公立はこだて未来大学 2013 年度 システム情報科学実習 グループ報告書 Future University-Hakodate 2013 System Information Science Practice Group Report プロジェクト名 未体験レシピの探求∼食の新世界を目指して∼ Project Name Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ グループ名 グループ C Group Name Group C プロジェクト番号/Project No. 1-C プロジェクトリーダ/Project Leader 駒形憲彦 1011013 Norihiko Komagata グループリーダ/Group Leader 1011161 高橋僚 Ryo Takahashi グループメンバ/Group Member 1011161 高橋僚 1011171 石川哲大 Tetsuhiro Ishikawa 1011196 坂巻賢太 Kenta Sakamaki Ryo Takahashi 指導教員 佐藤仁樹 教授 新美礼彦 准教授 Advisor Professor Hideki Sato Associate Professor Ayahiko Niimi 提出日 2014 年 1 月 15 日 Date of Submission January 15, 2014 概要 本プロジェクトでは, 健康状態,栄養バランス,および料理の色彩を考慮し, レシピ設計支援 ツールにより食材およびその配合量を最適化した.本グループは, 栄養バランスと料理の色彩 が考慮された料理の作成を支援するツールを提案した.我々は、行が食材名、列が栄養素と色 彩情報の行列を作成した.その行列を食材栄養素色彩行列と呼ぶ.入力として、食材栄養素色 彩行列とその目標値を使う.ツールは食材の配合量を出力する.その食材の配合量から調理実 験を行い、栄養バランスと色彩が考慮された料理の作成を支援できることを確認した. キーワード レシピ設計支援ツール, 健康状態, 栄養バランス, 食材栄養素色彩行列 (※文責: 坂巻賢太) -i- Abstract In this project, food ingredients and their quantities were optimized using a recipe design tool taking health condition, nutritional values, and color of foods into account. This group developed a cooking support tool in consideration of nutritional balance and color. We made a matrix which is contained food names as columns and values of nutrient and color as rows. The matrix is called food nutrient with color determinant. The tool uses the matrix and the target value as input. The tool outputs necessary quantities of food. Cooking foods using the result demonstrated that the tool could support a cooking in consideration of nutritional balance and color. キーワード recipe design tool, health condition, nutrient balance, food nutrient with color determinant (※文責: 坂巻賢太) - ii - 目次 第1章 はじめに 1 第2章 提案手法に使われている従来技術 4 レシピ設計支援ツール . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 2.1.1 ブレンド比率 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 2.1.2 遺伝的アルゴリズムを用いた食材配合量最適化 . . . . . . . . . . . . . . . . 5 2.1.3 レシピ設計支援ツールの入出力 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 2.1 第3章 3.1 第4章 4.1 4.2 第5章 提案手法 12 提案の流れ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12 3.1.1 概要・目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12 3.1.2 使用するデータについて . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12 3.1.3 データの作成手順 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13 3.1.4 色彩データについて . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13 3.1.5 システム概要 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14 性能評価 17 レシピ設計支援ツールの性能評価 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17 4.1.1 従来手法とレシピ設計支援ツールの比較 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17 4.1.2 レシピ設計支援ツールの利点・欠点 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17 調理 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18 4.2.1 調理を行うに当たって . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18 4.2.2 調理実験 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 19 まとめ 23 5.1 提案手法の特徴 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 23 5.2 提案手法の位置づけ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 23 5.3 評価 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 24 5.4 発表会 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 25 5.4.1 中間発表会 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 25 5.4.2 アカデミックリンク . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 26 5.4.3 成果発表会 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27 今後の課題 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 28 5.5 参考文献 30 - iii - Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 第1章 はじめに この章では, 本プロジェクトの背景, 従来の手法と提案する手法について述べる. 昨今, 多くの人は, 食生活に問題を抱えており, 摂取する食材や栄養素に偏りがある人が増えてい る.特に一人暮らしが始まる, 大学生・社会人に多く見られる傾向がある [1].本プロジェクトでは, そういった現代人の食材や栄養素の偏りを正すような, 栄養バランスを考慮した創作料理の作成を 支援するツールの作成を目標とした. 本プロジェクトでは, 3つのグループに分かれそれぞれ独自の観点から, 食材の分量を示した, 食 材配合量リストの出力を目指した.グループ A は, ユーザの健康状態を入力し, 健康状態から必要 とされる栄養素を満たす食材配合量を出力することが可能となるツールの作成を目標とした.