小特集’ 材料プロセス用フルオロカーボンブラズマに関する基礎研究の進展 (Received25May1999) 1。はじめに ように電気的負性の強い粒子種の場合には,負イオンや負 プラズマが材料プロセスのツールとして用いられるよ に帯電した微粒子も存在するため,プラズマの特性自体も うになってから四半世紀近くが経過し,半導体産業をは 大きな影響を受けるが,その診断や解析も必要である. じめ色々な工業分野で薄膜材料の創製,微細加工,表面 プロセスにおけるこれらのラジカルやイオンと材料表 改質のための基盤技術として成長してきている.中でも 面の反応はそれぞれの組み合わせによって異なり,条件 現在の超LSI製造におけるプラズマエッチング技術は, によってはエッチングに寄与したり膜堆積に寄与するこ 超微細パターンの形成に必要不可欠な技術となってい とがある.また,それらの反応はプラズマからのイオン る.特に,シリコン酸化膜(SiO2)のエッチング工程では による衝撃や高エネルギーフォトンの照射などの状況に フルオロカーボンガスが原料に用いられ,サブミクロン よって複合的な効果を示す.実際のプロセス,例えば, サイズの超微細加工が行われているが,プロセスに求め 上述のコンタクトホールの加工においては,FやCF。 られる要件もますます高度になってきている.例えば, などの表面における反応で,底面ではイオン衝撃による 開口径が0.1μmオーダになろうとしているコンタクト アシスト効果でエッチングを促進させ,側面では膜堆積 ホールのようなアスペクト比(深さ/開口径)の大きい によって保護層を形成するというように,二つの相反す 形状のエッチングでは,加工が深さ方向にのみに進行し て横方向には削れないような高い異方性が要求される Reactive Plsama [1,2].また,Fig.1に示すような自己整合コンタクト electrons,radica且s,pos藍t叢ve a凱d negative ions ホール(SelfAlignedContact−hole:SAC)の加工では,複 数の材料が積層した構造になっており,被加工材料であ 瓢 十 ↓㎞gy制d㎞t㎞ 一ノ すEne「gyandd・rectmn 十 るSiO2に対してマスク材料としてのフォトレジスト, ゲート保護用のSi3N4や下地のSiがエッチングを受け ないような高い選択比を得ることが必要である[1,2]. e 十 Photoresist 一般に,フルオロカーボンガスのプラズマ中では,原 料分子の電子衝突による解離や電離過程によって多くの S童02 ラジカルやイオンが生成され,それらの気相や表面での 反応によってさらに多種類のものが生成される.最も簡 CFx曾 Si3N4 単な原料ガスであるCF4の場合でも,F,CF。などの中 Dif貧erent reactionbottom and side w Gate 性ラジカルとそれらのイオンのほかに,Cを2個以上含 んだC.Fyラジカルやそのイオン,さらに会合反応によ s嚢 って高分子量となったポリマー様の微粒子も存在する. 十十+ 撫離薮gy互OR わ伽翻繍磁煎d徽購 それらの診断については,Table1に示すような色々な 方法が開発されてきているが,まだ汎用性や定量性にお Figj Reaction scheme of SAC (Self−Aligned Contact− hole)etching process, いて十分とはいえない状況である.また,フッ素化合物の T、4C凹B4温4κ観づh耐6,0名躍襯’6SohoolげEπg初687加8κyoオo Uπズ∂εz8勿,絢o渉0606−850ヱ,∫砂伽 777 側オho湾6一〃2副”召励θ麗@々ツo!o一%.召o.カ) プラズマ・核融合学会誌 第75巻第7号 1999年7月 Table1 効果などの解析が必要であり,特に微細構造内における Measurement techniques for radicals in fluorocar− bon plasmas. 解析では方法そのものの開発も必要である. 別の問題として,1997年に開催された地球温暖化防止 Radical LIF VUV−LAS UV−Abs R−LAS 皿MS EAMS 京都会議(COP3)で,地球温暖化係数(G互obal Warming 0 C O O CF CF2 CF3 O O O O F △ O O (VUV) △ Potentia玉:GWP)が大きく,大気寿命の長い飽和フッ化 o O O 化合物(pe頑uorocompound:PFC》系のガスが削減対象 物質に指定され,排出量が規制されようとしている. P:FCの代替ガスとして,Table2に示すようなC3F6や △ C5F8などの不飽和フッ化化合物,ハイドロフルオロエー O C”;Fπ テル(HFE),ヨードフルオロ化合物(IFC)などが検討さ LE: Laser hlduced Fluorescence VUV−LAS:VUV LaserAbsolption Sp㏄troscopy れ,エッチングにおける特性の予備的な評価がなされて UV−Absl UV Absorption specroscopy with incoherent source 取一LAS: RLaserAbsolption Spectroscopy いる[4].