プロジェクト報告書 (最終)Project Final Report 提出日 (Date) 2013/1/15 函館の未来を拓くトランスファー Future Public Transportation for City Hakodate 1011251 山本真平 1 背景 Masahira Yamamoto まず函館市について知る必要があると考えたからだ.しかし ながら,函館市民全体を調査するには規模が大きく,調査だけ 本プロジェクトは,函館市民の交通が持続的で魅力的なも でプロジェクト学習が終わってしまうと考え,函館市民の中で のにすることを目的として活動した.現在の函館市民の 1 日 も未来大関係者にターゲットを絞って分析した.未来大関係 当たりの車利用数は昭和 41 年から平成 23 年に至るまで増加 者の考えや行動の分析から,持続的で,魅力的な交通のあるべ し続け,公共交通利用者数は減少し続けている.車利用者が増 き姿を提案することとした. 加することで,公共交通の利用客が減少し,赤字路線が生まれ 後期は前期の調査を踏まえたうえで,問題を再定義しなお る.さらに,赤字路線が廃止され,さらに利用客が減少すると し,システムやサービスの実装と評価を行うことを課題とし いった悪循環が起こる.路線がなくなれば,公共交通によって た.前期で問題点を明確にし,後期は提案の実装にすぐ移る 移動できる場所が減少する.公共交通サービスの中でも特に 予定だったが,我々の分析不足により,すぐ実装に至ること バス運行サービスを提供する函館バスは,数多く走らせる系 はできなくなってしまった.そのためもう一度,我々が解決 統のうち36の路線で赤字経営を強いられている.特筆すべ すべき問題点について,再定義するところから後期は始めた. きは,26の路線は函館市内と松前,長万部といったような市 最終的には自分達の仮説が正しいかどうかのフィードバック 外,あるいは平成16年に函館市と合併した戸井,恵山,椴法 を得るために評価を行うことを到達目標とした. 華地域などの郊外路線を運行しているのだが,そのすべての路 線が赤字経営であり,その補填は自治体が担っている. 函館市民の交通を考えると公共交通サービスだけが便利で 使いやすいものとなればよいわけではない.国や市町村に限 らず,人と乗り物のありかたを考え直す必要がある.例えば一 3 課題解決のプロセスとプロジェクトの成果 3.1 課題解決のプロセス 前期の調査から,提案,後期の実装から評価に至るまでの流 れを説明する. 人暮らしの学生が一人一台車を持つというのはとても効率が 講義と KJ 法:初めに教員から本プロジェクトを立ち上げ 悪い.車は最低でも2人乗りが主流であるためそこに一人分 るにあたった経緯と函館の現状,現在進行中のプロジェクトに の余剰ができる.4人乗りの車であれば,3人分の空間を無駄 ついての講義を受けた.この講義から函館市の交通問題や,函 にしている.同じ時間に始まる講義に間に合わせるために4 館市以外の国や市町村で行われている政策について勉強が足 人乗りの車を1人で乗って運転していくことは至極,非効率な りないという現状を把握できた.次に,プロジェクトメンバー のである.交通が持続的で魅力的であるとはどのような状態 全員で交通に関するキーワードを A 1の用紙にポストイット を指すのか函館市民にとって本当に便利な交通とは何かを定 で張っていき,自分達が考えられる範囲での問題や解決策をま 義し直しあるべき姿を企画および実装する. とめた. 2 課題の設定と到達目標 2.1 課題の設定 文献調査と発表:講義や KJ 法を踏まえて函館市で行われ ていた政策や交通の歴史,函館市以外の国や市町村で行われて いる政策や歴史について調べ,発表した.発表から函館市以外 前期は函館市民がなぜ移動手段に車を選択し,公共交通を の国や市町村で行われている制作は,それぞれの国や市町村の 選択しないのかを探求することを課題とした.また,それらを 特色を活かしているためそのまま函館に輸入してくることは 基に持続的で魅力的な交通とは何か考え,それに伴う提案をす 難しいということが判明した.そこで函館の交通の特徴につ ることを課題とした.調査から始める理由としては,函館市に いて調査が必要であると考えた.しかし,函館市全体を調査す とって魅力的で持続的な交通を企画および実装するためには, るとなると,それだけでプロジェクト学習が終わってしまう と考え,函館市民の中でも未来大の関係者に絞って調査を始 らは曖昧な情報や,そもそもの情報量の不足が原因と判断し, めた. 適切な情報を適切な時期に与えれば,車依存思考を脱却し,少 調査と分析:未来大関係者の交通行動を調査するため,アン ケートとインタビューを実施した.アンケートは学生 226 名 しでも他の移動手段に関心をもってもらえると考えた. 