「家に帰りたい」それを叶える為にわたし達ができること ~在宅復帰支援の事例を通して~ 部署名 3 階介護部 発表者 吉村順子 パワーポイント操作者 吉本夕子 【はじめに】 在宅復帰を支援する事が目的のリハビリ施設である当介護老人保健施設に入所され、A 氏の「家にかえり たい」という強い希望に沿い、家族様と協力しながら介護部として取り組んだ内容をここに紹介します。 【事例紹介】 A 氏 92 歳 男性 要介護度:Ⅳ 寝たきり度:BⅡ 認知度:ⅡB ADL 排泄:全介助 移動:一部介助 食事:自立 精神面:引きこもり他者との交流がない 既往歴 脳梗塞後遺症 右上肢麻痺 高血圧症 前立腺肥大症 神経因性膀胱 腰椎圧迫骨折 白内障 【取組内容】 Ⅰ:ADL 機能向上に向けて … BPSD 改善 ①夜間の不潔行為 ②日中車椅子での徘徊 Ⅱ:家族様との関わり … レクリエーションを通して Ⅲ:退所前訪問 … 団地2階にある自宅までの階段13段 Ⅳ:機能訓練連携 … 転倒防止の意識改革 及び 家族様へのナイトケアの指導 Ⅴ:スキルアップの為の勉強会 … 強化型老健とは 【結果】 Ⅰ:夜間不潔行為に対し、段階的な対応をした結果、不潔行為は激減した。ポータブルトイレの設置にて 排泄は自立へとアップしていった。 車椅子での徘徊は、行動の抑制をせず自由に動いてもらうことにより、行動パターンを把握できた。現 在での、ADL 機能は、ほぼ「自立」となっている。 Ⅱ:A 氏と家族様との深い関わりを通してそれぞれの想いを理解し同じ方向へと向かう「絆」を築けた。 Ⅲ:A 氏の自宅での生活を知る事でフロアでの対応や課題が見えてきた。 Ⅳ:訓練を見学する事により、A 氏と家族様の努力を感じフロアでは転倒のないよう支援しなければなら ないという職員間の意識づけができた。 Ⅴ:当施設は「強化型老健」を目指している施設であることを勉強した事で、利用者様への在宅復帰支援 にどう取り組んでいかなければならないのかという認識ができた。 【考察】 ・BPSD への原因を追究する事は利用者様の気持ちを十分に理解する事に繋がると感じた。 ・在宅復帰する為には、利用者様とその家族様との「絆」を深める支援が必要だと感じた。 ・在宅支援に向けては、定期的なカンファレンス以外でも他部署との連携を通した情報交換と共有が必要 なチームケアであると感じた。 【おわりに】 引きこもりであった A 氏が半月間でフロアに「自分の意思」で出てこられるようになり、 「笑顔」も沢山 見られるようになった。3月頃には家に帰る予定で今も懸命にリハビリに励んでおられる。この事例を通し て見えてきた「私たちができる支援」を今後も継続して取り組んでいきたい。 天国からのお迎え ~穏やかな看取り~ 部署名 看護部 発表者 上原 荒瀬 パワーポイント操作者 田中 野倉 【はじめに】 近年、介護老人保健施設の中での入所者の高齢化や重症化が進んでおり、それに伴い施設での看取りを希 望される方も年々増えている傾向にあります。当施設も平成 24 年より看取りを行っており、H26 年 11 月現 在までに 19 人の方の看取りを行いました。その中で、家族様の思いに寄り添うことの大切さや難しさに気 付き、今後の課題を明らかにすることができたのでここに報告させていただきます。 【事例紹介】 利用者:S氏 104 歳 入所期間:平成25年4月 16 日~平成 26 年 9 月 23 日 ターミナル期間:平成 25 年 5 月 27 日~平成 26 年 9 月 23 日(9 月 8 日~個室対応) 【経過】 S氏は、臨終期となり個室に移動してから、家族様が 24 時間体制で付き添われていました。家族様がゆ っくり横になれるスペースを提供するため、CWと相談し居室のベッドの横に畳を設置しました。付添いさ れているのは長男のお嫁さんがほとんどであり、お嫁さん自身介護の仕事をされているということで清拭、 更衣等のケアに積極的に入ってくださいました。その中でS氏が元気だった頃の話をたくさんしてください ました。以前、お嫁さんがS氏の耳元で「おばあちゃん、天国はいっぱいやからまだお迎えはけえへんで」 と語りかけておられるのを耳にしました。