第29回議事録 - 通称:宇宙法研究所

第29回宇宙開発委員会議事録
1. 日 時 平成13年8月1日(水)13:00~14:56
2. 場所 宇宙開発委員会会議室
3. 議 題
(1)
国際宇宙ステーションロシアサービスモジュールを利用するNASDA宇
宙実験の実施について
(2)
「きぼう」利用多様化のためのフィジビリティスタディ選考結果について
(3)
第 23 回宇宙ステーション利用計画ワークショップの開催結果について
(4)
第8回アジア太平洋地域宇宙機関会議の開催結果について
(5)
我が国の宇宙開発利用システムの課題と刷新の方向について
(6)
その他
4. 資 料
委 29-1
国際宇宙ステーションロシアサービスモジュールを利用するNA
SDA宇宙実験の実施について
委 29-2
「きぼう」利用多様化のためのフィジビリティスタディ選考結果に
ついて
委 29-3
第 23 回宇宙ステーション利用計画ワークショップの開催結果に
ついて
委 29-4-1 第8回アジア太平洋地域宇宙機関会議の開催結果について
委 29-4-2 「我が国の宇宙開発がアジアに果たす役割」
委 28-5-1 我が国の宇宙開発利用システムの課題と刷新の方向-宇宙開
発利用システムの再構築に向けて-
委 28-5-2 我が国の宇宙開発利用システムの課題と刷新の方向(概要版)
委 29-6-1 H-
Aロケット試験1号機打上げ整備作業状況について
(その2:7月 24~7月 31 日)
委 29-6-2 宇宙開発の現状報告
(平成 13 年7月 25 日~7月 31 日)
委 29-6-3 第 28 回宇宙開発委員会議事要旨(案)
5. 出席者
宇宙開発委員会委員長
井口雅一
宇宙開発委員会委員
長柄喜一郎
〃
澤田茂生
〃
五代富文
〃
栗木恭一
文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之
宇宙政策課調査国際室長
塩満典子
宇宙開発事業団
宇宙環境利用システム本部副本部長
堀川康
宇宙環境利用研究センター長
矢代清高
宇宙輸送システム本部副本部長
丹尾新治
6. 議事内容
【 井口委員長 】
全員お集まりのようでございますので、第29回の宇宙開発委員会を開催
いたします。
本日は、盛りだくさんの報告事項がございます。
最初に、国際宇宙ステーションロシアサービスモジュールを利用するNA
SDA宇宙実験の実施について、宇宙開発事業団宇宙環境利用システム本
部、副本部長の堀川さんに御報告をお願いいたします。
【 堀川副本部長 】
宇宙開発事業団の堀川でございます。
それでは、ただいまご紹介のありました国際宇宙ステーションのロシア
サービスモジュールを利用した宇宙実験の実施について、御報告させてい
ただきます。
お手元にパンフレットをおつけいたしておりますので、それを見ながらお聞
きいただければと思います。
この実験は、宇宙開発事業団とロシアの取り決めに基づきまして実施す
る実験でございまして、このサービスモジュールを利用した実験については、
これまでも何度か折に触れてご報告させていただいたことがあるかと思いま
すが、今回のこの実験におきましては、サービスモジュールに2つの装置を
搭載して実験を行います。
1つは、微小粒子捕獲実験及び材料実験でございまして、これは、今後、
3年間にわたって宇宙ステーションのロシアのサービスモジュールで実験を
するものでございます。
もう一つは、高精彩度テレビカメラを利用して、約1年間にわたって実験を
行うものでございます。この実験は、後ほど申し上げますが、今月8月の、
予定では21日にロシアのプログレスというロケット、宇宙ステーションへの
補給のロケットでございますが、そのロケットに搭載してサービスモジュール
へ打ち上げられる予定になっております。
具体的に最初の実験でございます微小粒子捕獲実験及び材料曝露実験
でございますが、これまで宇宙科学事業団では、宇宙での微小粒子の捕獲
実験や材料曝露実験は、SFUでありますとか、マニピュレーターのフライト
デモンストレーション等でも行ってきておりますが、その継続的な実験という
ことで、宇宙ステーションのサービスモジュールの外壁にこの捕獲実験装置
と曝露実験装置を3式取り付けまして、それをそれぞれ1年から3年にわた
って宇宙環境に曝露させて実験を行うもので、実験を行いました結果、地上
に回収して微小粒子の環境の計測、あるいは材料の経年変化といった評価
を行うものでございます。
微小粒子捕獲実験は、御存じのように宇宙のさまざまな微小なダストであ
ります小さなスペースデブリや、マイクロメテオロイドといったものの存在、そ
の他、その運動等を計測するものでございまして、この結果を踏まえて、宇
宙環境モデルの最新化を図っていきたいと思っております。
また、材料曝露実験につきましては、国内のさまざまな宇宙関係の製品
を製造している方々から、材料の提案を受けまして、それを搭載して宇宙の
環境にさらして、宇宙放射線、あるいは原子状酸素といったものの影響を評
価するものでございます。
2ページにまいりまして、高精彩度のテレビジョンカメラにつきましては、こ
のテレビジョンカメラをサービスモジュールの中に入れまして、ロシアの宇宙
飛行士を対象に、宇宙飛行士が軌道上でどういった精神的、肉体的なスト
レスを受けているか、あるいは医学的に宇宙飛行士の健康状態、あるいは
心理面でどういった影響があるかといったことを撮影しまして、遠隔医療あ
るいは精神サポートを今後どうしていったらいいかということを研究する目
的で行うものでございます。
あわせまして、このHDTVカメラはさまざまに使えますので、広報の応用
実験としてさまざまな画像を撮りまして地球に送って、主にビデオテープで
地上に回収するわけですが、回収したビデオテープを使った広報の実験を
行うことにしております。
また、先ごろ、この宇宙開発委員会でもご報告させていただきましたが、
宇宙ステーションの利用の多様化を検討する一環としまして、3月にシンポ
ジウムを開いて、皆さんにいろいろお話をさせていただいたわけですが、そ
のパイロットプロジェクトの一環としまして公募いたしました宇宙ステーション
の映像を活用したコマーシャルフィルムの制作実施プロジェクトというのを、
電通さんと一緒に共同研究することになっておりますが、そのパイロットプロ
ジェクトをこのサービスモジュールで行う予定にいたしております。
この実験計画でございますが、先ほど申しましたように、8月21日、バイ
コヌールからプログレス輸送船が、宇宙ステーション計画の中で5Pという番
号を振っておりますが、打上げられる予定になっております。
宇宙で実験して得られた結果ですが、HDTVの撮影したビデオテープ及
びその材料曝露実験につきましては、それぞれの時期に回収する予定にし
ておりまして、第1回目は今年の10月、第2回目が来年の5月、それから、
材料曝露実験につきましては、1年後、2年後、3年後といった形で回収を
予定しております。
軌道上での運用ですが、最初に打上げられた後セッティングをして、特に
HDTVカメラについては、すぐに実験が始められるんですが、HDTVカメラ
のビジオテープにつきましては、全部で約1 ,000分の宇宙飛行士の操作
時間を予定しておりまして、その間に、先ほど申しましたパイロットプロジェク
トとして約50分、うち20分は直接のダウンリンクということも含まれておりま
すが、そういった実験を行う予定にしております。
材料曝露の方は、サービスモジュールに打上げられた後、船外活動によ
って船外に取付けられ、曝露実験が開始されまして、先ほど言いましたよう
に、1年後、2年後、3年後に回収いたします。
ロシアとの契約でございますので、基本的にこれらの操作はロシアの宇
宙飛行士に対応していただくことになっておりまして、それぞれエクスペディ
ションと呼ばれて、8月9日だったと思いますが、第3のエクスペディションク
ルーが行きますが、そのときにロシア人が2人、それから、第4のエクスペデ
ィションクルーでは1人の宇宙飛行士、第5では2人というふうに、順次1人、
2人というふうに交代しますが、それぞれの宇宙飛行士にこの実験をやって
いただくということで、これらの宇宙飛行士に対するトレーニング等もこれま
で実施いたしてきております。
最後の4ページにスケジュール、それから、5ページに、それを表にしたス
ケジュールがございますが、既にハードウェアにつきましては、バイコヌール
の基地まで輸送されて、すべての点検が終わり、打上げの準備が完了して
おります。これからプログレスの方に搭載した後、21日に打上げられて、軌
道上に搬入されるというスケジュールになっております。概要、以上でござ
います。
【 井口委員長 】
ありがとうございました。御質問、御意見をいただきます。
【 澤田委員 】
宇宙ステーションでのいろいろな実験なり何なりの成果の利用については、
何か国際的な取り決めみたいなものがあるんですか。
【 堀川副本部長 】
基本的にそれぞれのパートナーがそれぞれの実験をするのはそれぞれ
の機関に任されておりまして、極力いろいろ公開して皆さんに利用していた
だくというのは基本的精神ではありますが、法的にそういうことを公開しなけ
ればいけないとか、複数の人が共有するなどの取り決めはなくて、それぞれ
の機関が実施した成果については、それぞれの機関が持つということにな
っております。
【 澤田委員 】
ロシアとの協定で、何か制限をしたりとか、お互いに、どうぞ、お使いくだ
さいと、そういうような形になっているんですか。
【 堀川副本部長 】
はい、そういうことになっています。
【 栗木委員 】
私も同じことを伺おうかと思ったんですが、ただ、私が知りたいのは、例え
ば曝露実験、軌道環境に関することというのは、日本が独自の知的所有権
として持っていても、意味が薄れますね。これは、宇宙ステーション全体の
財産のような気もしますし、こういったものは、プライマリには日本かもしれ
ませんけれども、そういうことの協定みたいなものはないんですか。
【 堀川副本部長 】
協定では、特にそういうことを、だれそれが所有するということはないんで
すが、私どもは、事業団の宇宙開発に資するための実験ということで、成果
が出ましたら、その結果については、いろいろなところに公開していくという
ふうに考えております。
【 井口委員長 】
ほかにいかがですか。私は、民間にいたせいもあって、お金に関心があ
るんですけど、これは全体で幾らぐらい……、つまり、ロシアがただでやって
くれるわけじゃないと思いますが、どういう契約になっていて、どのくらいの
費用がかかるわけですか。
【 堀川副本部長 】
ロシアに対しましては、1つは、96年、今から4~5年前ですが、そのとき
に、ロシアとの間で協力を進めるテーマがないかということで話し合いがあ
りまして、ロシアと協力して進める実験として適切なものとしてこのテーマが
選ばれたわけですが、このテーマを実施するに当たって、ロシアの打上げ、
あるいは軌道上でのクルーのための購入、あるいは船外活動を行うとか、
そういったことを含めまして、全部で960万ドル、100円とすれば9億6, 00
0万円ですが、約10億オーダーの契約をいたしております。これを実施する
に当たって、国内側でこの材料曝露実験装置を整備したり、HDTVの整備
をしたり、国内の経費がそれに3億ないし4億ぐらいかかっております。
【 井口委員長 】
それは一括して契約ということですか。
【 堀川副本部長 】
ロシアとは一括して契約ですが、まだ全部の支払いは済んでおりません。
【 井口委員長 】
ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは、次に、同じく堀川さんから、「きぼう」利用多様化のためのフィジ