前期の調査から,ユーザにとってそれぞれ適した交通手段と を対象に 10 分程度で行った.どの手段で通学するかや,車, は何かを診断してくれるシステムを提案した.システムの内 バス,自転車の移動手段の良い点,悪い点等を調査した.イン 容はユーザが初めに自分の住んでいる場所や性別,体重,趣味 タビューは未来大の教員 4 名,学生 4 名に対して行った.そ などを入力するとその人の現在の生活スタイルを見直すきっ れぞれの移動手段のなかで特徴的なユーザーを深く掘り下げ かけとなるような情報を提示するというものだ.しかし,中間 て調査することとした. 発表でのレビューで様々な指摘を受けた.情報を提示しただ 中間発表から後期:発表では調査から問題発見に至る流れ けでその人の気持ちを動かし,行動を変えるということはでき と発見した問題,それに対する提案を発表した.学生や教員 ないといったことや,設定した問題を解決する打開策となって から,結論に至るまでのプロセスの甘さや,調査の浅さ,提案 いないのではないかと指摘された.さらに,そもそも我々の設 の考察の浅さが指摘された.後期はそれらを踏まえたうえで, 定した問題が未来大生にとって悪いことなのかということも 問題を設定しなおし,システム及びサービスの実装と評価を行 指摘され,再度問題設定を行うことにした. うこととした. 提案の決定:後期の初めに班分けを行い各班で問題を再定 義した.アプリ開発班と,ウェブ制作班,調査班に分かれた. 後期は,前期の調査と中間発表でのレビュー,議論を踏まえ て未来大関係者の移動を効率化するシステムの実装を行った. アプリ開発班は,車を持っている学生と車を持っていない 前期の提案は後期で全て行うことはできないという理由で他 学生の乗り合いを支援するアプリケーションを開発を行った. の提案をそれぞれ行った. アプリ開発班は車依存思考の問題点を「車依存思考故に,学 実装:アプリ開発班は Java と PHP を用いて,アプリケー 生が車を 1 人 1 台もつことによって,車 1 台あたりの輸送 ションの制作に取り掛かった.ウェブ制作班はウェブに掲載 人数が減ること」とし,学生間の相乗りを支援するシステム するためのコンテンツを Illustrator を用いて制作に取り掛 「Hacobi」を作成した(図1). かった.調査班は前期の調査をもう一度整理し,さらなる調査 を進めた.アプリケーションとウェブは予定していたところ まで完成するのに至ることができなかった.開発途中の段階 で発表に望むこととなってしまった. 評価:ユーザ評価テストを行う予定をしていたが,開発が遅 れて行うことができなかった. 3.2 プロジェクトの成果 図1 作成したアプリケーション「Hacobi」 前期の調査から,未来大関係者の交通に関する考え方の問 題点を発見した.後期はそれに伴うシステムの実装を行った. アンケートとインタビューから未来大生の多くは車依存思 考に陥っていると考えられた.車依存思考とは主に次のよう なものである.1 つはその人の健康や目的地までの距離から, 車が最適な移動手段ではないにも関わらず,移動手段に車を選 択してしまう思考だ.2 つは車自体の値段や,車の維持コスト を深く考えずに車を購入,利用してしまうという思考だ.3 つ は一度車を手にしてしまうと,他の移動手段に関心を示さなく なったり,利用しなくなるといった思考である.これらの思 考は,公共交通に対する漠然としたマイナスイメージと車に 対する漠然としたプラスイメージから引き起こされる.それ このアプリによって,未来大生が一人で通学するという非効 率な移動手段を解決することができるのではないかと考えて いる.現状の依頼方法は,クライアントがドライバーに,メー ルや口頭で相乗りを依頼している.しかし毎日このようなや り取りを行うのは,クライアントもドライバーも手間がかかっ てしまう.ドライバーの,毎回時間とメッセージを返信するの が煩わしい,という意見から Hacobi は生まれた. このアプリには大きく分けて「配車」 , 「友達」 , 「ログ」 , 「設 定」の 4 つの機能がある.配車機能は,相乗りを申込みや受 入れを行うことができる.友達機能は相乗りさせてくれるド ライバーや,自分に相乗りを頼んでくる友達を登録・管理でき る機能である.サーバー上に登録されているユーザー ID を検 き,相乗りを申し込みやすい時間を推測することができる.ま 索バーに入力することで,友達を検索することができる.ログ た,予約状況を確認できることによって,配車依頼の過度な集 機能は配車のやり取りの回数を記録することができる.設定 中や分散を避けることができる.