プロジェクト報告書(最終)Project Final Report 提出日 (Date) 2013/01/16 10 年後の函館の公共交通をデザインする Design of Public Transportation of Hakodate After Ten Years b1010059 藤盛麻美 Fujimori Mami 1 背景 なければ自治体、国からの補助金に頼る道があるが、詰 まるところ国民の血税を不採算路線につぎ込むことが適 公共交通サービスを提供する立場として、市電を管轄 切な処置なのかどうかで議論が巻き起こるであろうこと する函館市企業局交通部、また市内及び郊外路線を運行 は、かつての日本国有鉄道の民営化の顛末を考えれば至 する函館バス株式会社がある。この 2 つの会社のうち、 極当然であると思われる。 特にバス運行サービスを提供する函館バスは、数多く走 らせる系統のうち 36 の路線で赤字経営を強いられてい 2 課題の設定と到達目標 る。特筆すべきは、26 の路線は函館市内と松前、長万部 我々のプロジェクトでは、函館の将来を明るく、活気 といったような市外、あるいは平成 16 年に函館市と合 に満ち溢れるようにすることが可能であるものを提案す 併した戸井、恵山、椴法華地域などの郊外路線を運行し ることを前提条件とした。主に函館市中心部以遠の地域 ているのだが、そのすべての路線が赤字経営であり、そ をターゲットとし、それら地域を移動する多くの人々が の補填は自治体が賄っている。それとは別に、バスの運 時間的制約のかからず、金銭的負担も大きくならないよ 行は天候に左右されることがあり、ひどい雨天の日や、 うな、そして保守、運用を行なう会社も、単独で採算の 冬季になって路面状況が悪化することで、運行時間が大 取れるような公共交通機関を運用するために必要とされ 幅に延びてしまうことが多々発生している。日本国は既 る機械、および運用システムについて、10 年後に実用 に人口減少時代が到来しており、かつ高齢者人口の占め 段階にあるであろう科学技術、また想定されうる社会環 る割合も今後一層増していくことは統計的に明らかに 境を考慮したうえで考案した。そこで、本プロジェクト なっている。それは函館も例外ではなく、人口減少が進 の前期では、函館の10年後の変化を見据え、10年後 行中である。このときに問題となってくるのが、高齢者 の函館の公共交通のあるべき姿を想像し、より多くの市 が自動車を運転することの難しさや、近くに商店、公的 民や観光客に利用してもらえるような公共交通を実現す 機関の無いような郊外、過疎地域において自動車を持た る事を目的とした。解決方法として既存の公共交通の未 ない、持てない人が生活の便をいかに確保するかという 来を創造することが必要である。そこで、既存の公共交 部分で、公共交通の果たす役割はきわめて大きいと考え 通であるバス・市電を10年後も持続可能な公共交通と られる。また、観光客が元町、五稜郭エリアに集中して して運行させ続けるための具体的な解決策の考案を行っ いる理由も、郊外に点在する観光名所に出向く足がない た。しかし、現存する公共交通だけでは函館の公共交通 か、あったとしても観光者のために整備されておらず、 を持続可能なものにできないのではないかと考えた。そ その認知度も低いためであると考えられる。それら問題 こで、今までにない新しい公共交通を導入することでよ に対応するために函館市中心部と郊外、近隣市町村を結 り一層の公共交通の利用者の増加を見込めるのではない ぶ交通網の整備をすることが、問題を解決する方策の一 かと考え、各メンバーで提案を行うこととした。これに つとして挙げられる。しかし、多くの住民にきめ細かな より、公共交通の利用者が増えるだけでなく、年々衰退 サービスを提供するには相応のコストがかかってしま してきている函館市を公共交通により活性化させられ う。そのコストを捻出するための費用は天から降ってく るように、また、自家用車の利用を控えてまで利用した るわけでも地から湧いてくるものでもなく、言うまでも くなる公共交通を目指して本プロジェクトを進めた。し 無く利用者から徴収しなければならない。