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プロジェクト報告書(最終)Project Final Report
提出日 (Date) 2013/01/16
旅するミュージアム
Traveling Museum
b1007154 今野芳章 Yoshiaki Konno
1 背景
今日の展覧会は「誰もが設営できる」といった簡単にできる
4 目標達成へのプロセスの詳細
4.1 キャッチコピーとロゴマーク制作(前期) はじめに私た
ものではない。企画や準備には事細かなデザインプロセスを
ちはキャッチコピーとロゴマークを制作することにした。
経る必要性があり、予算も展示コンテンツの質や量によって
理由としては、プロジェクトや展覧会のアイデンティティ
は、費用のかさむことが少なくない。どのような人でもより手
を構築することによってコンセプトを明確化できるから
軽かつ安価に展覧会を開催できることが望ましい。
である。企業においてもコーポレートアイデンティティ
2 到達目標
を表現するための方策としてキャッチコピーとロゴマー
クを用いることは一般的に行われており、本プロジェク
そこで私たちは、美術館などの敷居の高い空間ではなく、あ
トもこれに倣うことにした。これには指導教員のアドバ
りふれた日常の空間を、「誰でも素敵な展覧会場にデザインで
イスもあり 1 カ月の制作期間を設け、綿密に作業が進
きるようにする」ことを最終目標に設定した。「誰でも」とは、
められた。以下に具体的な手法を記述する。キャッチコ
年齢の高低あるいは予算の大小にかかわらずわけへだてなく
ピーを決定する際には、模造紙を使ってブレインストー
展示を行えることを意味している。その目標を達成するため
ミングを行うことで情報を整理し、重要な言葉を抽出し
に、私たちは標準的なデザインプロセスを導き出し、それをマ
た。さらにその抽出した言葉を画像や記号に変換し、イ
ニュアル化することを課題とした。課題に取り組むにあたり、
メージボードを制作することでロゴマークに使用するエ
今回扱うコンテンツとして、いま知的な単細胞として注目され
レメントを決定した。出来上がったキャッチコピーとロ
ている「粘菌」を取り扱うことにした。
ゴマークはメンバー全員でプレゼンテーションされ、指
3 目標達成へのプロセスの概要
導教員のレビューを受けた後、投票制で最も支持の高かっ
たものにそれぞれ決定した。このことによってひとつの
まず私たちは概念設計として、 キャッチコピーとロゴマー
クを決定し(前期)
、デザインルールの定義(後期)
、安価でコ
ンパクトな展覧会の企画を行った(後期)。次に詳細設計のプ
ロセスに移行した。これまでメンバー全体での活動が主だっ
たが、6 月に展覧会の空間をデザインする「空間デザイン班」、
展示コンテンツを制作する「教材セットデザイン班」、展覧会
の広報を担当する「広報システム班」の 3 つのグループに分
け、作業の効率化を図った。 展覧会のイメージをメンバー全
体で共有したり、展示コンテンツの完成度を高める目的でモッ
クアップ展の企画(前期)をした。 そのモックアップ展の反
省点を踏まえ、空間デザイン班は動線の再設計(後期)をした
。そして、空間設計に関わっていない人でも、よりスムーズに
会場設営ができるよう展示マニュアル(後期)を制作した。11
月には五稜郭タワーアトリウムで展覧会を開催した。
組織としての自覚が高まった。加えてのちに制作するこ
とになる展示コンテンツに統一感が生まれた。
4.2 展示コンテンツ制作(前期) 教材セットデザイン班は展
覧会で展示するコンテンツの制作を行った。今回のテー
マである“粘菌” において、コンテンツから粘菌の ”た
だならぬ力” を感じとってもらうことを目的とし、実
現にあたり視覚的に楽しめるものから、専門的な内容ま
で幅広い客層を想定して制作した。前期に制作したコン
テンツはモックアップとして大学内で展示し、来場者か
らのフィードバックや同プロジェクトメンバーによるレ
ビューによって改善を行った。
4.3 空間デザインの構想(前期) 展覧会を行う会場として、
今回は公立はこだて未来大学のミュージアムを使用した。
展示コンテンツの配置に関して、まずアイキャッチとし
