プロジェクト報告書(最終)Project Final Report 提出日 (Date) 2014/01/15 教育・展示用二重振り子の制作 Construction of Double Pendulum for Physics Education and Scientific Exhibition 1011054 仲川知也 Tomoya Nakagawa 1 背景 には、アドバイザーである朝倉俊雄さん、迎山和司先生、 先輩方に協力して頂き加工技術を習得することを課題の 二重振り子とは振り子の先にもう1つの振り子をつけ 設定とした。プロトタイプの材質には加工しやすい木材 た物で力を加えるとカオス性を持った動きを繰り返す を使用して行う。 後期では、前期で制作したプロトタ ことが特徴である。現状二重振り子は運動方程式の学習 イプから得たデータを参考に計測に適した二重振り子の やシミュレータ構築などは行われているが、カオスを理 制作活動を行う。プロトタイプでは木材を使用したが、 解するための教材として使用されるだけである。そこで 後期にはアクリル板を使用して二重振り子を制作するこ 我々は二重振り子で教育また展示に応用できる手段を考 とを課題設定した。また、昨年度に制作された土台から 案することを目的として活動する。また、本プロジェク 改良点を出し、計測に適した振動を抑える土台の制作も トでは、第一剛体に複数の第二剛体が接続していても二 行うことも課題の設定とした。 重振り子と定義している。 2.2 計測班 2 課題の設定と到達目標 計測班は二重振り子の運動方程式の理解、二重振り子 の動きの撮影計測する役割を主に担う班である。 計測 二重振り子の教育・展示用の手段を考案するにあたっ て必要なことは、まず、二重振り子について理解し知識 を得ることと、加工技術を学び実際に制作することであ る。また、教育・展示用ということで相手に興味を引く 形・動きをする二重振り子の制作も同時に行った。そこ で我々は制作班、計測班、プログラミング班の3つの班 を作ることとなった。我々のプロジェクトは4人で活動 しているため、進行状況に応じて4人を振り分け、各班 の課題解決を行った。到達目標は、二重振り子を理解し て教育活用法を考案することである。各班の課題につい て、以下に述べる。 2.1 制作班 制作班は計測用の二重振り子や展示用の二重振り子を 制作する。また、二重振り子に適した土台の制作、これ らの役割を主に担う班である。 前期では、制作班は最 初に、プロジェクトメンバー 4 人で面白い形・動きをす る二重振り子の考案を行う。そして考案した二重振り子 の設計図を作成後し、プロトタイプの作成を行う。プロ トタイプ制作は、我々が実際に二重振り子の動きの確認 を行う。また、制作した二重振り子の動きを確認すると 同時に、加工技術の習得のためである。加工技術の習得 班では実際に二重振り子の位置・速度・加速度・軌跡を 計測・撮影すること、プログラミング班で作成するプロ グラミングに使用する運動方程式の学習を行うことが目 的である。 前期では、プログラミング班のシミュレー タのソースを見やすく簡潔にするために、振り子の運動 である角速度を求めるラグランジュ方程式や近似解を求 めるオイラー法やルンゲクッタ法の数値解析法を学ぶ。 また、二重振り子の軌跡を撮影するためにストロボを使 用し、蓄光テープやダイオードで、光の軌跡を撮影を行 う。 後期では、光センサーとマイコンを使用して、受 光時間差を計測する方法と、発振回路を作り、LED を 二重振り子に取り付けて長期露光撮影で計測する方法を 行う。 2.3 プログラミング班 プログラミング班は二重振り子のシミュレータの構 築、二重振り子の軌跡と周期性が見られるならば周期性 のグラフの作成をする役割を主に担う班である。 プロ グラミング班では計測班で理解した運動方程式からシ ミュレータを構築し、二重振り子の軌跡や運動のグラフ を作成することが目的である。 前期では、計測班で学 習したラグランジュ方程式やオイラー法、ルンゲクッタ プが完成した。これにより二重振り子の動きや仕組みを 法の数値解析法を使用して、二重振り子のシミュレータ 確認することが出来た。この後、制作班は中間発表用と を構築する前に、単振り子のシミュレータを構築を行 して塗装や、蓄光テープによって発表用に加工した。蓄 う。 後期では、前期で構築した単振り子のシミュレー 光テープは第二剛体に張り、発表時に部屋を暗くして、 タを応用して、質点二重振り子のシミュレータを構築を 4つの二重振り子が生むそれぞれの軌跡が見やすいよう 行う。それらを踏まえ最終的に剛体二重振り子のシミュ にした。 後期では、前期で制作したプロトタイプ4つ レータを構築する。その後、制作した二重振り子だけが の二重振り子で得たデータを踏まえ、計測用二重振り子 持つ動きを発見するために、軌跡周期性のグラフや計測 の制作を行った。前期制作した二重振り子はプロトタイ 班で計測したそれぞれの二重振り子の動きをシミュレー プということで材質は簡単に加工することのできる木材 タと照らし合わせる。 を使用したため、摩擦が大きく比較的短期間で止まって 3 課題解決のプロセスとその結果 3.1 制作班 制作班の前期の活動としてまず、面白い形・運動をす る二重振り子の考案から始まった。