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ROAD TEST
No.5007
メルセデス・ベンツCLS350
MERCEDES-BENZ CLS350
テスト車輌概要 MODEL TESTED
●モデル名:MERCEDES-BENZ CLS350 BlueEFFICIENCY●車輌本体価格:930.0万円
●日本発売時期:2011年2月●最高出力:306ps/6500rpm
●最大トルク:37.7kgm/3500-5250rpm●0-97km/h加速:6.5秒●113-0km/h制動距離:44.8m
●最大求心加速度:0.95●テスト平均燃費:10.3km/ℓ●CO₂排出量:161g/km
オートカーの結論
★★★★★★★★☆☆
4
1
2
1
FRONT WHEEL ARCHES
フロントホイールアーチ
2
LED HEADLIGHTS
LEDヘッドライト
3
3
NOSE DESIGN
ノーズ形状
4
EMBLEM
エンブレム
“ドロッピングライン”と呼ばれるアーチ形状は、モノ LEDヘッドライトには交通状況に合わせて照射範囲を 先代よりも突き出たノーズはSLSのそれを踏襲したものだが、歩行者 スポーティさを強調するため、
“照準タイ
コックボディ以前のメルセデスを彷彿させる。
最適化するインテリジェントライトシステムを採用。
保護の観点から見ても有利である。
プ”ではなく
“埋め込みタイプ”
となる。
082 AUTOCAR 8/2011
MERCEDES-BENZ CLS350 ROAD TEST
4ドアクーペというカテゴリーを世に広めた立役者であるメルセデスのCLSが
HISTORY
シャシーを共有するEクラスのモデルチェンジを受けて、
こちらも刷新された。
早い者勝ち
かつてはその独特のコンセプトで市場を欲しいままにしていたCLSだが、
いまはアウディA7やBMW 5シリーズGTなど強力なライバルがそこに参入している。
メルセデスがダイナミックなイメージを前面に押し出そうとしたのとは裏腹に、
高い洗練性が強調される結果となった新型は、
いまだマーケットリーダーたり得るのか。
WE LIKE
Refinement, Interior accommodation, Impressive economy and CO₂ figures
ヴィジョンCLSは2003年のフランクフルト・ショーでお披露目された。
洗練度、室内の居住性、優れた経済性とCO₂排出量
CLS以前からメルセデスには大型の2ドアクーペは存在して
WE DON'T LIKE
は2003年にコンセプトカーとして発表されたヴィジョンCLS
いたが、4ドアクーペは新しい発想のモデルラインだった。CLS
Obsinate gearbox in Manual mode, Expensive to buy, Dynamic limitations
M/Tモード時にぎこちないギアボックス、高額なプライス、ダイナミクス性能
が量産化されたものだ。当時、メルセデスは829mmのリアレッ
グルームと470ℓのトランクに代表される広々とした空間を強
調していた。このコンセプトカーは人気を博し、量産モデルが
2004年に発売された。
7
6
5
5
TAILLIGHTS
テールライト
8
6
REAR WHEEL ARCHES
リアホイールアーチ
7
FRAMELESS DOOR GLASS
サッシュレスドアガラス
8
DRAG
空気抵抗
LEDを採用したテールライトにはボディ側面とリアエン このラインは過去のモデルへのオマージュではなく、飛 先代同様、
ドアガラスはサッシュレスだ。
ドアハンドルを 先代よりワイドになり前面投影面積は拡大したが、Cd値
ドを繋ぐデザイン上の役割も与えられている。
びかからんとするネコ科動物の大腿部をイメージした。 引くと自動的にガラスが少し下がる。
の改善により空気抵抗は10%減少している。
www.autocar-mag.com 083
こ
れ以前に流麗なフォルムをまとった4ドアサルー
ンが存在しなかったわけではないが、少なくとも
2004年にメルセデス・ベンツが初代CLSを発表するま
で、4ドアサルーンを大胆にもクーペと呼ぶメーカーはな
1
2
PARKING SENSOR
パーキングセンサー
ダッシュに並んだライトで障害物までの距離を表す。警告音はぶつかる直
前まで鳴らないので要注意。
SPEEDO
スピードメーター
欧州仕様では5mph刻みの目盛りが10mph刻みと同じくらい太く、即座
に速度を読み取りにくい。
かった。
メルセデスは当時、CLSで新しいマーケットセグメント
を創出したとアピールした。いまの時代、この手の主張