今年の敬老の日はフロアに酸素ごとベッドを出し家族様と一緒に お祝いをすることができました。家族様にはとても喜んでいただきました。エンゼルケアはお嫁さんとお孫 さんにも一緒に入っていただきました。酸素吸入していたこともあり、亡くなる数日前より口腔内の乾燥が ひどく、出血し痛々しかったのが悔やまれます。最後は他利用者様に見送られながら玄関から退所されまし た。その後、スタッフより看取りに関しての意見が多数出されました。 【考察】 今回、居室に畳を設置したことで残された時間を家族で過ごしていただくことができ、家族様にとっても 死を受け入れるためのよい時間が持てたのではないかと考えます。以前は、他利用者様にわからないように 裏から退所されていましたが、見せる看取りとして他利用者様に見送られ正面玄関から退所されました。そ のこともオープンな看取りを行う上でとても重要だと感じます。看取りを行う際、利用者様、家族様に残さ れた時間をどう過ごして頂くのか、どうすれば安楽に過ごしていただけるのかは私たちスタッフにとっても 大きな課題であり、それによって家族様の満足度も大きく変わってくると思います。今回改めてその事に気 付くことができ、また今後の課題として「家族様の精神的なフォローをどうするべきか」や「定期的なカン ファレンスの必要性」等が挙がりました。 【まとめ】 『看取り』と一言でいっても利用者様によってケースは様々であり、利用者様、ご家族様の希望も異なりま す。延命治療をされない利用者様に対して私たち看護師ができることは限られており、様々な心の葛藤も正 直あります。しかし、看取りを行うからこそ利用者様の尊厳を守り、心から満足していただけるよう努めて いかなければいけないと感じます。 『エンゼルケアは最後の通知簿』という言葉があります。最後の最後まで 利用者様、家族様に寄り添い、家族様に満点をいただけるような看護を行っていきたいと思います。 友情にも似た信頼関係を! ~ 傾聴から対話へ ~ 部署名 発表者 Ⅰ アザリアデイサービスセンター 河合 保 はじめに 誰にでも大切な友達がいると思います。 他者と無理に交流を図って頂くのではなく、職員と友人の様な関係を築いた事により、笑顔が増え、喜 怒哀楽を表現出来るようになった事例を紹介します。 Ⅱ 事例紹介 利用者: F 氏 年齢: 44歳 H26年 10月 デイサービスを利用開始 既往歴: H25年 6月 自発性低下 H25年 11月 前頭葉に悪性の脳腫瘍(OP 済み) H26年 4月 Ⅲ 痙攣を起こし機能低下あり、胃婁造設 取り組み 正直、年齢も若く職員も初めは対応に悩んでいた事が本音です。利用当初、本人様の好きな事のお話し をするも、笑顔になる回数も少なく自身の思っている事を訴える事もありませんでした。また座席も比 較的年齢の近い方の隣にしましたが、会話をされる事はありませんでした。そこで職員にアンケートを 取り、友達とする様なコミュニケーションの内容に変更しました。 Ⅳ 結果及び考察 年齢も若く、他利用者とも年が離れており交流を図る事が出来ませんでした。しかし職員が細めにコミ ュニケーションを図り、職員と友情にも似た関係を築いた結果、笑顔が増え意欲向上につながり、穏や かな表情でデイサービスに通われるようになったと考えられます。また大切な人へ自身の思っている事 や感情も表現出来るようになられました。 Ⅴ おわりに デイサービスを利用される方は、性格はもちろん年齢も様々です。一人ひとりに合った対応・サービス を提供するには、信頼関係が必要不可欠です。その中で友情にも似た信頼関係も必要と感じました。 敬語を使い、ある程度の距離感はもちろん大切と思います。 ただ『慣れ慣れしく』ではなく、大切な友達との関係の様に尊敬や信頼・思いやりを忘れず、決して裏 切る事のない、そんな関係も介護サービスには必要なのかもしれません。周りから見れば非常識なのか もしれません。自分達でも正しいのかさえわかりませんが、介護の根底にある《笑顔》や言葉に出来な い感情を大切にし、一方的に笑って頂くのではなく、 『共に笑い共感出来る関係』を築く、そんなデイサ ービスにしたいと思います。 布パンツで快適ライフ&コスト削減!!! 