プロジェクト報告書(最終) Project Final Report 提出日(Date) 2012/01/18 進化ゲームの数理とシミュレーション A mathematical principle of evolutionary game and its simulation 1009148 金村 康佑 1. 背景 現在、様々な分野で進化を遂げているものがある。その中 Kosuke Kanamura A(理論グループ)と、グループ B(システムグループ)に分け た。それぞれの主な作業は、次に記す。 の一つとして、言語を例に取ってみると、植民地だった地域 が独立したとき、新たな言語が生まれることがある。この言 (グループ A) 語はどのようにして生まれたのか、など考えることができ このグループは、主に数学的知識を身につけて、グループ る。また、とある国で 2 つの言語が話されているとすると、 B をサポートするグループである。このグループで目標と どちらの言語を子供へ教えるのが、その国で有利に暮らす したのは、グループ B が円滑にシステムを作成するために、 ことが出来るのか、ということも考えることができる。今回 テキストに記載されていた数式を簡易化する。また、テキス のプロジェクト学習では、主に後者について考えていく。” トを熟読し、システムを作成する上で必要となる知識をグ 言語”というのは、私たちを含め、世界中どこに行っても存 ループ B に教えたりと、色々サポートを行う。 在するものであり、生活するため(主にコミュニケーション (グループ B) を取る為)に、無くてはならない存在である。そのため、上手 このグループは、本プロジェクトの最終的な目標である くコミュニケーションを取るために、言語を選択すること 目で確認できるツールを作成するグループである。このグ は、非常に重要なこととなると考えられる。 ループでは、わかりやすいツールを作成するため、試行錯誤 この分野は、これまで触れたことがなかった分野である を繰り返し、最終的には良い物を作ることを目標とした。ま ため、これまで大学の講義等で学んできたことを復習する た、システムを作成した際に、その結果が正しい物であるか 必要があった。さらにこのプロジェクトは、今年度が初めて 確認するためのグラフも作成する。ノート PC でシステムが ということもあり、参考にできるものが殆ど無く、色々な工 動作してることを確認した後に、iPad 上でも動作させるこ 夫が求められた。そのため、主にテキストや Web 上の情報を とが可能なシステムを作成する。これは、PC の扱いに慣れ 利用し、互いに理解を深めていった。 ていないと思われる下級生(主に中学生、高校生を対象にし た)方々に、より簡単に使ってもらうためである。 2. 課題の設定と到達目標 まず、大きな課題としたのが、”言語の進化”についての 3. 課題解決のプロセスとその結果 結果を、わかりやすく表示するためのツールの作成である。 背景でも記した様に、このプロジェクトは今年が初めて この結果の表示については、もちろん普通の PC では簡単に のものであったため、昨年度の先輩の意見、また先生方の意 表示することができる。だが、PC の操作に慣れていない人 見を聞くことができなかった。そのため、メンバー全員で 1 (主に中学、高校等の下級生)も多く居る。そのため、現在注目 から学んでいかなければならなかった。 を集めている iPad で表示させることで、より興味を持って それぞれのグループにおける課題解決のプロセスとその もらうことが出来ると考えた。もちろん iPad の操作に慣れ 結果を以下に記す。 ていない人々も大勢いると考えられる。だが、iPad の特徴で あるタッチパネルを生かして、PC よりも楽に操作してもら ・前期 えると私たちは考えた。PC よりも構造がシンプルで、かつ 前期では、グループ A グループ B ともに、基礎知識を身に 手で触れるだけで色々動作させることができるためである。 つけるために、それぞれテキストを基に自習を行った。 上記の内容のシステムを円滑に作成するため、グループ a. ẋ= x a−by , ẏ= y −cdx b. ẋ= x a−bx−cy , ẏ= y d −ex− fy x は被食者の密度、 y は捕食者の密度、a は被食 者の増加率、 b は被食社がエサになって減少する割合、 c は捕食者の増加率、 d は捕食者がエサを見つけて増加する 割合、 e は被食者間の種内競争係数、 f は捕食者間の種内 ※ここで 競争係数を示している。 図 3.1 参考にしたテキスト この 2 つの方程式を基に、描いたグラフが次の図 3.3、図 3.4 このテキストに記載されていた内容は、これまでの講義で のようになる。 学習したものの延長線上にあるもので、つまり、これまでに 学習した基礎となる部分をしっかりと復習する必要があっ た。これらのことを踏まえ、各自自習して学んだことをセミ ナー形式でメンバ全員と先生の前で発表し、これにより、わ からないかったこと、間違えていたところを先生に注意し てもらうことで、更に理解を深めていくことができた。 