プロジェクト報告書(最終)Project Final Report 提出日 (Date) 2013/01/16 知能機械技術による施設内案内 Intelligent Machines as Institutional Guides b1010026 泉拓哉 Takuya Izumi 1 概要 衛星を使って位置取得するには電波受信の環境が悪く,位置 情報取得するには不向きである.屋外で使っているナビゲー 本プロジェクトの目的は,知能を持った機械とナビゲーショ ションシステムを高い精度のままにデパートやターミナル ンアプリを組み合わせた知能機械技術を用いて,人が行う案内 駅,空港など複雑で迷いやすい場所で利用できれば便利であ に近づけることである.ナビゲーションとは,人が目的地ま る.そこで最近は,屋内 MAP というものが注目されている. でたどり着けるような案内を行うものであり,その形態は大 例えば,Google Maps が屋外だけでなく屋内の地図として きく分けて二つある.一方はカーナビゲーションや地図アプ 「Google.Indoor.Map」という地図情報を取得できるサービス リケーションのようなナビゲーションアプリによる案内,他 をリリースした.これは,屋内ナビゲーションに利用可能で 方は人による案内である.ナビゲーションアプリは目的地ま あり,屋内マップは最近注目されているツールの 1 つである. でのルートを音声や文字を用いて案内を行う.一方,人によ 屋内位置情報取得に関しては,IMES というものも注目さ るナビゲーションはナビゲーションアプリとは違い,目的地 れている.IMES とは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と測 までのルートを伝えるだけでなく,目的地まで先導して案内 位衛星株式会社が共同で開発し,株式会社日立産機システム を行うことができる.本プロジェクトでは,人間を究極の知 が本体の製作を行っている屋内の位置情報を取得できるシス 能機械と考え,既存のナビゲーションアプリとは異なる,人 テムである.これを利用して,本プロジェクトでは,ナビゲー のような知能を持った機械とナビゲーションアプリを融合さ ションにおける屋内と屋外のシームレス化を行う. また,本 せたシステムを構築し,知能機械技術による施設内案内を目 プロジェクトの目標である「人が連れて行くような」ナビゲー 標とする.そのため,今年度は人が先導して目的地まで案内 ションを目指すにあたって,人を目的地に連れていってくれる する「連れていく」という要素を持った知能機械と,目的地 乗り物が必要である.この目標を満たす乗り物は,室内のよう まで「連れていく」ためのルートを伝えるナビゲーションア な狭い空間で使用でき,搭乗者はもちろん周囲の人に対しても プリを組み合わせたシステムである「ALEFUN」の構築を行 安全なものである必要がある.しかし,現在乗り物にはこれら う.「ALEFUN」の構築に向け,知能機械技術の開発のために 条件を満たせるものは存在しないため,新たな乗り物の開発 Selfi と呼ばれる倒立二輪電動スクータの拡張を行うハード班 もしくは別製品の改造が必要となる.そこで,「Selfi」と呼ば と,ナビゲーションアプリを開発する位置情報班の二つに分か れる乗り物 (図 1) を採用し,改造を施すことでこれら条件を れて活動を行う.ハード班は Selfi が施設内を安全に走行でき 満たす乗り物とすることとした.Selfi とは株式会社エフ・ア るよう,機能の拡張を目指す.位置情報班は,ナビゲーション イ・ティが設計製作した倒立電動スクータである.Selfi は小 アプリ開発のために,施設内の位置情報を取得し,屋外と屋内 型であり,小回りが利き小さなスペースで動くことができるた をシームレスに案内できるナビゲーションシステムの構築を め室内での利用に向いている.更に,Selfi はカスタマイズす 目指す.「ALEFUN」が構築することができれば,施設内にお ることが可能であるだけでなく,ゼロから本体を組み立てるこ いて知能機械がシームレスに,かつ安全に目的地までの案内を とが可能であるため,本体の構造を理解し,本体を改造するこ 行うことができる. とに適している.この Selfi とこれらを利用した屋内と屋外の 2 背景 シームレスなナビゲーションシステムを Android 端末 (図 2) 用いて本プロジェクトの目標を達成する. 今日,私たちはナビゲーションシステムを利用する時,GPS 衛星を利用し屋外で位置情報を取得している.しかし,私たち は屋外だけでなく屋内でも行動する.現在では,屋内で GPS 3 目的 私達は生活をしている限り移動という行為は不可欠な存在 クボードなどでは速度のコントロールや小回りが難しく,周囲 の安全性の確保ができないので施設内移動には適していない. この2つの課題を解消出来るような乗り物が必要である.