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プロジェクト報告書(最終) Project Final Report
提出日 (Date) 2014/1/15
ICT で地域をデザインする -お客様のための使えるシステム構築Regional Design with ICT -Construction of Useful Systems for Customersb1011057 兵藤允彦 Masahiko Hyodo
1 背景
めの努力をしてきた.しかし,制作した予約システムに
ついて,野外劇の会は「公演日とチケット価格設定が管
現在,多くの地域で ICT を用いた地域の活性化が注
理画面上からできない」「各公演日の予約情報が分散し
目されている.例えば長崎県の観光ポータルサイト [6]
ていて探しにくい」といった点で使いにくいと感じてい
がある.インターネットの存在が以前にも増して重要
る.
な位置を占めるようになったことから,サイトの大幅
本グループの目的はチケット予約システムを予約者が
リニューアルを実施した.この効果として,サイトへの
使いやすくし,またシステムを運用している野外劇の会
アクセスが増加した.年間総ページビューは前年から
にも管理しやすくするため,既存のチケット予約システ
36.2.% 伸び,平均滞在時間は 1 分 9 秒伸びている.し
ムを再構築することである.さらに,野外劇を広く知ら
かし現在,函館市ではインターネットを用いた情報発信
せることができるような仕組みを付加することである.
が不十分である.そこで,本プロジェクトでは長崎県の
2.2 イベント班
例のように ICT を用いて地域を活性化できるのではな
函館市近郊では市民団体などによって祭り,講座,体
いかと考えた.
験会などの多くのイベントが毎月開催されている.これ
2 課題の設定と到達目標
らのイベント情報は,函館市近郊のイベント情報は函館
市の公共団体が発行している「ステップアップ」,「ゆぅ
本プロジェクトでは,お客様に使って頂けるようなシ
ステムを構築するスキルを学びながら,ICT を用いて,
市民活動の活性化を目指すことを目的とした.また,こ
の目的を達成するための手段として函館野外劇のチケッ
ト予約システムの構築と函館市近郊のイベント検索サー
ビスの構築を行う.さらに,前期には目的達成のための
技術習得として前期に模擬開発演習も行った.各グルー
プにおける課題の設定と到達目標は以下の通りである.
2.1
野外劇班
「市民創作 函館野外劇」は 1988 年の第 1 回上演以
来,今年で 26 回目を迎えた五稜郭公園で上演されてい
る歴史劇である.出演者全員が自発的に参加するボラン
ティアで構成されており,延べ 1 万人の観客が集まる国
内最大規模の野外劇である.
野外劇は毎年赤字が続き,2013 年度は 2,000 万円の
赤字が生じている.現在はチケットの販売数を増やすこ
とが最も重要な課題である.
この問題を解決するため,2006 年からこの函館野外
劇を運営する野外劇の会は公立はこだて未来大学と連
携し,予約システムを開発することなどで問題解決のた
すかわらばん」といった広報誌で主に発信されている.
函館市地域交流まちづくりセンター (以下,まちセン) の
Web サイト内のイベント情報発信ページでは,講演会
や演劇,コンサートなど多岐に渡る情報を,毎月約 120
件 Web 上で発信している.しかし,まちセンのイベン
ト情報発信ページは目的にあったイベント情報が探しに
くく,イベントを探す人がその人の趣味に合ったイベン
トに出会いにくいという問題点があり,こうした函館市
近郊のイベント情報がうまく周知されていない現状があ
る.つまり,函館にはこうしたインターネット上での情
報発信媒体は少なく,インターネットを利用してイベン
トを探したい人々に,うまく情報を伝えられていない現
状がある.
また,本グループの目的はイベント情報発信の窓口を
広げ,多くの人々にイベント情報を知ってもらうことで
ある.
3 課題解決のプロセスとその結果
3.1
3.1.1
野外劇班
れの機能が具体的にどのような流れで行われているかを
画面遷移図や業務フロー図,ユースケース記述を作成し
現状調査
詳細化した.これらの作業を行った目的は,メンバーの
現状調査では,まず実際に既存システムを調査した.
その後,野外劇の会に現状のシステムで困っていること
をヒアリングすることで問題を洗い出した.次に顕在化
した問題に対してメンバー間で解決策を考え,新システ
ムに必要な機能の策定を行った.
3.1.2
ケース図を作成した.その後,ユースケース図のそれぞ
提案
まず現状調査で策定した機能が本当に必要なのか検討
し,提案するシステムの機能を決定した.