テキストを読み進めていくと、特に 2 つの方程式がよく 図 3,3 ロトカ・ヴォルテラの捕食者・被食者方程式の図 使われていた。その二つがロトカ・ヴォルテラ方程式とレ プリケータ方程式である。この 2 つは、進化ゲームを学ぶ上 で、必須とも言えるものであったため、重点的に学んだ。 6 月からは、グループ A と B に別れ、別々な活動を行った。 グループ A では、次に記す図 3.2 のテキストから数式モデ ルを選択し、それを簡易化した。 図 3.4 双安定 また、後期の研究テーマとして、”言語の進化”を図 3.2 のテキストより選択し、後期はそれについて学んでいくこ とにした。”言語の進化”とは、背景でも述べた様に、A と いう国で、二つの言語が話されているとすると、どちらの言 語を子供に教えるのがその国で生きていくために有利とな るのか、を考えたものである。実際には 2 つの言語しか話さ 図 3.2 参考にしたテキスト れていないというのはあり得ないが、現実的な方法で調べ るために 2 つの言語という様にした。 それをグループ B に渡し、わかりやすく説明した。グループ 夏休み期間はプロジェクト学習自体が無いため、各自予 B では、グループ A が解いた数式を参考に、そのグラフを作 習・復習を怠らずにする必要があった。後期の最終発表ま 成した。この過程は、後期にテーマを選び、数式を解き、グラ での期間は 3 ヶ月もないため、前期の様にただ学習するだ フを描き、ツールを作るという過程の練習段階にもなるた け、という活動では間に合わないからである。 め、積極的に行った。次に記す 2 つの数式を基に、グラフを 描いた。 ・後期 (グループ A) このグループでは、グループ B が円滑にシステムの作成 を行えるように、テキストを参考に数式モデルの簡易化を 行った。参考にした数式は次のものである。 ẋ=2a −2 x 3−3a −3 x 2 a2q−3 x− q−1 ※ここで q とは、子供に言語を上手く伝えられるかの確率 である。 この数式を解いていくと、 つの言語は x=1 /2 となり、最終的には 2 1/ 2 に収束していくと考えられる。 図 3.4 実際に作成したシステム (グループ B) 1/ 2 であると確 認することは難しいが、プログラムの結果から、 1/2 であ ることがわかった。この 1/2 という数字は、上記に記した このグループでは、グループ A が簡易化した数式を基に、 グループ A が求めたものと同じもので、つまりグループ A グラフとシステムの作成を行う。当然簡易化された数式と で求めた数式の結果と、グループ B で出したものが同じも いっても、多少の知識は必ず必要となってくるので、復習・ のであるため、今回行った活動は成功だったのではないか 予習を怠らずに作業を進めていった。システムの開発環境 と思える。 は、Processing を使用した。また、グラフを表示するツールと また、目標の一つである iPad 上でシステムを動かすこと して、Gnuplot を使用した。 も出来た。だが、それはまだ不完全なもので、今後改良して まず、システムを動かす上での考え方をまとめた。”言語 いかなければならないものであった。 この結果を求めるまでに何度も計算を行ったが、テキスト 通りの結果にならず、苦戦した。 図 3.4 から、赤色の点と青色の点がほぼ の進化”において、まわりより長けている言語(主に母国語) を子供に正しく伝えることができたら、当然子供はその言 4. まとめ 語を学ぶ。この確率を調べるには、数値解析を利用すること 1 年間を通して、様々なことを学ぶことが出来たと思う。も で正しい結果を導くことができるが、今回の場合、国の中で ちろん、初めての大規模なグループワークであったため、最 全ての住人についての統計を出さなければならないため、 初は色々な困難もあった。更に、今年初のプロジェクトであ 非現実なものであった。そのため、今回は、現実的に自分た ったため、前年度の先輩や、先生方からのアドバイスも無い ちが行動できる範囲で求めていく。そこでまず最初のステ 状態であったため、この点でも色々と困惑した。だが、最終 ップとなるのが、国の規模が、自分を含めた人数のマス、3x3 的にはメンバー全員がまとまり、スムーズに課題をこなす のマスで構成されているとすると、規模が小さいために、2 ことができた。それぞれのメンバーが得意・不得意な分野 つの言語の分布をうまく導くことができなかった。そのた があるなかで、よく役割を分担することも出来たと思う。数 め、次に 5x5 のマスで同じことを行った。すると、2 つの言語 学が得意な者、プログラミングが得意な者、プロジェクトの で分かれ、目に見えてクラスタ(言語を話している分布)が存 活動をよくまとめた者、また語学が得意な者が居る中、それ 在することがわかった。5x5 以降のマスでも変化せず、同じ ぞれがサポートしあい、不得意な部分を補っていくことが 結果となった。 出来た。 