第32回議事録 - 通称:宇宙法研究所

第32回宇宙開発委員会議事録
1. 日 時 平成13年9月12日(水)13:58~15:30
2. 場所 宇宙開発委員会会議室
3. 議 題
(1)
熱帯降雨観測衛星(TRMM)の軌道高度変更について
(2)
NASDA・ESA・CNESの国際共同ベッドレスト研究の実施について
(3)
「我が国の宇宙開発利用の在り方」について
(4)
その他
4. 資 料
委 32-1
熱帯降雨観測衛星(TRMM)の軌道高度変更について
委 32-2
NASDA・ESA・CNESの国際共同ベッドレスト研究の実施につい
て
委 32-3-1 「我が国の宇宙開発の在り方」の検討について
委 32-3-2 諸外国における宇宙開発の動向について
委 32-3-3 宇宙開発に対する過去のアンケート調査結果について
委 32-3-4 「我が国の宇宙開発の在り方」の検討スケジュール
委 32-4-1 宇宙開発の現状報告(平成 13 年9月6日~9月 12 日)
委 32-4-2 第 31 回宇宙開発委員会議事要旨(案))
5. 出席者
宇宙開発委員会委員長
井口雅一
宇宙開発委員会委員
川崎雅弘
〃
栗木恭一
〃
五代富文
〃
澤田茂生
文部科学省研究開発局長
今村努
文部科学大臣官房審議官
素川富司
文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之
6. 議事内容
【 井口委員長 】
会議の初めに一言発言させていただきます。
このたび米国でテロと見られる行為により大惨事が発生し、多くの犠牲者
が出たことに対しまして、委員会として衷心よりお見舞いを申し上げます。
また、グローバル化した世の中ですので、これがどのような影響を日本に、
あるいは日本の宇宙開発に及ぼすのか、これから注意深く見守っていきた
いと思います。
それから、今日9月12日は「宇宙の日」です。1992年、今から9年前、毛
利さんが日本の宇宙飛行士として最初に宇宙に飛び立った日でもあります。
それでは、第32回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
最初に、熱帯降雨観測衛星(TRMM)の軌道高度変更につきまして、宇
宙開発事業団の古濱理事から御報告をいただきます。よろしくお願いしま
す。
【 古濱理事 】
古濱でございます。どうも今日は遅くなりました。
それでは、熱帯降雨観測衛星の軌道高度変更について御説明いたしま
す。
今日の報告の内容は、1997年11月にTRMM衛星が打上げられまして、
今年の1月に定常段階を終了いたしました。このことについては、過日、こ
の委員会で報告いたしました。
その当時、NASAは残燃料の点から大体3年間ぐらいは今後観測が継続
できるであろうという予測をつけておりました。ところが、ミールの大気圏再
突入などのことがございまして、このTRMM衛星を3年後にリエントリーさせ
ようとしたところ、どうも残燃料の評価が間違っていたのではないかというこ
とになりまして、68㎏という当初の予定から157㎏必要だということがわか
りました。
この対処の仕方といたしましては、ミッション期間を短縮するか、あるいは
高度を350㎞から約400㎞に上げることが考えられます。高度を上げた場
合、大気のドラッグが少なくなりますので、期間が延長できると。そういった
ことがございまして、今回は後者の案を検討いたしました。
そして、今年6月の国内の代表研究者会議、それから日米のTRMMのサ
イエンスチームといったところで検討いたしまして、高度を変更することが提
案されました。
そして、これはフォーマルにも確認されまして、今年の8月、NASAのアス
ラー局長と私の間で文書を取り交わしまして、8月7日から8月24日にかけ
まして6回にわたるマヌーバを行いまして、目標の402.5㎞にTRMM衛星
を置くことができました。今日はそのご報告をいたします。
なぜそうまでしてTRMMのミッション期間を延長する必要があるのだろう
かということですが、過去3年間でTRMMにより、例えば熱帯、亜熱帯域の
降水データ、海上で新しく初めて系統的にデータが取れた。それから、エル
ニーニョの消滅ですとか、亜熱帯の海流の反流のメカニズムの解明です。こ
ういった観測をさらに継続したいということです。
例えば、エルニーニョとかラニーニャ、これは水温が縦軸で、横軸が年代
でございますが、赤いところがエルニーニョです。例えばエルニーニョのとき
は、こういうところで降雨が非常に強く出る。それからナニーニャのときは、
こういった降雨が少なくなる。そういったことがわかっておりますが、今後、そ
ういったことがどうなっていくか。またどういうメカニズムでこれが起こるか、
そういった解明にはTTMM衛星のデータが必要であろうということでござい
ます。
第2点目といたしましては、世界の気象機関がこういったTRMMのデータ
を使いまして、気象予報、特に長期予報の精度の向上に資しているわけで
すが、例えば第1項目のヨーロッパの気象機関ですと、このデータを系統的
に使いまして全球モデルに導入して精度の向上を図っています。過去の衛
星のデータに比べて、TRMMの衛星のデータを使った方が精度が上がると
いう統計的な結果が出ております。
また、NASAにおきますモデルによる同化を行った結果、気象予報の精
度の向上に資することができるとか、我が国の気象庁におきましても、TRM
MのTMI、TRMMマイクロイメージのデータを使って気象予報の向上を図っ
ている。そういったことがございまして、これは現在のTRMMから将来のマ
イクロラジオメーターを使うようなデータ業務、ひいては、TRMM4のGPM
までこういったマイクロラジオメーターを使って気象予報の精度を向上すると
いうことが現実問題として進んでおります。
それから、最後の3つ目の論点なんですが、こういったTRMMの観測を
継続することによりまして、将来のGPMなどで実現できるような観測を予行
演習できるといいますか、先取りができる、それがこの図でございます。現
在、TRMMのフローオンと、それからAMSR-E、これは今後上がる衛星
ですけれども、またADEOS- のAMSRも今後上がる衛星ですけれども、
それぞれマイクロ波放射計を積んでおりまして、そういったものとTRMMを
組み合わせますと、次の世代にTRMMフォローオンでコンストレーションの
システムによってコア衛星と小型衛星で取ろうといったような全球の降雨分
布をTRMMの観測期間を延長することによって、今後可能になるということ
であります。
従いまして、TRMMのミッション期間を延長した方が望ましいということで、
どのようにミッションを延長させるかということであります。もし延長させない
と、どうなるかということですが、この縦軸が残燃料で、横軸が時間です。今、
この赤いところ、この段階で検証したわけですが、その段階では400㎏ぐら
い推薬は残っておりまして、現状のままですと、大体157㎏というリエントリ
ーに必要な燃料が2002年の12月にはなくなってしまいます。8月の段階
でそれを400㎞に上げますと、大体ここで2007年の9月まで持ちます。そ
れをもし来年の1月ごろに400㎞に持っていくと、大体それが2005年近傍
になってしまう。5カ月の違いが、2年間ぐらいのミッションの延長にかかわっ
てくるということで、できるだけ早い方が良く、急遽軌道を上げることにしまし
た。
この赤い線というのは、平均値と2シグマの分散部分でありまして、太陽
風の確率的な変動によりまして、衛星の軌道が影響されますので、それを
加味した結果であります。この太い方をとって今お話しします。高度を変更し
たときの影響ですが、TRMMのバスですとか、TRMM以外のセンサにはあ
まり影響はないだろうという結果になりました。
それから、TRMMの観測には降雨の観測、PRの観測には感度に変化
がある。これは後ほど少し説明いたします。それから、地上のソフトウエアの
改修が必要となる。
特に、TRMMの降雨レーダにつきましては、まず、最初の感度の低下、こ
れは距離が片道で50㎞ぐらい長くなりますので、距離の自乗に比例するも
のだけ感度が弱くなります。それが往復効いてきます。それから、高度が高
くなりますと、瞬時視野角が青いところから白抜きの、つまり4.3㎞から6km
ぐらいにフットポイントが大きくなります。そのため、分解能が非常に低下す
るということになります。
そのほかに、このTRMMのレーダというのは1つの時間を49に分けてビ
ンが並んでおりまして、1つの観測ビンの中で、32ビットパルスを打ち込ん
で、その平均をとって、衛星の上でそれを処理して送ってくることになってい
ますが、その32番目のパルスのヒットと、次のビンの最初のヒットでは受信
機の上で重ねまして、事実上、各ビンの最初の部分が使えなくなる。つまり、
32分の31ルートに関する部分だけハード上損傷が出てくる。誤差が出てく
る。まあ、そういったことになりまして、それを補正してやる必要があります。
そういったことが必要になります。
その結果どうなるかということを説明します。例えば、8月2日に取ったデ
ータでエスティメーションしてみます。これが350㎞の実際の観測点であり
まして、そのデータをもとに402㎞に高度を上げた場合、こういったところの
弱いところの部分の降水が観測できなくなる。しかし、全体的にはほとんど
劣化が顕著でないという結果になりました。
それをもう少し三次元的なもので焼き直してみますと、たと350㎞、402
㎞としますと、この辺のものが見えなくなる。あるいはこの辺の先っぽの部