グ ループ B では, ユーザの最近の食生活, 最近食べた料理名を入力し, 栄養素の偏りを診断する.その 栄養素の偏りを正すような食材配合量の出力が可能となるツールの作成を目標とした.本グループ では, 作成した料理の大まかな色情報を設定し, 一日に必要な栄養素と入力した色情報から食材の 組み合わせを選定する.結果, 栄養素と色が考慮された食材配合量の出力が可能となるツールの作 成を目標とした. 本グループでは, 栄養バランスを考慮するだけでなく, 料理の見た目に焦点を当てて活動した.栄 養素の偏りだけを考慮した場合, 見た目・味などが損なわれるのではないか, と考えた.見た目が損 なわれると, 栄養素が考慮されてあっても, 食欲が沸かない.例えば, 栄養素が考慮されていたとし ても, 見た目が寒色, 青色に近い色だと食欲は沸かない.人が, 食欲が沸く料理の色とは, 一般的に 暖色と言われる.主に, 茶色や・赤色などである [2].そこで, 本グループでは, 食材毎の色情報を取 得し, 栄養素と同様に, 色も考慮した食材配合量の出力を目標とした. 我々の目的に近しい従来手法として, レシピを提案するアプリ, サイトや方法は様々な企業や一 般の方々が, 提案・開発・公開している.以下はその例である. • ウェブサイト – クックパッド [3] – Goo グルメ&料理 [4] – キッコーマンレシピ ホームクッキング [5] – 楽天レシピ [6] – Plated [7] • アプリ – レシピコレクション [8] – 家計簿レシーピ! [9] 「クックパッド」,「Goo グルメ&料理」,「キッコーマンレシピ ホームクッキング」,「楽天レ シピ」といった, 一般ユーザが, 自由に投稿し参加することが可能なレシピサイトでは, 多種多様な, レシピカテゴリに分かれており, その人の要求に合ったレシピを閲覧することが出来る.特徴は, ア Group Report of 2013 SISP -1- Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ カウントを作成すると誰でもレシピを投稿することが出来, そのレシピをネットユーザは誰でも見 ることが出来る.また, そのユーザの状態によって推奨されるレシピがある.例えば, アレルギー や, 糖尿病など, 食べることが出来ない・控えるべき食材を除外・減量したレシピを閲覧することが 出来る.他にも, オンライン宅配等, レシピの提供だけに留まらずに, 事業を展開している. 普及が広まったスマートフォン用アプリとして「レシピコレクション」,「家計簿レシーピ!」 といった, アプリが開発・公開されている.「レシピコレクション」は, 自分で作ったレシピを 入力する.そのデータはウェブサイトに自動的に保存される.この保存されたデータは,E メー ル,Twitter,Facebook, を通して, 友人や家族と共有することが出来る.つまり, 友人や家族とレシ ピの提案をしあう事が可能となる. 「家計簿レシーピ!」というアプリは, ユーザが食材の買い物を 済ませた後の領収書をスマートフォンで撮影し, 入力することで, 買った食材からどのような料理 が出来るか提案をしてくれるアプリだ. 「Plated」というサイトでは, 上のレシピサイトや, アプリとは大きく異なり, ユーザとプロの シェフ間でレシピや作った料理について話し合うことで, 料理を作り上げていく, といったサイト だ.ユーザ同士で, 料理の感想やレシピをを共有したり, レシピに関してプロのシェフに質問を投 げかけ, 助言を得ることが出来る. 従来手法では, 問題点がいくつか挙げられる.以下はその問題点である. 1. ユーザの意見が反映されたレシピを探すのは, 難しい. 2. 目に止まったレシピでも, その食材が手元に無いと料理は始められない.ユーザの条件を反 映させることが難しい. 3. 一般の人でも簡単に投稿が可能なので, 解りづらい表現を用いていることが多々ある.アレ ンジが多い. 4. レシピと一緒に写真の投稿が可能だが, 色合いの悪い写真投稿が多い. 1点目の問題が発生した原因は, その膨大なレシピデータにある.レシピサイトやアプリなどは, 一般の人でも簡単にレシピの投稿が可能な為に, 間違った情報, ユーザには必要の無い情報が多く 見られる.それらの情報は, ユーザが求むレシピを探す上で, 障害となりうるものである.その上, 正しい情報でも, その数は多い.その中からユーザに合ったレシピを探すのは難しい. 2点目の問題が発生した原因は, このレシピサイトのシステムにある.このレシピサイトは, 自 分の食べたい料理のジャンルや, 自分の状態からレシピを検索し, 閲覧するというもので, 主導権は こユーザ側にあるように見えるが, 実はあちらにある.例え, ユーザの目に止まったレシピを作ろ うと思っても, その材料, 専用の器具など要求されているものが無ければ, 再現は出来ない.ユーザ の条件を考慮させることは難しく, 一方的なレシピ提案になっている. 3点目, 4点目の問題が発生した原因は, 一般の人でも自由にレシピ・写真の投稿が可能という 点にある.あくまでも, 一般の人が投稿したレシピなので, 色合いよく, 明るい写真を撮る技術は無 い.そのため, 美味しそうに見えない.ユーザ側としては, 画像を見た際に, 綺麗に写った料理に目 が惹かれる.最悪, ユーザが求むレシピを探す上で, 障害となり得る. Group Report of 2013 SISP -2- Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 本プロジェクトでは, 栄養バランスを考慮した食材配合量の出力を目標としている.しかし, 栄 養バランスを考慮しただけでは, 見た目が損なわれるのでは無いか, と本グループでは考えた.行 を食材名, 列を食材毎の 35 種類の栄養素と色情報から成る食材栄養素色彩行列とその目標値を入 力し, 栄養素と色が考慮された食材配合量の出力を目指した. (※文責: 坂巻賢太) Group Report of 2013 SISP -3- Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 第 2 章 提案手法に使われている従来技術 この章では,提案手法に使われている従来技術について説明する. レシピ設計支援ツール 2.1 レシピ設計支援ツールは,公立はこだて未来大学佐藤 (仁) 研究室で作成されたプログラム (遺伝 的アルゴリズムに基づく非線形スパース最適化ツール [10]) で扱うデータのうち,味に相当する部 分を栄養素に置き換えたものである. • 工程 1:食材集合に栄養素ベクトルを付与した食材栄養素行列,栄養素ベクトルの目標値, プログラムを実行するためのパラメータファイルを入力とし,栄養素ベクトルの目標値に近 い食材配合量が複数記載されているリスト (食材配合量行列) を出力する. • 工程 2:食材配合量行列,食材栄養素行列を入力とし,食材名とその食材配合量が創作料理 の候補毎に記載された創作料理リストを出力する. 以上の工程により,創作料理の候補にどの食材がどれだけ含まれているかが確認しやすい形式のリ ストを得ることができる.食材栄養素行列は日本標準成分表 2010[11] の一部を抜粋 (使用可能食材 37 種の食材名及び栄養素 35 種) したものであり,栄養素ベクトルの目標値は食材栄養素行列に記 載されている栄養素について 20 代男性の栄養摂取基準値 [12] を基に作成したものである. 本グループでは食材栄養素行列,栄養素ベクトルの目標値に食材の色情報 (RGB 値で各要素 0∼ 255) を追加した食材栄養素色彩行列,栄養素色彩ベクトルの目標値を使用した. (※文責: 高橋僚) 2.1.1 ブレンド比率 ここではブレンド比率について説明する.各原料のブレンド比率の最小値と最大値は 0∼10000 の範囲でユーザによりあらかじめ決められており,食材栄養素行列に記載されている.例えば,ブ レンド比率の最小値= 10 と指定された原料は,少なくとも 10g は必ず使用することとなる.ある 原料についてブレンド比率の最大値= 0 と指定した場合は,ブレンド原料として使用しないことと なる.実際の調理において,数百種類におよぶ原料をすべてブレンドすることは品質管理の観点か らも不可能で,せいぜい数種類,多くとも 10 種類程度の原料をブレンドする場合が多い. しかし,使用可能な全ての原料からブレンドする原料を選び,その組み合わせ全てに対してブレ ンド比率を求めるには膨大な計算量が必要になり,一般的にこのような問題は NP 困難となること が示されている.例えば,100 個の原料から 10 個のブレンド原料を選ぶ場合,100 C10 = 1.73103 × 1013 通りの組み合わせが考えられる.