ビリティスタディ選考結果について、ご報告をお願いいたします。
【 堀川副本部長 】
先ほども申し上げましたように、先だってパイロットプロジェクトとして、た
だいまのサービスモジュールでの広告にかかわるパイロットプロジェクトを
実施すると申し上げましたが、昨年来からの宇宙開発委員会の宇宙環境利
用部会におきます報告の中でも、宇宙ステーションの利用を多様化し、より
広い広範な利用を検討すべきであるということを言われてきておりまして、
その一環でパイロットプロジェクトを実施しているわけですが、あわせて、こ
の3月にシンポジウムを行いましたときに、より広範利用を多様化するため
のフィジビリティスタディもあわせて実施しますということで、一般の方から、
どういったテーマで宇宙ステーションのいろいろな利用ができるかということ
を公募させていただきました。
その利用に関しましては、別にサービスモジュールだけではなくて、宇宙
ステーション全部、JEMも含めますし、その他の部分の利用も含めて、広範
にどういった利用が可能かということで御提案をいただきました。
3月15日から提案をいただきまして、6月20日まで応募期間を設定して
募集をいたしましたところ、全部で34テーマの応募がございました。この応
募に対しまして、今後、利用拡大の効果があるか、あるいは利用の多様化
という意味で、新規性のある効果があるか、あるいは技術的な実現性があ
るか、発展性があるかといった視点で選定をさせていただきました。その選
定につきましては、3ページに選考委員が書いてございますが、宇宙開発事
業団だけではなくて、外部の委員の先生にも参加をいただいて、選定をして
いただきました。
その結果、最初の書類選考で14テーマに絞ったんですが、最終的に結
果として9テーマを選ばせていただきました。その9テーマが、4ページ別紙
2に示してございます。このテーマを大きく2つに分けまして、1つは、今後の
産業界で宇宙ステーションを利用して、その利用の拡大が産業界につなが
っていくものであるかどうかという視点で集まりましたテーマがございます。
それが1番から6番でございまして、次が教育・文化的な利用拡大につなが
る可能性のあるものとして、3点選ばせていただきました。
内容につきまして簡単に御紹介いたしますと、最初の、将来の産業界、あ
るいは宇宙ビジネスにつながる可能性のあるものとして、1つは、宇宙でロ
ボットコンテストをしたらどうかという提案でございます。ただ、宇宙でロボッ
トコンテストをする一過性のものではなくて、こういったロボットの宇宙での開
発を通じまして、将来より実用的なロボットにもつながる可能性があるので
はないかということで、このテーマを選ばせていただきました。コンテスト的
なものは、もちろん、企画の中には今後入れていくことになると思いますが、
あわせて、無重力環境でのロボット技術というものの評価もしていきたいと
思っております。
それから、スターメールといいまして、宇宙ステーションを通じてさまざまな
メッセージサービスを行うものでございまして、地上から宇宙にメールが行っ
て、それを実際の一般の方々に届けるといった、そういうことが実施できる
かどうかという検討を行うものででございます。
それから、宇宙のガーデニングとして、宇宙飛行士のヒーリングを行うこと
を目的に、簡易な植物栽培をしてはどうかという提案がございました。これ
は、ライフサイエンスの実験というテーマでも考えられるわけですが、どうい
った植物が軌道上で生育できて、宇宙飛行士のヒーリング、あるいはその
ほか生命科学的な評価もできる可能性もございますので、そういった面での
評価を行うことにしております。
4番目が宇宙食に関する検討のプロジェクト、5番目が、これは主に宇宙
飛行士の船内の宇宙服に関する検討のプロジェクトでございまして、どうい
った服装が無重力の環境で活動しやすいかといったことを検討していただく
ものでございます。この2つにつきましては、提案者が市民団体という、女性
宇宙フォーラムという方から提案をいただいているんですが、この方々が、
今後、いろいろな企業にこれらのプロジェクトを展開して、企業と連携して、
こういうテーマについて検討をしていきたいという提案になっております。
6番目に、実はタイトルが書いてないんですが、これは提案者の希望で、
今後の宇宙の商業利用、あるいはPRといった活動に資する検討でござい
ますが、今の時点で公開をしますと、いろいろ同じようなテーマを考える人
が増えてくるということもあって、この提案者につきましては、この提案内容
を、ある程度フィジビリティスタディが終わるまで伏せさせてくださいという話
もありまして、私どももそれに同意しまして、テーマとしては選びましたが、こ
の場では伏せさせていただきたいと思っております。
それから、教育・文化的な利用拡大につながる可能性のあるものとしまし
て、宇宙での宇宙を介した教育システム、いろいろなカメラの画像を使った
りして、教育システムを構築していきたいというテーマ、それから、無重力の
環境で踊りを踊ることによって、どういう影響があるかということを検討した
いというテーマがございました。この辺については、無重力で踊りを踊るの
は難しいのではないかという話もありまして、できれば、飛行機を使ったパラ
ボリックフライトで事前の実験をしてから、具体的にどういうふうに進めるか
も考えていきたいと思っております。
最後が、宇宙と芸術の融合ということで、地上のさまざまな芸術家の方々
とコンタクトをとりながら、宇宙でのアートをどういうふうに展開していくかとい
うことについて、いろいろなワークショップ等を経て、利用の形態を探ってい
きたいというテーマでございまして、全体に非常に広範なテーマが応募され
ておりまして、非常に魅力があるというふうに私どもは思っております。こう
いったテーマにつきまして、1年間フィジビリティスタディを実施して、具体的
にどういった形でこれを宇宙の利用につなげていくかということを今後検討
したいと思っております。
こういったテーマを選考させていただきましたということを御報告させてい
ただきます。
【 井口委員長 】
どうもありがとうございました。御質問、御意見を伺います。
またお金ですけど、どのくらいの費用をかけるんですか。
【 堀川副本部長 】
とりあえずは、まだこれらの方々に簡単なテーマの提案をいただいただけ
ですので、今後、フィジビリティスタディを一括してある機関に依頼をして、こ
ういうところとコンタクトをとっていただくということで、当面は1, 000万から
2,000ぐらいのお金を使って検討したいと思っております。
【 井口委員長 】
1件ですか。
【 堀川副本部長 】
いや、全体です。もう少し中身を精査していきたいと思っております。
【 井口委員長 】
このうち3件が女性宇宙フォーラム、それから、宇宙舞踊が多分女性でし
ょうね。大変女性が目立ちますが、結構だと思うんですけれども、五代委員、
この辺プロモートしておられましたが、いかがですか。
【 五代委員 】
どんどんこういうのが進んで出てきたので、大変結構だと思います。開示
しないもの、これからの取り扱いはどういうふうにするんですか。こういうの
はほかにもありますよね、アイデアの段階で。特にアメリカなんかは、すぐと
ってしまう可能性があるから、要注意ですね。
【 堀川副本部長 】
その辺、私どもの事業団の位置づけとか、そういった意味での制度的なも
のも、私どもはもう少し整理をして、また、この企業との間でどういった取り
決めをすることによって、こういうテーマ、あるいはその内容のコンセプトが
守れるかということをあわせて検討していきたいと思っております。
【 井口委員長 】
最後まで非開示というわけにはいきませんね、国のお金を使うわけです
から。
【 堀川副本部長 】
もちろん、実際に利用するには、安全性の評価とか、そういうものがござ
いますので。
【 井口委員長 】
いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
では、どうもありがとうございました。次に進ませていただきます。
第23回宇宙ステーション利用計画ワークショップの開催結果について、
宇宙開発事業団宇宙環境利用研究センター長の矢代さんにお願いいたし
ます。
【 矢代センター長 】
第23回宇宙ステーション利用計画ワークショップは、7月23日から3日間、
砂防会館で行いました。こういうワークショップは昭和60年から、当初年2
回の間隔で開いておりましたが、最近は年1回でございます。
この目的ですけれども、ステーション利用に関する我が国の推進体制と
か、研究の実施状況につきまして御報告等をいたしまして、利用者の方たち
に理解をしていただくとともに、利用拡大を図るというような趣旨で毎年開催
しております。
4番の開催の結果の参加人数でございますが、今回、延べ人数で686名
でございます。実は昨年は800名をちょっと超えたという数字がございまし
て、昨年から比べますと、130名ほどトータルで参加人数が減っております。
昨年は6月の末に行ったところもありまして、7月の非常に暑かった3日間で
ございますけれども、後ほどアンケート等の回答を含めて、私どももその辺
の解釈を考えたいと思ってございます。
4ページ以降に、ワークショップのプログラムがございまして、4ページを
見ていただきますと、あいさつ等の後、午前中がパネルディスカッションとい
うことで、まず、NASAから、NASAにおけるステーション計画の最新情報、
それからロシア、ESA、カナダの各宇宙機関の利用に関する最新状況の報
告を受けた後、事業団から、「きぼう」の利用の準備状況ということで、機関
のほうからの報告を行いました。
それから、宇宙開発事業団の宇宙環境利用研究委員会の微小重力科学
専門委員会、それとライフサイエンスの専門委員会の両委員長から、その
分野での取り組み状況の話をした後、参加者によりますパネルディスカッシ
ョンを行いまして、特に先週、この宇宙開発委員会にも、NASAからコストオ
ーバーランに関する計画のお話がございましたが、そういうものでNASAが
今考えている話の中で、クルーの人数が3人体制がかなり長引く可能性が
あるということを議論のコアにしまして、どのような対応策を考えなければい
けないか等につきまして、パネルディスカッションを行いました。
それから、午後につきましては、「きぼう」の利用多様化への取り組み、そ
れから、先導的応用化研究の現状と展望、最後にパネルディスカッションで
「宇宙環境利用の現状と将来」ということで「開発と利用の理念」という副題
をつけまして、井口研究システム長が座長をやりましして、国際高等研の中
川先生、甲南大の佐藤先生、それから、宇宙飛行士の向井宇宙飛行士が
参加しまして、それぞれプレゼンテーションの後、ディスカッションが行われ
ました。
それから、2日目、3日目でございますが、5ページ、6ページを見ていた
だきますとわかりますように、2日目は、基本的に「きぼう」の船内実験室を
利用する分野ということで、微小重力科学、それからライフサイエンス、宇宙
医学、それぞれの分野で午前から1日かけまして、午後はパネルディスカッ
ションをそれぞれ行いました。午前中の間に、微小重力科学及びライフと医
学は合同でやったんですが、NASAのホーズ局次長から、「NASAの現状」
というお話を、これはプログラム外、飛び込みという形で報告をいただまして、
会場の研究者の方と意見交換が行われております。
それから、3日目が、船外実験プラットフォーム分野ということで、地球科
学・地球観測分野、それと宇宙科学・天体観測分野、それから、技術開発分
野の分科会が行われて、意見交換が行われました。
それで、3ページにちょっと戻りますが、3ページの(3)に、アンケートの結
果、150通ほど回収しておりますけれども、まず開催時期につきましては、