しかし,上述のようにエッチングに関与する TIMS: Threshold Ionization(App㎝・孤ce)Mass Spectrometly 気相・表面反応は極めて複雑であるため,新しい原料ガ EAMS: Elec亡onAttachmentMass Spectrome轡 スに対してプロセスの最適条件を見いだすためには,そ Table2 れらのガスに対するプラズマ反応系全体を理解し,制御 Fluorocarbon gases used for plasma pocessing and tれeir effects on gbbal environment. していくことが必要になる. このような状況において将来的な見通しを立てていく classi且cation mol㏄ule GWP 1ifむt㎞e CF4 6,500 50,000 caぼbon(PFC) C2F6 9,200 10,000 C3F8 7,000 2,600 8,700 3,200 c−C4F8 hydronuoro− CHF3 caτbon(HFC) C2HF5 2,800 CH2FCF3 1,300 14.6 <玉00 く1 unsa餅ated− CF3CF=CF2 Huorocarbo且 c。C5F8 hydro且uoτo− CF3CHFOCF3 ether(田E) CF3CHFOCHF2 iαionuOIO− CF3王 caぼbon(IFC) CF3CF21 11,700 90 900 600 く1 <1 ためには,まず,現状における課題をより詳細に解析し, ㎝ perfluoro− 理解していくことが必要である.そのために,フルオロ カーボンプラズマに関する国際ワークショップも開催さ れるようになっており,(1)気相や表面におけるラジカ ルやイオンの反応過程の解析,(2)反応活性種の診断技 264 術,(3)負性粒子を含むプラズマの特性解析やシミュレー 32.6 ション技法,(4)PFCや代替PFC原料ガスに対するデー タベースの構築,などのテーマがトピックスになってい る[5].本小特集では1998年にグルノーブル郊外で開か 0.98 >20 れた第2回のワークショップに参加した日本やヨーロッ 5,8 パの代表的な研究者によって,今回新たに寄稿してもら 0.005 った現状分析や最近の研究紹介の解説記事をとりまとめ 0.005 た.本企画がフルオロカーボンプラズマの研究者に対し GWP:Global Waming Potentia1 て今後の展望を得る一助となり,また,それ以外の研究 る反応の問で微妙なバランスをとることによって高度な 者にとっても新たな興味の対象となれば幸いである. 異方性を実現させている[1,2].しかし実際には,微細 (京都大学大学院工学研究科 橘 邦英) 構造内に輸送されるラジカルやイオンの組成が深さに依 存して変化することなどによって,加工速度がアスペク 参考文献 ト比に依存すること(マイクロローディング効果)ある [1]徳山 魏編:半導体ドライエッチング技術(産業図 いはエッチングの停止(エッチストップ)が起こったり, 書,1992). 穴の表面でのチャージングの不均一性によってイオン軌 [2]原 央編:ULSIプロセス技術(培風館,1997). [3]斧 高一:応用物理68,513(1999). 道が影響を受けて加工形状の異常が発生したりすること [4]超先端電子技術開発機構:地球環境産業技術に係わ が起きる[3].また,基板のみならず器壁の表面の状態 に依存したラジカルの生成・消滅過程によって,エッチ る先導研究:半導体製造等に使用するPFC等の地 球温暖化ガスの代替ガスシステムの研究,NEDO研 ング速度などが時間的に変化したり,再現性が低下した 究報告,1999。 りする現象も現実のプロセスで大きな問題となってい [5]J』P。Booth6鼠,∠Lわs.27z4ノ魏召7フzσ蕗07zごzJレ骸o殖3hoゆoπ る.したがって,表面反応のメカニズムやその複合的な EZz6070αzプ607z PZαs〃z召3,Col(1e Porte,France,1998. 778
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