をとら
れば、気づきについて意
・手拍子とともに囃子こと
える。
見交換する。
ばもつける。
・(ハー)(ヨシター)(ヨシタ
・手拍子による表現や囃
ー)(ヨシター)それぞれの感
子 こ と ばの 歌い 方 に 注
じを生かして声を出す。
意して観察する。
○どのような歌詞が歌われ
・歌詞に注目させて、聞
○歌詞を歌い、聞き取ら
せ、プリントに書かせる。 ているのか、聞き取る。
こ え て きた 発音 を そ の
・「お前だか〜」の歌詞を ・教師の歌を聞き、自分の耳
ま ま 書 くよ うに 指 示 す
歌い、聞き取らせる。
に聞こえてきたそのままを
る。
・何度か歌って、結果を交
プリントに書き出す。
換させる。
○ふしの全体把握
○一節通して歌わせる。
と歌唱
○ふしの全体を歌えるよう
【ウ①<観察・演奏>】
になる。
・何度か繰り返して次第
・最初は教師とともに、次 ・自分の作成した歌詞を参考
に歌えるようにする。状
第に児童だけで歌うこと
に教師とともに、歌う。
況を見ながら、部分を取
ができるようにする。
・教師の助けを得ずに、伴奏
り 出 し て、 表現 を 伝 え
だけで歌う。
る。
○甚句の魅力のま
○学習プリントに、甚句の
○自分の発見した長岡甚句
とめ
魅力を記録させる。
の魅力をプリントに書く。
2)2時間目:平成 18 年 10 月 17 日(火)
(1)ねらい
<模倣、気づき、思考>
・長岡甚句の節や歌い方の特徴をつかみ、表現を工夫する。
(2)展開
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
学習内容
教師の働きかけ
児童の活動
留意点【規準<方法>】
○長岡甚句の背景
○長岡甚句の歌詞の内容
○長岡甚句の歌詞の内容や
○ 長 岡 甚句 を学 習 す る
や歴史について、学習の意
歴史について知り、地域の
こ と の 意義 に関 連 さ せ
義と関連させて話す。
人々や自分たちとのつなが
て話す。
・くらしとのかかわり
りについて考える。
・戦後の復興と長岡甚句
・
「ぼんこ」
「まめの草」など
・現在の甚句と人々
の意味とくらし
・長岡まつりや附属校園の運
動会と長岡甚句
○長岡甚句の節や
○節や歌い方の特徴を把
○師範を聞いて、自身の聴き
・声の出し方、発音の仕
歌い方の特徴把握
握させる。
取り結果を書き留める。
方、産み字、小節、息の
(歌詞譜の作成)
・師範をして節の特徴や歌 ・具体的な節の特徴や表現の
遣 い 方 等を 点や 曲 線 を
い手の表現の工夫を聴き
工夫を自分の耳で確認する。 用いて書かせる。
取る。
・口ずさんだりしながら、前
・黒板に楽譜の書き方の
・前時の歌詞のプリントに
時の歌詞に細かな注意書き
例を複数示す。。
具体的な内容を書き込ま
を書き込んで譜を作成する。 【 イ ② <学 習プ リ ン ト
せる。
への記入】
○自身で作成した歌詞譜を
もとにして、練習を繰り返
○個人・グループ
○個人やグループによる
し、表現を追究する。
・「民謡教室コーナー」
による節の表現の
表現の工夫をさせる。
・一人で歌ったり、友達と一
を 設 定 し、 師範 を し た
工夫
・個人練習や仲間との相互
緒に工夫したりする。
り 、 相 談に 応じ た り す
練習を通して、繰り返し練 ・必要に応じて、師範を聴き、 る。
習させる。
一緒に歌ったり違いを比較
【ア②ウ②<観察・演奏
・児童の要望に応じて、師
したりする。
>】
範を繰り返す。
・友達の表現を聞いて、自分
・声の出し方、発音法、
・数人のステージ発表によ
の歌を練り上げる。
身 体 の 使い 方な ど 基 本
り、表現の工夫を確認させ
る。
○甚句の魅力のま
○学習プリントに、甚句の
とめ
魅力を記録させる。
事 項 へ の発 問や 気 づ き
○自分や友達の発見した長
は全員に紹介し、共有す
岡甚句の魅力書く。
る。
3)3時間目:平成 18 年 10 月 18 日(水)
【本時】
(1)ねらい
<発表、自分化、価値の再認識>
・長岡甚句の表現を練り上げ、発表会をする。
(2)展開
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学習内容
教師の働きかけ
児童の活動
留意点【規準<方法>】
○前時の学びの共
○児童の学びの内容を紹
○前時までの学習を振り返
・ 歌 う時 の身体 の 使 い
有(節や歌い方の
介する。
り、甚句の節や歌い方の特徴
方、聴くこと、真似るこ
について、友達の学びも参考
と、考えることの重要性
う。
にしながら確認する。
についてもふれる。
・前時の様子や学習プリン
・歌詞譜を参考に皆で歌う。 【 イ ④< 学習プ リ ン ト
特徴、工夫した点) ・師範とともに全員で歌
トから児童の学びを紹介 ・気づいたことについて、発
する。
○個人やグループ
の記述、発表・発言>】
表し合う。
○自分の長岡甚句として発
・練習を見て回り、児童
による表現の確認
○発表会を目指して規範
表できるように表現を工夫
の こ だわ りの箇 所 を 一
と追究(技能面の
に近づくように繰り返し
する。
緒 に なっ て繰り 返 し て
獲得)
練習させる。
・師範を何度も見たり聴いた
歌うようにする。
・師範をする。
りして練習を繰り返す。
【 ア ③イ ③<観 察 、 発
・個人での練習や友達との ・歌詞譜から離れ、友達に聞
言、学習プリント>】
交換練習を通して、歌を自
いてもらうなどして、一人や
・余裕がある児童には、
分のものになるようにさ
少人数で歌えるようになる。 自分の甚句(歌詞)をつ
せる。
けて歌わせる。
【ウ③<観察、演奏>】
○長岡甚句発表会をして、学
○成果の発表会と
交流
習の成果を交換し合う。
・できるだけ一人で発表
○長岡甚句の発表会をし ・ステージの上で、仲間に向
させる。
て、歌の魅力を感じ取った
【ウ③<演奏、発言>】
かって歌う。
り表現の工夫を認め合っ ・歌う際、長岡甚句の魅力や
・歌い方や表現の工夫が
たりさせる。
自分の歌の工夫についてア
見 ら れる 箇所を 認 め 賞
・個人や少人数による発表
ピールをする。
賛する。
の場を設定する。
・友達の歌の良い点につい
・甚句のおもしろいとこ
て、発言し、学びを交流する。
ろ、友達の工夫した点につ
いて注目させる。
○自分や友達の発見した長
岡甚句の魅力をプリントに
○甚句の魅力のま
とめ
書く。
【 イ ④< 学習プ リ ン ト
>】
○学習プリントに、甚句の
魅力を記録させる。
79
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
発見! 長岡甚句(じんく)のおもしろさ
学習プリント1
4年
組
番
氏名
「こんなところがいつも歌っている歌とちがうよ」
「こんなところが、おもしろ
いよ」など、長岡甚句のおもしろさを書きましょう。
1時間め
2時間め
3時間め
80
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
長岡甚句 自分だけの楽ふをつくろう
学習プリント2
4年
組
番
氏名
ハーアエーイヤー
ながおか
かしわのごもん
ハーヨシター ヨシター
ななまんよこくの
アリャーじょうかまち
イヤーサーよこくの アリャーじょうかまち
ハーヨシター ヨシター ヨシター
ヨシター
○どんな歌詞がうたわれているのだろう?
○どんなふうに歌おうか?
①
②
ハーヨシター
③
④
ハーヨシター
ヨシター
ヨシター
81
ヨシター
ヨシター
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
Ⅴ
おわりに
この授業は、長岡甚句にスポットを当てたものですが、広く「日本の民謡」の教材性と授業
構成についてまとめました。授業については、様々な展開方法が考えられると思いますが、今
回の場合、もう少し時間があるならば、甚句を「作る」・「踊る」方向性を加味するともっとお
もしろいと考えています。
なお、授業における学習法について十分に述べることができませんでした。これに関しては、
拙稿(
「日本音楽のカリキュラム構築に向けて〜日本人の認識法や音楽的感覚によるアプローチ
〜」
『新潟大学教育人間科学部紀要 第9巻第1号』2006 年)を参照いただければ幸いです。ま
た、Ⅲ章については、日本民俗音楽学会での発表「捉えようのない民謡の何を捕らえるか」)が
もととなっています(第5回日本民俗音楽研究会、2006 年8月 27 日、東京学芸大学にて)。
今回の授業を実践するにあたって多くの皆様にお世話になりました。長岡市民謡連盟理事長
の酒井春洋先生と長岡春洋会の皆様からは、長岡甚句の歌い方や演奏の仕方について、越後民
謡やよい会会長鳥羽省吾先生からは、長岡甚句の歴史や踊りについてそれぞれご教示いただき
ました。長岡商工会議所の仲介により、長岡まつりで名演を披露された歌い手と地方(じかた)
の皆様の練習を参観させていただくことができました。関係の皆様にあらためて御礼申し上げ
ます。
(平成 19 年 3 月 20 日受理)
82
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
ジョン・ケージ作品の指導:中学校音楽科授業における現代音楽の展望
森下修次*1、吉村智宏*2、和田麻友美*2、菊地雅樹*3
Teaching John Cage’s works:
some perspectives on a class music education by Contemporary music in a junior high school
Shuji MORISHITA、 Tomohiro YOSHIMURA、 Ayumi WADA、 Masaki KIKUCHI
1. はじめに
近年、日本の小・中学校における音楽において問わ
今回作成する教材によって、生徒たちが今まで音楽
れているのが「音楽の学びとは何か」である。国語、
と考えてもいなかった作品に触れることで、音楽に対
社会、理数等の教科では何を学ぶのか比較的はっきり
する認識を考え直すきっかけになればと考え、教材開
しているが、それ以外の教科、特に音楽において何を
発と検証のための授業実践を行った。
学ぶのか、何が学びなのか統一した見解がもてないの
2. 授業実践
が現状である。
音楽における「学び」が曖昧なのは、ひとつは音楽
授業は表 1 の指導案を元にして行った。授業の様子
の目的が音を楽しむ、音楽の目的は楽しむこと、人と
を図 1、図 2 の写真に示す。その際使用した学習プリ
人とのコミュニケーション、といったような、音楽学
ント(記入例)を図 3 に示す。
習における副次的効果が目的化してしまったためと考
えられる。
また、音楽は多岐にわたる様々な要素から成り立っ
ている。音の組み合わせは音楽を生んだが、その構造
は種類が多く複雑である。我々の脳は複雑な諸要素か
らなる音楽を一つのこととして総合的にとらえている
と考えられるが、そのことが音楽の「何」を学ばない
といけないのかという問を難しくしている。
我々は音楽の学びへの糸口として、ジョン・ケージ
の音楽を選んだ。
ジョン・ケージの音楽は現代の我々と共に歩んできた
図 1 授業の様子
音楽の一つである。現代音楽の作曲家の中でも比較的よ
く知られており、独特の作風や、生涯を通して音楽に対
して真摯に取り組んでいるという彼自身の生き様に対し、
子どもたちが興味をもつのではないかと考えた。また、
我々と同時代の彼の作品を学ぶことは、我々の置かれて
いる社会や環境の音楽を学ぶことであり、さらに、ケー
ジの音楽に対する考え方やその作品に触れることが、
「子
どもたちが考えている“音楽”への認識の幅を広げる」
ことにつながるのではないかと考えた。
※1 新潟大学教育人間科学部
※2 新潟大学大学院教育研究科
図 2 授業の様子
※3 新潟大学教育人間科学部附属長岡中学校
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
表 1 指導案
2 年 2 組音楽科学習指導案
平成 18 年 11 月 21 日(火)第 1 限
第 2 学年 2 組(40 名)
指導者:新潟大学教育学研究科 2 年
吉村 智宏,和田 麻友美,全 鋒
1. 題材 「私が考える音楽」
2. 題材設定の理由
音楽の授業で取り扱われている音楽の大部分は、作曲家によって五線譜上に音楽が示されている作品である。そ
のため、
「音楽は、作曲家によって五線譜上に書かれたもの」としてとても狭い枠組みの中で音楽を認識している生
徒も中にはいる。しかし、実際には五線譜を用いずに音楽を示している作品や、作曲家はおおよその形を示すだけ
で、あとは演奏者に任せてしまうような作品など、この世には様々な音楽の形態が存在するのである。
そこで、今回の授業を通して、そのような様々な形態の音楽に触れる機会を得、生徒の持つ音楽について
の認識の枠を広げられるようにしたいと考えた為、このような題材設定を行った。
3.目標
(1) ジョン・ケージの音楽対する姿勢や、その音楽作品に興味を持ち、生徒ひとりひとりが音楽に対しを積
極的に思考することができる。
(音楽への関心・意欲・態度)
(2) ジョン・ケージの音楽表現の斬新さを感じ取り、その面白さを自分なりに言葉で表現できる。
(音楽的な感受と表現の工夫)
(3) ジョン・ケージの音楽に対する姿勢を知ることによって、
「私が考える音楽」を深めることができる。
(鑑賞の能力)
4. 教材
(大学院「教材開発研究」の一環で作成した冊子、音源、映像を含む。
)
①「ジョン・ケージの音楽」
②学習プリント
・
ディベート時の「私が考える音楽」について
・
最終的な「私が考える音楽」について
5.授業の構成(全 1 時間)
内容・留意点
1 時 【1.
間
目
4 分 33 秒を聴いてみよう】
○ 教師による『4 分 33 秒』を聴く。
【2.
『4 分 33 秒』は音楽か否か】
○ 学級を半数に分け肯定派・否定派にわかれてディベートを行う。
・学習プリントの 1 に自分の意見を論拠を明確にして記入する。
・肯定派・否定派のそれぞれの論拠を明確にした上で、肯定・否定の討論を行う。
例)
「私は○○だと考えるので『4 分 33 秒』は音楽だと思う(思わない)
」
【3.
『4 分 33 秒』の作曲者】
○ 『4 分 33 秒』の作曲者であるジョン・ケージの意図を探る。
・製作した資料を通し、ジョン・ケージの意図を理解する。
・2 の活動で得た自分の考えとジョン・ケージの考えを比較する。
【4.
ジョン・ケージの音楽】
○ ジョン・ケージの作品を通して、その斬新な表現方法について理解する。
・25 音音列について
・プリペアドピアノの作品
・ 図形楽譜
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
5.授業の構成(全 1 時間)
内容・留意点
1
【5.
4 分 33 秒を聴いてみよう】
○ 教師による『4 分 33 秒』の「演奏」を聴く。
時
間 【6.
目
『4 分 33 秒』は音楽か否か】
○ 学級を半数に分け肯定派・否定派にわかれてディベートを行う。
・学習プリントの 1 に自分の意見の論拠を明確にして記入する。
・肯定派・否定派のそれぞれの論拠を明確にした上で、肯定・否定の討論を行う。
例)
「私は○○だと考えるので『4 分 33 秒』は音楽だと思う(思わない)
」
【7.
『4 分 33 秒』の作曲者】
○ 『4 分 33 秒』の作曲者であるジョン・ケージの意図を探る。
・製作した資料を通し、ジョン・ケージの意図を理解する。
・2 の活動で得た自分の考えとジョン・ケージの考えを比較する。
【8.
ジョン・ケージの音楽】
○ ジョン・ケージの作品を通して、その斬新な表現方法について理解する。
・25 音音列について ・プリペアドピアノの作品 ・図形楽譜
【9.
今音楽に対して思うこと】
○ ジョン・ケージの創作活動を通し、
「私が考える音楽」の考えを深める。
・
「私が考える音楽」をプリント2に自由形式で記述する。
6.評価規準
ア 音楽への関心・意欲・態度
イ 音楽的な感受や表現の工夫
エ 鑑賞の能力
○
○
○
題
ジョン・ケージの音楽対する姿勢
ジョン・ケージの音楽表現の
ジョン・ケージの音楽に対する姿
材
や、その音楽作品に興味を持ち、生
斬新さを感じ取り、その面白
勢を知ることによって、
「私が考え
徒ひとりひとりが音楽に対しを積
さを自分なりに言葉で表現し
る音楽」を深めている。
極的に思考している。
ている。
鑑賞
の
評価規準
学習活動に置ける具体の評価規準
【1. 4 分 33 秒を聴いてみよう】
【2. 4 分 33 秒は音楽か否か】
①「肯定派」
「否定派」それぞれの論
①1 の活動から受けた印象を
①1 の活動を受けた印象から自分の
拠を意欲的に見出している。
もとに、自分の考えを学習プ
論拠を明確にして、学習プリントの
②相手の意見に興味を持って聞く。
リントの1に記述している。
1に自分の考えを記入している。
【3. 4 分 33 秒の作曲者】
③ジョン・ケージが 4 分 33 秒を作っ
②ジョン・ケージの考えと2の活動で
た経緯に興味を持って聞いている。
の自分の考えとを比較している。
【4. ジョン・ケージの音楽】
④ジョン・ケージの表現の斬新さや、
音楽に興味を持って聴いている。
【5. 今音楽に対して思うこと】
③ジョン・ケージの音楽への考え ②ジョン・ケージの音楽への考え
や表現の斬新さから感じたことか や表現の斬新さを踏まえ、
「私が考
ら、
「私が考える音楽」を学習プリ える音楽」を深めた記述を学習プ
ントの2に記入している。
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リントの2にしている。
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
8.授業の全体計画と評価の計画・方法
具体の
ねらい・学習活動
評価規準
【1. 4 分 33 秒を聴いてみよう】
【2. 4 分 33 秒は音楽か否か】
【3. 4 分 33 秒の作曲者】
【4. ジョン・ケージの音楽】
評価のポイント
評価方法
アー①
・積極的に意見を述べている
観察
アー②
・相手の意見に興味を持っている
観察
イー①
・学習プリントに記述がある
プリントの内容
エー①
・学習プリントの記述に論拠がある。 プリントの内容
アー③
・興味を持って聞いている
観察
イー②
・教材にメモなどをしている
観察
アー④
・興味を持って聞いている
観察
・学習プリントに記述がある
プリントの内容
・学習プリント1と2に違いがある
プリントの内容
【5. 今音楽に対して思うこと】 イー③
エー②
9.本時の展開
学習内容
教師の働きかけ(教材)
児童の活動
評価規準
【1. 4 分 33 秒を聴いてみよう】
(4 分 33 秒の演奏)
○4 分 33 秒の鑑賞
○4 分 33 秒を演奏する
○4 分 33 秒を鑑賞する
【2. 4 分 33 秒は音楽か否か】
(学習プリント)
アー①
○4 分 33 秒は音楽であるか ○学習プリントを配布す ○論拠を明確にして自分の意
どうかのディベートを行う
見を学習プリントの1に記述 アー②
る。
○生徒の半数を無作為に する。
「肯定派」
「否定派」にわけ、 ○自分の意見の論拠を明確に イー①
ディベートをさせる。
して「肯定」
「否定」の意見を
述べる。
【3. 4 分 33 秒の作曲者】
(John Cage の音楽・4 分 33 秒の楽譜)
エー①
アー③
○John Cage が 4 分 33 秒を ○4 分 33 秒の楽譜を見せる ○4 分 33 秒の楽譜を見る
創った意図を探る
○教材 John Cage の音楽を ○John Cage の音楽の①まで イー②
○2 の活動で得た自分の論 配布する
を黙読する
と John Cage の考えを比較 ○教材①までを黙読させ ○教師の音読を聞く
する
る。
○自分の論と比較する
○教材①までを音読する。
【4. ジョン・ケージの音楽】
アー④
(John Cage の音楽、図形楽譜・バッカスの祭りの音源と楽譜)
○John Cage の音楽への姿 ○John Cage の音楽②~④ ○教師の説明を聞く
勢や斬新な表現を理解する
までを説明する
○(可能であれば)図家楽譜の
○可能であれば図形楽譜の 演奏をする
演奏をさせる
イー③
【5. 今音楽に対して思うこと】
○学習を通し「私が考える ○学習プリントの 2 に「私が ○本日の学習の内容を踏まえ、
音楽」を考え、記述する
考える音楽」を記述させる
学習プリントの 2 に「私が考え エー②
○終了しだい回収する
る音楽」を記述する
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
図 3 使用した学習プリント 1 の生徒の記入例
(左が表、右が裏面にかかれた生徒のメモ)
今回授業を実施した2年2組の生徒は、これまで、
3. 考察
歌唱表現の追究活動を通して音楽を構成する諸要素の
生徒はどのように音楽を捉えていたか
働きについて学んだり、表現や鑑賞を通して、一つの
ここでは、本授業で用いた学習プリント 1 の記述よ
楽曲に様々な表現の可能性があることを実感をもって
り生徒が音楽をどのように捉えているかを分析し、考
学んだりし、
音楽表現への認識を広げてきた。
しかし、
察を行った。
そこで扱った教材を音楽のジャンルという点から見る
学習プリント 1 の内容
と、広く中学校で歌われている合唱曲、いわゆるクラ
本実践の始めで、ジョン・ケージの『4 分 33 秒』を鑑賞
シックと呼ばれる西洋音楽、そして箏曲「六段」とい
った日本の伝統音楽などであった。
させた上でそれが「音楽である」と「音楽でない」というグ
したがって、今回取り上げるジョン・ケージの作品の
ループに生徒を機械的に分類し、その論拠を考察させ、そし
ような現代音楽に触れるのは、今回が初めてであり、
て討論させた。
「機械的に分類」したのは、生徒の捉えてい
子どもたちの「音楽」に対する認識を根本から揺さぶ
る「音楽」をできるだけ客観的な視点で調査したいというこ
り、彼らにこれまであまり意識してこなかった「音楽
とと、それぞれのグループの人数を同数にすることによって
とは何か」について考えさせ、彼らが「音楽」を改め
討論に公平性が保てるのではないかと考えたからである。
てとらえ直すことが期待される。
学習プリント 1 への記述
ここでは「音楽である」と「音楽でない」のそれぞ
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
れの論拠として書かれた記述をいくつか挙げる。
○
「音
(キ)
「音」を「楽」しんでいないものは音楽でない。
楽である」の記述は次のとおりである。
(ク)雑音は音楽でない。
(ケ)音をつくっていないので音楽でない。
(コ)音楽の要素がないので音楽でない。
・ 人の心をつかんだしずかな音、周りの音はすべて音楽
それぞれの要素の比較
・ すべて休符の曲であるので音楽である。
抽出された要素を集合図にすると図 4 のようになる。
・ 無音の空間が音楽になっていたのではないか。
・ この『4 分 33 秒』の間にあった音が音楽。
・ 音というか「音がなく静かなもの」という音楽と
とらえる。
・ きいている人と演奏する人でつくった音楽。
・ 実際には弾いていないけれど、その前の体勢を
(が?)入っている。
・ 聞いている側がその音楽を想像して、音楽を流せ
図4
ば音楽になると思います。
・ 人の手で作られた静寂はもはや音であるから。
・ 人が作ったものだから音楽ではないかと思います。
このことから、生徒が音楽をどの様にとらえてきた
かを見ることができる。
・ 無音を音として扱われているから。
○「音楽でない」の記述は次である。
「創作物」としての音楽
・ 音が無い
図 4 から(オ)と(ケ)は対極にある要素ととらえ
・ 「音楽」とは音を楽しむということだから、音が
ることができる。
(オ)は『4 分 33 秒』を人の手によ
なければ音楽ではないと思う。
・ 演奏者が演奏しない。
って作られたものであると考えられていることに対し、
・ 終始がわからない。
(ケ)は『4 分 33 秒』を作られたものでないと考えら
・ 楽しいとか、美しいとか思わないから。
れているからだ。つまり、それぞれの項目は「創作」
・ 音楽とは自分たちでつくること。
という観点が加わっているか否かで「音楽である」か
・ 楽器の音がしない。
「音楽でない」か、に分けられたということである。
・ 『4 分 33 秒』の間に人が動いた時の服の音がきこ
音楽の構成要素
えたがそれはあくまで「雑音」である。
次に同じく図 4 の(ウ)と(コ)を比較して考えて
・ 自分にとって音楽的でなかった。
・ 『4 分 33 秒』に感動や感じるものがなかった。
みたい。
(ウ)は『4 分 33 秒』を「休符」としてとら
・ 演奏者が音楽を感じていない。
えていたことに対し、
(コ)は『4 分 33 秒』を音がな
・ 聞いていて苦痛だった。
い状態ととらえていた。つまりこれは、奏者が音を出
・ ピアノの音がない。リズムもテンポもない。
さない4分33秒間を休符という音楽の構成要素として
とらえていたか、ただ音のない時間として音楽の構成
要素が存在しないものとしてとらえていたかという違
記述内容の分析
いである。
さきほどの記述を整理すると、それぞれのグループ
は次のことを要素としていることがわかる。
「音楽」の意味
○「音楽である」
(ア)無音は音楽である。
『4 分 33 秒』
が音楽ではないとした理由の多くに
「楽
(イ)静寂は音楽である。
しくない」
「聞いていて苦痛」という意見があった。こ
(ウ)休符は音楽である。
れは生徒の意識の中で「音楽」は「音」を「楽」しむ
(エ)周りの音(環境音)は音楽である。
ものとして価値があるということである。話が若干飛
(オ)人の手で作られたものは音楽である。
躍するかもしれないが、この価値観は現代の音楽市場
のあり方とも関わりがあるだろう。
○「音楽でない」
(カ)無音は音楽でない。
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
判断の曖昧な要素
耳を向けている状態があれば、耳だけでなく身体で
上記のものに比べ図 4 の(ア)無音は音楽である。
何かを感じられたら、それは音楽といえると思う。
(イ)静寂は音楽である。
(エ)周りの音(環境音)は
・ 私はどんなものでも心で聞けるものは音楽だと思う。
音楽である。
(カ)無音は音楽でない。
(ク)雑音は音
・ 何かそれを通したことで学んだり、感じたり良い
楽でない。の5つは音楽であるか否かが曖昧である。
意味で変わったりできるもの、
例えば、
(ア)と(カ)は同じ「無音」に対して「音
・ 音楽は作曲者の解釈のもとで作られたものである
楽である」と「音楽ではない」の両方で捉えているし、
なら、それは音楽だと思います。
(エ)と(ク)も同じ「周りの音(とらえ方によっては
・ 人の聞こうという気があればどこでも音楽が成り
「雑音」
)
」に対しても「音楽である」と「音楽ではない」
立つと思います。考えてみれば、私たちの身の回
の両方で捉えている。また、
(イ)の静寂に関しては(ア)
りは音楽がいっぱいつまっていると感じました。
や(エ)を包括した要素であると考えられる。
・ 人がつくり出した音を楽しむことが音楽じゃない
いずれにしても、ここにある 5 つの要素は生徒によ
かと思います。人が少し動いたときの音でもそれ
って感じ方や考え方が様々であり、捉え方によっては
を聞こうとして聞けば音楽だと思います。
如何様にも変容する性質を持っていることがわかる。
・ 聴覚を使うものは全て音楽である。
言うなればジョン・ケージはこの曖昧な部分を『4 分
・ 身の回りの音(クラスの声、机を運ぶ音など)も
33 秒』で刺激した、と考えられるのではないだろうか。
見直すことで、その中で音楽を見出せることがわ
学習を経た生徒の変容
かった。色々な方法で、音を楽しむことが本来の
学習を通し、生徒はどのように音楽を捉えるように
音楽に繋がると思った。
なったか、ここでは、本授業を経ることで生徒の音楽
・ 耳をすまして聞いているという状況があれば音楽と
の捉え方にどのような変化が生じたのかを学習プリン
いえるというのは、
とても、
私としても納得できる。
ト 2 の記述から分析し、考察をおこなった。
・ 音楽の世界は広いなと思いました。
・ 一人ひとり個性があるように音楽にも個性がある
学習プリント 2 の内容
んだと思いました。
学習プリント 2 は本授業の 5 で行った「今音楽に対
・ 耳を澄まして「聴く」もの(
「聞く」でない!)こ
して思うこと」という項目である。これは授業の最後に
のことを普段、少し意識してみたい。
位置づけられている内容であり、
授業によって生徒の音
・ 今までは音楽は CD で聞く MD で聞くものだと感
楽に対する認識がどのように変化したのかが表れてい
じていましたが、今回の音楽を聴いて周りの全て
ると言っても過言ではない。型式は自由記述にした。
を音楽だと感じられるんだなと思いました。
学習プリント 2 への記述
記述内容から見える捉え方の変化
ここでは生徒が学習プリント 2 に記述したもののい
抽出した記述から、生徒のもつ音楽の捉え方は次の
くつかを紹介する。
内容において変化が見られたと考えることができる。
・ どこからどこまでが音楽とはいえません。その人
さきほど挙げたいくつかに「無音を聴く」
「集中して耳
が「音楽だ。
」と思えば音楽だと思います。
を傾ける」
「聴覚を使う」
「心で聴く」という表現が見ら
・ “音”に関係しているだれかがつくりだした“何か”
れた。これは『4 分 33 秒』を紹介する際に引用したジョ
・ 耳に入ってくる情報は全て音楽なのでは?と思います。
ン・ケージの言葉「自分の音楽でも他人の音楽でも構わ
・ 演奏する人、聴く人が音楽と思っていればよいの
ないのですが、その時私たちが本当に静かにしていて全
ではないかと思う。
員が耳をすましているという状態があればそうしたこと
・ 無音を聴いているのだから音楽といえると思う。
自体が音楽であってくれたらいいと思うのです。
」
という
・ 人が集中して耳を傾け、その人が音楽だと感じた
投げかけに対する答えと考えられる。何気なくしている
ものが、音楽になるのだと思う。
と「聞く」という行為は受動的な意味に陥りやすい側面
・ 作曲者が自分の伝えたい事を音にあらわしたもの
を持っているが、この『4 分 33 秒』の一連の学習は生徒
が音楽だと思います。ただ、聴く側も自分なりに
の「聞く」を能動的な意味での「聴く」という次元に引
考えながら聴くでいいと思います。
き上げたのではないだろうか。また、この能動的な「聴
・ 聴こえてくる音だけでなく、無音(静寂など)にも
く」は次の内容にも発展したと考えられる。
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
音楽に参加する「聴く」
意見を述べている生徒も多く見られた。
先にも述べたように多くの生徒が「聞く」という行
(2)の「ジョン・ケージの音楽表現の斬新さを感じ取
為を「聴く」まで高めることへの必要性を感じていた
り、その面白さを自分なりに言葉で表現できる(音楽的
といえる。つまり、音楽を能動的に聴くということで
な感受と表現の工夫)」という観点においても、殆どの
あるが、同時に、その「聴き手の姿勢」をも意識し始
生徒は『4 分 33 秒』に対して「驚きやなるほどという
めているのではないかと思われる。
現にいくつかに
「人
気持ち」を強く持ったと思われ、当初の目的を果たし
がつくり出した音を楽しむ」や「耳だけでなく身体で
たと評価できる。今まで生徒たちが音楽として接して
何かを感じられたら」
、
「聴く側も自分なりに考えなが
きたものとは異質の音楽を聴き、これは音楽なのだろ
ら聴く」といった内容の記述が見られた。これらは能
うかと自身で考え、意見交換する活動を通して彼らの
動的な「聴き方」を示した記述である。つまりは音楽
感性を揺さぶることができたのではないかと思われる。
の中に参加していく「聴く」ということになっている
また、
クラスター奏法についてあげている生徒もいた。
のではないだろうか。
手のひらでピアノを弾くこと生徒たちの中では遊びで
やったことがあるかもしれない。しかし、それをしっ
「環境音」への意識
かりとした奏法として、クラスター奏法を意図的に使
さらにこの能動的な「聴く」はこれまでさほど気に
用した作品を作っていることを知り、様々な表現方法
しなかった、もしくは見逃していた(聞き逃していた)
があることに驚いている生徒もいた。
身の周りの音への気付きに結びついている。記述とし
(3)の「ジョン・ケージの音楽に対する姿勢を知るこ
ては「耳に入ってくる情報は全て音楽」や「私たちの
とによって、
「私が考える音楽」を深めることができる
身の回りは音楽がいっぱいつまっている」
、
「身の回り
(鑑賞の能力)」については、ディベートを通して仲間
の音(クラスの声、机を運ぶ音など)も見直すことで、
の意見と自身の意見を照らし合わせ、音楽に対する考
その中で音楽を見出せる」等のものが挙げられる。最
えを深めていった様子が見られることを評価して良い
もそれを音楽と思うかどうかは個人の感覚に委ねられ
のではないかと考えられる。学習プリントを見ると、
ている部分があり、一概に音楽か否かに線を引くこと
2の欄には『4 分 33 秒』に的を絞って考えたものが多
は危険であるが、少なくとも無意識に聞いていた、あ
く挙げられている。生徒たちは、
「誰かが作り出した静
るいは聞こえていた)音の数々に意識が向かったこと
寂」は音楽であると考えていたり、提供する人が音楽
だけは確かである。
だと主張したら音楽であると考えていたり、
「何でもあ
りなんじゃないか?」と考える生徒がいたりと、生徒
が音楽に対して柔軟な考えを持ち始めているのではな
学習指導案「3.目標」から見る効果
(1)の「ジョン・ケージの音楽に対する姿勢や、そ
いかと思われる。
の音楽作品に興味を持ち、生徒ひとりひとりが音楽に
対して積極的に思考することができる(音楽への関
4. 授業に対する反省点
心・意欲・態度)」に関して、生徒たちは今までの彼ら
・生徒が主体となる活動を多く取り入れる
の中にあった音楽という概念に当てはめにくいこの作
1時間で全ての学習内容を終わらせようとするあ
品に対して、積極的に考えているようであり、評価に
まり、生徒が主体となって行う学習活動が殆どなかっ
値すると考えている。
た。もう少し学習者にジョン・ケージの作品を演奏さ
せたり、
『4 分 33 秒』以外の作品について深い理解を
『4 分 33 秒』を聴いた後のディベートでは、それぞ
れの立場から『4 分 33 秒』について考え、学習プリン
行えるような活動を取り入れるべきであった。
トの1に意見を書いたり、
ディベートの場で発表を行っ
また、ディベートの時間をより多くとることで、生
ていた。ある生徒たちからは「人の手によって作られた
徒間での討論をもっと深め、肯定派・否定派の意見に
静寂はもはや音」や「曲の中の休符も音楽だというのと
ついて十分比較、理解を行うような機会を持つべきで
同じで音楽であるといえる」など、ジョン・ケージの意
あった。各派数人の意見について、授業者が指名して
図したことを想像しながら肯定派としての意見を上げ
意見を述べさせた程度の意見交換しかできなかったよ
ている様子が見られた。一方、否定派は「音がないから」
うに思う。時間の配分を工夫したり、もう1時間増や
という物理的な理由や
「音楽は音を楽しむと書くのに楽
したりすることで、生徒が主体的に学習活動に取り組
しくなかった、苦痛だった」という自身の感じ方を基に
む工夫を行う必要があると思われる。
90
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
・生徒が座る方向を一定にさせる
ることになったと思われる。今回は、ジョン・ケージ
授業者が始め、
『4 分 33 秒』を聴かせる場所と、デ
の偶然性の音楽に焦点を当て、
「この作品は音楽である
ィベートを仕切った場所、その時に板書する場所、な
のか」をディベートさせることにより考えさせた。し
どがそれぞれ変わってしまい、生徒が向く方向が一定
かし、これは現代音楽の中でも一部の作品であり、他
にならなかった。生徒に注目してほしい箇所で生徒の
にもたくさんの作品が存在している。それらすべてを
体が別の方向に向いていて注目させにくくなっていた。
網羅しなくても、生徒たちにもっと現代音楽に興味を
その都度授業者の方を向くように指示しても、生徒の
持たせたり、音楽に対する考えを深めたりしていくた
中には頭だけ動かして話を聞くような姿や、その頭さ
めに、他の作品に触れる活動を取り入れていくことが
えも動かさずに聞くような姿が見られたため、しっか
必要だと考えられる。
り話していることを伝えるためにも生徒が目を向ける
例えば、生徒が様々な現代音楽作品の中から自身の
方向を、考えて授業の体勢を考えるべきであった。
興味のある作品や作曲家について調べ活動を行って、
他の生徒と共有する活動を行うことで、なかなか普段
・適切な音量の設定
接する機会の少ない現代音楽について自分なりの解釈
プリペアドピアノで演奏している<バッカスの祭>
を持つことができるであろうし、
様々な作品に触れて、
を聴かせた時に、音源がパソコンに取り込んだもので
音楽の幅をより広げることができるであろう。また、
あったため、ボリュームを最大にしても殆どの生徒が
作曲家を絞って、その作品について深く掘り下げて調
聴く事ができない小さい音量であった。CD などでス
べて、その作品に対して作曲家が持っていた意図につ
ピーカー等を利用し、生徒全員がしっかりプリペアド
いて考えることで、より深く音楽について考えること
ピアノの音色を認識することができるように準備を整
ができる。
えておく必要があった。
今回の授業は、生徒が現代音楽への入り口に立った
程度で、
「こういう音楽があったのか」
「音楽をこのよ
・
「無音」
「静寂」の言葉の違い、
「音を楽しむから音楽」
うに捉えている作曲家がいたのか」という、彼らの感
という考え方への指導
性を揺さぶるような活動であった。その揺さぶられた
ディベートの中で生徒が使っている言葉に「無音」
感性を基に、さらに現代音楽への理解を深める活動に
「静寂」という言葉が使われていた。生徒の中では、
すると効果的であろう。
「無音」と「静寂」について言葉の使い分けが特にさ
本実践は「音楽って何?」を改めて見つめることを
れていなく、音のない状態を「無音」と表現している
ねらって行った授業であるが、もう一つ着目しなけれ
生徒がいたり、
「静寂」と表現している生徒がいたよう
ばならない事項があることが見えてきた。それは「聴
に思われる。実際は「無音」と「静寂」では、厳密に
く」ということである。授業の前半で行った「
『4 分 33
いえば、異なる意味を持つので、ディベートの中でそ
秒』は音楽か否か」という項目のなかで議論となった
の言葉の違いを明確にするような指導を入れるべきで
「無音(ないしは静寂、環境音)は音楽であるかどう
あったと思われる。
か」で生徒はこれまで無意識であるがゆえに聞き逃し
また、
「音を楽しむから音楽」という発言が多く見
ていた「音」に対する意識を持った。これはこれまで
られた。これは、
「音楽」という漢字を見て「音を楽し
受動的に捉えていた「聞く」を能動的な「聴く」に意
む」と解釈して使っているのだろうと思われる。しか
識の中で移行したといえる。さらに、ここではジョン・
し、
「音を楽しむから音楽」という考えをそのまま、漢
ケージの『4 分 33 秒』の作品に込めた想いを伝えるこ
字を別々に読んだものを解釈としてよいのか、疑問が
ともその深化に結びついた一因だろう。
残るところであった。この点についても授業者は、的
こういった能動的な「聴く」活動は、その他多くの
確に指導を行う必要があったと思われる。
音楽に対して感じ取り、想像し思考するといった音楽
への主体的な参加に結びついてくる。音楽を感じ取る
5. 今後の展開
ことで生まれる「緊張」や「緩和」といった感覚は音
他の現代音楽作品に触れ、更に音楽に対する考え方を
楽のどの部分で、何故起こるのだろうか。
柔軟にし、認識を広げていくことが必要だと考えられる。
純粋に感じ取った感覚から様々な思考を重ねてい
く活動、取り組みは、主体的な音楽参加によるものに
ジョン・ケージの音楽作品に触れたことで、生徒た
他ならない。
ちは今まで持っていた音楽という概念が大きく変化す
91
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
もっともこういった意識の変化は一朝一夕で身に
つくものではない。根気良く授業の中に取り入れてい
く必要がある。しかし同時にこうした日々の取り組み
が生徒の聴覚を研ぎ澄ましていくだろう。
謝辞
新潟大学教育学研究科
全鋒氏には授業構築や実
施で大変お世話になりました。お礼申し上げます。
文献
・森下修次、三浦勲、清水研作 「12 音技法を用いた
中学校音楽における創作授業の実践」新潟大学教育人
間科学部附属教育総合実践センター研究紀要「教育実
践総合研究」第 2 号 pp. 105-116 (2003)
・
「ジョン・ケージ」
(DVD ULD-312)アップリンク
・John Cage 4’33”(楽譜 No.6777)