企業サイドの出席者の方から「企業の夏休みシーズンに入りかけているとこ
ろなので、この時期を避けてほしい」とか、大学の研究者の方も「一部の大
学で試験期間中だということで非常に難しい。例年どおりの6月末か7月初
めに開催してほしい」ということでございました。
それから、取り上げたいテーマにつきましては、今回と大方似ております
けれども、計画の現状と将来とか、実験の成果とか、日本の開発計画運用
等に関する情報が欲しいということでした。ですから、来年のワークショップ
に期待することとして、「宇宙機関代表によるディスカッションは、意義深い
からやってほしい。」そして、「科学分野以外のアプローチをもっと紹介して
ほしい。」それから、「パネルディスカッションにもっと時間をかけてほしい。」
といった意見がありました。実際、いろいろとパネルディスカッションがあった
んですが、個々の報告の時間に結構とられたというところがございます。そ
れから「ポスターセッションを行ってほしい」というような意見がございました。
それから、議事録等を公開してほしいということがございまして、これは例
年そうなんですが、1カ月ほど後、8月下旬ぐらいには事業団のホームペー
ジに、この概要を、議事録を含めて公開の予定でございます。以上でござい
ます。
【 井口委員長 】
どうもありがとうございました。御質問、御意見をいただきます。
これは何か結論を出すとかいうことではなくて、情報交換ということですか。
【 矢代センター長 】
はい。それで、2日目、3日目には、各分野ごとに御意見を集計いたしまし
て、それを事業団の宇宙開発科学研究委員会というのが10月にございま
すが、そこに報告して、必要なら事業団の対応策等をとるということになって
おります。
【 五代委員 】
今までずっとやっていますから、参加者の分野とその変化とか、何の影響
があって増えたとか、そういう統計や分析結果はありますか。
【 矢代センター長 】
きょうの資料についてはお持ちしておりませんけれども、先ほど130名…
…。
【 五代委員 】
それの中身ですよね。どんな人が、どんな意見を言っているのか。
【 矢代センター長 】
企業とか、大学とか、官庁で違いはございますけれども、今回、企業の参
加が100名以上少なかった。大学も減っているんですけれども、企業から1
00名ちょっとの結構な減が見られまして、これは時期が7月末という、暑さ
もあったのかもしれませんけれども、やはり企業の夏休みともひっかかった
のかという意見がありました。
【 五代委員 】
前回との比較だけじゃなくて、23回もやっているんですから、その間にス
テーションのいろいろな動きもあって、地上でいろいろな研究がされたとか、
それとの絡みとか、何かありませんか。
【 井口委員長 】
だんだん関心を失ってきたというのでしょうか。
【 矢代センター長 】
いえいえ、私どもはそうは思いたくないんですけれども、毎年6月末にやっ
ておりまして、去年までは毎年毎年50名か100名単位で増えてきていたわ
けで、去年が817名だったのですが、今回が686名で、ディスカッションは
非常に白熱しましたが、絶対数が少なかったのが、ちょっと意外な感じがい
たしました。
【 井口委員長 】
ホーズさんが前回宇宙開発委員会に来てくださって、いろいろ話を伺って、
そのときのクルーサイズの話で「7人を減らさないでくれ」というお願いをいた
しましたけれども、まあ、私のところなんか……。
1つ簡単なことなんですが、「フラッグシップ機関」というのは、これはどう
いう意味ですか。
【 矢代センター長 】
これは、技術開発分野から出た言葉なんですが、「艦隊」でいうと、旗艦が
あって、そこがいろいろなほかの船に指揮命令をして、大きな「艦隊」として
意味ある動きをする。このことと同じように、宇宙技術開発分野でも、何か大
きな目標とか、技術開発の大きな目的とか、そういうものを立てて、その目
標に向かってそれぞれの技術分野がそれぞれに合った動きを……。
【 井口委員長 】
いろいろな機関とか、組織がですか。
【 矢代センター長 】
そうです。それの技術分野がいろいろ分かれる、目標に向かう上でです
ね。そういう技術分野を、ある大きな目的に沿って開発をしていく。そのため
には、将来、10年、20年後なんですけれども、どういう宇宙開発の技術を
開発していったらいいかという議論を……。
【 五代委員 】
フラッグシップというのは、組織でもないし、体制でもなくて、いわゆる車な
んかでもフラッグシップというけれども、大きな主力目標ということなんです
ね。
【 矢代センター長 】
そうです。
【 井口委員長 】
ISSををやろうとか、そういうことですか。
【 五代委員 】
有人をやろうとか、それをもとにいろいろな……。
【 矢代センター長 】
そうです。システマティックに技術を体系化して、それぞれの分野でやると
いうことです。
【 五代委員 】
ここで急に「フラッグシップ」と出ても、どのフラッグシップかと思いますね。
【 井口委員長 】
よろしゅうございますか。じゃ、どうもありがとうございました。
それでは、次に第8回アジア太平洋地域宇宙機関会議の開催結果につ
いて、文部科学省の調査国際室長塩満さんと栗木委員にお願いいたします。
【 塩満室長 】
それでは、簡単に私の方から、29-4-1の資料に基づきまして、開催
結果概要をご紹介させていただきます。
先日、宇宙開発委員会の場で御説明しましたアジェンダに沿いまして、ほ
ぼ予定どおり7月23日から26日、マレーシアのクアラルンプール、リモート
センシングセンターで開催されました。出席者は約100名で、総合議長は
栗木先生、それから、マレーシア・リモートセンシングセンター所長の
Mahmood さんに務めていただきました。私の主観でございますが、非常に
参加者の満足度は高かったのではないかと思います。
参加者として日本側の出席者、こちらには文部科学省の関係者が書いて
ございますが、このほかに通信総合研究所、それから、日本企業といたしま
して、NEC、三菱商事、三菱電機、それから、JAMS等、御参加いただいて
います。
後ろから2枚目でございますが、これまでの参加実績一覧と、今回の参加
者の数を紹介させていただいております。やはり中国の8名というのが非常
に特徴的でございますが、ほかは1名から2名の御参加をいただいたという
ことでございます。
会合概要につきましては、“NewSpaceAgeintheAsiaandPacificRegion”を
テーマにしまして、今回初めての試みとしまして分科会を4つ開催いたしまし
た。最後のクロージングセッションでは、総合議長の栗木先生と Mahmood
所長の方でまとめていただきましたが、一番後ろのページに、英語版のレコ
メンデーションが書いてございます。最初のページに、1から4で日本語訳を
つけさせていただいておりますが、今回一番強調された部分としましては、
やはり自然災害被害の低減、それから、衛星通信のためのパイロットプロジ
ェクト、あるいはタクスフォースの設置等、こういう分野の技術開発、それか
ら、研究を進めてほしいということ。あとは日本側に対する援助などのことも
出ていました。
それから、2番目といたしましては、国際宇宙ステーション利用のための
アクセスの容易化ということで、途上国においてもこういう分野に関心があ
るということで、ライフサイエンス分野、材料研究について参加をしたいので、
ぜひ情報提供をしてほしいということがありました。
それから、3番目でございますが、人材育成・教材交換プログラムの効果
的活用につきまして、リモートセンシングデータの解析とか、衛星運用、その
ほか技術開発能力の向上のためのプログラムを効果的に活用していきたい、
さらにはタイなどで行われていますテレエデュケーションなどの実績もござい
ますので、そういう分野のプログラムについて情報交流をしたいという意見
がございました。
4番目といたしましては、これら3つのアクションのための予備サイトをぜ
ひ、日本が中心となって取りまとめてほしいという意見が4つ、レコメンデー
ションとして、クロージングセッションの中でまとめられました。
次回開催ホスト国としては、韓国の方から、次年度は韓国でぜひ開催し
たいという提案がございました。このほかの関心としては、タイからも、ホスト
国として務めたいということで発言がございましたが、クロージングセッショ
ンの中では、韓国側の代表がこのような提案をしています。
以上、私の方からは簡単でございますが。
【 栗木委員 】
引き続き、総合議長を仰せつかった立場で、この会議に出席しました。29
-4-2に書きましたように、報告と申しますか、私の主観的な感想を書きま
した。
この会議に出席する前に、私も事情を知らなかったので、過去に出られた
方から伺って範囲では、これまでAPRSAFというこの会議は、どちらかとい
うと、友好関係を深めるという、そこに主題があって、特にスペシフィックなア
クションを作ったというようなことではありませんでした。しかしながら、そろ
そろこの7回を経て、8回目にはそういうアクションをみんなが考え出したら
どうか、という意見があることを事前に伺っておりました。
1回だけ海外で開かれたことがモンゴルであったと聞きまして、今回が東
南アジアでは初めてということもありまして、それなりの意気込みがあったの
ではないかと思います。
私も会議に出まして、非常に印象が強かったものですから、帰ってきて翌
日にこれを作文をいたしました。そういうわけで、私が出たときの心境がまだ
余韻が残っているかなということでお読みいただければと思います。
まず、出たときには、地球観測というのが主題になるだろうなということは、
この会議に限らず、いろいろな方がアジア、特に東南アジアに出られた方は
そういうことを関係者が望んでいるということを聞いておりましたので、そうで
あろうということは予測しておりましたが、そこに書きましたように、自然並び
に人為環境災害に対する悲痛なばかりの訴えというのを私は感じました。
例えばバングラデッシュで、一例を挙げますと、サイクロンでは、そこに書
きましたような膨大な死者が出ている。被害も膨大であるというようなことと
か、またベトナム等では、それを事前に伝達する方法がまだ整備されていな
い。ですから、こういう格差がある中で、一体何をすればいいのか、まだまだ
東南アジアと言ってもレベルに大きな違いがある。この会議を招いてくれた
マレーシアなんかは、近々ナショナル・スペース・エイジェンシーを作るという
ような動きがあるやに聞いております。大臣に会いましたときには、マサと呼
ぶか、マレーシアの NASA とでもいいましょうか、というような名前もちらっと
聞かれましたので、そういうバングラディシュ、ベトナムとは違った国情がい
ろいろな国であるなと感じました。
出てきましたペーパーをざっとさらいますと、下に列挙しましたように、ポツ
で作りましたようなところは、先ほど申し上げたような災害を大きくこうむって
いる割には、それを事前に防御するだけのすべがないというようなことが言
われておりましたし、その下のほうの各国は、既に進めているところ、これか
らやろうとしているところ、力が入っているところとさまざまで、アジアと一口
に言っても大きな差があるということを感じました。
今言いましたように、これらの国々は情報伝達手段が不足していると同時
に、地球温暖化を含む先進諸国による環境破壊の最大の被害者でもありま
す。特にその上の方のネパール、ブータンのところに書きましたような、氷河
が溶けてできた湖が突然決壊するというのが、最近、極めて頻繁に起きて
いるそうであります。これが、いわゆる田畑、それから、村を破壊してしまう
という非常に大きな被害が発生している。
そういうようなことも踏まえまして、先ほど塩満室長が紹介されました、最