厳密に最適なブレンド比率を求めるためには,1.73103 × 1013 通りの組み合わせに対してブレンド比率を計算することになり,実用上不可能である. そこで,一部の組み合わせに対してブレンド比率を求め,これを近似解とする手法をとらざるを えない.このとき,できるだけ広い解空間を効率的に探索し,良いブレンド原料の組み合わせを選 択する必要がある.レシピ設計支援ツールでは,遺伝的アルゴリズムを用いたブレンド原料最適化 Group Report of 2013 SISP -4- Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ により効率的にブレンド原料の最適化を行う. (※文責: 高橋僚) 2.1.2 遺伝的アルゴリズムを用いた食材配合量最適化 遺伝的アルゴリズム (GA) は,1989 年に Goldberg によって提案された最適化問題を解決する ための進化的アルゴリズムである [13] .i 番目の個体 (0 ≦ i ≦ bmax − 1) は染色体に対応するベ クトル gi を持ち,個体の優劣は gi から計算される適応度 Ji で表される.GA は,優秀な個体を得 るために,選択,交叉,突然変異を繰り返すことにより,染色体 gi を改良するアルゴリズムであ る.GA は解空間を大域的に探索できるため,局所解に陥りにくいという特徴を持つ. • 交叉による部分列の交換により効率的な探索を行うことができる. • 複数の解を解集合として扱うため,多様な解を得ることができる. 以上の特徴からブレンド原料の最適化に GA が適している. レシピ設計支援ツールでは,エリート戦略に従い染色体を選択した. • 個体の適応度が高い順に gi をソートする. • g0 ,…,gbmax × (1−r)−1 の個体を残し,gbmax × (1−r) ,…,gbmax −1 の個体を廃棄する. • ここで r は個体数 bmax を更新する割合である. • g0 ,…,gbmax × (1−r)−1 からランダムに 2 つのベクトル gi ,gj を選ぶ. • gi と gj を交叉する. • 交叉後,gi (bmax × (1 − r) ≦ i ≦ bmax − 1) の各要素を確率 pm で変更する (突然変異). • 突然変異を起こした gi の要素の値 使 用 可 能 食 材 集 合 を M̂ と す る .創 作 料 理 の 候 補 と な る 食 材 配 合 量 を ブ レ ン ド 原 料 集 合 Mi (0 ≦ i ≦ bmax − 1) とする. • M̂ の要素数は m̂max である. • Mi の要素数は mmax である. • Mi の要素からなるベクトルをブレンド原料番号ベクトル gi とする. • 無数にある Mi から適応度 Ji の高いブレンド原料集合を抽出する. • 適応度 J を式 (2.1) により定義し,ブレンド原料選択問題を GA を用いて最適化する. J ≡ −wε errT ast − wJc cost (2.1) • ここで, wε は栄養素の誤差 (errT ast) に対する重み,wJc はコスト (cost) に対する重みを 表す. • 栄養素よりコストを重視する場合には,wε < wJc とする. Algorithm1 に GA を用いたブレンド原料最適化の手順を示す. • Algorithm1:GA を用いたブレンド原料最適化 – Step(1-1)g0 ,…,gbmax−1 を初期化する. – Step(1-2) ループ回数=0 とする. Group Report of 2013 SISP -5- Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ – Step(1-3)g0 ,…,gbmax−1 から評価 J0 ,…,Jbmax−1 を式 (2.1) により計算する. – Step(1-4) 評価の値により J0 ,…,Jbmax−1 及び g0 ,…,gbmax−1 をソートする. (Ji > Ji+1 ) – Step(1-5) ループ回数が指定された回数に達すれば終了.そうでない場合,Step(1-6) へ – Step(1-6)N =bmax × (1 − r) とする.g0 ,…,gN −1 を残し,gN ,…,gbmax−1 を廃棄 する – Step(1-7)n=N とする. – Step(1-8)g0 ,…,gN −1 から,2 つのベクトル gi ,gj をランダムに選ぶ. – Step(1-9)gi と gj を交叉し,gn ,gn+1 を作成する.交叉ポイントは 1 から mmax−1 ま での乱数とする. – Step(1-10) 以下の条件を満たさない場合,以下の条件を満たすように,gn または gn+1 を乱数で生成する. ∗ gn ∈ /{g0 ,…,gN −1 } ∗ gn+1 ∈ /{g0 ,…,gN −1 } ∗ gn ̸= gn+1 – Step(1-11)n + 2 ≧ bmax ならば,Step(1-12) へ.n + 2 < bmax ならば,n = n + 2 と して Step(1-8) へ. – Step(1-12)gi (N ≦ i ≦ bmax−1 ) の各要素を確率 pm で変更する (突然変異).突然変異 を起こした gi の要素の値を 0,1,…,m̂max − 1 の一様乱数で決める. – Step(1-13) 以下の条件を満たさない場合,以下の条件を満たすように,gi を乱数で生成 する. ∗ gi ∈ /{g0 ,…,gi−1 }(N ≦ i ≦ bmax ) – Step(1-14) ループ回数を 1 増やして,Step(1-3) へ. • レシピ設計支援ツールの工程 1 の計算に Algorithm1 を用いることで最適化された食材配合 量を得ることができる. (※文責: 高橋僚) 2.1.3 レシピ設計支援ツールの入出力 レシピ設計支援ツールの工程 1,工程 2 での入力は以下の通りである. • 工程 1 – 食材栄養素行列 – 出力する食材配合量の数と食材配合量に含まれる食材数 – 栄養素ベクトルの目標値 – 各食材の最大の配合量,最小の配合量,コスト – プログラム実行のためのパラメータファイル • 工程 2 – 食材配合量行列 – 食材栄養素行列 – プログラム実行のためのパラメータファイル Group Report of 2013 SISP -6- Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ ここで,プログラム実行のためのパラメータファイルについて記述する. レシピ設計支援ツールで使用するパラメータファイルは以下の通りである. • 工程 1 – inparMain.par:プログラム全体に関する項目 – inparMtlSet.par:原料に関する項目 – inparEval.par:評価に関する項目 – inparRsltData.par:途中経過 (評価 J ,栄養素の誤差,コスト,計算時間のみ) 出力条 件に関する項目 – inparIBMNrandom.par:ブレンド原料番号ベクトルの初期化 (random 方式) に関する 項目 – inparIBMNdjudge.par:ブレンド原料番号ベクトルの初期化 (djudge 方式) に関する 項目 – inparIBMNdjudge2.par:ブレンド原料番号ベクトルの初期化 (djudge2 方式) に関す る項目 – inparCBRrandom.par:ブレンド比の計算 (random 方式) に関する項目 – inparNM.par:ブレンド比の計算 (NMM 方式) に関する項目 – inparSDM.par:ブレンド比の計算 (SDM 方式) に関する項目 – inparRBMNrandom.par:ブレンド原料番号ベクトルの更新 (random 方式) に関する 項目 – inparOPCO.par:ブレンド原料番号ベクトルの更新 (一点交叉方式) に関する項目 • 工程 2 – input.par 次に,レシピ設計支援ツールを使用するに当たって変更を加えたパラメータについて説明する.ま た,各パラメータファイルの例を図 2.1-図 2.4 に示す. • inparMtlSet.par – flNameMtlSet:使用する食材栄養素行列のファイル名を指定する. – numElmMtlset:食材栄養素行列で使用されている全食材数にする. – dimTastVec:栄養素の目標値で使用している栄養素の数を指定する. – numBlenSet:出力する創作料理の食材配合量の数を指定する. – numElmBlenSet:食材配合量に含める食材の数を指定する. • inparEval.par – flNameTargetSet:栄養素の目標値が記載されているファイルを指定する. – matWtast:栄養素のベクトルの誤差 ε の重み行列 Wy ((dimTastVec) × (dimTastVec) 行列) • inparMain.par – maxRunTime:最大稼働時間を表す.