分が少しなくなっている。ここの部分も少し変わっている。まあ、その程度で
ありまして、外観的にはほとんど変わらないということであります。
それで、今度は高度の上下の結果なんですが、これは右側の方が残燃
料でありまして、左側の方が高度であります。高度をこの350㎞の段階から
6回のマヌーバによって平均的な軌道が402㎞になったわけですが、軌道
自体はこのように地球がいびつになっていますから、高度も平均高度が40
2㎞です。
ともあれこのように6回のマヌーバにより402㎞になり、残燃料は350㎏
です。ですから、向こう3年間以上にわたって観測ができることになります。
これは8月29日の台風のデータで、左側の方がTRMMの降雨データ、右
側の方がTRMMのマイクロイメージのデータです。ちょうど日本列島に台風
12号が来たとき、この図が取れております。
今後の予定でございますが、9月4日のときのリアルタイムデータを配布
しておりまして、中旬ごろに校正をしたデータを供給開始、来年の2月には
検証済みのデータを開始すると。
報告は以上でございます。
【 井口委員長 】
どうもありがとうございます。
御質問、御意見、いかがですか。どうぞ。
【 五代委員長 】
軌道のあれが予想と違ったというのは、まあ、いろんな理由があるんでし
ょうけれども、太陽活動期だとか、上層の大気密度が思ったよりも大きくなっ
た、これはまあしようがないけれども、もう一つはパラメータとかで、計算の
途中で間違えて、一番あるのは、面積の取り方とか、それからパラメーター
の値とか、重力の加速度を入れなかったとか、あるいはどこかのバグだとか、
どんなところなんでしょうか。
【 古濱理事 】
それは非常に奇妙なんですが、確かめたところによりますと、どうも以前
の燃料の評価にはその専門家がきちっと評価したわけではなくて、大体こん
なもんだろうという感じで設定したようで、ミールのこと以来、これは非常に
重要なことであるということで、専門家がそれをきちっと評価したら、それだ
けの差が出てきたと、そういう説明を聞いております。
【 五代委員 】
それが本当なら、かなりレベルの低い話ですね。だって、ドダーでしょう。
【 古濱理事 】
そうです。
【 五代委員 】
ドダーなら専門家は山ほどいたはずでしょう。
【 宇宙開発事業団 】
NASAの方からは、スラスターの推力が残燃料とともに変わるということ
と、それから、運用制約が十分に考慮されてなかったと。一回に3分間だけ
……。
【 五代委員 】
どこかのときにまた吹いてしまうとか。
【 宇宙開発事業団 】
はい、連続して吹くことができるというような、そういうような運用制約を十
分に顧慮してなかったという、この2つが推定の残燃料の違いになってあら
われてきたという説があります。
【 五代委員 】
NASAのレビューが悪いんですね。
【 古濱理事 】
かなりお粗末ですな。
【 川崎委員 】
1つよろしゅうございますか。こういうおもしろいいろいろな結果が出ている
といますが、一体このデータの主たる管理というのはどういう格好になって
いるんでしょうか。要するに、気象庁に入った切り出てこないということなの
か、NASDAに入った切りで出てこないのか、あるいはある学者のサークル
で使っていて、そのまま出てこないということか、どうでしょうか。
【 古濱理事 】
衛星自体は5つのミッションを持っていまして、衛星自体はNASAで作り
まして、降雨レーダは日本がNASAに持ち込んだんですが、データは一元
的にNASAで取得して、降雨レーダのデータは即刻日本に来るようになって
おります。基本的に降雨システムのデータはオープンになっております。
【 川崎委員 】
せっかくだから、特に日本人に関心の高い台風の、今度の例えば16号の
ようなふらふらしているというのをつかまえたら、こういう状況だよとか、周辺
の海水温はこんな状況だよとか、総合的に解析したのを、リアルタイムとは
言えないけれども、かなり早い状況で情報提供を一般にできるようにすれば
ですね……。
【 古濱理事 】
昨年の9月から一般的に、3時間遅れで公表しております。インターネット
で全部取ることができます。
【 川崎委員 】
だから、そういうのをうまくマスコミや、気象庁で使ってもらうとか、何か工
夫が要るんじゃないですかね。要するに、こういうデータが裏にあるという実
態をみんな知らないわけでしょう。
【 宇宙開発事業団 】
気象庁につきましては、10月ぐらいから定常的な業務にこのTRMMのデ
ータを使って、気象予報業務に実験的に使っていくということになっておりま
す。
【 川崎委員 】
今年の10月からそうするの。
【 宇宙開発事業団 】
はい。
【 川崎委員 】
そうすると、今までは使ってなかったのですか。
【 宇宙開発事業団 】
今までは実験的に使っていまして、TRMMのデータを気象予報業務に取
り入れると、予報精度が上がるということがわかっておりますので、今後は
そのTRMMの寿命が長くなることになり、気象庁としても積極的に使ってい
きたいとのことでございます。
【 川崎委員 】
だから、むしろ使う前に、こういう効能がありますということをはっきりみん
なに示さないといけない。
【 五代委員 】
TRMMが上がってから、興味深いことがいっぱいあるわけですね。です
から、それを積極的に出すようにということで、新しい事象のときにはかなり
出したんですね。少し定常になってくると、そこの部分が欠けてきているんじ
ゃないですかね。やっぱり今の台風みたいなことなら、やっぱり皆さん興味
がありますから、事象としてというか、学問的にはつまんないかもしれないけ
れども、出してもいいんじゃないか。そのときに、気象庁が出さなきゃいけな
いのか、こちらは出さないのか。
【 古濱理事 】
基本的にオープンにはなっているわけですね。
【 五代委員 】
オープンだけど、やっぱりおもしろいような解説というか、何か説明をつけ
て出してみてはどうですか。
【 川崎委員 】
タイミングが合うといいかと思うんですが。
【 古濱理事 】
たまたま衛星のパスが台風が通るところができれば、非常に都合がいい
のでございますが、この間の台風15号は取っておりませんね。
【 宇宙開発事業団 】
多分取ってないんだと思いますけれども。
【 川崎委員 】
また台風16号が沖縄に長くいるからね。
【 五代委員 】
まあ、今までもそういうつもりではいたんだろうけど、この後も、積極的に
そういういろんなところにだしたらどうなんでしょうね。学問とこういう実利は
別ですから。
【 古濱理事 】
出しているのは、全部出しているんです。ただ、解説をして、マスコミにア
ピールするという、そこは弱いかもしれないです。
【 五代委員 】
マスコミが飽きるぐらい出したっていいわけです。
【 栗木委員 】
私が聞いたのは、進路予想は正確になったという話を聞いたんです。
【 古濱理事 】
はい、前回ご報告しました。
【 栗木委員 】
そういうのはわかりやすいデータですよね、学問的にも裏づけがあるかも
しれません。スピードは難しいけど、進路の予測は正確になったと。
【 古濱理事 】
はい、前回もそういうご案内をいたしました。
【 井口委員長 】
これからこういう開発は利用技術といいましょうか、利用システムと一体で
開発するという方向だろうと思うんです。
それから、こういうデータがどこかで精度だとか、クオリティについてある
程度オーソライズされないとなかなか使いにくいというお話を前にやってい
ましたね。それも含めて、もう利用することを前提にこれからなるたけ進めて
いければと思っていますけれども。
【 五代委員 】
確かにTRMMシンポジウムとか、それは開かれているけれども、もう一つ
一般にも。
【 川崎委員 】
いいことをやられているのに知らせようとする努力が少し足りないんじゃな
いかなというのが、最後に私が言いたかったことなんです。
【 井口委員長 】
そう、すべてについてですね。
【 古濱理事 】
これまでのデータに比べれば、飛躍的にそれを強めているのですが、ま
だ期待される要望に十分こたえていないということは確かだと思いますので、
頑張りたいと思います。
【 井口委員長 】
何分よろしくお願いいたします。
【 栗木委員 】
NASDAとして、このTRMMがアクティブエントリをする最初の衛星になり
ますか。
【 宇宙開発事業団 】
NASDAとしてはおそらく最初の衛星だと思います。
【 栗木委員 】
そうですね。ぜひそのときには体制を固めて、計算間違いのないように。
【 宇宙開発事業団 】
NASAが基本的に衛星の運用の側面をやっておりますので。
【 栗木委員 】
その辺の仕事の分担がよくわからないので、見えるようにしていただいき
たい。
【 川崎委員 】
これはもともとアメリカの中古の衛星を持ったものです。一番最初のきっ
かけは知っているんです。
【 井口委員長 】
先に進めさせていただきます。どうもありがとうございました。
【 古濱理事 】
ありがとうございました。
【 井口委員長 】
2番目に「NASDA・ESA・CNESの国際共同ベッドレスト研究の実施に
ついて」、宇宙開発事業団宇宙医学研究開発室の大島さんに御報告をお願
いします。よろしくお願いします。
【 大島主任研究員 】
大島です。よろしくお願いいたします。
NASDAはESA、CNESと合同でフランス・トゥールーズ市におきましてベ
ッドレスト研究を開始いたしましたので報告いたします。
2番、経緯でございますが、宇宙ステーションでは、3カ月から6カ月の宇