部署名 2階介護部 発表者 海野綾子 松﨑美恵子 <はじめに> 施設入所すれば、紙オムツ、リハビリパンツという認識が強く、オムツ交換の時間がきたら一斉にオムツ交換を 行うという作業的な状況にありました。一昨年の10月から排泄ケアを見直し、利用者様の個別性、利用者様 中心の視点で排泄を考え、オムツ交換の時間だけでなく、紙オムツからリハビリパンツ、リハビリパンツから 布パンツへの移行。また尿意曖昧である事を理由に、病院では日中夜間共オムツだった方を入所後トイレで排泄に移行しまし た。それに関連する効果と今後の課題が見出せたのでここに報告します。 <実施内容> ◎K 氏 99 歳 入所時機能評価、移動:車いす全介助 ベッド上動作 寝返り:可(手すり把持) 移乗:軽介助 入浴:機械浴 起き上がり(手すり支持) 端座位:ごく短時間可能であるが、後方へ倒れやすい・背もたれ(車いすは)坐位は可 排泄:尿便意なしの為、紙オムツ対応 約2週間後本人よりトイレに行きたいとの希望あり、2人介助にてトイレ誘導開始。 それに伴い立位も安定され日中トイレ誘導に移行。 ◎オムツの種類と価格表を貼り出し、2か月間使用状況を調べる。 ◎個々に合った排泄用具、交換時間の見直しを行う。 ◎施設で布パンツ(ボクサーパンツ)を20枚ほど準備する ◎日中夜間共にリハビリパンツの方2名、夜間オムツ対応の方3名の方を布パンツへ <結果> オムツの種類と価格表を貼り出し、2か月間オムツの使用状況を調べることで、職員にもコスト意識が芽生え、 排泄用具も、尿量に合わせたものを上手く組み合わせることにも繋がり、排泄時間も個々に合わせ、特に夜間 は在宅を視野に入れ、0時に行っていたパット交換の時間を22時に変更しました。睡眠を最優先に考え、 また、リハビリパンツから布パンツに変更した事により利用者様の意識にも変化があったのか、日中はパット内 への排尿では無く、トイレで排尿することが多くなり、日中の活気アップに繋がりました。 <考察> オムツの使用量と金額を明確にすることで、より一層コスト意識に結びつき、また、尿量を測定することで、 個々に合った排泄用具を選ぶことにも繋がりました。 施設入所すれば当然リハビリパンツという認識でおられた家族様からは、 協力的な言葉もいただきました。私たちは、利用者様が布パンツになれば快適になり必ず喜んでもらえると思い、布パンツに 移行という目的を優先しようとする意識が強すぎたと思います。しかし、利用者様からは失禁を懸念する声もあり、第一に行 うこととして、利用者様が安心して移行していく環境作りだったのではないかと考えました。 <まとめ> 今回の取り組みによって、個別でのケアがどれだけ大切であるかを改めて考えさせられました。また、本来の生活に近い布パ ンツにする事で、活気アップにも繋がり、使用量が減ることでコスト削減に繋げることが出来ました。 排泄ケアに関してまだまだ改善すべき点は残っていますが、 「蒸れる・窮屈」な紙オムツ、リハビリパンツをやめて 快適な生活を送ることが出来るように、ケアの視野を広げて今後も取り組んでいきたいと思います。 在宅生活を支える家族と共に ~ 在宅生活の可能性 ~ アザリアケアプランセンター 発表者 藤坂 由美子 パワーポイント操作者 丸山 喜弘 【はじめに】 当ケアプランセンター利用中の Y 氏は、要介護度5という重い介護度でありながら、在宅で生活をし 5年になる。妹達の介護を受け、他職種連携の様々なサービスを利用しながら在宅生活を続けている。そん な Y 氏とご家族の事例を紹介する。 【事例紹介】 Y氏男性、65 歳、要介護5。47歳の時に事故で頚髄損傷。58 歳の時に後縦靭帯骨化症と診断される。 妻を45歳の時に亡くし、息子は社宅で暮らしている。5年前より、妹達と同居し、現在は、ほぼ寝たきり 状態である。四肢まひの為、全てに介助が必要で、常に全身に疼痛、痺れがあり、頻回な体位交換が必要。 大柄な為、車いすへの移乗はリフトを使用し、入浴は訪問入浴を週3回利用。バルーン留置、排便コントロ ールの為、訪問看護を週1回、訪問リハビリを週3回、通所リハビリを週1回利用し、月に2回医師の往診 を受ける。