はあちこちのメーカーが滅多やたらと喧伝しており、本
当にそうなのか怪しい場合も多いが、CLSの場合、メル
セデスは確かにそれを成し遂げたようだ。
当初CLSは単独でマーケットを構成しており、いわば
独占状態であったため、初代はトータルでおよそ17万台
も販売された。アウディがA7、BMWが5シリーズGTで
参入してきたのはごく最近の話だ。プレステージ性と価
格的なクラスは異なるがVWのパサートCCも、テーマ的
にはCLSに近いクルマだといえる。
1
プラットフォームを借用しているEクラスが最新世代
2
に入れ替わったことを受けて、この度、CLSも一新され
ることとなった。新型も先代同様、価格はEクラスより
も若干高めに設定されている。欧州でのエンジンバリ
4
エーションはEクラスとさほど変わらないが、AMGブラ
5
ンドのCLS63 AMGを除けば、日本に導入されている
のは今回のテスト車である3.5ℓガソリンエンジンを積
むCLS350 BlueEFFICIENCY(ブルーエフィシエン
シー)のみである。
果たして、このCLSは依然としてマーケットを支配す
る絶対王者なのか、それともライバルに強みも弱みも見
4
抜かれてしまっている力なき老兵なのだろうか。
DESIGN & ENGINEERING●意匠と技術
★★★★★★★★☆☆
デザインテイストについての批評は通常、われわれの
テストの範疇ではないが、
「初代CLSの外観は人々から
受け入れられたとはいえ、これまでのところ、このニュー
モデルが同じくらいの賛同を獲得したかどうかは疑わし
い」とだけは言っておきたい。
よりアグレッシブな印象を受けるが、旧型に比べると
フォルムの純粋さは薄らいでいる。だが初代と同様、Eク
ラスのプラットフォームを用いて、パッケージング上のさ
まざまな要求をこれほどまでに流麗なボディに詰め込ん
だことは賞賛に値する。
もちろん、プラットフォームにはCLSのためのモディ
ファイが多少加えられている。このクーペは、魅力的だ
が禁欲的に仕立てられたエグゼクティブサルーンより
も、もっとダイナミックで運動能力に優れたモデルを意図
して開発されているのだ。
CLSではボディの軽量化を図って、
ドアパネルとトラン
クリッド、フロントフェンダー、パーセルシェルフがアルミ
製となっている。フロントエンドにはアルミとプラスティッ
クが複合的に使われており、サスペンションコンポーネ
ンツにもアルミが多用されている。
3
BUTTONS
ボタン
4
5
DISPLAY
ディスプレイ
GEAR SELECTOR
ギアセレクター
メタル調のボタンはほかとの質感の違いがアク 色調や輝度は申し分ないが、BMWのようなワイ ステアリング周辺にギアセレクターとシフトパド
セントとなり高級感を醸す。
ドスクリーンであればなおよい。
ルが標準で備わる。
Eクラスと同様、CLSのサスペンションはフロントが
マクファーソン・ストラット、リアがマルチリンク形式であ
る。標準ではコイルスプリングと2段階式パッシブダン
搭載グレードをテストするのは珍しいことだ。メルセデ
は快適で落ち着けるだけでなく、足元と頭上と肘まわり
パーを装着するが(今回のテスト車も標準仕様)、オプ
スによれば、ストップ&スタートシステムを含むブルーエ
に十分な余裕を与えてくれる。身長180cmの人間でも
ションとしてエアサスペンションが用意されている。ステ
フィシエンシー・プログラムを搭載したこの新型は、燃費
問題ない。ただし、低く傾斜の付いたルーフのために、後
アリングは、このサイズのメルセデスとしては初めて油
が先代に比べて25%向上しているという。
席への乗り降りには多少の気遣いが求められる。
圧式ではなく電動式のアシストを備える。レシオはEクラ
前席は現代のメルセデスに共通する地味な――言い
スよりもクイックである。
INTERIOR●室内
換えれば、落ち着いたトーンに包まれている。主なスイッ
3.5ℓのV6エンジンは最高出力306psと最大トルク
★★★★★★★★☆☆
チ類やコントロール系統など、目にするものの多くはEク
37.7kgmを発生し、7段A/Tを介して後輪を駆動する。
室内の妥協点はとても少なく、クーペであることが使
ラスと同じものが使われている。だが本革張りのダッシュ
純粋にパフォーマンスを追求したモデル以外で、われわ
いやすさを制限していると感じる機会はほとんどない。
ボードはCLS専用のもので、高級な見た目と雰囲気を演
れがディーゼル仕様ではなく大排気量ガソリンエンジン
後席スペースはたっぷりと確保され、彫りの深いシート
出している。
084 AUTOCAR 8/2011
MERCEDES-BENZ CLS350 ROAD TEST
HOW BIG IS IT?