後のレコメンデーションを見ていただきますと、「Promote natural and
environmental disaster mitigation」と書きました。ここはこのセッションで極め
てもめたところでありまして、いわゆる人間がかかわった自然破壊があるで
はないか。これををどうやって防ぐのか。最初は「natural disaster mitigation」
と書こうかと言っておったんですが、関係者から強くその点が言い出されま
して、そこは、マンメイドとか、ヒューマン・インデュースドとか、そんなようなこ
とはかけないにしましても、最近の「environmental」という認識は、みんな先
進諸国が引き起こしている、これは計量化はできませんけれども、そういう
要素が強いということを、心情も含めまして、ここで environmental という形容
詞を入れた。ここの1行を作るだけでも相当にもめたということであります。
しかも、ついでに「/satellite communication pilot projects」、ここも、実はテ
レコミュニケーションの方のいろいろな教育であるとか、遠隔医療であるとか、
そういうようなことも出たのでありますが、真っ先に思い至るのは、先ほど出
ておりましたような「disaster」を防御するにも方法がない、という話です。し
たがって、地上のインフラがまだないところには、こういうサテライト・コミュニ
ケーションの手段が使えないかということも強く出されましたもので、ここは
スラッシュでそれを表現しようということで、あまりメッセージがなくなりますと
迫力がなくなりますので、2行に押し込むというのをかなり工夫したという、
そういうところがございます。
そのような状況下で、各国からの要望をページに書きましたが、取得した
データをいきなり送っても解析できないのでは役に立ちませんので、やはり
これはきちっとした解析モデルを取得した国がこれを解析して、使い安い形
で配信するということ、端末の提供が必要でございます。それから、これは
地上と1対1のキャリブレーションがないと意味がないので、地上に設置され
たモニターと、こういった予測とが合っているかどうかというようなこと、それ
から、それを理解して伝える技術者がいない。それもまた養成しなければい
けない。教育プログラムの一環かと思われますが、そういったような要望が
出たわけでございます。
振り返って、我が国の役割というのを考えますと、参加していた宇宙開発
の先進国でありますフランス、カナダといったようなところ、あるいはこれを
追いかける形で中国、韓国が続いております。そういったところで、今後どう
やるかというのは、おのおのバイラテラルなり、マルチラテラルに協力が進
むかと思われますけれども、私自身感じましたところは、ADEOSとか、AL
OSとかというような開発を進め、通信手段につきましても、現在考えられて
いるDRTSとか、ETSー 、i-Spaceといったものも、やはりそこに、政府
があるからには、ここに力点を置いて、アジアトータルなことを考えないと、
日本の役割というのは果たせないのではないか。場合によっては、準天頂
といったものも、日本の真上でもってビルの影がどうこうというような話より
は、これでもって広域に配信するケイパビリティを増やすということにもし意
味があるのであれば、私、よく知りませんけれども、今後、こういう視点で、
私は、i-Spaceなり準天頂衛星というものを見ていくべきではないかという
具合に強く感じました。
このほかに、先ほどのような支援が必要であるということを含めまして、一
番最後ページに書きましたように、これが翻って我が国にどのようなベネフィ
ットなり、国としての効果があるかということを考えますと、もちろん自分自身
の、日本の災害防止に役立つことは当然でありますけれども、観測データを
相互に利用し合うということで、環境保全ということを通じて、大きな枠組み
で一種の安全保障といったような体制ができるし、これを通じて国内の衛星
産業の力というのは増えてくるのではないか。こういうものをうまく連携して、
衛星の開発計画をプログラマティックに、大きな流れとして立てないといけな
いなということを感じまして、そのようなことから、私も今後、自分のアクショ
ンとして、今後の宇宙開発の方向というのを、こういう視点で見ていきたいと
いう具合に感じております。
最後にまとめましたのは、全部読み上げておりませんので、申し上げます
と、インターナショナル・スペースステーションへの参加というのも、アジアで
は大変期待されておりました。うちの国の宇宙飛行士がいつ乗れるのかね
というような、ずばっとしたような質問であるとか、それから、教育活動につ
いても、まずは衛星を使った放送というよりは、CD-ROMでもいいから、と
にかく教材を送ってくれというような、そういうような国で全くばらばらな、いろ
いろな注文がありました。しかしながら、そういうことをオファする、エゴを出
すチャンスすらまだない、よくわかってないということで、そういったチャンス
を、特に皆さんにお知らせしましょう、それをAPRSAFでもって供用しましょ
う、というようなことを、4番目として提案したというような締めくくりにさせて
いだたきました。
以上が私の感想をまじえた報告でございます。
【 井口委員長 】
どうもありがとうございます。いかがですか。
【 五代委員 】
実は前から私、気になっているんですけれども、参加実績国としてキリバ
スは入っているんですけれども、いわゆるアジア太平洋の島の国家、これが
他にもいっぱいあるんですよね。日本は非常にいろいろな縁がある。島です
から、国家としてもなかなか一体感を持つのが難しい。生活レベルはこうい
う国々は低く、援助しないととても参加できないような国々なんですね。ほか
のところはまだすっと行けるけれども、そういう国をこれから日本として、もっ
と重視しなければいけないんじゃないか、こう思っております。
【 塩満室長 】
参加国につきまして、確かに幅広く、今回もキリバスには何回か連絡をし
たんですが、御参加いただけなかったんですけれども、今後ももう少し、今、
先生の御指摘のありました島の国々を対象にしました情報提供を進めて、
関心を高めていきたいと思います。
【 五代委員 】
それぞれの国、そんなに大きくないし、お金はないし、旅費はかかるし、宇
宙に直接かかわっているなんていう方もいらっしゃらないんですけれども、
間接的には非常に影響があると思うんですね、恩恵を受ける。あるいはさっ
きの地球温暖化・海面上昇の話ではないけれども、非常に恐れている国で
もある。
【 栗木委員 】
私も、彼らにただ単なる援助といいますか、というよりは、要するに被害を
もたらしている原因がこちらにあるとすれば、援助ではなくて、むしろこれを
助けるだけの義務があるんではないかぐらいに感じております。特に温暖
化等につきましてはですね。そういうことからしますと、率先してODAとか、
そういったようなファンドを利用して、何とか広域に、こういう国々との連携を
深めることは重要じゃないかなということを感じました。
【 井口委員長 】
これは100名参加者がおられたということですが、日本からは何人です
か。
【 栗木委員 】
25名から30名ぐらいですね。
【 井口委員長 】
地元を除けば最大の参加国ですね。
【 栗木委員 】
130幾らと言っていませんでした?
【 塩満室長 】
登録の数を見ると大体100名なんですけど、実際はもう少し多かったんじ
ゃないかと思いますが、正確にというと、もう少し多いと思いますが。
【 文部科学省 】
登録してない国も若干いたようですので。
【 井口委員長 】
私はITSという高度情報交通システムという自動車交通の情報化のことを
ずっとやってきたんですけれども、あそこでも、アジア・パシフィック・フォーラ
ムというのを作っているんですよ。そこではファンドを作って、なかなか来にく
い国の人には、旅費の支援をしているんです。しかも、その金は全部民間で
す。政府からは一銭の援助もありません。これに幾らお使いになっているの
か知りませんが……。
【 塩満室長 】
1,200万円です。
【 井口委員長 】
ほんのわずかで旅費の支援ぐらいできるはずなんですよ。それがいいか
どうかは別にしまして、そういうことを考えることもあり得るんだろうと思いま
すし、それから、4つの提言の中の、最後のウエブサイトの開設をやれば、
相当金がかかるんですか。
【 栗木委員 】
いや、文部かNASDAがやりますと言って、私、宣言して。
【 五代委員 】
日本側はできるんですよね。しかし受ける方は、それこそ電話もないし、
例えば1人の年間所得は二、三百ドルといった国々です。それをこれに使っ
ていると言って、何分かで終わっちゃうような、そういう国なんですね。です
から、いろいろなことを考えなきゃいけないな。
【 栗木委員 】
そう。いろいろなことを考えなきゃいけない。
【 塩満室長 】
特に栗木先生には、インフラ整備の要請もかなり来ていたから、通信も含
め、今おっしゃったようなインフラも、やはり日本に対する期待は大きいとい
う実感を受けました。
【 栗木委員 】
ASEAN等の全体の面倒を見ているマレーシアなんかは、例えばASEA
Nを自分たちが面倒を見ながら、日本と協力しましょうというような申し出も
かなり強くありましたけどね。
【 井口委員長 】
日本も予算的には非常に厳しい時代に入ってくる中で、どういうふうにし
て……。
【 五代委員 】
金額としては、そんなに大きくなくても、やり得ることはあるんですね。だか
ら、島の途上国家の中には、南太平洋フォーラムでしたか、要するに南太平
洋の島の国の国連部局があって、日本も呼ばれて行きますよね。そういっ
たところからやるというのも1つある。
【 井口委員長 】
栗木委員がここに参加されてまとめてこられたわけですので、また今度は、
宇宙開発委員として、いろいろ政策の御提言をいただければと思います。
ほかに御質問ございませんか。それでは、どうもありがとうございました。
その次に5番目、我が国の宇宙開発利用システムの課題と刷新の方向に
ついて、長柄委員、お願いいたします。
【 長柄委員 】
これは資料が2つございます。20ページほどの報告書と1枚紙の概要で、
主に概要の方で説明したいと思います。
これはあくまでプライベートな、長柄タスクフォースという名前、一番最後
につけたんですが、何という研究会にしようかと言って、いいのがないから、
長柄タスクフォースという研究会にしようということになったわけです。
なぜこの研究会をやったかということは、はじめにのところに書いてござい
ますが、この1枚紙に書いてございますように、要するに日本の宇宙開発、
今、壁に突き当たって閉塞感に覆われている。一方、NASDAの問題もいろ
いろございますけれども、じゃ、NASDAの問題が片づけば、この閉塞感は
なくなるかというと、そうではないと。日本にはやっぱり本質的な問題を日本
の宇宙開発でも抱えているだろうと。そこで、我々としては、宇宙の将来とい
うのは、過去とか現在の延長線ではなくて、多くの方向転換を今求められて
いるんだと、こんなような考え方に基づきまして、日本の宇宙開発全体の刷
新の方向を大胆に模索してみようということで、後でこのレポートの最後に
ございますけれども、こういうメンバーが集まって研究会を開いたわけです。
これはいろいろな方がいろいろなことを言っていて、全員がこのレポートに
賛成したわけではございません。私が座長ということで、私の責任でまとめ
たものでございまして、全員の合意ではございません。
それから、この中で、平和目的とか、軍事利用とか、いろいろ言葉が出て
きますが、そういう、従来割に宇宙関係者の中ではタブー視されたような問
