プロジェクト報告書 Project Report 提出日(Date)2014/01/15 やわらかさを感じる筋電義手の開発 Development of Myoelectric hand with feeling softness 1011045 岩口優也 Yuya Iwaguchi 1 背景 2.1 制御班 本プロジェクトでは,皮膚表面上で計測される筋電位 計測された筋電位から,義手の動作を実現することを を計測して義手の動作を実現をする。皮膚表面上で計測 制御班の課題とした.義手の動作として,つまむ,はな する方法は非侵襲的計測と言われる。逆に,体に電極を すの合計2つの動作の識別を行うことが出来るプログラ 埋め込んで計測する方法を侵襲的計測と言う.この方法 ムの制作を到達目標とした. では,ノイズの影響を受けにくいため,筋電位を正確に 安定して計測が可能である.しかし,この計測方法は手 術が必要で,体に傷を付けることになる.そのため,本 2.2 計測班 表面筋電位を計測する時には,ノイズが発生する.そ プロジェクトでは非侵襲的計測方法を用いた。 のノイズを取り除くことを課題とした.また,計測され 非侵襲的計測として,電極を皮膚に貼り付ける方法が た筋電位は非常に微弱である.そのため,筋電位を増幅 ある.これにより,筋電位の計測を行う.非侵襲的計測 させることも課題とした.それらを可能にする,装置の の利点と欠点がある.利点は,皮膚に直接貼り付けるこ 使い方の習得,回路の設計,制作を行うことを到達目標 とができることである.これにより,義手装着者に傷を とした. つけることなく,筋電位を取得することができる.逆に 欠点は,50Hz 由来のノイズが計測時に乗ってしまうこ とである.筋肉に直接電極を貼ることができないため, 複数の筋肉の動きを読み取ってしまうことである.その ため,表面筋電位から動作識別を行うことは困難である ことが現状である. また,義手を装着した瞬間から義手から装着者への 2.3 制作班 筋電義手とは,どのような構造になっているかを知る 必要があった。そのため,前期では義手を1台制作する ことで,義手はどういう構造をしているか,どのような 素材が適しているかを知ることができると考えたため, 実際に制作することを到達目標とした. フィードバックはない.人間から筋電位を義手へ送る一 方で,掴んでいる物質の性質等を感じることは出来な 2.4 触知覚実験班 い.そこで,本プロジェクトでは,人間の持つ振戦に注 目して,基礎研究を行う.また,振戦とは抑制の効かな い不随意の機械的振動である. 義手から装着者へ硬度の触知覚のフィードバックする ことを考えた.そこで,人間の振戦に着目して,それを 人間の硬度弁別に関係していると仮定して基礎研究を 2 前期の課題設定と到達目標 行った.そこで,どういう実験を行うかを話し合い,実 験を行うことを到達目標とした. 本プロジェクトでは,課題解決のために 4 つの班に 分けて活動を行った.また,前期では筋電義手でのつま 3 前期活動の結果 む,はなすの動作の実現を到達目標とした. それぞれの班において,前期活動から得られた結果を 記述し,制作した義手を図 1 に示した. 膏で型と取り,そこにプラスチック樹脂を流し込む方法 3.1 制御班 信号処理に,オープンソースハードウェアであるマ イクロコンピュータ「Arduino MEGA 2560」を使用 した.Arduino には A/D コンバーターを搭載されて をとった.それを加工して,手の平と接合して義手を制 作した. 3.4 触知覚実験班 いるため,アナログで入力した 0 から 255 までの値を 義手に振戦を搭載することを考え,触知覚と振戦が関 処理することができる.そして,Arduino と互換性の 連していると仮定して基礎実験を行った.その実験内 ある Processing を使用し,機械学習の理論にはサポー 容としては,指先に加速度センサを装着して,硬度の違 トベクターマシーンを用いた.今回のプログラムでは, う物質に触れたときの信号を計測した.