PPETROL MAKES A RETURN
Cd=0.26
ガソリンエンジンの復権
この3.5ℓガソリンユニットでキーポイントとなる数字
は以下のとおりだ。燃費は欧州混合サイクルで14.5km/
ℓ、CO₂排出量は161g/km。それに対してディーゼル
(近年われわれが推奨してきた選択肢だ)の350C D I
は16.4km/ℓだが、CO₂排出量はほとんど変わらない
160g/kmである。
しかもディーゼルの方がガソリンより
専用ダッシュボードの採用でキャビンはEクラスより高級な仕上がり。
もパワーが劣り、騒音も大きい。
メル セ デ ス の 新し い 3 5 0 ガソリン ユ ニット――
BlueDirect(ブルーダイレクト)――は3.5ℓV6で、3世
代目の直噴テクノロジーを採用する。新型のピエゾイン
ジェクターを備え、エンジンの運転サイクルのなかで希
薄燃焼を行う領域を拡大している。またエンジン内部の
フリクションを先代のエンジンに比べて28%軽減した。
補機類には、オンデマンド型オイルポンプとパートタイ
ム動作型オルタネーターが使われ、パワーステアリング
はエンジンで駆動する油圧式ではなくなった。またストッ
プ&スタートシステムを標準装備する。ディーゼルが基本
チョイスでないのは久しぶりのことだ。
低いルーフが乗降性を損なうが、後席の空間自体は広々としている。
幅:1140mm
高さ:380mm
奥行き:
1130mm
VISIBILITY TEST
6気筒ディーゼルに匹敵するCO₂排出量を誇る、
きわめて高効率の新型V6ガソリンユニット。
視認性テスト
高い位置に取り付けられた大型のドアミラーが前方視界を妨げている。
トランクは使いにくい形状で、折り畳み式収納ボックスが重宝する。
「CLSはエグゼクティブカーとして評価するとその真価が分かる。
特に静粛性は突出しており、ロールス・ロイスよりも優れている」
例によってメルセデスのCOMANDシステムは扱いに
度に優れたクルマの部類に入る。そしてそのおかげで、
慣れが必要で、タッチスクリーン方式のような直感的な
このメルセデスのキャビンは長距離を移動する際にきわ
このガソリンエンジン搭載の350がもたらすパワー
操作ができない。だがそれ以外は全般的にスイッチ類の
めて心地よい空間となる。
は、ディーゼル仕様の350 CDIよりも高いランニングコ
配置はよく考えられており、人間工学的に優れたクルマ
も大過なくこなしてくれる。
ストに見合うものなのだろうか? もしあなたがメルセデ
になっている。
PERFORMANCE●動力性能
スのクーペに、毎日の通勤のアシよりもスポーツカーに
トランクは実用性の点から見てCLSでもっとも妥協
★★★★★★★★☆☆
近いものを求めているなら、答えはイエスである。より
を強いられる部分で、520ℓの容積は立派だが、長くて
306ps/37.7kgmのパワーを持つクルマがそれな
高回転型で、軽量で、より刺激的で強烈な出力特性を持
狭いスペースは使いにくい。オプション設定のトランク
りに速いのは、その車輪が回るのと同じくらい当たり前
ち、より強力なパワーと、優れたレスポンスとフレキシビ
ボックスは、パーセルシェルフの下に畳んで収納されて
のことだ。このV6ガソリンエンジンの真の強みはそう
リティのおかげで、
ドライバーズカーとしてはディーゼル
おり、それを引き出すとさまざまな深さに展開できる。こ
した純粋なパフォーマンスではない。それはクリーンで
モデルよりも魅力的なクルマになっているからだ。
れはわれわれがいままで見た収納デバイスのなかでもっ
融通のきく出力特性と、必要に応じて静かで穏やかに
そもそも経済性でディーゼルにやや遅れをとるのは事
とも便利で、よく考えられた収納方法であり、ひとによっ
も、騒々しく強烈にもなれる能力である。このユニットは
実だが、3.5ℓのガソリンユニットとしては非常に高効率