・ John Cage
C. F. Peters corp.
Prepared Piano Music Volume 1
1940-47 (楽譜 No.6786a) C. F. Peters corp.
(平成 19 年 3 月 20 日受理)
92
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
「学校インターンシップ」実施報告(平成 17~18 年度)
新潟大学大学院教育学研究科学校インターンシップ委員会編
森田龍義、鈴木 恵、岡野 勉、山崎 健、中村文隆、柴山 直、横山知行
平成 17 年度より、大学院教育学研究科のカリキュラム改革の一環として、
「学校インターンシップ」
を実施している。実施要綱を次に示す。
「学校インターンシップ」実施要綱
1.授業科目の名称、単位数、その他
(1) 授業科目:教育実践総合研究
(2) 講義題目:学校インターンシップ
(3) 開講時期、単位数:通年、2 単位
(4) カリキュラム上の位置付け:研究科共通科目
(5) 担
当:大学院教育学研究科学校インターンシップ委員会
2.対象・条件
教育学研究科の修士課程 1 年次生の希望者で、次の条件をすべて満たす者。
(1) 教育実践に関する研究テーマを、ある程度明確な形で持っていること。(2) 教員免許状取
得者であること。(3) 指導教官の許可が得られていること。
3.目的・内容
(1) 附属幼稚園、小学校、中学校、養護学校における教育・学習活動の実際を経験する。
(2) 研究テーマにもとづき、教育実践に関する認識を深める。
(3) 高度な専門的能力と識見を備えた教師に向けた、今後の自己形成の課題を発見する。
4.単位認定の要件・手続き
(1) 学校インターンシップの活動を、総計 60 時間以上、実施していること。
(2) 上記の活動について、
「活動記録・反省カード」
(活動回数分)
、
「レポート(中間レポートお
よび最終レポート)
」
(年 2~3 回程度)を、一定の内容と水準を備えた形で、作成・提出して
いること。
(3) 「中間報告交流会」
(9 月頃)
、
「最終報告会」
(年度末)に出席し、報告、発言を行うこと。
(4) 上記 3 点による総合的な判断にもとづき、大学および派遣校の指導教員が評価の原案を作成
し、担当委員会に提出する。担当委員会は、提出された原案にもとづいて単位認定を行う。
5.指導教員(大学)
指導教員(大学)は、大学院生および派遣学校との連絡により、活動内容を把握すると同時に、
必要な指導を行う。適宜、派遣校の訪問を実施する(例えば、活動開始時、中間、終了時等)
。
6.担当委員会(略)
平成 17 年度においては 7 名の大学院生が 7 校園において、平成 18 年度においては 12 名の大学院
生が 7 校園において、それぞれ活動を行った。各年度の実施概要および大学院生による活動報告を掲
載する。
93
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
「学校インターンシップ」実施概要(平成 17 年度)
No.
1
2
氏名
古川 早紀
金谷 篤
専攻および
分野・専修
学校教育・
教育心理学
学校教育・
障害児教育
活動の概要
指導教員
実施校
(大学、実
施校)
学年・学級、
教科等
内容
・幼稚園における
発達段階の違い
・幼稚園における
音楽の役割
附属幼稚 大浦容子
園
山口玲子
音楽
附属養護
学校
長澤正樹
牧野 統
・小・中・高等部
での学習の様子
小・中・高等
を学ぶ。
部
・特別支援教室の
活動を学ぶ。
・モジュールスケ
ジューリング期
間における生徒
の学習支援
・教材準備の手伝
い等
3
岩舩 尚貴
教科教育・
国語教育
附属新潟
中学校
堀 竜一
佐藤佐敏
第 1~3 学年
国語
4
長谷川貴久
教科教育・
数学教育
附属新潟
中学校
山田和美
金山光宏
第 3 学年
選択数学
5
吉村 智宏
教科教育・
音楽教育
附属長岡
小学校
田中幸治
伊藤純子
音楽
佐藤哲夫
石塚 崇
・図工の授業実践
を行い、研究課
低学年 3 組、
題を発見する。
第 5 学年
・クラス経営、学
図画・工作
級経営について
学ぶ
6
7
池上 弓子
丸山 葉子
教科教育・
美術教育
教科教育・
美術教育
附属新潟
小学校
新潟市立
内野小学 佐藤哲夫
校
さくら学級
新潟市立
内野中学 佐藤哲夫
校
選択美術
期間
8 月~
9月
10 月~
12 月
12 月
(集中)
6 月~
2月
・ピアノによる音
楽づくり
7 月~
3月
11 月~
3月
註 1.「活動の概要」は、活動開始時点において作成・提出する「『学校インターンシップ』申込書・活動開始報告書」
による。従って、実際の活動内容との間に相違が存在する場合がある。
94
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
インターンシップ活動報告
新潟大学大学院 教育学研究科
学校教育専攻 教育心理学分野
古 川 早 紀
1.応募動機・経歴
今回のインターンシップをやるまでの経歴としては、同大学の教育人間科学部・芸術環境創造過程・
音楽表現コースにおいて中/高等学校・音楽教員免許を取得した。教職関係の授業は、免許取得のため
に最低必要な授業しか受講せず、主に音楽科でのピアノ演奏の授業を中心に受けていた。今回幼稚園
に行くことになった理由としては、学部において小・中・高等学校に接する機会は得られたが、就学
前の幼児と関わることがなかったというのが主な理由である。現在、音楽心理を勉強しているので、
幼稚園という音楽授業がない中で、園児が普段どのように音楽と触れ合っているのか、また、幼稚園
において先生方がどのように園児のために有効的に音楽を用いているのかを観察し、実際に触れてみ
たいと考えた。
教育実習においても、実際の現場での体験は、生徒と直接関われることができるという点で得られ
るものが多かった。今回も、実際の現場に出向き、幼児にも直接関わりたいと考えた。卒業後の進路
は教員志望ではなく、ピアノ講師や、音楽療法という方面での指導者として幼児から大人までのよう
な幅広い年代の人を相手に活動いていきたいと考えているので、学校での授業ではなく、幼児の普段
の様子に触れてみたいと考えた。
2.活動の概要
今回のインターンシップは長岡付属幼稚園において、8月31日(水)~9月2日(金)
、4 日(日)
、
8日(木)の5日間行った。 活動内容は、小・中学校と合同の運動会の練習での補助、予定されてい
た避難訓練において、園児が非難練習のために道路を歩くので、安全への配慮・補助、中越地震の改
修工事のため危険な場所が何箇所あるので、園児が怪我をしないように配慮・補助など、園児が活動
する中での補助が主な活動であった。
なお、今回の日程の決定は、交通費を支給していただけるという話から、支給額を4日間程度まで
なら可能であるという点、幼稚園から提示していただいた日程に合わせたという点から決定した主な
活動概要は次のようである。
8 月31日(水)午前は4歳児・ばら組で過ごした。全園児で運動会のために、
「まつけんサンバ」
「玉入れ」の練習をグラウンドで行った。同時に、振り付け、整列体系、入退場を確認した。機材運
びや、園児の整列・踊りの補助なども行った。この日は、園児は午前のみの日程であるので、おやつ
を食べた後、終わりの挨拶をして帰宅した。その後、まつけんサンバを踊る際、園児が頭につける衣
装を作成した。また、8日に予定されていた避難訓練の際の非難場所である公園に安全確認・道路確
認のために下見を行った。
9月1日(木)午前は、3歳児・さくら組で過ごした。朝の挨拶を済ませた後、全園児で運動会で
の「かけっこ」の練習をグランドで行った。走順・合図があったらゴールまで走るという点を確認し
た。屋外での活動であるので、熱中症予防のための麦茶・機材運の補助をした。給食では、3歳児ク
95
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
ラスと一緒に給食を食べ、手洗い・給食の机・飲み物の準備をし、昼食中に飲み物のパックにストロ
ーがさせない園児などの補助をした。午後は、絵の具を使用し、自由に絵を描いている園児の見回り
をした。時間がたつとそれぞれ好きな遊びを始めるので、絵本を一緒に読んだり、声をかけてくれた
園児の話を聞いたり、道具の取り合いなどで喧嘩をした際の仲介役として話を聞いた。園児帰宅後、
園内の掃除を行った。
9月2日(金)午前は5歳児・もり組で過ごした。小・中学校の児童・生徒と動会練習をした。合
同で行われる入場行進・大玉コロコロの練習をした。もり組に関しては、代表者による選手宣誓・応
援合戦も練習した。多くの生徒、児童、園児がいるので、気が散ってしまう園児などに注意をして整
列の体系の補助をした。また、気温が高かったので、麦茶を持って行き、待機中に園児に配った。給
食は、5歳児クラスで一緒に食べ、手洗い・机の準備・配膳をした。午後は、遊戯室で園児と一緒に
遊んだ。ごっこ遊び、積み木遊びなどそれぞれであるので、見回りながら一緒に遊んだ。
「だっこして」
「見て」という要望が多いので、なるべく多くの園児と接することができるように順番のルールを確
認しながら対応した。終わりの挨拶の際、もり組はそれぞれの園児が当番で担当している生物の世話
をするので、鳥かごの掃除を手伝った。園児帰宅後、図書室の本の整理・園内の掃除をした。
9月4日(日)午前は運動会での補助をした。朝の挨拶の後、安全に気をつけ、グラウンドへ移動
し、必要な道具を運ぶなどした。入場行進・かけっこ・大玉コロコロ・ダンス・玉入れの入退場の補
助や、園児の衣装の配布補助も行った。幼稚園は午前のみ参加であったので、幼稚園に帰っておやつ
のジュースを飲み、終わりの挨拶の後、帰宅した。
9月8日(木)午前は避難訓練を予定していたが、天候が悪かったため延期されたため、ばら組を
中心に各歳の園児と遊んだ。ばら組は今度幼稚園にくるお客様にプレゼントする首飾り作成していた
ので、ホッチキスなど危険が多い作業を手伝った。折り紙を折る、遊戯室で走るなど、年齢を問わず
みんなが同じ空間で遊んでいるので、様々な遊びに加わりながら用具の貸し借りでの喧嘩などの仲介
をした。給食は4歳児クラスで、一緒に手洗い・机の準備、給食配膳を手伝った。食べる際の補助は
必要ないため、隣の席で園児と会話をしながら食べた。午後は天候がよくなってきたので、さくら組
~もり組の順番を交代しながら、外の砂場がある場所などで遊んでいたので、中で遊んでいる園児と
も関わりながら、喧嘩の仲介・出入りの際の足ふきや靴の整理・遊び道具の整理を補助した。園児帰
宅後、園内の掃除・洗濯を手伝った。
3.成果と課題
インターンシップを通して次の二点を観察することができた。第一に、3~5歳のそれぞれの年齢
で、大きな発達段階の違いがあるという点、第二に、幼児は音楽に非常に敏感であるという点である。
特に発達段階の違いについては、予想以上に大きいということが印象的であった。3 歳児では、集団
活動・仲間との付き合いが苦手で自己中心的な行動をとる頻度が高いということが印象強く、割り込
み、おもちゃの取り合いで喧嘩になるなど、頻繁に先生が仲介役となり、問題解決をとる必要がある。
また、友達と遊ぶより、個々に興味のある遊びをする割合が高い。ごっこ遊びも頻繁に行われるが、
個人の興味のある遊びに向かうため、同時に複数のごっこ遊びが存在し、それらが混ざったような形
で遊ぶ。
4歳児は、集団行動ができるようになってきているため、友達同士で遊ぶ頻度が高く、仲間意識が高
かった。先生の話の時に落ち着きがない園児も数名いるが、だいたい聞くことができ、3歳児に比べ、
おもちゃを譲る、片付けるということもスムーズに行うことができていた。しかし、まだ、同時に自
分が話したいことを話す傾向があり、ごっこ遊びについては、男女に分かれて遊ぶことが多く、女の
96
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
子はドレスを着てお姫様遊びをし、男の子は積み木やダンボールなどで家を作っていた。給食の際の
席も自然と男女に分かれ、仲の良い友達同士で座るなど、仲間意識の発達がみられた。5歳児におい
ては、集団行動が可能になり、遊びも具体的になっていた。より男女で分かれて遊ぶ傾向が増し、ご
っこ遊びも、3,4歳児より頻繁に行われていた。赤ちゃん役やお母さん役、お姉さん役などが存在
し、1つの組織のなかで役割を決めて遊ぶなど、具体化していた。昼食時もマナーを守り、静かに待
ち、片付けることができていた。動物の飼育もするようになり、班に分かれて世話をしており、1歳
しか年齢が変わらないが集団行動が4歳児よりも可能であることが印象深かった。年齢が1歳変わる
だけで発達における差が予想以上に大きいことは驚きであった。全体的に「先生見て!!」というよ
うな主張が多いのも印象深いが、5歳児の中には3歳児を気遣う様子も見られ、思いやりの心も発達
しているようであった。
先生方の姿勢も園児の自発的な活動を支え、
より多く経験をさせるために様々
な環境を与え、整えているので遊びの中で学んでいる様子がはっきり観察できた。遊びのための材料
も豊富に用意されており、創造的に遊ぶことができるので、創作するおもちゃも様々であった。
また、幼児と音楽の環境については、3,4,5歳児の各教室にピアノが配置されており、自由に
手を触れることができるようになっていた。ピアノを使ってみんなで歌を歌うことが主な目的である
ようである。園児が遊ぶことも可能であるが、帰りの会の際にみんなで集まって歌を歌うなど、集合
の合図のような働きを持っていた。それぞれ遊んでいる園児を教室に戻し、集合させて帰りの挨拶を
することは容易ではないが、先生がピアノを弾き始めると、園児も集合しなければならないという意
識を持ち、自ら教室で待機する園児がいたのは驚きであった。また、3歳児のクラスでは、集団行動
がまだあまり身についていないためか、集合・待機ということが難しい年齢であると考える。そのよ
うな場合も、音楽に合わせて踊ったり、歌ったりという形で、園児に帰りの挨拶の集合を誘導し、強
制的に集め、注目する時間を増やし、待機させるのではなく、自然に気をひきながら集団行動を指導
しているようであった。遊びの時間においても園児の音への敏感な様子を観察することが出来た。お
遊戯室にはタンバリン・カスタネット・鈴をはじめ、打楽器が豊富に用意されており、音楽を楽しむ
というよりは、音が出ることを楽しんでいるようであった。教えられて学ぶというよりも自らの経験
を通して学びとっていくことは、幼稚園の教育姿勢でもあり、そのような環境が音、音楽、楽器とい
う面にも整えられていた。園児は音に対して非常に敏感であると感じる。音を利用し、集団行動を学
ぶことや、知識・経験を得るというような先生と園児を媒介してくれるような存在であるように感じ
た。曲を演奏するだけでなく、音を鳴らすことに楽しみを感じる、意外な音が出るのが楽しいと感じ
るなど、ただ一緒に楽器を鳴らすだけで園児とコミュニケーションとれたことは非常に嬉しかった。
今後の課題としては、今回の活動においては、行事がある時に参加することができ、普段とは違う
園児の様子も観察できたと感じる。しかし、行事に関係なく普段遊戯室で遊んでいる園児の姿、指導
している先生方の姿に触れることができる時間が少なかったのは残念であった。期間が短いこともあ
るのも要因であると考えられるのが、とにかく実際に幼稚園児と関わってみたいという思いが強く、
免許取得に関係のない授業の中でどのように自分自身で目的を持てば良いのか曖昧であった点も反省
すべきことであると考えている。しかし、現在は卒業後、学校・幼稚園という場ではないが、幼稚園
児と関わる仕事がしたいと考えているので、
園児の普段の様子を観察することができ、
発達の違いや、
音に対する敏感さを直接観察できたことに対して良かったと考えている。まつけんサンバでの衣装作
りにおいても、園児に怪我のないよう、痛みを与えないようと先生方が細かく配慮されている姿など
に触れ、教職につくということに関わらず、将来の役に立ったと感じ、より将来に向けてやらなくて
はならないことや、注意すべき点を確認できて、有効な時間であった。集中的に毎日参加することで、
園児が覚えてくれており、充実感も持つことができたが、長期における園児の成長の様子は観察でき
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
ていないので、今回の実習をきっかけに、行事などがあれば、手伝うことができることを見つけ幼稚
園の様子を観察しに行きたいと考えている。
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
特別支援学校への学校インターンシップ
-特別支援教室への参加を中心に-
新潟大学大学院
学校教育専攻
金
教育学研究科
障害児教育分野
谷
篤
Ⅰ.問題と目的
近年、特殊教育から特別支援教育へのシフトとともに、養護学校のあり方についても活発な議
論がなされている(例えば、名古屋,2003;瀬戸口・安部・北村,2004 など)。それらは、養護
学校が特別支援学校(仮)と名称を変え、地域のセンター的役割を果たすために、具体的に養護
学校がどのような取り組みをしていけばよいのか、また現時点でどのような取り組みをしている
のかが論じられている。
一方、新潟附属養護学校も特別支援教室による地域支援事業を行っている(能登,2005)。こ
の取り組みは、全国に先駆けた取り組みである。
そこで、今回のインターンシップでは、附属養護学校の地域支援事業の一つである特別支援教
室に参加し、実践力を身につけるとともに、特別支援のあり方について学習した。
Ⅱ.方法
1.応募動機
(1)応募動機
近年、専門的な知識や技能を有し、コンサルテーションができる教師の養成が求められている
(松岡・長澤,2004)。N 大学においても、学内施設を使用した、臨床実習の場(チャレンジル
ーム)が設けられているが(松岡・長澤,2004;古田島,2004)、これは、学部学生や大学生学
生、長期研修生(現職教員)に対する、発達障害に関する臨床実習の場として機能している(松
岡・長澤,2004)。平成 17 年度においては、筆者もチャレンジルームにスタッフとして参加し、
実践力向上に努めた。
その他、学部、大学院の授業、研修会、学会などに積極的に参加し、質の高い教師になるため
に努めている。
今回の学校インターンシップ応募動機は、現場で実習することで実践力向上できると考えたか
らである。
また、特別支援学校における地域支援の実態について学ぶことも応募動機の一つである。
(2)参加者
N 大学に通う大学院 1 年次学生である。学部生では、学習社会ネットワーク課程に在籍し、生
涯学習や、社会教育について学んだ。平成 16 年度は、A 市の臨時 TT 職員として、小学校で勤
務した経験がある。教員免許については、中学校社会 1 種を取得している。
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
2.特別支援教室の概要
(1)特別支援教室
N 大学附属養護学校で行われており、一般校の通常学級に在籍している軽度発達障害のある児
童・生徒が通っている。ソーシャルスキルトレーニングを行っている。
(2)指導・生徒
小学生は、4 人 1 グループで、低学年 2 グループ、高学年1グループある。中学生は、個別指
導を行っている。保護者が別室からモニターで授業の様子を観察している。
今回は低学年Bグループの活動に参加した。
(3)保護者、一般校との連携
各活動ごとに、担当職員が参加者の在籍校、保護者当てに、A4 一枚程度の報告書を送付する。
在籍校での様子、指導方法などの把握、特別支援教室での様子、指導などを知らせている。
(4)時間帯
週に 1 度(または、隔週)程度の割合で、午後 2 時から 3 時までの 1 時間行われる。3グルー
プと中学生をローテーションさせている。
(5)スタッフ
特別支援教室担当職員、内地留学生、学生ボランティア、その他ボランティアで構成されてい
る。毎回の活動は 2 名から 4 名程度で行われる。
3.インターンシップ概要
(1)インターンシップのスケジュール
低学年Bグループの活動に参加した。毎回、午後1時 30 分から午後 3 時 30 分くらいまでの活
動であり、準備、事前ミーティング、授業、後片付け、反省会の流れとなっている(表1参照)。
表1.活動のタイムスケジュール
時間
内容
詳細
午後 1 時 30 分
活動準備・活動ミーテ
ビデオセット、教材の準備、授業ミーティング
ィング
(内容・留意点・役割の確認など)
午後 2 時
授業開始
STとして参加、または、別室で観察
午後 3 時
後片付け、授業反省
ビデオ、教材の片付け、授業の反省
(2)参加状況
参加は、直接参加とビデオ分析による参加の2つからなる。直接参加は、平成 17 年 10 月 7
日から平成 18 年 3 月 14 日まで、週に 1 度程度の参加で計 11 回
特別支援教室ではないが研究
会にも参加した。
ビデオ分析による参加は、上記の 11 回に加えて、6 回行われた(表2参照)。
100
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
表2.インターンシップ参加状況
直接参加
参加日
ビデオ分析のみの参加
10 月
7 日、11 日、19 日
11 月
2 日、29 日
12 月
14 日、21 日
1月
20 日
11 日、27 日、31 日
2月
15 日、28 日(低学年 A)
7 日、22 日
3月
3 日、10 日、14 日
18 日
(3)活動内容
・直接参加
STとして参加、または、別室で保護者とともに授業観察した。
・ビデオ分析
毎回の授業での、参加児童の問題行動を分析した。問題行動場面を 1 分くらいにまとめて、
「問
題の起こる状況」
「問題行動」
「その後のスタッフの対応」の3つについて分析した(図1参照)。
また、問題行動が起こらなくするためには、どのような対応が望ましいかを、「問題の起こる
状況」「問題行動」「その後のスタッフの対応」それぞれについて回答した(図2参照)。
これは、G 大学・N 大学と協働で行われている e-learning によつ支援事業の一環として行われ
た(永森正仁・上野真臣・浅井達雄・長澤正樹,2006;長澤,2006)。
相談者入力
2.問題行動の状況
①問題行動が起こる状況
②問題行動
③問題行動への対応
④その効果
いつ、どのような状況で起きま
すか?
どのような問題です
か?
①の問題に対して、今まで
どのように対応してきました
か?
③の対応はどのような効
果がありましたか?
・お話をしている
・寝転がっている
など
・スタッフがお茶会の準
備をしている。
・お茶会の準備をしな
かった
(場所・時間帯・教科、周囲にいる人、
どんな言葉かけに対して、など)
・お茶会の準備の時間
・直前までやっていたかる
たが楽しかった
・いつも、お茶会の準備は
していない
図1.問題行動の状況の一例
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
回答者入力
①問題行動への事前対応
②目標・問題行動
③指導方法
望ましい行動ができるようになるため
に、事前にどのような工夫が必要
か?
問題行動に変わる、望ましい行動は
何か?
望ましい行動ができたときの対応方
法は?
「いっしょにやりましょうよ」など準
備を促す言葉がけをする。
お茶会の準備をする
「ありがとう」など賞賛を与える
問題行動が起こらないようにするた
めに、事前にどのような工夫が必要
か?
問題行動(「2.問題行動の状況」の
②)
問題行動にはどう対応するか?
「いっしょにやりましょうよ」など準
備を促す言葉がけをする。
・お話をしている
・寝転がっている
など
「○○さん、手伝ってください。」
などお願いをしてみる。
図2.回答者入力の一例
Ⅲ.成果
1.直接参加の成果として次の 5 点を挙げる。
(1)支援の仕方、声がけのタイミング、問題行動の対処、授業の進め方、子どもへの話し方、
授業内容について、環境設定など、子どもとのかかわり方を学ぶことができた。(2)問題行動
への対応として、正の強化を用いたアプローチの重要性を実践的に学び、また、子どもの行動を
見ることなど、子どもの見方が変化した。(3)保護者と話す時間を設けることができたことに
より、保護者のニーズ、特別支援に対する考えなどを知ることができた。(4)事前ミーティン
グ、反省会において、MT、ST の役割、ST としてのかかわり方などを学ぶことができた。(5)
また、直接インターンシップに参加しての成果ではないが、特別支援教室に通うことにより、今
後の特別支援教育について(特別支援教室、情緒通級指導教室、コンサルテーション、相談事業
など)、文献による学習をするようになった。
2.ビデオ分析での成果については、以下のことが挙げられる。
問題行動への対応について授業の様子がフィードバックできた。また、毎回の活動を分析する
ことにより、問題行動への視点、子どもの見方を学ぶことができた。
Ⅳ.今後の課題
今後の課題として、問題行動への対処や、指導力、子どもとのかかわり方、うまく活動に導く
技法などが課題として挙げられる。また、特別支援学校の役割についてさらに深めていくことも
必要である。これについては、ボランティアや実習への参加とともに、文献による学習、授業や
学会への積極的な参加によって補っていくことが必要となるだろう。
102
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
Ⅴ.最後に
今回のインターンシップでは、実際に特別支援学校が行っている地域支援事業に触れることが
できた。現在注目されていることが、タイムリーに実習という形で勉強できたことは、非常に効
果的なことだと考える。教育実習はもちろんのこと、今回のように長期的なインターンシップも
実践力を高める上で重要なことである。
参考文献
古田島恵津子・長澤正樹(2004)軽度発達障害のある中学生グループ支援とその有効性―参加
者本人・保護者への意識調査の結果分析から―.日本 LD 学会第 13 回大会発表論文集.314
-315.