時間割や予約状況を参考に 機能は自分の登録内容を確認や修正することができる. して,クライアント側は日時を指定し,依頼を送ることができ Hacobi が持つ 4 つの機能が,第 1 章で述べた従来例の問 る.また,メッセージも送ることができるようになっている. 題点をどう解決していくか説明する.まず Hacobi では友達 クライアントから配車依頼を申請されると,ドライバー側に に相乗りを依頼し,相手がそれに返答し実際に相乗りできるま 配車依頼通知が届く.内容を確認し,受付可能であれば,依頼 での一連の流れを,画面上のボタンをタップするだけで行う 受領ボタンをタップする.受付不可であれば,依頼拒否ボタ ことができる.依頼時に待ち合わせ場所やその他備考をメッ ンをタップすることで,依頼をキャンセルすることができる. セージとして入力もできるが,メッセージを入力しなくとも依 拒否理由などを依頼者に伝えたい場合は,その旨を記載し依 頼を申し込むことができる.常日頃からドライバーとクライ 頼者に送ることもできる.クライアント側には依頼が受領さ アントの関係にある友人同士などでは,毎回返事を返す手間が れても拒否されても,メッセージが届く仕組みになっている. 省くことができる.さらにドライバーとクライアントの両者 このような流れで配車依頼のやり取りが行われる. とも依頼状況を見ることができるため,再確認の手間が省くこ とができる. ウェブ制作班は,新入生のための診断,情報サイトの開発を 行った.ウェブ制作班は車依存思考に陥ってしまう本質的な また, 友達同士では車に乗せてもらうことが当たり前にな 問題は情報の未整理からくるものであると考えた.未来大生 り感謝の気持ちが薄れる, という問題点がある.ドライバーは が交通を便利にするサービスや情報を知らないことで,交通を 友人関係を壊さないためにも, 謝礼を促すことを敬遠するだ 快適に利用できていないことが問題であるとし,交通を便利に ろう.そのためクライアントが自発的にドライバーに謝礼の するサービスや情報を整理し提供することで,ユーザは快適に 気持ちを気づかせる機能がログ機能である.クライアントが 交通を利用できると考えた.さらに未来大関係者の中でも将 どれくらい配車を依頼しているのかをアプリが通知すること 来,未来大学に入学予定の高校3年生は便利な交通サービス で, 自主的に謝礼の気持ちを生じさせることができるのでは や,大学についての情報を知らないのではないかと考え新入生 ないかと考えた.さらにドライバー側の配車のモチベーショ のための生活情報サイト「FUN-DAYS」を作成した(図2). ンの維持に繋がると予想して実装した機能が地域別優良ドラ イバーである.地域別優良ドライバーは地域ごとの配車率の 高いドライバーが順番にランキング形式で表示される.ラン クインすれば自分の名前が表示されるので, 名前を広まり, 異 性からの依頼や信頼が向上することでドライバーのモチベー ションの維持・向上に繋がるのではないかと考えた. アプリを初期起動する際は,ユーザーの情報を入力する必 要がある.自分がドライバーかクライアントを入力するアク 図2 作成したウェブサイト「FUN-DAYS」 ター,名前,ID,居住地区,時間割,通知設定を入力する.こ れらの情報はサーバーに保存される. 配車依頼方法は以下の通りである.Hacobi に登録されてい るドライバーユーザーを友達を申請すると,相手の端末に申請 通知が届くので,承認されると自分の端末に承認通知が届く. 友達登録が完了すると,配車機能の中に先ほどのドライバーが 表示されるので,詳細ボタンをタップすると,依頼画面に遷移 する.ここでポイントとなるのが,ドライバーの時間割と依頼 状況が確認できる点である.ドライバーの時間割を見ること で,クライアント側は登校時間・下校時間を把握することがで 想定しているサイトの利用シーンは,未来大学への入学が 決まっている学生が 3 月に自宅のコンピュータから未来大学 の公式ホームページを観覧している際に,新入生用のこのペー ジのバナーを発見し,強い目的意識は持たずにバナーをクリッ クする,というものである.入学を 1 ヶ月前に控えているこ とから,未来大学の学科やコースに関する情報はある程度得て いると考えられる.また,入学前は実家で家族と過ごしている ことが多いため,ユーザー本人だけでなく家族とも相談しなが ら利用するシチュエーションが想定される. サイト内のメインコンテンツは,写真 2 択による診断であ とが認知的に伝わることを考え作成した.またそれによって る.6 つのシチュエーションで,ユーザーが自分だったらどの スマートフォンやタブレットで観覧しても拡大せずに利用で ように行動するかを回答してもらい,最終的にユーザーが参考 きるデザインになっている.画面は縦が短い長方形になって にできそうな生活スタイルの先輩を一人表示する.