当初は三次元に動く 球面二重振り子、さまざまな形をした二重振り子の2つ の案がプロジェクトメンバーの間の話し合いで面白いの では、と考察された。そして三次元で動く球面二重振り 子の制作の話を進めていたが、球面二重振り子の機構部 分が複雑でそれを理解する時間や機構部分に使われる材 料が木材などで作る事が難しい点や、竹串やビー玉、糸 などを使ってサンプルを作り動きを見たところ、我々が 想像した第1剛体と第2剛体が複雑に動く振り子でな かったため、プロジェクト開始時に挙げられたもう1つ の案であるさまざまな形をした二重振り子の制作に変更 となった。形の考案はプロジェクトメンバーの 4 人がそ れぞれが考えて設計図を制作した。始めに設計された案 は 5 つであったが、最終的に 4 つに絞られた。S の形を していることから「S 字」 、カウボーイが縄を回している しまった。 そこで後期では、アクリル板を使用した。ま た、前期に使用した材料のボルト、ナット、ワッシャー の他に、 前期使用したスペーサーよりも軸部分を滑ら かで正確に回転させ、 摩擦を減らす材料としてベアリ ングを使用した。 ベアリングは内輪と外輪が別々に回 転するため、内輪内の変動体を受け支え、可能な限り摩 擦を減らし振動を抑えることができる。アクリル板の加 工は前期に学んだレーザーカッターと CAD を使い、ア クリル板二重振り子を制作した。二重振り子制作後は、 計測用の土台制作へと移った。まず、昨年度制作した土 台からどのようにすれば振動が減るかな実験を行い、そ れを基に設計図を作成した。すぐには制作には取り組ま ず最初に発表スチロールを利用して、1/10 の大きさで 模型を制作して本制作を開始した。この土台は振動を減 らす工夫以外にも持ち運びなどの点も考えて制作した。 その後の制作班は計測班で制作した装置を付ける用の二 重振り子の制作を行った。最終報告発表時には、二重振 り子にアクリル板用の塗装を行った。 3.2 計測班 ように見えたから「カウボーイ」 、時計をイメージして考 前期では始め、プログラミング班で制作する単振り子 案したことから「時計」 、イカのイメージをして考案した のシミュレータ制作のために、単振り子の運動方程式の ことから「イカの足」とデザインが決まり設計図を制作 学習を行いました。その内容として静力学、自由落下、 した。その後、加工技術を学ぶためにアドバイザーであ ラグランジュ方程式を学んだ。学習にはプロジェクト担 る朝倉さんのお世話となった。木材の加工技術として糸 当教員の指導の下で行われた。前期では計測する二重振 鋸とドリルの加工技術を学んだ。また、それと同時にア り子の制作がまだだったため、運動方程式の学習後は、 ドバイザーの迎山先生からレーザーカッターの使用法と 計測方法の考案をしていた。ただ、制作班がプロトタイ 先輩方から CAD の使用法を学んだ。その後、二重振り プを制作後は蓄光テープを使用して二重振り子の軌跡を 子の4つのプロトタイプの第一剛体と第二剛体を制作し 撮影を行った。 後期では、制作班の活動が少数で行え た。この後は、第一剛体と第二剛体を繋ぐ接続部分や軸 たため、計測班では計測する方法の考案を本格的に行っ 部分の機構の制作を行った。これにはスペーサー、ボル た。これにより2つの計測方法が考案された。1つは光 ト、ナット、ワッシャーを使用して制作し、プロトタイ センサ2つとマイコンを利用して、受光時間差によって 計測する方法と、発振回路を作り、LED を点滅させた ギー保存の法則が働いていることを確認しながら構築 ものを二重振り子に取り付けて長期露光撮影し計測する していった。そして、目標であった二重振り子のシミュ 方法の2つである。受光時間差による測定は、フォトダ レータとして、剛体二重振り子のシミュレータ構築にか イオードという光センサを利用したもので LED などの かった。剛体二重振り子は、振り子の先端に重りをつけ 光源を感知し、その時間差と向きを測定するもので、そ たように重心が先端にあるのではなく、剛体によって重 の情報は光センサに繋がったマイコンにより計測するも 心の位置が変わる。剛体二重振り子は4次のルンゲクッ のである。実際にプログラムを作成し、回路と組み合わ タ法も学習し構築した。これにより目標であった二重振 せて受光時間差と向きを測定することに成功した。しか り子シミュレータを構築することが出来た。しかし、プ し、二重振り子に取り付けて作動させる技術がなかった ロジェクトの最終目標であった運動のグラフの制作に取 ため、この方法での計測にはいたらなかった。もう1つ り掛かることは出来なかった。 の発振回路による測定は、タイマ IC という半導体を使 3.4 科学祭 用し、抵抗・コンデンサの値によって回路のオンオフす また、我々は2013年8月25日に行われた「はこ る時間が変わるもので、これに LED を取り付けること だて国際科学祭2013」通称「科学祭」に出展した。出 で LED を高速で点滅させる。これを長期露光撮影して 展理由は、二重振り子の面白さを伝えることと教育への 光の途切れている長さから速度を計測する方法である。 活用の可能性を探ることを目的として出展した。出展に これは小型の基盤を制作することに成功した。