その結果,ゴム Aruduino から入力されたディジタル値をその商と余剰 ボールと硬式ボールを掴んでいる時では,ピークの違 から復元し,それを筋電位の値とした.この方法で取得 い,周波数の違いが見られた.しかし,2,3 秒ほどの した筋電位を各動作 100 個ずつ標本化する.そして,異 データしか得ることができず,正確な震えの違いを検証 なる動作の標本値で最も近似している点同士で中点を できなかったため,同様の実験方式で条件を変えてさら 取る.それらの点を結んでできた線を境界線として,領 に実験を行った. 域ごとにパターン分けを行い,入力した値を判定した. 1g のゼラチンと水を,4g のゼラチンと水を混ぜたゼ これにより,つまむ,はなす動作の判定を行うことがで リーをそれぞれ触った時の振戦の違いを計測した.ま きた. た,1g と 4g の違いはゼリーの硬さに影響していて,4g のゼラチンを混ぜた固体のほうが 1g のゼラチンを混ぜ 3.2 計測班 ノイズを除去するために,以下の 5 つの回路を基板 に組み込むために設計して作成した.差動増幅回路は, たゼリーよりも硬かった.すると,周波数の違いが見ら れ,物質の硬度によって震えの種類が異なるという結果 が得られた. 2つの信号を減算して,増幅する回路である.非反転増 幅回路は,信号を反転させることなく増幅する回路であ る.全波整流回路は,不の電位を正の電位に変換する回 路である.積分回路は,入力電圧の波形の時間積分に等 しい波形の電圧を出力する回路である.反転増幅回路 は,信号を反転させつつ増幅する回路である.これを 1 チャンネルとして,合計 5 チャンネル分を制作した. 3.3 制作班 まず,義手にどのような素材が適しているかを班員と 話し合った.過去のプロジェクトの成果物では,金属で あったり,木で制作していた.しかし,重かったり,耐 久性に不安があることを考慮して,前期ではプラスチッ ク樹脂を用いて義手の制作を行った.まずは,班員の前 腕から手までの型を制作した.制作した型に液体プラス チックを流し込み,それを手の型とした.しかし,指の 部分は細くて加工している間に破損する恐れがあったた め別に制作した.具体的には,紙ねんどで指を形成して それにプラスチック樹脂を塗った.そして,それから石 図1 前期の義手 4 前期での問題点 4.1 制御班 5.2 計測班 前期では,電極をテープで皮膚に直接貼り付けて筋電 位を読み取っていた.しかし,それでは着脱に時間がか Arduino とパソコンを接続する時に配線を間違える ことが多かった.そのため,正常に動作せずその度に回 かる.その着脱時間を短縮するために電極サポーターの 作成することを到達目標とした. 路の問題であるのか,パソコンとの誤接続なのかを問題 解決することに余計な時間を要した. 4.2 計測班 5.3 制作班 前期では,手作業で義手を制作していた.そのため, 関節部分の動作が上手くいかなかったり動作の時に糸が 制作している途中で,半田ごての熱によって,ダイ オードを壊してしまったり,完成した回路が正常に動作 せず,電流が流れないことがあった. 4.3 制作班 関節部分に糸が引っかかったりして,指が動作しない ことがあった.また,3 本指しか搭載していなかった. 義手のカバーをラテックスを用いて制作したが,もろく て破れやすく動作させるたびに関節部分のネジに引っか かりして破れてしまった. 4.4 触知覚実験班 関節部分に引っかかったりした.だから,後期では時間 短縮と制作精度向上のため,3D プリンタを使用して義 手の制作をすることを到達目標とした. 5.4 触知覚実験班 前期で被験者の数が少なかったため,被験者の数を増 やして実験を行った.また,物質の硬度によって震えの 種類が違うことがわかったが,振戦が知覚に関係してい るかどうかは分からなかった.そこで,実験の改良を行 い,振戦と知覚の関連性を示すことを到達目標とした. 6 後期活動の結果 前期で行った実験の被験者は 1 人であった.そのた め,実験結果の根拠としては弱いのではないかという意 見が中間発表のフィードバックから得られた. 