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ROAD TEST No 5041
VOLKSWAGEN UP
フォルクスワーゲン・アップ
同時期にコンセプトを発表しながら発売で先行を許したトヨタiQの後を追うアップだが、
VWはゴルフで確立したクオリティを、このコンパクトなニューモデルでも見せつけるのか。
photo: Stan Papior
(スタン・ペイピア)
MODEL TESTED ◎テスト車輌概要
●モデル名:VOLKSWAGEN UP HIGH UP 1.0●車両本体価格:邦貨換算約160万円●日本発売時期:未発売
●最高出力:75ps/6200rpm●最大トルク:9.7kgm/3000-4300rpm
●0-97km/h加速:13.8秒●113-0km/h制動距離:49.8m●最大求心加速度:0.88G
●テスト平均燃費:15.6km/ℓ●二酸化炭素排出量:108g/km
WE LIKE
実際の燃費、上級感のあるインテリア、賞賛に値する開放感
WE DON’T LIKE
トップグレードの価格、コンセプトカーに比べるとつまらない点
4
1
2
3
1 FRONT NOSE
フロントノーズ
ノーズデザインはコンセプトカーからほとんどそのま
ま持ち込まれた。ただし、
ボンネット下にあった収納
スペースに代わって、3気筒エンジンが横置きされて
いる。
84
AUTOCAR 05/2012
2 FOGLIGHTS
フォグライト
このモデルのワイドな笑い顔を、
フロントのフォグラン
プが多少なりとも中和している。だが、価格の高い
トップグレードにのみ標準となる装備だ。
3 ALLOY WHEELS
アロイホイール
15インチの
“スポーク”
アルミホイールはハイアップ・
グレード用の装備だ。それ以外のグレードは14イン
チのアルミホイールを標準装備する。
4 SUNROOF
サンルーフ
ハイアップ・グレードでさえ、
パノラミックサンルーフは
標準装備ではない。これは邦貨換算約10万円の
オプションである。
PORSCHE 911
年前、トヨタは大胆にも、コンパクトシ
3
いう点においてiQに匹敵するかのようにも見
ティカーの概念をリセットしようと企て
え、トヨタと同様、VWもまた、このニッチ市場
た。輝かしくも欠点を抱えるiQである。特別仕
において、経済性とエンジニアリングを売りに
立てのその四角いクルマは、デザインの常識
顧客を開拓できる力を持ってることを示した。
を覆すような大胆な挑戦だった。世界最大級
当然ながら、アップは業界の注目を集めた。
の自動車メーカーが擁する頭脳集団とその野
そして昨年の秋、開発は予定より遅れたもの
心は依然として健在であり、非現実的なほどの
の、コンセプトカーに込めた価値ある創意をい
オリジナリティを生み出す力を有していること
ささかも失ってはいないかのような市販バー
を世に示したのである。
ジョンが、ついに登場したのである。
トヨタがそのiQのコンセプトカーを発表し
た同じ年、彼らと販売台数のランキングを争う
フォルクスワーゲンはフランクフルト・ショー
HISTO RY
アップの祖先
VWは初のシティカーとして、
セアト・アローザのバッジをル
ポに付け替えた。
VWは、ハッチバック作りにおいては長く優秀な歴
史を持っているが、シティカーの歴史については、その
系譜に目立った痕跡を刻めていない。1950年代と
1960年代にフィアット500とミニが成功を収めたに
もかかわらず、VWはそのジャンルが再び脚光を浴び
る1990年代まで待ってから、リブランドしたセアト・ア
ローザをルポとして発表した。そのクルマを2005年に
引き継いだのが、安価だが全般的に不人気だったブ
ラジル生産のフォックスであった。
DESIGN&ENGINEERING
●意匠と技術
でアップのコンセプトカーを披露する。リヤエ
★★★★★★☆☆☆☆
ンジンと後輪駆動という創意に富んだ構成で
VWの生産インフラはコンポーネンツの共用
