日本語 - 兵庫県立大学看護学研究科看護基礎科学分野

2008年度兵庫県立大学大学院がんプロ:Advanced Health Assessment in Oncology Nursing Seminar
皮膚毒性
2008年度兵庫県立大学大学院がんプロ:Advanced Health Assessment in Oncology Nursing Seminar
皮膚毒性
• 薬剤に対する皮膚における有害反応は一般的で
入院患者の2~3%に認められる
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薬剤誘発性発疹
掌や足の裏の紅斑異常感覚
化学療法における薬剤の管外遊出
甘味症候群
帯状疱疹
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薬剤誘発性発疹
• 薬疹全体の約75%の原因である。
• 抗生物質、スルファアミド剤、アロプリ
ノールが最も関連性があった。
• 独立した部分から始まって、全体に広
がり、粘膜の赤斑を伴う事が多い。
• 痒みと発熱がよく認められる症状であ
る。
• 新しい薬剤を投与した場合は2週間後、
感作を受けている薬剤への再暴露で
は数日で発症する。
• 薬剤の投与中止で、急速に症状が改
善する。
• スティーブン・ジョンソン症候群に発展
する可能性がある.
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スティーブン・ジョンソン症候群
• 臨床症状
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広汎性の暗赤色斑
口腔粘膜の炎症
発熱
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掌足の裏の紅斑異常感覚症候群
• 「手足症候群」とも呼ばれ
る
• 特定のタイプの化学療法
には、掌または足の裏に
発赤、腫脹、痛みなどの
副作用が起こる。
• 化学療法で手足の毛細血
管から少量の薬剤の漏れ
が起こった場合、手足症
候群が起こり、周囲組織
に損傷を与える。
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掌足の裏紅斑異常感覚症候群
• 以下の化学療法は「手足症候
群」の原因となる可能性がある
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カペシタビン(ゼローダ)
シタラビン(シトサール-U)
フロクスウリジン(FUDR)
フルオロウラシル (5-FU)
イダルビシン(イダマイシン)
リポソーマル・ドキソルビシン (ドキシル)
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掌足の裏紅斑異常感覚症候群
• 症状:
o 軽度から中程度
 発赤(日焼けに似ている)
 腫脹
 チクチクまたはヒリヒリする
痛みの感覚
o 重度




皮膚の割れ、ささくれ、剥離
皮膚の水疱、潰瘍、痛み
重度の痛み
歩行や手を使う事が困難
• 治療:
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炎症を抑えるための副腎皮質ステロ
イドの経口または局所投与
神経痛抑制を助けるためのビタミン
B6
鎮痛剤
冷たいシャワーを浴びたり、入浴をし、
熱を避ける。
氷嚢または冷たいものを一度に15~
20分押し当てる。(氷を直接皮膚に
つけることは避ける)
座ったり、横になった時に手と足を高
く上げる。
洗ったり入浴したりした後、慎重にタ
オルで皮膚を軽くたたいて乾燥させ、
こすらないようにする。
ベア・クリームで皮膚を保湿し、乾燥
しないようにする。
ゆったりした通気性の良い靴と衣服
をつける。
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化学薬療法における管外遊出
•
管外遊出は、化学療法に用いた薬剤が、
血管から漏れたり、直接滲出したりして
血管外に出ることである。
•
発疱剤の管外遊出による傷害の早期の
症状と兆候は微かである場合が多い。
•
通常、症状と兆候は管外遊出が起こった
直後に現れるが、数日から数週間遅延す
る場合もある。
•
最初は、注入場所に局所的なヒリヒリ感
またはチクチク感が現れ、軽度の紅斑、
痒み、腫脹が起こる。
•
~3日以内に紅斑の広がり、痛み、皮膚
の褐色変色、硬結、乾燥落屑、水疱など
が認められるようになる。
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化学療法における薬剤の管外遊
出:刺激剤と発疱剤
• 刺激剤と発疱剤
o
細胞毒性薬剤は、局所毒性の可能性に
基づいて刺激剤または発疱剤に分類され
る
•
刺激剤は、注射針が指した箇所または静脈に
沿ってズキズキ感、ヒリヒリ感、圧迫感、痛み、
静脈炎などの炎症反応を起こす。臨床兆候に
は、管外遊出の起こった箇所での熱感、紅斑、
痛みなどがあるが、組織の腐肉形成や壊死は
起こらない。症状の持続は通常短く、長期の続
発症は起こらない。
•
発疱剤は、重度で損傷の持続期間が長い場
合に、組織の壊死を起こす可能性がある。発
疱剤の管外遊出は皮膚の十分な厚みを失わ
せ、重度の場合は下層構造にまで損傷が及
ぶ。
• 化学療法に用いる発疱剤
•
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アムサクリン
ダクチノマイシン
ダウノルビシン
ドセタキセル (めったに用いない)
ドキソルビシン
エピルビシン
イダルビシン
メクロレタミン
マイトマイシン
オキザリプラチン (めったに用いない)
パクリタキセル (めったに用いない)
ストレプトゾシン
ビンブラスチン
ビンクリスチン
ビンデシン
ビノレルビン
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化学療法における薬剤の管外遊出
• 予防:
末梢静脈ラインは血液が
十分に戻るように新しい
ものでなければならない
o 注入の間、患者の痛み、
紅斑、浮腫についての観
察を行う。
o 中心静脈カテーテルが好