題、それから、宇宙関係者の中では常識だったような問題、こういう問題も
「ほんとうかね」ということで議論してみました。それが「まえがき」でございま
して、2.の「現状と課題」というのが、この1枚紙では一番上でございますけ
れども、今の日本は、一見先進国並みになったかに見えますけれども、やっ
ぱりいろいろな弱点を抱えております。そのような中での課題とは何かとい
うことでこの上に○が書いてございますが、1つは技術格差ということで、先
進国との間の技術格差が縮まない。むしろ開いているんじゃないか。それか
ら、宇宙産業ということで、宇宙産業の競争力が非常に弱い。それから、左
に行きまして、利用問題というのがございますが、宇宙開発の成果、そして
NASDA等の開発の成果が利用に結びついていない。
そこで、どういうことでこういうことになっているかということを検討したわけ
です。その検討結果が下の3つでございまして、平和目的、それからスーパ
ー301条問題、それから、技術導入路線といいますか、技術導入体質にな
っていると、こういったことをあげています。
この平和目的のところですが、宇宙技術というのはもともと軍事技術なわ
けです。日本ではあんまり宇宙のことを軍事技術という意識はないんですが、
外国ではむしろ軍事技術であって、それを平和利用にも使っている。最近は
特に軍事技術の中で宇宙の比重が非常に増えているということでございま
す。宇宙大国と言われるところでは、要するに軍事目的という大きな目的が
ありまして、それにもう一つ平和目的という、いわば大きなエンジンを2つつ
けた飛行機が飛んでいるようなものでございますが、日本には片一方ない。
平和目的だけ。ですから、日本の宇宙開発というのはユニークといいますか、
片肺というか、エンジン単発の飛行機である。
こういうことですが、一方、日本は何となくミニNASAを目指すということで、
かなり手を広げて先進国並みのことをやろう、ということで来たかと思うんで
すが、よく考えてみますと、これはとても無理だということで、日本は日本独
自の方向というのを見出さなきゃいけないのじゃないか。ミニNASAをやると
いうのはもう限界だと。それから、エンジンが1個しかございませんから、産
業界にとっては非常に大きなハンディキャップであります。
それから、301の問題ですけれども、これは1990年までは開発と利用
が直結していました。ですから、開発すれば利用されるという姿だったわけ
ですが、301の問題でこの両者の関係が分断されたということで、開発が
利用に結びつかない構造になっている。
一方、外国の方では軍事利用がありますから、これは開発イコール利用
でございます。ですから、外国の企業は、開発と利用が結びついた形でいろ
いろ仕事をしていますが、日本の企業は、開発と利用が分断されたことで、
この点でも宇宙産業にとっては非常に大きな不利になっております。
それからもう一つは、本文に書いてございますが、政府とかNASAでは、
この301の問題に過剰に反応した。アメリカ側の顔色を見ないで、大胆にN
ASDAの技術開発成果が産業の競争力につながるようなことをもっと考え
てよかったんじゃないかということで、これは後で出てまいります。
それから、技術導入体質、技術導入の限界ですが、これはよく考えてみま
すと、日本は明治以来、先端技術の大型プロジェクトというのはやったこと
がございません。ですから、どうしても技術導入体質になっていて、技術開
発文化、組織文化というものが、こういう新技術を開発するような文化にな
っていないということです。ですから、一見、技術開発がうまくいっているが
ごとく今まで来たんですけれども、基礎データがないとか、経験が不足して
いるとか、失敗すればすぐに揚げ足をとり始めるとか、こういうふうなことで、
この文化を何か変えないと、日本ではこういうチャレンジングなことはできな
いんじゃないか、そういう問題を抱えているということを言っています。
そこで、こういう問題をどう解決するかというのは、2種類ございまして、1
つはNASDAの問題、それから、日本全体のトータルシステムの問題に、2
つに分けてございます。NASDAの問題は、既にいろいろなところで議論さ
れていまして、ここではどちらかといいますと、今まで言われていないような
ことを中心に書いていますが、NASDAのミッションの再設定、これは現時
点の状況に合わせて、NASDAのミッションというものをちゃんと明文化しな
きゃいけない。
それから、右にまいりまして、組織の経営と改善というところでは、どうして
も特殊法人では役所の金を使っていますので、官庁組織に陥りやすいんで
すけれども、もっと自律性ある組織、スピーディに意思決定できる組織、小
回りのきく組織にしなさいということを言っています。
それから、左下のキーとなる技術開発メカニズムの創設というのは、従来
はプロジェクトが決まってから技術開発を始めていた。しかし実はこれはあ
べこべであって、あらかじめキーとなる技術は開発するべきである。そして、
その技術ができたものをもってプロジェクトを組めと、従来の逆のプロジェク
ト推進、そうすれば期間も非常に短縮できるということで、いわゆる基盤技
術をあらかじめ作っておくということです。
それから、競争的環境というのは、要するにNASDAの内部にも、NASD
Aを取り巻く企業間にも、競争意識というのがない。悪い言葉では護送船団
方式で、なあなあでやっているんじゃないかということで、もっともっと内外と
もに競争原理というものを入れなきゃいかんということを言っています。
それから「守備範囲、責任範囲を軽くしよう」とありますが、今のNASDA
の守備範囲は非常に広過ぎる。中の人間ないし中のお金に比べて、責任範
囲なり守備範囲が広過ぎるので、だれかに責任を負ってもらう、だれかに守
備範囲を持ってもらう。例えば通信について、もっと旧郵政省に責任を持っ
てもらって、お金も向こうに持ってもらうとか、技術開発も持ってもらうという
ように、NASDAの責任範囲を少なくする、それから企業とも共同計画をや
るとか、そういうことでお互いに責任を分担し合うシステムが必要であろうと
いうことを言っております。
日本全体のことにつきましては、やっぱり戦略を作れということを言ってお
りまして、先ほど言いましたように、特徴ある日本型の宇宙開発利用をやり
ましょう、そして何でもかんでもやるんじゃなくて、ある一部分については世
界水準を目指すけれども、ある一部分については、最低限しかやらないとい
うための戦略なんですが、これは総花的になることには何の意味もないの
で大胆に物を捨てる、ということを言っています。「これはやらない」と。「これ
はやる」というんじゃなくて「これはやらない」というものを大胆に捨てましょう
と。そして従来のように、宇宙関係者が集まって戦略らしいものを決めて合
意を得る。みんなの合意を得るというような方法ではもうだめだということで
す。だから、少数でよろしいかと思うんですが、五、六名の少数精鋭の戦略
グループを宇宙開発委員会に作って、そこで大胆に戦略を作る。そして広く
国民に問うというふうな手続がいいんじゃないかということを言っております。
それから、産業の競争力の強化ですけれども、正直言いまして、例えば
衛星ですと、世界で今5グループありますが、それが、5つでも大き過ぎるの
で、4つとか3つになるんじゃないかというようなことが言われております。こ
のような状況で、日本企業が単独で世界市場で生き残っていくというのは、
容易なことではございません。
一方の考えでは、機器の製造業というのはもうあきらめて、利用産業でい
いんじゃないかという案もないわけではございませんが、宇宙技術を全部外
国のハードウェアに頼っていいかというと、これも安全保障上、非常に困る
ことであります。そういうことで、やはり日本として、宇宙機器製造業という産
業を非常に高い水準に保つ必要がある。それを持つことはどうしても必要だ。
産業と利用産業の両輪でもって日本の宇宙産業を作っていくべきだというこ
とで、3つばかりのことを提言してございます。
1つは、NASDAの開発活動というものを、民間の競争力強化につなげる。
現在のままではこれはうまくつながりませんので、例えばNASDAと民間の
共同開発計画を作る。その場合は、民間側も資金を負担する、責任も負う。
そういうふうなことで、資金も民間側が責任を負って、NASDAも一部負担し
て共同でやる。こんなようなこともございます。今の技術移転をもっと効率的
にやるというようなこともあろうかと思います。
2番目が、政府需要をやっぱり作らないと、産業は伸びない。今、情報収
集衛星とか、多目的衛星など政府需要がございますけれども、こういうもの
をもっと宇宙開発委員会などが働きかけて、政府需要を作るように活動しま
しょうということです。
3番目は、今、日本の宇宙機器製造業というのは、大企業の一部でござ
いますが、見ていると小回りがきいてないということで、中小企業とか、ベン
チャーとか、こういう小回りのきくような、非常に独創的なグループを育てる
必要があるということを言っております。
それから、宇宙利用の拡大なんですけれども、いいものを開発すれば利
用されるというふうに信じられていたかと思うんですが、それは絶対必要な
ことなんですけれども、十分条件ではございませんで、やっぱり利用技術と
いうものがちゃんと開発されないと、せっかく開発されたものが宝の持ち腐
れになるということです。日本の場合は、開発側が先行して利用側が非常に
遅れている。この両者のバランスをとる必要があるということで、どうするか
というのがそこに書いてございますが、開発側と利用側がパートナーシップ
関係を結んで、利用側も資金負担、技術開発負担をする。要するにNASD
Aだけ頑張ったんじゃうまくいかないということで、利用側も負担をするような
パートナーシップ関係を結ぶ。むしろ利用側がリーダーシップをとるべきだろ
うということです。
それから、利用技術というのは、アプリケーションとか、ソフトの開発がか
なりの部分を占めますので、大企業というよりは、むしろベンチャーだとか、
大学だとか、そういうふうなところをもっともっと育てましょうということを言っ
ております。
それから、ある程度開発のめどがついたものは、利用側が責任を持って
事業化するということで、開発側としては、早く手を離してしまうということも
提案しています。
最後が、宇宙開発利用体制ということですが、最初の方は総論的なことで
すが、理想的には、今のようなNASDA一極集中、NASDA、ISASがありま
すけれども、一極集中というのは、長い目で見た場合は多分よくないだろう。
ですから、多くの組織、多くの人々が主体的に参加するような体制が最も望
ましい。どっちかというと多極分散の方が望ましい。
そこで将来的には、これは理想形ですが、今のNASDAとかISASという
のは、むしろプレーヤーとしてはわき役になって、利用者とか、民間企業、こ
ういうものがむしろ主役になる。一般の産業ではこういう体制をとっているの
ですが、要するに宇宙技術というものを一般技術並みに持っていくというこ
とでございます。結局、強い者が残っていく、弱い者が落ちていくというふう
な組織体制が一番望ましいだろうと思います。ですから、大企業とか、NAS
DAとか、ISASとか、非常に強力な組織だけがやっているという体制は望ま
しくないというのが考え方です。
それから、●の真ん中ですが、今、3機関統合問題というのがいろいろ議
論されているようですが、我々としては、3機関を単純に統合したのでは非
常に問題を残すだろうと考えました。そもそも宇宙科学とか先端技術開発、
それからプロジェクト、この3つは本質的に性格が異なる。参加される専門
家の質が違うし、マネジメントも異ならなきゃだめだということで、要するに3
つを一緒にするにしても、フラット型で分散型にすべきだろう。そしてそれぞ
