Scatter factors assessment in microbeam radiation therapy マイクロ

Scatter factors assessment in microbeam radiation therapy
マイクロビーム放射線療法における散乱係数の評価
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Ⅰ. Introduction
グリオーマのような放射線抵抗性腫瘍を目的とした根治的放射線治療を可能にするための
問題点は,周囲の正常組織の高い罹患率です.ただしこれは,脊髄などのリスク臓器が腫瘍の
近くに存在する場合となります.この問題点を取り除くため,高度放射線治療には小照射野
が使用されます.ここでの高度放射線治療とは,強度変調放射線治療(IMRT)や定位手術的照
射(SRS)です.
これまでの臨床前試験で,9 ポンドのラットのグリオーマのような悪性腫瘍モデルの切除と
組み合わせたごく一部での小照射野サイズと空間線量分割の組み合わせが,非常に高い線量
(≧100Gy)に対する正常組織の抵抗性に結びつくことを示しました.これらの生態研究で得
られた結果は,ESRF(ヨーロッパシンクロトロン放射光施設)で準備段階の臨床試験への道
を拓きました.
小照射野での線量測定は,幾何学的不正確さと検出器の線量平均効果の影響を受けやすくな
ります.SRS や IMRT での小照射野の線量測定の正確な特性評価が,時間がかかりエラーを
起こしやすい傾向のある測定を必要とする場合,マイクロビーム放射線療法(MRT)で使用さ
れているμm サイズの照射野の線量評価は重要な課題を提示します.
本研究では,MRT の臨床試験の設定のために散乱係数の最初の体系付けられた評価を報告
します.散乱係数の規定が非常に繊細あるという事実から,安全性のために Monte Carlo
(MC)シミュレーションと実験的測定の両方によって行われました.
Ⅱ. MATERIALS AND METHODS
Ⅱ.A. Radiation source and microbeam generation
ID17 生物医学ビームラインでは,X 線源は患者位置決めシステムから 40.5m に位置してい
ます.それは 15cm および 12.5cm 周期の 2 つのウィグラーで構成されており,それぞれ 1.6T
の最大磁界から成ります.MRT の照射では,始めのウィグラーのみが使用されます.フィルタ
処理後の X 線エネルギースペクトルの範囲は,約 27~600keV で,平均エネルギーは約 99keV
となります.
多重スリットコリメータがシンクロトロン線源から出るビームを空間的に分割するときに
マイクロビームは生成されます.その後,ターゲットは X 線の microplane を伝えるために非
常に細かく分割されたビームによって垂直に走査されます.
動物またはサンプルは,3 軸 Kappa 型高精度ゴニオメータ(Huber 社,ドイツ)に設置されます.
その位置で,達成可能な最大照射野寸法は,おおよそ高さ 2.5mm 幅 41mm です.ビームの高さ
が非常に薄いので,動物やファントムはビームが垂直にスキャンされます.ビームラインの
レイアウトの詳細な技術説明は,Ref.24 で示されています.
Ⅱ.B. MC simulation
本研究では,2 つの異なる MC コード,PENELOPE2008 と GEANT4 を使用しました.この 2
つのコードは以前,MRT の線量分布の評価に使用されていました.
PENELOPE では,本研究において特に重要である正確な低エネルギー電子線横断面の慎重
な実装が行われました.シミュレーションアルゴリズムは,異なる相互作用のメカニズムの
ための分析的な断面と,数値データベースとを組み合わせた散乱モデルに基づきます.そし
てそれは,数百 eV~GeV までのエネルギー(電子,陽電子の場合は運動エネルギー)に適用可
能です.実用的なエネルギーの範囲は数百 keV なので,最も関連のある相互作用は光電効果
とコンプトン散乱になります.PENELOPE で使用される光電子の横断面は,ローレンスリバ
モア国立研究所(LLNL)の評価された光子データライブラリ(EPDL)から得られる表中の数
値によって得られます.GEANT4 では,シミュレーションは,PENELOPE でもとは実装され
ていたプロセスのセットを再現させる分析的アプローチにしたがって作られています.例外
は,GEANT4 が革新的な先端モデルを導入するための多重散乱の過程です.結果として,数百
eV~1GeV までのエネルギー範囲で信頼性があります.PENELOPE が純粋なクラスⅡのア
ルゴリズムを使用する一方,GEANT4 はクラスⅡ(制動放射)とクラスⅠ(弾性,非弾性散乱)の
プログラムの組み合わせを使用しています.これら 2 つのコードから得られた結果を比較す
ることで,私たちの研究結果に対する確信を強めてくれます.
Ⅱ.B.1. Simulation geometry and irradiation configuration
水等価ファントム(30×30×12cm3)と water tank PTW MP3-P 41029(35×35×38cm3)は,
シミュレーションで検討され,以下のいくつかの照射形状を研究しました.
