プロジェクト報告書(最終)Project final Report 提出日(Date) 2012/1/18 拡張現実感を用いた新規技術の提案と開発 The Proposal and Development of the Novel Technology with Augmented Reality b1009124 今村優太 Yuta Imamura 1. 概要 本プロジェクトは, 拡張現実感(Augmented Realty: AR と略して使われることが多い)と呼ばれる技術を基礎技 術とし, 2 つのアプローチから新規技術を提案し, その基盤 技術を開発するものである. 拡張現実感とは, スマートフ ォンに付属しているカメラや Web カメラなどで取り込ん だ映像に対して, リアルタイムでコンピュータ上の画像デ 図 1 プロジェクト組織体系 ータやテキストデータを重ね合わせたものを, ユーザーに 提供する技術のことである. 拡張現実感という技術は, 基本的に, マーカーと呼ばれ る特徴的な画像などを Web カメラなどで認識し, CG など をその映像に重ね合わせるものだが, その技術は, 実際の 社会で観光などに利用し普及させるには, 今だ確立した技 術とは言えない. そこで, 本プロジェクトでは, 新しいア プローチとして, 「新型マーカー開発」と「直感操作型 AR 開発」の 2 つグループに分かれ, 新規技術を提案し, その基 盤技術の開発と使用例の提案を行う. 2. プロジェクトの組織体系とマネージメント 本プロジェクトは, 図 1 に示すように, プロジェクトリ ーダーを中心として, 「新型マーカー開発」, 「直感操作型 AR 開発」の 2 つのグループに分かれ, それぞれのグループ にグループリーダーを配置するという組織体系でプロジェ クトを組織した. この組織体系の目的は, マネージメントと開発などの活 動を完全に分担し, 個々人の活動内容を明確にするためで ある. また, 「新型マーカー開発」と「直感操作型 AR 開発」 の両グループの活動内容が, 「拡張現実感」という共通し た技術を用いること以外, 異なる手法を用いて開発を行う ため, 客観的にマネージメント及びプロジェクト全体とし て統率を図るためでもある. このような組織体系をとった経緯としては, プロジェク トリーダーがどちらかの一方のグループに所属してしまっ た場合にいくつか懸念される点があったためである. 中間 発表会や成果発表会などのプロジェクト全体としてマネー ジメントが必要な活動と, 開発や実験などの各グループと してのマネージメントまたは開発を一人が両立して行う組 織体系をとった場合, グループとしてのマネージメントや 開発で予期せぬ問題などにより遅延が起き, 自分が所属す るグループの対応に追われ, プロジェクト全体としてのマ ネージメントに影響を与え, もう一方のグループの進捗に も悪影響を与えてしまう可能性があるという懸念. さらに, プロジェクト全体としての活動と各グループの活動の両方 が忙しくなる前期末や後期末にメンバー一人に重要な仕事 が集中してしまうという懸念. 以上のような懸念を事前に 回避するためにこのような組織体系をとった. 3. 年間活動スケジュールと内容 2 つのグループ共に, 年間の簡単な活動スケジュール としては, ● 4 月:前期目標設定とスケジュール設定 4.2 活動 ● 5 月:基礎技術勉強会 本グループの前期活動は, 前項の年間スケジュールに ● 6 月:基盤技術の開発 もあるよう, PC 上での動作を前提とした基盤技術の開発 ● 7 月:中間発表会 を行なった. ● 9 月~10月:後期目標設定とスケジュール設定 ● 11 月:後期成果物の開発と函館アカデミックリンク への参加 新型マーカーの提案としては, 赤外線の発光を白と黒 を基調としたマーカーの代わりとなるようなデバイスの 作成とそれを読み込むためのソフトウェアの開発を行な ● 12 月:成果発表会 った. 作成したデバイスは, 以下の図 2 のような物をプ という年間スケジュールで活動を行なった. ロトタイプとした. まず, 前期後期共に, 明確な目標の設定行い, その際 に具体的な作成物のイメージも決定し, その成果物の完 成期日を定め, 開発スケジュールなどを逆算して, 細か くスケジュールを設定した. 基礎技術勉強会は, メンバー間で一定の共通知識の共 有が目的であり, 報告会や開発の際に, 専門用語を全員 図 2 前期で作成した赤外線デバイス が理解できるようにするためである. 