れのディビジョンが自律性を持っている。そして違ったマネジメントをとる。こ
ういうふうな組織経営が必要だろうと考えました。
これまでの役所の慣行とか、役所のしきたりなどを守っていたのではうま
くいかないだろうということで、ここでは、大分議論があったようですが、相当
腕力のある経営者がいて、役所のしきたりを打ち破るようなマネジメントをし
ないと、多分うまくいかないでしょう。そういうしきたりを破るような人を経営
者に連れてきなさいということを言っております。
それから、大学とか、ベンチャーとか、研究所とか民間企業、こういうとこ
ろに政府の金が流れるような仕組みを作っていかないと、最初に申しました
ような理想形といいますか、技術分散型の宇宙開発組織は生まれないとい
うことで、アメリカなどでは随分大学だとか中小ベンチャーにお金が流れて
いますが、ああいうふうな制度を作れということを言っています。
あとがきのほうは、最後のまとめみたいなもので、同じことを簡単に述べ
ただけです。以上です。
【 井口委員長 】
ありがとうございました。
最近毎日のように新聞に出ていることですけれども、特殊法人改革の問
題、それから、けさの新聞ですかね、特殊法人の5兆円の資金のうち、1兆
円は来年度から削減するという小泉首相の話が出ておりますし、そうなれば、
現在の宇宙開発体制、それから、プロジェクトそのものを見直さなければな
らないということは、当然予想されるわけです。そういう時期に、いろいろ広
範にわたって問題点を指摘してくださり、また数々の御提言をいただいたと
いうのは大変ありがたいことだと、心から感謝をいたします。
ただ、宇宙開発委員の中でも、個々の問題になりますと、同意する部分、
同意できない部分、また意見のある部分、たくさんおありかと思います。今
後、多分そう遠くない将来、いろいろなことを考え、決めなければいけない時
期が来ると思いますので、そのときに、この御提言を生かさせていただきた
いと思いますし、そのときに細かな議論はさせていただきたいと思います。し
たがって、今伺ったお話、御提言、すべてについて議論するだけの時間は
ありません。きょう伺ったばかりですから。しかし、そうは言いながら、せっか
くの機会ですので、いろいろ御意見を承りたいと思いますが、いかがでござ
いますか。
【 五代委員 】
よくまとめられていると思うんですが、その大きな紙で言いますと、上の方
に問題が、スーパー301と平和目的、これも私、2月ぐらいだと思うんです
が、新聞に投稿しました。いうなれば、一種のタブーみたいな感じで、なかな
か表に立って言われていなかった、あるいは知られていなかったというよう
なことなんですけれども、こういうことに対してきちんと表に問題意識が出さ
れたというのは、私は大きく前進したことだと思っています。
実はタブーがもう一つ残っているかなと思いまして、この2つがシステム的
にはあるのですが、もう一つのタブーは有人の問題だと思うんですね。それ
はもちろん「お金がありません」ということがあるんですが、井口委員長が前
からおっしゃっていたんですが、極めて高い信頼性を持たなきゃならんでしょ
うと。ということは、すごく厳しい開発をしなければならない。一番厳しい開発
というのは、有人をターゲットにしたもので、すぐ有人をやるとか、そういう意
味ではないんですが、有人を目標にするということは、やっぱり厳しさが全く
違うと思うんですね。有人を考えていたら、あんなミスはしなかっただろうと
か、そういうことは多々あると思っています。この報告といいますか、タスクフ
ォースの中で、ちょっと1つ欠けていることは、議論されたのかどうか知りま
せんけれども、もう一つ、「有人」ということ、お金がないからとか、これはちょ
っと無理だからやめておこうよといって議論に出ていなかったのかどうかは
わかりませんが、あと1つのタブーであるような気がするんですね。
だから、その辺はまだ一種の片肺、エンジンは幾つあるのか知りません
けれども、エンジンの1つがその問題かなと思って、これはこれからもうちょ
っと議論していく必要があるかなと思います。それ以外は、よく書かれている
なと思います。
さっきの報告にフラッグシップとありましたけれども、それこそ、まさに同じ
ことをある程度みんな意識しているということだと思います。
【 長柄委員 】
有人の話は、議論には随分出ました。それから、もうタブーではなくて、随
分有人の議論はしましたが、ここでは、要するにこれは1つの戦略の話です
から、少数精鋭の戦略を作って、有人をやるぞと。やるぞと言ったら、こんな
に金がかかるぞと。アメリカと組むとか、いろいろな方法があるかと思うんで
すが、国民に信を問うというようなことで、要するに有人はやらないならやら
ないとか、やるならこういうやり方でこうやりたいとか、ちゃんと作りなさいと
いうことで、議論はしましたけれども、このレポートには特に……。
【 五代委員 】
書いてない。
【 長柄委員 】
はい。何を選択するか、何を捨てるかということは、ここには何も書いてご
ざいません。
それから、タブーということで、日本でも、今の平和目的の解釈はおかしい
ではないかと。この解釈をこういうふうに変えるべきだとか、防衛庁がここを
やるべきだというような議論も出ましたが、ここには書いてございませんが、
ですから、タブーなしで議論はしました。
【 栗木委員 】
細かい話ではなくて、1つの見方というものが、昔、NASAが70年代にい
ろいろな開発をしたときに、いわゆるシンクタンクに依頼して、どういう開発
の筋道を今後たどるだろうかという予測と、それから、それに基づいたストラ
テジーというのを立てたレポートを、私、読んだことがございますが、そのと
きのアプローチというのは、ここではちょっと見られないんですけれども、宇
宙にどういう資源があるかという見方をするんです。そうしますと、それは工
学的な資源あるいは産業的な資源というものを考えると、宇宙というのは空
間ですから「何もない」と言ってしまえば何もないんです。しかしながら、今既
に宇宙が使われたということはどういうことかという、そういう発想に立って、
宇宙にどういう資源があるかを考えると、じゃ、どこから攻めていくか、そうい
うアプローチが1つあると思うんです。
そう考えてみますと、例えば情報活動に真っ先にアプライされる。この場
合は宇宙空間を「位置」という観点の財産と見ることができます。地球を外
から見ることができた、これは非常に大きな、いわゆる空間そのものがもう
既に財産であったということなんです。
それからもう一つの空間のあり方というのは、地球が汚くなった、要する
に人間が汚いものを作り出すわけです。それの捨て場所、極端なことを言う
と、熱力学でいうとエントロピーというんですが、それの捨て場所というぐあ
いに言われている。要するに財産としてどう見るか。その予測を紹介します
と、当たっている、当たってないは別として、まず情報というのがありました。
それから、材料があるでしょう。確かに私、ああ、宇宙ステーションが出て
きたなと、そういう目で見ました。それからサービスということ、それから、最
後にエネルギーというものが出てきました。エネルギーというのは、要する
に宇宙空間にラディエーションとして、放射エネルギーとして太陽光というも
のが「天然の核融合」としてあるでしょう。あれをどう使うか、その4つのステ
ップに根差して、アメリカは産業と、それから工学的な発展をシナリオとして
考えますという、そういう論文が70年代に出て、25年ぐらいの予測というの
が出されたことがありました。大体その線に沿って動いているなという感じが
しております。
ぜひ将来を見渡すのであれば、確かに今、日本が至らないところを見ると
いうこともありますけれども、更地から出発したらどういう見方をするかという
のも、もう一つの見方ではないかなと、そういう気がしております。
【 長柄委員 】
私たちも確かに資源としてやっぱり観光資源だと思いますね。宇宙は観
光資源として、ものすごいすばらしい資源がある。これはものすごい産業に
なるだろうと。まあ、相当先でしょうけれども。
【 栗木委員 】
さっきの「サービス」ということですね。
【 長柄委員 】
ツーリズムですね、ツーリズムとして非常に大きな資源がある。多分、ここ
で戦略を作る場合に、そういう資源をどう考えるかというようなことだろうと思
いますが。
【 澤田委員 】
大変おもしろく、これから楽しくなるんじゃないかなと思って聞かせていた
だいたんですが、これからこれをどういうふうに詰めていくかという話、おっし
ゃられたように、タブーというのは隠されているんじゃなくて、議論しなかった
という部分で、平和利用だって、今や日本で自衛隊が違憲だという議論もな
くなってきたようです。だから、従来型の兵隊さんのように、訓練して駆け足
させていて、防衛ができるのか。健康的で効率的な使用という意味でも、ち
ょっと若い人には悪いけど、そういう観点からも議論しなきゃならない当然の
問題だと思いますがね。
それと、タブーと言われて日本でできないのは、やっぱり縄張りとか、先ほ
ども触れられていたんですが、ある意味ではNASDAの守備範囲が広くなっ
た。だから、狭くしていかなきゃならない。これも1つの方向だと思いますけ
れども、どこまで狭くするか。したからといってできるかというと、今日の技術
から見れば、狭くしたからできますという保障はないと思うんです。あるいは
日本にある、例えば情報なら情報というものの解析なり何なり、それらを全
部集約して、それをここで使っていくとか、何かそういう仕組みがやはり必要
なんだけれども、日本でなかなかできない。行政改革をやってみても、その
成果が上がるのは30年先かなというぐらいの話ですから。その辺は皆さん
方のほうが御存じなんですけれども、ソ連が人工衛星を上げたというので、
アメリカはショックを受けましたね。そのときに、若い人を中心に、技術集約
的なことをやったといった話も、もう何十年前の話になってしまった。今出て
きている技術をどういうふうにして集めて、宇宙開発に結びつけていくか、こ
れは日本の従来型の産業というのが随分だめになってきました、新しいもの
でやらなければいけませんと言いながら、「今、日本にある知識を集約して
やっていくにはどうすればいいか」というところが、一番欠けているんですね。
そういう意味では、人材の教育とか、知識の集約とは言いながら、海外へ
出ていく方が多いね。日本人も居つかなくなってくるというような、寂しい状
況にある。その辺のところは一体どうなのかということをやらないと、技術集
約型の宇宙産業というものを、民間が頑張れとか、何が頑張れと言っても、
なかなか難しいのではという気がします。まあ、当然、いろいろ議論がなさ
れたのだろうと思いますが。
それから、宇宙利用の拡大ということですが、小さな金額だけれども、何
十年もやって、その開発でこういう成果が、こういうメリットがありましたとい
う話をどうも聞かないのですが、これは宣伝が悪いのか、NASDAが下手な
のか。アメリカなんていうのは、こんなになりましたと、うそかほんとうか知ら
ないけど、いっぱい本が出ていますね。確かに我々の生活でもそういったも
のが活用されているところが多いんですけれども、仕組みが基本的に、ある
意味では違うのか、特にヨーロッパでは。だんだん緩和されて来つつはある
んでしょうけれども、NASDAが持っていたんでは、開放します、開放します
と言っても、これはなかなか無理なのでしょうか。だから、開発した方に成果
は全部あげますよと、今そういう仕組みになっているかどうか知らないけれ
ども、いっそのことそうしてしまった方が、むしろ早いのではないでしょうか。
NASDAで特許を持っていて、ノウハウを持っていて、これをだれか民間
の人が使ってもうけたいと言えば、それをこれから考えるのでは、もう間に