・ 1×1,2×2,3×3cm2 の均一なビーム
・ 幅 50μm,高さ 2cm2 のマイクロビーム
・ 異なる領域をカバーする c-t-c 距離 400μm での幅 50μm のマイクロビーム:
1×1,2×2,3×3cm2
これらの照射野サイズは,PET や今後の臨床試験で最も頻繁に使用されると予測されます.
線量は,幅 5μm 高さ 2mm のマイクロビームと,PENELOPE での深さ 1mm で記録しまし
た.GEANT4 で計算したボクセルサイズは,マイクロビームでは 4μm×4μm×4mm3,広い
ビーム照射では 4×4×4mm3 でした.
Ⅱ.C. Scatter factors assessment
今後の臨床試験では,絶対線量の測定は国際原子力機関(IAEA)の TRS398 コードでコンパイ
ルされた推奨事項に従うことによって実行されます.絶対線量測定の最初のステップは,基
準条件(均一照射野)での線量を測定することです.基準条件での線量測定は,指頭型電離箱を
使用します.電離箱の空洞容量(線量計の基準点)は 2g/cm に置かれました.また基準照射野に
は 2×2cm2 が選択されました.線量は,均一照射での積算線量に相当します.
Broad beam で測定された絶対線量から 1 つのマイクロビームの積算線量を決定するために,
散乱係数は使用されました.散乱係数は散乱線とは異なり,照射野サイズによる因子として
考慮されます.使用されるエネルギーが低いのと,最も近いコリメータが患者から約 2m 離れ
ていることから,コリメータの散乱係数はごくわずかであり,ファントムに起因する散乱線
のみが寄与します.したがってファントムの散乱係数 Sp は全散乱係数と等しくなると仮定
できます.1 つのマイクロビームの Sp は,以下の式で表すことが出来ます.
Sp,microbeam = Dpeak,2cm/Dreference ・・・(1)
Sp,microbeam は 1 つのマイクロビームにおけるファントム散乱係数で,Dpeak は水中 2cm 深での
1 つのマイクロビームによる積算線量,Dreference は同じ深さで 2×2cm の照射野サイズでの積
算された絶対線量となります.Dpeak と Dreference は MC シミュレーションと測定によって評価
されました.実験的な評価は,Gafchromic film HD 810 と LAC(広範囲線量計)と呼ばれる A
large Bragg Peak chamber (PTW 34070)の二種類の検出器で行われました.
多くのマイクロビームに対応する 2cm 深での peak dose を評価するために,式(1)は central
dose にマイクロビームの裾野を考慮にいれる因子 farray が乗算されます.またあらゆる深さ
での peak dose と valley dose を決定するために,深部量百分率(PDD)曲線と PVDR 比率が
使用されます.
Ⅲ. RESULTS AND DISCUSSION
Ⅲ.A. Scatter factors for different broad beam configurations
広い照射野(≧1cm)での Sp の実験的評価は,指頭型電離箱(IC)と gafchromic film(GF)を用い
て行いました.これは直接的で正確な測定であるので,MC と実験データとの間に優れた一致
が見られました.
Ⅲ.B. Scatter factor of a 50μm-wide and 2cm-high microbeam
2 つの異なる MC コード間の結果と,シミュレーションを検証するための計算と実験データ
との間には,良好な一致があります.2 つの MC の値の間で見られるわずかな違いは,使用され
るアルゴリズムの違いによるものです.この結果から,照射野中心の積算線量への散乱線の
寄与が,基準照射野サイズほどマイクロビームにとってそれほど重要ではないと結論づける
ことが出来ます.
また将来の臨床試験で使用されるいくつかのマイクロビーム配列の計算
(PENEROPE,GEANT4)と実験的な(GF)farray の値によると,マイクロビームの裾野の寄与
は,それぞれ 1×1,2×2,3×3cm2 のビーム中心で 3%,5%,8%の線量増加につながります.
Ⅳ. CONCLUSIONS
縮小された照射野に対する高められた組織線量の許容誤差は,放射線治療における小照射野
の使用増加の起源となります.
小照射野での線量測定を行うための要求が非常に多く,エラーを起こしやすいと広く知られ
ている場合,MRT の線量評価には課題が残ります.臨床試験への準備となるこの枠組みでは,
積算線量決定のための方法論は,MRT で使用される小照射野で正確な結果を示しました.ま
た,基準線量の測定では IC との均一な照射で行われるため,散乱係数の評価は不可欠でした.
実験的な測定が複雑なため,2 つの異なる方法が使用され,その結果を 2 つの独立した MC の
計算結果と比較しました.そこで得られたすべての値の間での良好な一致は,この方法の信
頼性を示します.