ての動画の配置から決めてから他のコンテンツの配置を
決める。今回の展覧会の動線として、入口の傍に粘菌の
内容及び成果と今後の課題について、プロジェクト全体
様々な種類の写真を置くことにより粘菌に対する興味を
での今後の展開と課題についてという流れで報告を行っ
持ってもらい、次に粘菌の捕食する動画を置くことで更
た。また今後の課題として立てた、赤テント内に収まる
なる興味を持たせようと考える。粘菌に対する興味を写
ような展示コンテンツのイメージを共有してもらうため、
真と動画で持たせた後、クイズへと参加してもらい、粘
発表では赤テントを使用し、空間作りを行った。発表評
菌への知識を深めたいという方への粘菌のライフサイク
価シートの評価について、今回ポスターセッションとい
ルについてのコンテンツと、粘菌で行われている実験に
う発表形式をとった。
ついてのコンテンツを配置する。モックアップ展という
4.8 広報活動(後期) 前期は各班の活動内容をまとめたブロ
ことで、導入として置かれた A3 と A4 の大きさの違う
グを制作したが、情報発信ツールとしては効果がうすい
写真を置き、来場者にどちらが良いかを選んでもらう形
と考え、後期で新たにホームページを制作した。ホーム
にする。
ページの目的は、SNS や展覧会を見て粘菌に対して興味
4.4 広報活動(前期) 広報システム班は、多くの人に展覧会
を抱いた人へ、知識を深めるためのツールと展覧会のコ
についての情報発信をし、広報活動によって展覧会の来
ンテンツの補完を目的として制作した。空間デザイン班
客数を増やすことを目的として活動してきた。その宣伝
が制作したポスターは、学生や函館市民に展覧会を知っ
方法として、7月に学内で行われたモックアップ展覧会
てもらうことを目的として、主に五稜郭地区周辺の小・
では学生をターゲットに、Facebook や Twitter を中心
中学校や高校、大学、飲食店や公共施設などの人の出入
として情報発信をした。
りが多い箇所を中心として 43 カ所に掲示した。さらに、
4.5 モックアップ展の実施(前期) モックアップ展は、後期
去年のはこだて国際科学祭にて設置されたエリアを参考
に開催される展覧会の前に展示方法の模索を行うため開
に、五稜郭タワー方面または五稜郭公園電停付近も追加
催された。空間デザイン案として、子どもから大人まで
で掲示した。プレスリリースは, 展覧会についてマスメ
楽しめる空間にするため、入口に粘菌の写真を配置する
ディアに取り上げてもらい、函館市民へ新聞やテレビを
ことで粘菌に対する興味を持ってもらい、実験などの専
通して広報を行った。マスメディアを用いた理由として、
門的な知識を要する展示物を後半に配置することで、徐々
11 月に開催した展覧会は函館市民がターゲットになるた
に粘菌の知識を身に付けてもらえるような構造にした。
め、新聞やテレビの方が目に留まりやすく、より多くの
改善点として、展示物の設置は対象の目線の高さに合わ
来場者が見込めると考えた。11 月 14 日にプレスリリー
せること、クイズの答えの配置が分かりづらいなどが挙
スを北海道新聞、函館新聞、毎日新聞、読売新聞、朝日新
げられる。
聞、NHK 放送の計 6 社のマスメディアに送った。
4.6 展覧会のレビュー(前期) 展示コンテンツのビジュアル
4.9 展示コンテンツ制作(後期) 後期では修正を加えながら
の質感が統一できていなかったという意見が目立った。
可搬化を視野に入れた制作を行い、制作したコンテンツ
これを受けて、後述するがクオリティコントロールを容
は五稜郭タワーアトリウムにて展示した。教材班が制作
易にできるようにデザインルールを後期に定義した。
した 5 つのコンテンツがある。一つ目はは「これ、ぜん
4.7 中間成果発表(前期) 中間発表では前期に行ってき
ぶ粘菌」で、粘菌に対する具体的な視覚イメージを持って
たプロジェクト学習での活動内容をプレゼンを通して発
もらうため粘菌の写真を貼り合わせた紙媒体5枚をイー
表及び報告を行い、他のプロジェクトの内容の把握とと
ジーバーナー形式にて展示した。掲載した写真は 150 枚
もに交流を図ることを目的としたものである。プロジェ