ましい場合が多い。
o
• 治療:
注入は直ちに中止する。
病巣のある肢を高く上げる。
液体を管外遊出部位から吸引する
ため、 カテーテルを残し、適切であ
れば解毒剤(例:DMSO)を局所投
与する。下毒剤の投与を行わない
場合は、静脈内注射針を取り除く。
o エトポシドおよびビンカ・アルカロイ
ドは冷やすと潰瘍化が促進される
ので、それ以外の薬剤場合のみ冷
たいものを押し当てる。エトポシドお
よびビンカ・アルカロイドの場合は、
その代わりに温めて薬剤除去を促
す。
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甘味症候群の診断基準
• 主要な基準
局所的な皮膚病巣の突然の発現
がある
o 組織病理学的に甘味症候群と
一致する
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• 副次的な基準
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発熱または感染が先に起こる
発熱、関節痛、結膜炎、基礎疾患
として悪性腫瘍を伴う
白血球増加がある
副腎皮質ステロイド全身投与に対
する反応は良いが、抗生物質に
は反応しない
* 診断には2つの主要な基準および副次的な基準が必要である。
Su, WP, Liu, HN, Cutis 1986; 37:167. からの引用
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帯状疱疹の発症
•
帯状ヘルペス(帯状疱疹)は、痛みがあり、
水痘の原因である水痘・帯状ヘルペスウ
イルスのために水疱状の皮膚発疹が発
現する。
•
水痘が発症した後、ウイルスは身体の特
定の神経中で休眠する(潜伏する)。帯状
疱疹はウイルスがその神経の中で長年
眠った後、再び活動し始めた時に起こる。
•
皮膚発疹は通常脊髄の周りから前面の
臍や胸部の狭い範囲で起こる。顔、眼、
口、耳に発現する場合もある。
•
発症率は2-60%の間であるが 、基礎
疾患である悪性腫瘍および治療のため
の免疫抑制のレベルに影響を受ける。
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帯状疱疹の再症
• 症状:
最初の症状は通常片側に起こる痛み、チク
チク感、ヒリヒリ感などである。痛みとヒリヒリ
感は重度であると考えられる。
o 皮膚の紅斑が形成された後は水疱が現れる。
水疱が破れて小さな潰瘍を形成し、それは
乾燥してかさぶたとなる。かさぶたは2~3週
間で剥がれ落ちる。
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• 治療:
腫瘍のある患者でリンパ球数減少が認めら
れる場合は全てアシクロビルで予防を行うべ
きである。
o 発疹に帯状疱疹の疑いがある場合は、培養
が必要で、患者は経験的に高い容量でアシ
クロビルの投与が開始される。
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症例研究1
•
53歳の男性で腎不全の既往歴があり、現在はさらにAMLの診
断を受けた患者が対象である。本患者に対しては標準的な化
学療法を開始した(イダルビシンおよびシタラビン). 患者は14日
目から持続的な疾患が発症したため、6日間のシタラビンの高
用量投与化学療法を再開した。 投与10日目で掌に軽度の紅斑
が認められた。週間以内に、紅斑は痛みのある水疱浮腫となり、
患者は動けなくなり、モルヒネの連続静脈投与が必要となった。
Q1: これらの写真から、化学療法の副作用は何であると思われるか?
Q2: この状態を改善するためにどの治療法を採用するか?
Q3: この場合、患者を危険な状態にするような2つの危険因子とは何か?
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症例研究2
•
白血病の再発があった20歳の男性に対してイダルビシンおよびシタラビンに
よる再導入化学療法が開始された(100mg/m2)。 投与開始後5日目に
103°Fの発熱があった。
•
血液培養、尿培養、胸部X線検査が行われた。患者にはセフェピームおよび
バンコマイシンの投与が開始された。血液および尿培養の結果、微生物の発
育は陰性で、X線検査では浸潤は認められなかった。培養の結果は陰性では
あったが、患者は高熱に苦しみ、7日目にイミペナム/トブラマイシンおよびバ
ンコマイシンの投与に進んだ。
.発熱は治まらず、15日目にT.J.には顔と体幹に赤い発疹が発現した。
16日までに発疹は枝分かれがなくなり、痒みが出たが、痛みはなかった。
発疹はその後24時間広がっていき、背中、胸部、腹部、顔、頭部、鼠頚部、
大腿の内側、脛の前側全体に及んだ。
Q1: 患者の最初の発熱および持続する発熱の考えられる原因は何か?
Q2: 患者の発疹で考えられる原因は何か?
Q3: 患者にペニシリンアレルギーがあるとわかっている場合、どの薬剤が原因薬剤として最も
可能性が高いと考えられるか?
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皮膚の合併症: 質問
1. 化学療法の薬剤の管外遊出の兆候と症状は微かなものである。以下のうちどれが発疱剤の滲出
の明確な兆候か?
1. 注入部位での水疱形成
2. 接触した部位よりもさらに深部の静脈の腫脹
3. 血液が戻らなくなる
2. リポソーマル・ドキソルビシン投与1週間後に、患者は手足の腫脹、痛み、発赤を訴えている。
何をアドバイスするのか?
1. 化学療法は、この手足の反応を潰瘍に発展させる可能性があるので中止すべきである。
2. 患者は血清アルブミン値が下がり、拒食症になり、その後毛細血管漏出症候群や腫脹を起こす可
能性がある。
3. これは1~2週間で治まる一般的な反応であり、化学療法の予定を妨げることにはならない。
1. 患者には転移性大腸癌があり、頭皮にあたらしい発疹が現れ、左目の下に広がった。
何を行うべきか?
1. 患者の疾患は頭皮や顔に転移し続けるので、化学療法は継続する。
2. 治療を受け、発疹の評価をする。
3. 免疫障害のある患者とは接触させないようにする。