宙滞在が本格化し、有人宇宙開発の新たな時代を迎えます。長期宇宙滞
在に必要な新たな対策法の検証及び基礎データの取得を目的として、地上
で微小重力を模擬する長期ベッドレスト研究を共同を企画しました。
研究実施は、第1期が9月3日から12月の7日までの3カ月間。第2期は、
来年の4月から7月までフランスのトゥールーズ市のメディスというCNES関
連の研究所におきまして行うものでございます。
以下、添付資料をもとに説明させていただきます。
2ページ目にベッドレストの実際の写真がありまして、頭を6度下げて、宇
宙の体液バランスを模擬した状態で90日間臥床し、3カ月の宇宙滞在を模
擬するものでございましす。生体への影響を調べ、対策を検証するというも
ので、食事や排泄もベッド上で行われ、食事を食べている写真でございます。
次の3ページ目には、ベッドレスト研究についてでございますが、1番、宇
宙滞在における生体への影響です。地上の1Gの重力に適した構造を有す
る人の身体機能は、重力から開放されますと、さまざまな生理的変化が引
き起こされます。
2段落目ですが、例えば地上の骨粗鬆症では、腰椎の骨の密度は年間1
~2%の減少の程度でございますが、宇宙滞在では、これまでの報告によ
りますと、1カ月当たり約 1.5%、急速な骨量減少が報告されています。これ
は骨の負荷が減少すると、カルシウムが漏出し、骨量減少、尿路結石など
の問題が発生するというような状況でございます。
また、筋肉の萎縮は、スペースシャトルによる我々の結果によれば、1日
でふくらはぎは1%程度の筋の萎縮が観察されております。
そこで、2番のベッドレスト研究でございますが、人をベッドにある一定の
期間臥床させ、活動量の低下及び頭から足へ重力の負荷がない状況が生
体にどのような影響を与えるのか、また対策の有効性を調べる有人研究で
ございます。
4ページ目に移りまして、2.2項の研究期間でございますが、今年の9月に
3日から3カ月間のベッドレストを行いますが、そのベッドレストの直前直後
の変化を15日間のプレスポットのデータ取得、また長期の回復の過程を終
了後1年後まで調べる予定でございます。
2.1項、被験者を3群に分け、運動群はESAが提案する軌道上で用いら
れる新たな運動器、フライフィール・エルゴメーターによる対策法、薬剤投与
群はNASDAが提案する骨粗鬆症治療に有効なビスフォスフォネートによる
対策法の有用性を検証したいところであります。
最後、5ページに移らせていただきます。
1番、NASDAの宇宙医学研究開発の全体像でございますが、日本人宇
宙飛行士の長期宇宙滞在に備え、宇宙飛行士の健康を維持し、最大のパ
フォーマンスを発揮するために、生理的な対策法、精神心理の支援はどう
あるべきか、放射線被曝をどうするか、また軌道上の健康管理をどうシステ
ムとして構築するかということを最重要課題として飛行前中後あるいは実証
を含めた体系的な対策を構築しつつあります。
本ベッドレスト研究は、その生理的対策法を宇宙飛行士に実施する予定
のものを地上であらかじめ検証するという位置づけでございます。
ビスフォスフォーネートでございますが、近年骨粗鬆症の治療薬として骨
量減少抑制剤としてのビスフォスフォネートの科学的な有用性、これは骨密
度が増加する、骨折の頻度が減少するということがエビデンスベースで徐々
に科学的に証明されつつあります。
これらを踏まえ、宇宙開発事業団では宇宙飛行に伴う骨量減少のリスク
評価をどうするか、具体的な対策をどうするかというガイドライン、骨量減少、
尿路結石対策を作成し、その対策の妥当性を検証することが本目的でござ
います。
最後、期待される成果でございますが、本研究におきまして予防効果が
確認できますれば、実際の宇宙飛行士の飛行中、非行後の健康管理に適
用できる可能性があります。
また、国際宇宙ステーションでは、搭乗クルーを対象とした共通の医学デ
ータを取得し、これを運用担当者のみならず、対策法の構築には共用して
使えるようにしようという議論が行われています。
本ベッドレスト研究におきましても、宇宙飛行士に対応して行う共通データ
に対する医学データを取得しまして、被験者の健康管理及び将来の宇宙医
学研究のデータベース化に役立てたいと考えています。
最後に、高齢化社会を迎え、寝たきりの原因として骨粗鬆症、骨折が医
療や介護で問題となっていますが、本研究の結果及び宇宙飛行士への取り
込みということの提示は、地上の骨粗鬆症に対する予防あるいは健康指導
の事例あるいは学校の保健体育の教材などに役立てることが期待されてい
ます。
以上でございます。
【 井口委員長 】
どうもありがとうございます。御質問、御意見いただきます。
【 五代委員 】
筑波宇宙センターにもベッドレストってありますよね。それで、NASDAで
あれを使って、ある程度研究されていると思うんですが、それがどの程度な
のか、また、それと今度の国際共同計画との関係を教えてください。
【 大島主任研究員 】
NASDAではこれまで1週間のベッドレストをNASDAみずから、及び研
究者の公募研究として実施しています。生体の変化で起こる変化、例えば
体液シフトの変化など1週間で起こりますが、例えば骨の変化などは月単位
の変化を見る必要がある。月単位の研究を行う場合には、運用上の必要経
費がかなり多くなるというような状況がございまして、NASA、ロシアは独自
の研究体制を行いますが、ESAやヨーロッパやNASDAはそれらに対抗し
た新たな対策を検証する機会を共同の資金分担の中で試みたいという状況
でございます。
【 井口委員長 】
ほかにいかがでしょうか。こういう研究が進めば、地上にいる人に対する
いろんな医学的な問題にも対応できるデータが得られるわけですか。
【 大島主任研究員 】
はい、そう考えていて、これらの対策法は地上の医学の各分野の専門家
と一緒に対策をつくって、結果もそういう先生方と一緒に解析いたしまして、
成果は公開したいと考えています。
【 井口委員長 】
ほかにいかがでしょうか。
では、ございませんようですので、終わらせていただきます。どうもありが
とうございました。
それでは、今日の一番大事な議題なんですが、「我が国の宇宙開発利用
の在り方」について、資料32-3-1を、芝田課長さんから御説明をお願い
します。
【 芝田宇宙政策課長 】
これは前回、案を出させていただいたものでございますので、今回は、こ
れでよろしければ決定していただきたいと思います。
前回御意見がございますように、タイトル等で宇宙開発だけではなくて、
利用も入れようということで宇宙開発利用というふうになってございます。
それで、下の方の検討のテーマの例のところでございますように、この検
討の位置づけをはっきりしようということで、最終的な成果としては、3機関
統合後の新機関が重点的に取り組むべき事業を明らかにしていこうというこ
とで、それの前段階として、官民の役割分担と協働といったようなテーマが
あり、またそれの前段階として、我が国の宇宙開発利用の目的と方向という
幅広い視野からの議論が必要になろうというような位置づけを、ここはちょっ
と書き方を変えてございます。
以上です。
【 井口委員長 】
いかがでしょうか。これはよろしければ、ここで決定をいたしたいと思いま
すので、よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
【 井口委員長 】
御異議ございませんので、このような検討を行うということに決めさせてい
ただきます。
それでは、内容につきまして、次に、諸外国における宇宙開発の動向、塩
満室長さんに説明をお願いいたします。
【 塩満調査国際室長 】
資料の32-3-2に基づきまして説明させていただきたいと思います。
A3の紙でNASA、ESA、CNES、それから参考としまして日本の資料を
添付させていただきました。
いわゆるミニNASAといったときに、やはりNASAの活動状況のプロフィ
ールだけを整理させていただきたいと思いまして、宇宙輸送系、それから通
信・放送、地球観測、有人宇宙飛行,宇宙開発という、この5つの分野に関
しまして、米国、ESA、フランスを代表するCNESの活動を整理させていた
だきました。
さらに、予算、それから人員の特徴につきましても後ほど説明させていた
だきたいと思いますそれでは、最初にNASAから御説明させていただきた
いと思います。
1枚目の紙でございますが、NASAの最近の国家宇宙政策ということでご
ざいますと、1996年にクリントン大統領がまとめられた政策が最新のもの
になっています。まだブッシュ大統領にかわられてからは宇宙政策は公表さ
れていません。
それから、NASAの戦略計画という意味では、2000年の10月に出たビ
ジョンが最新のものになっています。
クリントン政権のときに出されたものを見ますと、やはり各国とも共通する
宇宙プログラムになっているんですが、科学知識を深めるという意味で、有
人・無人探査を進める。それから、次に安全保障の強化ということが書かれ
ています。それから、経済競争力、科学技術能力の向上、次に、やはり産業
界も含めた宇宙技術への投資、利用の促進、さらには国際協力への促進と
いうことが書かれています。
宇宙輸送系に移りますが、宇宙輸送系の特徴といたしましては、昔から
のマーキュリー計画、ジェミニ計画などを通じて、有人宇宙飛行ということで
は経験が豊かなのでございますが、開発中のところをちょっと御覧になって
いただきますと、NASAは再使用型の輸送機の開発に力を入れ、国防総省
の方は使い切り型ロケットの開発に力を入れているということでございます。