新システムの機能を決定した後に,現段階で考えてい
るシステムの概要について野外劇の会の方へ提案を行う
ため,システム提案書を作成した.また,ドキュメント
だけではなくシステムのプロトタイプを作成することで
本グループが構築しようと考えているシステムを可視化
共通認識を作るため,同時に野外劇の会の方へ説明を行
う際に利用するためである.具体的な機能のほかにシス
テムが満たすべき性能や運用・保守の際に野外劇の会の
方に行って頂きたい内容については,非機能要件として
明文化した.
上記の図や文章等をまとめて要件定義書を作成し,野
外劇の会の方に再びヒアリングを行った.その結果,本
グループが解釈していた野外劇の会の方の要求はほぼ正
しいことがわかった.しかし,提案する機能の中で修正
して欲しい点,更なる要求を胃頂いた.この点について
も新システムに反映させることを約束し.具体的なシス
テム設計に入ることとした.
し説明の際に利用した.その結果,システム提案の際に
いくつかの意見をいただいたが,その意見を反映させる
ことを条件にシステム提案の内容について合意を得るこ
とができた.作成したプロトタイプを図 1 に示す.
図1
3.1.3
プロトタイプ
要件定義
図2
要件定義工程では,提案工程のヒアリングで頂いた要
ユースケース図
求を基に実装するべき機能を明確にした.またこの工程
では最終的に本グループ側で策定した機能や性能につ
3.1.4 設計
いて記載した要件定義書を用いて,本プロジェクトが解
設計工程はプログラムを組む際に必要な共通認識を固
釈した野外劇の会の方の要求が正しいか,また,本プロ
めるために行っている.全体としてはデータベース構造
ジェクトで提案した仕様が野外劇の会の方の要求と合致
を固めるために ER 図やデータ定義書,クラスの関連
しているかを確認するために実施した.
を表すためにクラス図を,オブジェクト間の関連を動的
この工程ではまず,要求を基に,システム化する機能
に表すためにシーケンス図を作成する.現在,ER 図と
が具体的にいくつあるか分かりやすくするためにユース
データ定義書が完成しており,クラス図を作成している
最中である.作成した ER 図を図 3 に示す.
しにくい」,「興味のあるイベントに出会いにくい」と
いった問題点があるのではないかと考えた.
3.2.3 サービスの考案
定義した問題点を解決するために,私たちは”Hako-
Eve”というサービスを提供することになった.この
サービスはイベントを探している人 (以下,エンドユー
ザ) たちが自分にあった検索機能を利用することが可能
であり,また自分の目的にあったイベントに出会えるよ
うになっている.このサービスで提供する検索機能に
は,イベント情報を文字列で探すことができるキーワー
ド検索,カレンダーの日付をクリックしてその日に開催
されるイベントを知ることができる日付検索,カテゴリ
からイベントを探すことができるタグ検索,地図や場所
図 3 ER 図
から探すことができる地図・場所検索の 4 つの検索方法
を考案した.また,イベントとの新たな出会いを提供す
3.2
3.2.1
イベント班
現状調査
る推薦機能を搭載することを考案した.サービス考案の
際に作成した HakoEve ロゴを図 4 に示す.
函館市近郊のイベント情報に関する現状を知るため
に,イベント情報を発信している Web サイトの調査を
行った.その結果,函館市近郊では毎月多くのイベント
がたくさん開催されているが,Web を用いてイベント
情報を探している人にとって,イベント情報を知る機会
が少ないということが分かった.
図 4 HakoEve ロゴ
その Web 調査から結果を踏まえ,イベント情報を多
く発信している 3 つの団体,函館市青年センター様,函
館市文化・スポーツ振興財団様,函館市地域交流まちづ
くりセンター様へヒアリングに伺った.その結果,この
3 つの団体は紙媒体でのイベント情報の発信に満足し
3.2.4 提案
考案したサービスを 10 月上旬にまちづくりセンター
ており,Web を用いた発信にあまり力を入れていない.
様へ提案しにいった所,現在の市民活動情報との差し替
また,主にこれらの団体が主催しているイベントのみを
えと運用を検討して頂くことができ,12 月までにサー
中心に発信していることが分かった.
ビスを実装完了させることを約束した.