まとめられたアップは、革新的なアプローチと
化を前提に運用されている。したがって、コン
5
ROAD TEST
8
6
7
5 BELTLINE
ベルトライン
アップの高いベルトラインはデザイン上の必要性か
らだが、巨大なCピラーのせいで、小さな子供から外
が見えないと不満が出るかもしれない。
85
AUTOCAR 05/2012
6 BADGE
車名エンブレム
VWはルポのバッジを継続するプランも検討したそう
だが、結局はコンセプトカーの名前を市販モデルに
採用する懸命なる決断を下した。残念ながら感嘆
符もついてきた。
7 REAR BUMPER
リヤバンパー
リヤバンパーのディテールでフロントグリルの形状を
再現させ、
すっきりと調和したフォルムを提供してい
る。
8 BOOT CATCH
リヤゲートの開閉
トランクのオープナーをVWバッジの下に隠さなかっ
たのは惜しまれる。黒いプラスティック製のノブは質
素だ。
1 INSTRUMENT
2 SAT-NAV
極端に大型の計器ポッドは室内でもひときわ奇抜なアイ
テムだ。背の高いドライバーの場合、
スピードメーターの上
部をステアリングホイールが邪魔するかもしれない。
Maps&More社製のGPSナビゲーションユニットは簡単
に取り外せる。バッテリーを内蔵しているため、車外に持ち
出しても使える。
インストルメントパネル
GPSナビゲーション
2
1
3
4
5
3 AIR VENTS
エアコン吹き出し口
ダッシュボードのエアベントはクローム調のト
リムで縁取られている。ダッシュボードのセン
ターコンソールに設けられたポッドにも同じト
リムを使い、
巧みに強調している。
86
AUTOCAR 05/2012
4 STEERING WHEEL
ステアリングホイール
ハイアップでは革巻きのステアリングホイー
ルが標準装備される。
リーチ調節は備えてお
らず、
ハイトのみ変更できる。
5 TRACTION CONTROL
トラクションコントロール
トラクションコントロールのスイッチはわかりや
すい位置にあるが、
それを押しても完全には
システムを解除できない。
VOLKSWAGEN UP
ROAD TEST
HOW BIG IS IT?
サイズはどれくらい?
585mm5
920m
m
2420mm
59%
35mm
前席空間は広い。デザインの洗練度には欠けているが、
それを質の高さが補っている。
39%
41%
3540mm
1424mm
1428mm
1641mm
Turning circle: 9.8m
251-951
litres
n
mi ax
mm m
550 0mm
82
n
mi ax
mm m m
0
3
8 50m
10
1478mm
870m
960m m min
m m ax
0.32
後席は、
レッグルームについては十分にあるが、背の高い人が乗ると頭上が狭い。
VISIBILITY TEST
視認性テスト
高さ
:380-910mm
4.7º
obscured
幅:900-1050mm
スリムで直立したピラーと限りなく
前方寄りに置かれたキャビンのお
かげで、
フロントの視界は素晴らし
い。後方視界も良好である。
奥行き:440-1030mm
6.7º
obscured
セプトカーで採用した異例のレイアウトをオー
87
ラゲッジスペースはリヤシートを起こした状態でクラストップの251ℓの容積を持つ。
空間側に取り戻しているのだ。この空間は、冷
きりとしたVWのデザイン言語により、3ドア車
ソドックスな横置き前輪駆動に置き換えた決
却システムをエンジンの前方ではなく、側面に
はライバルに比べて研ぎ澄まされた姿に仕上
定は理解できる。リヤエンジン+後輪駆動を
配置することで稼ぎ出している。おかげでアッ
がっている( 5ドアは2012年の後半に追加され
押し通せば大幅な追加投資が必要となり、コ
プのホイールベースはこのセグメントでもっとも
る)。とはいえ実物を見ると、革新的というより
ンポーネンツの共用化にも制約を受けていた
長い部類となり、V Wによれば、3.54mという