それから、通信・放送・測位につきましては、民間主体で衛星通信の事業
について経験を積んでいるという状況もありまして、現在までのことで申しま
すと、NASAは、通信実験とか基礎実験の推進、それから国防省におきま
しては、GPSの整備・運用ということでございます。開発中のところではDo
Dだけが載っているという状況を見ますと、やはりNASAはあまり通信・放
送・測位に関しましては、今度の展望を必ずしも明らかにしていないという状
況でございます。
次に地球観測・気象でございますが、こちらは真ん中の開発中のところを
御覧になっていただきますと、かなりいろいろな計画があるようで、地球シス
テムの変化、それからモデル化に力を入れているという状況だと思います。
有人宇宙飛行につきましては、現在まで国際宇宙ステーション計画など
いろいろな計画を順調に進めていらっしゃる。将来目的としましては、人間
が宇宙で恒久的に居住・労働できるようにする目的というのを掲げています。
宇宙科学につきましては、太陽系探査、それから天文衛星による観測を
進めていて、宇宙の進化をその起源から終焉まで描き出すということを目標
としています。
予算の推移を一番下の段に書きましたが、実数で見ますと、着実とは言
えませんが、上昇傾向にありますが、1999年のベース換算値に直しますと、
幾つか山があるというような推移が見られます。予算的には、やはりNASA
は非常に大きくて、NASA自身で1兆5,000億円ぐらいの予算、DoDを含
めますと3兆円ぐらいの予算を使って進めている。
人員におきましても、NASAだけで1万8,000人、DoDを加えますと、4
万人ぐらいの方が従事されている。
人工衛星打上げ数もかなり数が多いということでございます。
次にESAに移ります。
2枚目にESAの宇宙活動が目指す方向についてというカラーの絵をつけ
てあります。
これも先ほど申しました5分野につきまして整理いたしました。
ESAの特徴といたしましては、宇宙輸送系で申しますと、やはりアリアン
ロケットのシリーズの強化という意味で、アリアン5の能力向上、それからコ
スト削減ということが訴えられております。
さらに将来傾向といたしましては、最終型打上機の開発ということ。それ
から、新しい推進システムの開発ということに力が置かれているかと思いま
す。
それから、次に通信・放送・測位でございますが、これは衛星通信技術の
開発という意味で、ARTEMISの活用、それからほかには、全地球的衛星
測位システム、これはアメリカのGPSにも対応できるシステムとしてのガリ
レオの構築などが、現在開発中のものとして重点が置かれています。
将来も同様でございますが、ガリレオの構築ということで、これはナビゲー
ションシステムの構築ということ、それから安全補償、平和維持のための宇
宙システムの開発ということ、さらに、地上における競争力の強化ということ
についても力が置かれています。
地球観測は、真ん中の欄でございますが、リモートセンシング、それから
気象衛星、地球観測衛星の開発を進めていらっしゃいますが、これも目的と
いたしましては、実用化に重点を置いたミッションの実施、それから環境規
制、それから災害監視という意味での技術開発の推進ということが進められ
ています。
先ほどの資料では、NASAの方は有人宇宙飛行と書いてございましたが、
ESAの方は、やはり国際宇宙ステーションが中心になりまして、有人宇宙
飛行という意味では中心になるかと思います。現在までは微小重力実験、
それから国際宇宙ステーションへの参加、スペースシャトル、ミールへの参
加ということで宇宙環境利用あるいは国際宇宙ステーションの推進を進め
ていらっしゃいます。
開発中のものといたしましては、コロンバス実験室の開発、それから自動
輸送機の開発などがございます。将来的にもやはりISSの応用ということが
中心に置かれています。
宇宙科学につきましては、NASAとの共同ミョションも数多くありますが、
先ほどの太陽系の観測、それからハッブル宇宙望遠鏡のような天文、宇宙
というものがこれまで進められています。
最後の将来のところを御覧になっていただきますと、太陽系探査に関する
オーロラ計画の実施など、それから宇宙エネルギー、資源の開発ということ
も、宇宙関係の分野と言えるかどうか、若干複合領域というか、境界領域に
なりますが、目指されています。
ESAの資源の配分という意味では、予算総額としましては、2000年度、
3,050億円ということで、NASAに比べると予算額としては少ない。
それから、職員数も10分の1程度の 1,700名ということでございます。
それから、最後でございますが、CNESの宇宙計画でございます。
一番下のところに「2001年CNES予算」を書かさせていただきましたが、
CNESへの予算という意味では、88億 1,000万フラン、大体 1,500億円程
度でございますが、そのうちESAへの拠出金というものがございます。ESA
からのアリアンプログラムへの出資金というのがございますので、CNES自
身が出資している額といたしましては、113億 1,000万フラン、約 1,900億
円ということになります。そういう意味では、日本と比較的には類似している
と思われます。
人員は 2,500名でございまして、これはこちらの方が多いと思います。
同じように5分野で御覧になっていただきますと、ESAとかなり類似してい
る部分としましては、宇宙輸送系、アリアン5の能力を高めていくということ、
それから太陽系惑星の宇宙旅行の見通しとしては、将来的なコンセプトとし
て必要な技術を確保していくということが考えられています。
それから、プライオリティーとして置かれていますが、宇宙通信の推進と
いう意味では、経済性向上のための企業が自発的に行う活動を支援すると
いうことを目指した通信・放送・測位の開発、それから利用の支援をしていく
ということでございます。
さらに、先ほどのESAのときの説明と同じでございますが、カリレオの関
係で、システム開発に参加しています。
地球観測につきましても、これは長年SPOTシリーズというものを連続し
て運用、それから、さらに開発中のところでは、かなり高い分解能を誇るSP
OT5を打上げる計画をお持ちです。
地球観測という意味では、いろいろな衛星を打上げていらっしゃいますが、
中で特徴的なものとしましては、国防との共同で行っている衛星の打上げも
行っていらっしゃいます。新世代のシステムの開発による光学地球観測衛
星の優位性の確保ということが目指されています。
それから、国際宇宙ステーション関係というか、有人宇宙飛行関係でござ
いますが、やはりESAと同じような形になるかと思います。国際宇宙ステー
ションで得られる試験の活用をしているというのが現時点での目標として掲
げられています。
宇宙科学につきましても、幅広く行っていらっしゃいますが、特に火星探
査のための国際協力の推進、それからESA衛星、ESAが打上げる衛星の
観測機器の提供などが中心的な研究開発課題として掲げられています。
一番最後のページは、日本の目指す方向として、現状、それから開発中、
将来を同じようにまとめてみました。御参考にしていただければと思います。
以上、簡単でございますが、説明を終わらせていただきます。
【 井口委員長 】
どうもありがとうございました。
今日の議題の中でこれが一番大きな議題ですので、少し時間をかけて御
質問をいただけますか。
【 川崎委員 】
非常に参考になるデータで、特にCNESとESAについては、分野別の支
出割合が出ているわけですね。これはかなり、ある意味で言えば、ストラテ
ジックに予算配分をしているというふうに見えるんで、CNESは明らかに輸
送系中心で、有人もそこで考えている。一回狂うと、それがばらけるだけな
んですが、同じようなデータを、アメリカについては、7月の段階で長柄委員
がいるころに御説明になったのがあるんですが、ちょっと見てみたんですが、
何だかやたらにメニューが多くて、結局、こういう5つの分類をした場合にど
んなウエートの比率になるか、今、塩満さんの方でわかりますかね。
【 塩満調査国際室長 】
日本の方は一応まとめてみたんですが、日本は宇宙輸送システムが1
3%、宇宙環境利用が19%、地球観測、地球科学が18%という状況でご
ざいます。NASAの方は4月の段階でまとめまして、2002年度要求時で、
今年の4月あるいは昨年11月に認可された予算で申しますと、有人宇宙飛
行が54億ドル、宇宙科学、これはかなりあるんですが、いわゆる宇宙科学
と言っているものは23億ドル、それから地球科学と言っているものが15億
ドル、それからミッション支援というのが26億ドル。先ほど有人宇宙飛行と
申しましたのは、分野別で言うと一番多くなるのかなと思いますが……。
【 川崎委員 】
ミョション支援というのも有人のためのミョション支援てすね。
【 塩満調査国際室長 】
そうですね。安全工学とか、品質保証とか、プログラム管理というものが
ございますので、そういう意味では、これもロケット打上げとか、スペースシ
ャトル打上げというものの経費に入ってきますので、そういう意味で足し算
の仕方がちょっと難しいのですが、国際宇宙ステーションが21億ドル。先ほ
ど54億ドルと申しました中の内訳としましては、21億ドルが国際宇宙ステ
ーション、それからスペースシャトルが31億ドルということになっています。
ですから、スペースシャトル、それから国際宇宙ステーションが有人宇宙飛
行の中で占める割合は高いということを考えますと、3分の1、有人宇宙飛