それでも足り かし、中間発表後に目的を全メンバーで再確認したとこ ろ、利便性や公共交通性に重点を置き、より多くの人が 給食市電による味覚的に、市電路線の延伸で市電を海沿 移動するための手段として公共交通を利用してもらう いを走らせることや路線バスの車内にディスプレイを設 ことに目的を変更した。そこで解決方法としては複数の 置し、過去の景色を投影することで視覚的に、公共交通 提案ではなく、一つの提案を掘り下げていくことで実現 で思い出に携わるような提案をまとめた。 可能性や具体性を高めていった。10年後の公共交通の スライド・モックアップ・ポスターの製作:その後の デザインであるため、現状の問題点だけの改善・解決だ 提案をもとに製作を行い、スライド班が製作したスライ けではならない。かといって理想に過ぎないような現実 ド、ポスター班が製作したポスターをグループ内や担当 性のないものをデザインするだけではいけない。問題を 教員の指導の下、添削を行った。モックアップに関して 解決し、更に将来性のあるデザインをしなければならな はメンバー間で具体的なイメージを共有し、それをモッ い。それをプロジェクト内での提案や発表を繰り返すこ クアップ班が模型として形にした。 とで提案の質を上げ、実際に函館市などの公共交通を運 アンケートの整理:評価内容を学生、教員、一般ご 営する企業等や、実際に利用する市民、観光客が必要で とに分類して表にまとめた。 あると感じさせられるような提案を行う。また、提案だ 中間報告書作成:前期の活動を振り返り、後期の活動 けに留まらず、IT 技術を導入したシステムの一部を構 に活かすために行った。 築も行った。 反省会:各メンバーの意見を出し合うために円で座り 3 課題解決のプロセスとその結果 話し合いを行った。中間発表において、本質的に何が問 題であったかを探るために、評価を参考に後期からの方 3.1 問題解決のプロセス 向修正を行った。その後、本当に必要な物が何であるか フィールドワーク:気づいた点を、その都度各自で を考えるために、問題点の再設定を行い、問題解決の考 ノートに列挙しておき、スライドにまとめ、自己紹介と 察を行った。 ともに他のメンバーに発表した。その際に絵や図を描 プロトタイピング方式:各々で提案した3つの乗り物 き、写真を撮り振り返ること及び伝えるための材料とし を軸にプロトタイプを考え、プロトタイピングし、発表 て用いた。 しあった。 本や Web での情報収集:実際に何が問題であるのか ストーリー考案:作成したプロトタイプの中から公 を明確にするためにフィールドワークでは気づかなかっ 共交通に活かせるであろう提案を選出するために、乗り た他の地域の公共交通との比較を調査しまとめた。観光 物とペルソナ視点で 5 つの利用シナリオを考案した。 客数の減少などが明確となった。 情報収集:最終成果物が決定後、正確な情報を得るた グループの話し合い:随時得た情報を個人やグループ めに函館市の資料を市役所の方から収集した。このこと ごとに投稿することでメンバー間の情報の共有を行っ で正確な情報を得ることができたため、前期よりは論理 た。また、情報の整理を行っていく中で、より多くの人 的に実現可能な提案を行えた。 が公共交通を利用するためにはどうすればよいかを考察 評価及び練習:教授や市役所の方にプレゼンテーショ した。 ンを行った。複数回のプレゼンテーションでその都度、 コンセプト設定:函館には観光客が多く訪れることか 評価を踏まえて改善を行い、最終発表へと至った。実現 ら本プロジェクトのコンセプトを「函館をよりメモリア 可能性を重視してきたため、前期よりも現実的であると ルな街へ」と設定した。また、考察する際のキーワード いう評価を得ることができた。 を「思い出」と設定し、マインドマップを作成すること でアイディアを集めた。 3.2 結果 目的を達成する最終提案物は Links である マインドマップ作成:キーワードの思い出についてマ (図1)。Links とは函館市郊外と中心部を繋ぐシステム インドマップを作成した。味覚と視覚が大きく関わるこ である。情報収集の結果、郊外路線は赤字であることが とが判明し、思い出×味覚という点で給食、思い出×視 判明し、年々利用者が減っていることがわかった。ま 覚という点で景色が結びついた。そこで市電においては た、郊外の公共交通機関はバスのみであり、利用者は時 刻表に縛られて行動しなければならず、バスの遅延で予 表2 収益 定が崩れてしまうことが考えられた。