肢位の違いによる内側広筋の筋活動特性

第 49 回日本理学療法学術大会
(横浜)
5 月 31 日
(土)16 : 40∼17 : 30 ポスター会場(展示ホール A・B)【ポスター 運動器!骨・関節 31】
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肢位の違いによる内側広筋の筋活動特性
奥田
滝本
教宏,竹林
幸治
秀晃,宮本
謙三,宅間
豊,井上
佳和,宮本
祥子,岡部
孝生,
土佐リハビリテーションカレッジ
key words 内側広筋・肢位別・筋活動
【はじめに,目的】
内側広筋の働きは,膝関節の保護や支持性に重要な役割を担うほか,膝蓋骨の外側偏位を抑止する特異的な機能があるが,萎縮
しやすく回復しにくい筋とされている。過去の報告では,下肢伸展挙上(以下,SLR)より座位からの膝関節伸展が有意に最大
筋力において高いことや,SLR や固定 SLR と比べ足部回外位立位で股関節内転の同期 Setting の方が有意に高いという報告が
ある。しかし一方で,背臥位での Setting や腹臥位・立位での Setting のように肢位の違いによる有意差は無いという報告も多く
みられている。そこで今回,肢位別による内側広筋の筋発揮量の変化を測定するとともに,内側広筋(以下,VM)
!
外側広筋
(以下,VL)比によって肢位の違いによる変化を検討することとした。
【方法】
1.対象
下肢に整形外科的疾患の既往がない健常男性 21 名(平均年齢 20.0±0.86 歳)とした。
2.方法
測定下肢は利き足側とし,測定肢位は以下の 5 肢位とした。各測定課題は,5 秒間の最大等尺性収縮(以下,MVC)を 2 回ずつ
行なった。
①踵を目標物へ押し付けるように Setting を行なう(踵 Setting)
②椅子座位で脛骨内外旋中間位,膝関節屈曲 60̊ で固定した膝関節伸展運動(座位 Knee ext.)
③背臥位で,下肢を足関節部で固定して行なう SLR(固定 SLR)
④足趾を床に接地した腹臥位で Setting(腹臥位 Setting)
⑤足部回外位の立位で,股関節内転を同期させた Setting(立位同期 Setting)
EMG は,それぞれの肢位において 5 秒間の MVC のうち,最初と最後の 1 秒間を除く中央の 3 秒間を基準として算出した。そ
の値を背臥位での Setting の IEMG(Integrated Electromyogram)を 100% として正規化し,VM・VL の%IEMG を求めた。
その後,VM の正規化された筋活動量を VL の正規化された活動量で除し,VM!
VL 比を算出した。筋電計には,EMG マスター
(株式会社 小沢医科器械社製)を用いた。統計処理は,各肢位の違いによる VM%IEMG と VM!
VL それぞれを反復による一
元配置分散分析後,多重比較検定(Scheffe s F test)にて検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
被検者に対して,本研究の方法を説明し同意を得た被検者に対し行なった。
【結果】
各肢位における VM の筋活動量平均%IEMG は,踵 Setting 115.2±20.6%,座位 Knee ext. 98.6±54.1%,固定 SLR 77.8±36.1%,
腹臥位 Setting 98.9±21.6%,立位同期 Setting 65.3±24.2% であり,反復による一元配置分散分析の結果有意差が認められた
(p<0.01)
。多重比較検定においては,踵 Setting・立位同期 Setting,踵 Setting・固定 SLR,座位 Knee ext.・立位同期 Setting,
背臥位 Setting・立位同期 Setting,腹臥位 Setting・立位同期 Setting 間において有意差が認められた(p<0.01)
。
VM!
VL 比においては,一元配置分散分析と多重比較検定ともに有意差は認められなかった(0.05<p)
。
【考察】
本研究では,VM!
VL 比において肢位の変化による有意差は認められなかったため,VM 有意の Setting 方法は得られず各肢位
において差がないことが言える。しかし,肢位の変化により VM の筋活動量の特性は認められ,立位同期 Setting は他のどの肢
位と比較しても有意に活動量が低かった。これは,CKC で行なうことで VM 以外の他の筋群も活動することにより VM 単独の
活動が抑制されたためと考えられる。また,本研究で行なった肢位においては他のどの肢位と比べ踵 Setting の筋活動が高かっ
た。これは,OKC であるとともに被検者にとって運動方向が容易にイメージできるためだと考えられる。よって,患者への Setting 指導としては踵 Setting で行なうことを推奨する。ただし,患者によっては腹臥位や立位のように CKC でトレーニングを行
なうほうが良い場合もあるため,今回の結果を踏まえセラピストがそれぞれの肢位における運動特性を理解し理学療法プログ
ラムを立案することがより効果の高い理学療法を提供できるものと考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果,肢位の変化により筋活動量の違いを理解した上で,各肢位における運動特性を考え理学療法プログラムを立案す
ることにより,さらに効果の高い理学療法を提供できるものと考える。