こ れを実現させることを本プロジェクトの目標とする. 4 現状の問題点 この節では従来のナビゲーションアプリと Selfi の問題点 を述べる.従来の屋外で用いるナビゲーションアプリは GPS 図 1 Selfi で位置情報を取得しているが,この方法で取得する位置情報 の精度では現在どの建物にいるかがわかる程度のものであり, 施設内を案内できるほどの精度はない.屋内での取得に適し ている方法でも誤差が大きい.屋内外間で取得方式が違うと 切り替えが難しい.学内での正確な地図の提供がされていな いなどの問題点があがった.Selfi については既存の製品とし て施設内で利用する場合にはいくつかの問題点がある.利用 者とその周りの安全の確保がうまくされていない.利用時に おける操作面が難しい部分がある.利用時における Selfi の状 図 2 Android 端末 である.行きつけのお店や知人友人の家,取引先の企業など 態の把握が難しい.以上の 3 点が大きな問題といえる. 5 今年度の課題の概要 目的地は様々である.それらの目的地には日常的に向かう場 この節ではナビアプリケーションと知能機械を用いて,施 所が多く,自分自身で把握している道である.では,雑誌で紹 設内を案内することにより発生する課題について述べる.従 介されていた店や新しくできた友人の家,今度から新しく取 来のナビアプリケーションは行きたい所を検索し目的地まで 引することになった企業の場合はどうだろうか.おそらくそ のルート案内をするものであるが,屋内では GPS という位 のような場合には,私たちは移動する前に地図等で予め道順 置取得の方式が使えず現在地の取得が困難である為,施設内 などを確認するだろう.最近では地図帳を広げるのではなく を案内するアプリケーションを作るためには探索アルゴリズ WEB 上やスマートフォンのナビゲーションアプリを使うか ムや位置を取得する方法を自分たちで構築しなければならな もしれない.慣れぬ土地なこともあり小さな道のミスや体に い.また本プロジェクトのひとつの目的,知能機械を用いて, 疲れがたまりやすくもなるだろう.また,それらのルート検索 目的地まで連れて行くという人間の案内に一歩近づく為,今 では施設の内部に対応しているものは少なく利用しづらいも 回 Selfi という乗り物と携帯やタブレット端末で使用すること のになっており,目的地に着くのに困難なものになるだろう. ができるナビアプリケーションを作る.次に人間が行うよう 実際にナビゲーションソフトを利用していると物足りない部 な知能を持った案内を目指す為,目的地までの案内時の周囲 分が出てくることもある.例えば地図自体の読み込みが遅い の情報も利用者に伝える必要がある. Selfi と端末を連携させ, ことや GPS の正確な取得ができずにナビゲーションソフト 施設の使用状況やバッテリー残量などの Selfi と端末間で情報 上に自分の位置が反映されないことがある.そのようなナビ を交換する機能の追加や,施設内で利用者を選ばず,歩行者 ゲーションソフトを屋内に転用することで満足して使えるだ にもとっても Selfi が安全でなければならない為,速度制御な ろうか.さらには屋内は屋外での利用の問題点に加え,道に どの事故防止装置や Selfi に安全に乗れるよう発着点の作成や よっては極度に狭い所や歩きづらい場所等があり,移動が困 タイヤカバーの取り付けが必要となる.そこで私たちは Selfi 難である.そのために既存のナビゲーションソフトにはない, の速度制御などをナビアプリケーションと連携して行うため 屋内情報に対応したソフトが新たに必要である.また,駅や空 に, ADK(Accessory Development Kit)を用いる.ADK 港などの広く,かつ複雑な施設では徒歩による移動が大変であ で Selfi と携帯端末間の情報交換をどの程度できるのか,どの る.しかしその代わりに乗り物を用意した場合,自転車やキッ ような機能があれば安全かつ便利に目的地まで向かうことが 10 月-出来上がりつつある安全装置について有効性の各種実 できるのかを検証し,必要な機能や便利な機能を模索しなけれ 験を行った.案内するアプリケーションについては引き続き ばならない.そのほかにもより安全に Selfi を利用してもらえ システム製作,調整を行った. るように,歩行者に自分の存在を教えるためにライトや音楽を 流せる装置,タイヤに物を巻き込まないようにするカバーなど ハード面の追加構築もしなければならない. 6 目標 11 月-最終発表会にむけ準備を始めた.新技術サロンにて 成果発表会を行った. 