程度、種類は 30 種程度である。2つ目は、「粘菌どーこ
クトでは今回の発表を通して、本プロジェクトの目的や
だ?」で、小学生以上を対象とした、森の中で探す感覚で
展覧会について、また旅するミュージアムのテーマ、ロゴ
粘菌を探してもらうことを目的としたクイズ形式のコン
マークの制作について、モックアップ展を開催した目的
テンツである。前期は粘菌を隠した大きな写真と答えを
と成果、教材セットデザイン班の活動内容及び成果と今
冊子で用意した。しかし画像の解像度が粗い、冊子が大
後の課題について、空間デザイン班の活動内容及び成果
きいなどの課題が残ったため後期は iPad でクイズを電
と今後の課題について、広報システムデザイン班の活動
子化した。画像の拡大操作や終了時に答えも表示される
ように改善した。3つ目は、「動画」で、粘菌が森の中を
を記載してあり設置時にコンテンツ内容を把握しやすく
動いている様子をジオラマの中に粘菌を仕込むことで再
速やかに設置でき、撤収時にはパッケージに何を入れれ
現し、それをカメラのコマ撮り撮影を用いて動画とした。
ばいいのか把握することができた。また、チェックリス
前期のモックアップ展では ”動画に対する説明が足りな
トがあり物品内容が容易に確認できた。広報班で行った
い” などの課題が見つかったため後期では全て撮影を
各宣伝方法の効果を測定するために、展覧会当日にアン
しなおし、音声によるナレーションを付属した。再生さ
ケート調査を実施した。その集計結果、アンケート回答
れる媒体は可搬化を考慮して iPad を用いた。4つ目は、
者 122 人中 65 人 ( 約 53 %) が、函館市民であり、回答
「粘菌ライフサイクル」で、ライフサイクルは粘菌の生態
者 128 人中 57 人 ( 約 45 %) が、広報班の活動によっ
についてのコンテンツである。文章を読むことができる
て展覧会を知ったという結果が得られた。また、マスメ
人たちを対象とし、前期のモックアップ展で見つかった
ディアへのプレスリリースの結果、北海道新聞、函館新
画質の低さや全体のサイズなどの問題点から、後期では
聞の2社に活動が取り上げられた。従って、函館市民を
画質の改善や全体のデザイン考察、教授の協力のもと文
ターゲットとした展覧会には、会場へ向かう動線上にポ
章の内容の添削を行い改善を行った。展覧会では A0 サ
スターを掲示することや新聞が効果的だということがわ
イズのパネルをイーゼルにて展示した。5つ目は、「迷路
かった。また、SNS でも情報発信を行ったが、今回の展
実験」で、粘菌についてどのような研究が行われている
覧会では高い効果を得ることができなかった。教材班か
のか、どのようなことに役立たれるのかを伝えるための
らは、粘菌そのものを解説する基礎的なコンテンツがな
コンテンツである。”粘菌の賢さを調べる”と “迷路実
かったという指摘があった。手軽に可搬することを意識
験” をテーマに粘菌の実験や研究について解説をし“鉄
しすぎたことが内容不足になってしまい、内容が簡潔に
道網の最適化” にで将来の可能性を紹介した。前期では
なりすぎたという意見もあがった。
文章量や言葉での表現方法について試行し、後期ではそ
れらの内容をイージーバナーにて制作した。
4.10 模型制作(後期) 展覧会のイメージをつかむために原
4.14 最終成果発表(後期) 前期に行われた発表の反省を生
かし、後期に行われた最終成果発表はスライドをしよう
した発表形式を取った。プロジェクトの概要を説明し、
寸サイズを縮小した模型を制作した。空間デザイン案は、
各班の成果と今後の展望を発表した。前期同様に展覧会
前期に行ったモックアップ展と同じように入り口から
で使用した展示コンテンツを会場に配置し、展覧会の雰
徐々に粘菌の知識が学べるように配置を考えた。
囲気を味わってもらった。
4.11 展示マニュアル制作(後期) 空間設計に関わっていな
い人でも、よりスムーズに会場設営ができるよう組み立
て手順を記載した展示マニュアルを制作した。マニュア
ルで評価された点は、展覧会を縮小した模型で表現し、そ
れを写真にしたことであり、マニュアル単体でも空間デ
ザインのイメージを提供することができた。
4.12 パッケージ制作(後期) 安価な輸送を考慮したコンパ