訪問時は、1冊のノートにそれぞれが、その日の状態を記載する。気がかりな事があれば、すぐ に連絡が入る。体重の減少にも敏感で、皆で喜ぶ。他職種の連携ができている。 家族は大変な介護なのに、いつも明るく一生懸命である。眠れない Y 氏が体位交換を何度も依頼する。 「いい加減にしてよ」と言い、明るく喧嘩する。 「こっちの言う事も聞いてよ、って怒るよ。」と言うが、そ の表情にはあまり疲れは見られない。 「こっちが倒れるよ」と、口に出すことで、ストレス発散になっている のかもしれない。それぞれの職員とも話が弾む。喧嘩の様子を面白おかしく話してくれる。 体重が以前より減少し、通所リハビリを利用するようになって半年。座位時間が長くなった。 自宅で時々聞きなれない歌を歌う。デイケアのカラオケで覚えた歌だった。外に出る事で少し世界が広がっ た。しかし、問題が起こってきた。夜間の大声などの症状が出現。そう、 『認知症だ』 。眠れない辛さ。介護 負担の増加。今まで極力考えなかった、考えないようにしていた「入所」の二文字が頭をよぎる。 今後、Y 氏の認知症状がどのように進行していくかは分からない。ただ、現在も在宅で生活を送られている。 【考察】 重い介護度であっても在宅生活を続ける事は可能であるが、やはり、家族の負担は大きい。 Y 氏の家族の場合は訪問系のサービスをはじめ、様々なサービスを利用する事でいつでも相談できる環境 ができている。時にはしんどい状況を話し、また本人と喧嘩をすることで、上手にストレスを発散できた。 しかし、認知症と診断されている Y 氏が今後どのように在宅生活を送れるかは、他職種が今まで以上に連携 を図り、本人・家族を多方面から支援していく必要があると考える。 【おわりに】 在宅介護は、協力者がなく、介護負担が大きいと、家族は追い込まれて行く。その上、経済的に余裕が なければ虐待にまで発展する事もある。在宅生活を支援する立場として、これからも Y 氏・家族に声を掛け ていき、また関連事業所間で連携を図り、在宅生活の可能性を探っていきたいと思う。 目指せ、在宅復帰率 50%以上 ~改正後のアザリアの取り組みが与える在宅復帰率への効果~ 部署名 相談室 発表者 山出幸 パワーポイント操作者 野口拓郎 【はじめに】 平成24年4月の介護保険改正を受け、在宅復帰率向上の必要性を感じ、在宅復帰パスを用いたコース別退所アプローチ等 に取り組み、在宅復帰率30%以上を達成する事が出来たことは以前の学術研究発表会でお伝えし、ご承知の事と思う。今年 度は、在宅強化型老健を目標に設定し、以前から取り組んでいる在宅復帰パスを用いたコース別退所アプローチは勿論、入 所前後訪問(入所期間が1ヶ月を超えると見込まれる利用者の入所予定日前の30日以内か入所後7日以内に利用者が退所後生 活する居宅を訪問し、退所を目的とした施設サービス計画の策定及び診療方針の決定を行うもの)等にも取り組みだした。 これらの取り組みが、どの程度在宅復帰率向上に効果を与えているのかという部分に着目し、取り組みを行う前の平成23 年1月~12月の状況と、取り組み開始後の平成26年1月~12月を比較し得た情報を基に研究した内容をここに発表する。 【研究方法】 ① 改正前の平成 23 年 1 月~12 月における総退所者の方向先を分析 ② 上記①で得た情報を在宅復帰強化型老健算定要件に当てはめ、改正前の状況把握を行う ③ 平成 24 年の介護保険改正を受け、施設として取り組んだ後の平成 26 年 1 月~12 月における総退所者の方向先を分析 ④ 上記③で得た情報を在宅復帰強化型老健算定要件に当てはめ、取り組み後の状況把握を行う ⑤ 上記②・④で得た情報を比較し、取り組み後の方向先等の状況変化や数字の動向等を確認する 【結果】 取り組み前平成 23 年 1 月~12 月 総退所者 111 名 平均入所期間 12.9 ヶ月 内訳:在宅復帰者 18 名(内在宅系施設 4 名) 入院者 79 名 老健入所 8 名 特養入所 6 名 ターミナル 0 名 在宅復帰強化型老健算定要件に当てはめると:在宅復帰率 16.2% ベッド回転率 10.2% 重傷者割合 35.7% ↓ 平成 24 