開発に関しては, 前期は提案する新規技術の基盤とな 後期では, 図 2 のデバイスをより小型化することと, る技術の開発を行い, 後期はその基盤技術を使用し, 実 本グループの目的にもあるように, 景観になじむことの 際にどのように使用することが可能なのかということを できるように外装を改善した. また, ソフトウェア開発 示すため, 簡単なアプリケーションを開発した. では, 後期活動開始当初では, Andloid アプリとして, ス 函館アカデミックリンクは, 函館市内の大学の研究発 マートフォンのカメラを用いた物を作成する予定だった 表会である. 前期終了時点で, 基盤技術が完成しており, が, 前期のプログラムを Andloid に移行することが, 困 成果発表会に向けて, 外部での発表会を通して情報工学 難であったため, PC 上で動作するアプリケーション開発 を知らない第三者に対して, どのように発表するのがよ に開発目標を移行した. り良いのかという目的のもと参加した. デバイスは, 図 3 の左下の正方形の木の箱のような外 4. 新型マーカー開発 装にすることで, 日本家屋などの景観に合うものに改良 4.1 目的 した. 「新型マーカー開発」は, Web カメラで取得した映像 とコンピュータ上の映像を合成するためには, 指標とな るマーカーと呼ばれるものが必要となるのだが, そのマ ーカーは, カメラが認識しやすいよう, 白や黒を基調と したものであるため, 設置場所によっては景観になじま ない場合がある. また, 白黒の記号を読み取る必要があ るため, 夜間や暗所での使用にも適さない. それらの状 況でも使用可能なマーカーの作成が目的である. 図 3 後期で作成した赤外線デバイス 4.3 まとめ 新型マーカー開発は, プロジェクト全体の目的である, 新規技術の提案とその開発という点では, 概ね成功した. スの実現と, またその認識を行うシステムの実装を行った. 成果として, Kinect とヘルメットを組み合わせたデバイス である AR beetle(図 4)と, またそれを用いて手の位置と 仮想オブジェクトの接触判定を行うシステムを製作した. しかしながら, ソフトウェア開発において, 観光などに応 用するために, Andloid アプリケーション開発という点で は, 先の見通しの甘さ, 事前研究不足により, 断念してし まった部分が残念な点である. また, グループマネージメントの面などは, 特に後期の 活動で, 大幅な開発スケジュールや仕様変更があったもの の, 成果発表会などの期日までに, デバイス, ソフトウェ アそして成果発表会のデモムービーの制作に至るまで, 柔 図4 AR beetle イメージ図 軟に対応出来ていた. 5. 直感操作型 AR 開発 5.1 目的 現在, AR を用いたサービスは, iPhone のようなスマート フォンや, ニンテンドー3DS などのように, タッチパネル を用いたものが多い. しかし, それらを用いてサービスを 利用する場合, 端末を片手で持ち, もう片方の手で操作す 後期では, 前期で実現させた仮想物体に触る技術を基に, その応用として, 仮想オブジェクトを掴む, また投げると いう技術の確立と, またそれを用いたアプリケーションの 制作を目的とした. まず, 方向性として, 触る技術の応用 例を考え, そこからオブジェクトを掴む, 投げるという手 のアクションを実現させ(図 5), また, それを用いたアプ リケーションの提案を行った. また, 前期の成果物から, る, といった使い方になり, 操作を行えるのが片手だけに デバイスやシステムの認識精度の向上という課題が発生し なってしまう. また, タッチパネルで操作する端末の場合, たため, デバイスやプログラムの改良からその課題の解決 操作対象が端末の中に限られてしまう. そのため, これら 方法を考察した. そして成果として, 仮想オブジェクトを の端末で AR サービスを実現する場合, 操作に現実味が無 掴み, 実空間上にあるゴミ箱に対し, 投げ入れるというア いと本プロジェクトでは判断した. そこで, これらの課題 プリケーションを製作した. を解決するために, 本プロジェクトでは, 現実空間に表示 された 3D オブジェクトのような仮想物体などの情報に, タッチパネルなどのデバイスを介す事なく両手で自由に操 作できるような技術を提案し, この提案を実現する事を目 的とした. 5.2 活動 まず前期では, 実空間上の仮想オブジェクトに手で触れ て操作できるようにし, 拡張現実感をより直感的に体験で きるような技術の確立を目的とした. そしてこれの実現の 図 5 投げるアクションの実現 5.3 まとめ ために, 前期では人間の手と仮想オブジェクトの接触を実 直感操作型 AR 開発班で開発された仮想空間上の 3D オ 現し表現するアプリケーションとそれを可能にするシステ ブジェクトを素手で操作するシステムは, プロジェクトの ムの制作を目標に掲げ, 活動を行った. 