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2008年度兵庫県立大学大学院がんプロ:Advanced Health Assessment in Oncology Nursing Seminar
腫瘍性疾患に伴う緊急事態:
中枢神経系
2008年度兵庫県立大学大学院がんプロ:Advanced Health Assessment in Oncology Nursing Seminar
神経腫瘍性疾患に伴う緊急事態
の復習
• 脳腫瘍
o
o
•
•
•
•
原発性疾患
転移性疾患
軟膜性転移
脊髄圧迫
頭蓋内出血
化学療法による急性合併症
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脳腫瘍:疫学
• 定義: 脳腫瘍は中枢神経系(CNS)内
の異なる細胞又はCNSに転移した全
身性腫瘍から生じる新生物の多様な
グループである。
• 罹患率:
o
o
原発性脳腫瘍: 17500 例/年
脳転移: 66000例/年




肺
胸
皮膚
尿生殖器又は胃腸
• メカニズム:
o
o
o
o
直接的組織破壊
脳組織の置換(腫瘍/浮腫)
血管の圧迫(虚血)
CSF経路の圧迫(水頭症)
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脳腫瘍: 症状
全身型
限局型
頭痛
発作
発作
脱力感
悪心/嘔吐
感覚消失
意識低下
失語症
神経認知障害
視覚空間機能障害
•
発作
o 神経膠腫患者の33% が発症
o 脳転移患者の15-20% が発症
•
頭痛
o 患者の 35% が発症
o 通常は鈍く持続的、時にズキズキする痛み
o 夜間に悪化し、患者を目覚めさせる場合がある
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脳腫瘍: 診断
• ガドリニウム造影 MRIが通常脳腫
瘍の示唆に必要な唯一の検査で
ある。
• ほとんどの患者において、組織学
的確認のための組織は、切除の
ための外科的診査の際に採取さ
れる。
• 複数の脳転移がある患者につい
ては、脳転移傾向のある先行する
原発性癌が存在する場合には、
生検は必要ない。
未分化星状細胞腫のMRI
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脳腫瘍:
危機管理
• 脳浮腫
利尿効果のあるマンニ
トール
o デカドロン
o 人工呼吸器による過換
気
o バルビツール酸系催眠
薬
o
• 発作
o 抗けいれん薬治療
o 抗けいれん薬予防
 議論が分かれるが、脳及
び軟膜両方の転移がある
患者に好まれる
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脳腫瘍: 治療
• 手術
o
治療
 髄膜腫、前庭神経鞘腫、下垂体腺腫、ある種の神経膠腫
o
緩和
 神経症状の緩和
 放射線治療をより安全に行うため
• 外照射
o
o
全脳 EBI: 複数の転移及び単一転移患者及び広範囲に全身
で広がっている場合に最適
限局型EBI: 単一脳障害
• その他:
o
近接照射療法、定位固定手術、免疫治療、遺伝子治療
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神経腫瘍性疾患に伴う緊急事態
の復習
• 脳腫瘍
o 原発性疾患
o 転移性疾患
• 軟膜性転移
• 脊髄圧迫
• 頭蓋内出血
• 化学療法による急性合併症
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軟膜性転移:疫学
• 中枢神経系(CNS)の外で発生
する癌は全て、脳又は脊髄を
覆っている膜を含むどの頭蓋内
構造にも転移し得る。
• これらの膜は硬膜、クモ膜及び
軟膜から成り立っている。これら
の三つの層を合わせて軟髄膜と
称する。
• クモ膜と軟膜の間には脳脊髄液
(CSF) 及び脳柔組織に血液を
送る動脈がある。ここで悪性細
胞との交差汚染が起こる。
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軟膜性転移:疫学
•
血液学的悪性腫瘍と充実性腫瘍は共に軟
膜に転移する。
o 充実性腫瘍においては、軟膜の浸潤
は実質性疾患発症時に起こる。
o 血液学的悪性腫瘍においては、実質
性病変のない軟膜に湿潤が起こる。
•
LMM は特に以下と共に起こりやすい:
o 白血病
o 非ホジキンリンパ腫
o 乳癌
o 小細胞肺癌(SCLC)
•
充実性腫瘍においてしばしば診断未確定
となるのは:
o 臨床診断で5%
o 病理解剖で20%
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軟膜転移: 症状
• 局所性神経症状は、限局性
