プロジェクト報告書 Project Final Report 提出日 (Date) 2012/01/18 言語グリットを用いた多言語函館観光案内サービス Hakodate multilingual tourist information service for the language grid 1009072 杉上卓史 Takashi Sugiue 1 背景と現状把握 函館は函館山から見る有名な夜景や五稜郭公園を初め いる函館市公式観光サイト はこぶら[3]や函館に存在する 観光サービス業を行う HP から、WEB からのコンテンツ とした豊富な観光資源に恵まれている。その知名度から、 提供でよいのか、またその際に生じる問題点とは何か? 函館に来る観光客は日本人だけでなく、外国人も多い。 という視点と、昨年度発生した東日本大震災以降の外国 その中でも特に近年は韓国や中国などの海外からの観光 人観光客の動向や訪日数にどのような変化があったのか 客が増加している。しかし、観光サイトにおける外国語 全く情報の無いところからスタートしたため、状況把握 での言語対応の遅れが目立つ。 を含めた調査票の作成を設定した。 函館市内にある某ホテルのホームページの言語選択を また、地域連携として本学と産業が互いに情報を提供 外国語に選択すると情報量の差が明らかに減ってしまい、 し合い、相互互恵を得るためのプランニングはどのよう 伝えたい情報がうまく伝わらなくなってしまうのが現状 なものになるだろうかというビジネスサイクルモデルに である。 ついても考えることも課題とした。 2 課題の設定と到達目標 3 課題解決のプロセスとその結果 システム班は先行研究 [1]により、公共交通機関の使用 まずは、コンテンツの提供方法の決定から活動を開始 方法についての情報の入手性が著しく悪いことを探し出 した。チラシやパンフレットなどの紙面媒体や、携帯電 した。2003年より観光庁が行っている、ビジットジャ 話やスマートフォンなどの携帯端末など様々考慮したが、 パンキャンペーンだが、その観光庁が作成した公共交通 外国人観光客は WEB での情報入手の割合が高いことがわ 機関でも役に立つパンフレットが存在し、指さしによる かり WEB コンテンツとして情報提供を行うことを決定し ボディランゲージでの料金支払いや行先確認方法など事 た。またこのことは調査班のヒアリング調査(図3 4)か 細かに載っている。そして何よりこのパンフレットは東 らも裏付けされている。WEB コンテンツで提供する際に、 アジア圏のほとんど(ロシア、中国2言語、韓国、マレー 今から完成系を作成しても利用してもらえる、ニーズを シア)と英語版が出ており、函館の外国人観光客[2]に対し つかんだシステム開発は難しいと判断し、ポータルサイ て十分な言語カバー率である。 トを作る際に必要となる技術習得の前段階とできる、シ これさえあれば私たちが設定した課題はすでに達成さ ステムモジュール開発をスタートさせた。 れているのではと感じたが、よくよく調べてみるとこの 開発したモジュールは3つで、世界時計システム,夜景 パンフレットは電子データでは提供されておらず、入手 時刻検索システム,バス・市電時刻検索システムである。 できるのは現地函館の観光案内センターを始めとする案 各開発モジュールは、サイトを動的に開発する際欠か 内所のみであることだった。 システム班はこのポイントに着目し、WEB コンテン ツでの公共交通機関サービスの利用法の説明を含めたポ せない PHP や JavaScript の技術を使用しユーザーに意 識させず、ブラウザーを介して得られる情報によって出 力を決めるという基本を学ぶことともなった。 ータルサイトを提供すれば、世界中の観光客への情報発 信ができ、よいのではないかと課題を定めた。 調査班は、これまで観光情報の提供を WEB で行って 1 プロジェクト報告書 Project Final Report 提出日 (Date) 2012/01/18 図3 4のグラフから外国人観光客はインターネットの 使用が多く web での情報提供が有効であるということが 分かる。 図3 1 世界時計システム 図3 2 夜景時刻検索システム 図3 5 ホテルにインターネット環境があるか 図3 5からも函館に来てからも情報収集ツールとして インターネットを利用していると思われる。 しかしながら、別な結果もわかった。当初私たちのプ ロジェクトでは、個人観光客向けの「街の歩き方」情報 に重きを置いたサイトを作ろうとしていた。だが、今の 外国人観光客の割合はいまだにツアー客が多く、リピー ターも多いながらそれもツアー客である傾向がわかった のである。