終了条件を満たさなくても終わる時間を指定す る.主に無限ループ等の処理から抜け出すために設定する. – StopGAcond:終了条件の種類を指定する.ループ回数か時間か適応度かを決定する. デフォルトではループ回数に指定されている. – StopCondVal:終了条件を提示する.回数等,具体的な数値を入力する. – prmodRsltCond:出力タイミングの条件を指定する.ループ回数か時間か適応度かを Group Report of 2013 SISP -7- Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 指定する.デフォルトではループ回数に設定されている. – maxOutputNum:出力する最大回数を決定する. – prmod:出力する条件を設定する.条件となるループ回数,実行時間,適応度を指定 する. • input.par – kizon-row:参照する既存料理の数を指定する. – material:食材栄養素行列に含まれる食材数. – sousaku-row:食材配合量行列に含まれる食材配合量の数. – seibun-file:食材栄養素行列のファイル名を指定する. – sousaku-file:食材配合量行列のファイル名を指定する. – output-file:出力する創作料理リストのファイル名を指定する. パラメータを設定し,プログラムを実行すると,以下のファイルが出力される. ファイルの内容を箇条書きで記述する. • 工程 1 – rsltBlen.dat – rsltBlenDataJ.dat – rsltBlenFin.dat • 工程 2 – sousaku-list.csv 次に,レシピ設計支援ツールの出力ファイルについて説明する. • rsltBlen.dat:途中経過 – ループ回数 – 実行時間 [min.] 評価が良い順に以下の値を出力 – 評価 – コスト – 栄養素の誤差 – ブレンド原料の番号 • rsltBlenDataJ.dat:途中経過 (評価 J ,栄養素の誤差,コスト,計算時間のみ) – 原料の数 – ブレンド原料集合の数 – ブレンド原料の数 – 栄養素ベクトルの次元数 – 初期化方式 – ブレンド比計算方式 – 更新方式 – ループ回数 – 最も良いブレンド原料番号ベクトルの評価値 J – 上位 1/4 のブレンド原料番号ベクトルの評価値 J の平均値 – 最も良いブレンド原料番号ベクトルの栄養素の誤差 Group Report of 2013 SISP -8- Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ – 上位 1/4 のブレンド原料番号ベクトルの栄養素の誤差の平均値 – 最も良いブレンド原料番号ベクトルのコストの値 – 上位 1/4 のブレンド原料番号ベクトルのコストの平均値 – 実行時間 [sec] • rsltBlenFin.dat:計算結果 (食材配合量行列) – ループ回数 – 実行時間 [min.] – 評価 – コスト – 栄養素の誤差 – ブレンド原料の番号 – 食材配合量 – ブレンド原料の総量 – 原料のブレンド比率 – ブレンドした栄養素ベクトル • sousaku-list.csv(創作料理リスト) 食材配合量毎に以下の情報が記載されている.図 2.5 に例を示す. – ブレンド原料の番号 – ブレンド原料の名称 – 原料のブレンド比率 図 2.1 inparMtlSet.par のパラメータファイル (※文責: 高橋僚) Group Report of 2013 SISP -9- Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 図 2.2 inparEval.par のパラメータファイル 図 2.3 inparMain.par のパラメータファイル Group Report of 2013 SISP - 10 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 図 2.4 input.par のパラメータファイル 図 2.5 sousaku-list.csv の例 Group Report of 2013 SISP - 11 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 第 3 章 提案手法 この章では本プロジェクトで開発したプログラムの主な開発内容を述べる. 3.1 提案の流れ この節では本プロジェクトで開発したプログラムの提案の流れを説明する. 3.1.1 概要・目的 色彩が料理に与える影響は大きく,暖色は食欲を増幅させ,寒色は食欲を減衰させるとされてい る.多くの料理店の看板は暖色でデザインされている [2].本グループはそこに目をつけ,料理の 色彩を考慮した未知のレシピを提案することはできないかと考えた. 本グループで開発するツールでは,レシピ設計支援ツールを用いて目標の栄養素を満たすという 目的に加えて,色彩のデータを組み込むことでユーザの望む色に近い色を持った料理をつくること を目的とする. このツールではユーザの情報と作りたい料理の色を入力し,ユーザに適した栄養を持ち,且つ ユーザが望む色彩を持った料理を作ることができる食材配合量を出力する 図 3.1 は本ツールの流 れである.このツールを使用することで,ユーザにとって偏らない栄養素を摂取しながら,ユーザ が望む色彩を持った料理を作ることができると考えた. (※文責: 石川哲大) 3.1.2 使用するデータについて 今回本プロジェクトで使用したレシピ設計支援ツールではそれぞれ正規化された食材栄養素行列 (正規化後)と栄養素ベクトルの目標値(正規化後)が入力として求められる.従って各グループ から 1 人づつがデータ作成担当として集まり,データ班として今回のデータ作成を行った. 前期は楽天株式会社の運営する楽天レシピ [6] のレシピデータを利用して作業を進めてきた.し かし,楽天レシピ のデータベースを利用して作成した料理食材行列は,食材の単位が統一されて いない,レシピ設計支援ツールの入力に不適切な記号や表現が含まれていたために使用しないこと とした.レシピ設計支援ツールの仕様変更に伴い,新たに入力データとして食材栄養素行列(正規 化後)と栄養素ベクトルの目標値(正規化後)が必要になった. 正規化とはレシピ設計支援ツールを用いて利用する際に計算の誤差を無くす為に食材栄養素行列 (正規化前),栄養ベクトルの目標値(正規化前)をそれぞれ栄養ベクトルの目標値(正規化前)で 割ったものである.今回はそれぞれの班が作成した栄養ベクトルの目標値(正規化前)を作成し, そこからレシピ設計支援ツールの入力データとして用いた栄養ベクトルの目標値(正規化後)と食 材栄養素行列(正規化後)を作成した. 今回作成した主なデータである食材栄養素行列(正規化後)を作成にするにあたり,食材栄養素 データについては,前期と同じく文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会報告「日本食品 Group Report of 2013 SISP - 12 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 標準成分表 2010」[11] を利用した.また,栄養ベクトルの目標値として採用する栄養素として,エ ネルギーをはじめとする 35 の栄養素を「日本人の食事摂取基準(2010 年度版)」[12] から一部を 抜粋し,各班が作成するそれぞれの栄養ベクトルの目標値に含まれる栄養素の種類に違いが無いよ うに統一した.その際,ビタミン A やビタミン E など書籍やデータごとに異なる表記や扱いをし ている栄養素が存在することが判明したので「食事摂取基準値早わかり―性・年齢・身体活動レベ ル別」[14] を参考にして本プロジェクト内での栄養素の扱いを統一した. データで使用する栄養素は,エネルギー,たんぱく質,脂質,飽和脂肪酸,n-6 系脂肪酸,n-3 系 脂肪酸,コレステロール,炭水化物,食物繊維,ビタミン A,ビタミン D,ビタミン E,ビタミン K,ビタミン B1,ビタミン B2,ナイアシン,ビタミン B6,ビタミン B12,葉酸,パントテン酸, ビオチン,ビタミン C,ナトリウム(食塩),カリウム,カルシウム,マグネシウム,リン,鉄,亜 鉛,銅,マンガン,ヨウ素,セレン,クロム,モリブデンの 35 種に加え,R,G,B の色彩データ を追加した.データで使用する食材には,本プロジェクトが購入した調理実験で使用する食材を入 力した. (※文責: 石川哲大) 3.1.3 データの作成手順 データの作成作業は,本学の佐藤(仁)研究室で作成されたプログラム,OpenOffice.org Calc, 及びレシピ設計支援ツールのマニュアルを使用して行った.