また、それぞれグループが課題をこなしていかないと、別 のグループが先に進めないため、それぞれ積極的に課題を 行っていった。そのため、精神的な面でも成長することが出 来たと思う。個々が予習・復習を怠らずに取り組んでいっ たため、学力面でも成長することが出来たと思う。プロジェ クト学習が始まった 4 月には、内容が難しくて、手も足も出 ない状況であったが、時間が経っていくにつれて問題に取 ロジェクトメンバが iPad を持ち、見に来て頂いた方に見せ り組む姿勢も変わっていき、諦めずに良く取り組むことが てまわっただけで、実際に触れてもらうことが出来なかっ 出来ていた。更に、夏休み等の長期休暇の時にでも、それぞ たため、今後は実際に触れて結果を見てもらうことで、更に れがしっかりと予習・復習を怠らず行っていたため、後期 理解を深めてもらえるのではないかと思えた。 の課題にもしっかりと取り組めていた。それでも難しく、何 また、今回は、2 つの言語があり、例えば A という国でそ 度も挫折しそうになったが、それぞれが協力しあい、最終的 の 2 つの言語がどのように広がっていくのか、ということ には結果を求めることができていた。 を調べたが、実際には 2 つの言語のみということはあり得 もちろん、良い点だけでは無く悪かった点も多くあった。 ない。そのため、実際に世界で使われている言語の数でシミ 前期で一番大きな問題だったのが、発表会における発表の ュレーションを行わなければ、役立つものは得られないと 仕方だった。発表準備に時間を全くとれず、練習が厳かにな 考えられる。そのためにこれからは、これらのことを踏まえ、 ってしまったために、見に来て頂いた方に内容をよく理解 実際に役立てることができるシステムを作製していくこと してもらえなかった。また、スライドやポスターでも色々と が求められる。 不備があった。スライドでは、数式を多く書きすぎて、全く 更に、今回は 8 人という規模が小さいなかで学習したが、 理解してもらえなかった。更に、根本的なことで、このプロ これからは、課外学習に積極的に参加して、他のチームがど ジェクトは何を目的に活動しているのか、ということを上 のようなことを学び研究しているのか、参考にしてみるこ 手く説明出来ず、原点に戻って活動をしていかなければな とで更に多くの知識を得ることが出来、今後のシステム等 らない、ということを考えさせられた。また、ポスターでは 1 の際に非常に役立つのではないかと思える。また、参考にす 枚しか用意しておらず、プロジェクトの概要や目標を知っ るだけではなく、実際に参加して、共同で研究してみること てもらうはずのポスターで、その役割を果たすことができ で、更に興味を持ち取り組むことが出来るのではないかと なかった。また、全員が複雑系ということで、デザインのセ と思える。 ンス的な問題もあった。 これらの失敗を踏まえ、後期の発表では、ポスターを 3 枚、 参考文献 スライドにイラストを多く使い、よりわかりやすくするよ 【1】Hofbauer J., K. Sigmund, 1998, Evolutionary Games and うに心がけた。その結果、発表会でのアンケートによると、 Population Dynamics, Cambridge University Press, (竹内 前期よりわかりやすい、声の大きさも丁度いい、iPad を使っ 康博, 佐藤一憲, 宮崎倫子, 2001,『進化ゲームと微分方 ていてわかりやすい、という声を頂いた。声が小さい、内容 程式』, 現代数学者). が難しい、などの声も頂いたが、前期のアンケートの結果よ 【2】Martin A. Nowak, 2006, Evolutionary Dynamics: Exploring りも断然少なくなっていた。ただ、このプロジェクトは何を the Equations of Life, The President and Follows of 目標にして行っているのか、誰のために行っているのか、こ Harvard University Press, (竹内康博, 佐藤一憲, 宮崎倫子, のシステムが出来て、どのように役立つのか、などしっかり 中岡慎治, 2008, 『進化ゲームのダイナミクス-生命の謎 と考えていかなければならない部分の多からずあった。 を解き明かす方程式』, 共立社). 【3】「Processing 1.0_ALPHA」, 5. 今後の課題 まず大きな課題として挙げられるのが、iPad で動作はし ているが、それはただ、表示するためだけのもので、iPad の 特徴のタッチパネルを全く生かせていない、ということで ある。つまり、これは実際にはノート PC で動作させている のもと何等変わらず、iPad である必要がなかった。そのため、 今後は、システムを更に改良し、iPad 上で条件を入力したり 等できるようにしていく必要がある。また、発表の際は、プ <http://tetralcaf.com/p5_reference_alpha/>
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