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プロジェクト報告書 Project Report
提出日 (Date) 2014/01/15
マインドコミュニケーション
Mind Communication
1011068
上田進太郎
1 目的
Shintaro Ueda
さらに, 今回のプロジェクト内のテーマである「脳波
と音」についての実験を行った. プロジェクト内のメン
本プロジェクトでは脳波と音を利用した新しいコミュ
バーを脳波チームと音チームに分けそれぞれ「ある条件
ニケーションツールの開発を目的とする. 創作の幅を広
下での脳波の動き」,「ある条件下で聞きたい音色」につ
げるため「コミュニケーション」の定義については, プ
いて実験を行った.
ロジェクト内で統一せず, それぞれのグループに委ねた.
実験終了後, ブレインストーミングによって「日常生
本プロジェクトで使用する技術は主に, Processing[1],
活における他者との問題」を掘り起こし, その解決法を
MAX[2] などがあり, これらの技術力を自分たちで養う
考え, 制作物のイメージを固めた. 本プロジェクトでは
ことで, メンバーのスキルアップを目指した. プロジェ
脳波の取得に NeuroSky[7] 社製の mindwave(図 1) とい
クト活動では, 制作物を完成させ, 発表の視聴者などか
う簡易的な装置を利用した. これはユーザーの頭につけ
らフィードバックをもらえる段階までの到達を課題とし
るだけで,Bluetooth を利用して脳波信号をパソコンな
て設定した. その具体的な作業は, (1) 制作物のコン
どに送信する装置である. 私達は主にこの装置を以下の
セプトや背景の考案をすること,(2)外装と内装の設
制作物を提案した.
計を考え, 制作物をイメージしたものに近づけていくこ
と,(3)設計を確立させ, 必要な材料を揃えることなど
がある. これらの作業と同時進行で, 専門的な知識を各
自で身につけやすいように適材適所で役割分担をした.
メンバーのスキルに似合った役割分担をすることで作業
効率の上昇も同時に視野に入れた. スキルアップの目標
は, 制作するにあたって必要な知識を身につけることと
した. そうすることによって, このプロジェクトグルー
プ内のメンバー全員が自分に与えられた課題をしっかり
認識し, 一丸となって制作物に取り組めると考えた.
図 1 NeuroSky 社製 mindwave 本体 [7]
2 最終成果物までのアプローチ
私達は 15 人のメンバーをそれぞれ 5 人ずつに分け,
グループ A・B・C としてプロジェクト活動を進めた.
3 各グループの最終提案
プロジェクト発足時には「脳波」というものの知識が
3.1 A グループの最終提案「Notice Voice」
乏しかったため, 脳波を使った玩具や先行事例の調査
A グループの制作物である,「Notice Voice」(図 2) の
を行った. 既存の製品には neurowear[3] の necomimi[4]
コンセプトは「脳波変声機で無意識を認知する」である.
や mico[5], 米 mattel 社のマインドフレックス [6] など
私達は「脳波と音」というテーマの中で, 人間の発する
があり, 自分たちでも扱えそうな機材や技術を探った. そ
「声」に着目した. 人間の声は様々なシュチュエーション
の結果, 既存の製品で使用されている簡単な脳波測定器
で活躍し, 人とコミュニケーションをとるための方法の
が本プロジェクトの制作物においても使用できるという
一つだ. その中で脳波と声を合わせることでもっと斬新
結論を得た.
なコミュニケーションの形をとれるのではないかと考え
た. そこで私達は声に人間の脳波を乗せることで, 人間
がる. 具体的な例として, 先生が説教していてそれを生
の思考や態度とはまた別の, 人間が自然に発している脳
徒が聞いている状況や, 友達と集まった時などに本音を
のシグナルを知ることができるのではないかと考えた.
聞き出したいときなど, 真面目なシチュエーションから
そうすることで, 会話に新たな要素が加わり, ひとりの
気楽なシチュエーションまで, さまざまな場面で使用す
ときでも, 複数人のときでも新たな発見ができるのでは
ることができる.
ないかという結論に至った. このツールによって脳波の
聴覚化が実現され, 普段の生活で「脳波」という目に見
えないものをより身近に感じることができ, 脳波が日常
で使用されることへの発展が期待できる.
次に「Notice Voice」のシステムについて説明する (図
3). まず,mindwave でユーザーの脳波を数値化, 計測す
る. 脳波は変動が大きく, このままの数値では増減が激し
いため, パソコン内の Processing で脳波の数値を平均化
し, これをユーザーの声をどの程度変化させるかの指標
として使用した. そして,MAX を用いて実際に声を変換
図2
「Notice Voice」を使用している時の様子
させるという仕組みだ.「Notice Voice」は声を脳波α波
(安静時に増大,9∼13Hz)と脳波β波(集中時に増大,13
∼30Hz)の割合によって変換する. α波の割合が多い場
合は声が低く, β波の割合が多い場合は声が高くなる. α
波とβ波の割合にあまり差がない場合, 声は変化しない.