てはトランクの奥の隅に手が届かない可能性を考えると
CLSの二面性を持つキャラクターに完璧にマッチしてい
である。ストップ&スタートシステム(ガソリンエンジンの
非常に理に適ったデバイスだ。オプションの分割可倒式
る。これらに加え、0-97km/h加速6.5秒というダッシュ
350と500、および250 CDIに標準装備)はこのパワー
シートがこのCLSで新たに加わったが、今回のテスト車
力を擁することは単なるボーナスにすぎない。
トレインとの組み合わせでスムーズに機能し、止まるべ
には装着されていなかった。
そしてそれが7段A/Tと組み合わされて、フレキシブ
き瞬間に止まり、再始動すべき瞬間に直ちに再始動す
CLS350を現行市販車のなかで指折りのエグゼク
ルでスムーズなドライブトレインとなっている。このギア
る。振動もきわめて少なく、交差点の一時停止でエンジン
ティブカーにしている要素がもうひとつある。それは静
ボックスは真剣なスポーツドライビングに対応できるほ
が一瞬止まっても、運転の妨げになることはない。ブレー
粛性である。アイドリング時の室内騒音はわずか37dB
ど素早いレスポンスを備えているとはいえないし、M/
キは欲を言えばもう少しフィールが欲しいが、サーキット
テストでの耐久力にも優れ、制動能力も素晴らしい。
であったが、ロールス・ロイス・ゴーストが44dBであるか
Tモードでもドライバーの意図を忠実には反映してくれ
ら、これがいかに素晴らしい数値か分かるだろう。3速で
ないので、正直なところパドルシフトは必要ない。けれど
RIDE & HANDLING●乗り心地と操縦安定性
80km/hおよび113km/hで走行しているときの騒音テ
“スポーツ”あるいは“コンフォート”モードにして、ギア
ストでも、CLSはロールスよりも若干静かだった。われわ
ボックスが何をしているのかさえ考えていれば、刺激的
★★★★★★★☆☆☆
れがこれまでテストしたクルマのなかでも、もっとも洗練
なドライビングも、あるいはゆったりとしたクルージング
カントリーロードでCLSを走らせると、繊細でよく躾け
www.autocar-mag.com 085
TRACK NOTES
■ドライサーキット
「乗り心地に優れ、Eクラスよりも機敏に感じられるが、
ドライバーズカーではない」
■発進加速
V6ユニットはこのサーキットで実力を発揮し、
T1手前では145km/hに達した。
ラップタイム:1分19秒6
T3
(BMW 530d GT
T6
参考タイム:1分20秒9)
T2 T5
CLSはギアボックス以外はサー
キット走行にしっかり対応してい
T1
T4
る。
コーナーを攻めるにはスプリン
Start/finish
グがソフトすぎるが、ダンパーが挙
動を素早く落ち着かせてくれるし、
シャシーは急な切り返しにもよく
T7では0.95Gという高い旋回加速度を記録し、
反応する。
ハードに走らせたときのシャシーの能力の高さを証明した。
テストトラック条件:天候晴、乾燥路面、気温摂氏15.0度
0-402m発進加速:15.0秒(到達速度:157km/h)
0-1000m発進加速:26.9秒(到達速度:203km/h)
T7
MERCEDES-BENZ CLS350 BlueEFFICIENCY
48km/h 64
ラップタイム:1分17秒7
(BMW 530d GT
参考タイム:1分13秒6)
ここでのタイム差は主としてサー
キット路面の劣化によるものだ。
C L Sはウェットサーキットでは、
ESPの介入と望まないポイントで
のシフト動作のせいで、
コンスタン
トな駆動力を得るのが難しかった。
97 113km/h 129km/h
145km/h
161km/h
177km/h
193km/h
BMW 530d GT
48km/h
■ウェットサーキット
80
優れた手応えのステアリングのおかげで、オー
バーステアに素早く対応できた。逆にオーバース