行という意味では30%だと。
【 川崎委員 】
いつか表にして出してもらえますか。
【 五代委員 】
それに関して、AIWAの雑誌の中で、1~2カ月前に世界先進国からそれ
こそ開発途上国まで宇宙をやっているところの円グラフが出ていたんです。
それを今度つくっていただくといいですね。その円の大きさが実はその本は
全部同じなんだけど、本当はこういう円と小さいのがあるんですけれども。
【 川崎委員 】
ただこうやって見ると、仲悪そうにしているけれども、フランスとNASAの
アプローチというのは似ていますよね。輸送系というのか有人飛行に特化し
ちゃって、残りの方のエクスペンダブルの方は、どっちかというと外に出して、
ほうり出しておくというような感じで。
【 五代委員 】
私が言ったのは円グラフでまことにわかりやすいんですよね。
【 塩満調査国際室長 】
これはちょっとあまりよくないので、作成させていただきたいと思います。
【 川崎委員 】
行く行くはどうせミニNASAはやめて新しいことをするんなら、そういうスト
ラテジックなアプローチをどこかでしなきゃいけない。
【 五代委員 】
国によって違うわけですね、その辺が。それがよくわかるんじゃないかな。
【 栗木委員 】
ストラテジーを、ESAの宇宙活動が目指す、ここから読み取るというのは、
なかなか歴史的な背景というのを見ておく必要がありまして、輸送系でも、
エルメスという有人のシステムを開発して、それは中断した状況になってい
るんですが、ESAはもともと国際宇宙ステーションのところに出ていますAT
V、これに匹敵するようないわゆるコロンバス計画というのを独自で宇宙ス
テーションを持とうぐらいの野心といいますか、大きな計画があったんです
ね。それをESA独自の有人システムとして、ロンチャーと、それから滞在の
軌道システムとして仕立てようという計画があったんですが、まあ、要するに
経済的な事情もあって、そのロンチャーの方は打ち止めになっていたんです
が、最近出たこのATVに関する資料なんかをCNESの雑誌で読みますと、
これは昔考えていたコロンバス計画に持っていくんだという戦略があるんで
すよ。ですから、戦略的な、歴史的な経過を踏まえないと、彼らが今後どう
進むかという次の一手はなかなか見えない。
【 五代委員 】
おっしゃるとおりESAの有人というか、宇宙の大システム、あそこは流れ
をちゃんと、我々、大体知っていますけれども、まとめられるといいですよね。
それからもう一つ、同じ意味では、NASAで、さっき通信・放送のところが、
何かないとか何とかおっしゃったけど、ここもいろんないわれがあって、民間
がちゃんとできてるんだから、NASAなんか、こんなもの困るよというたぐい
のもあったので、あの辺の流れも整理されるとおもしろいと思います。
【 川崎委員 】
ESAは昔から栗木さんがおっしゃったようなことが底流としてあるんだけ
れども、表に出てくるところが極めてそういう意味では時世に合った格好をと
ってきているんですよ。ISSとの協力とかなんかになったときに、エルメスを
カウンターパンチで出しながらすっと引っ込めていくとかですね
【 栗木委員 】
そうですね。戦略がそこのところにあって、そこは極めて二枚腰なり何なり
を用意しているというところがなかなか……。
【 五代委員 】
そうですね。単純にやめているとか、単純な話ではないということですね。
【 栗木委員 】
そうなんです。
【 川崎委員 】
エルメスでも、ドイツタイプとフランスのアイデアとイタリー系とか、潜在的
にあるから厚みが違うんですね。
だけど、今のような指標で少し比較していって、日本の違いというのを、ヒ
ストリカルな点も入れて出すというのは、今度のビジョンの中では大事なん
じゃない。それで、どこまで、よく言われる技術移転というのが、NASAに書
いてあるけど、NASAの言うレベルの技術移転と、日本の今のNASDAの
技術移転のレベルじゃ全然中身が違うんですね。その辺をどういうふうに、
トランジェントな段階にあるところでどうするか。例えばESAのアリアン4と並
ぶんだろうけど、5は別として、それでもまだ熟度から言ったら、ちょっとは日
本はまだ残念ながら……。そうすると、その辺のESAとの比較なんかも、当
然……。
【 井口委員長 】
これは供給者側から見たデータですね。マーケットというのは、そんなに
大きくなっている部分がないのかもしれませんけれども、それでも、国によっ
て違うんだろうと思うんです。特に、アメリカなどは相当大きなマーケットがも
う既にあるわけですね。そういった点からも見る必要があるのかもしれませ
んね。
もう一つは、カナダなどは非常にターゲットを絞った重点化を行った開発
をしていますね。そのメリット、デメリットもよく見る必要があるんだろうと思い
ます。
【 五代委員 】
確かに、そのメリット、デメリットが、始めたときと、ある時期と、今と、それ
の流れも書かれた方がいいね。全部悪いわけでもないし、ある時期には非
常に的確だったけど、あるときには非常にプライドを失ったり、あるときはア
メリカにやられたというような、そういうことがあるわけですね。
【 井口委員長 】
だから、みんながやっているものもある部分やらなければいけないし、と
いって、そればっかりやっていると、今と同じ総花的になってしまうということ
もあるから、いろいろな方向から見る必要があるんだね。
【 五代委員 】
アメリカの場合は、やっぱり宇宙輸送系なんかが典型ですけれども、NA
SAとDoDと、そこの葛藤か、あるいはうまいやり方か、それで、ある非常に
小さい部分は民間に出すとか、そういう流れ的なことなんかも見ていただく
といいですね。
【 川崎委員 】
全然別の見方をすると、葛藤というよりもDoDとNASAがある意味ではお
互いを評価しているところがある、お互いを評価しているというのでライバル
になっているところがあるので、企業が間に入ってうまく育っているのかもし
れない。日本の場合には1つですから、そこが難しいなと。
それから、マーケットって、今の委員長のおっしゃったような点で言うと、む
しろ移転にふさわしいレベルかどうかという、技術の熟度の評価を利用者サ
イドからやってもらうというのが、今度のビジョンづくりの中では大事なので
はないかと思うんです。ちょっと誤解があると思うんです、一部の政策決定
に携わる方の中には。えらい日本の方は進んでいるみたいに、いつでも民
間に渡せるみたいなことをおっしゃる方も非常に多いようなので、ちょっとそ
の辺が本当に、ユーザー足り得る人たちの目から見てどうかというあたり、
その辺の評価をぜひ。だからといって、それを全部国がやるということとは
つながらないんですよ、直には。
【 井口委員長 】
注文を出すのはいいんですけれども、どのあたりをやっているかわからな
いと……、事務局はどうですか、難しい感じですけど。
【 芝田宇宙政策課長 】
できそうなのもありますので、ちょっと……。
【 川崎委員 】
人を呼んで意見を聞いてみたらどうですかね。メーカーなり、あるいはユ
ーザーになるべき、例えば民間で通信衛星を運用している、オペレーション
をやっておられる方は、それに対するトラポンが余っちゃって困っているとか
って話を聞くとか、あるいは、いや、やっぱり日本のロケットを使いたいけれ
ども、まだだめだとか、そのような評価を聞けないかと。
【 芝田宇宙政策課長 】
後の方で出てきますけれども、今後のスケジュールの中で何人かお呼び
しますので、その中でそういった方々にこれからちょっとアプローチしてみま
す。
【 今村局長 】
ちょっと素人的で申しわけないんですけれども、アメリカのNASAのプログ
ラムの中で有人宇宙飛行は非常に大きいプログラムだと。なぜここが大き
いのか。どういう目的を持っているというふうになるんでしょうか。資源配分
の中でですね。
【 塩満調査国際室長 】
やはりNASAのビジョンに象徴されるような、宇宙のフロンティアを拡大す
るということと一番つながっているのはここかなと。報告書だけ読むとそうい
う感じがいたしました。
【 今村局長 】
これだけ大きなプログラムだと、いずれはもう一回月へ行こうとか、火星
へとか、そういうことを具体的に念頭に置いているということなんでしょうか。
【 塩満調査国際室長 】
将来のところに書かさせていただきましたが、やはり人間が宇宙で恒久的
に居住・労働できるようにするというビジョンは掲げられているということです
ので、その意味では人が宇宙に行くということが目標の大きいところではな
いかと思います。
【 栗木委員 】
昔のNASAのいろいろなアクティビティーをパンフレットで見ていたときか
ら考えると、随分変わったなという感じが私はするんです。昔のNASAのパ
ンフレットを見ますと、宇宙工場、スペース・ファクトリーとか、大型惑星から
資源を持ち込んできて、これを加工するとか、すごい大がかりなインダストリ
ーの話なんか、要するに産業まで含んだような宇宙活動というのがかなり展
開されていたんですけれども、今おっしゃったように、有人に特化したアクテ
ィビティーに絞りつつ、私の印象ではその有人も科学探査に向けられている
ような、特に火星が非常に印象強く感じますね。
ということは、昔は手広く広げていたNASAの戦略も、最近はNASAのア
イデンティティーとしては有人を含むサイエンティフィックなアクティビティー
に絞られてきたのかなというような気がちらっとするんですけれども、どうで
しょうか。例えば商業活動というのは、自分のところよりはむしろ産業の方に