クトなメディア選びを心がけた。展示コンテンツは赤テ
ントに収まるようにまとめ、具体的にはイージーバナー
やイーゼルなどの簡単に運搬、組み立てができるものを
採用した。
4.13 展覧会のレビュー(後期) まずは空間デザイン班のレ
ビューを記述する。展覧会の物品について、展示コンテ
ンツは同じ組み立てツールを用いり、組み立ての容易化
を図ることができた。最終展覧会でのアンケート結果か
ら、梱包方法で評価された点は、パッケージにも物品名
5 結果
展覧会の物品については、展示コンテンツは同じ組み立て
ツールを用いり、組み立ての容易化を図ることができた。最終
展覧会でのアンケート結果から、梱包方法で評価された点は、
パッケージにも物品名を記載してあり設置時にコンテンツ内
容を把握しやすく速やかに設置でき、撤収時にはパッケージに
何を入れればいいのか把握することができた。広報班で行っ
た各宣伝方法の効果を測定するために、展覧会当日にアンケー
ト調査を実施した。その集計結果、アンケート回答者 122 人
中 65 人 ( 約 53 %) が、函館市民であり、回答者 128 人中 57
人 ( 約 45 %) が、広報班の活動によって展覧会を知ったとい
う結果が得られた。また、マスメディアへのプレスリリースの
結果、北海道新聞、函館新聞の2社に活動が取り上げられた。
従って、函館市民をターゲットとした展覧会には、会場へ向か
う動線上にポスターを掲示することや新聞が効果的だという
ことがわかった。また、SNS でも情報発信を行ったが、今回
iPad のコンテンツの質的向上、ポスター類のサイズやイメー
の展覧会では高い効果を得ることができなかった。
ジの統一と調整、旅するミュージアムとしての可搬性の優位性
6 今後の課題、展望
はじめに空間デザイン班の課題と展望について記述する。
課題は、組立てのユニットが細分化できていない、片付けの手
順の記載がなく、展示コンテンツの撤収された状態がわからな
い、展示コンテンツのデザインに統一が一部できていない、ま
た展覧会を遠目でみた場合、どんな展覧会を開催しているか分
からない、との指摘があった。これらの改善案として、自分た
ちで組立て手順の理解し組立ての段取りを決める、コンテンツ
について教材班に意見を述べること、全体のスケジュールの管
理を行うこと、ポスターを目立つ大きさにすることが挙げられ
る。展示コンテンツへの誘導について、来場者に想定した順番
でコンテンツを見てもらえなかった。これらの改善案として、
どのような場所でもどの展示コンテンツからみても楽しめる
展覧会の空間デザインを考えることが挙げられた。
教材班の課題は、展覧会の際に来場者から頂いた多くの疑
問として、粘菌の根本となる性質を問う内容を多く頂いた。そ
のため来場者に教材セットデザイン班が付き添って説明しな
ければならなかった状況が多々出現した。この問題を解決す
るために私たちは、粘菌の根本的な性質を紹介するコンテンツ
を新しく作成することが必要であると考えた。次に今回開催
された展示会の様子から、展覧会の規模に比べ展示物の密度が
少ないことが見て取れた。そのため、さらにコンテンツを増や
す、または一つの媒体で展示していたものを分類ごとに分けて
媒体を増やすなど、既存のコンテンツの展示方法を工夫しコン
テンツの数を増やすことが必要であると考えた。以上の全体
における課題を解決しつつ、それぞれのコンテンツをさらに改
善していきたいと考えている。
つぎに広報システム班の課題と展望について記述する。今
回の広報活動は、全体的に時間の配分が悪く余裕がなかったと
いう意見があった。従って、早めに活動することで更に来客数
に効果が現れると考えられる。また、今回の展覧会では函館
市民をターゲットとし、展覧会場近辺の来客者が多かったが、
遠方に在住している人や更に多くの来客者を見込む場合、どの
ような宣伝方法が効果的かを検討する必要がある。今後の活
動として全国的に展覧会を開催した場合、ポスターや新聞だけ
ではなく、SNS による来客数を増やす必要がある。
今後の予定としては、秋葉原 UDX アキバスクエアで行われ
るプロジェクト学習課外発表会に参加する。そのためには、・
に関する整理を行っていく必要がある。