テアを起こすのも、小さなきっかけを与えるだけで
自由自在だ。
64
80
97 113km/h
129km/h
145km/h
161km/h
177km/h
193km/h
■制動距離
乾燥路面
48km/h-0
48km/h-0
ESPは大きなスリップアングルを許容してくれ、
かつ介入時は効果的にクルマを立て直してくれる。
80km/h-0
113km/h-0
113km/h-0
湿潤路面
MERCEDES-BENZ CLS350 DATA
エンジン
80km/h-0
計測テストデータ
シャシー/ボディ
エンジン性能曲線
車輌重量:1735kg
形式:V型6気筒, 3498cc
最高出力:306ps/6500rpm
抗力係数:0.26
306ps at
6500rpm
最大トルク:37.7kgm/3500-5250rpm
ホイール:
(前)8.5J╳18、
(後)8.5J╳18
タイヤ:
(前)255/40R18、
(後)255/40R18
許容回転数:6800rpm
比出力:87ps/ℓ
馬力荷重比:176ps/t
変速機
37.7kgm at
3500-5250rpm
駆動方式:フロント縦置き後輪駆動
7段A/T
ブロック:アルミニウム/ヘッド:アルミニウム
ギア比/1000rpm時車速<km/h>
ボア×ストローク:92.9×86.0mm
①4.38/10.1②2.86/15.4③1.92/23.0
バルブ配置:4バルブDOHC
④1.37/32.2⑤1.00/44.3⑥0.82/53.9
圧縮比:12.0:1
⑦0.73/60.5
最終減速比:2.820
られた身のこなしとレスポンスで応えてくれる。スポーツ
カーのような感覚はないが、Eクラス・セダンに比べると、
引き締まっており緊張感が感じられる。これは主として、
燃料消費率
サスペンション
静粛性
メーカー公表値:
マクファーソン・ストラット式/コイル
アイドリング:37dB
市街地/郊外/混合モード
後:マルチリンク/コイル
3速最高回転時:74dB
10.9/18.2/14.5km/ℓ
3速48km/h走行時:56dB
ステアリング
オートカー実測値
総平均/動力性能計測時/ツーリング
10.3/2.7/13.3km/ℓ
3速80km/h走行時:62dB
3速113km/h走行時:65dB
形式:電動アシストラック&ピニオン
ロック・
トゥ・ロック:2.6
ABS/BA/ESP/ASR
燃料タンク容量:80ℓ
Euro NCAP/na
ブレーキ
現実的な航続距離:824km
後:
φ320mm通気冷却式ディスク
発進加速
中間加速〈秒〉
CLSが標準では2段階式パッシブダンパーを装着して
入力(市街地を低速で走行中の段差)
よりも、大きな入力
(大きなコーナリングフォース)に合わせて、より引き締
まったレスポンスを示す。そんな標準サスと比較的控え
前:
φ325mm通気冷却式ディスク
CO₂排出量:161g/km
だ。その結果、
“ただルーフが低いEクラス”以上のクル
マに仕上がっている。
いるのは先述のとおりだが、これはシャシーへの小さな
安全装備
最小回転半径:11.3m
より硬いサスペンションと重いステアリングによるもの
めな18インチホイールを装着したテスト車は、乗り心地
の快適さとボディコントロールが見事に調和した走りを
見せた。
実測車速mph(km/h) 0-30
(48)
0-40
(64)
0-50
(80)
0-60
(97)
0-70
(113)
0-80
(129)
0-90
(145)
0-100
(161)
0-110
(177)
0-120
(193)
0-130
(209)
0-140
(225)
0-150
(241)
0-160
(257)
086 AUTOCAR 8/2011
秒
2.7
3.7
5.1
6.5
8.4
10.6
12.9
16.0
19.8
24.1
29.4
ー
ー
ー
mph(km/h)
20-40