よって、 向けた取り組みは科学祭の一ヶ月前から企画を始めた。 その基盤を填め込める用の二重振り子を制作班が制作 二重振り子の動きを見てもらえるようにするため、前期 し、実際に撮影することに出来た。しかし、撮影した映 制作した「カウボーイ」のデザインを応用して、射的と 像から速度を測定するまでに至らなかった。 いう形で出展した。射的の内容としては、「カウボーイ」 3.3 プログラミング班 の特徴である第二剛体に和紙をつけて、そこに水鉄砲を 前期では、単振り子シミュレータの構築を行った。使 当てるというものである。応用した点は2点あり、1点 用したプログラミング環境は Processing を使用した。 は前期に制作した二重振り子よりも一回り大きくし制作 最初は振り子の円運動させるプログラムを作った。計測 した。これは射的ということであるため、出来るだけ当 班で学習から振り子の速さが変わるように速度を使い、 てやすくするためのものである。もう 1 点は水鉄砲を 速度を求めるために加速度を、振り子の位置を求めるた 使用するため水に強くするため、二重振り子に防水スプ めに角度を用いてプログラミングを施した。完璧に運動 レーで防水加工を施した。このとき、射的用の二重振り 方程式を理解していなかったため、シミュレータ構築が 子の制作以外にも、昨年度の土台の振動を抑える工夫と 停滞していたが、ラグランジュ方程式やオイラー法を用 防水加工を施した。ここでの工夫が制作班でも述べた新 いて、実際の振り子の運動に近いシミュレータを構築す しい土台制作に活かされた。二重振り子と土台が完成し ることができた。 後期では、二重振り子のシミュレー た後は、みらい大学の事務所から車を貸してもらい、車 タの構築を目標に活動した。プログラミング環境は前期 に詰め込んだ。この時、土台の運搬について考えていな と同じく Processing を使用した。二重振り子の動きを かったため、車のスペースはギリギリであった。この問 理解するために前期に学んだ自由落下の運動方程式、ラ 題は後期の土台制作に活かされることとなった。科学祭 グランジュ方程式、オイラー法を活用し、新たにルンゲ 当日では、射的の係りと前期制作した二重振り子を使っ クッタ法を用いて構築した。最初は、質点二重振り子の て二重振り子についての説明をする係りに分かれて活動 シミュレータ構築を行った。ラグランジュ方程式で導い をした。アンケートも作り、ほとんど人が面白かったと た角速度を時間で微分したものから現在の角度、角速度 答えてくれた。アンケートでは二重振り子の動きが面白 を求め、オイラー法を使用して次の振り子の位置、動き いという答えが多数であった。この科学祭で新たに発見 を計算する手法をとって構築した。この時、シミュレー したアイディア、意見、課題は後期の活動に活かされた。 タが正確に動いているのかを確かめるために位置エネル ギーと運動エネルギーの和が一定になる、力学的エネル 4 今後の課題 制作班は、ユーモラスな形・動きをする4つの二重振 り子を制作した。前期では加工しやすい理由から木材を 使用して二重振り子の動きを実際に確認することが出来 た。しかし、軸部分の加工精度が低かったために歪みが 生じ、計測用には適さなかった。後期では木材からアク リル板へ変更した。これにより計測に適した二重振り子 が制作できた。また同時に振動が少ない土台を制作する ことが出来た。しかし、展示用としての二重振り子と土 台を制作する場合、更に複数の加工技術を習得すること が今後の課題である。 計測班では、運動方程式の学習 することが出来、長期露光撮影することが出来た。しか し、受光時間差による測定が技術的に出来なかった。こ れの改善として制作班と共同で技術の向上を目指すこ とが課題である。また、撮影したものから速さや角速度 などのデータを取り、グラフを作成することも課題とし たい。 プログラミング班は、単振り子・質点二重振り 子・剛体二重振り子シミュレータの構築を無事行うこと が出来た。これからの課題としては構築したシミュレー タから様々なグラフを作成し、作成したグラフと計測で 作成したグラフを比較し、教育に活かすことができる案 を考案することを今後の課題としたい。 参考文献 そ の だ ひさし [1] 園田 久 . 解析力学. 朝倉書店, 1982. み さ わ りょうすけ [2] 三澤 良 介 ほか. システム情報科学実習グループ報 告書、教育・展示用二重振り子の制作. 公立はこだ て未来大学, 2013. もりまさたけ [3] 森正武. 数値解析. 共立出版会社, 2002. [4] 武 蔵 野 電 波. タ イ マ ー IC を 使 っ て み よ う( 最 終 ア ク セ ス:2014 年 1 月 ), http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1023/musashino015.htm. [5] マ ス カ ッ ト. タ イ マ ー IC、555 回 路( 最 終 ア ク セ ス:2014 年 1 月 ), http://www.zea.jp/audio/schematic/sc file/018.htm. 発 振
© Copyright 2026 Paperzz