この3段階の声の変化を指標にユーザーは脳波の状態を
知ることができる.
「Notice Voice」の使用方法は至ってシンプルで, はじ
めに mindwave 本体を, 脳波を計測したいユーザーに装
着する. そして,Notice Voice 本体のマイク部分に声を発
するだけである. 声を発するユーザーは基本的にだれで
も可能で,mindwave 本体を装着したユーザー以外の人
図3
「Notice Voice」システム図
でも良い.「Notice Voice」をひとりで使用する場合, 自
分の脳波を使って自分の声を変声することになる. この
ような場合は, 自分の声を自分自身で聞いて脳の状態を
知るという使い方ができる. 具体的な例として, 学校や
仕事で大事なプレゼンがあるときの練習に使用したり,
寝る前に自分の脳の状態を簡単にチェックしたりするこ
となどができる. もちろん, 人によって「安静していると
きの方が自分はうまくプレゼンできる.」や「集中してい
るときの方ができる.」などと言った, 個人差はあるはず
なので, ある程度の指標としてうまく使ってもらいたい.
「Notice Voice」を複数人で使用する場合, 誰かの脳波を
使用して誰かの声を変声させるという使い方になる. こ
のような場合は, 誰かの声を聞いて誰かの脳の状態を知
るということでき, 1人で使う場合よりも応用の幅は広
3.2 B グループの最終提案「PUZZLINK」
B グループの制作物である,「PUZZLINK」(図 4) の
コンセプトは「脳波を使った協力型ゲームで遊ぼう」で
ある. この「PUZZLINK」は完成されたメロディを聞
き, それを頼りにしながら, ピースに割り当てられたメ
ロディを聞いて, 完成されたメロディになるように正し
い位置にピースを当てはめていくというゲームである.
従来のパズルゲームは, ほとんどが視覚を使い, ピース
の形を頼りにしながらピースを正しい位置に当てはめて
完成を目指していくものである. そこで, 私達は今回の
プロジェクトのテーマである「音」を取り入れることで,
聴覚を利用し, ピースを当てはめて完成を目指すという
斬新なパズルを考えた.
「PUZZLINK」のプレイ人数は 1∼4 人を想定してお
り, ゲームの操作には wii リモコンを使用する (図 5). パ
ズルのピースは 1 ステージ 辺り 16 個存在し, ピースひ
とつひとつにメロディが込められている.16 個のピース
を盤上に正しい順番で並べる事が出来ると曲が完成す
る. パズルの正解である完成された曲は, ステージごとに
規定された回数試聴することができ, 試聴を頼りにピー
スを正しい順番に並べる事でゲームクリアとなる.
本ゲームの大きな要素として, 常時操作可能な通常の
ピースと上手く脳波をコントロールしなければ操作不能
図5
「PUZZLINK」を使用している時の様子
な mind piece がある.mind piece は通常のピースと違
い,mind piece ごとに規定された脳波 (α波, β波) を一
定量出さなければ操作することが出来ない仕様だ. プレ
イヤー達は, α波, β波の出し方として,「α波はリラッ
クスすることで, β波は集中することで発生する」とい
うヒントのみ与えられており, このヒントを元に, お互
いにコミュニケーションを取りながら如何に脳波を出す
か模索する必要がある. これによってプレイヤー間で協
力しないとパズルが完成しないというコミュニケーショ
ン誘発を考えた. また, このゲームはクリアするごとに
ステージが上がるシステムだ. ステージは3つまで用意
されており, ステージが上がるごとにノーマルピースが
減る代わりに Mindpiece を増やしたり, メロディの試聴
回数が減ったりなど, 難易度が上がっていく. 完成させ
るためには音感とチームでの協力が必要になり, 楽しめ
るゲーム内容となっている.
脳波の取得および解析を行う mindwave とデバイスの
プログラムとして Processing, コントローラとして Wii
リモコン [8], そして音楽ソフトウェアの GarageBand[9]
と Max を利用した.
3.3 C グループの最終提案「Sound Ripples」
グループ C は, 一対多というコミュニケーション形態
に着目し,「Sound Ripples」というコンテンツを製作し
た. この製作物のコンセプトは,「相手の緊張度, リラッ
クス度を感じてみよう」というものである.