年度改正後の取り組み:入所期限設定、在宅復帰パス導入、ターミナルケア開始、入所前後訪問の実施等 ↓ 取り組み後平成 26 年 1 月~12 月 総退所者 144 名 平均入所期間 6.6 ヶ月 内訳:在宅復帰者 62 名(内在宅系施設 32 名) 入院者 54 名 老健入所 1 名 特養入所 14 名 ターミナル 13 名 在宅復帰強化型老健算定要件に当てはめると:在宅復帰率 43.05% ベッド回転率 13.4% 重傷者割合 41.9% 上記の結果を比較すると、在宅復帰者の増加や復帰率の向上、入院者の減少や平均入所期間の減少等、数字の大きな変化 が多く見られた。 【おわりに】 現在、目標としている在宅復帰強化型老健を算定する為には、6 ヶ月の平均在宅復帰率 50.1%以上、3 ヶ月のベッド回転 率 10%以上、3 ヶ月の重傷者割合 35%以上という算定要件がある。結果で報告した通り算定要件に近づく大きな向上が見 られている。しかし、その数字には届いていない現実があり、まだまだ工夫をしながら取り組んでいく必要性を強く感じた のと同時に、改正後の様々な取り組みを実施しながら進んでいるアザリアの方向性は正しいものであるとも感じられた。平 成 27 年 4 月には介護報酬の改定を控えており、施設にとって更なる厳しい状況が考えられる。その変化にも迅速に対応し ながら、現在の取り組みに更なる変化を加え、アザリアを在宅復帰強化型老健という一つ上のステージに少しでも早い段階 で押し上げられるよう、今後も施設全体の協力を得ながら進め、取り組んでいきたい。 ソフト食第一世代 ~ソフト食導入による効果~ 部署名 栄養科 発表者 川島 勇次 パワーポイント 川島 勇次 Ⅰ はじめに 平成22年度に、食事形態が主としてきざみ食以下の利用者を対象として、ソフト食導入を宣言してから早くも4年が経過した。これまで導入に至らな かった理由を並べれば様々な事はあったが、それらを述べたからと言って何かが始まるわけではなかった。しかし、昨年 11 月になって唐突に導入に 向けて進める事が出来た。これまでは、なかなか前に進める事が出来なかったが何故ここにきて導入に至ったのか?また、実際に導入した事によっ て得られた効果はどのようなものであったか?今回、それら経過についてまとめたのでここに報告をする。 Ⅱ 実施内容(導入までの流れ) 1.実地研修(平成 26 年 4 月~) デイケア、2・3F利用者の食事・身体状況を委託職員に理解してもらい、食事の在り方について考える機会を設ける 2.検食方法の見直しと実施(平成 26 年 8 月~) 8 月 15 日より、ご利用者の立場を少しでも理解するため、きざみ食を中心(1 食分)に検食を実施 3.ソフト食の献立立案・試作・試食(平成 26 年 9 月~) ☆利用者の状況をある程度把握してもらった上で、現在の栄養量を確保した上で食材・水分割合を調整し献立を立案 ☆立案した献立に従い試作・試食を実施 ☆実際に提供する事を想定し、1 日を通してのシュミレーションを行う ※作業負担をこれまでと同様に維持する 4.一部導入へ(平成 26 年 11 月~) 平成 26 年 11 月 4 日より、小鉢のみソフト食へ切り替えとなる。これに伴い、きざみ食に加えソフト食の検食を中心に実施 5.導入後の情報収集と改良 提供しているソフト食に関するご意見や、検食結果などを元に改善が必要な点について話し合い、改良が可能なものは改善を行っていく。 Ⅲ 結果 ソフト食を導入した事によって、導入前に比べて得られた効果は… ☆食べこぼしや残食の量、介助が減った(フロアースタッフからの意見) ☆体重減少された方が減った Ⅳ 考察 残食の低減や体重減少された方が減ったと思われる要因は、加える水の量を出来るだけ減らした事や食事全体量を 減らすために油脂等を適量加えた事などが考えられる。ただ、栄養改善が認められたという明らかな検査データ等は、施設長・看護主任を始めと して、各部署の意見を聞きながら進めていく。 Ⅳ おわりに 今回、導入する事が出来た大きな要因は、各フロアーへの実地研修とその現状を理解し受け止めてくれた委託職員の心の変化にあり、これがな ければ一定の効果を得る事も出来なかった。