3.2.2
問題定義
3.2.5 設計
ヒアリング結果を受け,3 つの団体の中で函館市近郊
設計フェーズでは,データ班,機能班という 2 つの班
のイベント情報を最も多く有しており,Web 上で最も
を組織し,模擬開発演習時の経験を活かして,チームメ
多くのイベント情報を発信しているまちセンに焦点を
ンバーの得意分野を考慮したメンバー構成を行った.
絞って現状の問題点を挙げていくことにした.まちセン
データ班では,HakoEve の機能的な面の設計を行う
の Web サイトの一部に多くのイベント情報を発信して
班であり,構築するサービスの機能を定義し,ユース
いる市民活動情報という Web ページがある.この市民
ケース図や業務フロー図や画面遷移図を作成した.作成
活動情報では,函館市近郊のイベント情報を月に約 120
したユースケース図を図 5 に示す.
件掲載しており,開催日やイベント名,開催場所,外部
機能班は HakoEve の内部処理的なものの設計を行う
リンクといった充実したイベント情報となったいる.し
班で,テーブルの定義を行い,ER 図や SQL 文の作成
かし.この Web ページは「目的にあったイベントを探
を行った.
ト追加作業や主催者追加作業等をして頂いた.その際,
多くの貴重なご意見,ご要望を頂くことができた.
4 今後の予定
4.1 野外劇班
今後は 3 月中旬の納品に向けて,1 月に実装を行い 2
月に試験とマニュアル作成を行う.実装の際にはコー
ディング規約を作成し,その規約をもとにプログラミン
グを行う.テストの際にはテスト計画書を作成し,計画
書に則ってテストを実施する.テスト結果は試験成績表
として記録する.納品の際に野外劇の会様へ提出する
ものとして,本システム・テスト計画表・試験成績表・
エラーメッセージ表・システムマニュアルを想定してい
る.また,要件定義の際にサーバの保守管理等につい
図5
ユースケース図
て,株式会社エスイーシー様と合意をいただくことがで
きなかったため,後日,打ち合わせしなければならない.
3.2.6
実装
4.2 イベント班
実装フェーズでは,サーバ班,クライアント班という
今後は,進捗報告会のときに頂いた意見や要望等を
2 つの班を組織し,この際も模擬開発演習時の経験を活
サービスに反映させる.また,推薦機能においても現在
かして,チームメンバーの得意分野を考慮したメンバー
のものより複雑なアルゴリズムを採用し,よりエンド
構成を行った.また,両班ともにペアプログラミングを
ユーザが興味のあるイベントが推薦されやすいようなも
採用した.実装を行った HakoEve トップページを図 6
のにする.
に示す.
さらに,エンドユーザ向けの検索機能の有用性の確
クライアント班では,主に画面のユーザインター
認をまちセンにて行う予定である.その結果を踏まえ
フェースの実装を担当し,HTML や JavaScript による
HakoEve をより良いサービスに改良するつもりである.
コーディングを行った.
参考文献
サーバ班では,主に機能の内部的な処理の実装を担当
し,PHP によるコーディングを行った.
[1] 長崎観光/旅行ポータルサイトながさき旅ネット,
http://www.nagasaki-tabinet.com/.
しょうだ つ や
の
[2] 掌田津耶乃. オープンソース徹底活用 CakePHP2.1
による Web アプリケーション開発. 秀和システム,
2012.
すずきけんじ
あんどうけんいち
や ま だ なおあき
や
ぎ てるお
やまもとよしゆき
[3] 鈴木憲治, 安藤建一, 山田直明, 八木照朗, 山本義之,
か わ い かつひこ
河合勝彦. PHP 逆引きレシピ. 翔泳社, 2009.
ほしの か ほ
こ
[4] 星野香保子. ゼロからわかる PHP 超入門 Web プ
ログラミングの第一歩. 技術評論社, 2000.
かわいあきお
図 6 HakoEve トップページ
[5] 河合昭男. ゼロからわかる UML 超入門. 技術評論
社, 2012.
たきもとまさゆき
3.2.7
評価
12 月 1 日にまちセンに実装が完了した HakoEve の
進捗報告を行い,評価を頂いた.最初にスタッフの方に
HakoEve が提供する機能の説明を行い,実際にイベン
おおもり く
み
こ
いとうかずお
よ し の じゅん
き た に つよし
[6] 滝本雅之, 大森久美子, 伊藤和夫, 吉野 順 , 木谷 強 .
実例で学ぶソフトウェア開発. オーム社, 2011.