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Schroders
新興国株式市場の動向
2014 年 2 月 19 日
●米国の金融政策への思惑から、新興国株式市場は軟調な展開となっている
●中長期的に高い経済成長率を背景とした新興国株式の魅力は変わらない
●新興国株式は割安感を強めており、中長期の視点で極めて良好な投資収益が期待できる
新興国株式市場コメント
2014 年の年明け以降、新興国株式市場を含む世界の株式市場は軟調な展開となっています。また、これと合
わせて為替市場では円が買い戻されており、多くの通貨に対して円高の展開となりました。これを背景として、多くの
新興国株式市場は円ベースで軟調に推移しています。
<主要新興国の株式市場の騰落率>
期間:2013 年 12 月 31 日から 2014 年 2 月 14 日
出所:MSCI、シュローダー
*各国と新興国株式市場全体の騰落率は、MSCI の各国指数、及び MSCI 新興国指数の騰落率
*ドルベースの指数を、円換算して表示
.
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第90号
加入協会 / 一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人投資信託協会
世界株式の推移
2014 年1月の前半の世界株式市場は、米国景気に対する楽観的な見通しが株価の支援材料となった一
方、中国の景気指標が冴えないものであったことやトルコ(政治汚職疑惑)やタイ(反政府デモ)などで政治的
不透明感が高まったことが市場の悪材料となりました。この期間、先進国株式市場がほぼ横ばいの推移となり、新
興国株式市場は軟調な展開となりました。
1 月後半には、南米アルゼンチンが外貨不足を背景に当局が為替市場への介入を停止したことがきっかけとな
り、アルゼンチンの通貨が大きく下落しました。この動きは、他の新興国通貨にも広がり、チリやコロンビアなどの南米の
国々、また、トルコ、南アフリカなど、経常収支の赤字を抱える国々の通貨が下落しました。
新興国株式市場はこのような、為替市場の混乱と「新興国市場から投資資金が流出するのではないか」という懸
念から、急速に値を下げる展開となりました。先進国市場も、新興国の株式市場や経済に対する懸念から下落し、
世界的な株安の展開となりました。
なお、この期間、中国で発表された景気指標が市場予想を下回り中国の景気減速に対する懸念が生じたこと、
同じく中国で大手銀行が販売した金融商品がデフォルト*する懸念があると報道されたこと、米国で弱めの景気指
標が発表されたことなども、市場のセンチメントを悪化させる要因となりました。(*注 債務の不履行。投資家には、
投資元本の毀損を意味します。)
世界的に株式市場が軟調となる中、新興国市場の中では、例えばブラジル市場は、中国の景気減速懸念が資
源株にとっての悪材料となったことや通貨防衛のために利上げが行われたことで、下げ足を速める結果となりました。ま
た、中国市場も、景気の減速懸念やシャドーバンキング(銀行融資以外の経路の信用拡大)の不透明感から、
値を大きく下げる展開となりました。
世界株式下落の背景
このような世界株式、特に新興国株式の下落の根底には、米国の金融政策に対する市場の思惑や不安感ある
と考えられます。FRB(米国連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長(当時)は、昨年 5 月に行った米国議
会での証言の中で、「雇用と物価の安定のために、今後も必要な金融緩和を継続する」としたうえで、「雇用が持続
的に改善すれば、FRB による(金融緩和のための)資産購入額を徐々に減らす」(量的緩和策の縮小)という
ことに言及しました。これは、2008 年の「リーマン・ショック」以降、金融システムの安定と景気の下支えのために、利
下げや流動性の供給(市場への資金供給)を続けてきた米国の金融政策の転換点が近いことを示唆するもので
した。そして、米国は実際に昨年 12 月になって、市場に供給する資金量を徐々に減らすことで、「量的緩和の縮
小」を開始しました。