「Sound Ripples」では, まず,mindwave を用いて使用
者の脳波を測定する. 次に, その脳波をもとに使用者の
緊張・集中とリラックスの度合いを調べる. 最後に, その
緊張やリラックスといった内部状態を音楽と視覚表現を
利用して周りの人たちに伝達する.
「Sound Ripples」で用いた音楽表現を以下に説明す
る. 使う楽曲のメロディは,「威風堂々」,「四季より 春」,
「カノン」の 3 曲である. その他の音楽要素である「ベー
ス」,「パーカッション」,「コード進行」も「メロディ」
と合わせて,Max で演奏した. また, コード進行に関して
は, 使用者の脳波状態から推定された「緊張状態」,「通
常状態」,「リラックス状態」を用いて, 聞こえる曲の印
象が脳波の状態に対応するようなコード進行が流れるよ
うに設計した. 例えば,「緊張状態」であれば, スピード
感のあるものや, 気持ちが高揚するといった印象を受け
るコード進行が選出される. 逆に,「リラックス状態」で
あれば, ゆっくりとした, 落ち着いた印象のコード進行
が選出され, メロディと一緒に流れるようにした.
つづいて, 視覚表現についての説明をする (図 6).Pro-
cessing で描画した画面の動作を, プロジェクターを使っ
て, スクリーンに投影する. スクリーンには, 音楽のリズ
ムに対応している波紋と, 楽曲のメロディに対応してい
図4
「PUZZLINK」のユーザーインターフェイス
るバーが映し出される (図 7). 中心から出る波紋の色は
赤, 緑, 青があり, それぞれ先ほど出てきた使用者の「緊
張状態」,「通常状態」,「リラックス状態」に対応して変
化する. 使用者がそのスクリーンの前に立って, 自分の
成されたと考える. スケジュールについても全体でおお
体から波紋がにじみ出てきている様に見えるように設計
まかな流れを決定し, 各グループに詳細を委ねることで
した.
上手く進めることができた. 最終発表では中間発表で指
図 7 は,「初対面の人と握手をしている」写真である.
摘された部分を各グループで考え直し, 余裕をもって発
「Sound Ripples」の使用者は頭に mindwave を装着し,
表に挑めたと思う. 反省点としては, グループ間の共有が
プロジェクターで投影される波紋の色の変化がわかりや
乏しかったことが挙げられる. これは技術や知識を今よ
すいように白衣を身につけている. 初対面の人との握手
りも共有することができれば, より良い制作物の開発が
は脳波の状態が「緊張状態」と算出され, 波紋の色は赤
できたを示唆する. この問題の解決案として, プロジェ
くなり, バックで流れる楽曲の曲調は, 気持ちが高揚す
クトメンバー共通の課題を作る, 類似した課題を取り組
るようなものになる.
む場合はメンバー間でコミュニケーションをとる, など
この音楽と視覚表現によって, 使用者の「緊張とリラッ
が考えられる. また, 制作物については, ユーザーが日常
クスの状態」を周りに伝達するのが,「Sound Ripples」
で使う場面を想像しにくいことや, 制作物のコンセプト
である.
がいまいち聴者に伝わらなかったことである. より多く
のフィードバックを集め, 以上のことに気をつけること
で, 制作物の改良ができそうだ.
参考文献
[1] Processing http://processing.org 2014 年 1 月
10 日最終アクセス
[2]
MAX http://cycling74.com/products/max/
2014 年 1 月 10 日最終アクセス
[3] neurowear http://neurowear.com/news/ 2014
図6
年 1 月 10 日最終アクセス
「Sound Ripples」システム図
[4]
necomimi
http://jp.necomimi.com/news/
index.html 2014 年 1 月 10 日最終アクセス
[5]
mico
http://neurowear.com/projects_
detail/mico.html 2014 年 1 月 10 日最終アク
セス
[6] 集中力でボールが宙に? 新感覚ゲーム「マイ
ン ド フ レ ッ ク ス 」http://www.itmedia.co.jp/
lifestyle/articles/1006/08/news112.html
2014 年 1 月 10 日最終アクセス
[7] NeuroSky http://neurosky.coml 2014 年 1 月
10 日最終アクセス
[8] Wii リモコン http://www.nintendo.co.jp/wii/
features/wii_remote.html 2014 年 1 月 10 日最
図7
「Sound Ripples」を使用している時の様子
終アクセス
[9] GarageBand https://www.apple.com/jp/mac/
4 プロジェクトの成果と今後の展望
1 年間の活動を通して, 前期で知識習得と制作物の考
案, 後期で技術習得と制作物の完成という目標は十分達
garageband/ 2014 年 1 月 10 日最終アクセス