また、何事も諦めず続けて行く事の大切を身にしみて感じている。しかし、一方では対象となっている 利用者の中に、「ソフト食は美味しくないので、別形態の食事を出してほしい」と希望される方もおられる。確かに現状の見た目は食事らしさに欠け る面は否めない。このため、そのような方々への対応を今後どのようにするのかが課題の一つとなる。本来の目的は、ソフト食を提供する事では なく、利用者に満足していただく事にあるからである。そういった率直なご意見をいただける方々に選んでいただけるよう第二世代ソフト食を提供 出来るよう委託職員とともに協力し取り組んでいきたい。 アヴィラージュだから出来る事 アザリアヘルパーステーション(アヴィラージュ) 発表者:菱山 太加志 パワーポイント操作:和田 祐美 【はじめに】 住宅有料老人ホームとは…住宅型有料老人ホームは、介護保険の「特定施設入居者生活介護」の認定を受け ていないタイプの有料老人ホームで、主にサービス提供票にそってのサービス及び食事の提供や緊急時の電 話対応などの日常的な生活支援です。現在 70 歳代~90 歳代の 28 人の利用者様が入居されています。今回、 アヴィラージュと介護老人保健施設での違い、メリット・デメリットについて報告する。 【アヴィラージュと介護老人保健施設での主な違い】 ●介護老人保健施設のように医師、看護士が常駐しておらず、利用者様の体調不良の際は受診となる。また、 日々来ていただける訪問看護や訪問リハビリの先生と情報交換を行い利用者様の状況を把握しておく必要性 がある。 ●介護老人保健施設のようにおやつの提供はないが、かわりにサービスを使い自身で好きなものを購入、食 べていただく事ができるほか、主治医や家族様からの了承があれば飲酒していただく事もできる。 ●要介護2以上の利用者様なら状況に合わせて、エアマット・ベッド・車椅子などレンタルする事が可能で ある。 【在宅復帰者の声】 介護老人保健施設より短期入居で来られる利用者様より、こちらに来ていただき「良かった」というお声を いただく事があり励みになっている。理由として「おやつが好きな時に食べられて嬉しい」 「部屋にテレビが あるから好きな番組がみれる」等がある。しかし、中には「こっちは暇やわ、やることがない」との声もあ る。 介護老人保健施設と違いレクリエーション等がないので、 利用者様が暇を持て余している姿を見受ける。 デイケア、デイサービスを利用されている日はよいが、ない日をどう過ごしていただけるか今後の課題であ る。 【考察・まとめ】 アヴィラージュでは介護老人保健施設のように多岐に渡る介護はできないが、利用者様と 1 対 1 で職員がつ くので、利用者様の不安を取り除く事が出来る。また、近年では有料老人ホームは飽和状態にあり、その中 でいかにして残っていけるかと大きな課題もある。利用者様や家族様から信頼を得るために今後も質の良い サービス向上を目指して取り組んでいきたいと考える。 アルツハイマー型認知症の利用者が安心できる環境をつくる ~チームケアの重要性~ 部署名 デイケア 発表者 藤原 大樹 パワーポイント操作者 山田 達也 【はじめに】 デイケアの利用当初、入浴拒否は見られるものの何とか入浴していただけていたが、次第に入浴拒否が 強くなり入浴出来ない状態になってきました。その頃から帰宅願望も強くなり離苑事故も何度か起きてしま い職員が付き添わないと対応が難しくなってきていた。認知症研修を受けそこで学んだ事をデイケアに活か せるように取り組んだ事例を報告させて頂きます。 【研究内容】 1.11月のスタッフ会議にて、傾聴とコミュニケーションについての伝達研修を行ないました。 2.A氏関わりのある部署(デイケア・事務所・機能訓練・アヴィラージュ)へ協力依頼の手紙と、記入 用紙の配布〈2週間〉 3.配布した各部署へ記入用紙の回収 4.12月のスタッフ会議にてデイケアでの意見交換と目標の設定。チームケアの重要性を伝えました。 【結果】 ・全体を通して、協力心を持って行なってくれる職員も居れば、認知症の利用者の対応に困る職員もおりま したが、毎回利用日に気付きを記入しないといけないとの事で、M.M氏に関わるようになり、行動の意図 を考える様になった事から、普段から関わりのあった職員が気付かなかった事が見つかり、普段から見てい ると気付かない事もあると感じました。