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プロジェクト報告書(最終)Project Final Report
提出日 (Date) 2011/1/19
学習再発見のための e-learning 機能開発
e-learning function development to rediscover what learning is
b1008051 久保 智嗣 Satoshi Kubo
それが下図である。
1 背景
現在、インターネットは大変普及しており、様々
な活用法がある。その中で、電子機器を使用し、教
育・学習を行うものがある。それを e-learning と言
う。現在の e-learning の主な形態は、パソコンを利
用し、インターネットを介して学習を行う方式であ
る。しかし、現在の日本では、e-learning はまだまだ
普及しておらず、要因として、教育者・学習者・開発
者の協力関係の確立が意外と難しいことが挙げられ
開発者は学校の先生からサーバ管理の依頼を受け、
る。また、あまり e-learning のメリットが知られて
開発者側がサーバの管理を行う。先生が学習者に対
いないことも考えられる。本プロジェクトでは、こ
して問題を出題したり学習者に対してアドバイスを
れらの問題の解決を目指す。
したり成績を付けたりする。学習者は先生に対して
課題の提出や分からない部分を質問したりする。学
2 課題の設定と到達目標
習者は開発者に利用者としてのフィードバックを送
信して開発者側は機能改善に役立てる。
課題を解決するために、英語班・数学班・サーバー班
本プロジェクトでは、『学習する』という行為の本
を編成して、こうした関係の構築のための活動する
質を再確認し、より e-learning 環境を利用してもら
ことにした。
えるコンテンツ形態を発見する・学習者の成績に良
英語班・moodle をベースとしたシステムを利用して
い影響を与えられるコンテンツ形態を発見すること
もらうことにより、e-learning を知ってもらうこと
を目的とした。教育現場に過度の財政負担を求める
を目的とし、e-learning のメリットである動画や音声
ことが出来ないことを勘案し、e-learnig のプラット
を用いることにより、テキストだけには期待できな
フォームにはオープンソースの moodle を用いるこ
い学習ができることを知ってもらい、より e-learning
とを前提にプロジェクトを進めた。その上で、「学
を利用してもらうことを目標として立てた。
ぶ」ということの本質を再確認しつつ、e-learning に
数学班・数学の教育現場で e-learning を使用するこ
関与する教育者・学習者・開発者の間の理想的な関
との困難さを解決する方策として、STACK の活用
係を明確にすることを試みた。
に着目した。問題の作成者側に STACK を知っても
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らうことを目的とし、問題の作成方法・STACK の
こと。フィードバックが即座に確認できるメリット
特徴・機能を周知するるために、STACK のワーク
を生かし、フィードバックが充実した問題を作成す
ショップを開催することを目標とした。
ることである。
サーバー班・『e-learning の普及』を実現するための
「無機化合物の英語名」という題の問題では、選択肢
サーバ側からのアプローチとして、e-learning シス
の単語を日本語にし、リスニングをヒントにし、元
テムの普及を阻む要因の一つ『導入・管理の困難さ』
素記号と英語読みの選択肢から、回答を選ぶ問題を
を解消することを目的とし、パソコンの初心者でも
作成した。
理解できるような e-learning システムの導入・管理
「無機化合物の英語名 発音と単語が違うもの」とい
に役立つマニュアルを作成することを目標とした。
う題の問題では、ナトリウム元素記号 Na、英文表記
は sodium のように日本語表記と英語名が違う単語
を集めて扱った。リスニングをヒントに、日本語名
3 課題解決のプロセスとその結果
と英語名(記号)を一致させる問題を作成した。
「有機化合物の英語の発音」という題の問題では、日
函館工業高等専門学校とコンタクトを取り、moo-
本語と英語の発音が違う単語(アルカン、alkane な
dle 上で問題を作成し、我々の作成した問題を使って
ど)を集めて扱った。英語の発音を強いて日本語で
もらい、さらに、その問題に対するフィードバック