合わないんじゃないのか。産業の育成というか、宇宙産業の方に引っ張って
いくという意味でも、そんなことが少し進めばなという、今、ちょっとお話を聞
いただけで、あと幾つか思いついたこともありますけれども、ちょっと感想だ
け。
【 長柄委員 】
守備範囲にしろ、利用問題にしろ、根底には多分、役所の縄張りというの
が歴史的にずっとありましてね。ですから、利用の方は、NASDAは手を出
してはいかんとか、一方NASDA側や旧科学技術庁側は、ここはNASDA
の領域だから、各省はやっちゃいかんとか、そういうふうに各省庁の縄張り
もかなり多く効いていると思います。ですから、おれの領地だ、他人の領域
に一歩も入っちゃいかんとか、そういうことがいろいろありまして、NASDA
は開発は一生懸命するけれども、利用の方に力を入れ始めたのはごく最近
です。産業は開発しただけでは利用はうまくいかない。利用側の研究と開発
側の経験がうまくマッチングしなければいけないと僕は言っていますが、そ
こが分断されている。
別にNASDAだけが悪いとかいうわけじゃなくて、日本の縦割りの弊害と
いうのは至るところであるわけですよ。
【 井口委員長 】
私は、宇宙の世界に入ってきてまだ半年ですけれども、ほかの方々は長
い間、宇宙開発に携わっておられて、いろいろな問題点はもうご認識されて
おられるわけです。その問題に対して、解決といいましょうか、対策を考える
のがこの宇宙開発委員会であるわけで、これから我々の責務は大変重たい
わけですが、真ん中にハッチングして矢印で書いてありますように「NASDA
の問題と改革、我が国の宇宙開発利用は過去及び現在の延長線上にはな
く、将来に向けた大きな方向転換が求められている。将来を見据えて有効
に機能する宇宙開発利用システムの再構築が早急に必要」である。
この宇宙開発利用いうのは、宇宙開発並びに利用システムと、そう理解し
てよろしいですね。利用だけじゃないですね。
【 長柄委員 】
いや、ここは実は2つの問題を言っていまして、1つは、NASDA問題の改
革という1つ大きい問題がありますと。そのほかに、将来に向けた大きな方
向転換とか再構築、この矢印は2つが重なっているんです。
【 井口委員長 】
そういう意味ですか。なるほど。いずれにせよ、これに関しては、宇宙開
発委員としても異論はないんではないかと思いますけどね、こういう問題認
識というのは。
NASDAのミッションの再生という、NASDAそのものにかかわることにつ
きましては、いろいろ御指摘もいただきましたが、そのうちのかなりというか、
幾つかというか、数は数えておりませんが、先月出しました基本計画にある
部分は盛り込んであります。そういう部分もあります。ただし、そうでない部
分もまだたくさんあります。それにつきましては、いつかはここで議論するの
がよろしいのかどうかということと、NASDAの責任者のいないところで欠席
裁判するのがいいのかどうかということも1つの問題だろうと思います。
それから、将来のことにつきましては、1つビジョンの問題があるんですが、
この中で、ミニNASAを追求しても、それは不可能であるという御指摘をい
ただいております。私もそのとおりだろうと思います。では具体的に、ミニNA
SAでなく日本型の特徴あるユニークな宇宙開発利用というのは何ですか、
文章ではお書きになりませんでしたけれども、長柄委員長代理は2期6年で、
我々の中では一番御経験が深いわけですから、それを踏まえて、何かもう
ちょっと、口頭であれば、我々にお聞かせいただけることがあれば、ひとつ
教えていただけませんでしょうか。
【 長柄委員 】
私が将来戦略グループにでも入れてもらえれば言いますけれども、今は
ちょっと封印しておきたいと思います。それは別に隠しているわけではござ
いませんが、個人的には、そんなものはもうやらん方がいいよ、そんなもの
はやめたらどうかというものがないわけではございません。そんなところに
金つぎ込むより、今ほかのものにつぎ込んだ方がいいというところはありま
すが、ちょっと差し障りがありますので。
【 井口委員長 】
わかりました。そうすると、大変失礼な質問になるかもしれませんが、昨年
の暮れ、中長期戦略というものを、長柄部長代理が大変苦労して、あれだっ
てものすごくたくさん、あれやれ、これやれという要求の中で非常に絞られて、
あれをお作りになった御苦労は私、よく存じ上げております。それでもまだ、
あれは総花的だという批判も、いろいろなところからございます。もちろん、
私は見直す必要があると思います。そういう方向と今のお話を理解してよろ
しいですか。
【 長柄委員 】
はい。あれは見直すといいますか、まあ、去年のだって、全員の合意は得
ていませんが、しかし、何となく合意を得ようと努力したわけで、やはり合意
を得ようと思ったら、いい戦略はできないと思います。ですから、五、六人の
ほんとうにエキスパートと宇宙開発委員だけで作って、みんなにそれを問う
というようなやり方だと思いますね。だから、20人も集まって何か議論やっ
たら、それは戦略はできないと思います。
【 井口委員長 】
今度の新しい体制というか、1月6日からの宇宙開発委員会並びに部会
の決定は、特別委員にはご意見は承るんですが、最終的な決定は委員だ
けで責任を持ってすることになっておりますから、そういう意味では、前とは
だいぶ変わっているわけですね、今の組織といいますか、やり方自身も。
【 栗木委員 】
細かいことではなくて、これだけ大勢の方が集まられて、いろいろな議論
が出たと思いますが、ミニNASA・ミニ米国を目指すのではない、としますと、
日本で宇宙開発が始まって、いうなれば、和魂洋才でやってきたというとこ
ろがあると思うんですが、和魂の方で残しておいた方がいいというようなの
もございましたか。特にどれというより、日本流がいいなというのもございま
したか。つまり、ミニNASA・ミニ米国を目指さないんだとすると、我が国独
自としてこれがいいのではないかといったものがございましたでしょうか。全
く興味本意ですけど。
【 長柄委員 】
いえ、特にそこはこのグループでは議論しないと。いろいろ意見は出まし
たけれども、それは個人によっては、これだけやればいいと言う人もいます
し、ある人は、いや、そんなのはだめだと言う人もいました。そういう議論は
ありましたが、深くは議論していません。
【 井口委員長 】
ほかに何かございませんか。
【 五代委員 】
最近いつも思うんですけど、日本では、きちっとしたシンクタンクが足りな
いんですね。アメリカだと、絶えずそれを継続的にやっているところが、1つ
だけじゃなくて、いろいろありますね。それが日本ではその時々で人が集ま
るわけですが、そういうことが長い間あったかもしれませんね。
【 長柄委員 】
知恵に対して、1,000万円なり3,000万円なり、人の能力に対して金を払
う習慣がないからです。ですから、ほんとうによくできる人というのは、10年
間であなたには幾ら保障するよということで、人を集めるわけですね。
【 五代委員 】
だから、できないわけじゃないと思うんですよ、今やね。
【 長柄委員 】
だから、クライアントの方が、あなたは1年間5,000万払うから、ここに知
恵をかしてくださいというような習慣がないですね、日本には。
【 五代委員 】
だけど、やれるんですよね。
【 長柄委員 】
まあ、弁護士なんかはね、高い弁護士もいますから。
【 井口委員長 】
我々は、難しいとは思いながら、何とかそれを実現することを考えて、実
行する立場ですので、ただ、だめだということで話を終わらすわけにはいか
ないし、この長柄タスクフォースの報告書の中にも、どこに書いてあったか、
長柄委員にお伺いすればわかると思うんですが、数人の強力な企画者をち
ゃんと準備しろと、どこかに書いてありますね。
【 長柄委員 】
書いております。これも議論では「養成から始めなきゃいかん」という意見
もでました。それをできる人は、今、日本にはいないというわけです。だから、
そういう訓練を、それはアメリカのシンクタンクに出すかどうか知りませんけ
れども、既に日本は、そういう戦略を作るようなエキスパートが多分いない
だろうと。まあ、探せばいるんでしょうけど。だから、そういう人の養成から始
めないとうまくいかんだろというような議論がありました。
【 井口委員長 】
いや、あるいは外国から連れてきたっていいわけですね。
【 長柄委員 】
ええ。
【 井口委員長 】
ですから、そういうことも1つの案としてあり得るのだろうと思いますけどね。
【 澤田委員 】
実態としては、今あるところでいろいろ聞いて、その情報を日本にないよう
な片仮名でまとめて報告するというのが多いんですよ。隠れた問題点をどう
やって引き出すかということにおいては、中でいろいろ議論してみると出てき
ますねという部分があるのであって、知らない問題が急に出てくるような話じ
ゃないですね。高い金を払っても安い金を払っても、そう変わりないんだろう
と私は思うんですけれども、問題は、その機関が本気でやる気があるかどう
かということだけだろうと思いますね。知らないはずはないですね、おそらく。
【 井口委員長 】
ありがとうございました。いずれこういう御提言に対して、我々がこたえる
役割を持っていると思いますので、どういう形でこたえていくかというのは、
これから事務局とも一緒に検討していきたいと思います。大変貴重な数々
の指摘、御提言をいただきましたので、少なくとも、これをどこかに棚上げす
るようなことだけはしないようにいたしたい思います。
どうもきょうはほんとうにありがとうございました。
もう1件ございます。H- Aロケットの最近の準備状況、8月25日打ち上
げに向けての準備状況を、丹尾スポークスマンに御紹介いただきます。
【 丹尾副本部長 】
宇宙開発事業団の丹尾です。
試験機1号機の整備作業状況ですけれども、2番に打上げ整備作業全体
と書いてありますが、一言で言いますと、ここに書いてありますとおり、7月1
2日から開始いたしました打上げ整備作業については、これまでのところ順
調に進行しております。
3ページに整備作業の全体スケジュールを書いてございます。7月12日
から、射場におきまして整備作業を開始いたしまして、19日までで機体の
組立てを完了しております。7月20日から電気系、それから、1段、2段の
推進系統の点検作業を行いまして、昨日までのところ、順調に整備作業は
進められている状況であります。
1ページに戻りまして、簡単に先週1週間の状況を御報告いたします。3
項目ですけれども、まず電気系では、点検前準備、それから、SRBのインタ
フェースコネクタの確認、それから、テレメータ・誘導制御系の点検、それか
ら、フライトシミュレーション、これらを29日日曜日までに実施しまして、正常
に機能することを確認いたしました。フライトシミュレーションといいますのは、
打上げた後、SRBの分離、あるいはフェアリングの分離、1段分搭のシーケ
ンスを地上において確認する試験でございます。電気的に総合的に確認す
る試験でございます。
それから、2番目としまして、1段の推進系点検としましては、タンクの漏
洩点検、バルブ等の作動確認、油圧系、スリューテストといいますのは、エ
ンジンのジンバルの試験でございます。これらの点検を実施して、正常に機
能することを確認しております。
それから、火工品の取り付け作業を行っております。SRBの分離、それ
から機体支持装置の火工品、この機体支持装置といいますのは、H- A
で初めて使うものですが、1段の中央部のところを、トラス構造物によって支
持してございます。それが打上げ時に分離するんですが、それの火工品の
取り付けを行っております。
2ページ目にいきまして、ペイロード系としましては、フェリングの概観点
検、それから、衛星搭載アダプタがございまして、ここにCCDカメラを取り付