瀬戸口裕ニ・安部博志・北村博幸(2004)コーディネーションの実践―養護学校のセンター的
機能.LD 研究,13(3),231-238.
長澤正樹(2006)大学における特別支援教育の支援
新潟大学長澤研究室の取り組み.特別支援
教育フォーラム 2006
永森正仁・上野真臣・浅井達雄・長澤正樹(2006)ICT を用いた特別支援教育実践および事例デ
ータベース構築.電子情報通信学会平成 17 年度大会発表論文集
名古屋学(2003)未来の養護学校を目指して-教育相談活動を通した小学校と養護学校との連
携.発達障害研究,25(2),85-91.
能登宏(2005)新潟大学附属養護学校情緒通級指導教室の実際-長期目標と短期目標の設定と
評価方法について.日本 LD 学会第 14 回大会発表論文集.286-287.
松岡勝彦・長澤正樹(2004)地域への支援.加藤哲文・大石幸二(編)特別支援教育を支える行
動コンサルテーション.学苑社
吉橋哲(2006)サポート教室「スクラム」、どうぞよろしく!
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特別支援教育フォーラム 2006
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
学校インターンシップ最終報告レポート
新潟大学大学院教育学研究科
教科教育専攻国語科教育専修
岩
指導教員:附属新潟中学校
舩
佐藤
尚
貴
佐敏
教諭
1.学校インターンシップ応募の動機
私は東洋大学法学部法律学科を卒業し、今年度より新潟大学大学院教育学研究科教科教
育専攻国語教育専修に進学した。東洋大学での学部生時代・科目等履修生時代には中学校、
高等学校の教育実習を経験したが、どちらも現在の専攻とは異なる社会科での実習参加で
あった。高等学校国語科教師を目指し、本校大学院に進学した私であるが、現場での教科
指導を行ったことは一度もなかったということは、今後教員を目指す上での不安要素の一
つであった。このような背景から学校インターンシップによって国語科の授業実践を行い、
現場の先生方に触れながら多くの経験を積みたいという思いが初めの応募動機である。当
初は、一度も触れたことのない小学校の教育現場を知りたいという気持ちもあり、小学校
でのインターンシップ参加の希望を出していたが、大学指導教員との相談の上、教科指導
の経験を積むということをインターンシップの最大の目的として中学校へと参加希望を変
更した。
2.活動の概要
まず、新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校・佐藤佐敏教諭と打ち合わせをする中で
「お互いに有益な活動にする」というコンセプトを基本に考えて計画を進めた。隔週決ま
った時間だけ活動を行うという形ではなく、教育実習のように集中的に活動するのが望ま
しいという佐藤教諭の提案で、平成 17 年 12 月 5 日(月)から 12 月 16 日(金)までの二
週間にわたって集中的に活動を行った。この期間は附属新潟中学校の「モジュール・スケ
ジューリング(M・S)」の期間となっており、佐藤教諭と T・T を組んで教科指導にあたる
というのが打ち合わせ段階での活動計画であった。M・S とは自学を基本とした授業形態で、
各教科から提示される「学習内容」の習得と追求を目指し、生徒各自が学習計画をたてて、
自分のペースで学習をすすめていくというものである(2 週間 1 人あたり 20 ブロックあり、
例えば英語を 5、国語 2、数学 7、社会 6 というように総数が合うように計画をたてる)。つ
まり、二週間の期間内に、生徒が自らたてた、各教科の学習計画のノルマをこなしていく
というものであるが、その際の教師の主な役割は、自学をする生徒への学習支援及び、生
徒に与えられた課題の添削作業である。
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
今回のインターンシップでは、この M・S を中心としながらも、指導教諭の配慮で現場
における様々な経験をさせていただいた。活動の概要は以下の通りである。
実施期間
平成 17 年 12 月 5 日(月)~平成 17 年 12 月 16 日(金)
活動内容
・指導教諭と T・T を組んで、課題に取り組む生徒の机間指導、課題の添削等、
M・S における指導教諭との協同学習支援。
・朝礼、ホームルーム等への参加、清掃指導、部活動指導など。
・M・S ではなく平常授業の時は、朝テストの採点、授業参観、配布物のコピ
ーなどを行う。
※1)基本的には朝から職員同様出勤し、部活動に参加して一日の流れを終える。しか
し、二週目は附属新潟中学校の入学試験が週末に控えていたため午前放課となる
ことがあった。また、昼食は個人的に持参して教務室内で食事をとっていた。
※2)一週目は私の他に国語科、書道科の学部生がボランティアで M・S に参加してい
たため人手が多く、指導教諭との T・T が成り立っていた。しかし、二週目以降は、
もう一人の国語科の教諭である中村教諭が一年生、私が二年生、佐藤教諭が三年
生、といったように私を含めた三人が分担して各学年を担当するという形になっ
た。
3.成果と今後の課題
成果としてまず第一にあがるのは、やはり現場の中の一人として参加するので教師の仕
事内容の細やかな部分を教育実習よりも深く知ることができた点である。また、M・S にお
ける教師の役割は、生徒の持ってきた課題の添削や学習支援が主となるので自分の国語力
を認識する良い機会にもなった。さらに、教員免許を所持しているためテストの採点など、
教育実習ではできなかったことが経験できたことも貴重であった。しかし、一方で活動が
M・S 中心となったため、当初学校インターンシップの目的としていた「授業実践」を行う
ことができなかった。何度か指導教諭の佐藤教諭とも私の授業実践計画をたてたのだが、
自分の講義の日程では継続的に授業を行うのは難しいという問題から実現することができ
ず、専門教科の指導という点では、当初の活動目的を十分に達成したとは言えない結果と
なった。
4.学校インターンシップにおける問題点と意見
5 月より学校インターンシップの活動を開始するべく、附属新潟中学校に赴いての佐藤教
諭との打ち合わせ、メールでのやり取りを頻繁に行っていたが、大学の講義日程と受け入
れ校の授業日程の調整がかみ合わず、なかなか活動を開始することができなかった。「大学
院生にとっても、受け入れ校にとっても有益な活動にする」という基本コンセプトのもと
で活動の計画を指導教諭からたてていただいたが、結局のところ M・S 期間における短期
集中の1回の活動のみでインターンシップを終える結果となってしまった。また、この期
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
間は、学科の先生方の了解を得、やむなく大学院の講義を欠席させていただいての活動で
あった。学校インターンシップには教育実習のような欠席届があるわけではなく、公欠扱
いにはならない。来年度以降、欠席届が発行され、公欠が認められるようなシステムが作
られれば、年間を通して短期集中で数回にわたって活動を行う場合が増えてくると考える。
また、私が一回の活動のみであったのに対し、学校インターンシップに参加した他の大学
院生の中には定期的に授業を行っている方もいて、人によって活動時間・内容が全く違う
という問題が生じていることも事実である。今後は、学校インターンシップに参加しない
大学院生も含めて、教育実践総合研究という科目の単位認定の基準をある程度明確にして
いくとともに、受け入れ校と大学の更なる連携をはかっていく必要性があるのではないだ
ろうか。
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
「学校インターシップ」にもとづく数学科教材研究
新潟大学大学院教育学研究科
教科教育専攻数学教育専修
長谷川 貴 久
指導教官:新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校 金山 光宏 教諭
1.
「学校インターシップ」の目的
私は、理学部数学科の出身で、第1種の教員免許を持っていながら、教育実習でしか授業経験や他
の先生の授業を見ることが出来なかった。そこで、指導教諭に終日密着することで、現場の学校の実
態を知ることが出来る。
今回の学校インターシップの目的は、
(1) 終日、指導教諭に密着し、教師のあり方について勉強し、自分としての教師像を作り上げる。
(2) プロの授業を見て、TTをすることで、授業についての理解・形式を考える。
(3) (2)を踏まえ、実際に自分が授業をし、反省点や課題点を見つけ、今後の教師生活に役立たせ
る。
主に上記の3つの点について、意識しながらインターシップを行ってきた。
2.内容と方法
(1) 1年の流れ
5月下旬に山田教授・金山教諭・長谷川の3者で打ち合わせをし、6月上旬より毎週金曜日に終日
通うことに決まる。3月10日の最終日までに、附属新潟中学校に30回、実習でお世話になった。
また、授業以外として、終業式・演劇発表会・研究発表会の準備・フォーラム・入試準備・卒業式の
準備などの行事にも参加することができ、貴重な体験をすることができた。授業としては、金山教諭
の授業のTTを中心に、生徒達をサポートをしながら、授業の準備や構想・教材研究、生徒の見取り
などを勉強した(上記目的の(2))。また、選択数学では5時間、1年生の数学(比例)の授業を6時間、
計11時間の授業を担当した(上記目的の(3))。(資料①)
(2) 1日の流れ
基本的には、朝の職員会議の参加に始まり、放課後の部活指導まで参加。時間割は毎週変わるので、
時間やクラスは毎回不定期である。だいたい1日6時間の内、数学の授業は2~3時間、学活が1時
間、選択数学が1時間である。指導教諭の空き時間においては、指導教諭のお手伝い(試験の採点業務・
配布物の印刷等々)や、学年部会にも参加。私が授業を担当するようになってからは、教材研究に時間
をあてることが多かった。また、数学の授業は、1週間空いてしまうので、その間どのような授業を
していたか、授業の流れや教材観を指導していただいた。数学の授業においては、何度か指導教諭が
不在の時に、自習監督を経験することもあった。授業以外の朝学活や給食・清掃は、指導教諭のクラ
スで指導した。放課後は、野球部の部活指導に参加し、ノックや生徒達が怪我をしないように留意を
払いながら指導をした。
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
(3) 担当授業について
1年間で、選択数学の授業を5時間・1年生の数学(比例)の授業を6時間担当した。中身について
は、以下のような授業をやった。
【選択数学(以下の①を2時間、②を3時間、計5時間)】
① マッチ棒に関する数学問題(2時間)
最近テレビでも特集されるマッチ棒問題を取り上げることで、まず興味・関心を持たせる。そこで、
実際に数学に関わっているような問題を取り上げることで、数学的発想力を身につけることをねらい
とする。
1時間目(2005.9.2):インターネットから出題。
2時間目(2005.9.9):マッチ棒の本から課題を探し、実際に生徒達にマッチ棒を配り、操作活動を
通して考えさせた。
② Logo に関する数学問題(3時間)
選択数学なので、授業の内容の応用を取り上げる。コンピューターを使い多角形の外角の性質を調
べ、一般化することをねらいとする。
1時間目(2005.11.25):Logo の説明・使い方。実際に使ってみる。
2時間目(2005.12.2):多角形・星形の規則を見つける。
3時間目(2005.12.9):多角形・星形の規則を一般化する。
③ 1年生数学(比例)の授業(3時間×2クラス)
小学校でも取り扱われている内容を、中学校との違いを明確にし、また身近にある物を取り上げる
ことで、興味・関心を湧きただした。表・式・グラフの3つの視点から見ることができることをねら
いとする。
1時間目(2006.2.10(同日2時間)):時計の長針は、一日に何㎝進むのか?調べる。実際に1周す
る長さを測る。長針の長さを測る。24周分測る。
2時間目(2006.2.13/2.15):前時の課題を式・表・グラフから読み取り、小学校・中学校の比例の
違いを抑える。
3時間目(2006.2.15/2.16):小学校では習わない部分、負の世界について調べる。
3.成果と課題
(1) 全体において
① 成果
・ 教員免許を持って一日体験できることで、教師の仕事に近い仕事ができ、教育実習とは大きく
異なり、採点業務や自習監督、さらには定期テスト監督など、教育実習では経験できなかったこ
とが経験でき、教師という職業をくわしく知ることが出来た。
・ 採点業務をすることによって、生徒達の今の学力状況を把握することもできた。そのことによ
って、授業のTTにおいて、どの分野が弱いのか?どの生徒を重心的に見ればいいのか?どのよ
うな支援をしてあげたらいいのか?ということがわかり、大変良い判断材料となった。
・ 一年間通うことによって、生徒達の成長もわかるほか、生徒達がどのような考えを持っている
のか?短期では読み取れないことも一年間通うことによって読み取ることが出来た。特に1年生
の授業の取り組みについては、1学期と3学期では、大きな変化を見受けることが出来た。
108
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
・ 給食の配膳指導・清掃指導において、通い始めの頃は、生徒達と一緒になって活動している・
手伝っているという方だったが、実習も後半になるにつれて、指導や生徒達を注意する活動がで
きてきた。精神的にも教師としての成長ができたと思う。
② 課題
・ 教育実習と違い、短期集中して通わないので、準備する期間は確保できるもの、大学の講義の
課題との両立が大変だった。
(2) 授業実践において
① 成果と課題
・ 発問の仕方:比例の授業において、1時間目の1クラス目は、こちらが予想した回答が全く出
なかった。しかし、指導教諭との授業後の検討・ご指導をしていただき、その結果2クラス目に
やったときは、少し発問の仕方を変えただけで、予想の回答が出てきた。発問の仕方には十分に
留意を払う必要があると感じた。このことから、金山教諭の発問をノートにまとめ、その後、指
導教諭とその発言に対しての分析をした。
・ 生徒達の授業における活動:生徒達が問題を解くのが活動ではないということ。いかに生徒達
に問題を考えさせられるかが重要だということ。授業構成にあたって、そこが重要だということ
わかった。これとともに、数学的活動を誘発する課題の準備が必要である。
・ 教材観:今日の授業で抑えるべき点(単元分析と単元の本質)は、なんなのか?しっかり抑え
る点。
・ 時間配分:自分が担当した授業において、指導案通り授業が進まなかった。金山教諭の授業を
見ていると、1時間1時間の区切りがよく、授業の時間配分・1時間の授業のメリハリ使い方が
勉強になった。
・ 授業中の評価:教育実習では、評価について全く触れられず、勉強はできなかった。今回実際
に評価をするまでの段階まではいかなかったが、どのように授業中に評価してあげるか、ご指導
をいただき勉強になった。1年生の比例の授業において、自己評価・他者評価・教師評価の3観
点から、どのような評価をするのか、実際に案を出す段階まで出来、ご指導をいただいた。
・ 生徒達には、授業中支援していると、中にはノートを隠してしまう生徒もいた。出来ない恥ず
かしさや私に対しての警戒心から、そういう行動が出てくるのだと思う。そういう生徒に対して、
どのような支援ができるのか?生徒達とのコミュニーケーションも大事だと思われる。また、生
徒達の何人か抽出をし、授業中の様相を見取り、その後指導教諭と分析をした。
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
4.資料(1年間の活動)
月日
曜
時間
主な行事
主な活動(TTの活動以外)
2005/6/3 金
午後
学校インターシップの今後の打ち合わせ。
6/24 金
一日
7/1 金
午後
選択数学の授業に参加。部活動に参加。
7/8 金
午後
選択数学の授業に参加。部活動に参加。
7/15 金
一日
7/22 金
午前
9/2 金
一日
(午後)研修会
(午前)校舎見学。定期試験監督。
(午後)研修会に参加。
(午前)学年部会に参加。定期試験の採点業務。
(午後)学年集会に参加。部活動に参加。
終業式
終業式・大掃除・学年集会・クラス学活に参加。
(午前)午後の選択数学の授業準備。学活見学。
(午後)自習監督。選択数学の授業を担当。
(午前)午後の選択数学の授業準備。学活見学。
9/9 金
一日
(午後)自習監督。選択数学の授業を担当。部活動に
参加。
9/30 金
午前
10/7 金
一日
10/15 土
一日
10/21 金
午後
10/22 土
一日
春の研究論文を推敲。
(午後)研究発表会 (午前)学年の学活授業見学。
の打ち合わせ
演劇発表会
(午後)研究発表会(数学の部)の打ち合わせに参加。
(一日)各学年・各クラスの演劇発表を見学。
(午後)演劇発表の後片づけに参加。
新潟大学教育人間科学部鈴木保高教授の選択数学
の授業を見学。
フォーラム
(朝)来客された方々の車の誘導。
(昼間)フォーラムに参加。
(朝)来客された方々の車の誘導。
10/26 水
一日
研究発表会
(午前)数学の研究授業を見学。授業風景を写真撮
影。
(午後)数学の研究協議会に参加。
11/11 金
午前
教育実習生の数学の授業を見学。
11/25 金
一日
12/2 金
一日
12/9 金
一日
12/12 月
一日
モジュール
12/14 水
午後
モジュール
12/16 金
午前
モジュール
(午前)自習監督。定期試験の採点業務。
(午後)選択数学の授業を担当。学活見学。
(午前)午後の選択数学の授業準備。
(午後)選択数学の授業を担当。学活見学。
(午前)自習プリント答案作り。自習監督。
(午後)選択数学の授業を担当。
(午前)道徳授業見学。
(一日)生徒達の数学の個別学習の支援。
生徒達の数学の個別学習の支援。
生徒達の数学の個別学習の支援。テスト監督。数学
小テストの採点業務。
110
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
12/17 土
一日
入試
休み時間の廊下巡視。受験生を面接室までの案内。
(午前)2/10の授業の教材研究。学年学活に参
2006/1/27 金
一日
加。
(午後)テスト監督。
(午前)比例の授業を担当。学年集会に参加。
2/10 金
一日
(午後)比例の授業を担当。大学指導教官と授業の反
省会。
2/13 月
午後
比例の授業を担当。
2/15 水
午後
比例の授業を担当。
2/16 木
午後
比例の授業を担当。
2/24 金
一日
3/3 金
一日
3/10 金
一日
(午前)学活の授業見学。
(午後)選択数学の授業の自習監督。部活動に参加。
卒業式前日
(午前)MT再テスト採点。学活の授業に参加。
(午後)卒業式の準備に参加し、清掃監督。
(午前)学活の授業に参加。学活授業研究見学。
(午後)配属学級での、最後の挨拶。
111
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
学校インターンシップを通した成果と課題
新潟大学大学院教育学研究科
教科教育専攻 音楽教育専修
吉 村 智 宏
配属校:附属長岡小学校
指導教員:伊藤純子教諭
1. 学校インターンシップを希望した理由
平成 17 年 6 月より新潟大学教育人間科学部附属長岡小学校1で定期的にインターンシップ活動
を行ってきた。本インターンシップは学部における現場とのつながりと一線を画す。それは学部
の場合、特に教育実習に代表されるパイプ2は、教員を志す学生が生の教育現場を感じる、経験す
るといった意味合いが強いことに対し、大学院のそれはむしろ実践研究という視点の意味合いが
強い。それは院で学習した理論やその上に打ち立てられた実践と現場とをつなぎ合わせ、そして
検証するといった過程であり、考察である。また同時にこういった活動が研究の指針はもとより
今後の活動の指針にもなってくると言えよう。
ここでは附属長岡小学校におけるインターンシップ活動を通した成果と課題に付いて考察を行
う。
2.活動の内容
本インターンシップの活動はおおよそ以下の内容である。またそれぞれの詳細は次の「2-1.活動
内容の詳細」に挙げる。
① 音楽授業の観察と補助
② 音楽室の掲示物の製作及び整頓
③ 給食・清掃指導の補助
④ 平成 17 年 11 月 26 日(土)に実施された校内音楽会のアシスタント及び合唱伴奏
⑤ 平成 18 年 2 月 22 日(水)、23 日(木)に行われた研究授業
2-1.活動内容の詳細
(ア) 音楽授業の観察と補助
・ 伊藤純子教諭の授業の観察
・ グループ、個人学習時の歌唱、器楽指導
1
以下 附属長岡小学校
吉村が学部時代に行ってきた現場実習は参考までに次の通りである。
・ 1 年次…音楽科学生による小学校訪問演奏
・ 2 年次…小学校訪問演奏、新潟市立西内野小学校学習支援ボランティア
・ 3 年次…小学校訪問演奏、西内野小学校学習支援ボランティア、同小学校器楽部指導
・ 4 年次…小中学校訪問演奏会、西内野小学校器楽部指導
又、2 年次に附属長岡小学校観察実習、3 年次に新潟市立東中の山小学校、坂井輪小学校、4 年次には附属長岡中
学校(音楽)で教育実習を行っている。
2
112
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
・ 合唱伴奏
(イ) 音楽室の掲示物の製作及び整頓
・ 小学校で学習する楽典用語の掲示物の製作
・ リコーダーの運指表、国内外の音楽史上の作曲家の掲示や整頓
(ウ) 給食・清掃指導の補助
・ ⑤の研究授業の対象学級(4-2)にて給食及び給食指導の補助
・ 音楽室前の清掃及び清掃指導の補助
(エ) 平成 17 年 11 月 26 日(土)に実施された校内音楽会のアシスタント及び合唱伴奏
・ 4 学年全体合唱『音楽物語 ごんぎつね』の伴奏
・ 会場セッティングの補助員
(オ) 平成 18 年 2 月 22 日(水)、23 日(木)に行われた研究授業
・ 2 月 22 日(水) 4 校時(11:35~12:20)
、23 日(木) 6 校時(14:45~15:30)の全 2 時間
で行われた。
2-2.インターンシップ実施記録
本インターンシップ実施日、時間及び内容は以下である。尚、活動内容の番号は本レジュメ「2.
インターンシップの活動内容」の番号と対応させてある。
実施日
活動時間
活動内容
平成 17 年 6 月 6 日(木)
16:30~17:30
インターンシップ打ち合わせ
同年
7 月 7 日(木)
全日
①、③
同年
10 月 3 日(月)
全日
①、③
同年
10 月 12 日(水)
全日
①、③
同年
10 月 31 日(月)
全日
①、②、③
同年
11 月 8 日(火)
9:30~15:00
①
同年
11 月 24 日(木)
全日
①、③
同年
11 月 25 日(金)
午前
①
同年
11 月 26 日(土)
午前
④
平成 18 年 2 月 22 日(水)
11:00~12:50
⑤
2 月 23 日(木)
14:00~16:00
⑤
同年
3.インターンシップを通した成果と課題
本インターンシップをするにあたってその形式を「学級専攻」にするか「教科専攻」にするか
の選択が必要であった。
これはもともと私は小学校の教員を目指していることもあり、
児童の様々
な場面に触れられる「学級専攻」を選ぶことも考えられたのだが、教育実習その他の現場実習等
で多少でも経験しており、さらには 1 の志望動機でも述べたように当初から大学院で学習した理
論や実践を現場とつなぐことが目的としてあったため、
「教科専攻」を選択することにした。従っ
てインターンシップの期間の殆どを音楽室で過ごし、伊藤 純子教諭3の授業の観察、補助を行っ
た。
3
平成 17 年度現在
113
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
3-1.成果
本インターンシップを通した成果として次の点が挙げられる。
(1) 1 時間の音楽授業における構造的視点の学習
(2) 伊藤教諭の実践する論と授業の学習
(3) (2)と自分の考える実践との比較検討
(4) 研究授業の実践
(4)の研究授業4については、私の大学院の研究内容である器楽演奏との関連で行った
よって先の(1)~(3)は(4)に結びつくに必要な過程であると言える。
又、こういった成果として挙げられた過程は我々教職経験が無い大学院生にとっては重要な意
味を持つ。それは自分が考える授業実践はどのようにしたら成り立つのだろうかという具体的な
手法を指導教諭の実践から参考にするといったことや、さらには実践するにあたっての論をどの
ように立てていけばよいのか、またはそれと指導教諭のそれとはどう関連してくるのかというこ
とをある程度の期間を持って学習していくということである。すなわち我々にとって指導教諭の
実践と論を学習する事は必須とも言える。
これら成果を挙げる上で一定期間の観察・補助の他、指導教諭との連携や話し合いを通した自
分の学習のフィードバック、記録等が重要である。
3-2.課題
又、先で挙げた成果に達するまでに特筆すべき課題が 3-1 の(2)、(3)との関わりの中で生じた。
それは、
授業実践をするにあたって立てるべき手法と論が指導教諭のそれとなんら変わりないも
のになりかねないということである。
私の場合、指導教諭の実践の観察、補助を定期的に行ってきたのだがそれと同時に自分の実
践と論を考察していた。しかし、自分の実践と論を進めていく中で起こるある種の行き詰まりが
解決できず、
逃げるようにして指導教諭の長年の経験と研究から確立された体系のもと立てられ
たそれに飛びついたと言う経緯がある。具体的には当初想定していた授業案は「情景を思い浮か
べて」というピアノを教材として用いた実践であった。しかし、何故ピアノにこだわる必要があ
るのか、また全ての児童に十分な学習時間が確保できる5のか、何を持って評価を決定するのか
という点についての解答が自分では見出せずにいた。
そういった問題点を含みながら指導教諭の
論や実践を学習し、理解していくに従って、自分がこれまで立ててきたものを否定し教諭のそれ
に乗り移ったと言う事である。
私の場合これを打破するためにある一定期間附属長岡小をはなれ大学院で指導教官の助言の
もと再び研究、考察を行った。これは現場を離れ今一度自分の論や実践の真意を確かめることに
非常に有効であった。というのは、一度学習者を自分の立場に置き換え器楽演奏について立ち返
ることができたと言うことである。
もともと器楽学習に対して感じていた問題点や課題は何であ
ったのか、
またそれに対して自分の場合はどのように解決していったのかということを今一度見
つめなおし、それを 1 つの授業案として立てることに結びついた。
4
5
題材名「深めよう、私たちの器楽表現」
教材のピアノが音楽室に一台しかないことによる弊害
114
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
ここで大切なことは、我々のような院生を対象とした場合、現場の指導教諭の論と実践を学
習すると同時に自分のそれとの擦り合わせを行う事である。
これは避けては通れないと言えよう。
しかし同時に先に示したような問題点も必然的に起こることが考えられ、
大学とのパイプが必要
となってくる。
4.意見、要望
3-2 に関連することであるが、実習先の活動を大学院の研究でフィードバックできるような環
境を作ることが必要と思われる。
115
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
学校インターンシップを終えて
新潟大学大学院教育学研究科
教科教育専攻美術教育専修
池 上 弓 子
配属校:附属新潟小学校低学年 3 組
指導教員:石塚 崇教諭
1. 応募動機
インターンシップの応募動機は主に以下の3点であった。まず,教育実習より長期に渡って子ども
達と接し,広い視野で子どものたちの活動を観察することで一つの事に偏りなく子ども達の考え方や
思いを見つけ出したかったからである。2つ目は,学校やクラスの行事に多く参加して,それらを運
営する教師の様子を知りたかったからである。3つ目は,来年度の修了論文に向けた研究テーマ(図
工・国際理解に関する)を探りたかったからである。
これまでにも子どもと接した機会や,教育実習の経験があった。私の専門は美術教育であるので,
小学生の図工や造形活動,中学生の美術を中心に子どもと接してきた。学校現場や子ども対象の活動
に関する過去の経験は以下の通りである。
(1)学校教育課程美術教育に在籍中,1年次の夏季休業期間,出身幼稚園(上越市)にて一ヶ月ボ
ランティア活動を実施した。小学校・中学校の教職免許を取得するつもりだったので,2年生になっ
てからある観察実習の前に,幼児教育について知っておきたいと思い,お願いして受け入れていただ
いた。午前中園にいて,幼児の世話係や遊び相手を手伝った。体育館で遊ぶ子どもたちを見ていたり,
一緒に遊んだり,教室での粘土やお絵描きを一緒にしたり,ままごとをしたりした。ブドウ狩り遠足
などの課外学習も同行した。それまでバッタなどの昆虫に抵抗感があったが,子どもたちと一緒に捕
まえることで慣れることができた。
(2)2年次に附属長岡小学校の2年生クラスで1週間の観察実習を行った。初めて小学校の教育現
場に入るとともに,子どもの学習の様子や思考,人間関係などについて観察することができた。
(3)3年次の春季教育実習において附属新潟小学校の2年生クラスで2週間の教育実習を行った。
音楽以外の教科を実習した。図工では,もう一人の実習生と TT で2時間続きの授業をした。様々な
素材を使って「見たこともない宇宙の生物」づくりをした。教室をいっぱい使って展示し,鑑賞も行
った。秋季教育実習では,東青山小学校の1年生クラスで2週間の教育実習を行った。各教科を実習。
図工では,大きな段ボールを使って,クラス全員の子どもが入ることの出来るくらい大きな,クラス
で一つの「みんなのお城(基地)
」づくりを行った。
(4)3年次に芸術環境創造過程造形表現コースと秋に行ったアートイベント第 2 回「うちの DE ア
ート」において,3つの活動を行った。1つは,美術教育のゼミ生で行った内野中学校での授業実践
である。5月頃から10月にかけて内野中学校の三年生を対象に美術の授業実践を行った。中学生の
作品は,内野の神社に展示された。実際に授業をしたり,作品づくりのアドバイスをしたりした。中
学生の前に立つことが初めてだったが良い経験になった。長期間だったので,生徒と交流を持つこと
ができた。2 つ目は,内野小学校生対象のワークショップである。小学生8名ほどと内野町を歩いて
まわって,面白い景色を見つけて写真に撮っていくウォークラリーのような活動である。撮った写真
116
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
を子どもたちと行う活動もした。子どもが住む町を子どもの視線から見る良い機会となった。3 つ目
は,内野住民対象の陶芸ワークショップである。小・中学生に限らず,陶芸の補助をおこなった。
(5)3年次の秋,美術の他のゼミ主催の,豊栄の早通りの子ども対象のスタンプラリーワークショ
ップの補助を行った。地図をもとに親子と一緒に町を歩いてスタンプラリーをするものである。団地
に住んだり,団地で遊んだりした経験がなかったので,子どもたちに連れられ歩いて団地の遊び場を
見る良い機会になった。
(6)3年次の冬,附属新潟小学校の文化祭で図工ワークショップを,美術教育ゼミ生で行った。身
近な材料を使った動くおもちゃづくりを行った。
(7)
4年次春季教育実習において長岡の宮内中学校2年生クラスで2週間の教育実習を行った。
1,
2年生の美術の授業を実習。色画用紙を使って,仕掛けが付いた楽しい名刺づくりを行った。教師側
に立って中学生と接すると,
生徒どうしの人間関係に気を配らなければならない教師の立場がわかり,
ここで初めて,中学校の学級経営・生徒指導の厳しさを知った。
(8)4年次の秋,内野小学校の文化祭で図工ワークショップを美術教育ゼミ生で担当し,はんこづ
くりとコマづくりを行った。
(9)大学院 1 年次,第3回「うちの DE アート」の内野小学校で,土鈴づくりワークショップの補
助を行った。
(10)大学院1年次の1月,万代島美術館での絵本づくりワークショップを行った。親子対象に,
簡単な仕掛け絵本づくりを行った。子どものために親がこのような企画に積極的に応募してくること
に驚き,親も子どもと一緒に楽しく活動する様子を見ることができた。また,幼稚園の教師が教材に
使おうと,真剣に取り組んでいる様子が見られ,いろいろなところから良い教材を選ぼうとしている
現場の教師の姿も印象的だった。
(11)大学院1年次の3月,小針中学校での授業実践を行った。小針中学校1年生一クラスの美術
の授業4時間をゼミ生で実施した。フェイスペインティングをする授業を行った。
以上の図工・美術の実践は,既成のものでなく,考案して活動内容や活動を決めたものである。実
習でも普段の活動とは違う内容の実践を行わせてもらった。そのため,対象にする子どもや団体にあ
わせて,様々な造形活動の実施を経験することができた。
学校教育課程美術教育に在籍中に取得した免許は,小学校一種,中学校美術一種,高校美術,中学
校英語二種である。
2. 活動概要
11/10(木)から 2/3(金)までの期間,計 10 回の訪問をした。活動日は,11/10(木)午前中,11
/14(月)
,11/24(木)午前中,12/1(木)
,12/5(月)
,12/8(木)
,12/12(月)午前中,
12/15(木)午後,2/2(木)
,2/3(金)である。
配属クラスは,附属新潟小学校低学年3組で,1 年生 8 人,2年生7人のクラスである。
朝から夕方まで,クラス担任の石塚先生の補助,図画工作授業などの実施をした。休み時間や放課
後,給食や掃除の時間も子どもと過ごすよう心掛けた。また,長期に渡って訪問したことで,季節に
合わせた題材や行事を体験することができた。
授業での活動は,担任の先生の手が足りない部分を補助したり,子どもの仲間に入って一緒に授業
活動を行ったりする「参加・補助する授業」と,担当の先生なしに子どもの前に立って授業を行う「担
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
当する授業」にわけることができる。
「参加・補助した授業」は,音楽,体育,図工,生活,音楽,コ
ンピュータの授業である。授業の他には,ミュージックステーション(音楽発表会)
,低3フェスティ
バル(他学年の複式学級・養護学校の子どもを招く出し物イベント)
,研究授業,研究会に参加し,補
助を行った。
「担当した授業」
は,図工の授業,英語の時間,国語の自習,作文の時間,読み聞かせの時間である。
3. 成果
今回のインターンシップにおいて自身のためになった,今後に生かしたいと思うことができた成果
を3つ挙げる。1つ目は,子ども一人一人の学校生活を満遍なく見ることができたことである。今ま
での実習ではなかなかできなかったことである。
配属になったクラスが少人数だったので,15 人全員の生活態度や授業態度,感情表現の様子や友達
とのトラブル,ちょっとしたつぶやきなどを見てとることができた。例えば,子どもが休み時間に遊
ぶエリアがほぼ全員同じなので,休み時間中に起きたトラブルが原因で後の授業まで口論を続けてい
る場合が多く,それぞれが争いや友達を思いやる気持ちをどんなふうに考えているのかを毎回見るこ
とができた。また,授業中の発言も 40 人クラスより多くの子どものものを把握でき,机間巡視して
もどこにつまずいているか,何に悩んでいるかを確認することができた。
子どもの様々な場面を見ることで,
「この子どもはいつもダイナミックだな。
」とか「口は悪いしち
ょっかいは出すけれど,とても繊細なんだな。
」とか「ボーっとしているようだけれど芸術的感性は素
晴らしいものを秘めているんだな!」などと理解することができた。その子どもの様子を担任の先生
と話をして,授業での発言や図工での作品を参考に理解度や達成度を確認しあうことができた。そこ
からその後の働きかけを相談することで,新しい課題が見えた。また,長期の訪問で,子どもの成長
も見受けることができた。
複式ならではの様子として,子どもの様々な発達は学年に比例しているけれど程度や領域はそれぞ
れであるということを見ることができた。単なる学年で子どもの発達を判断しがちであったが,一概
に決めてはいけないということがわかった。
2つ目は,図工の授業の経験を重ねることができたことである。
図工では,①簡単な形を何かに見立てて絵を描く(1 時間)
,②簡単な形を切り貼りして開閉機能(し
かけ)の付いた半立体作品を作る(3 時間)
,という授業を行った。これらの授業では,一つの簡単な
形を様々なものに見立てることで広い見方とひらめきを引き出すことがねらいだった。
最初は何があるか分からない,思いつかないといった表情だったが,手を動かしていくごとに頭が
柔らかくなって,
「自分しか思いつかないようなアイディアを」という呼びかけに対して「あ!いいの
思いついた!」と次々見立てていった。
とにかくいっぱい思いついたものをどんどん描いていく子ども,
丁寧に色付けしていく子どもなど,
自分にあったペースで作品作りを進められるよう,たくさんの時間を図工に割り当てていただいた。
教育実習だと指導案に書いたねらいどおりに授業を進行して,焦って終わってしまうことが多く,本