(32-64)
30-50
(40-80)
40-60
(64-97)
50-70
(80-113)
60-80
(97-129)
70-90
(113-145)
80-100
(129-161)
90-110
(145-177)
100-120
(161-193)
110-130
(177-209)
120-140
(193-225)
130-150
(209-241)
140-160
(193-257)
各ギア最高速度
秒
2.1
2.4
2.7
3.3
4.1
4.5
5.4
6.9
8.0
9.6
ー
ー
ー
イージードライビングでは、CLSは実際よりもソフトな
ダンパーセッティンングであるかのように落ち着いた走
69km/h 6800rpm
りを披露する。不均一な路面では少しパタパタするが、
105km/h 6800rpm
乗り心地はアウディA7あたりに比べるとより快適で、
1000万円近い高級車らしいリラックスした乗車感覚で
156km/h 6800rpm
ある。高速度域では、正確なステアリングを少し動かす
219km/h 6800rpm
だけでレーンチェンジができ、良好なスタビリティと高い
249km/h 5646rpm
249km/h 4630rpm
249km/h* 4121rpm
洗練度のおかげで素晴らしく出来のいいクルーザーと
なっている。
CLSは本気で走らせると、ターンインが正確なのが分
かる。長いノーズがひとたび内側を向くと、ラインをしっ
かりとホールドするのである。
ドライコンディションでは、
MERCEDES-BENZ CLS350 ROAD TEST
ROAD TEST
No.5007
MERCEDES-BENZ CLS350
AUTOCAR VERDICT ★★★★★★★★☆☆
「洗練度の高いエンジンで、
今後もCLSがこのクラスを牽引する」
ハードに攻めすぎると穏やかなアンダーステアが出る。
だが正しいアプローチでやれば、リアアクスルを少しス
リップさせてラインを調整することができる。だがコー
ナーの途中でバンプに遭遇すると、ダンパーから不快な
動きが起きやすい。
そのほかの不満としては、市街地走行時にステアリン
グの重みがときどき一定ではなくなることがある。ジャ
ガーXFよりもドライビングの満足度は低いが、このクラ
スのクルマに要求される幅広いダイナミクス能力を不足
なく提供してくれる。
BUYING & OWING●購入と維持
★★★★★★★★☆☆
CLSもほかのライバルも、決して安いクルマではな
い。CLSはEクラスと比べて実用性で劣るにもかかわら
ず、それ以上のプライスタグを掲げている。メカニズム的
不思議なことに、ベースとなったコンベンショナルなエグゼク
く、
トランクスペースが小さめだが、静粛性にが高く、ダイナミク
には同等のEクラスが850万円であるのに対し、CLSは
ティブサルーンよりもダイナミックなクルマを目指しながら、CLS
ス性能がちょっぴり優れたエグゼクティブサルーンとして見るべ
930万円もするのである。
を全体的に特徴づけているのは洗練度である。スムーズなV6ガ
きではないだろうか。スポーツドライビングを愉しむよりも、長距
ソリンエンジンを得て、CLSは素晴らしく静かなクルーザーとな
離を快適に走るときにもっとも威力を発揮するクルマである。
しかし、CLSは装備が充実しており、大部分の顧客は
オプションを一切追加せずとも十分に満足できるはず
だ。そうして見ると、アウディA7やBMW 5シリーズGT
と比較しても競争力のある価格設定がなされている。
った。そしてそれは、本来意図したダイナミックなイメージにはそ
そうした能力に、優秀な燃費と、広々としたキャビンが組み合
ぐわないかもしれないが、流麗なボディシェイプにも似つかわし
わされている。これらすべての資質を享受し、シャシーにあまり
いキャラクターだ。
多くを望みすぎなければ、CLSを選んで後悔するシーンはまず