5 後期活動と到達目標 5.1 制御班 前期では,サポートベクターマシーンを使用した.2 それぞれの班において,後期の活動から得られた結果 を記述し,制作した義手を図 2 に示した. 6.1 制御班 ニューラルネットワークを用いて,完全にそれぞれの 指を独立して動かすことはできなかった.ニューラル ネットワークとサポートベクターマシーンの比較テスト つの動作の識別であれば,サポートベクターマシーンは を行ったところ,後者のほうが良い場合があったため, 有効である.しかし,3 つ以上の動作の識別では安定し 前者のプログラムの改善が必要であると考えた.また, ないと言われている.そこで,すべての指を独立して動 配線の無線化には Zigbee 規格の無線機を使用した.確 作させることを目標とした後期ではニューラルネット かに,配線の無線化には成功した.しかし,5 つのモー ワークを用いて識別を行うことを到達目標とした.ま ターに無線情報を送る時に,データの通信限界量の問題 た,Arduino とパソコンを有線で接続していた.その時 が生じた.そのため,無線を用いた義手の動作には至ら に,よく配線の繋ぎ方を間違えていた.そこで,後期で なかった. は配線の簡略化をするために配線の無線化をすることを 到達目標とした. 動有りのほうが多かった.t 検定の結果でも,正答数の 6.2 計測班 電極サポータを制作したが,電極の概念をよく理解せ ずに作ったため,装着するとノイズが乗って失敗に終 わった. 平均値の検定を行ったところ,振動の有無で有意差が見 られた. よって,10Hz の振動によって振戦が能動的な触知覚 に関係していることが示唆された. 6.3 制作班 3D プ リ ン タ を 使 い ,ど の よ う な 義 手 を 制 作 す る か を 話 し 合 っ た と こ ろ ,こ の サ イ ト(InMoov http://inmoov.blogspot.jp/)にオープンソースで公開 されているデータを使って義手を制作することにした. すると,制作時間の短縮ができて,動作時の糸の絡まり はなくなった.しかし,モーターの選別を誤り,可動範 囲が狭いモーターを選んでしまったため,十分に糸を巻 ききれなかった.それを改善するために,可動範囲の広 いモーターを取り付けた.しかし,用意していた義手前 腕部の土台にモーターを取り付けることができなかっ た.そのため,プラスチック樹脂を用いてタッピングで ネジ止めすることになった.その結果,糸を巻き取る力 でネジが外れてしまうことがあった. 6.4 触知覚実験班 物質の硬度を判断するときの振戦の特性を調べた.そ の実験方法として,硬度の違う 7 つのゼリーを用意し 図2 後期の義手 た.その中の 1 つを標準刺激とし,その他を比較刺激と して弁別実験を行った.実験条件として,被験者には開 眼した状態で行ってもらった.この場合では,皮膚表面 上の触知覚か,振戦による触知覚か判断が出来ない.だ 7 今後の課題 から,ゼリーの上には皮膚表面上の触知覚を遮るために 今後の課題として,電極サポーターの改良,ニューラ プラスチックの板を固定した状態で実験を行った.その ルネットワークのプログラムの改良,義手本体のモー 結果として,ゼリーが硬くなるほど振幅が小さくなる傾 ターの巻き取り機構の設計,振戦の義手への搭載方法を 向が見られた.しかし,弁別の正誤と振戦の関係性は分 考える,この 4 点が考えられる.それらを今後活動する からなかった. 時の課題として設定してさらに安定した動作,識別がで そこで,新たに割り箸に 10Hz の振動子をつけてゼ きる義手を制作し,今までにない機能を搭載した義手の リーを触った時,つけずにゼリーを触った時で弁別実験 開発をしたい. を行った.先ほどとは,条件を変えて被験者には閉眼を してもらい,硬度の違うゼリーを 7 つから 3 つに減らし た.また,被験者の指を実験者が誘導して触らせるよう にして振動有りで 18 試行,振動無しで 18 の計 36 試行 をした.その結果,振動有りと振動なしでは正答数が振
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