も派生的に見えるのは否めない。
はずだからだ。
短い全長からすると驚異的な室内空間を確保
リヤアクスル直前にエンジンを搭載したコ
できたという。
ンパクトなVW車というアイディアに興味を示し
3気筒ガソリンエンジンは軽量なオールアル
ていた人にとってみれば、この変更は当初のコ
ミ製で、最高出力は60psと75psの2種類が用
INTERIOR
●室内
★★★★★★★★☆☆
ンセプトにあったオリジナリティを著しく薄め
意される。現在はどちらも同じ5段マニュアル
キャビンも冒険的というほどの新しさはない
てしまう改悪に映るだろう。だが、コンセプト
のギヤボックスのみとの組み合わせだが、来
ものの、VWらしい上質な仕上げとエルゴノミ
カーの広々とした空間(それが異例のレイアウ
年後半には5段A/Tが追加される予定だ。
クス的な的確さが見事に融合しており、これは
トを採用した大きな理由のひとつ)
は、創意工
こうした駆動方式の変更はあったが、外観
これで満足のいくものだ。スイッチ類の配置の
夫によって保たれているとVWは主張する。
はコンセプトカーによく似ている。それはトヨ
一部は、それがニュービートルから派生してい
創意工夫が凝らされたのは、おもにボンネッ
タ・アイゴ/シトロエンC1/プジョー107が2005
ることを感じさせるが(とくにトップグレードの
トの内側だ。新世代の3気筒ユニットにより、エ
年に確立した、大きな目のフロントとガラス
ハイアップで)、シティカーサイズにうまくス
ンジンルームから100mm近いスペースを居住
ハッチのリヤを持つシティカーに近いが、すっ
ケールダウンされていて、すっきりとまとまって
AUTOCAR 05/2012
いる。
TRACK NOTES
標準装備のGPSナビ(ハイアップ以外では
サーキットテスト
オプション)
についても同様だ。Maps&More
T3
■ドライサーキット
VWアップ ハイアップ1.0
ラップタイム:1分34秒5
キア・ピカント1.0
参考タイム:1分34秒7
社製のポータブルデバイスなのだが、これほ
T6
T2 T5
Start/finish
その結果、アップは(この高価なグレードの
場合)
ライバルの多くとはまったく対照的に、上
短いホイールベースと高い
ロールセンターにもかかわら
ず、T5でのブレーキング時の
スタビリティは良好である。
T1の進入ではブレーキングで極端なノー
ズダイブが発生するが、制動力は十分だ。
ど見事にインテリアと調和がとれている例は
ない。
T1
T4
アップのほうがタイヤが太く、パワー
も若干大きいが、ドライサーキットで
ピカントに差を付けるのはむずかし
い。ピカントよりもスプリングが若干
ソフトで背も高いためにロールは大
きいが、果敢に持ちこたえる。
T7
級感のある室内となっている。フィアット500の
素晴らしい美的センスにはおよばないが、その
意図的なシンプルさは、韓国製と日本製のライ
バルを比較 対 象に考えている潜在 顧客に、
■ウェットサーキット
VWアップ ハイアップ1.0
ラップタイム:1分21秒8
キア・ピカント1.0
参考タイム:1分20秒7
アップを一段上のクルマに感じさせるだろう。
T2からの脱出時には、グリップ状況は
良好なのに、過保護なEPSのために
それを活かせず、我慢を強いられる。
T5
室内スペースの広さについても、ほとんどの
T6
T7
T3
ややアンダーステア傾向に躾けられ
たシャシーのおかげで扱いやすい
が、ウェットサーキットでは活気に欠
ける。ESPシステムは完全に解除で
きず、早期に介入する。トラクション
とブレーキパフォーマンスは強力だ。
T4
T2
T1
かなりスピードが乗るT8では良好なス
タビリティに助けられ、ストレートへの
速度を維持できる。
0
7.0s
9.6s
5s
PERFORMANCE
113km/h
129km/h
145km/h
13.8s
18.7s
24.5s
38.1s
15s
20s
25s
30s
●動力性能
★★★★★★★☆☆☆
