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プロジェクト報告書(最終)Project Final Report
提出日 (Date) 2011/01/19
地域農業情報発信支援プロジェクト
Project for regional development together with agri-ICT
b1008037 橋本優太 Yuta Hashimoto
1 このプロジェクトの概要
いを行った。また、新函館農業協同組合の職員とのディ
スカッションを行い、Web サイトの調整を重ねた上で
このプロジェクトは、農業や農作物の情報を消費者に
Web サイトを完成させた。
発信するための、情報技術を使った新しい手段を開拓
完成した Web サイトを実際に更新してもらうため、
し、道南農業を活性化させる目的で活動している。そこ
コンテンツの更新方法を記載したマニュアルを作成し
で、新函館農業協同組合と連携して活動を行うのだが、
た。それを用いて、新函館農業協同組合の職員・農家の
新函館農業協同組合が事業拡張の一環で直売所を整備
方それぞれを対象とした更新方法に関する説明会を開催
し、一般の消費者からの認知度を向上しようとしている
した。直接パソコンを触ってマニュアルを見ながら更新
こともあり、今回は道南に点在する直売所を取り上げ
作業を体感してもらった。説明会と同時にフィードバッ
る。まずは新函館農業協同組合の管轄にある道南直売所
クとして「ユーザビリティテスト」を実施し、更新につ
3 店舗、北斗市にある「北斗へい屋」、木古内町にある
まずく点などを挙げた。ユーザビリティテストより得ら
「きこりろ」、知内町の A コープ内にある「もぎたて市」
れた問題点を改善し、より更新者及び閲覧者に扱いやす
を中心に情報発信を行う。数ある情報発信の手法の中か
いような Web サイトを構築した。
ら、今回は 3 店舗の情報を掲載した Web サイトを構築
また、もう 1 つの課題として農場に温度や湿度などの
し、消費者に直売所の情報を発信して道南農業の活性化
データを記録するためのセンサを導入するためのノウハ
を図ることとした。Web サイトを構築するため、新函
ウを確立する。これは、農業に携わる先代の知識を後世
館農業協同組合に対する要求開発や、Web サイトに掲
にデータとして残し、後継者に効率よく伝達するために
載するコンテンツ、Web サイトのデザインを決定する
必要なことであり、新函館農業協同組合の職員からの要
ためのディスカッションを行ってきた。また、私たち自
望でもある。実際にセンサ導入をさせて頂く農家を新函
らが直売所に対する理解を深めるため、実際に直売所を
館農業協同組合より紹介して頂き、実験的にセンサを導
訪問し店員のお話を伺うことで、直売所がどのような問
入する。
題を抱えており、どんな情報を発信したいかなどを聞き
出した。
2 課題の設定と到達目標
以上のように Web サイトを構築して行くのだが、正
本プロジェクトの大きな問題として、「直売所の認知
確な情報を発信するためには農業に携わっている方(農
度の低さ」というのが挙げられる。実際に新函館農業協
家の方、新函館農業協同組合の職員の方)に Web サイ
同組合の職員の方に伺ったところ、新函館農業協同組合
トの更新をお願いしなければならない。そこで更新す
から発行されている広報誌「エスポワール」にて直売所
る方々の IT スキルを把握するためのアンケートを実施
の情報を掲載しているとの事だった。しかし、それぐら
し、現在の能力を確認した。アンケートの結果、農家
いで一般の方には伝わっていないのが現状である。この
の方の IT スキルが比較的高くないことが実証されたの
問題を解決する為の課題として、「Web サイトを使った
で、更新や管理にかかる負担が少ない Web サイトの構
直売所の情報発信」を設定した。なぜかというと、直売
築が必要不可欠となった。これの実現に向けて、まずは
所はその日によって納品される物が異なってくることが
管理に負担のかからない Web サイトを構築するために
ある。毎日同じ農作物を常時置けるわけではない。その
必要なことについて、プロジェクトメンバー内で話し合
ため、紙では、情報伝達に手間がかかってしまうことや
直売所に直接足を運ばないと出品されている農作物がわ
う課題も設定する。この課題の到達目標としては農業従
からないという点がある。Web サイトを用いることに
事者の持っている知識とデータとの融合をして、先達の
より、直売所などの場から更新が可能であり、広く情報
知識・経験を後継者に効率よく引き継げるデータ管理シ
を発信できると考えたからである。
ステムの開発を掲げている。
発信する情報は「直売所の住所・営業時間・駐車場の
個人の課題設定としては、Web サイトを構築するに
