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プロジェクト報告書(最終) Project Final Report
提出日(Date) 2011/01/19
医療現場における情報デザインとシステム技術の展開
Information design and system development for medical practice
b1008196 高梨裕大 Takanashi Yudai
1.
背景
も60歳以上の高齢者が占める割合として80%以上であると
現在、日本における高齢化や医療費の高騰などの社会情
いう。
勢の変化が深刻な医療問題を引き起こしている。また、多く
以上のことから高齢化に伴い、病院を訪れる人や入院患
の病院で医師不足が深刻化し、在宅患者の増加、加えて、患
者の高齢化が問題として挙げられると考えられる。
者の総合病院などへの集中する傾向にあり医師や病院の負
担が増加している。そのため厚生労働省では、複数の医療機
2.
関が協力して患者の治療を円滑に行うこと、患者の平均在
本プロジェクトは 4 つのグループに分かれ、それぞれ問
院に数を短縮して医療費の抑制を図ることを目的として、
題点を探しシステムの作成を行った。
地域の医療機関を連携させることを推進している。このこ
(1)
とから今後、さらに在宅患者は増加していくことが予想さ
まず、子どもたちは医療行為によって心理的混乱を引き
れる。
起こされることに注目した。その原因として、治療を受ける
そのような現状の中、函館市は道南地域の中核都市とし
子どもたちに対して、事前に十分な病気や治療に対しての
て道南地域の医療の要を担うことを求められている。特に、
説明をしていないことが挙げられる。特に幼い子どもにと
独居老人の割合が高い。そのため、早急に在宅医療環境を整
って病気や治療についての説明は大変難しく、さらに次か
える必要がある。一方、函館を中心とする道南地域では
ら次へと患者が来る医療現場においては説明にかける時間
2008 年 4 月から医療連携ネットワーク「MedIka」が本格稼
もあまりない。 また、子どもたちに病気の正しい知識など
動している。これは複数の医療機関をインターネット回線
を伝えることで心理的混乱を軽減し、子どもたちが潜在的
で結び、患者の医療情報を共有すると言うものである。これ
に持っている病気に立ち向かう力を引き出すことをプレパ
により道南地域は異なる病院間の連携を円滑に行える環境
レーションというが、現在プレパレーションが行われてい
になりつつある。
る病院はそう多くはない。その原因としては、プレパレーシ
しかし、病院と患者間、独居患者と家族間の連携は未だに
ョンツールにコストがかかること、またプレパレーション
サポートされていないと考えられる。また、病院内のシステ
などを行うチャイルドライフスペシャリストの数が少ない
ムにも問題があると考える。その連携を強固のものにする、
ことが挙げられる。故に治療に向かう子どもたちに対して
また、システムの問題を解決するため、新しいシステムの支
の心のケアがあまり行われていないのが現状である。医学
援が望まれる。
知識の少ない我々が上記の問題に介入できるのは、一般的
2010 年現在、医療の観点から函館という地域を見たとこ
な治療を受ける子供に対するプレパレーションツールの作
ろ、日本全国でも問題となっている高齢化が浮き上がって
成であると考えた。そこで子供に対する一般的な医療行為
きた。北海道庁の年齢 5 歳階級別人口の調査結果(2009)に
で不安や恐怖を抱くものとして、予防注射が挙げられる。よ
よれば、2009 年 3 月の時点の函館市における 65 歳以上の人
って予防注射のプレパレーションツールを提案を考えた。
口は 26.42%を占めている。
また、小児白血病を経験した小児患者は、ガンが再発して
厚生労働省の2007年度の調べでは、高齢者における医療
しうのではないか、二次ガンが発症してしまうのではない
費の推移が右肩上がりであることを示唆している。これが
か、といった様々な不安を抱えている。また、一旦治療を終
一因となって医療格差が生じ、医師の離職や十分な治療時
えたのになぜまだ病院に通わなければならないのか、いつ
間がないのも事実である。また、医療安全白書(平成20年度
まで病院に通えばいいのか、といった疑問も持っている。こ
版)によると、医療事故の30%は転倒・転落事故であり、中で