株式市場の変動について、その「きっかけ」となった事象は、前項で述べたとおりですが、市場の根底にある不安
は、次のとおり纏めることができます。
① 米国がこれまで量的緩和によってグローバル市場に資金を供給し、その一部が新興国市場に流れてきた
が、米国の量的緩和が縮小されることで、資金の流れが逆流(新興国市場から資金が流出)するのでは
ないかという懸念。
② 新興国の中には、通貨が下落圧力を受ける中で、通貨防衛のために利上げなどの引き締め政策を取った
国も多く、これが景気を悪化させるのではないかという懸念
③ 中国の景気減速と、金融システムの健全性に対する懸念
この中で、①の影響が最も強く昨年秋以降、経常収支の赤字を抱えている国、あるいは、これまで海外資金への
依存度が高かった国などで通貨や株式の下落、金利の上昇がみられています。このような要因を背景に、
世界の投資家はリスク回避の姿勢を強め、新興国資産への投資を手控えているようです。
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市場環境見通し
さて、このような状況はいつまで続くのでしょうか。そもそも、新興国株式に投資をする魅力は無くなってしまったのでしょ
うか。
投資環境と今後の市場見通しを考えるにあたり、次の 3 点が重要なポイントであると考えます。
① 短期的には新興国経済は通貨の下落や金利の上昇といった「逆風」を受けていますが、この先の世界経済を展
望した時に、「世界経済のけん引役となるのは新興国経済である」という構図には変わりがないということです。
2014 年の経済成長率は、先進国経済が 2.1%、新興国経済が 4.7%になると予測しています。新興国経済
は、先進国経済を上回るペースで成長するということです。
② 前述のとおり、米国の量的緩和の縮小が、新興国市場にとっての懸念材料となっています。ここで重要なことは、
米国が量的緩和の縮小を継続する条件として「米国景気が順調に回復を続ける」ということが挙げられます。事
実、FRB は米国景気の動向を注視し適切に対応する姿勢を明確にしています。そして、米国経済の回復(そし
て、それに続くと期待される日本や欧州の景気回復)は、新興国経済にプラスの影響をもたらします。これまでに
新興国通貨が下落したことで、新興国の交易条件は改善しており、すでに一部の輸出関連銘柄はその恩恵を受
けています。
③ 2013 年の株式市場では、先進国株式が米国を中心に大きく上昇したのに対し、新興国市場はほぼ横ばいの推
移に留まりました。ここで注意したいのは、先進国企業も、新興国企業も、企業業績(利益成長率)には大きな
差が無いといことです。これは、言い方を変えると、株価の騰落率に差が出た分だけ、株式市場のバリュエーション
(株価が割高か割安かを示す指標)が異なる動きをしたということです。弊社の推計では、新興国株式のバリュエ
ーションは、過去に推移した水準と比較しても、また先進国市場と比較しても、極めて割安な水準にあります。
(弊社の試算の一例として、新興国株式は米国株式よりも 45%も割安であるとの結果が出ています。)
以上のことから言えることは、新興国株式は依然として魅力的な投資資産であるということ、そして、新興国市場を
取り巻く「悪材料」が払拭されるに従い、新興国株式は、先進国株式を上回るペースで回復することが期待できるので
はないかということです。
市況の反転がいつになるのかを正確に予想するのは困難ですが、上述のとおり、徐々に、その下地は整いつつあると
考えられます。米国の金融政策(量的緩和の縮小)と、それに関連する市場の思惑によっては、当面、市場が不安
定な動きを見せる可能性もありますが、これまでの新興国市場の下落によって、その投資価値は一段と高まっているとい
うことを心に留めることが大切であると考えます。
市場が下落すると、投資家心理として不安を感じることは自然なことです。 このような時こそ、世界の経済状況、市
場の変動要因、そして投資資産の価値を冷静に把握し、判断していくことが大切であると考えます。
本資料中シュローダー/Schrodersとは、シュローダー plc.および同社が直接的または間接的に株式または持分の50%以上を保有する会社等
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