疾患を示唆しているのに対し、
軟膜転移は複数の症候を
伴って存在する場合が多い。
• (A) 脳神経病変
o 最も一般的な症候は複視
である
o 患者の30-50%は脳神経
症状/徴候を示す
o 動眼神経(III, IV, VI)が
最も一般に関与している 。
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軟膜転移: 症状
• (B) 脊髄徴候
o 神経根を有する腫瘍細胞の関
与
o 非対称性脱力、感覚消失、ジ
アパラステジア(うずく感覚) 、
反射作用の低下
o 患者の70%を超える
o 腰椎・仙椎部でよく見られる
o 括約筋障害はあまり見られな
い
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軟膜転移: 診断と治療
•
診断:
o
腰椎穿刺
 以下の後では細胞診陽性:


•
1 LP: 50%
3 LPs: 90%
o
脳 /脊椎の脳MRI
o
髄膜造影(50%)
治療:
o
無症候性患者:
 クモ膜下化学療法
o
症候性患者
 クモ膜下化学療法
 局所性頭蓋又は脊髄照射
•
予後:
o
o
生存期間中央値: 治療を行い3-6ヶ月
患者の15-25%が1年以上生存
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要点
• 癌の3つの進行によりCNS病変を有する可能性が
ある:
o 実質組織における脳腫瘍
o 実質組織における転移病変(リンパ腫、肺、乳房)
o 髄膜の転移浸潤(脳周りの膜)
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神経腫瘍救急のレビュー
• 脳腫瘍
o 原発性疾患
o 転移性疾患
• 軟膜転移
• 脊髄圧迫
• 頭蓋内出血
• 化学療法による急性合併症
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脊髄圧迫: 疫学
• 定義:脊髄又は馬尾の何れかのレベ
ルにおける硬膜上腔の腫瘍による髄
膜嚢の圧迫
• 疼痛を引き起こしたり、また非可逆性
の神経機能低下を引き起こすことが
ある癌の合併症が頻繁に起こる。
• 癌患者の約5%に起こる。
• 早期に診断される場合には、症状は
可逆的である。一度神経機能が悪化
すると予後不良である。
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脊髄圧迫: 疫学
• 原発癌からの転移腫瘍は脊髄圧迫を
引き起こす可能性があり、ほとんどの
症例は脊柱に転移する傾向を有する
腫瘍によるものである:
~20% 前立腺
~20% 肺
~20% 乳房
~10% 非ホジキンリンパ腫
~10% 多発性骨髄腫
~10% 腎細胞癌
~10% 実質的には、すべてのその他の原
発性腫瘍
• 小児: 肉腫、神経芽腫
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脊髄圧迫: 症状
• 脊髄圧迫の臨床的特徴の初期認識は、診断又は治療のいかなる進歩よ
りも結果を改善する希望を与える。
• 背痛 (83 ~ 95%)
o
o
o
o
o
進行性
側臥位により悪化(これに対し、椎間板脱出又は変形は背臥位で改善する)
ほとんど常に両側性の神経根痛
急激な悪化は病的因子の徴候である場合がある
背痛は多の神経学的徴候に7週間先行する。
• 神経学的徴候:
o
o
o
運動失調
膀胱及び腸不全
上行性無感覚及び知覚障害
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脊髄圧迫: 診断試験
• ガドリニウムを使用したMRIが好ましい診断検査である
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脊髄圧迫:治療
• 外照射
o
o
o
治療開始時に歩行な患者の80-100%は引き続き歩行可能である。
歩行不可能であった患者の33%は歩行能力を回復する。
対麻痺患者の2-6% は歩行能力を回復する。
• コルチコステロイド
o
o
血管原性浮腫を減少させる
歩行能力維持の可能性を増加させる
• 鎮痛薬
• 動けない場合は抗凝固剤の使用を検討する
• 便秘予防のための積極的腸管理
• 脊髄圧迫後の平均生存率は~6ヶ月
Effect of high-dose dexamethasone in carcinomatous metastatic spinal cord compression treated with radiotherapy: a randomised trial.
AUSorensen S; Helweg-Larsen S; Mouridsen H; Hansen HH
Eur J Cancer 1994;30A(1):22-7.