また今回のレシピ設計支援ツールのマ ニュアルやプログラムの制作に携わった同研究室の卒研生の協力を得ながら進めた. データ作成を始める前に,データ作成作業担当者がプログラムやレシピ設計支援ツールのマニュ アルに記載された作業に慣れるため,また,レシピ設計支援ツールのマニュアルが作成されてから まだ日が浅いことから,データの信頼性を上げるためにデータ班全員で演習用に用意された以下の ステップに従い演習を行った. • 各班のデータ作成の班員によるレシピ設計支援ツールのマニュアルにを用いた演習 • 演習中に起きた不具合や発見したバグをレシピ設計支援ツールのマニュアルやデータ編集プ ログラムの作成者に報告 • デバッグ後のレシピ設計支援ツールのマニュアルで食材栄養素行列(正規化前)と栄養素ベ クトルの目標値(正規化後)を作成 当初演習及び不具合やバグの報告は 1 週間程度の作業で終了する予定であったが,メンバーが作 業になれるまでに時間がかかったこと,バグの報告と訂正を行った後再実行を行う等作業に大きく 時間がかかり演習を終わらせるまでに一ヶ月もの期間を消費した.今回演習でデータ作成作業担当 者がマニュアル実行のために行ったデータ編集のための手法などはレシピ設計支援ツールのマニュ アルに追加した. (※文責: 石川哲大) 3.1.4 色彩データについて ここでは,本グループが作成した色彩データについて説明する. 色彩データについては,RGB 形式を用いて色彩を表現することにした.目標値にはユーザが望 Group Report of 2013 SISP - 13 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ む色彩を RGB 形式で入力する.食材栄養素行列(正規化前)にそれぞれ RGB 形式で食材毎に色 彩データを入力した.RGB の数値を栄養素として扱うことで,ユーザの望む色彩を出力すること ができると考えた. 食材栄養素行列(正規化前)に入力した食材毎の色彩データは,食材栄養素行列(正規化前)に 記述された食材の内,調理実験で使用する食材の全てを Google の画像検索エンジンを用いて画像 を収集した.それらの画像から,すぽいと君 [15] という色彩を測ることができるスポイトツール を用いてそれぞれの食材の RGB 形式の数値を得た.この際,食材の画像のうち,皿や装飾などの 部分ではなく,食材の調理後の色彩であると判断できる部分の色彩を使用した.例外として,酒 などの透明色や,酢などの調理の結果色が料理に殆ど反映されないような食材は RGB の数値を (-255,-255,-255) とし,料理の色彩に影響しない設定とした. (※文責: 石川哲大) 3.1.5 システム概要 まず食材栄養素ベクトル(正規化前) (図 3.2) と栄養素ベクトルの目標値(正規化前) (図 3.3) を作成する.食材栄養素ベクトルと栄養素ベクトルの目標値は設定する栄養素の数を合わせる必要 がある.栄養素ベクトルはユーザの性別と年齢を入力することで,その年代と性別が一日に必要な 栄養素に設定する.また,ユーザが設定した色彩データを RGB 形式で末尾に入力する. 次に,作成した栄養素ベクトルの目標値(正規化前)と料理食材行列と食材栄養素行列からレシ ピ設計支援ツールのマニュアルに従って食材栄養素行列(正規化前)を作成する. この時作成した食材栄養素行列(正規化前)に入っている食材が最後に出力される食材配合量に 含まれることになる.この段階で食材栄養素行列(正規化前)の中から必要のない食材を削ること でユーザが使用することができる食材のみを出力することができる. 栄養ベクトルの目標値(正規化前)と食材栄養素行列(正規化前)に正規化を行い,栄養ベクト ルの目標値(正規化後) (図 3.4) ,食材栄養素行列(正規化後) (図 3.5) の二つを作成する. これらのデータに遺伝的アルゴリズムに基づくレシピ設計支援ツールを用いて,栄養素ベクトル とコストを評価関数として,栄養素ベクトルの目標値(正規化後)に近い食材配合量が出力される リストを作成する.ここで,図 3.2-図 3.5 には各データの例を示す. 以下に本グループが調理実験で実際に使用した食材配合量を示す. • 肉類/にわとり/[成鶏肉]/ささ身/生 91.75g • きのこ類/しいたけ/生しいたけ/生 52.4g • 野菜類/(ねぎ類)/根深ねぎ/葉、軟白、生 107.25g • 野菜類/(ピーマン類)/青ピーマン/果実、生 46g • 穀類/こむぎ/[マカロニ・スパゲッティ類]/マカロニ・スパゲッティ/乾 99.5g • 調味料及び香辛料類/(食塩類)/食塩 6.25g • 油脂類/(植物油脂類)/オリーブ油 34.25g • 調味料及び香辛料類/(ウスターソース類)/中濃ソース 133.25g • 調味料及び香辛料類/(ドレッシング類)/マヨネーズ/全卵型 74.5g 出力された食材配合量のリストを元に料理本などを参考にしそれぞれが調理手順を考える.その調 Group Report of 2013 SISP - 14 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 理手順を元に調理を行う.以下は本グループが調理実験に使用した食材配合量に対して考案した調 理手順である. 1. 鍋に水を注ぎ, 沸騰したら塩を入れ, スパゲッティを茹でる.茹で上がり次第ザルにあけて おく. 2. ささ身, しいたけ, ピーマンをそれぞれ適当なサイズに切る. 3. 熱したフライパンにオリーブ油を引き野菜から順に火を通していく. 4. 火が通ったら中濃ソースを適量加える. 5. スパゲッティをフライパンに入れ, 具と絡ませる. 6. 余った中濃ソースとマヨネーズを入れ味をつけて, 盛り付け.オリーブ油, ねぎを散らして 完成. 図 3.1 図 3.2 ツールの流れ 栄養素ベクトルの目標値(正規化前) (※文責: 石川哲大) Group Report of 2013 SISP - 15 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 図 3.3 図 3.4 栄養素ベクトルの目標値(正規化後) 図 3.5 Group Report of 2013 SISP 食材栄養素行列(正規化前) 食材栄養素行列(正規化後) - 16 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 第4章 性能評価 この章では,レシピ設計支援ツール及び調理実験について評価する. 4.1 レシピ設計支援ツールの性能評価 この節では,レシピ設計支援ツールの性能評価を行う. (※文責: 高橋僚) 4.1.1 従来手法とレシピ設計支援ツールの比較 従来手法のうち,レシピサイトとしてクックパッド,スマホアプリとしてレシピコレクション, 専門家によるブレンド比率の調整として Plated を例に挙げ,レシピ設計支援ツールと比較した. 図 4.1 は各手法を 8 つの項目で 4 段階に評価したものである. 図 4.1 4.1.2 従来手法とレシピ設計支援ツールの性能比較 レシピ設計支援ツールの利点・欠点 4.1.1 の内容から,従来手法と比較したレシピ設計支援ツールの利点及び欠点を以下にまとめる. • 利点 – 栄養素最適化の制度が高い. – 専門家によるブレンド比率の調整よりも,レシピ考案にかかる時間が少ない. – 使用食材を限定しやすい. – 料理の見た目が考慮しやすい. • 欠点 – 調理手順を考案する作業を行わなければならない. – レシピサイト,スマホアプリのような手軽さがない. – 食材の分量がわかり難い. – 味の信頼性が低い. Group Report of 2013 SISP - 17 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 以上から,一般ユーザが手軽に利用するにはツールの使いやすさの向上などの改善が必要だが, 専門家が利用すれば,仕事にかける時間を短縮しつつ高い精度でブレンド比率の調整を行うことが できるようになるといえる. (※文責: 高橋僚) 調理 4.2 本プロジェクトでは, 出力された食材配合量を元に, 1年を通して, 第 1 回は 2013 年 7 月 19 日, 第 2 回は同年 10 月 25 日, 第 3 回は同年 11 月 29 日の計 3 回の調理実験, 実食検証を行った.その 内, 第 1 回, 第 2 回の調理実験, 実食検証は, レシピ設計支援ツールのテストを兼ねて行った.この 第1回, 第2回の調理実験, 実食検証から以下の課題点, 反省点が挙げられた. • 調理の手順を事前に考えておくこと. • 器具・食材のチェックリストを作成し, 管理を厳重にすること. • 班員の役割をあらかじめ決めておき, 効率よく調理実験を行うこと. 第3回は, 本グループの目標である, 栄養素だけではなく, 色も考慮した食材配合量を出力するレ シピ設計支援ツールの試運転を目的として, 調理実験を行った. 4.2.1 調理を行うに当たって 調理実験を行うに当たって, 調理に用いる器具・食材のチェックリストを作成した.