そのためユーザー 運賃 年間の収益 が自由に行動できる公共交通であり、バス会社に利益が 500 円∼2000 円 4∼5 億円 あるシステムを考えた結果 Links というシステムと新し い乗り物を導入することになった。また、導入する乗り 物は 24 時間運行及び呼び出しが可能であり、路線・停 留所を設けない燃料電池で無人運転の乗り物となってい る。Links は郊外で利用し、五稜郭駅付近と函館空港付 近に設置予定のターミナルからバスで乗り換えを行う。 中心部ではバス・市電で移動するシステムだが、バス・ 市電が営業していない時間帯は Links の新しい乗り物 が運行することになる。また、同方向に向かう人で相乗 りができる。この移動アルゴリズムでは複数人に同時に 呼ばれた際のアルゴリズムに関して、函館という特殊な 環境を考慮した際に、より利便性を向上するための方法 の1つとして最短経路アルゴリズムを元としたコスト式 アルゴリズムを用いた。このことから低コストで移動す る事ができ、複数人で乗り合いを行う際に利用者の安価 な移動が可能になる。また、運送システムでは Links で 自立制御運転による無人運行システムを採用しているた め、Web で調査を行った。実際に Google が開発した自 動制御運転の技術では、48 万キロ無事故で走行が可能 なものとなっている。このことから近い将来に実現的な 技術であると考えた [1]。運営コストでは、函館市役所 からの情報を元に具体的な数値を算出した (表 1・表 2)。 このことで、運営可能性及び現在の交通との比較で実現 すべきかを明確にした。 ず最初に、今年度の最終提案であった Links については システムのみを持ち越しとし、運行についての目的、方 法、範囲などについては再検討する必要がある。理由と して、今年度は提案に至ってから最終発表までの期間が 短く、私たちが考えきれなかった部分が多数存在する。 このため、私たちはこの案が Links を用いる上での最善 であると言い切ることができない。よって、次年度では まず Links のシステムを用いて別の見方を行うことから 始めて欲しい。場合によっては前期に提案した、HORS ∠ OPE のような利用法が最善なのかもしれないし、あ るいはさらに他の利用法があるかもしれない。逆に、ア ンケート等で今年度に無人運転に関して実現的でない という指摘が多かったこともあり、運行システム側を残 し、有人車両に戻すという案も考えられる。ここからは 今年度の案を続行する場合について執筆していく。ま ず、Links の運行システムについてであるが、より具体 的な配車アルゴリズムの考案を行わなければいけない。 今年度の発表ではルート上で経由する道それぞれにポイ ントを用意し、それらのポイントの合計値が最も小さい ルートを選択する形になっているが、その場合における ポイントの算出方法を考えなければいけない。一例とし ては、距離、道幅に応じたポイント、交差点及び各交差 点での右左折の数といった基本条件に加え、降雨雪、積 雪状況などを加味したポイント、そこから現在の最小値 を選び出すシステムを制作する必要がある。この場合に 図 1 Links は、さらに各道路の路面状況をリアルタイムに知る必要 があり、その方法についても考える必要がある。さらに 表1 複雑なパターンとなる場合、例えばほぼ同距離別位置の コスト 2 名に同時に呼び出され、かつ Links の空席が 1 枠し Links 水素ステーション 3 億円 4 億円 年間の人件費・維持管理費 かない、というような限定された特殊な場合についても 3∼4 億円 考えておくべきだろう。また、運行拠点についても見直 す必要があると考える。現在は乗り換え用ターミナルが 函館空港付近と五稜郭駅付近となっていたが、北斗市内 4 今後の課題 のバス利用状況や北海道新幹線新函館開業、それに伴う ここでは、本年度の活動内容を元に次年度以降に引き 函館∼新函館間電化、また函館新外環状道路開通を考慮 継ぐべき内容、及びそれに関しての補足をしていく。ま した場所の検討を行っておらず、これらを考慮したター ミナル配置を行う必要がある。具体的には五稜郭駅付近 にて指摘された内容に、タクシーとの全面的な競合が挙 に置くとしていたターミナルを新函館駅周辺へ変更、新 げられる。