当に子どもの表現の幅が広がったのだろうかと疑問に思って終わってしまうことが多かった。
今回は,
実習というプレッシャーもあまり無く,冷静に授業ができ,一つの決まった型を教えるのではなく,
子どもが自ら考え出し,思いつくように授業を進めることができた。その結果,私自身びっくりする
ほど,いろいろなアイディアが出てきて,回を重ねるごとに子どもの表現の幅の広がりを見ることが
できた。
118
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
また,完成した作品を鑑賞する時に行う「インタビュー」は参考になった。友達同士作品の良いと
ころを聞いたり,感想を言ったりするものである。活動しっぱなしにせず,自分の作品に愛着を持っ
たり,鑑賞することの楽しさを知ったりすることができると感じた。
3つ目は,教師の子どもと向き合う姿である。授業時間に教師が子ども達にどのように接するかと
いうのは,教育実習でもたくさん見てきた。悪いことはしっかり叱る,楽しく分かるように授業をす
る,みんなの意見をたくさん聞いて分かり合うなどである。今回の訪問では,一緒に大縄跳びの成功
を大いに喜ぶ,ミュージックステーションを盛り上げるために体を張る,出来ないことや失敗を泣い
ていてもしょうがないと熱く語るなど,先生方が真剣に子どもと向き合っている姿が多く見られた。
子どもにとって教師は,教科の先生というだけではない。大きな声を張り上げたり,優しく向き合っ
たりするだけが先生ではないことを改めて感じた。
4. 今後の課題
今までの教育実習や,様々なところで行ったワークショップにおいて,その活動の評価をすること
は全く無かった。今回,評価項目を設けて評価をしようとしたが,評価の項目や段階を性格に設定で
きず,あいまいなものになってしまった。今後授業をする際は,授業案を作る段階で評価の項目をい
くつか具体的に挙げていきたい。
また,今回の訪問では研究授業や研究会が多くあり,
「題材のねらいは何なのか。
」
「この題材やこの
素材,この形態で子どもたちは,得るべきものを得るのか。
」
「図工は楽しいだけの教科なのか。
」など,
図工について深く考えさせられる機会が多かった。適当に考えてやらせておけば成り立つのが図工だ
と考えられがちだが,子どもは適当に作るのではない。自分の作る作品に向き合っている。手を動か
していなくても,どうしたら自分の思い通りになるか構想をめぐらしている。作りながらもバランス
119
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
を考えたり,納得できるようなものにしようとしたりしている。できない時,すぐ教えるのではなく
試させることで子ども自身が気付く。
出来上がった作品からも,
子どもの性格や気持がにじみ出るし,
感想やうまくいった事などを聞けば意外な答えも返ってくる。今回は,図工が持つこのような良さや
特徴を実感できた。これらを踏まえ,今後も訪問を続けて子どもに接する中でヒントを得ながら実践
を行っていき,研究の参考にしていきたい。
120
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
教育実践総合研究 報告書
新潟大学大学院教育学研究科
教科教育専攻美術教育専修
丸 山 葉 子
実施校:新潟市立内野小学校、同内野中学校
1.応募動機
「軽度発達障害」という言葉が世間に認知され始めて間もない頃、
「軽度の知的障害」と言われた中
学生女子の家庭教師をすることになった。数年間その生徒の家庭教師を続けてきた先生は、
「英単語は
基本的に4文字以上覚えられない、文章問題は小学生レベルのものも解くことができない。例えば
『100 円のノートと 50 円の消しゴムを買って、500 円出しました。おつりはいくらでしょう』といっ
た問題は解けない。軽度の知的障害があるようだ」と言った。私が実際にその生徒の勉強を見始める
と、彼女は大好きなモーニング娘。の名前は全員言える、文字は下手だが中学生に流行の折り方で手
紙を折れる、編み物はできる等、一概に「知的障害」とは言えないことが分かった。私が達した結論
は「知的障害ではなく、学習障害(LD)である」ということだった。そこで私は「軽度発達障害」
「広
汎性」
「多動(ADHD)
」といった言葉に興味を持った。
また美術科では新潟市内野町において「うちの DE アート」という地域密着型アートプロジェクト
を隔年で行っており、大学3年次より内野中学校で約半年間選択美術の授業を受け持ち作品制作を行
った。
「内野」という町により密接に関わりたいと思うようになった。
その折、大学4年次に、
「学習支援ボランティア」の募集校に内野小学校特殊学級があった。小学
校と具体的に関わりを持ったことがまだ無かったので、内野小学校さくら学級へのボランティアを希
望した。
この期間は1年間であったが、
その後も自分の意思でさくらへのボランティアを続けている。
よってこの自分の経験を活かしたく、学校インターンシップを内野小学校にお願いした。
2005 年度には、第3回「うちの DE アート」があり、再度内野中学校の選択美術を受け持つこと
になった。活動内容を全て自分たちで決め、中学校に打診し、5月から内野の風景を自分たちの視点
で切り取る「切り絵」の授業を行うことなり、こちらも学校インターンシップの活動とした。
2.活動の概要
(1) 内野小学校
特別支援学級「さくら学級」1組(知的障害)教諭1名、介助士2名、週二回 9:00~13:30
9:15~9:30
1時間目、朝の会を行う。
(児童登校はおおよそ9時程度まで)挨拶、月の歌、
出席確認、先生のお話等。
司会は日直の児童が行う。挨拶や出席確認は歌や手遊びを交えて行う。補助が
必要な児童には、適宜行う。
9:30~10:15
2時間目国語。
「まいにちぷりんと」
(その日の時間割)を書く。先生からOK
が出た後、自分でファイルに閉じる。連絡欄があり、これで保護者とのやりと
りも行う。プリント記入後、各自国語や算数、作業などを行う。
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
国語:発達段階に応じてひらがな、カタカナ、漢字の練習をする。児童によっ
ては日記を書く。文章を自分で考えるのが難しい児童は、前日の出来事などを
聞き、こちらで下書きをしたものを清書させる。
算数:足し算、引き算などが主。発達段階が高い児童は筆算、繰り上がり、繰
り下がりのある計算など。文章題ができる児童はあまりいない。
作業:字が書けない児童は、
「小さい穴にビーズを入れる」
「紐に穴のあいたブ
ロックを通す」
「知育玩具を使う」
「カードゲーム」などの作業を行う。
10:15~10:45
休み時間。普通は 20 分だけの休み時間だが、そのときの児童の状態や予定など
に合わせて延長する場合が多い。
「プレイルーム」というすべり台やトランポリ
ンがある教室で多くの児童は過ごす。教室に残ってままごとをしたり、本を読
む児童もいる。プレイルームに常備されている遊具は、すべり台(2種類)
、ト
ランポリン、三輪車(大人気)
、ボール大、ボール小、蛇腹状のトンネル等。先
生方はこのときに交代で休憩を取る。
10:45~11:30
3時間目。
11:40~12:15
4時間目。
12:15~13:00
給食。給食当番は、それが可能な児童が行う。先生方が盛り付けをし、それを
お盆に乗せて児童が運ぶ。
偏食がある児童は、全てを最初から与えるのではなく、
「これを食べたら次は●
●さんが好きなもの」といったように、完食できるように食事が与えられる。
13:00~13:30
昼休み。
13:30 に1年生と低学年の一部が下校する。家庭の都合や児童の発達段階に応
ずる。
13:30~14:15
5時間目算数。2時間目と同様プリント学習や、ビデオを見るなど様々。
14:30~
児童下校。家庭の都合でもう少し遅い場合もある。
1組(知的障害)
2組(情緒障害)
A 児:1年生 染色体異常
I 児:1年生 自閉症 明瞭な言語
B 児:2年生 軽度発達障害、LD
J 児:2年生 自閉症 明瞭な言語
C 児:3年生 軽度発達障害
K 児:2年生 自閉症 寡黙
D 児:5年生 知的障害
L 児:2年生 自閉症 重度
E 児:5年生 軽度発達障害
M 児:4年生 自閉症
F 児:6年生 染色体異常
N 児:5年生 自閉症
G 児:6年生 ダウン症
O 児:6年生 アスペルガー
H 児:6年生 脳性麻痺(知的障害・肢体不自由)
P 児:6年生 アスペルガー(不登校)
内野小学校では、軽度発達障害の児童が多く、本来ならば2組に行くはずの児童も人数の都合で1
組に所属している。
私は大体9時前後に登校、昼過ぎまでボランティアに参加している。活動は、学習時の補助、児童
との遊び、移動時の引率、交流学級への引率・補助、行事ごとの補助等である。それとは別に、2005
122
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
年は「造形クラブ」の外部講師を勤めた。
▲2005 年運動会
▲造形クラブ
▲図画工作
【学習補助】
大人数への指示が上手く聞けない児童や、集中力が途切れがちな児童について、一緒にプリント学
習を行った。個別の指示はわかる場合が多い。多くが個別学習なので、マンツーマンで補助を行った。
【児童との遊び】
「本を読んで」
「カルタしよう」といった児童と一緒に遊んだ。また高いところに昇りたがる児童な
どは危険がないように遊ぶ際も気をつけていた。
【引率】
所属する交流学級の授業に一緒に参加した。また学年ごとに写真撮影や音楽発表会の練習があると
きには連れて行った。
全校朝会、卒業式などでは交流学級の並びに参加する児童についた。大人数でパニックになったり
大声が苦手な児童へは、耳を塞いだり「もう少し我慢しよう」などの声掛けを行った。
3.成果と課題
実際の現場に参加したことにより、先生方の授業の手腕を拝見したり、保護者とのやりとりや児童
の健康面への配慮を詳しく知ることができた。希望先が特殊学級(現特別支援学級)だったため、そ
れに付随する施設(はまなす養護、教育センター等)についても知ることができた。近くにある学童
保育ひまわりや、うちの桜園のお年寄りの方々とも交流することができ、学校内外と関わる機会が増
えた。またそういった機関との連携を見ることができ、自分が教師になったときにどのように関わっ
ていったらよいのかの指針にもなった。保護者の方々とお話する機会もあり、教育実習などではでき
ない経験であった。
今年度は実際に自分が授業を受け持つことはなかったが、学級内では来年度図画工作の授業を何度
か担当したいと考えている。
2006 年はさくら2組の担当となり、週1回ボランティアに参加することになった。大学4年から続
けてきたさくらへのボランティアも今年で最後となるが、悔いのないよう児童と関わり、先生方から
様々なことを教わっていきたい。
4.意見、要望
教育実習以外、機会がなければ卒業するまで現場と関わらない場合もある。対児童生徒は勿論のこ
と、実際に教員になったときに生きる経験として学校という機関がどのように動いているのか、どこ
と連動しているのかを幅広く知るためにも、学校インターンシップは今後も必要であると考える。だ
123
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
が実際には通勤手段や時間、受入校の状況により難しい場合もあるとわかった。私はたまたまつなが
りがあった市立学校で行えたが、附属長岡など継続的な勤務が難しい場所もある。もし可能であるな
ら、大学近隣の小中学校ともつながりを作れたら良いのではないだろうか。
また今年度から始まったものなので試行錯誤の段階だが、活動発表を大学院だけではなく教育人間
科学部全体で学部生に対しても行い、教育への意識の高まりにもなればよいのではないだろうか。
124
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
「学校インターンシップ」実施概要(平成 18 年度)
専攻および
No.
氏名
指導教員
分野・専修
学校教育・
1
2
3
活動の概要
実施校
(大学、実施校)
附属新潟中
教科等
松井 賢二
柴田 雅子
内容
中学校における進路指導
7月
の実践
~3月
生徒の関心・意欲を高め
5月
進路指導
学校教育学
学校
中村 雅芳
学校教育・
附属新潟中
高木 幸子
堀 希代子*
家庭科
学校教育学
学校
逸見 東子
るための指導援助
~3月
学校教育・
新潟市立
相庭 和彦
日本と中国の小学校教育
11 月
学校教育学
小針小学校
知本 恵子
の比較研究
~2月
学校教育・
附属養護
長澤 正樹
邵 紅玉**
養護学校特別支援教室の
4
期間
中村 美紀
特別支援
障害児教育
学校
運営・学習活動の実際を
牧野 統
10 月
~3月
経験する。
教科教育・
5
6
児玉 康弘
教育実践力の向上
社会科教育
学校
倉澤 秀典
教科教育・
附属新潟中
山田 和美
竹内 善紀
教科教育・
学校
渡部 智和
新潟市立
和田 信哉
細井 俊明
中学校数学科における授
4月
業と教材開発の研究
~3月
数学科の授業法の学習,
5月
教員の補助等
~
数学
数学教育
小針中学校
魚野 潤
養護学校における育・学
教科教育・
8
附属養護
丹治 嘉彦
杉山佐和子
習活動の実際を経験す
美術教育
学校
4月
~3月
数学
数学教育
7
附属新潟中
丸山 信昭
牧野 統
1月
~2月
る。
授業補助
教科教育・
9
附属長岡中
山崎 健
相田 洋輔
保健体育
保健体育
学校
教員になるための指導力
山岸 力
10 月
~3月
の向上
体育授業の観察・参加を
教科教育・
10
附属新潟中
滝澤かほる
中川 俊
体育
保健体育
学校
通して指導技術・知識を
丸山 明生
12 月
~
深める。
教科教育・
11
滝澤かほる
授業補助
10 月
修士論文データ収集
~3月
体育
保健体育
教科教育・
12
附属新潟小
福島 慎也
学校
松原 利弘
新潟市立
大庭 昌昭
小山 裕敦
学習支援・補助
保健体育
巻北小学校
石山 博之
10 月
~3月
註 1.「活動の概要」は、活動開始時点において作成・提出する「『学校インターンシップ』申込書・活動開始
報告書」による。従って、実際の活動内容との間に相違が存在する場合がある。
註 2.*は現職教員、**は外国人留学生を示す。
125
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 18 年度「学校インターンシップ」活動報告
-中学校における進路指導の実践-
柴
田
雅
子
(新潟大学大学院教育学研究科学校教育専攻学校教育学分野)
(実施校:新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校)
1.応募動機・経歴
(1) 応募動機
私は、現在、主に中学生を対象とした学校教育の進路指導のあり方を中心に研究している。私は、
生徒たちが意欲的に、そしてはつらつとした学校生活を送るためにも、自分の進路を考えさせる時間
は重要であると考える。その背景には、私自身がこれまで高校進学、そして大学進学と目先の進路の
ことばかりを優先して学校生活を送ってきたため、将来の不安を抱きながら大学生活を送ってきたこ
とがある。また周囲にも、同じような考えを持って大学生活を送っている、あるいは送ってきた友人
は少なくない。将来の見通しが持てず不安を抱くのは大学生や社会人になってもあることだが、中学
生でも同じことが言えるのではないかと、
私はみている。
将来の見通しが持てないことの原因として、
個人の特性の違い、そして学校現場において進学指導に多くの時間をかけ、本来あるべき進路指導が
行われていないことがあげられると思う。以上のことから、学校現場における進路指導の重要性を感
じ、進路指導の現状を見直していきたいと考えたことが、大学院での研究の目的である。そして、今
回の学校インターンシップを通じてその手がかりが得られればと思い、応募を決意した。
(2) 経歴
時期
2004 年9月(大学2年次)
2005 年6月(大学3年次)
2005 年 10 月(大学3年次)
実習名
観察参加実習
春期教育実習
秋期観察実習
実習先
中学校
中学校
中学校
期間
1週間
2週間
2週間
2.活動の概要
学校インターンシップでは、主に進路指導の授業を行うことをねらいとした。今回は中学1年生を対象に、
進路に関する啓発的経験の活動の一つとして「職業調べ」を行い、レポートにまとめ、発表会を実施
した。以下にそれらの概要について述べることにする。
(1) 「職業調べ」のねらい
人間は、職業生活を通じ社会と深く関わっており、どのような職業人生を送るかは、人生をどう生
きていくのかということ非常に関連している。現代のように多様化する社会において、どの職業を選
ぶか、あるいは、どんな人生を送るかということを考えてみると、たくさんの選択肢であふれるため、
迷い悩むことも少なくない。そのような中で、生徒たちが職業の性格や特性を学び、それらを個人の
能力・適性や価値と照らし合わせることは、社会と個人の関係を意識し、自分の生き方を考えるきっ
かけになる。実践校の第 1 学年では、すでに学級活動の時間で「キャリアガイダンス」として自己理
解に関する授業を終えていた。それに続く課題として、個人と社会のつながりを学ぶ機会として「職
126
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
業調べ」がふさわしいのではないかと考えた。
(1) 実践対象
N 県の中学 1 年生(1 クラス、40 名)
(2) 実践時期とその方法
2006 年 7 月上旬から 2007 年 3 月上旬にかけて実施した。また、本指導に入る前に、学級担任と数
回に分けての打ち合わせと担当クラスの観察実習を行った。
(3) 授業実践内容
指導の流れは、グループに分かれて、職業を調べ、レポートを作成し、最後にクラス内で発表会を
させている。
日時
実習事項
2006.7.24
(月)
事前打ち合わせ
(1)
2007.1.5
(金)
2007.2.2
(金)
1~5限
2007.2.13
(火)
1限
2007.2.16
(金)
終学活
2007.3.5
(月)
1限
2007.3.5
(月)
給食後
実践内容
○学校インターンシップ事業の主旨説明
○学校インターンシップの活動内容の検討
○授業実践の依頼
事前打ち合わせ
・授業実践の日時決め
(2)
・授業構想の提示
○担当クラスの生徒の様子を観察
○授業のための事前アンケートの実施
観察実習
・アンケートの目的:生徒たちがどんな職業に関心をもっているのかを調べるた
めのものとなっている。
○グループレポートの作成
・ねらいの確認:2 年後義務教育を終え社会と距離が近くなること、社会に出る
こと=職業に就くこと、
「職業」とは何か、を確認させた。
・グループに分かれ作業開始:ホランドが分類した職業分類(注参照)に基づき、
グループを6つに分けた。職業名はあらかじめこちらから各グループに 10 個
授業実践
程度提示しており、その中から関心のあるものを選んで調べさせた。各グルー
「職業調べ(1)
」
プ最低3つを取り上げるように指示した。
(学級活動)
・レポート内容:その職業の内容や特徴、中学を卒業してからその職業に就くま
での進路などを中心に、レポート用紙にまとめさせた。
・参考資料の提示:主に『13 歳のハローワーク』
、また、中学生や高校生用に職
業調べのために作られたウェブ上のページをいくつか紹介した。
○次回までの作業の確認
・職業名のチェック:各グループでまとめたレポートをクラス全体に公表し、そ
れを見て関心を持った職業名にチェックとして、自分の氏名を記入させた。こ
事中指導
のとき、グループ間のバランスをとるために、各グループが調べた職業名に最
低1つはチェックするように指示した。各グループの中で一番チェック数が多
かった職業を1つ取り上げ、次回の授業で発表するまでの期間に、さらに詳し
く調べてまとめるように指示した。
○クラス内発表会
・ねらい:自分たちで取り上げた職業のほかに、他のグループの発表も聞くこと
で、より職業に対する関心を持たせる。
授業実践
・発表形式:各グループ5分程度。
「職業調べ(2)
」 ○ホランドの六角形の説明(注参照)
○まとめ
(学級活動)
・要点:生徒たちに、社会に出るということはたった一人で生きていくことでは
なく周囲の人間と支え合って生きていくこと、つまり、さまざまな職業同士が
支え合って社会が成り立っていることの意味を理解させる。
○事後アンケートの実施
事後アンケートの
・アンケートの目的:生徒たちの実践授業後の意見や感想を聞くとともに、進路
実施
意識の変化を調べるため。
127
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
3.成果と課題
(1) 生徒のアンケート結果
(原文のとおりに掲載。○は比較的肯定的な意見、●は検討を要する意見として明記した。)
<代表的な意見>
○この学習は、私みたいに「どんな職業についたらいいのかな~?」と考えている人にとっては、とてもため
になったなと思いました。
○私は C の慣習的な職業を調べました。そこでは、自分の知らなかった職業について、どうやったらなれるの
かとか、みりょくとか、詳しく知ることができてよかったです。また、他の班の人が調べた職業の中でもたくさ
ん興味のあるものがあったので、将来、自分はどんな職業につくのかなど、少しずつ見通しが立てられるよ
うになりたいです。とても勉強になりました。
○この学習のおかげで、前よりもさらに進路について関心が出た。この様な学習をすれば、自分のしょう来の
目標ができるので、その目標に向かって、行くやる気が出て、勉強等もやる気が出ると思うので、こういう学
習、授業は広めて行くべきだと思う。
○今まで知らなかった職業を知ることができてとても良かったです。私の職業は学習内容外でしたが、職業を
研究する方法が身についたと思います。
○私がなりたいなと思う職業は、沢山あって、まだしぼれていないのですが、今回の授業で、これから先、自
分がどういう風に生きていきたいのか。ということをよく考えるようになりました。自分のやりたいように、自分
が一番輝ける職業につきたいと思います。ありがとうございました。
●チェック数の多かった 1 つではなく、自分が調べたものをとことん調べて 1 人ずつ発表したほうがいいと思っ
た。
●もっと調べる時間がほしかった。
<レポートより抜粋>
○専門用語を使うとか、文系の人が多いとか、この職業を調べてみて今まで興味のなかった仕事のことを詳し
く知ることができました。
(2) 成果と課題
<成果>
・進路・職業選択への関心の高まり
事後アンケートの集計結果、「たいへん意欲的に取り組んだ」「まあまあ意欲的に取り組んだ」を合わせると、
全体の約 85%がそのように答えている。感想からも、生徒たちが意欲的に取り組んだ姿勢がみえる。今回は、
自分が将来就きたい職業を調べ、それをかなえるための進路を考えるというよりも、「職業調べ」を通じて社会
や自分の将来の関心を抱かせるきっかけ作りに重点をおいた。その点に関しては、成功したと思われる。な
かには、全く関心のなかった職業名や職業分野への関心が高まった生徒や、進路を考えるときの方法を学
ぶ機会になった、と回答する生徒もいた。
<反省点>
・時間数の不足
実際に私が担当した時間以外でも、学級担任の協力を得てレポートをまとめる時間を作っていただいたが、
それでも時間が足りなかった。重点ポイントをより明確に説明し、作業を予想される時間配分と照らし合わせ
た上で進めていく必要がある。
・授業のすすめ方
こちらで一方的にグループ分けをしてしまったので、希望職業を調べたかったという意見もいくつかあがっ
た。生徒の希望する職業でグループ作りをして発表へとつなげる方法でも職業に対する関心は抱かせること
128
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
も可能だと考える。グループ活動ではなく、個人活動でとことん調べてみたかったとの意見も上がった。作業
への取り組み方に関しては検討し直したい点が多く存在する。
<課題>
反省点を検討すると、授業方法や教材研究の点で今後も研究していかねばならない点がある。以下にはそ
の中でも主な課題として述べた。それらをふまえて、中学校における進路指導のあり方を見直し、今後の研
究に生かしていきたい。
・意欲的に取り組むことができなかった生徒への指導
意欲的に取り組むことができなかった生徒が全体の15%いた。彼らにとって必要なことは、導入部の動機
づけだと考える。これは今回の題材や学級活動の授業のほかでもいえることだが、生徒たちに「なぜ今この
学習が必要なのか」を植え付けることをあいまいにしては授業全体がぼんやりしてしまう。生徒たちが単に作
業をこなすのではなく、意欲をもって取り組むことができるよう、教師側の工夫が必要だと考えさせられた。
・進路学習の評価
生徒の進路意識や進路発達がどの程度促進されたのか評価する方法を検討していかなければならない。
今回のような「職業調べ」の授業のほかにも、さまざまな進路意識を促進する授業は多く行われているので、
それらを参考にしながら進路学習における評価の方法を見つけ出したい。
4.学校インターンシップにおける希望
生徒たちの指導や援助を進めていく上で、生徒たちの実態の把握が不可欠だと考えている。そのためにも、
もっと生徒たちと触れあう機会があればさらによかったと感じている。また、もっと学校行事や指導計画に沿っ
た指導を展開していくためにも、実践校の実態をよく把握すべきだと考えている。個人で授業実践を重ねて
いくだけではなく、いろいろな先生方の実践や授業展開を見て自分のものと比較、検討できたらよいと思う。
このような点から、実践校に密に関わる環境が一層整うことを願っている。
5.実践授業で活用した文献・URL
村上龍 2003 『13 歳のハローワーク』 幻冬舎
『職業図鑑』http://www.aaaaaa.co.jp/job/
『夢L@nd』http://www.j-n.co.jp/kyouiku/yume/yume_top.html
『未来の職業を探せ!』http://kids.gakken.co.jp/campus/shinro/index.html
『PASカード ほーむぺーじ』http://www.toshobunka.co.jp/pascard/
(注)ホランドの職業分類
ホランド(Holland、 J. L)は人の性格を6つの基本タイプに分け、その6つのタイプを六角形上にあらわしそれぞ
れの関係性を明らかにしながら、キャリア形成は個人の性格と仕事環境との相互作用の結果からなされるとした。6つ
のタイプは、六角形の周りに時計回りで順番に、R-I-A-S-E-C と配置される。この6つの性格タイプの相互関係に関し
てホランドは、2つのタイプ間の距離が短くなればなるほど、その2つの類似性は高まるとしている。
129
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
R
I
C
職業の分類
A
E
S
この分類の特徴
R=Realistic
(現実的)
I=Investigative
(研究的)
A=Artistic
(芸術的)
S=Social
(社会的)
E=Enterprising
(企業的)
C=Conventional
(慣習的)
130
機械や物体を扱って、具体的な活動をすることが
好き。
研究や調査のような活動をすることが好き。
音楽、美術、文学など芸術的な活動をすることが
好き。
人に接したり、奉仕的な活動をすることが好き。
新しい企画を考えたり、組織を動かすような活動
をすることが好き。
定まったやり方にしたがって、同じことをくり返
す活動をすることが好き。
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 18 年度「学校インターンシップ」活動報告
―味覚教育に関する授業検討―
堀
希 代 子
(新潟大学大学院教育学研究科学校教育専攻学校教育学分野)
(実施校:新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校指導教員:逸見東子教諭)
1.応募動機
学校インターンシップの応募動機は以下の2点であった。1点目は、研究内容が中学校家庭科での
授業開発であるため、実践を行いながら検証をすすめる必要性があったからである。授業の主役であ
る生徒たちの生の姿や反応を確かめることによってさらに授業の質を高めることができると考えた。
2点目は、中学校の現職の教員として、同じ教科である教員からの指導を受けたいという思いからで
ある。中学校の家庭科教諭は大規模校で在籍数2名という学校もみられるが、ほぼ1名の在籍となっ
ている。私自身、最近の9年間は家庭科教諭が1名という中で勤務しており、授業の質を高めていく
ために、授業の相談や検討をする機会をできるだけ多く得たいと考えていた。今回の学校インターン
シップはその意味でも貴重な機会と考え、応募することとした。
2.活動の概要
活動は4月 14 日(金)~1月 29 日(月)の期間、計 15 回の訪問を実施した。
回
訪問日
対象学年・学級
活動の内容
1
4月 14 日(金)
活動内容の打ち合わせ・年間計画作成
2
5月 12 日(金)
味覚識別官能検査の実施方法及び食に関す
るアンケートの項目についての検討
3
5月 26 日(金)
味覚識別官能検査の実施方法及び食に関す
るアンケートの項目についての検討
4
7月 7日(金)
味覚識別官能検査の実施方法及び食に関す
るアンケートの項目についての最終検討
5
7月 14 日(金) 選択家庭科
味覚識別官能検査及び食に関するアンケー
2・3年生(39 人)
トを実施
6
10 月 13 日(金) 1年2組
家庭科授業補助
7
10 月 19 日(木) 1年2組
家庭科授業補助
8
10 月 25 日(水) 1年2組
家庭科授業補助
9
1月 17 日(水)
授業打ち合わせ・指導案検討
10
1月 18 日(木) 1年3組
研究授業①「五感を使って味わう」
11
1月 19 日(金) 1年1組
研究授業②「五感を使って味わう」
12
1月 22 日(月) 1年2組
研究授業③「五感を使って味わう」
13
1月 23 日(火) 1年1組
研究授業④「味覚」
131
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
14
1月 25 日(木) 1年3組
研究授業⑤「味覚」
15
1月 29 日(月) 1年2組
研究授業⑥「味覚」
・反省会
3.成果と課題
(1) 味覚識別官能検査による味覚の実態把握
中学生の味覚に関する実態を把握するため選択家庭科履修者 39 人(男子6人、女子 33 人)を対象
に味覚官能検査を実施した。先行研究、文献1)~5)を参考に五大基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、
うま味)について調査した。先行研究から正解率はほぼ 60%と予想されたが、結果は酸味の正解率が
92%、うま味が 44%であった(図1)
。この結果は、新潟市内の公立中学校で実施した味覚官能検査
の結果ともほぼ同様の傾向を示しており、中学生の味覚の実態を把握できた。
100
92
80
60
59
64
59
44
正
解 40
率
%
20
0
甘味
塩味
酸味
苦味
うま味
図1 味覚識別官能検査正解率(附属中 39 人)
(2) 食に関するアンケートによる食意識と食習慣の実態把握
選択家庭科履修者 40 人(男子6人、女子 34 人)を対象に中学生の食生活における食意識と食習慣
に関するアンケートを行い、新潟市内公立中学校で実施したアンケート結果と合せて、食意識と食習
慣の実態を把握した。
調査結果を分析した結果、食意識に関する項目では、
「ピリ辛味はおいしいと思う」
、
「はやってい
るものは一度は食べてみたいと思う」などの刺激味を志向する傾向がみられた。食習慣に関する項目
では「ファーストフードをよく利用する」
、
「スナック菓子をよく食べる」などのファーストフードを
志向する傾向と「毎日色の濃い野菜を食べる」
、
「油をひかえめにしている」などの健康を志向する傾
向がみられた。中学生の食生活の問題となっている栄養の偏りや肥満につながる実態がみられた。
(3) 味覚教育に関する授業の検討
① 五感を使って味わい言葉に表す方法の検討
五感を使って味わわせるための方法を検討した。りんごの見た目・匂い・味・食感について、時間
をかけて見たり、匂いを嗅いだり、味わったり、噛むという活動を取り入れ、それぞれの活動で得た
実感をことばで表現させた。生徒は初めての体験で興味をもって取り組み、どんなことばで表すこと
ができるのかを周りの生徒と意見交換をしながら考えていた(表1)
。
132
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
りんごの見た目、匂い、味、食感についてのことば(3学級 120 人)
表1
りんごの見た目、匂い、味、食感についてのことばの例
形
丸い、いびつな丸、完全な球体ではない、かたむいている、ごろごろ、コロコロ、
計
11
赤、赤と緑、黄色、赤と黄のグラデーション、うすい黄緑と赤、青い、色がすっぱい、真っ赤じゃな
見
色
た
目
い、きれいな赤、赤色えんぴつで軽くぬった感じの色、色あせている、ヘルシーな色、まるで太陽の
14
よう
質感
つるつる、つぶつぶがある、はんてんがある、はりがある、
4
光沢
表面につやがある、少し光沢がある、ピカピカ、テカテカ、テカっている
5
かよわそう、優しい、安定している、うまそう、あまそう、
その他
新鮮、成長途中、熟している、熟していない、食べられる、ミツが少なそう、
16
ソフトボール位の大きさ、くきが固そう、べたべたする、へたがついている、たてじま
甘い、透き通った感じの甘い匂い、からっとしたような甘さの匂い、ちょっと酸っぱい、
匂
アルコールっぽい、蜜の匂い、シンナー、洗剤のような匂い、農薬、消臭剤の匂い、注射の匂い、段ボールの匂い、 34
い
青臭い、草の匂いが少しする、木の匂い、花の匂い、みずみずしい感じの匂い、さわやか、爽快な匂い、つんとし
た感じがある、青森を思い浮かばせてくれる匂い、独特のうまそうな匂い
甘酸っぱい、しつこくない甘味、自然の甘味、最初は甘い後味甘酸っぱい、甘すぎない、わずかに苦い、しぶい、
味
かんでいるともっと甘くなる、中心に近づけば近づくほど甘くなる、食べていくうちに甘くなっていってすっきり
32
とする、かんだ味に出てくるみつに甘味が含まれている、
あっさり、みずみずしい、フルーティー、すっきりさわやか、ジューシー、
しゃくしゃく、しゃりしゃり、しゃきしゃき、もっさり、さくさく、カリカリ、ガシュ、ムシャムシャ、ペタペタ、
食
ごりごり、しんなり、水分多い、固い、かみごたえがある、見た目よりやわらかい、歯ごたえがある、かたい氷を
感
かんだ感じ、口に入れるととけるような感じ、歯が浮いた感じ、歯が入り込む、
36
かみ続けるとすじっぽいものがある、しばらくかみ続けるとしゃりしゃり感はうすくなり、食感は無くなる、ずっ
とかんでいるとフニャフニャする、
「しゃりっ」といくけど、噛みきる時は「ガリッ」って感じがする、
見た目では、色や形などの他、
「熟している」
「新鮮」など生鮮食品だけにみられる表現がみられた。
匂いでは食品そのものの匂いだけでなく、
「農薬」
「段ボール」
「木の匂い」などの表現がみられた。こ
れは時間をかけて匂いを分析したことによるのではないかと考えられる。また、食感では、
「ずっとか
んでいるとフニャフニャする」
「しばらくかみ続けるとしゃりしゃり感はうすくなり、
食感は無くなる」
など口に入れた時の食感から噛んだ後の食感、時間が経過した後の食感についても表現していること
がわかった。このことから時間をかけてりんごを咀嚼した結果、味や食感が変化していることを感じ
取っていたことが窺えた。今回の授業を通して、五感を使って味わうときには時間をかけることやこ
とばで表現することで今まで意識していなかった食べ物の要素(見た目・匂い・味・食感)に気づく
ことがわかった。
② 五大基本味を知り役割を考える方法の検討
五感(視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚)のうち、味覚に関する授業を行った。五大基本味(甘味、
塩味、酸味、苦味、うま味)の水溶液を味わい、その役割について考えた。
これまで生徒は五大基本味を個別で味わった経験がないため、おそるおそる味わっていた。特に苦
133
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
味は拒否反応を示す生徒が多く、印象に残る体験だったようである。この経験から五大基本味の特徴
は理解できていた。しかし、五大基本味の役割(甘味はエネルギーになるなど)を理解する指導過程
としては、五大基本味の役割を理解できるよう生徒一人ひとりがその役割について予想をたて、確か
める活動を取り入れるなどの工夫が必要であると感じた(図2)
。
・舌のどこでその味を感じられるかを考えることによってその味がよく分かりました。
・味はおいしいのは少ないことがわかった。
・5つの味の違いがわかるようになった。
・味一つ一つが自分の好きな味ではなくても大切な役割を持っている。
・自然界で危険だと思うものは少なくても感じられる。
・私がいつも食べているものはいろいろな味がまざって感じていること。
・食事をしているときにどこで味を感じるか調べていきたい。
・調理実習でもどのくらいの調味料を入れればいいかなど考えていきたい。
図2 生徒の振り返り記述(授業後)
4.