包丁・ガス コンロ等危険物がある為, 管理はそのチェックリストを用いて厳重に行った. 調理実験には, 以下の条件を満たした学生のみを参加可能とした. • 前日までに嘔吐, 下痢等の症状が無いこと. • 手指にできものや化膿した傷が無いこと. • 爪を短く切っておくこと. • 三角巾, エプロンを着用すること. 以上に加えて, 以下の事を実践し衛生面を厳重にし, 調理実験を行った. • 調理実験室から退出する際, 三角巾, エプロンを脱いで退出すること. • 石鹸を用いて, 両手指, 腕までしっかり洗い, 20秒以上かけて流水で洗い流した. • 調理実験を行う前に, 用いる調理テーブル, 調理器具, シンク, ガス台を除菌してから行った. • 野菜類, 肉類, 魚介類は, 全て使用するまな板を分けて下処理等を行った. • 使用する食材は全て中心部まで火を通した. • 調理が完了した際, 試食をする前に, 検品用として, 料理の一部をとりわけラップで包み, 日 付を記録し, 冷凍保存した. • 使用した調理器具・機材を全て洗剤を用いて洗浄, 濯ぎを行った. • 洗浄, 濯ぎを行った器具の水気をふき取り, 除菌スプレーをかけ, しっかりと乾燥させ片付け を行った. Group Report of 2013 SISP - 18 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 4.2.2 調理実験 本グループでは, 第3回の調理実験を行うに当たって以下の食材配合量を出力した. • 肉類/にわとり/[成鶏肉]/ささ身/生 91.75g • きのこ類/しいたけ/生しいたけ/生 52.4g • 野菜類/(ねぎ類)/根深ねぎ/葉、軟白、生 107.25g • 野菜類/(ピーマン類)/青ピーマン/果実、生 46g • 穀類/こむぎ/[マカロニ・スパゲッティ類]/マカロニ・スパゲッティ/乾 99.5g • 調味料及び香辛料類/(食塩類)/食塩 6.25g • 油脂類/(植物油脂類)/オリーブ油 34.25g • 調味料及び香辛料類/(ウスターソース類)/中濃ソース 133.25g • 調味料及び香辛料類/(ドレッシング類)/マヨネーズ/全卵型 74.5g 正確に食材配合量を計量し, 調理を行った. 以下はその調理の手順となる. 1. 鍋に水を注ぎ, 沸騰したら塩を入れ, スパゲッティを茹でる.茹で上がり次第ザルにあけて おく. 2. ささ身, しいたけ, ピーマンをそれぞれ適当なサイズに切る. 3. 熱したフライパンにオリーブ油を引き野菜から順に火を通していく. 4. 火が通ったら中濃ソースを適量加える. 5. スパゲッティをフライパンに入れ, 具と絡ませる. 6. 余った中濃ソースとマヨネーズを入れ味をつけて, 盛り付け.オリーブ油, ねぎを散らして 完成. 図 4.2 は調理の様子である.図 4.3 がこの第 3 回の調理実験で調理された料理である. 調理実験を終え, 実食実験を行った.図 4.4 は, その様子である.我々のグループでは, 栄養素だ けではなく色のバランスも考慮することは出来るが, 味を考慮することが出来ない.そのため, 味 は未知であった.実食検証の結果, 今回出力された食材配合量を見て解るとおり, 中濃ソースの味 が強い中にマヨネーズの風味が足されて, 焼きソバのような味となった. この第3回の実験は, 美味しい料理の作成に成功したが, 第1回, 第2回の調理実験のテスト段階 で作成した料理は, 美味しいと言えるものは出来なかった. この第3回の調理実験は, 第1回, 第2回の調理実験のテストで発生した課題点・反省点を以下の ように活かして行った. • 計算結果の報告書を作成し, 調理手順をあらかじめ記載した. • 器具・食材のチェックリストを作成し, チェックを行った. • 班員の役割をあらかじめ決めておいた. 課題点, 反省点を活かして行ったことで, 第 3 回の調理実験は以下のように改善された. • 計算結果の報告書を作成し, 調理手順をあらかじめまとめておく事で, その場で調理手順を Group Report of 2013 SISP - 19 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 考案する必要がなくなり, 非常に効率よく調理を行う事が出来た. • 器具・食材のチェックリストを作成し, チェックを行う事で, 素早く食材の計量をすることが 出来た. • 班員の役割をあらかじめ決めておくことで, 調理時間の短縮, 効率化された. (※文責: 坂巻賢太) Group Report of 2013 SISP - 20 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 図 4.2 第 3 回調理実験 調理 図 4.3 第 3 回調理実験 料理 Group Report of 2013 SISP - 21 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 図 4.4 第 3 回調理実験 実食 Group Report of 2013 SISP - 22 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 第5章 まとめ この章では,本プロジェクトの活動の総評を述べる. 5.1 提案手法の特徴 本プロジェクトでは,健康状態,栄養バランス,および料理の色彩を考慮し,レシピ設計支援 ツールにより食材およびその配合量を最適化した.レシピ設計支援ツールは,行を食材名,列を食 材の栄養素とする食材栄養素行列と,栄養素ベクトルの目標値を入力とし,食材配合量が複数記載 されたリスト (食材配合量行列) を出力するプログラムである. レシピ設計支援ツールは栄養素による食材配合量の最適化をコンピュータで行うため,専門家な どが最適化を行う場合などよりも格段に速く食材配合量を得ることができる特徴がある.これによ り,専門家が多大な時間をかけて行ってきた仕事の負担を減らすことが期待できる. 本グループでは,料理の色彩を考慮する手法を実現するために活動に取り組んだ.そのために食 材栄養素行列と栄養素ベクトルの目標値,それぞれに食材の色情報 (RGB 値 0∼255) を追加し, 食材栄養素色彩行列,栄養素色彩ベクトルの目標値として,レシピ設計支援ツールの入力とした. 本グループの活動の大きな特徴としては,レシピ設計支援ツールの本来の目的である栄養素で最 適化した食材配合量を出力することに加えて,食材の色情報を用いることで,作成する料理の色も 考慮した食材配合量の出力を目標としたことである.本グループの提案する手法を用いることによ り,栄養バランスが整っているだけでなく,料理を食べる人の食欲を促進,あるいは減退させるよ うな料理の作成を支援することが可能になる. (※文責: 高橋僚) 5.2 提案手法の位置づけ レシピ設計支援ツールでは栄養素で食材およびその配合量を最適化している.色情報を栄養素と して扱うことで色彩も考慮できる仕様になっている.料理の色彩は食べる人の食欲に影響を与える ため,栄養素を重視する必要がある場合や食欲を意識的に増減させたい場合などにレシピ設計支援 ツールを利用することができる. 食材配合量を求める計算をコンピュータで行うため,専門化による調整よりも格段に速く信頼性 の高い食材配合量が得られる.しかし,レシピサイトやスマホアプリのように誰でも利用できる手 軽さはなく,得られた食材配合量から作られる料理の味や見た目はユーザの調理に大きく左右され るため,ユーザ側にもある程度の知識や技術が必要である.そのため,一般ユーザが利用するより も,専門家が仕事の補佐を目的として利用する方が向いているといえる. 以下にレシピ設計支援ツールの活用が期待できる場所,場面を示す. • 主に専門化が対象 – 初等教育機関,一部中等教育機関で提供される学校給食. – 病院や介護施設で提供される食事. Group Report of 2013 SISP - 23 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ • 主に一般ユーザが対象 – 弁当など彩を考慮した料理を作る必要がある場合. – ダイエットなどで食事の摂取量を減らしたい場合. – 特定の栄養素の摂取量を多く,もしくは少なくしたい場合. (※文責: 高橋僚) 5.3 評価 従来の手法では, 以下の問題点が挙げられた. 1. ユーザの意見が反映されたレシピを探すのは, 難しい. 2. 目に止まったレシピでも, その食材が手元に無いと料理は始められない.ユーザの条件を反 映させることが難しい. 3. 一般の人でも簡単に投稿が可能なので, 解りづらい表現を用いていることが多々ある.アレ ンジが多い. 4. レシピと一緒に写真の投稿が可能なのだが, 色合いの悪い写真投稿が多い. 1点目は, ユーザの意見が反映されたレシピを探すのは難しいという点である.