任せる、何かそんな感触を私はこの数十年の間の変化を見ていて、ぼやっ
とながら感じるんです。
【 川崎委員 】
それはやっぱりクリントン政権のときに出されたABCDというDコードだろ
うと思うんですね。NASAの、あるいは宇宙プログラムのねらいというのは、
投資誘発効果を持たせようという、そこのところが非常に強く出てきましたか
ら、みずからやる部分をある程度限定して、そのかわり投資誘発効果があ
るようなプロジェクトを考えていくというふうな発想だろうと思うんです。もし、
日本も今の時世に合わせて考えるとすれば、そういうような発想をどこかで
取り入れるという格好になるんじゃないかと思いますね。いきなりの民間移
転という話ではなくてですね。要するに、好スポンサーを見つけることを書く
ということが。
【 井口委員長 】
それから、こういう外国でやっていること以外に、やっていないことで、これ
はなかなか難しいんですけれども、この間行われたJPLのブルース・マレー
さんですか、日本はもっと宇宙ロボットを中心にやったらどうかというようなこ
とを言っておられましたね。
【 川崎委員 】
そうですね。ロボティクスで、要するにヒューマンエイドでないロボティクス
といいますか。
【 五代委員 】
NASAがやっていないのは、今の時点で通信・放送の方面はもう……。
【 川崎委員 】
やめました。
【 五代委員 】
前はやっていましたね。それは時代の変遷だと思いますね。
【 井口委員長 】
それから、私はカーナビというか、ITSの普及の立ち上げを5~6年やって
きたわけですが、これは日本が完全に世界をリードしているんですね。ヨー
ロッパが2年おくれて日本を追いかけ、またその2年おくれてアメリカのマー
ケットが立ち上がったんてすね。完全にあれは日本がリードするんです。ま
あ、日本だけが作ったわけではないにしろ、産んだと言ってもいいぐらいで
すね、GPSは。そういったものはほかに、まあごろごろ転がっているとは思
いませんけれども、しかし、そういうものを、まあニッチなのかもしれません
けれども、世界にマーケットが広がるような新しい利用を考えていくというの
も、これは忘れてはいけないんだろうと思います。
【 川崎委員 】
そうですね。アメリカとヨーロッパは、シェルアトラスの地図があれば、十分
しっかりした都市計画ができるんですが、日本の世田谷みたいなことはあり
ませんので、だから、発展途上国向けで、都市計画という概念のない国に
対しては今のカーナビというのは大事だと思うんですね。ソーシャルニーズ
だとかの関連だろうと思いますね。
【 栗木委員 】
ロボティックスに関しては、ブルース・マレーさんは、織り姫・彦星の無人
自動ランデブーをかなり評価していましたね。あれはいい仕事だったと。
【 川崎委員 】
ただ、やっぱり残念ながら、アメリカのように世界のリーディングエッジに
立つと言い切れないところに弱みがありますね、我が国は。向こうはプレス
テージというのをはっきりマレーさんは言っていますから。
【 井口委員長 】
だけど、自動車だって、日本は随分おくれて、50年?
【 川崎委員 】
50年ですね。
【 井口委員長 】
1886年にベンツが作ってから、日本が作ったのは、乗用車なんか戦後
ですよね。
【 川崎委員 】
1号車というのが1901年に入るんですね。それで、1911年がT型フォー
ドですから。
【 井口委員長 】
アメリカがですね。
【 川崎委員 】
ええ、アメリカが。それで、日本が1901年だったと思いますけどね、1号
車というのが。
【 井口委員長 】
それだって相当遅れてやりながら、かなりうまくやれば追いつくところもあ
るんで、そこはどういうところをねらうかだろうと思いますがね。
【 五代委員 】
さっき川崎さんがアメリカのプレステージっておっしゃったけど、例の評論
家というか、コラムニストの井尻千男さんが最近の雑誌に、要するに日本の
宇宙開発というものは国家的プロジェクトであるのに、そういうふうに首相は
理解していない、そこが一番の問題であるというふうな、あの人一流の書き
方ですが、書いていますが、根幹はそこにありますよね。
【 川崎委員 】
そういうことについての意義を認識してないという、全体についての。よそ
の国からほめられると、ああ、そうだったのかというお国柄ですね、残念な
がら。
【 五代委員 】
うん。あるいは、すぐにもうかるかとかね。
【 川崎委員 】
そうそう。依然として37年のトランジスタ・ナショナリズムから抜け出してな
いんですね。
【 井口委員長 】
ですけど、今本当に現実の問題として要求されているのは、費用対効果
です。というのは、川崎委員が今まで科学技術振興事業団でやっておられ
たことで、やっぱりそれは無視はできないだろうと思うんですね。今受け入れ
られなくてだめになれば、将来があるかというと、それもなかなか難しいので、
将来の輝かしいイメージを持ちながら、今どうつないでいくかということを考
えていく必要があるんだろうと思うんですけれども。
【 川崎委員 】
逆に言うと、小泉総理が就任のときに言われた宇宙についても米百俵の
精神を考えていただいた方がいいんじゃないかという気がしないでもないで
すけれども。
【 栗木委員 】
幾つかの戦略を立てたときには、全部当たるとは、私は思わない方がい
いんじゃないかと。どうしてもある程度の予測とリスクは伴いますから、その
中の幾つかが当たればいい。しかし、最初に挙げた幾つかは、極めてユニ
ークなものを出すべきではないかなと。
私は戦後にドイツが出した戦略の中で当たってなかったというのはよく知
っておりまして、私自身がやった電気ロケットの開発なんですけれども、フォ
ン・ブラウン以来、ドイツは化学ロケットを作ることが我々の生命だと思って
いた。しかしながら、戦後は敗戦国であるがゆえにできなくなったので、自分
たちは電気ロケットに専念するといって、1MWの変電所を数MWに作りか
えて大設備を作ったんですね。これは今のところ実ってないです。しかし、こ
れは何年先かを見ると、これが大きな力になるか。一時はエルメスの耐熱
試験にこれを使うというので、かなりの活気を見せたんですけれども、それ
もさっき言った不幸にしてエルメスがなくなったので、それもなくなってしまっ
た。しかし、私はそういう精神、必ずしも当たってなかったけれども、そういう
ストラテジーを持てる国民は立派だな私は思いましたですね。
ですから、幾つか立てて、リスクは分散しなきゃいけないかもしれません
けれども、全部が当たるということはまずないと。
【 井口委員長 】
予測でもうける人々という訳で、フォーチュン・テラーというのは未来予測
する人ですね、フォーチュン・セラーという原文の本が去年ですか出されまし
て、あれで今までいろんな国でやっている予測、科学技術庁もやっています
ね、5年モデル。あれもさんざんこきおろされている、当たらないと。
ともかく予測というのは当たらないんだというわけですよ。どうするかって、
特にGEのウェルチなんて言っているのは、クイック・レスポンスだって言って
ますね。私が所長をやっております自動車研究所なんていうのは小さいも
ので、明日食えなくなっちゃう可能性がありますから、需要予測が間違った
らもうだめなんですね。だから、いかに早く、変わり身を早くするか。それし
かない。半歩先だけの予測をして、パッと変わるということしかないんですね。
日本の宇宙開発というのはそういうわけにもいけないし、かといって、そうい
うクイック・レスポンスがないと、これまた世の中は変化が激しいですから、
だから、そこをうまく考えていくということだろうと思うんですけれども。
【 川崎委員 】
委員長のおっしゃっているのを考えると、やっぱり例えば、今度やるETS
ー というのについて、最終的に我々の部門からいつ乳離れをさせるとかと
いうような時期と規模についての見通しを出すとか、同じようにH- Aにつ
いての、とりあえず次の長期的なビジョンは、もちろんそれはステップワイズ
にいかなきゃいかんですけれども、どういうところにあるかというゴールを示
すと同時に、そのルートを何とかシナリオとして書けるかどうかというのが、
ちょっと今まではなかったんじゃないでしょうか。どっちかというと、ポンとプロ
ジェクトありきで、その全体の中での位置づけが見えてなかったんで、そこを
少し補うようにしたらいいので、そういう意味では、今日のこの各国の概要
は、我々はわかりいい。
【 栗木委員 】
そうですね。これはやっぱりファクトに基づいて決断はすべきだ。一度決
断したら、やはりその中からいいものを決断しなきゃいかんですから。
【 澤田委員 】
何か絞り込んで日本らしい特色をというのができれば一番いいんですが、
研究者というのは、白紙のところにぽっと連れてきて、今から得意なものを
作れといっても、おそらくだめなんですね。ということはやはり、今ある現状
の中で、何か特色があるようなものが日本は出ましたかね、そういう芽があ
るのかないのかというのから探していくのが、私は現実的なのではないのか
なと。まだどれもヒヨコにもなっていない、芽が出かかったばっかりだよという
状況なのか、うーん、宇宙関係者の中から見て、これは何かできそうじゃな
いかなというようなものがあるのかないのか。これ全部やってみてから、でき
そうか、できそうでないかというのは、これまたちょっと非現実的ですしね。
今の状況の中では、本当に、だれがそれを選択するのかという問題はある
けれども、今までのこの何年間かの実績を見て、どうなんですかね。ロケット
というのは、ここまで来てほうり出すわけにはいかないでしょうから、これは