「学校インターンシップ」制度に関する意見、要望
今回の「学校インターンシップ」では、これまでの現職としての勤務では経験できないことが多く
あった。同じ教科の教員と相談して授業を構想し実践できたこと、またお互いの授業を観察しあうこ
とでどのような点が不足していたのか認識できたことである。さらに研究では味覚教育の授業構想内
容を授業実践を通じて確認しながら進めることができたのは大きな収穫であった。このような制度は
配属校との調整で予定通りに進まない点もあるが、有効に活用していけば研究を進める上でも有益で
あると感じた。
5.参考文献
1)ジャック・ピュイゼ:子どもの味覚を育てる,紀伊国屋書店.2004
2)鈴木智子:中学生における食環境と味覚に関する一考察,上越教育大学修士論文.2005
3)古川秀子:おいしさを測る,幸書房,p.5-9.1994
4)山野善正,山口静子:おいしさの科学,朝倉書店,1994
5)瀬戸賢一:ことばは味を超える,海鳴社.p.27-58.2003
134
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 18 年度「学校インターンシップ」活動報告
―特別支援教室における実践―
中 村 美 紀
(新潟大学大学院教育学研究科学校教育専攻障害児教育分野)
(実施校:新潟大学教育人間科学部附属養護学校)
1.応募動機・経歴
(1) 応募動機
今回、学校インターシップに応募した動機は、通常学級に在籍する特別な教育的ニーズのある児童
に対する指導の場で実習することでその実際を学び、また、実践力を身に付けたいと考えたからであ
る。
文部科学省の「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国調査」
(文部科学省, 2002)では、LD、ADHD、高機能自閉症を含む特別な教育的ニーズのある児童生
徒数は、約6%の割合で通常学級に在籍する可能性のあることが示された。これを受け、文部科学省
は、
「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)
」
(文部科学省, 2003)や「小・中学校におけ
るLD、ADHD、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)
」
(文部科学省, 2004)を示した。そして 2006 年4月より、これまで通級指導教室の対象外であった
LD、ADHDのある児童生徒も、特別支援教室の対象となった。このように、近年、軽度発達障害
も含めた特別な教育的ニーズのある児童生徒に対する教育の在り方に焦点が当てられている(馬場・
繪内, 2006)
。今後は、特別な教育的ニーズのある子どもに対応した指導を行うことができる教員の養
成が求められる。
筆者はこれまで、N大学において行われている、特別な教育的ニーズのある中学生・高校生を対象
にしたグループ活動(チャレンジルーム)
(古田島・長澤, 2004)や、
「学習支援ボランティア」に参
加するなど、実践力の向上を目指してきた。
そこで今回、N大学附属養護学校(以下、養護学校)で行われている特別支援教室での実習を通し
て、更なる実践力を身につけたいと考えた。養護学校の特別支援教室は、N市立小学校の通常学級に
在籍する特別な教育ニーズのある児童に対し、その障害特性に応じて特別の指導を行う教室である。
通常学級に通う特別な教育的ニーズのある児童への実際の支援を見たり実践したりしていく中で、支
援の方法を学びたいと考えた。
(2) 経歴
筆者は、
N大学教育学研究科に通う大学院1年次学生である。
学部生から障害児教育専修に所属し、
特別な教育的ニーズのある子どもへの教育について学んでいる。
学部生時代の実習歴は、以下の通りである。必修の「教育実習」では小学校1回、養護学校2回、
「観察実習」では小学校1回、選択の「入門教育実習」では幼稚園、
「学習支援ボランティア」では小
学校にそれぞれ参加した。
教員免許については、小学校教諭1種免許状、幼稚園教諭2種免許状、養護学校教諭1種免許状を
取得している。
135
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
2.活動の概要
養護学校で行われている特別支援教室のグループ指導に参加した。また、10 月に行われた養護学校
特別支援教育研究会の公開授業に、補助として参加した。
(1) 特別支援教室の概要
① 授業内容:授業は、ソーシャルスキルトレーニングを中心に行われた。なお、隣接した部屋に
モニターが設置され、保護者が授業の様子を観察した。
② 児童:小学生 11 名が参加していた。低学年グループに4名、中学年グループに3名、高学年
グループに4名、個別指導に1名が参加した。
③ 授業時間:各グループ週1回、1時間行われた。曜日は、1ヶ月毎に変わった。授業の流れと
各活動のねらいを表1に示した。
表 1. 授業の流れと各活動のねらい(低学年グループ:例)
内容
1. はじめの会
・係決め
・あいさつ
2. いろいろな遊び
・歌遊び
・リズム遊び
活動のねらい
◎自分で係を決めることができる(話し合って決めるこ
とができる)
。
◎遊び方を理解し、友だちと楽しく歌遊びができる。
3. ゲーム「ウノ」
◎ルールを理解し、楽しく遊ぶことができる。
4. お茶会
◎お茶を飲み、おしゃべりをしながら楽しく過ごすこと
ができる。
5. 終わりの会
・振り返りカード記入
・あいさつ
④ スタッフ:特別支援教室担当職員がMTとして授業を行った。その他、STとして、養護学校
職員、N大学長期研修生、大学院生、学生ボランティアが参加した。STは、1回の活動で2~4名
参加した。
(2) インターンシップの概要
表 2. 活動の流れ
① 活動内容
1回の活動は約2時間であった。
時間
内容
活動の流れを表2に示した。授業で
13:30
授業事前ミー ビデオセット、教材の準備、
ティング・授業 授業ミーティング(活動内
準備
容・留意点などの確認)
割は、
モデルを示す、
個別に褒める、
14:00
授業開始
集中できない児童へ声を掛ける、記
15:00
授業反省会・後 ビデオ・教材の片付け、授業
反省会(活動内容・かかわり
片付け
方などの振り返り)
は、STとして参加した。STの役
録(写真撮影)などであった。
② 活動期間
2006 年9月から 2007 年3月まで、
週1回程度の割合で参加した。
136
詳細
STとして参加
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
3.成果と課題
(1) 成果
今回、特別支援教室での実習を通して、以下の3点について成果があった。
まず1点目は、支援の方法について学ぶことができた点である。実際に子どもにかかわったり現職
教員による支援を見たりすることで、褒め方や注意の促し方、またそのタイミングを学ぶことができ
た。例えば、不適切な行為があった場合の注意の促し方については、次のようなことを学んだ。
養護学校の特別支援教室では、失敗して叱られるよりも成功して褒められる経験を重視し、指導の
基本として「怒らない、叱らない、注意しない」ということが掲げられていた。そこで、不適切な行
為があった場合、その行為に注目せず、不適切な行為が不適切でない行為に変わった瞬間に褒めると
いうことを全員で共通理解し、徹底して行った。不適切な行為に対して、ただ注意するのではなく、
子どもの実態に合わせて、このような支援の方法もあるということを学ぶことができた。
2点目は、授業の構成、進め方、環境設定など特別支援教室の運営について学ぶことができた点で
ある。授業の構成、進め方については、1回1時間の授業の中に様々な活動を取り入れ、テンポよく
授業を進めていた。このような進め方により、子どもたちはより多くの活動を経験することができ、
また、多くの成功体験をすることができたのだと思う。また、環境設定については、子どもが失敗体
験をしないようにする工夫が多くなされていた。特に、
「約束カード」による支援が多かった。例えば、
ゲームをする際「負けても怒らない」と書いたカードを見せて事前に約束する、
「席を立っていいです
か」カードを子どもが希望する枚数だけ配る、
「あいさつの仕方」をカードで示しておくなどである。
このようにカードで示しておくことで、子どもたちは常に確認しながら活動に参加することができて
いたと思う。また、ゲームの勝ち負けに極度にこだわってしまう子には、その子が勝てるように促す
などの支援もしていた。
3点目は、特別支援教室の在り方について、より深く学ぶことができた点である。LD、ADHD
など、軽度発達障害のある児童が対象の特別支援教室の取り組みはまだ始まったばかりであり、まだ
試行段階といえる。研究会の公開授業では、100 人近くの人が参観に訪れ、その関心の高さをうかが
うことができた。このような中で特別支援教室で実習できたことは、大変貴重な経験であり、また、
今後の特別支援教室の在り方について考える上でとても重要であった。
(2) 今後の課題
今回の特別支援教室での実習では、様々なことを学ぶことができた。また、いくつかの課題も残っ
た。
1つ目は、特別支援教室の在り方について、今後も検討していく必要があるということである。今
回は特別支援教室での子どもへの指導にかかわったが、
実際の運営には、
保護者や学級担任との連携、
目標の設定、評価の方法など、様々な問題があると考えられる。今後も、ボランティアへの参加や文
献を調べるなどして、特別支援教室の在り方について学んでいきたい。
2つ目は、更なる実践力の向上である。これは常に求めていかなければならないものであるので、
今後も積極的に現場とかかわっていき、実践力の向上に努めたい。今回のような軽度発達障害のある
子どもへの教育だけでなく、通常学級や特別支援学校の支援についても学んでいきたいと思う。
4.
「学校インターンシップ」の制度に関する意見、要望
現場で長期間にわたり実習できたことは、とても有意義であった。特に今回は、近年注目されてい
137
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
る特別支援教育の現場で実習することができ、勉強になった。このように、教職に就く前に現場で実
習できることは、現場を知る上でも、自身の実践力向上のためにも、大変重要であると思う。
要望を1点述べる。学校インターンシップのように、教職に就く前に現場で実習できることは、教
職を目指す学生にとってとても大切なことであると思う。よって今後、学校インターンシップに参加
できる学年を拡大するなどして、より多くの学生が現場での実習を経験できるようになるとよいので
はないかと思う.
5.文献
馬場広充・繪内利啓(2006)LD・ADHD・高機能自閉症等のための実現性のある特別支援教室(仮
称)の在り方に関する一考察―モデル教室(すばる)の実践と利用者である保護者・担任のアンケ
ート調査から―. LD研究, 15(2), 234-244.
古田島恵津子・長澤正樹(2004)軽度発達障害のある中学生グループ支援とその有効性―参加者本人・
保護者への意識調査の結果分析から―. 日本LD学会第 13 回大会発表論文集, 314-315.
文部科学省(2002)通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国調査.
文部科学省(2003)今後の特別支援教育の在り方について(最終報告).
文部科学省(2004)小・中学校におけるLD、ADHD、高機能自閉症の児童への教育支援体制の整
備のためのガイドライン(試案).
138
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 18 年度「学校インターンシップ」活動報告
-附属新潟中学校における一年間の活動を通して-
丸 山 信 昭
(新潟大学大学院教育学研究科教科教育専攻社会科教育専修)
(実施校:新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校)
1.応募動機・経歴
「学校インターンシップ」への応募動機として、以下 2 点あげる。
1 点目に教職に就く上で必要な教育技術の向上である。
2 年間の修士課程後の教職に就くことを目指し、教育現場との継続的なかかわりを通して教員とし
ての資質の向上を目的としてきた。特に生徒理解や授業技術等は大学における研究活動を補完するも
のとして大きな位置を占めると考えた。
2 点目に社会科教育における授業開発技術、教材研究である。
社会科教員として必要な教科教育技術、教材開発について指導の実際に継続的に触れることで、そ
の資質および能力を向上させることを目的とした。
経歴に関しては、学部 2 年次に新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校(以下附属新潟中学校)
、
主免教育実習として学部 3 年次に春期 2 週間を附属新潟中学校、秋期 2 週間を新潟市立黒埼中学校に
おいて行った。副免教育実習として、学部 4 年次春期 2 週間を新潟大学教育人間科学部附属新潟小学
校において行った。その他の活動経歴として、学部 1 年次には「教育実践体験研究」として、十日町
市立水沢中学校の学校林活動への参加を行い、学部 3 年次後期に「放課後学習チューター」として、
学部 4 年次および大学院 1 年次に「学習支援ボランティア」として新潟市立黒埼中学校において活動
を行った。
2.活動の概要
平成 18 年 4 月中旬から、平成 19 年 3 月 9 日まで、基本的に毎週金曜日に附属新潟中学校において
活動を行ってきた。主な活動の内容は、授業観察や選択社会科における補助等である。授業以外の活
動では、配属学級である 1 年 1 組に入り、学級活動や清掃、給食等へ参加して生徒とかかわりを持っ
た。その他、放課後や夏期長期休業中などは部活動指導に入り、生徒とともに汗を流した。また、平
成 19 年 3 月 12 日および 3 月 14 日には 2 年 2 組において 2 時間の研究授業を行った。
3.成果と課題
まず成果として考えられることを以下 2 点あげる。
(1) 授業技術向上への寄与
1 年を通して社会科の授業観察や選択社会科の補助に入ることで、社会科授業における教育方法技
術、教育内容開発についての理解が深まったと考えられる。特に日常の授業観察においては、研究授
業以外の単元における魅力ある教材の開発と提示について学ぶことができた。また、選択社会科の補
助に入ることで、生徒の調査活動を支援して中で主体的な活動を促すための生徒への働きかけなどに
139
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
ついて考えることができた。
加えて、インターンシップ後半には 2 時間の研究授業を実施し、教材研究を重ね授業を実際に行う
ことができたことは大きな収穫となった。授業における反省点・課題を活かし社会科の授業開発研究
の糧としたい。なお、研究授業における指導計画と授業風景については本節末に掲載する。
(2) 生徒理解について
授業に関しては、学年の発達段階に応じて発問や教材提示の方法に工夫が必要なことを改めて実感
した。また、授業以外の部分でも配属学級での活動を通して、どのように生徒に働きかけていくべき
なのか一年間の活動を通して考えることができたといえる。
次に課題として考えられることを 2 点あげる。
(3) 修士研究とのつながりについて
本来であればインターンシップにおいては、修士論文研究とのつながりを持たせた内容の活動を継
続的に 1 年間行う必要があったが、修士論文研究の方面が素材研究の段階にとどまっていたので、つ
ながりを持たせる活動ができなかったということである。研究授業においては当初、修士研究にあわ
せた授業開発を目指したが、1 時間目の授業の展開により 2 時間目を修正する必要があり、当初の目
的を達成することができなかった。
(4) 授業観察にとどまった点
活動の主な内容は授業観察であり、それを通して授業方法や教育内容について一定の成果を得るこ
とはできたと考えられるが、授業の実際をもう少し経験するべきであったと考えられる。しかし、大
学での研究活動等も重なり日程的に難しい状況が続いた。
以上、インターンシップにおける成果と課題であるが、以下に 3 月に行った研究授業の指導計画を
掲載する。資料に関しては紙量の関係で割愛する。
中学校地理的分野学習指導計画
(1) 単元名 「発展途上国の人口問題を考える」
(全 2 時間)
(2) 単元のねらい
発展途上国における爆発的な人口増加とそれがもたらす影響・問題点を理解するとともに、その根
本的な要因を追求することで問題の対策を考える。
(3) 教材について
2006 年 2 月には世界の総人口は 65 億人を超え、今現在も一秒に約 3 人の割合で増え続けている。
特にアジアやアフリカの発展途上国における人口増加は顕著であり、食糧問題や貧困の問題が懸念さ
れている。しかし、発展途上国の人口増加の背景には、産業構造の問題(労働力の必要性)や、将来の
生活の安定のための子供の必要性(乳児死亡率の高さ)などが存在し、抑制することは容易ではない問
題である。また、先進国と発展途上国の貿易の不均衡により、自給自足の生活が崩れ、その結果とし
て人口増加と食糧不足による貧困が起こったという見方もある。一方で日本をはじめ、ヨーロッパな
どの先進諸国では少子高齢化社会が進み社会福祉などの課題が表面化している現状である。このよう
140
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
に人口問題は地域や社会によって多様ではあるが、将来の人々の平和で健康な社会生活のためには解
決しなくてはならない重要課題であるといえる。
本単元では第 1 次で、増え続ける世界の人口に目を向けていき、その中でも発展途上国地域におい
て人口爆発が起きていることを理解する。また、発展途上国における人口の増加の要因や、それにと
もなう影響や問題点を諸資料をもとに理解する。そして、第 2 次では発展途上国の人口問題の対策に
目を向ける。発展途上国の人口増加の原因、影響には先進国との関係が存在していることに気付き、
どのように解決していけばいいのか事例を通して考察していく。
(4) 単元の指導構想
第1次「増え続ける発展途上国の人口問題の原因を理解する。
」
第2次「発展途上国の人口増加の問題と対策を考える。
」
(5) 単元の展開
1 時間目
発問
教授・学習活動
・世界の人口はどのくらい増 T:投げかける
えてきただろうか。
資料
1
S:予想する
くらい増えているだろうか。
入
・30 年間で 15 億人も増えている。
100 億人に達する日は遠くない。
・世界の人口は一秒間にどの T:投げかける
導
生徒に定着させたい知識
・
(予想する。
)一秒間に 30 人、100
S:予想する
人・・・。人口時計によると、世
T:説明する
界の人口は1秒間に3人くらいの
割合で増えている。
・これから 2 時間は、この増 ・テーマ提示
え続ける人口問題について考
えていきます
・どのような地域で人口が増 T:発問する
えているのか分析しよう。
2
S:調べる
リカで特に人口増加が急速に進ん
でいるといえる。
(白地図に色分けをする。
)
・人口増加が起きている国は T:発問する
どのような国か。
・アフリカやアジア、ラテンアメ
3
・人口増加が起きているのは主に
S:答える
開発が遅れている発展途上国と呼
T:説明する
ばれる国であるといえる。
展
・なぜ発展途上国で人口増加 T:発問する
開
が起きているのか。
S:調べる
4
・発展途上国では先進国との貿易
により、自給自足の経済が崩れ、
コーヒーやカカオなど商品作物栽
培が主な産業となった。一時は豊
かになり、人口も増えたが、やが
て増えた人口を養うための食料が
不足し始め、生活必需品などを購
入するには、商品作物の増産しか
方法がなく、より多くの生産をあ
141
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
げるため子どもを労働力として必
要としている。
終
・人口時計によると授業開始 T:投げかける
・人口は刻々と増え続けているの
結
から○人増加しました。
だな。このまま増え続けることで
問題はないのだろうか。
2 時間目
発問
教授・学習活動
資料
生徒に定着させたい知識
・人口時計によると前時より T:投げかける
・二日間でも世界の人口はかなり
も○人増えていました。
増えているのだ
導
・なぜ、発展途上国で人口増 T:発問する
入
加するのか、前時のエピソー S:まとめる
4
・発展途上国の人口増加の要因の
一つは先進国との貿易である。
ドからまとめてみよう。
・世界の人口がこのまま増え T:発問する
5
・一人当たりの耕地面積が減少し
すぎるとどのような問題が起 S:答える
ているから、いずれは食糧問題や
こると考えられるだろうか。
飢餓が起こるのではないか。その
結果食料をめぐる紛争が起こり、
社会不安に陥る恐れがある。
・発展途上国の人口抑制をす T:発問する
べきだろうか。なぜですか。
・抑制する必要がある。食糧問題
S:答える
が起こり飢えている人がいる現状
もあるからである。
・資料と、おにぎりとハンバ T:発問する
6
・世界では多くの人が飢えで苦し
ーガーの体験を通して世界の S:調べる
んでいる。しかし、世界の食糧生
穀物需給について分かったこ
産は人口増加とともに増えてい
とを説明しなさい。
る。食料が均等に分配できないの
は、先進国などが肉を作るために
穀物が飼料として大量に消費され
ていたり、先進国と発展途上国の
展
間で食糧供給の不均衡が生じたり
開
しているからである。
・発展途上国の人口は抑制す T:発問する
る必要はあるのだろうか。
S:答える
・現在の穀物を均等に分配すれば、
抑制する必要はないのではない
か。今のペースで増え続けたら穀
物も足りなくなるから抑制したほ
うがいいのではないか。
・発展途上国の人口問題を解 T:発問する
・発展途上国だけの問題ではない。
決するには、途上国が人口抑 S:考える
先進国が努力をしなければ解決し
制すれば、解決するといえる
ない問題ではないだろうか。
のか。
142
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
・発展途上国の人口問題につ T:発問する
・発展途上国の人口増加の原因や、
いて 2 時間学習してきて、分 S:まとめる
それによる問題点には途上国だけ
終
かったこと、考えたことにつ
の問題ではなく先進国の影響があ
結
いてまとめなさい。
ることが分かった。先進国との関
係を改善しなければ、人口問題は
解決できないのではないか。
【教授資料】
1 人口時計(アメリカ国勢調査局、国連統計データから試算)
2 白地図
3 人口増加の割合補足資料(ワークシート)
4 発展途上国産業の寸劇
5 人口増加による問題点(資料集、一人当たりの耕地面積)
6 穀物需給の不均衡を示す資料(おにぎり 65 個がハンバーガー1 個相当など。)
(附属新潟中学校での研究授業風景)
4.
「学校インターンシップ」の制度に関する意見、要望
「学校インターンシップ」制度に関する意見、要望は以下の 2 点である。
(1) 大学での研究活動との両立の問題
今回一年にわたり附属新潟中学校において、毎週金曜日に活動を行ってきた。大きな成果を得るこ
とができたが、それは金曜日全日をインターンシップに当て、一年間継続的に活動してきたからであ
るといえる。しかし、大学での研究活動との両立という点で少しばかり困難を感じた。大学院一年次
は、単位履修数も多く、前期・後期にわたり大学での講義履修の振替の必要が生じたのである。また、
他日に講義を振り返ることで負担が大きくなっていたのも事実である。より大きな成果を求めるので
あれば、より多くの時間をかけ、質的に高い活動をインターンシップで行う必要があるが、大学での
講義や研究活動に弊害が出ないようにする必要も同時にある。したがって、単位認定や単位履修に関
する手続き等を見直す必要があるのではないと考える。
(2) インターンシップ制度の説明に関する問題
143
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
大学院一年次入学の段階に紙面にて本制度の説明を受けたが、より詳細にどのような活動を展開し
ていくのか履修生に説明する必要があるのではないだろうか。また、インターンシップ生相互の情報
交換等行う機会があれば、お互いの活動内容を見直してよりよい活動が展開できるのではないだろう
か。まだ、始まったばかりの制度であると聞いているので、今後本制度が大学院生にとって有益なも
のとなるように継続的に行われ改善されていくことを望む。
144
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 18 年度「学校インターンシップ」活動報告
-教師と生徒との人間関係に関する一考察-
竹 内 喜 紀
(新潟大学大学院教育学研究科教科教育専攻数学教育専修)
(実施校:新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校)
1.応募動機・経歴
(1) 経歴
私は平成 17 年度 3 月、芝浦工業大学工学部を卒業し、その年の4月にこの新潟大学大学院教育学
研究科に進学した。大学時には、私の母校である新潟県村上市立岩船中学校にて3週間の教育実習を
経験し、その中で、教師という仕事を通してその責任の重さ、生徒の信頼関係を気づくことの大切さ
を学び、また、生徒との活動の中から自分自身を見つめなおし、生徒を通しての自分の長所・短所の
新たな発見さらには、授業実践における数多くの課題を気づかされた実習であった。
私は、数学教育は実践学であると考えており、大学院の学業の傍ら実践学を経験するため、新潟市
立明鏡高等学校(定時制高校)にて夜間部の非常勤講師をこの一年経験させていただき、数学の授業
を通して様々な生徒と出会い、実践学について日々、悩み・考える一年でもあった。
(2) 応募動機
入学時より、
「学校インターンシップ」という活動が新潟大学大学院では行われていることを指導
教員から教えていただき、附属新潟中学校でのインターンシップに応募した。動機は、数多くの授業
実践を詰まれた現場の先生の優れた授業を見学することで、授業とは何であるのか、そしてその中で
教師はどうあるべきなのかということを深く考え、自分にとっての教師像を明確にするためである。
さらには、教師としての生活を一日、指導教員の先生と共に活動を通すことで、教育実習では学ぶこ
とのできない経験を積みたいという思いがあり、自分を見つめなおすことができると考えたからであ
る。
2.活動の概要
(1) 活動実施校と活動期間
活動実施校 新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校
活動期間
平成 18 年 4 月 21 日(金)から平成 19 年 3 月 9 日(金)までの毎週金曜日
(2) 活動目的
[1]
終日、指導教諭に密着し、教師のあり方について勉強し、自分としての教師像を作り上げる。
[2]
実践経験豊富な指導教諭の授業を参観および机間指導をすることで,教師の生徒への働きか
け、それに対する生徒の様相を観察し、授業とは何か、教師とはその中でどうあるべきなのか
に対する考えを持つ。
[3]
[2]を踏まえ,実際に授業実践を行い,反省点や課題点を見つけ,今後の授業実践・大学院
での研究に役立たせる。
(3) 活動内容
① 活動の経緯
145
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
4 月中旬にインタンーンシップ活動校である新潟大学付属新潟中学校へ出向き、指導教諭の渡部智
和先生にご挨拶に伺った。そこで、指導教諭の先生と応募動機などを話し合い、さらには校舎見学を
行い、4 月下旬より毎週金曜日、通い終日活動を行うことに決まる。3 月 9 日の最終日までに、附属
新潟中学校に35回、実習でお世話になった。また、授業以外として、体育祭の予行練習・演劇発表
会・研究発表会の準備・モジュール学習・フォーラム・卒業式の予行練習などの行事にも参加するこ
とができ、一年間を通して貴重な体験をすることができた。
② 活動の主な内容
主に渡部教諭の授業参観を中心に、授業における教師と生徒とのやりとりを中心に学び、また生徒
へ机間指導をしながら生徒への働きかけ、生徒との関係づくり、生徒の見取りなどを勉強した。さら
には、お世話になった学級が進学を控える3年生ということもあり、学活の時間における進路指導な
どを断続的であるが見学することができ、進路を控える学級を持った担任の責任の重さ、その中での
生徒との絆の深さを目の前にし、充実し実りある1年であったと思う。(上記目的の(2))。
数学の授業実践は 2 時間ではありましたが、貴重な時間をいただき1年生の数学(線対称・点対称)
の授業を担当させて頂いた。
渡部先生からは、
お忙しい中ではあったが指導案を事前に見ていただき、
温かくも厳しいご指導を頂いた。(上記目的の[3])。
表1.1日の主な活動
時間
時間割
8:00 登校
職員会議
活動状況
電車と徒歩で登校
全体の打ち合わせ,学年(3年生)の打ち合わせに参加。生徒に連絡する
機会はないが、メモは取る。
朝の学活
・指導教諭のクラスの朝の学活に参加。
・毎朝、生徒達は、MT(モーニングテスト)を実施している。見学(夏
はMTが実施されない)。
1~4時間目
・基本的に時間割が毎週変わる。時間やクラスも決まってはいなが、基
本的には午前中は4時間中2時間が授業。内1時間は学活。学活は,学
年集会やクラス学活。
・授業においては,指導教諭が授業をして、机間支援(TT)。
・指導教諭のお手伝い(MT の採点業務・配布物の印刷等々)。
給食
・指導教諭のクラスで給食。教務室での配膳。
・食事では、たくさんの生徒と話せるように心がける。
昼休み
5時間目
6時間目
・時間に余裕があるときは、生徒とバスケットボールをして過ごす。
・数学の授業参観。午前と同じく、机間支援(TT)をする。
・毎週違う時間割りだが、1 年3組の数学の授業はほとんど変わらない。
・1学期は、指導教諭が授業を行い、生徒達に配ったプリントを、私も
解いていた。
146
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
・2学期は、1学期同様授業見学、MTの採点、出題問題を解くなど。
後半にて授業を 2 回担当する。
清掃
指導教諭のクラスで,教室清掃の指導。
帰りの学活
朝の学活同様,指導教諭のクラスに参加。
17:00 下校
非常勤の高校へ向かう。
③ 授業実践
【 実施年月 】 平成 19 年 1 月 29 日(月)
【 指導教諭 】 渡部智和
【 授業者
】 竹内喜紀
【 生徒の状況 】 附属中学1年生(3組) [男子 20 名 女子 20 名]
(1)
本時の単元
○ 平面図形(対称な図形)
(2)
指導観と考察の視点
日々の生活において線対称な形や模様を目にすることは良くあるが、それが数学と結びつかないと
考える生徒は多い。こうした、見慣れた形も、数学の対象として考えるとその性質には線対称な関係
が存在することを気づかせたい。
本時は、日常生活から目にする模様から線対称な図形を抽出し(導入)
、それを数学の対象として考
え、その図形における様々な性質を見つける(展開)
。こうした活動を通し、最初から数学の世界での
授業を中心に展開するのではなく、現実世界で見られる模様や形と数学を結びつける生徒の考えを育
みたい。
(まとめ)
生徒の率直な意見を聞き、今後の指導法や教材観に活かすために、授業最後に感想を書いてもらう。
線対称図形という図形概念を現実世界に中にも存在し、そしてその中の性質を抽出しそれを数学の世
界で考えを生徒が感得することができたのか成果・課題として述べる。
(3)
本時のねらい
○ 対称な図形の美しさを知り、対称性に着目して考察することができる。
○
(4)
線対称な図形について知り、対称の軸の意味を理解する。
本時の展開(本時 3/13)
時間
教師の働きかけと意図
学習活動・内容
先生は、町で道を歩いていると道路交
学習プリント①を配布
通標識や企業のシンボルマークなどを
良く目にします。
(ア)
(小プリント①を配布)
147
(イ)
(ウ)
(エ)
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
導入
(15 分)
発問1
これらは、先生が最近見た標識やシン
ボルマークです。
「じっーと」見て、標
識の意味や色で分けることは考えず、4
つのグループに分けをしてください。
(オ)
(キ)
(ク)
図1 (カ)
標識・シンボルマーク
グループ分けした記号とその特徴を
小プリント①に分類したマークの記号とその分
聞く。
類理由を記入させる。
着眼点を変えると、いろいろに分類できるのですね。数学
の学習ですから、
「中心で左右同じ模様になる」と「形で分け
る」ものを、みんなで考えていきましょう。
展開
(25 分)
[中心で左右同じ模様になる]
[中心で左右同じ模様になる]
発問2
模様と形で分類した人は、その理由を
教えてください?