これは, レシピ のデータが非常に多い, 一般の人の投稿が可能な為間違った情報, レシピが多い, といった点が原因 となっている. 「クックパッド」では, 課金という形で, 機能の拡張を行うことが出来るのだが, 人気 順でソートを行ってもそのユーザの意見, 状態を反映させたレシピを探すのは難しい. 2点目は, 目に止まったレシピでも, 食材が手元に無いと料理が始められない, ユーザの条件を反 映させるのは難しいといった点である.例え, ユーザの求める味や, 栄養素を多く含むレシピを見 つけたとしても, その食材が無いと料理は出来ない.ユーザの条件を顧みない一方的なレシピの提 案になってしまっている. 3点目は, 一般の人の投稿による混乱についてである.「クックパッド」では, 一般の人の投稿が 自由に行える.非常にメリットが有る反面, デメリットも非常に多くある.一般の人が投稿したレ シピをいくつか見れば解るが, 凝りすぎている, アレンジを加えすぎているレシピが多々ある.誰 でも投稿は可能でも, 誰でも作れる訳ではない.ユーザの料理スキルが必要以上に要求されるレシ ピが存在する.それに加えて, 記号や顔文字などを至るところに用いた文章で, ユーザを混乱させ るレシピが多い. 4点目は, 色合いが悪いといった点である.「クックパッド」では, 誰でも自由にレシピの投稿が 可能な点に加え, 料理の写真も投稿が出来る.しかし, 色合い良く, 美味しそうに見える写真という のは少ない. これらの点を, 本グループの提案する手法では, 以下のように改善される. • 食材栄養素色彩行列に編集を加えることで, 今ある食材から食材配合量の出力が可能.ユー ザの条件, 状態を顧みた食材配合量の出力が可能. Group Report of 2013 SISP - 24 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ • 栄養素だけでは無く, 色も考慮するため, 色合いの良い料理を作成することが可能. • あくまで出力するのは, 食材配合量なので, 無駄なアレンジが無い. だがしかし, 従来手法と比較して提案手法の欠点は以下の点が挙げられる. • 本提案は, 食材配合量の出力で, ユーザの料理の作成を支援するツールとなっている為, 調理 手順・味は考慮されていない. • ユーザの状態, 条件を入力する必要があるため, 時間を使う. これらの悪い点, は全て今後の課題点として, 改善, 実装していく. (※文責: 坂巻賢太) 発表会 5.4 この節では,本プロジェクトが参加した発表会についての詳細を述べる. (※文責: 石川哲大) 5.4.1 中間発表会 2013 年 7 月 12 日に公立はこだて未来大学にてプロジェクト学習の中間発表を行った.中間発表 の準備は 11 月の上旬から行った.以下に中間発表会で使用した各種発表資料の準備内容を示す. • スライド発表用の資料として,このプロジェクトの概要,目的,各グループの進捗状況,今 後の予定,使用する調理場そして開発するシステムの説明を記載したスライドを作成した. • ブースに配置するポスターとして,メインポスターが 1 枚,グループ毎の説明を記述したサ ブポスターが 3 枚の計 4 枚を作成した. グループでは, グループポスターとしてサブポス ターを一枚作成した. サブポスターには本グループの概要や活動内容,課題点,今後の予定 を記述した. 発表会では,スライド利用してプロジェクトの前期の活動成果を発表した.発表の際,プロジェ クトの概要や前期の成果,レシピ設計支援ツール の前半部分と今後使用する調理場や今後のスケ ジュールの後半部分の 2 つに区切りそこに 1 人ずつ割り当て,それぞれ発表した. 発表前のプロ ジェクトの時間に,表内容について以前作成した原稿の修正や話合いをした結果,プロジェクトの 目標や今後の予定についてはきちんと発表を出来た. プロジェクトの全体の目的とレシピ設計支援 ツール,前期までの活動,以降の予定について発表した. 中間発表会では以下のコメントを得た. 得られたコメント • 実際に調理したものが見たい • 具体的な進捗がわかりにくい • レシピ設計支援ツールの説明が足りない,わかりにくい • 目標が曖昧 • スライドがわかりにくい Group Report of 2013 SISP - 25 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ • 料理をユーザ間で共有できると面白そう 発表のコメントとしてプロジェクトの目的・内容について興味を持ったなど関心を持ってくれる コメントが多く,その上で内容がわかりにくかった,難しい,実際に調理の結果などの出力をみた いなど発表までの準備不足や進捗の遅れから,発表を見てくれた方に上手くプロジェクトの内容を 伝えることができなかった. また,発表態度についてのコメントも得られた. • 相手を見て話すべき • 声が小さい 以上のような発表の技術の低さを指摘するようなコメントもあった.これらは発表者の意識を変 え,発表練習を徹底することで改善した. 全てのコメントを通して実物をみたい,成果物が無いためわかりにくいという意見が多かったた め,後期では調理実験を多く行うことでそれらの改善を目指した. (※文責: 石川哲大) 5.4.2 アカデミックリンク 2013 年 11 月 9 日にで行われたアカデミックリンクに参加した.アカデミックリンクとは,函館 市青年センターにて行われた函館市内にある8つの大学・短大・高専の、学生・教員らが持つ「体 験」 「発想」 「探求心」から生まれる様々な研究を一般・地元企業の方々への発表,また各研究テー マの協力・連携の可能性を探ることを目的としたイベントである.このアカデミックリンクにて 様々な視点からのコメントをもらうことができた. アカデミックリンクでは中間発表で使用したポスターと,第 2 回の調理実験までの写真を使用し 発表,解説を行った.解説の流れは,レシピ設計支援ツールの簡単な解説と,プロジェクトの各グ ループの概要を説明.その後,調理の実験の様子を写真を交えながら解説し,質疑応答を行った. アカデミックリンクでは質疑応答を通して以下のコメントを得た. 得られたコメント 1. 料理を複数作ることができるように出力して欲しい. 2. 使用する材料を個人でカンタンに変更できるようにして欲しい. 3. 材料を選ぶ際に「∼風」の料理から選べるようにしたら面白いのでは? 4. 調理実験するときに盛りつけにもこだわって欲しい. 5. 色彩を意識するなら皿などの外部の色も変更してみては? 6. 栄養士に提供するツールとしてもいいかもしれない. 技術者視点からのコメントだけでなく,利用者視点でのコメントを多くもらうことができた. 1のコメントについては,レシピ設計支援ツールは指定した数の食材配合量の組を出力すること ができるため,対応が可能である. 2のコメントについては,現在は食材については使用者が操作することができないが,今後必要 となる機能である. 3のコメントについて, 「∼風」と記載されている既存料理のデータを作成していたが,レシピ設 Group Report of 2013 SISP - 26 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 計支援ツールにそのような選択する機能がないためレシピ設計支援ツールの拡張が必要であった. 4と5のコメントについて,料理の色彩に注目しながらも第一回,第二回の調理実験の際は使用 する食器に拘っておらず,必ず改善しなければならない指摘だと捉え,第三回の調理実験の際には 皿と料理の盛り付けにも注目した. 6のコメントについては,実用化を目指す上では良い目標設定になると考えた. (※文責: 石川哲大) 5.4.3 成果発表会 2013 年 12 月 6 日に公立はこだて未来大学にてプロジェクト学習の最終発表を行った. 成果発表会の準備は 11 月上旬から行った.以下に中間発表会で使用した各種発表資料の準備内 容を示す. • スライド発表用の資料として,このプロジェクトの概要,目的,各グループの進捗状況,今 後の予定,使用する調理場そして開発するシステムの説明を記載したスライドを作成した. 中間発表のコメントを元にスライドの改善を行った.補助用のスライドには基本的に後期に 行った活動について記載した. • ブースに配置するポスターとして,サブポスター2枚, (レシピ設計支援ツール等を含む)メ インポスター3枚を作成した. 発表会では,スライド利用してプロジェクトの活動成果を発表した.発表について本グループは 前半に一人,後半に2人と分かれて発表を行った.発表内容はプロジェクトの概要,一年を通して の活動とレシピ設計支援ツール,グループでの活動,調理実験の結果である.また,第三回の調理 実験で作った料理を冷凍保存し,それを解凍したものを展示した. 成果発表会では以下のコメントを得た. 