のように、自分の将来のことに不安や疑問を抱えている子
着目した問題と提案
グループ A が着目した問題
供たちが、どのようにしたら医療に主体的に取り組めるの
が高齢者というのが現状である。このような問題もあり私
か、という問題に私たちは着目した。 小児白血病の治療を
たちの周りでは独居高齢者の割合も年々増加傾向にあり、
終えた子供たちを長期にわたってサポートしていくための
しばらく会って顔を見なかったお年寄りが孤独死していた
長期フォローアップのツールを作成することとした。小児
という事件も増えている。さらに身体機能や認知能力の低
ガンや小児白血病を経験した子供たちは、治療を終え、退院
下などにより独居高齢者が外に出られず実際に人と話すと
した後も病気そのものの影響や治療による副作用が後々出
いったコミュニケーションが不足しがちになっている。ま
てくる場合がある。それは必ずしも起こるものではないが、
たこれはグループの人の家族の話になるが、その人の祖母
早期発見のためにも経験者は治療がおえても定期的に健診
が独居しており、膝にリウマチを抱え自由に外出できない
することが必要とされている。このことを長期フォローア
状況だという。そのため母によく電話をして来るそうなの
ップという。また、こういった健診や晩期影響の診療をして
だが母も忙しい身なので毎日のように長電話をしているわ
いる外来を長期フォローアップ外来という。そして今回は
けにもいかず祖母が寂しがっているということがあった。
JPLSG(日本小児白血病リンパ腫研究グループ)の長期フォ
このように電話では本当の意味でのコミュニケーション不
ローアップ委員会教育作業部会の先生方(瓜生英子先生、
足を解決できない。
早川晶先生、栗山喜久子先生、沖本由里先生、山口悦子先
また別の問題として独居高齢者にとって最近のハイテク
生)の監修のもと小学校中学年~中学生を対象としたコン
機器は操作が難しく扱いきれないといったことが挙げられ
テンツを製作した。コンテンツ量が膨大なため、最後まで集
る。携帯電話やパソコンというものはとても便利なものだ
中力を切らさずに興味を持って見てもらえるようにと、ロ
が、その反面覚えなければならないことが多く、高齢者には
ールプレイング形式を提案した。与えられたミッションを
不便である。
達成するために、自分が主人公となり冒険を進めていくも
(4)
のにし、思春期の子供たちにも興味を引きやすくすること
昨年提案された脳機能の回復支援システムであるリハビ
をねらいとした。
リくんをさらに患者のリハビリを手助けできるリハビリテ
(2)
ーションシテムにするために、各コンテンツのリハビリ効
グループ B が着目した問題
グループ D が着目した問題
現在の日本では、高齢化社会が問題となっており、病院や
果を向上させる機能の実装、長期に渡り行われる実際のリ
施設に入所する患者が増えていることに着目した。病院や
ハビリをサポートできる機能の実装と言う2つを目的とし、
施設に入所する患者に対して、その入所判断を行うものに
システムの拡張を行った。
ICF アセスメントと呼ばれる、患者の日常生活機能を点数で
システム全体をよりたのしく、使いやすくしコンテンツ
評価するアセスメントを行うが、これは患者の日々の身体
に対する集中力を上げることでリハビリ効果を向上させる
状況の変化を知るためのものである。しかし、現在の ICF ア
ことを考案し、書字ゲーム、なにしてる?、くだもの落とし
セスメントは紙媒体で行われており、情報共有が困難であ
の3つの追加コンテンツ、アニメーションとナレーション
ったり、転記が面倒であるといった、医療従事者の負担とな
によるゲーム説明、視覚障害を持っていても見やすいボタ
るような問題がある。
ンデザインの提案を行った。
これから数年間、高齢化社会が続いていけば、医療従事者
また長期に渡るリハビリをサポートするために、システ
の負担はさらに大きいものへとなり、さらなる問題を引き
ムの利用履歴をサーバに残し、その蓄積データを利用する
起こすことは間違いない。ICF アセスメントを行うにあたっ
ことで患者さんは自分の回復過程を確認することができた
て、医療従事者間の情報共有が困難であったり、転記が面倒
り、病院側は今後のリハビリの指標として利用することが
であるなどの問題を解決するために、この ICF アセスメン
できるようになることを提案した。
トを PDA によって電子化することによって、情報機器が得
意ではない医療従事者でも「使いやすく」
「便利な」アプリケ
3.