書いたものもと、リスニングをヒントに回答を選ぶ
をもらうという方法を考えた。
問題を作成した。
英語班では、目標目的達成のために、函館高専の先
「実験室での安全装置」「Terminology 専門用語」
生と協力関係をを生かして、e-learning コンテンツ
という題の問題では、短文の穴埋め問題を作成した。
の作成と、教育現場での活用、そこからのフィード
リスニングを聞いて、空欄に発音された単語のスペ
バックを得るための活動を行った。
ルをタイプして回答する問題を作成した。この問題
は難易度の調調整が出来るように、多肢選択形式の
問題も作成した。
「化学英語の問題」という題の問題では、上で説明し
た問題形式なども含む問題で、ただ単に英語のレベ
ルを上げるだけではなく、解説に化学の知識も付く
ような解説を作成し、化学の勉強も同時に出来るよ
うにした。
CDが付いていない教材での問題作成では、moodle
上の問題に使用するリスニング用の音声ファイルを
先生から問題作成のための教材をもらい、作成した
作成するたに Gost Readers という音声読み上げソ
問題を先生に提供した。作成した問題で特に意識し
フトを使用した。理由としては、音声を作成するた
た点は、具体的には、学習理解度をさらに上げられ
めにネティブの方に人に頼む必要がない、一度に多
るように、音声を効果的に活用すること。見やすい
くの音声を作成することができるなどがある。さら
問題形式にすること。難易度の違う問題を作成する
に、一度に多くの音声を作成する際、Audacity を
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いうサウンド編集ソフトを使用した。Audacity は、
STACK では、因数分解、微分、積分などの高校数学
Gost Reader で作成した音声ファイルを分割する際
範囲の問題から、微分方程式などの大学数学範囲の
に使用した。
問題まで作成することが出来る。基本的には、問題
CDが付いている教材の問題作成では、今回使用し
の作成者自身が解ける問題、また解答が明確に出て
た教材「話しながら学ぶ化学英語」についているC
いる問題であれば、比較的容易に e-learning 化でき
Dをダウンロードしたのもが、拡張子がWMPだっ
ることを確認できた。
たので、音声変換無双というフリーソストを使用し、
日本では殆ど知られていない STACK を知っても
mp3形式に変更した。そして、mp3DirectCut と
らうために、STACK のワークショップを12月 1
いうフリーの音声編集ソフトを利用し、問題作成に
日、本学R781教室で開催した。ワークショップ
しようする箇所を切り取った。具体的には、英単語
では公立はこだて未来大学の先生に来ていただき、
を一ずつ切り取っていき、単語テストを作り、長い
STACK について紹介することができた。ワーク
リスニング文章は、きりの良いところで、切り取り
ショップへ向けて作成したのはスライドと問題作成
を行い、短文のリスニングテストを作った。
用のマニュアルである。ワークシップの開催が契機
先生の協力の下、授業で e-learning を利用してもら
となって、公立はこだて未来大学での、入学前教育
い、生徒の方に英語班で作成した問題を解いてもらっ
の数学の補助として STACK を用いて作成したオン
た。そこで、よりよい問題を作成するためのアンケー
ライン問題が使われることとなった。今回の経緯と
トを採り、学生の方から、作成した問題のフィード
ノウハウを生かして、今後さらに本学の e-learning
バックを得ることができた。このフィードバックを
の発展に貢献が期待できる。
利用し、より良い問題を生徒の方に作成し、先生に
サーバ班では、今期は活動内容を『段階 1:実際に
提供した。生徒の方から、e-learning が面白い・楽し
moodle をインストールしてみる』と『段階 2:段階 1
かった。といった評価をしてもらうことに成功した。
で得られたデータのマニュアル化』に大別できる活
数学班では、moodle 上で解答として数式を要求する
動を展開した。
ことができる数式解答評価システム STACK の導入
『段階 1:実際に moodle をインストールしてみる』
を図った。SATACK を用いることで、数式での解等
では、moodle が稼動し得る環境を整え実際に moo-
を評価可能な問題の作成、グラフを使用した問題の
dle をインストールして稼動させるまでに必要な操
作成、部分点を含む採点、解答の手引きの提示など