どうも真ん中の中心線を引くと、その
左右で形が同じで、ぴったり重なりそう
ですね。
[実験1]
鏡を使い、中心線(対称軸)を境に、ぴったりと
左右の部分が重なることを確認する。
では、線対称な図形の性質について調
べてみましょう。
(対称軸との関係から) ●黒板上で、線対称・対称の軸の説明を標識・
方眼の付いた小プリント②を配布す
る。
マークを用いて説明。
(ノート)
・線対称な図形
一つの直線lを折り目として折りかえすと
き、両側の部分がぴったり重なる図形。
指示
・
では、この辺上に点Aがあるけど、鏡
対称軸
折り目となる直線
に映すと、どこに移ると思いますか、予
想して書き入れなさい。また対称軸との
関係はどうなりますか。ノートに書き入
方眼の付いた小プリント②を配布し、線対称
の関係を調べさせる。
れなさい。
方眼紙を利用することで、対応点
(実験2) 鏡を用いて、点Aが対称の
性質により、反対側の同じ位置、対称軸
から等距離の位置に移動することを確
148
を正確に捉えることができる。
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
A
認する。
図から、線分と対称軸を抜き出し、見つ
鏡に半分の
B
模様を映し、
けた性質を生徒に説明させる。
点の対応を予
想させる。
図2 標識・シンボルマーク
(特徴)
① 対応する点を結ぶ線分は、対称軸に垂直に
二等分される。
点と線を抜き出し、中点と垂直二等分線の説明
を行なう。
対称軸
A
まとめ
A´
今日の復習
時間が余った時、確認プリント
(10 分)
(5) 授業実践における成果と課題
生徒の感想を以下のように分類して考察する。
【 生徒の主な感想 】
「指導法に関して」
○
図形の授業は計算よりも楽しかった。又、鏡を使って分かりやすかった。
○
とても分かりやすい授業でしたが、もうすこしスピードがほしかったです。
○
実物(標識・カード)があって分かりやすかった。
○
先生の授業は、実際に実物を用いて具体的に表わしてくれたので非常に理解しやすか
ったです。今回は、挙手した人に発言させていたので、次回は色々な人に当てていけ
ば皆まんべんなく発言できるのでそのような工夫を考えてみたらどうですか。
○
初めて先生の授業だったが、先生の授業の内容は理解できた。分かりやすかったけど、
少しペースは人によるので、渡部先生のように慎重に生徒に聞いて行った方が良い。
○
鏡を使って実際に見せてくれたので分かりやすかったけど、声が小さかったので少し
聞きづらかったです。
○
声をもう少し大きくしてもらいたいです。でも、丁寧な説明でわかりやすかったです。
○
線対称の説明がもう少しほしかったです。でも、全体的にわかりやすい授業だったと
思います。
○
実際に鏡でやってくれたのですごくわかりやすかったです。プリントも分かりやすく
149
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
て、ためになりました。
「線対称図形に関して」
○
身近な図形について考えました、左右対称であるとか普段はそんな細かく見ていない
のでおもしろかったです。
○
対称について初めて知ったことが多かった。図形にはいろいろな形があり、対称にな
らないものもあるということを初めて知った。
○
図形の違いを考えるのがとても楽しかった。呼び名を覚えるのが大変だった。
【成果・課題】
感想を分析することで次のような成果と課題があると考えられる。
【成果】 ○ 線対称図形の概念を理解させるため、鏡を使った実験を取り入れたことにより、興味・
関心を抱く契機となった。
○ 具体的な模様(県章や標識)を取り入れたことにより、わかりやすい導入となった。
○ 日常生活で目にする模様や記号を数学の対象として捉えてくれる生徒が少なかったが
存在したこと。さらに、身近に存在する図形に関心を抱くきっかけとなった。
【課題】 ○ 分かりやすかったが、声の小ささが目立つ、スピードが遅いのではないかという指摘
が多かった。
○
鏡を使った実験の様子が後ろの人に見えにくく、苦労させた。
○
授業のテンポ・リズムがなく、だらだらした授業の流れに陥った。
○ 説明に時間を費やしすぎたため分かりやすさ重視の展開になってしまい、生徒の知的
な興味・関心を引き出す授業につながらなかった。
○
授業にはテンポとリズムが重要であること、挙手した生徒のみが答えるのではなく、
生徒皆の意見を聞くような指導法が重要であることを実感した。
3.成果と課題
(1) 活動の成果と課題
活動を通して得たことを、順次述べる。
① 教師と生徒の人間関係について
指導教諭である渡部先生から温かくも厳しい指摘を受けた。この点を踏まえ、生徒との人間関係に
ついて活動を通して得たことを述べる。
生徒との人間関係の築き方について考えると、私は1学期の大半を緊張と緊迫観の中で生徒と接し
てきたように思う。こちらから積極的に話し出すことが上手くできず、生徒に接することができない
ことが活動の当初、良くあった。その態度を指導教諭である渡部先生に指摘された。先生は、自分の
経験を交えながら「自然に接する」ことを教えて頂いた。生徒と向き合うことは、自分を創り表現す
るのではなく、自然なありのままの自分を表現することであることに気づかされた。私は、慣れない
緊張と緊迫観の中で自分を見失うことが多く、中学生は思春期であり多感な時期であるといった先入
観が強くあったため、一見あたりまえに思えることでも考えられない状況であった。そうした先入観
を捨て、自然な形で生徒と接することが生徒との人間関係を築く根本であり最も重要なことであると
実感した。
さらに、私は学級運営を通しても、その人間関係の結びつきはさらに深くなると実感した。先生の
担当する3年3組の生徒は、生徒一人ひとりが自分の考えを持ち自発的に行動をする学級であり、そ
150
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
こには、何よりも学級全体の団結力の強さが根底にある。そのことが一番強く感じたのは、3組の演
劇である「坊ちゃん」が出来上がるまでの3組みの活動過程と演劇発表での生徒の姿からである。
「坊
ちゃん」の題目が決まるまでの学活においての話し合いでは、上手く意見がまとまらず、心配する場
面も多々あった。しかし、3組の生徒は、持ち前の明るさと行動力で最後には息が合いまとまる。私
は、そこには、やはり生徒同士の団結力が根底にあり、それを理解し信頼している教師がいるからこ
そ、それが可能であると考える。
私は、3組の学級を通して日々の生活の中で生徒同士が信頼し合い、他者を許し認めあう人間本来
のあるべき姿が学級全体の中で育まれるのが理想的な学級であると思った。そして、教師にとって、
生徒との人間関係を築きあげることが最も重用であることをこの一年間の活動を通して実感した。そ
のためには、教師は、生徒と常に本音で向きあい、そして最後まで生徒を信じることである。そして、
生徒と「自然に接する」ことで日々の生活の中から信頼関係が築かれ、様々な学校行事を教師と学級
全体で乗り越える。こうした活動を通して、教師と生徒との人間関係は築かれると思う。
② 授業での教師と生徒の人間関係について
授業の中での教師と生徒の人間関係について、指導教諭である渡部先生、さらには金山先生の授業
の見学より考えたこと。さらに、授業実践において私自身が感じた授業における生徒と教師の人間関
係について考えたことを述べる。
授業を成立させるためには、生徒と教師の中での人間関係が成立していることが最も大切あると思
う。しかし、この人間関係を築くまでが難しいと一年間を通して実感した。渡部先生、金山先生、双
方の授業を見学、そして私の授業実践を通して思うことは、教師一人一人個性が違うが、その個性を
上手く活かした授業があるということだ。そして、その中で生徒との信頼関係の築き方が独自に存在
することである。
教師は、50 分という時間の中で、生徒一人一人に目を配り、その中で如何に生徒を中心に授業を組
み立てるかという授業構成者の役割がある。生徒たちの様子は、一日として同じ日はなく、その中で、
今日の生徒の様子を感じ取り、時には、深く考えさせる授業や実験を取り入れた授業を行い、またあ
るときは、計算力を付けさせるために練習問題、プリントを行わせる。さらに、生徒の様子が行事や
その他の事情で疲れており、統一が執れない時には、授業に入る前に余談を加え教室全体を和ませて
から授業に入るなどの工夫をする。
こうした生徒の様子を日々、敏感に感じとり、授業内ばかりでなく、学校全体の中で常に生徒の様
子や変化を考えていく。そして、
「ただ優しい」だけではなく、授業態度や他人に迷惑をかける行いに
は、的確に注意し学ぶ姿勢を正す、あるいは、生徒をほめ、困ったときには一緒に考えてあげる。こ
うしたことが、生徒との人間関係において新の関係を築き上げることにつながり、授業における生徒
との人間関係づくりにおいて大切であると思う。
③ まとめ
①②に生徒と教師の人間関係について、活動を通して得たこと述べた。一年間を通じて、長期に渡
り、生徒の発達の変化、成長を見取ることができ、教育実習では学べないことが多く学べた。その中
で、私にとって最大に得たことは、先に述べた生徒と教師の人間関係についてである。教師と生徒と
の人間関係を築き上げることは、学校教育の基本であると私は思う。その人間関係が成立しているか
らこそ、授業は独自の価値を生み出し、生徒との絆は深くなると考える。また、教師は、様々な人間
と関係を築きあげることが必要になり、その関係が強いほど授業や学級運営は成立し、実りあるもと
成る。私は、こうした経験から得たものを活かし、今後の活動に励みたい。
151
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
4.参考資料(活動記録一覧)
表 2 1年間の活動記録
月日
曜
時間
主な行事
主な活動(TTの活動以外)
インターンシップの挨拶。簡単な自己紹介を行う。
2006/4/21 金
一日
4/28 金
一日
5/12 金
一日
5/19 金
一日
5/26 金
一日
5/31 水
午前
6/2 金
一日
6/9 金
一日
教育実習期間
教育実習生の授業参観。
6/16 金
一日
教育実習期間
教育実習生の授業参観
6/23 金
午前
6/30 金
一日
7/7 金
一日
7/14 金
一日
研究授業の見学(理科・音楽)を行う。
生徒総会
授業参観。午後に生徒総会の見学。生徒総会では、
各専門部の意見を生徒会を中心に話し合う。
数学の授業参観。
体育祭の準備
体育祭の予行練習と準備
数学の授業参観。
数学研究授業
研究授業(数学)の見学を行う。
数学の授業参観。
テスト期間中により、スタッフルームにて教材研究
を行う。
美術の授業研究
数学の授業参観。美術の授業研究の見学
(2時間)
学活(演劇の打ち 数学の授業参観。学活にて演劇の打ち合わせを見
合わせ)
学。
ウィグルのみなさんのお別れ会を見学
7/21 金
一日
ウィグル最終日
(各学級にて)
学活(演劇の打ち合わせ)
9/8 金
一日
9/15 金
一日
9/22 金
一日
9/29 金
一日
10/6 金
一日
(午前)道徳授業見学。
10/13 金
一日
生徒達の数学の個別学習の支援。
10/25 火
10/26 水
一日
一日
数学の授業参観。
三校合同清掃
付属養護学校・小学校・中学校の合同でグラウンド
の清掃活動を行う。(付中の三年生が主導)
数学の授業参観。学活見学。
(午前)自習プリント答案作り。自習監督。
(午後)選択数学の授業を担当。
教育研究発表会の
準備
教育研究発表会
明日の研究授業のため、午前中授業見学。午後から、
研究授業の準備。パネルの準備等および清掃活動を
行う。
研究発表会の見学。その後の研究協議会に参加。
152
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
10/27 金
一日
休み時間の廊下巡視。受験生を面接室までの案内。
11/10
金
一日
数学の授業参観。机間指導。
11/24
金
一日
教育実習生の授業見学。音つどの練習を見学.
11/28
火
午前
12/1
金
一日
12/4
月
一日
12/8
金
一日
12/15
金
一日
2007/1/12 金
一日
1/19 金
一日
1/26 金
一日
1/29 月
午前
2/2 木
午前
2/2 金
一日
2/9 金
一日
2/23 金
一日
3/2 金
一日
3/9 金
一日
モジュール学習
モジュール学習の準備。机間指導。
数学の授業参観。机間指導。
モジュール学習
モジュール学習の準備。机間指導。
(1限から5限)
数学の授業参観。机間指導。
年度の最終活動
和田先生のゼミ生の授業を見学。検討会に参加。
数学の授業参観。机間指導。
授業について御指導を頂く。
数学の授業参観。机間指導.来週の授業についての
打ち合わせ。
数学の授業参観。机間指導。
授業について御指導を頂く。
授業実践①(1年生,平面図形[線対称な図形])。
授業の反省会。
授業実践②(1年生,平面図形[点対称な図形])。
授業の反省会。
数学の授業参観。机間指導。部活動の指導(バドミ
ントン)。
数学の授業参観。机間指導。部活動の指導(バドミ
ントン)。
数学の授業参観。机間指導。部活動の指導(バドミ
ントン)。
卒業式の予行練習
三送会
卒業式の予行練習の見学。三送会の見学。
インターンシップ 数学の授業参観。机間指導。部活動の指導(バドミ
最終日
ントン)。御指導頂いた先生方への最後の挨拶。
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新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 18 年度「学校インターンシップ」活動報告
-数学教育の現場を通して-
細 井 俊 明
(新潟大学大学院教育学研究科教科教育専攻数学教育専修)
(実施校:新潟市立小針中学校)
1.応募動機・経歴
私が「学校インターンシップ」活動への参加を決意した主な動機は、次に示す2つの点にある。
1つ目は、中学校で数学教育がどのように行われているかを実際の現場において肌で感じたいと思
ったからである。私は、大学4年間に3回の教育実習を行っている。そのうち、小学校が2回、中学
校が1回である。また4年次には、
「学習支援ボランティア」として内野小学校へ1年間通った。小学
校への実習などが多かったため、小学校での算数授業における指導に関しては、多くの学びに恵まれ
たが、中学校における数学教育における指導に関する学びは決して多いとは言えない。さらに、私自
身の研究テーマが中学校数学における文字式指導に関するものであることも重要な動機付けとなって
いる。実際に行われる中学数学の授業を体験し指導法を学ぶとともに、授業内での生徒との関わりを
通して生徒のつまずきや思考を感得したいと思ったことが挙げられる。
2つ目には、教師の仕事を学びたい、体験したいと感じていたことである。大学4年間の教育実習
では、児童・生徒と向き合うことが多く、また研究授業のための準備などに追われ先生方が行われて
いる教科指導以外の仕事という面に対して意識的に学ぶことができなかったと感じている。この活動
を機に、どのような仕事があるのかを学ぶことも重要な目的である。
経歴
○ 第2年次観察実習(附属長岡小学校) 平成15年9月
○ 第3年次主免教育実習(松浜小学校) 平成16年6月
○ 第3年次主免教育実習(附属長岡小学校) 平成16年10月
○ 第4年次副免教育実習(上山中学校) 平成17年6月
○ 学習支援ボランティア(内野小学校) 平成17年4月~平成18年3月
2.活動の概要
活動の具体的状況は以下の通りである。
(1) 活動日
5月 23 日,30 日
6月6日,20 日,27 日
7月4日,11 日
9月 12 日,26 日
10 月3日,10 日,17 日,24 日,31 日
11 月7日,21 日,28 日
12 月5日,12 日
2月 13 日,27 日
3月 13 日
1月 16 日,30 日
(計24回)
(2) 活動時間 活動時間は、8:40~16:00である(日により異なることもある)
。
154
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
(3) 活動内容 通常は以下のような活動が行われた。ただし、学期により多少の変更(授業見学
するクラスの変更、授業数など)はある。
8:40 登校
1限
2限
授業見学・授業補助
3限
4限
昼食・昼休み
5限
6限
授業見学・授業補助
16:00 帰宅
主な活動は、授業見学・授業補助であった。数学の授業では、魚野先生、山本先生が担当されてい
るクラスを中心に授業見学・授業補助を行った。授業見学では、先生方の板書、指示、発問などを学
ぶとともに、どのような発問、指示に対して生徒がどのように発言、活動をするかを学ぶことができ
た。また授業補助として、補助を必要とする生徒への対応や、机間巡視をしながらの丸付けなどを行
った。
また、私が配属されたクラスが2年生ということで、修学旅行に関する授業・特別講義にも参加さ
することができた。修学旅行先(沖縄)に関する講義を生徒ともに聞いたり、修学旅行へ向けての計
画作成などにおいて、質問に答えたり、机間巡視を行ったりすることで貴重な学びを得ることができ
た。
3.成果と課題
ここでは、先に述べた2つの動機の観点、また活動の概要と対応させながら本活動における成果を
まず述べ、その後に課題を提示する。
(1) 数学の授業における授業見学・授業補助からの学び
まず、私が本活動において数学の授業の見学、補助を行うなかで感じたことは、同じ内容を教える
たった 1 時間の授業でも、先生方により様々な指導方法、授業形態があるということである。具体的
には、生徒の発言を取り入れてクラス全体で作る授業、生徒に考えさせることを一番に重視する授業
など、その単元その内容に適した指導方法を先生方が考えているということを、感得することができ
た。また、授業後にはその授業に対する意図や改善点などに関するお話を聞いた。これらのことは、
実際の中学校でしか学び取ることの得ない貴重な学びであった。
そのなかでも、私が特に関心を抱いた点を以下に述べる。
155
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
① 生徒間の繋がり
私は、中学校で行われる数学の授業は、教師と生徒間のやりとりで進めていくというイメージを抱
いていた。しかし、実際は生徒間におけるやりとりが非常に重視されていた。教師から提示された課
題に対して、まず生徒は自らの力で解決しようとする。そして、行き詰ったり間違えたりした場合に
は、近くの生徒とその課題に対して意見を交わす。このような場面が非常に多く見受けられた。説明
を聞く生徒は一生懸命に耳を傾け、説明をする生徒は生き生きとした表情で、どうにか伝えようと必
死に言葉を選ぶ姿があり、お互いに学ぶ場を作っているのだと感じた。また、生徒同士ということで
たずね易いということ、説明する側の生徒は理解の深化につながることなどがこの授業形態の良いと
ころであると考える。生徒は、他の生徒と自由にやりとりできるという状況に甘えることなく、しっ
かりと課題に対して取り組む姿勢を維持していたのは、提示された教材のよさ、日頃からの指導など
があるからだと感じている。
その一方で、生徒は正面から数学を楽しんでいる。私が机間巡視をすると、多くの意見が交わされ
た後に、ある予測を立てたり、ある発見をしたりする場面も多くあった。生徒自身が主体となり課題
を解決していく姿から、授業内において生徒間の繋がりを意識し、上記のような生徒間の繋がりが築
かれるような指導を行っていくことは非常に重要なことであると、感得することができた。
② 多様な表現を用いた指導
特に、1年生の授業を見学、補助させていただくなかで感じたことである。1年生は、小学校から
の移行学年であるために、文字式などの概念を考える際にも他の表現様式を用いることが重要である
というお話が先生からあった。具体的には、2a+3aの計算の際や、方程式の利用(文章題)にお
ける式化の際に多く適用されていた。中学校では、関数や図形などの分野において多様に記号的な表
現が用いられるようになる。そして、他の表現から記号的な表現で表すような場面が増えていく。そ
れに伴い、生徒の数学に対する難易度も上昇することは明らかである。よって、授業中に行われてい
たように、ある表現から水準の低い表現へと抽象度を下げて考えるという活動を、生徒自身にも体験
させることは非常に重要なことであると感じた。さらに、生徒が1人で課題に取り組む際にも自らそ
れを活用できる力を育むことも大切であると考える。そのためには、日頃から、記号的な表現や言語
的な表現を図的な表現などに移す活動を授業の中に取り入れていくことが必要であるのだと、改めて
実感することができた。
③ 生徒の発言の活かし方
先生からの「授業は瞬間、瞬間で様々な判断を迫られる」というお言葉が非常に印象的である。そ
れは生徒の発言や、授業の進み具合などによるものだと授業を見学、補助するなかで感じた。そのよ
うな場面では、生徒の発言に対して即座に理解する力が必要であるし、様々な発言を予め予想し、ど
のように対応するかも考えておく必要がある。また、生徒が理解に困難を示した際には、他のアプロ
ーチを準備しておかなければならないということも実感した。しかし、生徒の発言には感心するもの
が多く、あっと驚かされることもあった。そのような発言をどのように生徒全体に返すか、またどの
ように活かすかが大切である。多様な意見を生徒から引き出し、クラス全体で数学の授業を行ってい
る雰囲気を作り上げ、また生徒の些細な発言や的を外れた発言を活かして、生徒に対しさらなる課題
を与えていくことの重要性を感じた。
(2) 学校生活全般における教師の姿より得た学び
156
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
前述したように、年間を通して通ったことで、修学旅行指導の場に一緒できる機会に恵まれた。修
学旅行指導では、貴重な先生方の講義を聞くとともに、多少ではあるが事務的な仕事を補助すること
ができ、今までにはない経験を得られた。ここでは、修学旅行指導だけにとどまらず、学校生活全般
に渡り教師が生徒に相対している姿から、私が学び取ったことを以下に述べたいと思う。
① 生徒に対する教師の信頼
修学旅行指導だけではなく、様々な活動(具体的には清掃や学級活動など)においても、先生方が
大変生徒を信頼していることを感じた。一旦指示を出すとほとんど助言や注意はされていなかった。
生徒を信頼し、また教師に頼らせることなく生徒の活動を見守る姿が大変印象に残っている。生徒の
生徒による活動を保障し、生徒だけで解決する力を身に付けさせることが重要であるということを感
得できた。また、小学校との違いをこのような点にも感じることができたことは大きな学びである。
以上の成果を受け、今後に最大限に活かされるように課題を簡単にではあるが提示したいと思う。
① 研究への示唆とすること
今回のような年間に渡り、数学の授業を見学、補助を行う経験は貴重なものであった。そのなかで
も、生徒の考え方や取り組みをすぐ近くで長期的に見取ることができたことは、私自身の研究の領域
においても素晴らしい示唆となったと感じている。この活動で得た示唆を今後の研究や、教育に携わ
る活動のなかでしっかりと活かしていくことが課題となる。
② 様々な体験を積極的に行うこと
先生方が様々なことを生徒に語りかける姿を目にし、様々な面においての成長が必要であると実感
した。教師の仕事は、教科指導だけではなく多種多様であることから、多方向への学びを求めていく
必要がある。そのためには、より多くの体験を求めていく積極的な姿勢を持たなければいけない。漠
然としたものであるが、私の重要な課題である。
4.
「学校インターンシップ」の制度に関する意見、要望
まず、この1年間ご多用のなか温かなご指導を頂きました校長先生、魚野先生、山本先生、並びに
小針中学校の諸先生方に心より感謝を申し上げたいと思います。さらに、この様な貴重な体験を与え
てくださった「学校インターンシップ」委員会の先生方に感謝申し上げます。
また、この「学校インターンシップ」の活動がよりよいものになることを願い、拙い意見、要望で
はあるが以下に述べたいと思う。
(1) 単位認定要件が「計60時間以上」と漠然としていることに関して
私は、通年で通ったため、学校の様々な行事に関する指導を勉強することができた。しかし、一週
間に一度という活動であったため授業実践のような連続した日数を必要とする活動を行なうことが難
しかった。また、生徒との関係を気付くには難しいものがあったと感じている。できれば、単位認定
の要件が総計60時間と漠然としたものよりは、夏期の休講を利用し、例えば2週間などのように連
続した日数での要件の方がよいのではないかと感じている。そうすることで、学校の先生方も実践授
業や様々な面において学生と連携が取れやすくなり、学生にとっても様々な経験を得るのにより恵ま
れた活動となると考える。
157
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 18 年度「学校インターシップ」活動報告
-養護学校における造形活動の実践的課題-
杉 山 佐和子
(新潟大学大学院教育学研究科教科教育専攻美術教育専修)
(実施校:新潟大学教育人間科学部附属養護学校)
1.応募動機・経歴
この度の「学校インターシップ」への応募動機は、学校現場における教育・学習活動の実際を経験
するという点での目的が大きい。大学院では、研究題目を「現代社会における人間の内的世界とその
表出を通した考察」とし、学部時代を通じて「芸術と人間」を軸に他領域にまたがる現代的課題と向
き合ってきた。そのなかで、私自身の進路として特別支援学校での支援や教育活動に就くことを強く
希望するようになり、
「美術による教育」という視点から豊かな人間教育の可能性を開いていきたいと
考えている。従来の図画工作や美術の時間に限らず、領域・教科を合わせ持つ指導における造形活動
の教育的側面を明らかにしたいと考え、それに基づいた教育実践に関する認識を深めたいと思い、本
活動への参加を希望した。
経歴として、学部 2 年次に新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校における「観察参加実習」
、め
いせいデイサポートセンター(知的障害者)
、新潟大学教育人間科学部附属養護学校における「介護等
体験」を行う。学部 3 年次に「教育実習」として、船橋市立若松中学校(母校)
、私立国府台女子学
院高等部(母校)において 2 週間ずつ、計 4 週間の自習を行う。また、同年次に新潟県立高等養護学
校にて「学習支援ボランティア」の活動を行う。学部 4 年次より、障碍をもつ人の余暇活動のための
絵画教室「あすなろ教室」
(万代市民会館)にてボランティア(指導補助)活動を続ける。新潟大学教
育人間科学部附属養護学校中学部における、平成 17 年度の「総合的な学習の時間」交流学習(新潟
大学教育人間科学部美術科学生との交流)に参加する。平成 18 年 3 月、中学校教諭 1 種免許状(美
術)
、高等学校教諭 1 種免許状(美術)を取得。現在、養護学校 1 種免許状を取得中。
2.活動の概要
学校インターシップ実施期間は、平成 19 年 1 月 22 日から 2 月 27 日までの計 12 回とし、内訳は
中学部での「実践及び参観」が 7 回、小学部・高等部での「参観」が 2 回ずつの計 4 回、特別支援教
室での「参観」が 1 回となった。また、事前に行われた新潟大学教育人間科学部附属養護学校での第
29 回特別支援教育研究会でのボランティアを含め、インターシップの活動内容とした。 総計 60 時間
(15 単位時間/1 単位時間=4 時間)
。学校における活動 12 単位時間、研究会 2 単位時間、レポート
1 単位時間
158
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
回数
月/日(曜日) 時間
1
1/22(月)
1/26(金)
2
午前
午前
3
1/29(月)
午前
4
1/31(水)
午前
5
2/2(金)
午前
内容
践
6
2/6(火)
午前
7
2/7(水)
午前
8
2/9(金)
午前
践
9
2/13(火)
午前
高等部参観
中学部参観・実
10
2/20(火)
午前
特別支援参観
践
11
2/23(金)
午前
小学部参観
中学部参観・実
12
2/27(火)
午前
小学部参観
中学部参観・実
践
中学部参観・実
践
中学部参観・実
高等部参観
中学部参観・実
践
中学部参観・実
践
「参観」は、主に観察と授業補助及び生活指導補助を含む。
「実践」では、中学部の生活単元学習「なかよし
アーティスト」において、授業補助及び授業準備補助として指導実践を行った。
新潟大学教育人間科学部附属養護学校中学部 生活単元学習「なかよしアーティスト」
単元名
「なかよしアーティスト」
作品展週間に向けて友達と一緒に共同作品(染物カーテン)を制作することができる。
布を使った造形活動の目標 ○布の特徴を生かすための行為(染色)が分かる。
目標
○布の特徴を生かすための行為(染色)を行うことができる。
○様々な感覚を使って布の特徴を実感することができる。
○自分や友だちの行為や表現の良さを実感することができる。
布の特性を生かして自由に楽しみながら制作に取り組む。
題材観
作品を様々な空間(例:教室、廊下、体育館、等)に設置することで、表情を変えていく作
品とその空間の変化を楽しむ。
場所
各教室、廊下、体育館
材料・道具
布(綿、200cm×90cm を 10 枚)
、染料、塩、輪ゴム、ひも、結束バンド、筆、桶、他
全 10 時間(活動時間 10:40~12:00)
1、オリエンテーション(1 時間)
2、個人制作(1時間)
指導計画
小さな布を使って、自由に遊びながら基本的な技法を学んでいく。
3、共同制作(7 時間)
大きな布を使って、基本的な技法を生かして、さらに工夫を加えて制作していく。
4、鑑賞会(1 時間)
3.成果と課題
「実践」として取り組んだ中学部の生活単元学習「なかよしアーティスト」は、生活単元学習のなかに造形
活動の要素を取り入れた学習内容であり、
「美術による教育」における人間形成と学習活動の実際への認識を深
159
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
める上で、興味深い題材であった。
新潟大学教育人間科学部附属養護学校中学部の「生活単元学習」では、
「生徒が目的意識をもち、自分の役割
に進んで取り組んだり、友達とかかわったりしながら楽しく活動し、生活の必要な知識や技能、態度を身につ
ける」ことをねらいとしている。また「生活単元で育てたい自立につながる力は豊かな心と集団生活」であり、
「これらを中心とした自立につながる力の内容を、さまざまな活動の中で生徒に応じて育てていくことで、生
活に必要な知識や技能、態度を身につけることができると考えて」いる。
今回の単元では、その活動に布を染めるという行為が用いられた。布に色を定着させる技法には、さまざま
な方法があり「布を生かすための行為」として、①染め(絞り染め、ろうけつ染め、草木染め、引き初め)②
絵の具で塗る(アクリル絵の具、水彩絵の具など)③マジックで描く等の方法を挙げ、事前に先生方による教
材研究の場が持たれたことを伺った。1 時間目のオリエンテーションでは、染めた布をカーテンにして、学校
の教室や廊下、体育館などに設置し、いつもの学校の見え方を変えて楽しもうというコンセプトを生徒ととも
に確認した。
本単元は、中学部の全学年が取り組み、学年(1 学年 1 クラス/各 6 名ずつ)ごとに共同制作を行うもので
あり、各学年の作品の千差万別の仕上がりは、それぞれの指導者の働き掛けの違いが表れ、非常に興味深く感
じた。この単元においては、生徒の制作協力及び授業補助の形で、各クラスに新潟大学教育人間科学部美術科
の学生が 2 名程度入り、かかわりを持って制作を行った。この美術科の学生と生徒とのかかわりは前年度の「総
合的な学習の時間」の交流学習から続いており、互いに自然なかかわりを持つことができたと感じている。
同じ造形活動を通した活動でありながら本年度の活動が前年度の交流の場合と異なる要因として、生活単元
学習の中での造形活動であることが挙げられる。前回の活動では、大学生と生徒たちの交流が主であり、学生
は交流の時間の度にさまざまな造形活動を用意し、生徒とともに布であれば布の素材から受け取る感覚を大切
にし、布で家を作ったり、布を身にまとってみたりするなどの造形遊びを展開していった。そこでは、生徒の
自発的な活動や発想を形にする柔軟な試みがなされ、造形活動を通した交流のかたちが見られた。今回の生活
単元学習のなかでは、
「役割」と「かかわり」という視点から目標と評価基準を設定し、主体的な態度や知識・
技能の側面で評価を行う。私が「実践」において担当した中学部 3 年のクラスでは、役割分担とかかわりをも
った活動が上手く行われていた。
担任の先生が、クラスの 6 人の生徒を 2 人ずつペアにして、それぞれの目標に合わせた役割が与えられた。
染めの方法も、輪ゴム・結束バンドを使った絞り染め、テープで海の生き物をつくる係や筆で描く係、溶いた
染料を布にたらしにじみの手法を使う係などの分担がなされた。このクラスのカーテンのイメージは「海・森・
空」であり、レイアウトも明確に定められていたため、それぞれが与えられた箇所を担当し、変化はつけつつ
も基本的には繰り返しの作業をおこなった。この繰り返しの作業は、着実に技能が身につけるための行為とし
て生活単元学習の目的に適っている。生活単元学習の実践としては適っているが、美術教育としての側面から
は「創造活動の喜び」という面で満たされないものを感じる。
「美術による教育」の実践は作業内容だけを意味
するのではなく、心の成長という面でも働き掛けることができると考える。
附属養護学校の教育課程では、図画工作や美術の時間は設けていない。しかしながら、様々な学習の場面で
造形活動の要素が見られる。それらの場面において造形活動が他の学習目的に付属するものに終始することも
危惧される。造形活動を用いるというと、作品化することに目が向けられ易いが、その制作過程で得られる学
びに目を向けて行きたい。そうした視点の転換が、領域や教科の枠を超えた学習を可能にすると考える。子ど
もたちの心身を開いた学びを実践できるように、教育現場において芸術の果たす役割をさらに考察していきた
160
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
い。
[中学部 3 年の作品]
[中学部 1 年の作品]
[中学部 2 年の作品]
今回の「実践」では、実践内容の計画段階からの参加は出来なかったが、現場の先生方や生徒と活動をとも
に行う中で気がついた点があった。それは、同じ染め物のカーテンづくりという題材であっても、指導の工夫
や題材の捉え方でまったく授業内容が異なるということである。それは 3 クラスの作品が、まったく異なる仕
上がりであることから見えてくる。そこに「美術による教育」の面白さや豊かな可能性があるのだと考える。
制作を行う中で、必要な道具をみつけ、机の配置などの制作環境も自分たちに必要な形へと変っていった。
「何
をするのか」を与えるのではなく、生徒が自分で見つけ出せる環境や状況を指導者は作ることが出来ると感じ
161
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
た。今回の「実践」では、個別の教育支援計画や評価等の詳細を確認することはできなかったが、1 つの単元
に初めから終わりまで関わることで、生徒の変化や生活に必要な知識、技能、態度の獲得の課程を目の当たり
にした。その中で、実際に指導に当たる上での課題が見えてきた。今回の「参観」
「実践」での経験を、今後の
研究と自己形成の課題として活かしていきたい。
「学校インターシップ」を通して、小学部、中学部、高等部の児童、生徒とかかわりをもつことで、その目覚
しい発達を肌で感じた。また、養護学校における造形活動の実践的課題についても、見識を深める機会となっ
た。障害特性はさまざまであり発達段階も異なるが、それぞれに必要な学びがあり、それを支援していく教職
のやりがいを再認識することができた。
4.