ーションを作成することを提案した。
(1)
(3)
・予防注射コンテンツ
グループ C が着目した問題
成果物の概要
グループAの成果物の概要
現在、日本では少子高齢化がすすんでいる。もちろんこの
病院の待合室で予防注射を受けに来た子供が親と一緒に
函館も例外ではなく函館山に近い地区では世帯の半分以上
使い、予防注射について楽しく学ぶことができるツールを
作成した。このツールにはメディカルプレイなどを取り入
ている。システムとしては現在よく利用されている「Sype」
れインタラクティブ性を持たせた。このことによって子供
という無料のチャットやリアルタイムの映像通信をするソ
たちが楽しく学ぶことができ、不安が軽減され主体的に取
フトと似たようなものを地デジ対応テレビで可能にしたも
り組むんでもらう。
のでインターネットを介して映像通信を行う。電話では相
・長期フォローアップコンテンツ
手が忙しいときなど、相手の状況が分からなかったが、そこ
操作はパソコンで行い、FlashPlayerを使用してコンテン
にプレゼンスと呼ばれる相手の状況を視覚化したものをつ
ツを再生する。コンテンツでは、自分が主人公となり冒険を
けることで相手の時間があるときにコミュニケーションが
進める。主人公はユーザと同じように、小児白血病経験者と
取れるようになっている。
設定している。自分が戦ってきた病気の名前を入力したり
また地デジ対応テレビを使用する上で現在の地デジ用の
どんな治療を経験してきたかを選択することで、今までの
リモコンはボタンの数も多く複雑なため高齢者には使いづ
戦いを振り返って考えるという機会を作っている。冒険の
らいといった問題があるが、これをリモコン自体をタブレ
なかでは、街の中を歩いていき、街や家の中にいる住人や先
ットPCに入れ、タッチパネル式にすることで解決した。上記
生たちに話しかける事によって健診の目的や重要さを学ん
のようなリモコンを製作し、リモコン用画面とみだいぷの
だり、再発や二次ガンのことについてを学べるようになっ
プレゼンス変更用の画面を自由に入れ替えることが出来る。
ている。また、主治医の判断で性教育も受ける部屋を街の中
このリモコンを用いてプレゼンスを変更し、現在の状況を
に配置している。その際は制限をかけるためパスワードを
伝えることで、相手が今何をしているかがおおよそ分かる
入力する機能を作成した。
ようになっているので家族側としては見守りシステムとし
ストーリーは、ユーザーが現在抱えている不安を「ふあん
ての使い方もできる。もし仮に高齢者の方がプレゼンスを
くん」で表し、そのふあんくんを小さくしてほこらに封印す
切り替え忘れたりずっと変更がされていなければ何らかの
るというものである。街や家の中の住人や先生に話しかけ
異常があったのではと異変察知のきっかけにのではと考え
ていくことでアイテムを集めることができる。そのアイテ
ている。
ムが全て揃ったとき、それはほこらを開く鍵となる。その鍵
(4)
をほこらに持って行き、ふあんくんを封印すると物語はエ
従来のシステムはリハビリを1人でもゲーム感覚で楽し
ンディングに向かう。
く行えるリハビリテーションシステムを目指して製作され、
(2)
グループBの成果物の概要
グループDの成果物の概要
「モグラたたき」・「風船わり」・「ピアノ」・「絵合わせ」・
医療従事者が介護対象者である患者に対して、ICFアセス
「クイズ」・「ぬり絵」の6つのコンテンツが実装されていた。
メントを行うためのアプリケーション作成を提案した。こ
今回は「くだもの落とし」・「書字ゲーム」・「なにしてる?」
のシステムは、iPadを用いることによって、タッチパネル方
の3つの追加コンテンツ、アニメーションとナビゲーショ
式でICFアセスメントを行うことができるものである。アプ
ンをFlashを利用して製作した。従来のコンテンツにも修正
リケーションはサーバとのやりとりを通して患者情報等の
を加え患者がより楽しめるか、使いやすいかを重視した。ま
データのやり取りを行うものとした。IPadを利用して、より
たログ取得機能と成績画面のデータ送受信にActionScript
紙媒体に近いものにすることによって、情報機器が得意で
とPHPを利用し、仮サーバとしてWampServerを利用したデー
はない医療従事者でも使いやすいものにするなど、インタ
タのやり取りを製作した。
フェースに考慮したシステムへと仕上げ、医療従事者の負
担を軽減するものとした。又、ICFアセスメントを行った結
4. 今後の課題
果をグラフ化し、過去の身体状況と即座に比較できるよう
(1)
にし、同デバイス内で評価を行えるようにした。
まず、予防注射コンテンツの課題として、評価を行い子ど
(3)
もたちにとって恐怖心や不安を軽減するものなのかを実証
グループCの成果物の概要
グループAの今後の課題
独居高齢者を対象とした簡単な映像通信システムを提案
する必要がある。また、PCでは敷居が高いためiPadのような
した。このシステムは独居高齢者のコミュニケーションを