その事で関わりの少なかった職員が関わりを持つようになり、今ま で1人で対応をしていた為、 不穏になった際に対応が不可能になり、嫌なイメージがついてしまっていたが、 皆が一丸となりチームケアを行なう事で、不穏になりかけた際に別の職員が対応に入り、気持ちを切り替え る事により良いイメージが少しずつではあるがついてきています。その結果、入浴時、靴下を脱いで足浴を してもらえる様になりました。 【おわりに】 職員1人では、不穏になった際に戻す事が難しくなっていたが、チームケアをする事により不穏時に他の 職員が別の話しで意識を変える事で不穏が落ち着くようになったと考えます。また、本氏は他者からの話を 聞かれると不穏になりやすく、自分の話を聞いてもらえると、不穏が修まっている時間が長くなっている事 や時々ではあるが、横についている職員に話を聞いてと、肩をたたいて話される事があるとわかりました。 本氏を取り巻く環境や気候により対応方法を変える事で、成功する事やチームケアの大切さを学ぶ事が出来 ました。実践者研修にてチームケアの大切さや病気を見るのではなく、その人を見る事の大切さを職員に周 知出来た結果だと考えます。 今回の自施設研修で学んだ事により、チームケアを大切にし、A氏を一人の人として気持ちを考え、行動を 読み解いて行く事で、入浴をして頂く事を目標に職員が協力し話し合って行きたいと考えています。また、 A氏に関わらず別の利用者様にも同様の考えで対応して行きたいと思います。 歩行介助指導の取り組みと変化 Ⅰ 部署名 機能訓練室 発表者 中嶋 としえ はじめに これまで当施設において、移乗動作の介助指導を行なってきたものの、歩行介助指導に関してはほぼ行な う機会がなかった。昨年度、歩行介助に於ける問題点を取り上げたが、今回は実践編として実際に歩行介助 の指導を行い、意識や指導前後での技能の変化を追った。 Ⅱ 方法 各フロアから 1 名ずつ、計 3 名の代表者を選出し、指導前後でどのように歩行介助が変化するかを確認す るため、ビデオ撮影を実施した。歩行介助は手掌・腋窩介助を対象とし、歩行のタイミングを合わせる事と 重心が離れすぎていないかに注意し指導を行なった。初回の指導の1週間後に再確認及び再指導を行ない、 さらにその1週間後に技術的な変化を確認し、歩行介助に対してのアンケートを実施した。 Ⅲ 結果 指導開始当初は被介助者の歩行のタイミングに合わせる事が出来ず、また介助者の方向へと引っ張る、重 心の位置が被介助者と離れるといった現象が見られた。これらの問題点に対して指導を行ない、介助方法の 修正を行なった。1 週間後、歩行のタイミングは揃っているものの、重心の位置がまだ離れている事や、少 し被介助者を引き寄せてしまっている、等の問題点が見られた。そのためこれらに対し重点的に指導を行な い、さらにその 1 週間後に再確認を実施した。その際にこれらの問題点に対して改善が見られた。 アンケートからはこれまで歩行介助の指導を受けた事がなく、今回の指導で歩行介助を行なう際の不安感 が軽減した、安定して歩行介助を行なう事が出来たとの回答が共通して得られた。また個別の意見として歩 行介助を積極的に行なえた等の回答もあり、歩行介助に対する興味が見受けられた。 Ⅳ 考察 1 回目のみの指導においても歩行介助の要点を伝える事で、多少の問題点の改善がみられた。さらに歩行 介助の使用頻度に比例して技術の向上が促進されたものと考える。 また、日常的に歩行介助を行なう事が無くても、フォローアップを行なう事で技術の定着を図る事が出来 ると考える。 Ⅴ おわりに 当施設において歩行介助を学ぶ機会はほぼ見られないため、興味を持って介助指導を受け入れてもらう事 が出来たように思われる。これが少しでも歩行介助の際の転倒リスクの軽減を図る事になれば幸いである。 最後に協力して頂いた 3 名の方々に感謝を申し上げます。
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