12 月-最終発表会で発表を行った. 8 プロジェクト成果 本プロジェクトは,知能機械技術の最終的な目標である人 本プロジェクトの前期の成果について,ハード班は Selfi の 間が行うような知能をもった案内に近づけるため,前期では位 組み立てを行った.組み立てによって,Selfi の構造やしくみ 置情報班,ハード班でそれぞれの目標を立てて活動した.ま の理解をすることができた.組み立て後のテスト走行では, ず,位置情報班は屋内,屋外どちらでも使用できるシームレ 室内走行では安全面での問題があることが分かった.現在の スなナビアプリケーション開発のために,屋内での位置情報 Selfi のままでは,室内の走行を想定されていないため,室内 取得と屋外ナビアプリケーションの実装を目標とした.次に, での安全走行に関して機能の拡張が必要ということが分かっ ハード班は Selfi の組み立て,完成したものに試乗しての現状 た.また,位置情報班はナビゲーションアプリの製作を主に の Selfi の問題点の洗い出しとその改善案を議論し決定するこ 行った.屋外ナビゲーションシステムでは GPS を用い目的 とが前期の目標であった.後期では,位置情報班,ハード班, 地までのルート検索機能の実装と目的地の選択方法の実装を ADK 班でそれぞれ目標をたてて活動した.まず,位置情報班 行った.また,屋内のナビゲーションシステムでは RSSI 方 は,前期に達成することができなかった屋内ナビアプリケー 式を用いた位置情報取得システムを製作した.また,その取得 ションの構築である.加えて,IMES を用いて屋内での位置 した位置情報を元に案内ができるナビゲーションアプリも製 情報取得をより精度の高いものにすることである.ハード班 作した. の目標は,前期に洗い出した Selfi の問題点に対する改善を 本プロジェクトの後期の成果について,前期のタスクの 行い,Selfi を屋内で安全に乗ることのできる乗り物にするこ 続き及び新規タスクについて取り組んだ.具体的には以下に とである.また,プロジェクト全体として,Android 端末と 記す. Selfi 間を連携させる ADK の実装をおこない,屋内で使える まず,移動手段の構築として前期に取り組んで分かった 乗り物とナビを組み合わせた安全なシステムを作ることが後 室内で走行するにあたっての問題点として,安全面に配慮する 期の目標である. ような機能の拡張が必要という点について最重要項目として 7 具体的な活動内容 取り組んだ.拡張案については様々な案が提案されたが,後 期では早急に必要とされるだろう機能に絞って開発を行った. 5 月-プロジェクト学習が始まりメンバーの顔合わせの後, 大きく,タイヤカバー,足型,接近報知音,発着場の 4 つにつ このぷプロジェクトをどのような方向性で進めていくかブレ いて取り組んだ.1 つ目として,Selfi のタイヤが外部に露出 インストーミングを行った.Selfi の部品も到着し,Selfi1 号 していて足や靴紐を Selfi が巻き込む危険性があった.そこで 機の製作も開始した. タイヤと足場の間にタイヤカバーを設置することによって解 6 月-屋内/屋外ナビゲーションの実装を開始した. 決を目指した.このカバーの取り付けによって問題点を解決 7 月-中間発表会にむけ準備を開始した.中間発表会の成果 することは出来たが,用いた素材であるアクリル板には強度面 発表も行った. 8 月-必要技術の習得を行った.また,Selfi2 号機の部品が この頃到着し,製作を開始した. での若干の不安が残った.2 つ目として,Selfi に乗る位置が 悪いために,Selfi の制御に関わる圧力センサがうまく反応せ ずに,操作しにくい問題があった.そこで足をおく目印を置き 9 月-プログラムの改善・改良を行った.また Android 端末 解決を目指した.この目印を工夫し,足型にして製作した.そ と Selfi との連携を行うための ADK の製作も開始した.安全 の後乗りやすさについてのアンケートを行った結果乗りやす 装置の具体的な製作も開始した. いという結果が得られた.3 つ目として,Selfi が屋内で走行 するに当たって他の人に自分の存在を知らせる必要があった. のタイミングでバッテリーを充電するか目で見て確認できる そこで,接近報知音を Android 端末から鳴らし Selfi の存在 ようになり,走行中にバッテリー不足になることを防ぐ機能の を知らせることにした.鳴らすことにより他の人に存在を知 実現ができた. らせることができる距離が縮めることが出来たが,更なる研究 以上のように,本プロジェクトの成果として安全な移動 や改善が必要であった.最後に,Selfi 本体の乗りにくさや乗 手段の構築,屋内ナビゲーションシステムの構築, ADK 技 る際のぐらつきを改善する必要があった.