小さなデバイスで使用できるようにしなければならない。
支援するツールとして提案され、電話で話したくても家族
今後の展望としては、評価によって効果的なものと実証さ
の方が忙しくてそれができないといった方に役立つと考え
れた場合、様々な病院の待合室にて子どもたちに使っても
らい恐怖心や不安を軽減し予防接種に望んでもらえると考
今後の展望として、データベースの患者のテーブルを分
えられる。また、心理的混乱を引き起こす子どもたちが少な
割し、データのやりとりをCookieを用いた方法に変更、電子
くなればスムーズに予防接種を受けることができるため、
カルテに登録されているような詳しい患者情報に対応させ
医師や看護師の負担も減ることが予測される。
ていくことに加え、Google マップ等のローカル検索サービ
次に長期フォローアップの課題として、ゲームに慣れて
スと連携して病院から患者宅までのナビゲートする機能を
いない先生方に対するわかりやすい説明書を製作する必要
追加することで、病院と患者宅間、さらには調査データの活
がある。また、診療時間が少ない場合にプレイ時間の長いこ
用という一連の流れをデザインすることができるシステム
のツールをどのように使用するかをしっかりと考えていく
となるだろう。
必要がある。今後の展望としては、小学校高学年~思春期の
(3)
子どもたちがこのツールを使用することで、長期フォロー
本システムは、高齢者も容易に操作でき、家族と気軽にコ
アップに対する興味を持ち定期的に自ら病院に通うことで
ミュニケーションをはかれるシステムを目指したが、ユー
晩期影響が起きてもすぐに発見することができると考えら
ザテストは時間の関係で行うことはできなかった。インタ
れる。
フェースの面ではボタンの数や画面の遷移、配色を十分考
最後に全体の展望は、今回提案した2つのシステムにより、
慮して作成した。しかし、実際の高齢者やその家族に使って
子どもたちが楽しく治療や病気について学ぶことで恐怖心
いただき、それに関する問題点等の発見やそれの改善する
や不安を軽減することをサポートした。これによりスムー
ことはできなかった。
ズに治療を受けたり、病気に立ち向かう力を引き出したり
また、今回は環境の構築を第一の目標にシステムの作成
ことができるようになる。また、長期フォローアップコンテ
を行ったため、セキュリティ面やタイムラグの改善にも十
ンツでは定期的に健診する大切さを学び、晩期影響が起き
分に時間をかけシステムを構築することができなかった。
てもすぐに対応することができるようになる。
セキュリティ面に関しては今回は考慮することができなか
(2)
った。相手のプライバシーに関わる情報が含まれているた
グループBの今後の課題
グループCの今後の課題
患者宅での紙媒体調査の結果を病院の据え置き端末に転
め、今後このシステムを利用するためには、ログイン等の仕
記する負担を軽減することを目的として提案した今回のシ
組みなどを考慮し十分に情報を守る仕組みを考えなければ
ステムは、
「社団法人全国老人保健施設協会, 新全老健版ケ
なければならない。映像通信時のタイムラグに関しても同
アマネジ
メント方式~R4システム~実用版テキストVer.4,
様であり、コミュニケーションをはかる上でストレスのな
2010」に記載されている使用器具や生活状況の調査には着
いレベルまでタイムラグの改善しなければならない。 手しなかったものの、レベル付けを行う部分には完全対応
さらに、今回利用したリモコンの通信方法はインターネ
しており、患者検索・グラフ参照を含め、ログインからログ
ットを介して行ったが、今後はBluetooth通信などの手段が
アウトまでの一連の流れをアプリケーション化することが
有効かどうか考える必要があると考える。
でき、成功したと考えられる。特に、患者検索・グラフ参照
(4)
では患者宅で行うことができ、紙媒体との差別化に関して
今回は前年の提案を引き継いだ訳もありさまざまな機能
も成功したと考えられる。
の実装を行うことができた。しかし機能が増えすぎたこと
しかし、現状では患者の検索に関して単一のデータベー
でコンテンツ容量が大きくなり、実装の際は少し機能を削
スを用いているために同時に複数のアクセスがあることを
らなければならないなど実装時の問題が多く発生した。成
想定しておらず、複数のアクセスがある場合、患者検索結果
績画面に関しても実装には至らず、ログを残す機能までが
の取り合いが起こってしまう。また、データのやりとりに
実装された。今後はそのログを利用した成績画面などの新
REST形式のURLを利用しているため、ブラウザのキャッシュ
たに患者や病院の手助けとなる機能の実装が目標となる。
に入力内容が残ってしまうという問題もある。加えて開発
またタッチパネルがあればどこでも利用できることから、
段階では仮想サーバを用いており、実用するには別途新し
ご家庭の高齢者のためのコンテンツとしても活躍の場を広
くデータベースを制作し、HTMLの方もそれに合わせた変更
げることが可能である。
が必要となる。
グループDの今後の課題