けてございます。このCCDカメラで、フェアリングの分離、それから、LREと
いうペイロードを積みますが、その分離を確認する。そのためのCCDカメラ
を取り付けてございます。
4番目に、今週から来週の主要作業予定でございますが、電気系の点検、
それから、1、2段の推進系の点検を引き続き実施いたします。それから、
特別点検としまして、7月31日から8月4日にかけまして、SRB-Aのモー
ダルサーベイを実施いたします。モーダルサーベイについては、下の方に
注釈が書いてございますが、SRBに加振機で加振いたしまして、SRBにそ
の振動がどのように伝わっていくか、あるいは機体本体にどのように伝わる
かの確認をするための試験でございます。これは特別の点検として実施し
ております。
それからもう一つ、8月9日に極低温点検を実施する予定であります。極
低温点検といいますのは、射場におきまして、初めて1段及び2段に液体水
素と酸素を充填する。その地上装置の機能確認、それから、漏洩がないか
等の確認を行う予定にしております。
その他といたしまして、8月3日に性能確認を、ペイロードでVEP-2を、
それから、8月8日、9日に、機体及び極低温点検の状況を報道関係に、種
子島宇宙センターにおいて公開する予定をしてございます。
それから、この射場の整備作業と並行いたしまして、インデューサーを改
良した液体水素ターボポンプを装着しました1段のLE-7エンジンの認定試
験を、種子島宇宙センターにおいて行っております。これまで6回実施いた
しまして、本日7回目、約200秒の燃焼試験を実施する予定でございます。
3つ目に、先般、ロケットシンポジウムの御報告をさせていただきましたが、
このシンポジウムに参加できなかった方や、一般の方々にその模様を見て
いただくために、昨日からNASDAのホームページからも、ここに書いてあ
るアドレスで、直接シンポジウムの様子を見ることができます。この様子は
ビデオにして配信しております。
それから、サンエンスチャンネルにおきまして、8月中に集中的にH- A
関連の番組を放映していただく予定になってございます。そのプログラムを、
6ページと7ページにつけてございます。今回、新しくこの1号機に合わせま
して、3本の番組を作りました。「21世紀の宇宙へ!H- Aロケット」、真ん
中の「H- Aロケット/宇宙への新たな挑戦」、それから、下の方の「H-
Aロケット/目指した技術開発とは……」と、それぞれ29分、14分ものを、
この時間帯に放映していただく予定になってございます。
7ページ目には、これまで作ったビデオも同時に集中的に放映していただ
く予定にしております。
以上が資料で、ビデオを用意してございますので、今からそれを見ていた
だこうと思います。
先週からの動きになりますが、ここは2段の水素タンクでございます。ここ
は1段と2段の段間部で、人が出入りできるマンドアといっていますが、そこ
から人が中に入って、機体の中の整備を行っております。これは1段のLE
-7Aエンジンのターボポンプのところです。推進系の点検で、これは発射
司令塔から、バルブの作動を行っているところです。これはCCDカメラ、こ
れは衛星搭載のアダプタのところですが、そこにCCDカメラを取り付けてい
るところです。今回、この機体はSRBの分離、それから、1、2段の分離、そ
れから、2段のタンク内の推進薬の挙動を測定するためのカメラ、それから、
衛星分離のためのカメラと、4台のカメラが搭載されていまして、打上げが
順調にいけば、ライヴでこの画像を見ることができます。
隣がライトですね。これは、SRBのブレストと言ってございますが、左右に
ぶれないようにトラスでサポートしてございますが、それに断熱カバーをか
ぶせているところです。これは、2段の水素の充填、それから、蒸発したガス
を地上に戻すためのラインのところで、今、充填ラインの漏洩点検をやって
いるところです。これが先ほどの2段の段間部のところです。これは誘導制
御系点検で、誘導装置のアライメントをとっているところでございます。H-
Aでは、セルフ・アライメントといいまして、搭載したままでアライメントをと
ることができます。そのアライメントの点検の確認をやっているところでござ
います。
これは、フライトシミュレーションに先立ちまして、ドライラン、ドライランとい
いますのは、実際にボタン等は操作しないで、手順を確認するためのドライ
ランをやっているところです。これは新しい発射管制塔でございます。この発
射管制塔は、2台のロケットを同時にチェックアウトできるようになっていると
いうことでございます。今、フライトシミュレーションでSRBのノズルを振って
いるところです。これがLE-7のノズルを振っているところです。搭載するコ
ンピュータからの指令に基づいて、LE-7エンジンが作動している。この部
分は、1段のエンジンの火炎の防止のためのカバーでございます。
1段エンジンは、ピッチ/ヨーに最大9度まで振ることができます。実際の
フライト中に動きますのはせいぜい1度程度ですが、機能的には9度まで振
れるようになっています。SRBにつきましては、5度振ることになりまして、
打上がった後、ピッチ、それから、ロール制御は、SRBのノズルを動かすこ
とによってロール制御をやります。
これは、フライトシミュレーションのためのカウントダウンをやっているとこ
ろです。
これがモーダルサーベイ、SRBの機軸方向に加振器を装着しまして、SR
Bに振動荷重を加えまして、それがこのSRBにどう伝わるか、あるいは機
体本体にどのように伝わっていくかのデータをとるための試験でございます。
2本の加振器で、前方のアダプタを加振しております。ここが加振器です。
約100ヘルツまで、周波数を変えて加振をしております。
これは整備作業ですが、この番組はサンエンスチャンネルで、今度の打
上げを案内しているところのフィルムです。この打上げの模様を、NASDA
のホームページから、打上げ当日はライヴで実況が見ていただけるという
案内をしているところです。約1分のフィルムで、きょうから打上げに向けま
して、サイエンスチャンネルで毎日、1回ないし5回の放送をお願いしており
ます。以上です。
【 井口委員長 】
どうもありがとうございました。何か御質問はございませんか。
【 栗木委員 】
最後の方で出てきましたモーダルサーベイなんかは、あれはSRBのメー
カーでやる、作業場でやるテストではないんですか。あそこでしかできない
んですか。
【 丹尾副本部長 】
はい。機体に装着した状態は種子島でしかできません。
【 栗木委員 】
結合状態でモーダルサーベイをやるんですか。
【 丹尾副本部長 】
はい。GTVのところは、コアビークルについて行いました。SRBは、今回
初めて本物のCFRP製のチャンバーと、本物の推薬がついてございますの
で、その状態でのモーダルサーベイのデータというのを公開しております。
【 栗木委員 】
ただ、燃料はからですね、本体の方は。
【 丹尾副本部長 】
本体はからでございます。
【 井口委員長 】
どうもありがとうございました。
それでは、次に、過去1週間の内外の宇宙開発の現状報告を、事務局の
宇宙政策課田中さんにしていただきます。
【 事務局(田中) 】
それでは、先週の水曜日から先日の火曜日までの1週間の内外の宇宙
開発の現状について、簡単に報告させていただきます。
まず、宇宙開発委員会の活動でございますが、先週の金曜日、7月27日
に計画評価部会の第7回会合がございました。この計画評価部会では、H
- A増強型や、地域情報収集衛星など、平成14年度の概算要求に向け
た検討状況について聴取いたしまして、それから、金星探査プロジェクト小
委員会の審議結果の報告がございました。
また、審議結果の取りまとめについて、報告書のアウトラインが提示され
まして、そのアウトラインについて議論の上、まだ議論し切れていないことに
つきましては、今週いっぱい、特別委員の方々の意見を骨子にいたしまして、
それを取りまとめまして、また今後、8月10日ごろだと思いますが、概算要
求のシーリングなども示されますので、それを踏まえまして、報告書を書い
ていきまして、次回8月22日に報告書案を審議することになっております。
それから、申しわけございません、こちらの手違いで記載し忘れてしまい
ましたが、同じく7月29日の金曜日には、第3回の利用部会がございまして、
宇宙利用の推進方策の検討に当たってのポイントについての議論がなされ
ました。
それから、2番目、宇宙開発に関する国内の動向でございますが、この1
週間、特になしと書いてございますが、実は本日、8月1日でございますが、
改良型のインデューサーを搭載いたしましたLE-7A認定型エンジンの第7
回目の燃焼試験が予定されております。おそらく間もなく行われるのではな
いかと思います。今回も液体水素ターボポンプ、インデューサーにとって厳
しい入り口条件での試験でございまして、試験秒数は200秒を予定しており
ます。
それから、宇宙開発に関する海外の動向でございます。まず、先週の水
曜日でございますが、こちらは先週の宇宙開発委員会の方で、本委員会の
議題として報告させていただきましたが、アトランティス号がISSの組み立て
ミッションを終了いたしまして、無事帰還いたしました。それから、アリアン5
ロケットの打上げの不具合によりまして、当初、予定の軌道に乗せることが
できなかったアルテミスにつきましては、リカバリー作業が順調に進んでい
るとのことです。
7月24日、ヨーロッパ時間におきまして、高度3万1,000キロの円軌道に
投入されております。衛星は現在順調でございまして、ESAとアルカテルと
いう会社のチームが完全にコントロールできる状態にございます。このリカ
バリー作業というのは、4つのステップで行われることになっておりまして、
ステップ1で遠地点高度を上げ、ステップ2で近地点高度を上げました。現
在、ステップ3という段階でございまして、今後、イオン推進を用いて、正式
に持ち上げていくことになります。
アルテミスのリカバリーにつきまして、次回の進捗報告は、ステップ4開始
時点の9月末ぐらいになるのではないかということでございます。
それから、この1週間の世界の打上げでございますが、先日、7月31日
火曜日に、ロシアの太陽観測衛星、コロナスFという人工衛星の打上げが成
功いたしました。このコロナスFは、太陽観測を目的とした人工衛星でござい
ますが、ロシアだけではなくて、ウクライナやポーランドなどの欧州各国の共
同プロジェクトでございます。この打上げに使われましたロケットは、
「Tsyklon3」と申しまして、旧ソ連の大陸間弾道ミサイル、いわゆるICBMを
衛星打上げ用に転用したロケットということでございます。
簡単でございますが、以上です。
【 井口委員長 】
どうもありがとうございました。
五代さん、「アルテミス」というのは不幸な運命にあるかと思ったら、何とか、
もとに戻る可能性はあるんですね。
【 五代委員 】
そうですね。
【 井口委員長 】
これはいつはっきりするかはわかってないのでしょうか。
【 事務局(田中) 】
次回の報告は9月末ということでございまして、先日報告させていただい
たことでは、運用ができるようになるのは来年秋以降ではないかという話で
ございました。その報道でございますが、関係者の言葉では、このミッション
が順調に行けば、化学燃料等も十分残っておりまして、ある程度運用がで
きるんじゃないかと期待しているということはございます。
【 井口委員長 】
どうもありがとうございました。
それでは、例によりまして、前回議事要旨の御確認を後ほどお願いいたし
ます。
それでは、以上で第29回の宇宙開発委員会を閉会いたします。ありがと
うございました。
---了---
(研究開発局宇宙政策課)