得られたコメント • 声も大きくスライドも見やすかった • スライドに画像が使われていてわかりやすかった • 声の大きさはいい • 実際に調理したものもあってよかった 中間発表の時に比べて,発表態度について良い印象を持つコメントを頂いた. • 時々言うことを思い出すのに時間がかかっていた • スムーズな発表を心がけたほうがいいと思います しかし,声量などは改善されたが,発表を通して見た場合だとまだ途中で詰まってしまい未熟で ある点を指摘された. また発表内容について以下のコメントを得られた. • 見た目も大事だが味も重要である • プロジェクトの目標は本当に達成されたのか? • 料理はほんとうに美味しかったのか Group Report of 2013 SISP - 27 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ • 調理の手法が乏しい • スパゲティ以外は作れるのか? • 味と使う素材を分けて考えておいしい味を出せるアルゴリズムが考えられる • 具体的にどのような数値を入力したかわかりにくい • システム的な「プロトタイプ」があってほしかった 中間発表の時に比べて内容がわからないというコメントは少なかったが,味や達成度の評価の基 準が曖昧であることを多く指摘された.調理実験の写真や実物を見て,ほんとうに美味しいのかと 疑問を持たれることが多く,味の評価が曖昧であることが不信に繋がってしまった.それ以外に も,比較しやすいように調理の際料理のテーマをスパゲティに統一したが,逆にスパゲティ以外は 作ることができるのか.料理の手法が乏しい.などと言った意見が出てしまい裏目に出てしまった 点も反省点である. 現在はまだ使用者を考慮したツールとなっておらず,実際にツールが動いている様子などを見せ ることができなかった為わかりにくいというコメントもあり,実用化を目指すためにも改善が必要 である. (※文責: 石川哲大) 5.5 今後の課題 本グループでは, 栄養だけでは無く, 色も考慮することで, 栄養素と色を考慮した, 創作料理の作 成を支援するというツールの作成を目標として活動した.その活動の中で挙げられる課題は以下の 通りである. 1. レシピ設計支援ツールのインターフェースを改善する. 2. データ作成の自動化をする. 3. 味の評価データを追加する. 4. 食材の配合量だけでは無く, 調理手順も出力する. まず,1 点目は, レシピ設計支援ツールのインターフェースの改善である.本プロジェクトメン バーは,1 年間このレシピ設計支援ツールを用いてきたので, 全く入力, 出力をする際に困ることは 無いのだが, 一般の方々には, 理解し難いシステムの流れになっている.一度, 高校生と引率の教職 員の方々に説明する機会を設け, 本ツールを用いて, 目標値の入力と食材配合量の出力まで一通り 説明と実演を行ったが, 誰一人理解している様子は無かった.インターフェースは, システム開発 において重要視される. 2 点目は, データの作成の自動化である.今回, 我々のグループで, 行が食材名, 列が 35 種類の栄 養素と色情報から成る食材栄養素色彩行列を作成するにあたって, 食材の栄養素と色情報を取得す る必要があった.食材の栄養素に関しては, 全グループより一人ずつ, データ収集班として行動し てもらい, 食材の栄養素行列の作成に取り掛かった.食材栄養素行列は完成し, 本グループでは, そ れに食材毎の色情報を付与し, 本ツールに用いることで, 栄養素だけではなく, 色合いも考慮した食 材配合量を出力しようとした.しかし, 食材毎の色情報の取得方法が, 確立していなかったため, 急 遽, 色情報を取得するツールを作成しようと試みたが, レシピ設計支援ツールで発生するエラーの Group Report of 2013 SISP - 28 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 解決の方に時間と人員を割くことになってしまい, 作成に取り掛かることが出来なかった.今回は, 色情報の取得を, 食材の画像と色見本表と見比べることで大体の値として設定した.今後は, この 色情報の取得方法の確立し, 効率化の為に自動化を図る必要がある. 3 点目は, 味の評価データを追加する必要がある.本グループでは, 1年間, 栄養素と色だけを考 慮した食材配合量の出力を目標として活動してきた.結果, 目標の食材配合量の出力には成功した. しかし, 味に関しては一切考慮されていない.出力されるのは, あくまで栄養素と色を考慮した食 材配合量なので, 味の評価は行わない.これは, 成果発表会の時に多く頂いた意見で, 味の評価は出 来ないのか, 味を関数で管理したら美味しい料理が出来るのではないか, などである.ユーザが求 めているレシピ設計支援ツールの内容は, 栄養バランスだけでなく, 美味しさ, 味の評価も求められ ている.今後, 実装を目指す. 4 点目は, 食材配合量だけではなく, 調理手順まで出力することである.現状, 本プロジェクトで は, 食材配合量までしか出力出来ない.調理手順や, どういった料理が出来るか, といったレシピ情 報は出力するに至っていない.ユーザがその食材配合量を見て, 作れそうな料理を推測し, 調理を 行う, といった手順になっている.本プロジェクトで調理実験を行う際も, 出力された食材配合量 を見て, どんな料理が作れそうか推測し, 調理手順を考えてから行っている.現状, ユーザの調理に 関する知識, 腕が問われる状態のツールとなっている.この課題点も, 発表会において多く頂いた 意見である.今後の課題として挙げられる. (※文責: 坂巻賢太) Group Report of 2013 SISP - 29 - Group Number 1-C Exploring recipe ∼ for a new concept of food ∼ 参考文献 [1] 内閣府 食育推進室. 大学生の食に関する実態・意識調査報告書 http://www8.cao.go.jp/syokuiku/more/research/pdf/syoku-report.pdf/ (2014/1/08 ア ク セス) [2] 大阪日日新聞. 食欲をそそる色の演出 http://www.nnn.co.jp/dainichi/rensai/miotukusi/130301/20130301064.html/ (2014/1/08 アクセス) [3] クックパッド株式会社. クックパッド. http://cookpad.com/ (2014/1/08 アクセス) [4] エヌ・ティ・ティ レゾナント株式会社. goo グルメ&料理. http://gourmet.goo.ne.jp/recipes/ (2014/1/08 アクセス) [5] キ ッ コ ー マ ン 株 式 会 社. キ ッ コ ー マ ン レ シ ピ ホ ー ム ク ッ キ ン グ. http://www.kikkoman.co.jp/homecook/ (2014/1/08 アクセス) [6] 楽天株式会社. 楽天レシピ. http://recipe.rakuten.co.jp/ (2014/1/08 アクセス) [7] Plated. Plated. http://www.plated.com/ (2014/1/08 アクセス) [8] レッドフォックス株式会社. レシピコレクション. https://repicolle.com/ (2014/1/08 アク セス) [9] 大日本印刷株式会社. 家計簿 レシーピ! https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.receipi.pakayo/ (2014/1/08 アクセス) [10] 佐藤仁樹,佐藤雅子, ”遺伝的アルゴリズムに基づく非線形スパース最適化−食材・配合量最 適化問題の解法−,” 信学技法 NLP2013-78, pp. 47–52, Oct. 2013. [11] 文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会報告. 「日本食品標準成分表 2010」. [12] 第一出版編集部. 日本人の食事摂取基準 (2010 年度版). 第一出版,2010. [13] 三宮信夫, 喜多一, 玉置久, 岩本貴司. 移転的アルゴリズムと最適化, 朝倉書店,1998. [14] 女子栄養大学出版部. 食事摂取基準値早わかり―性・年齢・身体活動レベル別. 改訂新版,2010. [15] Vector「すぽいと君」http://www.vector.co.jp/soft/win95/net/se386163.html/ (2014/1/12 アクセス) Group Report of 2013 SISP - 30 - Group Number 1-C
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