こちらについては今年度から課題として挙げ 函館から函館市街地への移動には JR を用いるとした られており、発表した運行システム、具体的には Links り、もしくは函館∼新函館間電化に伴う函館圏への近郊 を長距離運用に使い、タクシーのような短距離の移動で 型電車投入により江差線上磯駅付近までの電車投入を予 ない部分をカバーする方たちとなっているのは解決案で 想し上磯駅周辺への設置といった、バス以外の交通手段 あるが、指摘されたということは不十分である可能性が を用いた函館市街地への連絡についても考える必要があ ある。よって、Links とタクシーの間にさらなる棲み分 る。函館空港周辺案についても、現在の函館空港の乗り けを行う必要があると考える。車両に関しては、基本的 入れ本数及び系統、運行方面を考えると函館市民の利用 にはこの報告書に記載されている内容をベースとする しづらい函館空港よりも乗り入れ系統数の多い場所のほ が、数点考えるべき内容があるため触れていく。まず、 うが適切なのかもしれない。また、現在の函館バスの営 無人運転に伴う防犯面についてである。主に支払い時が 業所を元とした各地に Links の待機場所が存在すると 挙げられるが、こちらは完全予約制にすることによって なっていたが、今年度の呼び出し時の目標である 20 分 解決がされると考えている。予約によって利用者は限ら 以内の到達を達成できるような待機場所配置を考える必 れ、それによって誰がいつ乗車したかが管理されるよう 要もある。具体的な待機場所を考えるよりは、待機場所 になるであろうからだ。また、支払い時に極力現金支払 を設置する条件、またその場合の待機台数までを、地区 いを利用しないことによって防ぐことが可能なのではな 世帯数や人口と距離を照らし合わせて行うと良いと思わ いか、と考える。また、夜間利用時などの防犯面につい れる。場合によっては今年度に提示した配車目標時間の ての対策も考える必要がある。つまりまずは Links の 修正を行わなければなるまい。次に、1 台の運行範囲に 内容が具体性と説得力を持つものにすることで、それを ついて。今年度の発表では現在の函館バスの運行範囲を 函館の各団体へと提示していくことによって話が前へと 踏襲した発表となっていたが、それが適切であるかどう 進んでいくものである。結果として今年度提案すること かを見極める必要がある。下図は今年度作成した Links が出来なかった予約関係や Links を利用することによ の運行範囲と待機場所の表であるが、現在の運行範囲と る利用客への金銭面以外の恩恵など、考えられることは している長万部町までの運行範囲は、函館バスが JR 線 それこそ無数にあると思う。一歩ずつ着実に、実現への と競合しており、それら地域から函館市までを結ぶ必要 道を歩んで行ってほしいと願う。 性については考え直す必要がある。駅を基点とし、連絡 参考文献 先を鉄道とする形になる。この場合、乗り換えの時間や 料金等について考える必要がある。上記の新幹線開業に [1] NEC Corporation (2011) 「Google 自 よる函館周辺の鉄道の変化に合わせ、検討し、柔軟に対 動 運 転 技 術 を 開 発 」. 応していく必要がある。最終発表にて指摘された内容の go.jp/committee/kenkyukai/seisan/ 中に、学生の利用などに伴う混雑について挙げられた。 juntenchoueisei/003_02_02.pdf(参 照 2012- 元の用途として、高齢者向けの利用を想定していたこと 10). もあり、今年度の私たちの視点から抜け落ちていた内容 の 1 つとして挙げられる。確かに、市街地外からの通学 は Links の利用対象であるし、彼らにとっての通学は現 在でも時間や料金等の問題が多く生じており、Links を 導入することによって解決できるであろう課題のひとつ である。このような、短い時間帯に大量の利用者が集中 するような場合の対応方法も考慮する必要がある。その 時間帯のみバスの運行を行う、などが考えられるが、根 本的な解決になっていないとも感じる。同じく最終発表 http://www.meti.
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