そこで,Selfi 本体 術による Selfi と Android 端末との連携について大きな成果 を固定し,同程度の高さから Selfi へと乗れる発着場を製作し をあげることが出来た. た.Selfi の乗りにくさについて改善することが出来たが,ぐ 9 今後の課題と展望 らつきを固定するにはこれも更なる研究や改善が必要だと分 かった.このように安全面での拡張としては,上記の 4 つに ついて大きな成果をあげることができた. 本プロジェクトのタイトルである『知能機械技術による施設 内案内』を実現するため,班ごとと全体の課題が挙げられた. 次に,ナビゲーションシステムの基礎の構築としては,前 前期では,ハード班では Selfi の安全性向上と Android 期でも取り組んでいた屋内でも位置情報取得,階層変化,ナビ 端末へ情報を送るための上位マイコンの実装が課題として挙 ゲーションの 3 つについてより完成度を高め ALEFUN へと げられた.位置情報班では IMES を用いた屋内位置取得シス 実装できるように取り組んだ.1 つ目として,屋内では GPS テムを構築し,屋内での位置情報取得の精度を高め,屋内でも が使用できないため正確な位置情報を取得することができな 正確かつ屋内外間でのシームレスなナビゲーションアプリを かった.そこで,Wi-Fi 電波強度を用いて現在地を取得する 実装したい.また,ハード班と位置情報班での共通の課題とし アプリケーションの製作を行った.結果誤差はあるが,屋内の て Selfi と Android 端末間での連携を ADK を用いて実装を 位置情報を得ることができた.2 つ目として既存の位置情報 するであった. 取得技術では高低差を把握できないため自分がいま何階にい 後期では,Selfi 拡張班では,靴紐などがホイールに巻き るのかが分からないという問題があった.そこで,IMES に 込まれないようにするためにタイヤカバーを作成したが,まだ よる位置情報のデータ送信によって階の高さを把握すること タイヤの走行面を覆っていないため転倒したときなどにタイ を目指した.アプリケーションであり IMES への反映までこ ヤの走行面に乗っかってしまうとタイヤが回転してしまい危 そいかなかったが,IMES からの位置情報取得という点につ 険なのでタイヤカバーの改良がまず挙げられる.また,ハン いては達成できた.3 つ目として,屋内での最短ルート探索方 ドルが現状のままだと初めて乗った人には操作が難しいので 法について確立できていなかったため,ダイクストラ法を用 自転車やバイクのように,操作が簡単で誰にでも扱いやすい い,いくつかのルート検索の実装が出来た. ようにするという課題もある.最後に,Selfi を屋内で使うに 最後に,前期ではまだ取り組んでいなかった Selfi と あたって,Selfi は乗り物であるので,一定のスピード制限を Android 端末とをつなぐ仕組みづくりとして ADK による連 設ける必要がある.なのでスピードメーターの構築と一定ス 携を目指した.大きく音声認識と Selfi のバッテリー残量取得 ピードが早すぎる時に,運転手に知らせるようなシステムの構 という 2 つの内容について取り組んだ.1 つ目として,走行 築が望ましい.この点は ADK 班との協力をして進める必要 中の Android 端末操作は,Selfi 走行時に事故を起こす危険性 もある.ナビゲーション班は,前期同様,IMES に対応するこ が高まるという問題があり,Selfi や Android 端末操作の一部 とができなかったので,IMES への対応,また,現状の屋内ナ を音声認識で操作できるようにした.今回実装したのは,「暗 ビアプリケーションは 3 階の限られた範囲でしか対応できて い」という音声を Android 端末が認識すると,Selfi につな いないので,階層変化にも対応し,学内全体を網羅する必要が げられた LED ライトが点灯できるようにした.これによっ ある.そして,屋内と屋外のナビアプリケーション間でまだ連 て,大きな Android 端末操作をしなくても,LED ライトの 携が取れていないので屋内と屋外間での移動にも対応できる 点灯を行えるようになった.2 つ目として,Selfi が走行する よう連携する必要がある.以上を実装して,私達の目指そうと 時にバッテリー残量が分からないためあとどのくらい走行で する知能機械技術完成させたい. きるか分からないという問題があった.そこで Android 端末 にバッテリー残量を表示できるようにした.これによって,ど
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