有無などの詳しい情報・生産者情報・販売品情報・農家
当たり、Web サイトの更新を農業従事者にお願いする
の方の持つレシピ」などに加え Web サイトのリアルタ
ことに決定したが、どの程度 Web サイトの更新を行え
イム性を駆使し、今回は「Twitter」を利用し、出店農家
るかを把握するためのアンケートを作成し、実施するこ
のつぶやきを農家の方々に入力できるようなコンテンツ
とを設定する。
を用意した。
また、もう 1 つの目標として「センサを導入するため
のノウハウを確立する」という目標を掲げる。
3 課題解決のプロセスとその結果
課題解決の為に、Web サイトを更新する為に必要な
知識や最低限知っていないといけない内容を話し合い、
直売所に農作物を出品している方を対象としたアンケー
トの内容を決定して、アンケートを作成した。対象直売
所は北斗市にある「北斗へい屋」、木古内にある「きこ
りろ」、知内にある「もぎたて市」の 3 件の直売所でア
図 1 出品農家のつぶやき
ンケートを実施した。期間は 2010 年 6 月 5 日から 6 月
19 日の 2 週間である
また、概要の最後に記載しているように、
「熟練者の豊
富な知識と経験を口頭でなく記録として残した形にし、
後継者に伝えていく」という課題があるため今回は温度
Web サイトのコンテンツを決定する為、新函館農業
協同組合の職員を何度か訪ねディスカッションを行っ
た。ディスカッションにより今回は
や湿度などのデータが記録できるセンサを導入すること
を考えている。
• 出品農家のつぶやき(Twitter を利用)
到達目標として、「直売所の方や直売所に農作物を納
• レシピ(COOKPAD を利用)
品している農家の方、また新函館農業協同組合の職員の
• 店舗情報
方々に簡単に利用(更新・管理)出来るような Web サイ
• 各直売所ごとのニュース
トの構築」という目標を掲げた。なぜかというと、農家
• 天気予報
の方の IT スキルを測るためのアンケートを実施した際
• 女性部のページ(新函館農業協同組合からの要望
に、高齢者が多いという点もあり IT スキル(パソコン
の基礎知識など)が少々欠如していることがわかった。
実際に Web サイトを管理するのは新函館農業協同組合
の職員であるが、あまりにも操作が難しいと Web サイ
トを更新してもらえなくなるだけでなく管理さえしても
らえなくなってしまう事が懸念されたからである。更に
農家の方や直売所の方々にも同じ様に、あまりにも更新
方法が難しいと更新をしてもらえなくなってしまう。こ
の様な理由があり到達目標を設定した。
さらに農家の高齢化に伴って、農家の方の負担を軽減
するために温度のなどの記録が取れるセンサの導入とい
にて)
などを Web サイトのコンテンツとして構築する事にな
る。このコンテンツの目玉となるのが「出品農家のつぶ
やき」である。IT スキルを測るためのアンケートにて
わかったことがあり、パソコンは持っていないが携帯電
話は持っているという人が多かった。さらに、写メール
機能を使ったことがあるという人も多かった。この結果
を踏まえ、今はやりの「Twitter」に目をつけ更新者に
は携帯電話で写真を撮ってもらいそれをある決められた
メールアドレスに送信してもらうだけで Web サイトに
掲載されるような仕組みを構築した。 また、完成した
く、読むことができなかった。
Web サイトを実際に更新してもらうために、新函館農
• 携帯電話はもっているので投稿は出来るが、パソコ
業協同組合の職員の方々と農家の方々を対象とした更新
ンを持っていないので確認することが出来ない。
方法説明会を実施した。説明会と同時に、Web サイト
• 操作マニュアルがあれば簡単に更新することがで
の使いやすさなどのフィードバックを取るために「ユー
ザビリティテスト」を実施した。これにより、更新者の
使いやすさを確認して更に使いやすいように改善した。
きる。
• 直売所で行うセールの告知がもっとできるようにな
るので助かる。
結果としてアンケートについては上記でも書いたよ
リンクの問題は既に改善済みであるが、残りの問題は
うにパソコンの所持率については低かったものの、携帯
まだ改善できていないため来年度以降に回す形となる。
電話の所持率が高いという結果が得られた。農家と農業
協同組合との連絡手段として電話や FAX という回答が
操作マニュアルの文字が小さかった問題については私た
ちの配慮不足である。もう少し、農家の方側の目線で考
あった。現代ではメールなどが挙げられることが考えら
れるが、この回答を見る限り農家の方々の IT スキルは
えるべきであった。また、このフィードバックでいくつ
か前向きな意見も頂戴することが出来たことは非常に
全体的に低いことがわかる。
コンテンツについては「Twitter」や「COOKPAD」
収穫である。「直売所で行うセールの告知がもっとでき