これで何とかやっていかないといけない1つの大きな分野でしょうけど、その
ほかのものとして、得意分野として、一体、日本に何か、世界の宇宙の開発
に役に立ちますよというようなものが、一体あるんだろうかどうだろうか。
【 井口委員長 】
あんまり細かくターゲットを絞る必要はないと思うんです。ここでは、3機関
統合という、将来に向かっての体制を将来の事業に適合したものにしよう、
そういう目的のために考えるわけですから、要するに、かなり基礎的という
か、基本的なところをつかまえておけばいいのではないかと思います。
【 澤田委員 】
抽象的に3つ合わせて何かいいものを作りましょうというなら、これはこれ
で簡単なんだけれども、それじゃ、今の問題の回答にはならないわけでしょ
う。
【 川崎委員 】
おっしゃるように我々の頭の中身が変わらないんですから。
【 井口委員長 】
こういう話をしていると楽しいんですけれども、3機関統合の委員会が近
づいておりますので、それに即した結論を出していかないといけません。
ちょっと先に進めさせていただきます。 の宇宙開発に対する過去のアン
ケート調査結果について、これを芝田課長さんの方から説明をお願いしま
す。
【 芝田宇宙政策課長 】
今日出しました最初に検討していただいたペーパーの2ページ目につい
ているんですけれども、宇宙開発活動を重点化する際の観点の例ということ
で、我々、考えますに、国民の関心の高さとか理解度といったような具体的
なアクティビティーをサポートする力がどれぐらい国民の間にあるかというこ
とでアンケート調査も参考になるかと思います。
32-3-3の資料を御覧いただきますと、最近のアンケートが二つござい
ましたので、御紹介しておきます。
2の(1)というのが、これは内閣総理大臣官房広報室の方で10年の10
月に行っていただいたもので、18歳以上の 2,115人から回答があったとい
うものです。
2番目の方は、NASDAの方でやっていただきましたもので、昨年の7月
に全国の小・中学校、高校の教員、生徒、それから一般の人もグループとし
て入っております。
最初の方の内閣の方でやってもらいましたアンケート調査の結果として、
3の(1)にございますように、これは宇宙だけについてやったわけではござ
いませんが、「科学技術の発達が今後生かされるべき分野」という質問に対
しては、「地球環境や自然環境の保全」というのが65%で最も高い。以下、
「エネルギーの開発や有効利用」、「資源の開発やリサイクル」というふうに
なっています。
それから、次のページの上にございますように「公的機関が中心となって
進めるべきもの」としまして、やはり「地球環境や自然環境の保全」というの
が非常に高くなっております。
それから、特に「宇宙開発についてどのように期待するか」ということでは、
約半分の人が「夢とロマンの実現」だと。次に「技術の進歩や科学的探求」、
「人類の活動領域の拡大」というふうになっております。意外と「生活の向上
につながる」というのが低うございました。
それから、NASDAの方のアンケート調査につきましては、宇宙への関心
度についてということで、「関心がありますか」という単純な質問ですが、「あ
り」の方が約7割、これは一般の方が高うございまして、小・中学生の方が
意外と低い。
それから、宇宙で関心がある内容は、「星、宇宙、天体」というのが86%、
次いで「ロケットや宇宙ステーション」が75%。
それから、宇宙開発における認知度、これは知っていますかということな
んですが、「日本人宇宙飛行士」とか「衛星を利用した地球観測」について
関心があり、知っているということでした。
今後の宇宙開発の展開については、「将来に向けた先端的技術開発」、
「通信・放送などの実利用衛星の開発」に期待するというところでございます。
それから、宇宙開発予算、これはやや専門的になるかと思いますが、「現
状維持で開発を続ける」、「どちらとも言えない」というのが過半数になって
おります。
総括として4番目に、これはこちら側のコメントですけれども、科学技術の
発達が生かされ、公的機関が中心となって進めるべきだという分野として、
やはり地球観測の分野について、国民の期待が高いのではなかろうか。
それから、宇宙ということで関心が高い、求められるものとしては、やはり
「夢とロマン」といったような、ちょっと漠としていますけれども、そんなような
ところに取っかかりが国民一般としてはあるのかなというような総括でござ
います。
以上です。
【 井口委員長 】
御質問、御意見をお願いします。
【 川崎委員 】
僕の質問は何で学校という極めて異常な社会だけを対象にアンケートを
とったんですかね、一般社会じゃない。
【 芝田宇宙政策課長 】
一般の人もそういう意味では入れてございますので、一般の人だけのデ
ータもございます。さっきも言ったように、宇宙に対する支持となりますと、意
外と一般の方が高くて、夢のありそうな小・中学生は低いとか、そういったよ
うな比較もできるようになっております。
【 川崎委員 】
そうだと思うね。今の学校というのは、昔のイメージの学校と違うかもしれ
ないから、あんまりグッドサンプルかどうかは別じゃないのかな。そこはもう
少し広く聞いた方がいいんじゃないでしょうかね。あるいは、せめて職業別
に何か出るとか、そういうところの方がいいような気がするので、どうせ今度
やるなら、ぜひやっていただいて……。
【 井口委員長 】
時間的にやる余裕はありますか。
【 川崎委員 】
僕は往復はがき程度のアンケートでないと答えないと思うんですよ。5枚
も6枚もこんなに来ますと、私自身も回答者になったときがあるんですけれ
ども、2枚ぐらい書くと、もう息が切れちゃって嫌になるんですよ。そうすると、
出すのをやめちゃうから、往復はがきで3~4問の、だから問題設定が難し
いと思いますけれども。
【 井口委員長 】
できます?
【 芝田宇宙政策課長 】
ええ、ちょっと考えて。すみません。
【 井口委員長 】
後の方についての資料は。
【 塩満調査国際室長 】
将来の科学技術に関する世論調査とか、さっきちょっとけなしましたけれ
ども、科学技術についての4年ごとにやっている予測がありますね、科学技
術庁がやっている。
【 芝田宇宙政策課長 】
デルファイですか。
【 井口委員長 】
はい。
【 川崎委員 】
デルファイは32問ぐらい問題がつくってあるんですが、必ずしも現在、基
本計画なり前の中長期計画で言われたようなものが設問に入ってないんで
すよね。ですから、こちらの計画とあっちの質問と全然違う。そんなこと言う
と怒られますけれども、必ずしも調整がうまくとれてないので、ダイレクトにう
ちの計画への利用ということでは難しいかもしれないですね。
【 芝田宇宙政策課長 】
デルファイの結果はまた改めて次回にでもまた御紹介いたしたいと思い
ます。
【 川崎委員 】
ただ、うちの計画に入ってないのもあるわけでしょう、いっぱい。あれは、
位相がずれているんで。
【 芝田宇宙政策課長 】
はい。
【 井口委員長 】
それでは、今後の予定について説明いただけますでしょうか。
【 芝田宇宙政策課長 】
この後は、9月、1回おき、ないしは場合によっては毎回、宇宙開発委員
会の場でこれを続けて御議論いただこうと思っておりますけれども、まず有
識者との意見交換ということで、九州大学の八坂先生をお招きします。宇宙
開発利用全体の中で、重点的にやっていくべき分野はどういうところでしょう
かといった質問を今お願いしてございまして、プレゼンテーションしていただ
けるということです。
それから、10月には、少し3機関統合後の新機関が行うべき宇宙開発と
いったようなところに少し入りながら、やはり有識者との意見交換ということ
で、中須賀先生、それから畚野先生、それから広島工業大学の中山先生に
もおいでいただくようにしてございます。
11月に少し宇宙産業の発展というようなところにテーマを絞ったような議
論も必要かなということでございます。これはお呼びする有識者については、
まだ当たっておりますので、多少増えるかもしれません。
以上です。
【 井口委員長 】
9月といっても、今日が12日で、あと2回ですか。いつ、その八坂先生に
は来ていただくことになりますか。
【 芝田宇宙政策課長 】
八坂さんは、今調整中です。ちょっと御本人の御都合がありますので。
最初の決定していただいた紙の2枚目に重点化する際の観点の例という
のがございますんですが、これからの切り口として、こんなような観点をお示
しして、3つの軸を中心に考えているんですけれども、こんなことについても
少し御意見をちょうだいできれば、これからの議論の参考になるかと思うん
ですが。
この前、総合学術会議が推進戦略を中間的にまとめられましたけれども、
その中でも、国の安全の保障とか、あるいは産業化、特に市場化とか、それ
から知的フロンティアの拡大というようなことを柱に掲げておられましたけれ
ども、それ以外にも、主目的として、国民生活の質の向上といったようなこと
があるんじゃないかとか、あるいは国際的地位の確保といったようなことも
大事なことではないかと書いてございます。
それから、こういう主目的と、それからそれらを支える環境条件ということ
で、国民の関心の高さとか理解度、さっき言ったような夢とかロマン、こうい
ったことと、非常にロジカルに考えた場合の主目的とどういうふうに調和させ
ていくんだろうなといったような問題もあるのかなと思います。
【 川崎委員 】
あまり大きい声で言うのはいけないのかもしれませんけれども、一番大事