だとしたら、このCLSをスポーティな4ドアクーペとしてではな
ないはずだ。
ランニングコストは概ねこのクラスとしては平均的な
TESTERS' NOTES テスターのひと言コメント
ものだが、このガソリン仕様のCLSの経済性は、これほ
どのパフォーマンスを発揮する3.5ℓV6としては優れて
いる。われわれが計測した平均燃費は10.3km/ℓで、
ツーリングルートでは10.6km/ℓを難なく超えた。
マット・プライアー
●スペースセイバータイヤを標準装備としている。
このメルセデスの選択は正しい。
●ポプラウッドのインテリアトリムが無償オプションだが、われわれは古風には見えない内装のほうが好きだ。 ヴィッキー・パロット
●ESPのオン/オフ切り替えは車載コンピューターの深い階層にあり、ステアリングホイールのボタン操作でしか解除できない
マット・ソーンダース
(し かも完全にではない)。
われわれは従来、大型車ではディーゼル車を推奨する
JOBS FOR THE FACELIFT マイナーチェンジ時に望むこと
ことが多いが、このエンジンの洗練性と魅力的なパワー
●ギアボックスのM/Tモード時のレスポンスを向上させ、
ドイラバーの意志に無関係に変速しない本当のM/Tモードにしてほしい。
●スピードメーターを一目で視認できるようにしてほしい。●可倒式リアシートを標準装備にしてほしい。
特性を考えると、今回ばかりは例外だと言わざるを得な
いだろう。
TOP FIVES
エグゼクティブは洗練性重視
MERCEDES-BENZ CLS350 BlueEFFICIENCY AUDI A7 3.0 TFSI quattro
JAGUAR XF 5.0 PREMIUM LUXURY INFINITI M37 S PREMIUM BMW 535i GT
メルセデス・ベンツCLS350ブルーエフィシエンシー
アウディA7 TFSIクワトロ
ジャガーXF5.0プレミアム・ラグジュアリー
インフィニティM37 Sプレミアム
BMW 535i GT
車輌価格
930.0万円
879.0万円
895.0万円
邦貨換算約850万円
878.0万円
最高出力
306ps/6500rpm
300ps/5250-6500rpm
385ps/6500rpm
320ps/7000rpm
306ps/5800rpm
37.7kgm/3500-5250rpm
44.9kgm/2900-4500rpm
52.5kgm/3500rpm
36.6kgm/5200rpm
40.8kgm/1200-5000rpm
6.5秒
5.6秒
(0-100km/h加速)
5.7秒
(0-100km/h加速)
6.2秒
(0-100km/h加速)
6.3秒
(0-100km/h加速)
249km/h
249km/h
249km/h
249km/h
249km/h
14.5km/ℓ
12.2km/ℓ
9.0km/ℓ
9.8km/ℓ
11.2km/ℓ
1735kg
1900kg
1840kg
1715kg
2000kg
161g/km
190g/km
264g/km
235g/km
209g/km
不得意分野がない優等生。洗練度が高
いうえに運転が愉しく、
快適。
魅力的な室内、
なかなかの乗り心地。
だ
がCLSには敵わない。
乗り心地とハンドリングはクラスベスト。高 個性的で魅力があるが、
パフォーマンス
い維持費がネック。
とコストで後れをとる。
贅沢なキャビンを持つが、パッケージング
と、
ごつごつした乗り心地がマイナス要素。
★★★★★★★★☆☆
★★★★★★★★☆☆
★★★★★★★★☆☆
★★★★★★☆☆☆☆
最大トルク
0-97km/h加速
最高速度
燃料消費率(欧州/混合)
車輌重量
(公称値)
CO₂排出量
われわれはこう考える
結論
★★★★★★☆☆☆☆
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