るようになるので助かる。」という意見は、私たちが掲
など外部コンテンツを利用した。これを用いることで
「Twitter」に関しては Web サイト自体の管理しやすい
点(画像などを管理する必要がない)、更新方法の簡略
化(携帯電話 1 つで更新が可能になる)などの点を考
慮して導入した。また「COOKPAD」に関しては自分
たちでコンテンツを 1 から作成するよりも COOKPAD
げていた目標である「更新者に簡単かつ管理のしやすい
Web サイトの構築」に近づけたと思う。
もう 1 つの目標として設定した「先代で培った知識
を後継者にデータとして引き継げるようにするためのセ
ンサを導入するためのノウハウを確立する」ということ
で、実際にセンサを導入する農家を新函館農業協同組合
は信頼度が高い(日本最大のレシピサイトであり、利用
から紹介してもらうはずだったがうまくいかなかった。
出来なくなる危険性が極めて低い)点と、アクセス数や
宣伝効果において非常に効果をもたらしてくれる点(月
間利用者数 1000 万人を超える)を考慮して導入した。
ユーザビリティテストについては、新函館農業協同組
合の職員対象のフィードバックと農家の方対象のフィー
ドバックそれぞれで以下のような結果を得られた。
(ここからが新函館農業協同組合の職員対象のフィード
バック)
• ページ間でのつながりが十分でなく、リンクが足り
なかった。
• 左側のメニューで同じ内容の見出しがいくつか出て
いてどのボタンを押したらよいのか混乱させてし
まった。
• 非常に簡単に更新できる。
(ここからが農家の方対象のフィードバック)
• 農家の方用に作った操作マニュアルの文字が小さ
図 2 Web サイトの TOP ページ
4 まとめ、今後の展望
挙げさせて頂く。また、他にコンテンツを思いついたら
提案をして、実現に向けて努力してほしいと思う。
今回のプロジェクトは第一次産業である農業について
また、センサについてはまずは導入までのノウハウを
取り扱った。我々の大学では珍しい分野であったが、メ
確立したのでこれを利用してセンサの導入を進めてほ
ンバー全員が農業に関心があったり実際に家族が農業を
しい。あくまでも土台を作ったので、この知識に随時来
営んでいる事が幸いし、ディスカッションも様々な意見
年の意見を付け足していき、導入にこぎつけてほしいと
が飛び交った。さらに新函館農業協同組合と連携して進
思っている。新函館農業協同組合側からも農家の方々か
めることで更に農業に関して知識や現在、道南農業が置
らも安価なものを導入したいとの意見を頂いているた
かれている状況などが理解することが出来た。他企業と
め、その点に気を付けてこの案件を扱ってほしい。
連携することはコミュニケーション能力が不可欠、さら
に情報共有能力もまた重要な能力だということが身に
参考文献
せき みつひろ
染みた。特に情報共有に関しては、企業との情報共有も
重要であるがプロジェクトメンバー同士の情報共有が
まつなが け い こ
[1] 関 満博 . 松永 桂子 . 農産物直売所/それは地域との
「出会いの場」. 新評論, 2010.
.
前期は上手くいかなかった。なぜうまく情報共有が出来
ないのかをメンバー全員で考え、後期からネット通話や
[2] WINGS プロジェクト 改訂新版 基礎 PHP. 株式会
社インプレスジャパン, 2004.
た か い まもる
チャット、ファイル送受信などが出来る Skype を導入
した。そのため後期は非常にスムーズに進めることが出
来た。様々なステップがあったがメンバー全員で乗り越
えて、Web サイトを完成させることが出来た事は大き
な収穫だと感じている。また、完成した Web サイトを
通じて、来年度以降もこのプロジェクトを続けてほしい
との事で依頼を新函館農業協同組合の職員の方から受け
ているので、ぜひ継続してもらいたいと思っている。ま
た、センサに関して来年度は重きを置いて進めてほしい
という話を頂いているので是非、センサ利用で来年は実
績を残してほしいと考えている。
今後の展望としては、以下のように挙げられる。
• Web サイト自体の拡張
• コンテンツの追加
• 掲載直売所の増加
• 先代の知識を後継者にデータとして記録し、引き継
げるようなセンサ導入
コンテンツの追加については、今回ディスカッション
にあがったが作成しきれなったコンテンツである「成長
日記(ある野菜が種から収穫までの 1 年をまとめたコン
テンツ)」や「アルバイト情報(収穫時期など繁忙期で
手が足りない時などに利用できるようなコンテンツ)」、
「小学生向けの資料集(野菜の詳しい知識や写真などを
小学生向けにわかりやすく掲載するコンテンツ。新函館
農業協同組合側より要望があった為。)」などを私たちは
[3] 高井 守 . XOOPS コミュニティー構築ガイド. 株式
会社技術評論家, 2004.