作を詳しく調べた。現実に教育現場が e-learning 環
が出来る。STACK にはポテンシャル・レスポンス
境として moodle を導入する際に想定される環境
ツリーという機能があり、これにより部分点での採
(コスト低減のために OS は Linux を採用し、その
点が可能である。ポテンシャル・レスポンスツリー
他の moodle を稼動させるためのアプリケーション
とは、想定される学生の解答 (ポテンシャルレスポン
等も可能な限りフリーのものを用いる) の下で行い、
ス) を処理するための機構で、想定される学生の解答
moodle のインストールに必要な行動の全てを洗い
に対して評価関数による判定を行って、評価関数を
出した。その結果、moodle の導入に必要な操作は
満たす (true) か、満たさない (false) かで採点を行
『Web サービスを行う場合の OS 側の設定』『Web
う。評価関数とは、評価対象と評価基準を引数とし
サーバ用ソフト apache2 を導入する』『データベー
て各種判定処理を行う関数である。
スソフト mysql を導入する』
『動的な Web ページ表
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示を実現するモジュール php を導入する』『各種ソ
初年度代の数学で活用できる教育コンテンツの開発
フトの設定を行う』『moodle をインストールする』
も、今後の課題である。また、サーバ班で作成した
の 6 つで十分であり、それ以上の操作は必須ではな
マニュアルを実際の高校などの教育現場で活用して
いことが実際に確認された。
もらうことも必要である。
『段階 2:段階 1 で得られたデータのマニュアル化』で
5 結果の評価
は、段階 1 で確認された 6 つの操作に必要なコマン
ドを洗い出し、それら全てを一つのマニュアルにま
本プロジェクトの活動は、前期の活動の方向性の
とめた。ただし、サーバ班の目標から想定されるこ
迷走から初動が遅れることとなった。しかし、明確
のマニュアルの使用条件は『あまりパソコンに詳し
な目標を定め、活動の基盤を構築することに成功し
くない人間が読んで moodle のインストールを行う』
たことは疑いようが無く、本プロジェクトの目的を
であるため、まずは『初心者が読んで理解でき、実際
達成するという観点からは良い成果を上げたと言っ
にシステムを稼動させられる記述とは何か』を探る
て差し支えないと思われる。 こととなった。この際、対応 OS の分だけ記述が増
加し、使用者に混乱を招く可能性があるためマニュ
参考文献
アルのマルチプラットフォーム対応化はこれを行わ
[1] 開田精一. やさしい英語の物理と化学. 南雲堂
ずに単一ディストリビューションへの対応のみに止
フェニックス, 1997.
めた。また本マニュアルが『moodle のインストール
[2] 福馬淳子. 話しながら学ぶ化学英語. 黄川書店,
マニュアル』であるが『Linux のマニュアルではな
1985.
い』ことを鑑み、マニュアルの冗長化を避けるため
[3] 中村泰之. 数学 e ラーニング. 東京電機大学出版
Linux の基本的な操作に関する情報はこれを掲載し
局, 2010.
ないこととした。また、コマンドの記述は操作ごと
[4] e-learning 教育研究. 創刊号 e-learning 教育学会,
に章立てで小分けすることで見やすくし、市販のマ
2006.
ニュアルによく見られる画像の掲載は各環境におけ
[5] e-learning 教育研究. 第二巻 e-learning 教育学会,
る見え方の違いによる違和感が操作ミスを誘発する
2007.
可能性を考慮し、行わないこととした。これらを念
[6] e-learning 教育研究. 第三巻 e-learning 教育学会,
頭において記述したマニュアルを実際に用いてあま
2008.
り Linux に詳しくない者に moodle のインストール
[7] e-learning 教育研究. 第四巻 e-learning 教育学会,
を行ってもらったところ、記述自体に対する質問は
2009.
あったが、インストール自体には成功した。
4 今後の課題
今回の活動により得たアンケート、高専の先生か
らの素材、化学英語の問題を生かし、次年度では、よ
り需要のある英語の問題を作成すること。STACK
導入で得られたノウハウを生かして、高校から大学
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