表示され おり,ユーザーがページのスクロールという行為をしなくて るのは実際に存在する未来大学の学生であり,その学生がどの もページを一望できるように作成した.文字のサイズや書体, ような移動手段を用いてどのような生活をしているか,さらに 明度にも認知的な視点でこだわり,見易さという点を重視し 入学してからどのように変化していったのかという情報を表 た.また,写真による 2 択のページで用いた写真は,実際に 示する.ユーザーは未来大学の先輩の生の情報を得ることで 街へ出向き撮影したものである.その理由として,現地の写真 より具体的な生活をイメージすることが可能になると考えら を用いて,実際にユーザーが体験しているような視点で表現 れる.他の先輩もリストから選択して表示することができる するべきであるという考えに至ったからである.位置や角度, ようになっている.写真 2 択に迷ったときのために,回答の 脇に写すものや時間帯を考慮しながら撮影を行った.撮影し ヒントを表示するボタンを配置した.ヒントをひらくと,その た写真を加工し,画像ファイルとしてコードにいれサイトに表 2 択問題に応じた未来大学特有の情報が表示される.ユーザー 示した.ユーザーに情景をより明確に伝えるため,撮影した写 がその情報を参考にして自分の生活をイメージし,2 択問題の 真の画像ファイルをページに大きく表示するようにした. 回答を決めることができるようにすることを目的としたボタ 4 今後の課題 ンである.ヒントページはユーザーの回答をサポートするだ けでなく,非常に重要な情報がまとめられているページであ 今後は2月18日に行われる秋葉原の課外発表会に向けて るため,このサイトで最も重要なページである.未来大学の アプリケーションもウェブサイトも開発を進めていく予定で 立地条件や学生の意識と関連した未来大学特有の情報であり, ある.両者とも最終発表の段階で完成には至っておらず,課外 インターネットで検索しても出てこないという点で,このサイ 発表会まで,誰がどこまで実装するのかを具体的に計画する トの重要性をあらわしているページの 1 つである.これらの 必要がある.また最終発表までに評価まで行うことが出来な 情報は静的なコンテンツであり,常に管理をし続けなければ かったために両システムの有効性が確かめられていない.実 情報が古くなってしまい,新しい情報の追加も円滑に行うこ 際に,ユーザに使ってもらい,評価を受けることで両システム とができない.そのため,本プロジェクトではサイトの情報 が未来大関係者の交通を持続的で魅力的なものとするのかを が自動で更新され変化していくコンテンツを導入した.それ 確かめたい.最終発表でのレビューでは使ってみたいといっ が既存の SNS と連動することで学生が本サイトで得た情報や た意見や,面白いアイディアであるといったポジティブな意見 生活の中で得た情報を発信,または受信することができる「共 が多く聞かれたことから,大いにその効果が期待される.4年 有する」というページである.また,共有されている情報の中 時に研究をする際はしっかりと計画を立てた上で,自分達が で多く登場している語句にハイパーリンクをつけたタグクラ 作ったシステムがどれくらい便利なものかを評価してもらう ウドも導入している.この機能によって情報は常に更新され, ことを大事にそれぞれ研究に励むべきである. ユーザーの求めている情報への導線も作成することができた. 我々は来年度のプロジェクト学習の学生が今年度行ってき サイトはイラストレーターでグラフィックを作成し,html た内容を引き継ぐことを期待してはいない.本プロジェクト と css を活用して作成した.カラフルなデザインにすること は問題発見から課題設定,システムの実装と評価まで一連の研 でユーザーが明るい印象を受け,気軽に利用できることを想定 究プロセスを学ぶ出来ることが大きな特徴である.それらを して作成した.トップページにはサイトの大まかな説明があ 踏まえたうえで,来年度も自ら問題を発見し,課題を設定し, り,サイトの概要を知らずにアクセスした人でも理解できる システムの実装と評価を行って欲しいと.来年度は是非シス ようになっている.また,javascript を用いたグラフィックを テムの評価まで行い,自分達が立てた仮説を検証するところま トップページに大きく配置することで,動的で見ごたえのあ で実行して欲しい.交通という大きなテーマに屈せず頑張っ るページになるように意識した.各ボタンと 2 択の画面で表 て欲しい. 示される写真は大きく表示し,カーソルを合わせることで明 度が変化し,ユーザーに,押せるボタンもしくは画像であるこ
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