前期の活動として テーマとしている新規技術の開発という面で概ね成功した. は, まず手とオブジェクトの位置を認識するためのデバイ しかし, コンピュータを 2 台用いることや, 専用のデバイ スが必要である, といったように動作環境が非常に限定的 は開発などに深く関わる必要があまりないため, プロジェ であることが課題としてあげられる. クトマネージメントに集中することが出来た. グループマネージメントでは, 前期に大きな仕様の変更 新型マーカー開発のグループ活動に関しては, 後期に大 があったものの, 普段からの状況報告などをしっかりして いたため, 迅速なスケジュールの再調整が行えたことと, 開発メンバーが指示をする前に, 解決策の提示とともに報 告をしてくれたこともあり, 大きなスケジュール変更をす ることなく, 活動を続けられた. 6. プロジェクト全体としての活動 きな目標変更があったものの, 結果として, 最終的な期日 にはデバイス, ソフトウェアとデモムービー共に完成した ので, 活動としては成功と言える. 直感操作型 AR 開発も同様, 前期に大きな仕様変更があ るトラブルはあったものの, メンバーやリーダーの迅速か プロジェクト全体の活動として, 中間発表会や成果発表 つ柔軟な対応によって, 大きなスケジュール変更や基盤技 会の準備は, 開発を発表会直前まで調整などを行うため, 術などが完成しないなどの最悪な事態になることはなく, 手のあいたメンバーから徐々に移行していく別途スケジュ しっかりと見せることのできる技術が完成したので, 成功 ールを組み, 主に両グループに所属していない, プロジェ と言える. クトリーダーを中心とし, イラストレータなどを使えるデ マネージメントに関しては, マネージメントを行うこと ザインコースのメンバーで準備を行なった. また, 担当教 自体初めてである部分が多く, 手探りでマネージメントを 員に確認を行う余裕を持つために, 発表会 3 週間前から準 行なっていた. 備を行い, 1週間前には開発を完了させ, プレゼンテーシ 前期では, 「サイボウズ Live」や「SVN」,「Skype」等 ョンの練習に当てることで, より完成された発表会となっ のツールを利用して, マネージメントを行なった. コミュ た. ニケーションツールや進捗管理などに適したツールではあ 中間及び成果発表会の発表結果としては, 中間と成果 ったものの, 「サイボウズ Live」や「SVN」は初めて使用 発表会共に, アンケートによる「発表技術」、「発表内容」 するツールということや, ルールを細かく定め過ぎたこと の平均点が, 10 点を満点として 8 点を超えていたことから, によって, メンバーから便利だが使いづらいという意見も 本プロジェクトの活動を視聴者の方々に, よく理解してい あったが, ただけたと言ってよい. を達成出来ていたことや, メンバー全体の作業の状況をし 函館アカデミックリンクへの参加では, 情報工学の知 識がない方々も見に来ているため, 専門用語などをどのよ 結果としては, 必要最低限, 期日までに目標 っかりと把握出来ていたので, ルールなどを改善すれば, より良い進捗管理が可能だった. うに説明などを工夫した. 参加した結果として, 拡張現実 後期では, ルールの改善を行うのではなく, ツールは普 感を口頭で説明するには, 限界があり, その経験を活かし, 段から使用している使いやすいものを使用し, 報告会や話 成果発表会では, デモンストレーションを混じえたほうが し合いなどの直接的なコミュニケーションを増やした. こ 分かりやすいという改善点を見つけられた. れによって, 前期以上に問題発生時における柔軟な対応が 7. 全体のまとめ 可能となり, 前期よりも活動時間が短い中で, 目標を達成 本プロジェクトのまとめとして, プロジェクト全体とし て, 2 つのグループが共通の基礎技術を用いて, 別の提案を するという組織体系において, プロジェクトリーダーをど ちらのグループにも所属させず, 独立させたことで, プロ ジェクト全体として, 客観的な判断が可能となり, さらに することにつながり, プロジェクト全体の成功につながっ た.
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