な国民の生命、財産の保全と、いわゆる市民の安全の確保ですが、これに
ついては、それを担うべきところが、必ずしもやってないわけで、宇宙を含め
て、科学技術が、十分にツールを提供しているわけですね。それを使いこな
して、サービスとしての実態がそういう国民の財産と生命を守るようなものに
動くかどうかというところは、ワークスの間に入っちゃっているところで、どう
も滞っているというのが実態ではないかと思うんです、我が国全体の行政シ
ステムの中で。
だから、どういうふうにそこまで、宇宙開発委員会がもし開発利用のある
面に限られるんだとすると、そこへ言いたいことがいっぱいありますね、シス
テムとして活用しなさいと。例えば、地球観測衛星で出たデータによって、明
らかに現在の解析知識から言えば、土砂崩れが起こりそうな地域であると
か、地滑りが起こりそうな地域であるとか、昔、低地であって、要するに大洪
水が出たときに氾濫が起こり得る場所であるとかというような、そういうとこ
ろに家を建てさせないようにする制度とか、そういうふうなところがうまくリン
クしないから、日本の科学技術、宇宙の技術にしろ、ほかの技術面につい
ても、十分に国民が理解できるような評価、あるいは国民の評価を受けるよ
うな形につながらないところがあるんですね。そういう社会システム上の欠
陥を指摘した方がいいんじゃないかと私は思うんだけどね。そこがどうもパ
イプが詰まってちゃうような気がして。
【 井口委員長 】
指摘しただけじゃ済まないので、どうやって埋めるか、ある部分は宇宙側
から埋めなきゃならない。それが例えば利用システムなり、利用技術だとか、
要するに供給者側と利用者側の間があいちゃっているんですね。
【 川崎委員 】
そうなんです。
【 井口委員長 】
そこを詰めるところがないと。
【 川崎委員 】
一体化にならない。
【 井口委員長 】
私は交通の専門ですけれども、移動体や何かについては、いろんな利用
がありますが、利用する側も宇宙が使えるとは思ってないんですよ。そこを
やさしく、こういうことをやれば、使えるんじゃないでしょうかと、こちらの移動
体、つまり交通側でどういうことが困っているのか、あるいはニーズがある
か、それを一生懸命知ろうともしない。どちらからも近づく努力をしませんと、
その辺が埋まらないんですね。それは我々が問題点を指摘するだけで、誰
かやってくれればいいけれども、そうもいかない。できるように考えていかな
ければ、それは実現しませんよね。
【 川崎委員 】
そうすると、そういう潜在的にニーズを持つところに積極的にユーザーとし
てなっていただいて、国民に十分なサービスを提供するような立場、それは
行政官庁になるのか、実際にそれを担っているところになるかといっところ
ですば、そういう方々の意見も関係者の一人として来ていただいて、我々と
ディスカッションしていただくというのも必要かもしれないですね。
【 今村局長 】
私も、今少し話題になっております準天頂衛星は、もちろん技術開発とし
てこういうものができますよということよりも、やはり利用するサイドはどうい
うところがあって、どういう認識で、あるいはどういうスペックが必要なのかと
いうことが明確でないと、なかなか目指せないなという気がしますので、そう
いうことも含めまして、具体的なプロジェクトは別として、そういう利用者側の
方々においても、ぜひやっていただこうと思っておりますけれども。
【 井口委員長 】
例えば準天頂衛星なんかは、トヨタ自動車が関心があるんですね。トヨタ
自動車は、自動車の産業の中ではメーカーですけれども、宇宙のそういう情
報はユーザーなんですね。ああいうところの意見も大事だと思いますね。
【 五代委員 】
推進する方じゃなくて、今みたいな、何か本当に使ってみようかという、そ
ういう利用者サイド、使わせようという、そういう方ですね。それからもう一つ、
私はたまたまさっき井尻さんというような話をしましたけれども、非常に国策
的な、そういうような見地で別の見方をされる方とか、あるいは国際競争と
か、法律的に実際にはこうだとか、政策的に外国とどうだとか、そういう方針
というか、お持ちの方も入れたらどうかと思うんですね。大体見ると、実際わ
かるわけですね、どんなことを話しているか。
【 川崎委員 】
よくわかります。私も知っています。
【 井口委員長 】
今日は1時間半しかとってませんけれども、ちょっと時間を取っていただく
とか、そういうことをしたらいかがでしょうか。
【 川崎委員 】
もう少し社会システムとか、社会科学の方の立場からいろいろ見ている方
の意見の方がバランスが、バランスというのは、いわゆる吉川流で言う俯瞰
的視点から物をおっしゃってくれるんじゃないかなという気がするんですけ
れども。
【 栗木委員 】
先ほど芝田課長がおっしゃっておられた夢とロマンになかなか結びつかな
い、結びつけにくいというお話があったんですけれども、夢になり得るもの、
これはわりあい前回の中長期戦略の冒頭の方にあらわれて、私はそのとき
に、人類の知識フロンティアの拡大、これはまさしく夢とロマンの云々という、
全体にそれはかかるのか、修飾語かもしれないけれども、そう感じたんです
けれども、そういう意味じゃ中に入っているのかな、そう思いました。ただ単
に私の理解です。
【 井口委員長 】
よろしいですか。
それでは、第3の議題は以上で終わらせていただきます。どうもありがとう
ございました。これからも毎回続けることにいたします。
4番目に、その他としまして宇宙開発の現状報告、この1週間の状況を御
報告いただきます。
【 北村 】
この1週間ほどの宇宙開発関係の現状、動きなどを御報告いたします。
9月の5日、水曜日でございますけれども、米国の方でございますが、米
国の中の会計検査員がNASAの教育活用制度というものに関しまして調査
した報告書を発表しております。
こちらは議会の報告という形になっておりますが、NASAでは、こちらに書
いておりますけれども、教訓情報システムLLISというものを、実は重点課題
運営をしております。プロジェクトあるいはプログラムレベルのマネジャーが、
担当するいろいろなプロジェクトの運用段階、ライフサイクル、ずっと通して
なんですけれども、さまざまな問題に立ち至ったときに、それを参照する。あ
るいは逆に、みずからが何かの問題点を解決した場合にその教訓としてデ
ータベースに組み入れるというようなフィードバックをするというようなシステ
ムになっております。
システム的には非常によろしいものだと思うんですが、このGAOの報告
書では、まだまだ活用が十分でないと。実際プロジェクトマネジャーなどがこ
のシステムそのものの存在をあまりよくわかっていない者もいるとか、運用
面でのいろいろな指摘をしております。
それから、9月7日でございますけれども、アメリカの空軍の方でNASAの
Xシリーズを引き継がないというような発表をしております。こちらは経緯が
かなり複雑でございますけれども、もともとNASAの方で開発を進めており
ました次世代型のスペースシャトルの次世代になります最終型の輸送機と
してX-33ですとか、X-34というものを開発しておりまして、X-33という
のはおおすみ型みたいなちょっと変わった形をしているものでございます。
こちらの計画をNASAが凍結いたしまして、それ以上もうやりませんというこ
とになっておりまして、そちらを、アメリカというところの強さではないかと思
いますけれども、空軍側が、DoDの方がその成果を引き継いで、もしかした
ら軍事利用できるかもしれないということで、この2カ月ほど、NASA、それ
からNRO、偵察をしているようなところですが、こちらとともに検討しており
ました。
その検討の結果ということで、実態上、これは結局引き継がないという結
論になったということでございますけれども、再使用型については、NASA
だけがやるというだけではなく、最近におきましては、軍の方もかなり興味を
示して一体となってやっていこうというようなスタンスが見えますので、かなり
注目すべきものと思っております。
それから、9月9日でございますけれども、アトラス2AS、こちらの打上げ
が行われました。上にも出てきます国家偵察局の極秘のミッションでござい
ますけれども、衛星の打上げに成功しているという情報が入っております。
以上でございます。
【 井口委員長 】
どうもありがとうございました。LLISなどは、五代委員がNASDAにおら
れたとき、こういう関係のことというのは苦労しておられたんじゃないですか。
最近は、失敗学というのが大層言われておりますけれども。
【 五代委員 】
教訓は人につながらないですね。だから、みんな悩んでいるわけで、人で
も自然とかすれていく。そうかといって、非常にきれいに整理してしまうと、全
然役に立たない。人間のさがかもしれませんが。私も何十年と調べた結果、
あんまりいい解決法は見当たらない。
【 栗木委員 】
ドキッとしないと、なかなかわからないんですね。
【 五代委員 】
そうですね。
【 川崎委員 】
共体験がないとだめだということでしょうかね。
【 井口委員長 】
よろしゅうございますか。
【 五代委員 】
まあ、勉強いたしますけれども、なかなか難しい。
【 井口委員長 】
必要があれば、いろいろ詳しく調べてお話を伺うということもあり得るかと
思います。
それでは、あと残りましたのが、前回の議事要旨の確認ですけれども、後
ほどよろしくお願いいたします。
それでは、以上で第32回の宇宙開発委員会を閉会にさせていただきま
す。
ありがとうございました。
---了---
(研究開発局宇宙政策課)