35s
アップは明らかに市街地での利用を前提に
キア・ピカント1.0
48km/h 64km/h 80km/h
4.1s
0
6.5s
9.3s
5s
10s
97km/h
113km/h
129km/h
145km/h
13.8s
19.0s
28.5s
44.2s
15s
20s
25s
30s
35s
40s
48-0km/h
8.3m
0
80-0km/h
22.7m
10m
湿潤路面
フォーマンスに対する潜在顧客の要求レベル
に走れるだけでは、もはや十分とはいえない。
乾燥路面
WET
して設計・製作されているが、シティカーのパ
は確実に高まっている。市街地をそこそこ元気
■制動距離
DRY
間がある。小さな荷物を入れるスペースさえ備
を持つ。
97km/h
10s
たり、市街地の短い距離を乗るには十分な空
は驚くほどで、クラス最高水準の251ℓの容積
VWアップ ハイアップ1.0
4.7s
はかなり窮屈だが、標準的な身長の大人がふ
えている。しかも、幅や奥行きこそ狭いが深さ
■発進加速
テストトラック条件:天候霧/乾燥路面/気温12℃
0-402m発進加速:20.1秒(到達速度:115.4km/h)
0-1000m発進加速:19.4秒(到達速度:113.9km/h)
48km/h64km/h 80km/h
ディサイズから想像するより、レッグルームは
はるかに広い。さすがに後席は、背の高い人に
T8
Start/finish
人にとっては失望には当たらないだろう。ボ
8.9m
48-0km/h
20m
113-0km/h
49.8m
30m
24.7m
80-0km/h
40m
したがってこのアップも、経済性と洗練度とレ
50m
スポンスのいずれにおいても優れている必要
51.1m
113-0km/h
があった。75psの3気筒エンジンを搭載するク
ルマにとってはむずかしい注文である。
パワーの不足(および3気筒特有の排気音)
88
AUTOCAR 05/2012
PORSCHE 911
にもっとも気づかされるのは発進時である。普
通に発進しようとするときでさえ、やや引っ張り
ROAD TEST
UNDER THE SKIN
3気筒エンジンの秘密
気味にエンジンを回さなければならない。まし
てやアグレッシブにスタートしようとすると、ク
ラッチとスロットルのレスポンスは予想を逸脱
した鈍さであり、パワーがドライバーの意図に
追いつくまでのあいだ、屈辱的なほど遅い走り
となる。
だが、そこを乗り越えてしまえば状況は好転
する。VW最新世代の3気筒は生き生きとした
“ハッピー”なエンジンで、おおむね期待に応
えてくれる。そのしわがれた排気音は完全に
消えることはないし、3気筒ゆえのバランスの悪
さゆえ、このクルマの短い背骨を通じてかすか
アップに搭載された999ccの3気筒ガソ
リンユニットは、シリンダーの配置間隔こそ
同社の1.0ℓ4気筒エンジンと同じだが、完全
な新設計である。アルミ鋳造クランクケース
とアルミヘッドを作用した、わずかにオーバー
スクエアなエンジンで、バランサーシャフトを
省いているのが3気筒としては異例だ。これ
はピストンとコンロッドを軽量化してムービン
グマスを軽減して実現したが、それにより、
洗練度を犠牲にすることなく効率のアップを
図っている。
動弁系の仕様はツインカムシャフト/気筒
あたり2バルブ/吸気側可変バルブタイミン
グ機構となっている。水冷エグゾーストマニ
フォールドをシリンダーヘッドと一体化するこ
とで、エンジンのウォーミングアップを早め、
短距離走行での経済性を向上させている。
ピストンとコンロッドを軽
量化して、
バランサーシャ
フトを不要にしている。
な振動が伝わってくるのは確かだが、どちらも
巡航状態に入れば和らぎ、アップのキャラク
ターにはむしろ合っているようにも思える(とく
に市街地で)。
開けた道や高速道路ではパワーが大きいほ
うのモデルでも遅く感じられ、それこそ馬より
も早いものを追い越すのは無理なようにさえ思
えるかもしれない。だが、頻繁なギヤチェンジ