「学校インターシップ」の制度に関する意見、要望
「学校インターシップ」により、学校現場での「実践」を兼ねた貴重な経験が出来たと感じている。
ただし、
「学校インターシップ」がまだ制度として曖昧な面があるため、対象者も受け入れ先の学校の側も、
どこまでの活動を実施したらよいのかわからない状況にあると感じた。限られた時間の中で、より充実した教
育実践を行うためにも、担当組織を介した事前の確認が綿密に出来るとよいと思う。
5.文献
・
『
「自立につながる力」を育てる教育システム』新潟大学教育人間科学部付属養護学校(明治図書)
・
『図画工作・美術科 重要用語 300 の基礎知識』岩元澄男(明治図書)
162
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 18 年度「学校インターンシップ」活動報告
-教員を目指すに当たり感じたこと-
相 田 洋 輔
(新潟大学大学院教育学研究科教科教育専攻保健体育専修)
(実施校:新潟大学教育人間科学部附属長岡中学校)
1.応募動機・経歴
学校インターンシップに応募した動機は主に以下の点である。
Ⅰ 現代の生徒の状況を把握し、今後の学校生活、教師になった時の一助とする。
Ⅱ 教員になるための指導力(技術力)の向上。
Ⅲ 学校行事の運営などを観察し、教員がどのように計画・行動をしているか把握する。
Ⅰについては、様々な問題を抱えている現代社会の中で、生徒たちが学校でどのような生活をして
いるのかを把握するためである。授業数減少、体力低下、学級崩壊、キレやすい子どもの増加など数
年前までは考えられない言葉を耳にする中、生徒たちはどのように学校生活を送っているのか。もち
ろん良い点も悪い点もあるわけであるが、そのようなことを教育現場で感じることで教師になるため
の一助になると考える。
Ⅱについては、教員には指導力(技術力)が必要である。これは当然のことであるが、大学で教育
現場の実践を学ぶことも必要なことではあるが、やはり現場に出向き、学んだことを自分で実践する
必要がある。そうすることによって、自分の考えている通りにはいかないことや予想外のことが起こ
ったときの対処能力が身につくと考える。指導力向上のためには大学で理論等を学ぶことと、現場で
実践することの二つのことを同時に進めていく必要があると考える。
Ⅲについては、学校では様々な行事が行われる。その行事一つ一つは生徒たちにとって非常に価値
のあるものとなっている。生徒はその行事を楽しそうに、また時には苦しみながら行う。そうした行
事(もちろん普段の授業もそうであるが)を行う中で、教師たちはどのような計画を練り、実際に行
動しているのかを把握したいと考えた。教育実習では期間も短く、その間に行事があることは稀であ
る。そこで、学校インターンシップという長期の実習を通して、実際に準備等に携わることで、学校
における行事とは生徒にとってどのような価値があるのか。また、教師がどのような動きをしている
のかを知ることができると考える。
以上の目的を達成するために学校インターンシップに応募した。
実習先・期間等は以下の通りである。
実習先 新潟大学教育人間科学部附属長岡中学校
期間
平成 18 年 10 月 30 日~平成 19 年 3 月 16 日までの毎週金曜日(変更あり)
回数
全 16 回
学部生時代の教育実習は母校実習で高等学校に実習(四週間)にいったため、中学校の教育現場は
2 年次の観察実習(新潟大学教育人間科学部附属長岡中学校)以来であり、他の実習も経験がない。
そのため中学生と接するのはほとんど初めてである。この学校インターンシップが現代の中学生と向
き合う非常によい機会になると考える。
163
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
2.活動の概要
活動の概要を基本的なタイムスケジュールに示す。
6時
起床
7時
8時
通勤・出勤
職員朝会
1時
清掃
2時
昼休み
9時
朝会
3時
5限
6限
10 時
1限
4時
終会等
給食
11 時
3限
2限
5時
12 時
4限
6時
下校
退勤
まとめ
帰宅
特定のクラスは担当せず、3 学年を担当した。そのため、朝会・終会は週代わりに 3 学年 1~3 組を
観察した。
授業は、体育のある時限はティーム・ティーチング(TT)
、又はメイン・ティーチャーで授業を担
当した。保健の時間は観察をした。その他、授業のない時限は他の授業の観察、又は授業準備である。
実習曜日が金曜日であり、翌日が入学検査試験や行事になることが多く、スケジュールが変更し、
行事の準備(手伝い)を行うこともあった。
3.成果と課題
この項目については、以下の三点について述べる。
(1) 生徒と交流を通して
授業時間はもちろんのこと、休み時間や給食、清掃の時間も積極的に生徒とコミュニケーションを
とることを心がけた。
ここで非常に感じたことは、
「生徒は非常に素直に発言する」
ということである。
授業中にわからないことがあれば、
「わからない」と大きな声で訴えてくることやその日の服装につい
てあれこれ言ってくる生徒もいた。中学生は特に素直に物事を言うと感じた。小学生であれば、そこ
まで考えてはいない。高校生であれば、わかっていても言わないこともある。中学生期が一番自分の
思ったことを言葉に発し、感情を表現する年代であると感じた。
また「勝敗」ということに対しても非常に執着心がある。体育の授業でも休み時間の運動でも、こ
ちらが勝敗にはこだわらず楽しく行うことを目的としても、どの場面でも本気になって取り組む。そ
の結果、勝ち負けに非常にこだわり、一本のシュートに対しても感情を表に出す。時には物に当たり
破損するということも起こった。物に当たるということは決して良いことではない。しかし、思って
いることを素直に感情に出し、生徒同士も教師に対しても正面からぶつかっていくことはこの年代の
子どもたちには必要なことであると感じた。そして、それが一番できる年代が中学生であると実感し
た。
(2) 授業を担当したことで感じたこと
この実習では、実際に授業を担当させていただくことも多かった。特に柔道の時間は一人で担当さ
せていただくことが多く、指導力の向上につながった。
まずは、指導するということの難しさである。指導をしているうえで感じたことは、自分の癖(欠
点)が顕著に現れたことである。言葉がつまることや「えー」などの必要のない言葉を発し、話を聞
いている側の生徒に指示が伝わらないことが多々あった。言葉というものは非常に重要であるという
ことを感じた。
また、体育の授業では教師が見本を示さなければならない。そこで以下の二点、
164
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
z
どこの部分を示すか
z
どの順番で示すか
ということを授業を行っているうえで非常に重要であると感じた。技や運動にはポイントがある。そ
のポイントを「いかに示すことができるか」ということが教師には必要であり、生徒が上手くできる
かどうかに関係する。全体を通して「このような感じ」ということも時には必要であるが、何もわか
らない、やったことのない生徒に対しては、2、3 のポイントを絞り説明をしていくことが良いと感じ
た。そこで、教師はその技(運動)が「できる」必要がある。よく、
「自分ができることと、指導する
ことは違う。だから自分ができなくてもポイントを絞れば指導はできる」と言われる。確かに自分の
苦手な種目に関しては、指導するポイントをつかみ、それを伝える方法が良い時もある。しかし、こ
こで感じたことは、やはり自分ができるうえでの指導なのではないかと感じた。教師が見本を示し、
生徒に「すごい」と思わせることで、生徒の興味・関心をひきつけることができる。生徒を教師にひ
きつけるということは授業が成立するうえで大切なことである。その点が、非常に欠けている点であ
り、力のなさを実感した瞬間でもあった。今後は、得意な種目の精度を上げることはもちろんのこと、
苦手な種目の克服もしていかなければならない。
また「どこの部分を示すか」ということに加え、
「どの順番で見本を示すか」ということも重要であ
る。例えば、柔道を例に述べると、同じ技でも、
「手から指導するのか」
、
「足から指導するのか」
、
「全
体を示してから各部分を指導するのか」があり、指導の順番によってその技の印象が異なる。あるク
ラスには「手」からの指導を試みたところ、生徒の反応もよいと感じた。そこで、あるクラスでは同
じ技を「足」から指導を試みた。その結果、生徒から「わからない」
、
「どうするの」という声が聞こ
え、この方法は失敗であると感じた。どの方法が一番良いということでなく、その時の状況などに合
わせ、方法を選択する必要があるが、教材が生徒にとって良いものになるかどかは教師の力による。
そのためには教師の指導力の向上が不可欠である。
さらに、実際に体を動かす体育の授業では隊形移動が伴ってくる。そこでスムーズに生徒を移動さ
せることができるかどうかということは 50 分という短い時間の中では重要である。ここで学んだこ
とは、生徒を移動させるより自分が移動し生徒の見やすい場所に移動するということである。授業を
行った最初の方は、見本を示す時に「見やすい場所へ移動しなさい」と指示を出した。しかし、生徒
は「見やすい場所」とはどこなのかわからない。結果的にダラダラと移動し、時間を費やすことが多
かった。そこで担当教諭の授業を観察していると、生徒が移動するのではなく、自らが移動し、生徒
の見やすい場所をつくっていた。こちらの方が移動に時間を費やすことなく、また移動中のダラダラ
した状況がないため、授業全体が引き締まる感じを受けた。これは、授業を担当させていただいた結
果、発見したことである。
今回、授業を担当したほとんどが「一斉指導」であり、
「生徒自ら考える」ような授業はできなかっ
た。しかし、授業を担当させていただくことで自分の癖や発見できることが多々あり、現場に出向き
実際に授業を行うことの重要性を感じた。
(3) 学校行事の運営について
毎週金曜日の実習ということで、翌日にアカデミー、入学検査試験、卒業式を行うことが多く、先
生方と共に準備等に携わることができた。教師は生徒を理解し共に学ぶことと同じように、学校を運
営していかなければならない。そのため、この準備や手伝いは非常に自分にとってプラスになると考
え積極的に行動した。
学校行事は、非常に意味あるものである。生徒にとっても日常の勉強から解放される瞬間であり、
また互いに協力することで、生徒同士の絆を深めることができる。そのため、教師は生徒のためにも
165
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
行事を成功することを願う。教師は裏方に回り、全力で生徒を支援する。
その支援の過程で、教師は綿密に計画を練り、それを実行していた。どの行事の準備でも生徒の細
かい動きや会場の設営などを紙面に詳細に記載し、それによって行動していた。自分が生徒の頃には
何不自由なくやっていた行事が、あれほどの苦労のもとに成立しているのだと感じた。生徒の移動一
つとっても、花の置き方一つとってもしつこいくらいまで事細かに話し合い、最善の方法をとってい
る。時には教師同士が強い口調で言い合い、その場の雰囲気が重くなることもある。しかしそれは、
お互いの教師を信頼しているからこそできることであり、いい加減にこなしていれば言い争いなど起
こらない。教師一人ひとりが生徒にとって最も良い方法を考え、真剣になっているからこそ言い争う
ことができる。これが教師間の絆であり、その絆が強い学校ほど行事も素晴らしいものとなり、生徒
も全力で行事に取り組むことができると感じた。
今回の実習では、言葉や紙面では表すことのできないくらい多くのこと、細かいことを学んだ。実
習先の中学校では、教師の生徒に対する熱意を感じ、それと同時に生徒の学校生活の過ごし方が素晴
らしいことを感じ取った。また、実習生の私に対しても時には厳しく、時には優しく真剣に指導して
下さった。教育実習よりもさらに一歩踏み出し、実習を行うことができた。この経験は今後の私の学
校生活、さらには教職についた時の一助になることを確信している。
4.
「学校インターンシップ」の制度に関する意見・要望
「学校インターンシップ」の制度は教師を目指す学生にとって非常に意義ある制度である。各学校
の指示に委ねられることが多く、一概に言うことができないが、意見・要望としては、大学側からも
実習先に制度の説明をしていただきたい。自分で趣旨を説明することも当然必要であり、教頭先生や
担当教諭はどのような実習かということを理解していただいたが、より実習生が積極的に行動できる
ようになるためにも、制度の詳細な説明をしていただきたいと願う。
5.文献
中学校学習指導要領解説(保健体育編)
166
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 18 年度「学校インターンシップ」活動報告
-保健体育教師として必要な力を探る-
中 川
俊
(新潟大学大学院教育学研究科教科教育専攻保健体育専修)
(実施校:新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校)
1.応募動機・経歴
(1) 経歴
学部
1年次
入門教育実習
新潟市立上所小学校
2 年次
観察参加実習
新潟大学教育人間科学部附属新潟小学校
研究教育実習(体育)
新潟市立桃山小学校
春期教育実習
新潟市立鳥屋野小学校
秋期教育実習
新潟市立女池小学校
研究教育実習(体育)
新潟大学教育人間科学部附属新潟中学校
春期教育実習(体育)
新潟大学教育人間科学部附属長岡中学校
研究教育実習(体育)
新潟大学教育人間科学部附属新潟小学校
3 年次
4 年次
大学院
1 年次
学部生 1 年次に入門教育実習を履修し、小学生と泊り込みでキャンプ活動を行った。これが子ど
もたちと触れ合う初めての実習であった。その後、学部の必修である観察参加実習・教育実習を履
修した。また 3 年次から所属している滝澤研究室では、研究教育実習として毎年 9 月に体つくり運
動の教材研究を行い、小中学校で約 3 時間の授業実践を行っている。
(2) 応募動機
学部生1年次で入門教育実習を経験してから大学での講義だけでなく、実際に学校や子どもたち
の中に入っていくことの必要性を感じた。それから進んで子どもたちとのキャンプやスキー、部活
指導など様々な活動に参加してきた。様々な実習や活動の中でも教育実習の経験は自分にとって大
きな出来事であった。心残りがあるとすれば 2 週間という短期期間で 1 つの単元しか学ぶことがで
きなかったことである。
この学校インターンシップは教育実習のように短期ではなく長期にわたって参加することから、
1 つの単元だけでなく、様々な単元の授業を観察参加できる。また教員免許状を取得してからの実
習であり、授業の実践や評価などに関わることができるなど、より教師という立場で参加すること
ができる。これらのより幅広い活動を通して、私がこれから保健体育教師になるためにはどのよう
な力をつけなければならないのかを探りたいと思ったことが動機である。
2.活動の概要
○実習期間
平成 18 年 11 月 24 日より平成 19 年 3 月 9 日までの毎週金曜日(全 11 回)
○実習時間
8 時 15 分から 17 時まで
○実習内容
・丸山教諭 水流教諭 小林養護教諭の体育および保健の授業について観察参加す
る。空いている授業時間は 3 年 1 組の道徳・総合学習・学級活動を観察する。そ
167
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
の他の授業時間は実習の反省を行う。
・授業時間以外は 3 年 1 組丸山 明生教諭(保健体育)のクラスで活動を共にする。
・放課後は陸上部の練習に参加する。
○実習 1 日の流れ
職員朝会
全体朝会・3 学年朝会に参加
朝会・清掃
3 年 1 組の朝会に参加し、その後清掃指導
1・2・3 限
授業観察・参加
給食・昼休み
4・5 限
終会
放課後
3 年 1 組の生徒とともに活動
授業観察・参加
3 年 1 組の終会に参加
総下校時刻まで陸上部の練習に参加
部活後、生徒全員が玄関を出るまで見送り
総下校後
丸山教諭・水流教諭のお手伝いをして実習終了
3.成果と課題
附属新潟中学校の体育は、男女共修体育である。その中でバレーボール・器械運動・柔道・卓球・
選択体育・保健という幅広い単元にわたって観察参加し学ばせていただいた。まず観察参加してきた
中で 2 つの授業内容を挙げる。そして自分自身がこれからどのような力を身につけなければならない
のか、この実習を通して学んだ点について述べていく。
(1) 観察参加してきた授業
(1 年生)
①「ワンバウンドバレーボール-Fリーグ」
1 年生はまだバレーボールの基礎技術が未熟であることから通常のルールでバレーボールのゲーム
を行うことは難しい。そこで導入としてルールを大きく変えた「ワンバウンドバレーボール」が行わ
れた。端的に言えば「バウンドあり、トスでのキャッチありのゲーム」である。ねらいはゲームのレ
ベルを下げて試合を成立させることが目的ではない。ゲームを楽しみながらも、まずはボールの落下
点を読んだり、正確にアンダーハンドパスやトスを上げる技術を身につけることが目的である。授業
の後半で行われた「Fリーグ」では男女が一緒になってゲームを楽しみながらも、しっかりアンダー
ハンドパスやトスの技術を身につけている姿が見られた。
(1 年生)
②「関わり合いを重視したマット運動-附中オリンピック」
マット運動は今まで個人で取り組むという意識が強い種目であった。一斉指導ではなく、自分の課
題を追求する授業形態では、教師がすべての生徒をしっかり指導することは難しい。そこで生徒同士
の多様な関わり合いの中で技能の向上を目指したマット運動が行われた。
「同じ技を練習する仲間」
「附
中オリンピックでのチームとしての仲間」など、様々な生徒の関わりを設定し、アドバイスや補助を
していく中でお互いの技能を高めていくことがねらいとされた。授業後半では、全体で練習してきた
バランス系・つなぎ系・回転系の技の中から 5 種目をつなげて得点を競う「附中オリンピック」が行
われた。オリンピックの開催によって「競争」という要素が加わった。これらが動機づけとなって生
徒の練習は活発なものとなっていった。団体での競争から「仲間意識」が生まれ、自分だけがうまく
なるのではなく、チームとしてうまくなろうという姿が多く見られた。
168
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
(2) 保健体育教師としてこれから身につけなければならない力について
授業への観察参加によって、教師のクラス全体への働きかけや個々の生徒への対応など細かく観察
することができた。また、生徒と1対1や複数でなど、たくさんの指導機会を得ることができた。私
自身これからどのような力を身につけなければならないのか。教師の観察から、教材を吟味し提示し
ていく力が必要であると感じた。また生徒との個々の関わりの中で、自分の指導力のなさを痛感した。
またこの 2 つに共通するものとして、クラス、生徒を見極める力があることに気づいた。
① 生徒を見極める力-現在の力とこれから身につけさせたい力
教師は、生徒を理解し見極める力が必要である。現状の力を把握し、これから身につけさせたい力
を見通していかなければならない。見極めるものは個性であったり、技能であったり様々である。こ
れらが「教材を吟味する力」や、
「個々に対応する指導力」につながっていくものであると考える。今
回の実習においても指導教官はクラスや個々の生徒によって取り組みや指導のスタイルを明らかに変
えていた。
1 年生バレーボールでは、ゲームを通常のルールで行う技術は持っていなかった。そこで生徒たち
が 3 年生になったときバレーボールのゲームができるためには、今の段階で何を身につけていなけれ
ばならないのかを見通さなければならない。それが、トスとアンダーパスを正確に上げることであっ
た。落下点を読んでトスを上げる、そのためにワンバウンドバレーボールで落下点の位置を読む練習
が行われた。
また、
1回キャッチありのトスを行っての正確な技術を身につけさせる練習が行われた。
まさに現状の力とこれから身につけさせたい力を考えて取り入れた工夫である。
生徒を見極めるという点から学習カードは有効な手段であるといえる。この実習でも授業後は必ず
といっていいほど学習カードを使った振り返りが行われた。学習カードを添削していくと実際に子ど
もたちと関わっていてもわからないような課題を発見することができたり、難しい点の傾向などをつ
かむことができた。マット運動の授業において、ハンドスプリングがなかなかうまくできない生徒が
たくさんいた。その共通点は、腕をしっかり伸ばすこと、突き放しであることを学習カードから知る
ことができた。それらを次回の授業の指導に生かすことができたのである。学習カードを書くという
ことは難しいといえる。成績を気にしたり、いい加減に書いたりする場合も多いからである。まずは、
書く習慣つけさせることから始めなければならない。書いたことがしっかり次回の学習につながると
いう思いを教師が持たせてあげなければならない。
このように教師は実際の授業の様子や、学習カードを使うことで生徒を見極め、今後を見通してい
くことが不可欠である。
② 教材を吟味する力
教材を吟味する力とは、教科内容の深い理解とともに実際の子どもたちに対して教科内容を教材と
して再構成できる力であると考える。そのまま既存のスポーツを教材として与えてもそれは教材にな
るとは限らない。今回の「ワンバウンドバレーボール」
、
「関わりあいを重視したマット運動」はまさ
に指導教官が目の前の生徒に対して教材を吟味したものである。
優れた授業実践をそのまま、別の教師が別のクラスで行ってもうまくいくとは限らない。これは教
材が先行しているからである。生徒がいて始めて教師が教材を提示する。教材があって生徒がいるわ
けではない。
だからこそ生徒を見極め、
今までの経験などから教材を創造していかなければならない。
そのためには絶対的に専門的な知識が必要である。
私自身まだまだ教科内容に関する知識は乏しい。大学でもっといろんな研究会に参加し、すばらし
い実践を見て学ぶこと、論文や文献を読み込んでいくことが、まずは必要である。
169
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
③ 個々に対応できる指導力
指導には言葉による方法・示範することで視覚的に教える方法があると考える。指導力の高い教師
は、問題点を把握し、言葉でその技術のコツを説明できたり、自分の持っている感覚で教えたりでき
る。また、自分で師範して視覚的に指導することができる。確かな指導力を身につけるためには、専
門な知識と自分の実践知が重要である。
今回の実習ではいろんな場面で生徒と個々に関わってきた。ある生徒は自分の助言でハンドスプリ
ングができるようになった。しかし別の生徒では同じ助言ではうまくいかず、結局できるまでには至
らなかった。ハンドスプリングも押さえるべきポイントはいくつかあるが、それらを提示してあげる
ことができなかった。それだけ自分のマット運動の専門的な知識や、自分が経験してきた実践知が不
足している。1 つの技術を獲得させるためには教え方はひとつではなく様々な方法がある。それらを
生徒によって変えながら指導していかなければならない。まさに「引き出しの豊富さ」が重要になる。
これからの課題として、専門的な知識を増やしていくだけでなく、大学の実技講義を何回も聴講し、
指導することを念頭に置きながら自分自身の実践知を増やしていくことが必要である。
4.学校インターンシップの制度に関する意見、要望
募集要項に「修士論文」について明確なテーマを持っている人ということであった。テーマを持っ
ていることでインターンシップの活動中に授業をさせてもらえたり、アンケートを取らせてもらえる
かもしれない。しかし教科や内容によっては自分の修士論文がその学校の授業の流れと結びつかない
こともある。テーマがあいまいな人は現場の問題点を自分でしっかり見ることで何かヒントを得られ
る場合もあるのではないだろうか。一概にこの学校インターンシップが修士論文に関係するとは言い
切れない。
「研究テーマを明確に持っている人」が募集要項にあがっていると、学校インターンシッ
プをやりたくてもやれない学生が出てくるのではないだろうか。
170
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 18 年度「学校インターンシップ」活動報告
-附属新潟小学校 3 年生を観察して-
福 島 慎 也
(新潟大学大学院教育学研究科教科教育専攻保健体育専修)
(実施校:新潟大学教育人間科学部附属新潟小学校)
1.応募動機・経歴
応募動機:修士論文データ収集、小学校教員の仕事体験。
経歴:学部 1 年次―入門教育実習(幼稚園・小学校・中学校体験コース)
学部 2 年次―観察参加実習(附属長岡中学校 3 年生)
学部 3 年次―中等教育実習(長岡市立東中学校 1 年生)
研究教育実習(新潟市立桃山小学校 4 年生、輪を使った体操授業実践)
学部 4 年次―中等教育実習(附属長岡中学校 2 年生)
、初等教育実習(附属長岡小学校 4 年生)
研究教育実習(附属新潟中学校 1 年生、縄を使った体操授業実践)
2.活動の概要
授業観察、補助(丸つけ、個別指導)
、実践(算数2時間)
3.成果と課題
<活動日時>
11 月 20 日~2 月 5 日 毎週月曜日 8 時 15 分~14 時
2 月 19 日~3 月 5 日 毎週月曜日、3 月 14 日(水曜日) 8 時 15 分~16 時
計 12 回・92 時間
<成果>
日付
成果・活動詳細
11 月 20 日
朝の職員朝会:ノロウイルスの流行について、担当教員が健康観察の重視を促す。続い
て、いじめ問題について副校長先生から話があり、
「私たちの子どもは無傷か、真剣に
考えよう。周囲に流されるのではなく、事実に基づいて子どもをみよう。子どもの命を
守るのが私たちの仕事。いい友達づくりをさせよう」と職員に伝える。今多発するいじ
めや自殺について異常事態と捉え、この後の全校集会で話をすることを職員全体に伝え
る。
全校集会:子どもが興味をもつように安藤美姫選手の話題から入る。そして「安藤美姫
選手もいじめにあっていた」といじめ問題について切り込んでいく。何がいじめなのか、
いじめは悪いことである、いじめを見たらどうすればよいかなどを全校児童に伝える。
「いじめの判断基準として
朝の会:3 年 2 組担任の先生からもいじめについて話をする。
みなさんに教えます。~くんを仲間はずれにしよう。この言葉からいじめは始まってい
ます。絶対にやめましょう。
」
171
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
感想:子どもとの関わりについて
○ すぐに近寄ってくる子どもとそうでない子どもがいる。全ての子どもの内面を見て
みたいと感じた。
○ 教師という立場でインターンシップに参加し、どこまで甘くするかの判断が難しい
と感じた。
○ 失敗を恐れずにありのままの自分で子どもに向かっていこうと決めた。
○ 小学校 3 年生に用いる言葉の選び方、話し方が難しいと感じた。
○ クラス内のいじめを見抜くことができるかを課題の一つに決めた。
○ 子ども同士の関わりを観察し、その輪を広げられるようにしようと決めた。
○ 現代の子ども達の遊び方、運動能力を把握しようと決めた。
11 月 27 日
健康観察:出欠・風邪・薬服用・ケガについて聞く
すばらCの使い方:子どもたちが素晴らしい行動をしたときに黒板に一枚ずつドラゴン
ボールを貼っていく。これにより子ども達は、自分の行動を見直すことができる。規定
の枚数たまると、お楽しみ会ができるという特典付きであり、子どもは毎日たまること
を楽しみに頑張っている。
家庭学習:わくわくホームワークと名づけられ、やらないと次の日の休み時間がつぶれ
る仕組み。名前の工夫が子どもたちのやる気をかきたてている気がした。
褒め方:子どもが何を褒められているか実感できる言葉を用いることが重要。
12 月 4 日
教具:体育授業で、太鼓を用いて集合をさせる。叩く回数、音の大きさの工夫ができる
し、笛よりも落ち着いた音であるため、笛よりいいと感じた。
授業の工夫:授業開始時に、その時間の内容を話してしまう。すると子どもは見通しが
つき、安心する。
注意:悪いことは、悪いと言い切ることが必要。廊下に連れ出し、1 対 1 で話すことも
必要である。
12 月 11 日
授業の工夫:教科書に登場するキャラクターに名前をつけると授業が楽しくなる。褒め
る時は授業を止めてでも、褒める。次の時間へ期待を持たせたまま授業を終了する。古
い箸を活用し、先に番号を書き、指名する時に使う。
学級経営:イスには全て個人の番号をつけておく。机の教師側から見える場所にマグネ
ットで名前を貼っておくと、他の先生もすぐに名前を呼べる。暖房で教室が乾燥すると、
細菌が増え、風邪をひきやすくなるため、霧吹きを用意し、湿度を保つ。ヒーターを利
用し、給食の台拭きを濯ぐ際、冷たくないようにする。
12 月 18 日
月曜日:週の始めは落ち着きがない。
掃除:素早く行うために、厳しく指導する必要がある。班長の言うことに従わない子ど
もへの声かけが必要。
スピーチ:
「おすすめの○○」
「昨日の出来事」
「私のやってみたい○○」の三つから日
直がクジをひき、その内容について 30 秒くらい話す。話すスキルを使った時は褒めて
あげる。
1 月 22 日
授業の工夫:なわとびカードの活用。30 秒で何回跳べるか、何分跳び続けられるかなど、
自分の記録を向上させるために努力させる。人との競争ではない。
注意:いくつ注意するかを先に話す。ケガの防止のため、プロレスの禁止。
172
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
2月5日
係り活動:お手伝い係、保健係などをうまく使うことで、一日がスムーズに進む。
歌:子ども達は歌が好きである。音楽の時間に歌う曲ではなく、各クラスで決め、SM
APの歌から夏川りみの歌まで幅広く歌う。歌詞が良いもの(SMAPのありがとう)
などが選ばれる。
スキル紹介:中学年で見につけるスキル
書くスキル――つなぎ言葉を使う・段落を使う・400 字の作文を書く
聞くスキル――反応する・質問する
話すスキル――結論から話す・つなぎ言葉を使う・図や表、実物を使う・
(~ですよね?)