この点から個人外国人観光客に重きを置くと パイが少なく効果の見積もりは少ないため、既存のツア ー客が望んでいる情報をもとにサイトを作り、そのサイ トを見ればツアー客も個人客も取り込めるサイトに成長 させる戦略にすることで効果が高いのではないかという 提案をした。 図3 3 バス・市電時刻検索システム 調査班では、台湾や韓国、中国からの函館空港への直 行チャーター便の日程を空港への聞き取り調査によって 獲得し、一次調査を行った。また電話での調査依頼を函 館各所の観光業者へ敢行し、ヒアリングによって外国人 観光客のニーズ調査に必要な予備段階データを得ること に成功した。下図に示す。 図3 6 函館で使用した交通機関 どちらの観光客も取り込むという観点から、両班の議 論の結果、ある一定量の情報提供と個人客による訪問先 図3 4 外国人観光客の情報入手手段 記事を投稿、閲覧可能なサイトシステム「口コミサイ 2 プロジェクト報告書 Project Final Report 提出日 (Date) 2012/01/18 ト」がよいのではないかという結論に至った。 そこで後期からは、システム班は「口コミサイト」の 構築を、調査班では「口コミサイト」でどのような情報 を要求されているのかそのニーズに関して調査を開始し て、お互いに報告を取り合いながら開発を進めていった。 図3 9 TOP ページ(言語選択ページ) 来日前 来日後 図3 8 訪日前後で調べた情報の内容について この調査によって、 「食事」 「宿泊先」 「観光地」の情 報を調べている人が大半であり、この部分の情報を網羅 することで「ツアー客」の取り込みができ、 「個人客」 へつながるだろうと結論付けた。 そこで完成したのが「HAKO-NET」である。 図3 10 ポータルトップ 図3 9にあるサイトトップは極力文字情報を抑え、こ のサイトが函館観光の情報サイトであることと言語選択 のみを置いている。これは誰が見ても伝わる情報だけ置 くことによって利用率を上げようという狙いがある。 そこで言語選択を行うと図3 10へ遷移する。右上に言 語選択を失敗してしまってもよいように変更可能な選択 部分を設けてはいるが、基本的に一度言語を選んだ後に 3 プロジェクト報告書 Project Final Report 提出日 (Date) 2012/01/18 何か別な操作はいらない。すべてその国の言葉で表示さ 口コミサイトのメインである図3 11にある口コミ情報 れるようになっている。また日本ユーザーが情報発信を は見るだけでなくもちろんどの言語でも投稿可能である。 行っていることのささやかな情報として、3つのカテゴ また口コミ内容は同時翻訳され、他の言語でも見られる ライズされたタブの丸枠内はどの言語も漢字で「食」 ようになっている。 「観」 「泊」をデザインしてある。 4 今後の課題 今年度の調査からインターネットを利用する傾向が強 いため、コンテンツとしては WEB コンテンツの口コミサ イトを開発した。ただ、制限をかけたくないとの開発意 向から誰でも投稿可能なため、「わいせつ画像」を「誰 が投稿したのか」を追跡できるようにするなどの法令順 守の対応を進めていく必要がある。さらに、何ら関係の ない情報投稿である「荒らし」や、情報の信ぴょう性を 図3 11 店舗詳細情報 さらに調査結果から得られた外国人目線で必須といわ 損なってしまう昨今話題である 口コミサイトやらせ問 題[4]への対策が急務となるであろう。 れる「クレジットカード」の対応状況や、個人客には必 5 参考文献 要となる「駐車場」設備の有無などを含めた店舗詳細情 [1] 観光庁,”訪日外国人の消費動向 報も提供している。 http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.ht ml [2] 北海道 渡島総合振興局 -観光統計(渡島地域) http://www.oshima.pref.hokkaido.lg.jp/ss/srk/kanko/statistics.h tm [3] 函館市公式観光情報サイト はこぶら http://www.hakobura.jp/ [4] 【「食べログ」で順位操作】「裏技」「確実」と提案 10万円 でやらせ月5件 図3 12 口コミされた情報 http://www.47news.jp/47topics/e/224258.php 図3 13 口コミ書き込みページ 4
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