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脊髄圧迫:治療
• 手術 (椎体切除術)
o
o
脊髄再生後椎体を除去
脊柱不安定性患者又は脊柱管内の骨に対して検討
o
リスク:
 死亡率: 6-10%
 合併症を起こす確立:48%が創傷悪化、安定性障害、感染、出血を発症
• 化学療法
o
潜在的悪性腫瘍を治療
• ビスフォスフォネート
o
複数の骨髄腫のある、又は乳癌の患者の病的骨折及び骨の痛みの
発症を低減
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腫瘍性疾患に伴う緊急事態の復習
• 脳腫瘍
o
o
•
•
•
•
原発性疾患
転移性疾患
軟膜性転移
脊髄圧迫
頭蓋内出血
化学療法による急性合併症脳腫瘍
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頭蓋内出血: 疫学
• 頭蓋内出血は、頭蓋内の血管が破
断又は漏出する場合に起きる。
• 頭蓋内出血は肉体的外傷(転倒)又
は非外傷性の要因(突発性出血)に
より起こる場合がある。
• 頭蓋内の血液の蓄積により精巧な脳
組織が押しつぶされる可能性がある
ため、頭蓋内出血は医学的緊急事
態である。重症例では、頭蓋内出血
は脳ヘルニア及び死に至る場合があ
る。
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頭蓋内出血: 疫学
• 危険因子:
o
o
外傷性転倒
突発性






原発性脳腫瘍
脳転移
白血病
血小板 < 20k
WBC > 100kのAML
DIC (APMLで発見される)
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頭蓋内出血: 疫学
• 症状:
o
o
o
3例中2例には、脳卒中様症状が
起こるが、残りはもっと緩やかな
悪化を示す
神経検査に現れることが多い
バイタルサインに現れることが多
い
• 診断:
o
o
CTスキャン
MRIスキャン
• 治療:
o
o
o
外科的除去
ステロイド剤
手術/放射線
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神経腫瘍救急のレビュー
• 脳腫瘍
o 原発性疾患
o 転移性疾患
• 軟膜転移
• 脊髄圧迫
• 頭蓋内出血
• 化学療法による急性合併症
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化学療法による急性合併症
• クモ膜下腔の化学療法:
o
無菌性クモ膜炎





体位性頭痛の古典的症状
患者の10-40% に発生
注入より2-4時間後、 12-72時間持続
CSFは顆粒球細胞増加、プロテイン増加を示す。
時には自己限定性であるが、しばしばコルチコステロイド、カフェイン、血液パッチを使用
• シトシンアラビノシド:
o
小脳症候群
 高用量 (3 g/m2/12時間)、患者の25%
 CTから2-5日後に眠気、 錯乱や運動失調
 自然に消失する人もあれば永続する人もいる
• コルチコステロイド
 急性: 精神病、幻覚、視野のぼやけ、震え、発作、ミエロパシー
 慢性: ミオパシー、 脳萎縮
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化学療法による急性合併症
• 5-フルオロウラシル
 急性: 小脳症候群、脳症
 慢性: 小脳症候群、パーキンソン症候群
• タキソール/タキソテール
 急性: 関節痛、筋肉痛(一般的)
 慢性: 神経症 (一般的)
• ビンクリスチン
 急性: 脳症、痙攣、皮膚盲、EPS
 慢性: 神経症 (一般的)
• カルボプラチン
 急性: 脳卒中、網膜症
• シスプラチン
 急性: 眩暈症、脳症、痙攣、局所性障害、脳卒中
 神経症 (一般的)、 聴器毒性 (一般的)
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神経腫瘍救急: 質問 1
1.
下記の説明で正しいのは:
1.
転移脳腫瘍は脳腫瘍の最も一般的なタイプである。
2.
肺癌は最も脳に転移する可能性が高い腫瘍である。
3.
軟膜疾患は実質性脳腫瘍ほど重要でない。
2. CNS腫瘍のほとんどの場合、機能障害の指標で最初に現れ、最も感度の高いものは、下記の変化で
ある:
1.
意識レベル
2.
認知能力
3.
運動及び知覚機能
3. 脊髄腫瘍で最も一般的に見られる症状は:
1.
脱力
2.
疼痛
3.
大腸及び膀胱機能障害
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神経腫瘍救急: 質問 2
4. 汎血球減少症患者がただ転倒し、頭部を打った。彼女は出血の可能性が疑われる。この出血を確認
するために最も必要であると思われる検査は:
1.
脳のCTスキャン(造影剤なし)
2.
脳のCTスキャン(造影剤あり)
3.
MRI
5. 乳癌と既知の骨転移を呈する女性は、両腕の脱力で来院する。彼女には背痛があるが、先週から変
わっていない。最善の説明およびインターベンションは:
1.
骨転移は悪化しておらず、症状を監視することで大丈夫である。
2.
脊椎に骨疾患が有る場合には、脊髄圧迫を除外するために緊急MRIを実施するべきである。
3.
骨粗鬆症がある可能性があり、椎間板疾患のリスクがあるので、咳、身体に負担のかかる作業、
重い物を持ち上げたりすることをしないように促すべきである。
1.
下記の化学療法のどれが、失調として現れるような脳毒性を引き起こす可能性があるのか?
1.
シタラビン
2.
5-FU
3.
メトトレキサート