などと確かめながら話す
2 月 19 日
読書:読書は、文字を読む力や文章を構成する際に、とても重要である。そして早い段
階から本を読むことに興味を持たせることが重要であるため、週に何時間かは読書の時
間を設ける。子ども達は皆、喜んで読書している姿がみえる。
学級活動:6 年生を送る会の計画。まず代表を立候補者の中から多数決で決める。本人
が、数字を知ることになりショックを受けている様子がみられ、疑問を抱いた。
授業の工夫:全ての授業で考えさせる授業が必要であると知った。
2 月 26 日
健康観察:体調不良が多いため、念入りに行う。
授業実践(算数):箱の形について調べましょう
内容
①箱の平らなところの名前は?
面
6つ
②面と面との境の名前は?
辺
12 本
③辺が三つ集まるところの名前は?
頂点
8つ
④ドリル学習
3月5日
国語:3 年生で一番の事件を決めよう。
内容
・クラスで一番の事件を決定するための準備段階。話し合いをしているCDを聞いて、
話し合い方はどうか、なぜまとまらないかなどを考えさせる。
・各自が事件を三つ考える。理由を添えて。
授業実践(算数):そろばん
内容
①使用上の注意…みんなが使う物であることを伝える。
②持ち方、はらい方、名称(一だま、五だま、定位点)を覚える。
③0~9 までの置きかたを考える。
④5306 を置いてみる。
⑤ペアで問題(4 桁の数字)を出し合う。
⑥たし算
「仕方ない」という言葉はクラスや自分のレベルを下げる。
「今何が一番大事
学級経営:
か」自分で判断する。
3 月 14 日
お別れ会:1 人の児童が転出することになり、お別れ会の準備を進めた。司会者、ゲー
ム担当、歌担当、マジック担当など、多くの児童が自らの役割を一生懸命果たしていた。
一人一人が別れの辛さを体験していたように見えた。
173
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
保護者参観:初めて保護者と直接会話をした。一人の子どもの親が、以前昼休みに子ど
もがケガをしたと、伝えてきた。私は詳しくはわからなかったが、謝罪し話を聞いてい
た。保護者への対応の難しさを知ることができ、よい経験となった。
イ ン タ ー 担当の先生の話によると、この時期は研究会の時期と、比較すると落ち着いているとい
ン シ ッ プ うことだった。
「暇ですよ。
」と笑っておっしゃっていたが、見る限りでは忙しいと感じ
を終えて
た。常に子どもは何か事件を起こし、その対応をしっかりとする。そんな先生を見てい
てすごく尊敬した。学生である私から見ると忙しいと感じる一日も先生から見ると、忙
しくないということでした。経験の違い、教師としての力の違いを実感できた。そして、
どんなに忙しい時も、どんなに大変な状況でも、子ども達のことを考え、常に楽しそう
に接する姿を見ていて、将来自分もこうなりたいという理想ができた。本当に勉強にな
った4ヶ月でした。
4.
「学校インターンシップ」の制度に関する意見、要望
大学では学べない現場のことを知ることができ有意義な実習であった。教師の日常を観察・体験す
ることで、大学で勉強する際、今までより深く考えることができると感じた。日常を知り、体験する
中で、何もできない自分を知ることができた。
要望は、大学側からいろいろな学校名を選択肢としてあげていただき、どの学校に何回いってもよ
いというな体制で、多くの学校を観察してみたいと感じました。
5.文献
小学校学習指導要領解説(算数編)
174
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 18 年度「学校インターンシップ」活動報告
-単元計画・評価基準の作成と実施から学んだこと-
小 山 裕 敦
(新潟大学大学院教育学研究科教科教育専攻保健体育専修)
(実施校:新潟市立巻北小学校)
1.応募動機・経歴
(1) 応募動機
教育実習では、2 週間といった比較的短い期間での子どもとの関わりや授業を実施した。教育実
習生にとっては初めて授業を実施するため、授業計画の作成の仕方や子どもたちとの関わり方とい
った実践の中での気づきも多く、教育実習の果たす役割は非常に重要である。しかし、教員養成段
階において、実践の場として非常に重要な実習ではあるものの、単元の 1 時間しか受け持ってない
ことからも分かるように、短い期間での取り組みであると私は感じた。そして、実際の教育現場で
は、単元全体の指導構想を練り、全ての授業を担任もしくは担当の教師が実施している。採用にな
って初めて単元全体の実施やそれに伴う評価を実施するものも多いと考えられる。
そこで、より実際の職務に近い経験を積みたいと考え学校インターンシップに応募した。その中
で、教育実習では困難な単元計画・評価基準の作成及び実施することをねらいとして活動していき
たいと考えた。
(2) 経歴
学部
履修名
配属校
2 年次
平成 15 年度観察参加実習(初等) 新潟大学教育人間科学部附属長岡小学校
3 年次
平成 16 年度春期教育実習(初等) 新潟大学教育人間科学部附属新潟小学校
平成 16 年度秋期教育実習(初等) 新潟市立浜浦小学校
4 年次
平成 17 年度春期教育実習(中等) 新潟市立下山中学校
学習ボランティア(水泳)
新潟市立山の下小学校
学習ボランティア
栃尾市立西谷小学校
2.活動の概要
期日:平成 18 年 10 月 13 日(金)から計 24 回参加した。
(表 1 を参照)
場所:新潟市立巻北小学校(担当学年:5 年)
主な活動:
(1)学習補助
体育、算数に TT として参加した。具体的には、体育ではサッカーとバスケットボールの審判
や子どもが立てる作戦のアドバイザー、算数では、丸付けや不得意な子への補助を行った。場合
によっては、他の教科でも TT として参加しているが、観察する事の方が多かった。
(2)単元「器械運動」の計画と実施
175
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
平成 19 年 2 月 9 日(金)から計 9 日間、専門教科である体育の「器械運動」の単元を担当す
る機会を頂いた。時間数は、マット運動 4 時間、跳び箱運動 4 時間の計 8 時間。2 クラス合同体
育で、全 4 クラスを担当した。教育実習で行う研究授業と違い、学校インターンシップの参加で
可能となった単元全体での研究授業である。また、教員免許を取得しているため、評価をするこ
とができ、授業中に評価の観点を求められることとなった。このことは、今までの実践では体験
することのできない、より職務に近い活動となった。
表 1 主な一日の活動
活動日
活動内容
活動日
活動内容
1
10 月 13 日(金) 学習補助
13
2 月 6 日(火) 学習補助
2
10 月 20 日(金) 学習補助
14
2 月 9 日(金) 学習補助、研究授業
3
10 月 27 日(金) 学習補助
15
2 月 13 日(火) 学習補助、研究授業
4
11 月 3 日(金) 学習補助
16
2 月 14 日(水) 学習補助、研究授業
5
11 月 17 日(金) 学習補助
17
2 月 16 日(金) 学習補助、研究授業
6
11 月 24 日(金) 学習補助
18
2 月 20 日(火) 学習補助、研究授業
7
12 月 1 日(金) 学習補助
19
2 月 23 日(金) 学習補助
8
12 月 8 日(金) 研究会補助・参加
20
3 月 6 日(火) 学習補助、研究授業
9
12 月 15 日(金) 学習補助
21
3 月 7 日(水) 学習補助、研究授業
10
12 月 22 日(金) 学習補助
22
3 月 9 日(金) 学習補助、研究授業
11
1 月 19 日(金) 学習補助
23
3 月 13 日(火) 学習補助、研究授業
12
2 月 2 日(金)
24
3 月 16 日(金) 学習補助
学習補助
3.成果と課題
(1)日常の中での関わりから
休み時間や TT で子どもたちと関わる中で、時間による子どもの変化を見ることができた。時間を
重ねるごとに生活態度や学習態度が良くなっていく子どもや一時的に落ち着きがなくなる子どもなど
様々な変化を見ることができた。生活態度や学習態度が良くなる子どもに対しては、自然とほめるこ
とができ関わることができた。しかし、一時的に落ち着きがなくなく子どもに対して変化に気づいて
も関わることができなかった。そのような子どもにその場で注意することも必要であるが、個人的に
話を聞く機会を設けることも重要であると感じた。
そして、これからの課題として、めりはりをつけた関わり方が必要であると感じた。注意をする部
分はしっかりと注意ができるような線引きをしていこうと考える。
(2)単元計画・評価基準の作成と実施から
私が今回教育実習では体験できない貴重な経験をした。それは単元計画・評価基準の作成と実施で
ある。そして、それらから学んだことを 3 点取り上げたい。① 環境づくりの難しさ、② ねらいを
伝える難しさ、③ 評価の難しさ、である。
① 環境づくりの難しさ
マット運動で、異質集団による教えあいの授業を計画した。その中で、子どもたち同士が動きを見
ることで技のポイントに気づいたり、教えあいの中で相手を思いやる心を育んだり、といったことを
176
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
ねらいとした。そして、そのための環境づくりとしてチェックシートを用いたグループ編成や技のポ
イントを書き込むためのワークシート(図 1 参照)などを作成した。
実際の授業では各自の技のコツをつかみ、自分なりに記述できることを目標に展開していったが、
子どもたちは「技のコツ」や「技のポイント」という言葉では中々反応できない状況であった。抽象
的な表現では何を見たらよいか分からず、ワークシートへの記入も殆どなかった。そこで、子どもた
ちの技を見る視点として「手の着き方」や「目線」といったキーワードを提示した。すると、
「手の着
き方」を見ることをきっかけに、他の部分にも目線が向いている記述がワークシートから見られるよ
うになった。何もないところから「見つけましょう」ではなく、
「手の着き方はどうなっていますか」
「頭の位置はどこにあるでしょうか」など、子どもたちに見つけるためヒントを提示することが非常
に重要だと実感した。しかしながら、全ての子どもがワークシートの活用の仕方を理解しておらず、
実際の授業でもワークシートをうまく使っている子どもの例を取り上げることやその時間が取れなか
った。
そこでこれからの課題として、どのような活動を行って学習していくのかを子どもに理解させるこ
とが必要であると感じた。今回の授業では技の見方、今の技がどうだったか話す時間、ワークシート
に自分のコツや他の子から指摘された点を書く時間を確保するといった細かい部分の授業計画を作成
する必要があると感じた。それらを計画することで、子どもにとって学びやすい環境がつくれると考
える。
自分なりの技のポイントを書き込もう
後転
手は首の後ろ
側転(側方倒立回転)
片足から踏み出す
うででしっかり押す
マットをしっかり見る
図 1 ワークシートで用いた図の例
② ねらいを伝える難しさ
教育実習では、担当教師の立てた授業計画の 1 時間を受け持つため、単元全体での自分のねらいが
薄くなっていたが、今回は単元の指導計画全体を作るため、自分の単元に対する思いを持つことが重
要となった。今回私はわずかな活動時間ではあるが、子どもたちに「いろいろな技に挑戦させたい」
という思いから、授業で伝えたいことが多くなっていた。しかし、授業実施にあたって、
「子どもの活
動を止めたくない」といった思いがあったため、授業の進行に気を取られ、子どもたちに「身につけ
て欲しいポイント」を、言葉にできないまま授業が終わるケースも多かった。授業を終えて「今回の
授業で子どもは何を学んだんだろう」と思うこともあり、振り返ると体を動かすだけの体育になって
いたことも多かった。ここで、教えたいことが沢山ある中で「何を教えることが今の子どもたちに一
177
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
番よいか」といった優先順位をつけていくことが必要であることに気づかされた。
これからの課題として、子どもたちの現状にあったねらいを持ち、優先順位を付けて教えていくこ
とが子どもたちにとって学びのある体育になると感じた。子どもに伝えたいことを持って授業に臨む
ことは勿論であるが、それをどのタイミングで、どのくらい全体に伝えられるか、そしてどのくらい
伝わっているか見取っていくことを心がけ授業をしていきたい。
③ 評価の難しさ
今まで、教育実習や水泳指導などで子どもの活動様子を見取ることはあった。
「ちゃんと活動してい
るかどうか」といった私の指示は子どもに理解されているか、授業は進行しているかといった視点で
子どもを見ていたことが多かった。しかし、今回は一回の研究授業を評価するだけではなく、通知表
の成績をつけるための評価に関わることができ、自分自身の授業中の評価の目の甘さを実感すること
となった。その場では子どもの動きを見ているものの、授業後活動の様子を振り返ると授業全体の雰
囲気は分かるが、個人の活動の様子を見とれていない状況であった。そこに、自分の授業を評価する
ことに慣れているが、子どもの活動を評価することに慣れていない自分がいることに気づかされた。
そこで、授業中に見とれない子どもに対して、授業後の感想を書くための体育ノートやワークシート
を用いることで、一人ひとりが「今回の授業で何を気づくことができたか」を把握できると今まで以
上にそれらの活用の重要性を感じた。
そこでこれからの課題として、授業後の感想を書かせることは勿論有効であるが、授業に臨む前に
どれだけ授業後の子ども一人ひとりの姿を思い描けるかが重要になってくると感じた。
そのためには、
「今の自分はどのくらい子どもを見とれるのか」といった自己理解が必要であり、できることやでき
ないことと向き合うことが必要であると感じた。
以上の 3 点から、現場の教師と同じ経験が重要な役割を果たしていると感じた。計画してみて分か
ること、実施してみて分かること、評価してみて分かることが数多くあり、教師になっても日々成長
していう言葉の意味を実感した。そして、今まで実際に考えたことのない単元計画・評価基準の重要
性を自分が実施する立場になって改めて実感した。
4.
「学校インターンシップ」の制度に関する意見、要望
今回私が参加した学校インターンシップは、教育実習と違い長期に渡り学校・子どもと関わること、
単元全体の指導計画・評価基準を作成・実施しることができ私にとって良い経験となった。
要望としては、教員採用試験を受けるにあたって「学校インターンシップ」という名称は、どの程
度認知されていて、どの範囲(書類など)に使用できるのか。といった点が明確になると取り組みや
すいと感じた。
5.文献
「個を伸ばす」きめ細やかな指導方法の工夫 生田孝至・岸本賢一 学校図書
178
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター(2006 年度報告)
1.所在地:
住所 950-2181 新潟市五十嵐 2 の町 8050
TEL 025(262)7093/FAX 025(262)7135
ホームページアドレス:http://www.ed.niigata-u.ac.jp/
構成員:
センター長 教 授(併任) 常木 正則
tuneki@ed.niigata-u.ac.jp
025(262)7117
専任教員 教 授
miyazono@ed.niigata-u.ac.jp
025(262)7133
宮薗
衛
教 授
松井 賢二
kenji@ed.niigata-u.ac.jp
025(262)7250
助教授
岡野
okano@ed.niigata-u.ac.jp
025(262)7093
客員教員 教 授
勉
025(262)7245
岸本 賢一
2. 各センターの学内での年間活動状況
2-a.センター主催・共催の研究会・研修会
2-a-1.新潟大学免許法認定公開講座 <部門共通>
小・中・高等学校いずれかの 1 種免許状を取得し、3 年以上の教職経験を有する者を対象として、専修免許状
取得のための学修機会を提供し、現職教員の資質向上に寄与することを目的とする。より多くの現職教員の受講
を可能とするため、3 会場を同時に結ぶ遠隔教育による授業科目を含め、計 7 科目を開講した。その内、センタ
ーが直接関わった授業科目の実施概要は次の通り。
開設科目
日
進路指導特論
程
8 月 4 日(金)
8 月 5 日(土)
8 月 27 日(日)
8 月 28 日(月)
会
担当講師
授与単位
講義時間
受講者
単位
取得者
松井 賢二
(新潟大学)
2 単位
30 時間
16 人
15 人
場
新潟大学教育人
間科学部附属教
育実践総合セン
ター
同長岡地域リサ
ーチセンター
新潟大学新潟駅
南キャンパス
2-a-2.体験的カリキュラムの開発研究(第 10 年次) <部門共通>
概 要
対 象
方 法
期 間
人 数
(1) ①「親子自然体験コース」、②「『合宿通学』体験コース」、③「グループ体験コース」、
④「自然科学実体験コースⅠ」、⑤「自然科学実体験コースⅡ」、⑥「算数・数学学芸員養成コ
ース」、⑦「野外活動体験コース」の 7 コースにおいて体験学習を実施した。
(2) 学生主導の運営による報告会を開催し、学習成果の報告・交流を行うと同時に、関係者等
から講評、講演を受け、総括と課題の明確化を図った。
平成 18 年度「フレンドシップ実習」(授業科目「教育実践体験研究Ⅰ」)参加学生(主として 1、
2 年次生)、総計 62 人
公民館、学童保育施設、NPO 法人等、学校とは異なる教育施設・団体との連携・協力による。
平成 18 年度(1 年間)
センター教員 5 人(センター長、専任教員、客員教員)、学部教員 3 人
2-a-3.公開シンポジウムⅠ「学習支援ボランティア」派遣事業の成果と課題 <部門共通>
テーマ
日 時
会 場
概 要
参加者
「学習支援ボランティア」派遣事業の成果と課題
2006 年 12 月 9 日(土)午後 1 時 00 分~3 時 30 分
新潟大学教育人間科学部
報 告:①「学習支援ボランティア」派遣事業を実施して
②「学習支援ボランティア」に参加して-ボランティア学生から
③「学習支援ボランティア」の派遣を受けて-ボランティア受入校から
討 論:今年度の成果と今後の課題-フロアからの発言をもとに
総 括:まとめにかえて
現職教員、学生、大学院生、大学教員、新潟市教育委員会関係者等、総計約 150 人
179
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
2-a-4.公開シンポジウムⅡ「第 2 回キャリア教育研究会」 <教育臨床研究部門>
テーマ
日 時
会 場
概 要
参加者
小・中・高の各学校段階におけるキャリア教育の実践(Ⅱ)
2007 年 11 月 18 日(土)午後 1 時 00 分~5 時 00 分
新潟大学教育人間科学部
話題提供① 小学校の実践紹介 将来の自分づくりを支える「名木野小プラン」
話題提供② 中学校の実践紹介 自らの生き方を考えるキャリア教育
話題提供③ 高等学校の実践紹介 生きる力を培うキャリア教育実践
記念講演
現代青年のキャリア・クライシスとその対応
学部学生、大学院生、現職教員、指導主事等、総計 225 人
2-a-5.SCS大学間遠隔共同講義「教育臨床」 <教育臨床研究部門>
SCS(Space Collaboration System)による大学間遠隔共同講義「教育臨床」の議長局を務めるとともに、全
9 回中、次の 3 回の講義を担当した。開講時間は、すべて午後 6 時 00 分~午後 7 時 30 分である。
日 程
テ ー マ
講 師
4 月 20 日
学校におけるキャリア教育の必要性
松井賢二・田村和弘
5 月 18 日
生徒指導上の諸問題とその対策
岸本賢一
11 月 16 日 中学校における職場体験の効果-キャリア教育の視点から
松井賢二・田村和弘
2-b.附属学校園との共同研究プロジェクト/研究会/研修会
2-b-1.1年次生を対象とする教育実習カリキュラムの開発研究(第8年次) <教師教育研究開発部門>
概 要
対
方
期
人
象
法
間
数
1 年次生を対象とする教育実習カリキュラム(「入門教育実習」)を企画・実行すると同時に、報告
会を開催し、総括を行った。
平成 18 年度「入門教育実習」(授業科目「教育実践体験研究Ⅱ」
)参加学生、総計 73 人
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター教育実習研究会による共同研究
平成 18 年度(1 年間)
学部教員 20 人、附属学校園教員、公私立学校園教員 12 人
2-b-2.4年次生を対象とする教育実習カリキュラムの開発研究(第3年次) <教師教育研究開発部門>
概 要
対
方
期
人
象
法
間
数
4 年次生を主要な対象とし、教育実践・臨床研究の方法の習得を目的とする教育実習カリキュラム
(「研究教育実習」)を企画・実行し、その結果に関する分析・考察を行った。
国語、社会、数学、家庭科、保健体育、美術の各教科教育研究室の所属学生、総計 33 人
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター教育実習研究会による共同研究
平成 18 年度
学部教員 8 人、センター専任教員 1 人、附属学校教員 6 人
2-b-3.附属学校への出張教育相談 <教育臨床研究部門>
概 要
担当者
件 数
附属長岡中学校と長岡小学校(予定)の児童・生徒や保護者を対象に、教育相談を実施した。
松井賢二(教育実践総合センター)
のべ回数 6 回、ケース数 10 件
2-c.センター専任教員の学部・大学院教育への参与状況
2-c-1.学部
「教育実践体験研究」、「教育実践研究」、「学校カウンセリング」(センター開設科目)、「教育方法・技
術」、「教育実習事前・事後研究」、「教職入門」、「生徒指導・進路指導・教育相談」、「情報教育論」、
「生活科教育法」、「社会科教育法」、「総合演習」(教職専門科目)、「社会科教材開発実習」(専修専門
科目)、「スタディ・スキルズ」、「キャリアデザイン」(教養教育科目)等、総計約 30 科目。
2-c-2.大学院
「教育実践総合研究」、「教育学総合研究」、「生徒指導特論」、「進路指導特論」、「教育実践学特論」、
「社会科教育課題研究」等、総計 12 科目。修士論文の指導担当 1 人。
180
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
3.各センターの対外的な教育・研究活動状況
3-a.都道府県/市町村/公立学校との協同事業による研究会・研修会
3-a-1.
「学習支援ボランティア」派遣事業(連携先:新潟市教育委員会)
(第4年次) <部門共通>
概 要
募集対象
派遣先
方 法
実 績
新潟市と新潟大学との包括連携協定(平成 17 年 6 月に締結)による事業の一環および教育人間科
学部学校ボランティア派遣事業委員会の業務として、学生、大学院生等を小・中・養護学校に派遣
し、学校教育活動の支援(授業支援、個別指導、障害児の支援等)を行う「学習支援ボランティア」
派遣事業を実施した。
教育人間科学部(3、4 年次生)
、大学院教育学研究科生、養護教諭特別別科生、他学部・研究科の
学生、大学院生
新潟市立の小・中・養護学校の内、派遣を希望する学校(101 校、289 人)
教育人間科学部学校ボランティア派遣事業委員会、新潟市教育委員会(学校指導課)の連携による
総計 60 校、105 人(12 月現在)
3-a-2.見附市小・中学校「学習支援ボランティア」派遣事業(連携先:見附市教育委員会)<部門共通>
概 要
派遣総数
派遣先
方 法
経 過
見附市立小・中学校に「学習支援ボランティア」を派遣し、主として 8 月~9 月に、自然教室、水
泳教室、国語、算数・数学、英語、体育の特別教室の指導補助等を行った(第 2 年次)
。
学部 1~4 年次生、大学院生、養護教諭特別別科生、総計約 40 人
見附市立今町小学校、見附第二小学校、見附中学校、見附南中学校(総計 4 校)
教育人間科学部学校ボランティア派遣事業委員会、見附市教育委員会の連携
5 月~6 月:募集、7 月:見附市教育委員会関係者との共同による募集説明会を開催、8 月以降:
派遣学校において活動開始。
3-a-3.
「学習支援チューター」派遣事業(第1年次)
(連携先:長岡市立阪之上小学校) <部門共通>
概 要
派遣総数
派遣先
方 法
経 過
備 考
長岡市立阪之上小学校が実施するプログラム「阪上学」に参加し、同校の学習指導を支援する「学
習支援チューター」を派遣した。
学部 4 年次生、大学院生、のべ総数 22 人
長岡市立阪之上小学校
教育人間科学部学校ボランティア派遣事業委員会、長岡市立阪之上小学校の連携
5 月~6 月:募集、7 月:学部および長岡市立阪之上小学校の関係者、応募学生の出席による説明
会を開催、8 月、9 月~11 月:長岡市立阪之上小学校において活動。
「新教育システム開発プログラム事業」
(文部科学省指定研究、平成 18~19 年度)の一環を構成。
3-a-4.教員研修講座の担当
No
1
2
3
名 称
新潟県教育委員会主催
高等学校教職 12 年経験者研修
コース別研修(進路指導・主コース)
「進路指導の意義と必要性」
新潟市教育委員会主催
12 年研修「教科指導研修」
小学校社会科講座
新潟県教育委員会主催
平成 18 年度新潟県教育職員免許法
認定講習(栄養教諭)
「教育課程論」
講 師
松井賢二
月 日
8月9日
回数
1回
対 象
現職教員
宮薗 衛
8 月 7、
11、
18、
22、24 日、12
月 26 日
8月9日
6回
小学校教
員(社会
科)
栄養士、管
理栄養士
岡野 勉
(分担)
1回
受講者
17 人
4人
62 人
3-b.教育臨床部門専任教員による公立学校等へのカウンセリング/コンサルテーション活動状況
概 要
期 間
件 数
面接、電話、訪問、電子メールによって、現職教員や保護者などへカウンセリング(コンサルテ
ーション)を行った。
平成 18 年 4 月~平成 19 年 1 月現在
のべ回数 55 回、ケース数 45 件
3-c.県内各地における講座・セミナーの開催
3-c-1.教育実践セミナー(新潟市) <部門共通>
主 旨
会 場
教育実践総合センター専任教員が、それぞれの専門分野を生かして、学校教育の直面する課題に
ついて、異なる観点から講義・演習の機会を提供する。
新潟大学駅南キャンパス(CLLIC)
(第 1~3 回)
、教育人間科学部(第 4 回)
181
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要 教育実践総合研究 第6号 2007年
概 要
講 師
受講者
第 1 回 2006 年 12 月 16 日(土)教師の使えるカウンセリング技術 (1)
第 2 回 2006 年 12 月 16 日(土)教師の使えるカウンセリング技術 (2)
第 3 回 2007 年 1 月 13 日(土)教師・市民のための国際理解教育教材開発・授業モデル開発 (1)
第 4 回 2007 年 1 月 27 日(土)教師・市民のための国際理解教育教材開発・授業モデル開発 (2)
松井賢二(第 1 回・第 2 回、教育実践総合センター)
宮薗 衛(第 3 回・第 4 回、教育実践総合センター)
現職教員、学生、学校相談員、一般市民等、総計(のべ)約 75 人
3-c-2.夏期教育実践研修講座(中越地域) <部門共通>
主 旨
日 時
会 場
概 要
受講者
教育実践、教科教育、教育臨床の側面から、今日の学校教育が抱えている問題を総合的に解明す
ると同時に、改善の方途について考える。
2006 年 8 月 1 日(火)
、8 月 2 日(金)
、10 時 30 分~12 時 30 分、14 時 00 分~16 時 00 分
新潟大学教育人間科学部長岡地域リサーチセンター(教育実習宿泊施設「和光寮」
)
第 1 回 教師のための学校カウンセリング(入門編) 松井賢二
第 2 回 社会科授業づくりの基礎 宮薗 衛
第 3 回 学力について考える 岡野 勉
現職教員、総計(のべ)約 40 人
3-d.専任教員による学校教育現場等への指導・助言・参加活動
No.
1
2
名 称
巻町立巻西中学校
キャリア教育に関する校内研修会
「キャリアカウンセリング」
長岡市立黒条小学校 NIE 授業研究会
「総合的な学習の時間」の分科会指導助言
及び全体指導
参加者数
担 当
松井賢二
日 程
12 月 25 日
対 象
現職教員
30 人
宮薗 衛
11 月 17 日
教職員
約 80 人
上記に加え、県内各地の小、中学校等の研究会、研修会等において、指導・助言・講評等を行った。
4.各センターの外部資金導入状況
4-a.センター専任教員が研究代表の科学研究費受給状況
研究種目
基盤研究(C)
基盤研究(C)(2)
特別研究員
奨励費
基盤研究(C)(2)
研究題目
学校数学としての分数論の原型の形成過程
-明治期の算術教科書を対象として
大学生のキャリア形成を支援するためのキャ
リア教育プログラムの開発研究
大学生の職業価値観に関する日英間の比較研
究
教員養成段階における参加体験型環境教育カ
リキュラム開発のための実践的研究
本年度金額
50 万円
90 万円
40 万円
70 万円
研究期間
平成 17~
19 年度
平成 16~
18 年度
平成 16~
18 年度
平成 15~
18 年度
研究代表者
岡野 勉
研究期間
平成 18 年
度
研究代表者
宮薗 衛
研究期間
平成 16~
18 年度
研究代表者
高橋 渉
松井賢二
松井賢二
宮薗 衛
4-b.センター専任教員あるいはセンターとして受給した外部資金導入状況
委託依頼者名
新潟県国際交
流協会
研究題目
大学&NGO と連携した国際理解教育のため
の教材開発研究
本年度金額
202.9 万円
4-c.センター専任教員が他のセンターと連携して申請した科研費受給状況
研究種目
萌芽研究
研究題目
不登校児童生徒の潜在意識測定による支援効
果の検証
本年度金額
110 万円
(信州大学)
5.将来構想
(1) 附属学校園との共同研究体制の充実・発展を図る。
(2) 全学の教職センター的な機能を果たす方向で整備を図る。
(3) 県教育委員会、市教育委員会、新潟県内の教育関係諸機関との連携・協力体制の強化を図る。
182
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター
研究紀要の編集・発行について
1 新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター(以下「センター」という。)は、研究紀要を発
行し、
「教育実践総合研究」
(以下「研究紀要」という。
)と称する。
2 研究紀要は原則として年 1 回発行する。ただし、センター運営委員会の議を経て臨時に発行する
ことができる。
3 研究紀要は、教育実践に関する論文を掲載する。
4 前条の論文の執筆者は、原稿の採択時において、学部および附属学校園の教員とする。
4-1 学部および附属学校園の教員以外の者との共同執筆については、学部および附属学校園の
教員を筆頭執筆者とする場合に限り、これを認める。
4-2 ただし、編集委員会が特に認めた場合は上記の限りではない。
5 研究紀要は、センター運営委員会の責任において発行する。
5-1 センター運営委員会は、研究紀要発行のための予算・編集の基本方針及びその他の重要問
題について決定する。
6 研究紀要の編集及び発行に必要なその他の事項は、研究紀要編集委員会(以下「編集委員会」とい
う。
)が処理する。
7 編集委員会は、センター運営委員会において選出された3名の委員をもって構成する。
8 研究紀要に論文を掲載することを希望するものは、その原稿を編集委員会に提出する。
9 応募要項およびその他の必要事項については、センター運営委員会において、別に定める。
附則 本要項は、平成 14 年 3 月 6 日から実施する。
編集委員
常木 正則
松井 賢二
岡野
勉
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要
教育実践総合研究 第6号
編集・発行:2007 年 8 月 31 日
新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センター
〒950-2181 新潟市西区五十嵐二の町 8050
Tel 025(262)7090
Fax 025(262)7135
http://www.ed.niigata-u.ac.jp/
Bulletin
of
Center for Educational Research and Practice
Faculty of Education and Human Sciences
Niigata University
No.6
CONTENTS
Mamoru MIYAZONO, Yasuhiro KODAMA, Kazuhiro TANAKA, Yasushi IWAMI, Suguru AKASHI,
Nobuaki MARUYAMA
Developing a Social Studies Plan for Contemporary Chinese Society Understanding
-Through Study-Tour to Heilongjiang Province- ..............................................................1
Yoshinori YUKI,Norie FUJIBAYASHI
Teaching on propagation processes of seismic waves,using the 2004 Chuetsu Earthquake,
Niigata Prefecture ................................................................................................................ 29
Kaoru TAKIZAWA,Masako KANOME
Teaching Rhythmical Gymnastics with Rope to the middle years of Primary School
........................... 47
Yoshihiro INO
Value as Teaching Material of Japanese Folk Songs and a Teaching Plan of Nagaoka-Jinku
................................................. 55
Shuji MORISHITA,Tomohiro YOSHIMURA,Ayumi WADA,Masaki KIKUCHI
Teaching John Cage’s works: some perspectives on a class music education
by Contemporary music in a junior high school ................................................................... 83
Committee of School-internship, Graduate School of Education, Niigata University
School-internship Report (2005-2006) ................................................................................. 93
Annual Report of the Center of Educational Research and Practice .......................................... 179
2007
Published by
Center for Educational Research and Practice
Faculty of Education and Human Sciences, Niigata University
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