が必須にならない程度のトルクは発生する( 5
段M/Tは確実な操作を行わないと思いどおり
にシフトできないことがあるから、これは助か
る)
し、6600rpmのレッドラインまでよく回る。
そこまで回さずに走り続けられるほど忍耐
力のあるオーナーなら、大きな経済的アドバン
テージがある。われわれが設定したツーリング
発進加速に関しては上をいくライバルがいるが、
基本的には大きなクルマのような快適な走りである。
O N T H E LIMIT
限界時の挙動
VWアップのオーナーがコーナーをハイ
スピードで駆け抜けようと思う機会はそう
多くないかもしれないが、仮にその必要が
あったときは、もっと大きなクルマのように
余裕あるブレーキングとハンドリングの能
力を発揮する。
これほど小さく、パワーも控えめで、車高
が高めのクルマとしては、アップはサーキッ
89
AUTOCAR 05/2012
トでのテストによく耐えた。VWが施したし
なやかなシャシーセッティングのため、ハー
ドコーナリング時のロールは大きいが、ト
ラクションやステアリングの正確さに深刻
な影響を与えるほどではない。ターンイン
から定常円旋回に移行したあとは、強力
な横方向のグリップを発揮する。
ハンドリングバランスは若干フロント偏
重で、グリップの限界時には温和で読み
やすい挙動を示す。これはこのようなク
ルマに望ましい運動特性である。だが、こ
のクラスにはもっとバランスがよく、また、
ESPを完全に解除できるクルマがほかに
あり、そちらはもう少しナチュラルな走りを
示す。
ウェットでは、細いタイヤとABSと常に
動作している電子制御のおかげで、や
やおもしろみに欠けるほど強力に路面を
ホールドする。
アップの控えめな重量と電子ブレーキ
アシストシステム、それにブレーキング時に
フロントが顕著に沈み込む特性のため、ブ
レーキペダルを思い切り踏んだときは、や
や唐突な姿勢変化を示す。
注意事項:馬力荷重比とトルク荷重比の計算にはメーカー公称車両重量を使用しています。
© Autocar 2012. テスト結果は権利者の書面による承諾なしに転用することはできません。
一部バックナンバーは www.autocar.jp に掲載されています。
DATA LOG
計測テストデータ
ルートでのテストでは、21.1km/ℓという素晴ら
しい燃費を記録した。これはVWの公称値とほ
とんど変わらない数字である。35ℓの燃料タン
81
75ps/
6200rpm
14
61
9.7kgm/
3000-4300rpm
オートカー実測値
総平均/ツーリング/動力性能計測時
15.6/21.1/4.6km/ℓ
メーカー公表値
市街地/郊外/混合モード
17.0/25.0/21.3km/ℓ
燃料タンク容量:35ℓ
現実的な航続距離:547km
CO₂排出量:108g/km
11
41
8
6
20
3
0
■燃料消費率
車両重量:929/945kg
(実測)
抗力係数:0.32
ホイール:5.5J×15in/アルミ軽合金
タイヤ:185/55R15
スペアタイヤ:なし
(補修キット)
17
Torque (kgm)
形式:直列3気筒, 999cc
最高出力:75ps/6200rpm
最大トルク:9.7kgm/3000-4300rpm
許容回転数:6600rpm
馬力荷重比:80.7ps/t
トルク荷重比:10.4kgm/t
比出力:75.1ps/ℓ
駆動方式:横置き前輪駆動
ブロック:アルミ軽合金/ヘッド:アルミ軽合金
ボア×ストローク:
φ74.5×76.4mm
バルブ配置:2バルブDOHC
圧縮比:10.5:1
■シャシー/ボディ
■エンジン性能曲線
Power output (ps)
■エンジン
0
Engine (rpm)
2000
4000
6000
0
8000
■サスペンション
前:マクファーソン・ストラット/コイル
+スタビライザー
後:
トーションビーム/コイル+スタビライザー
■ステアリング
形式:ラック&ピニオン
(電気油圧アシスト)
ロック・
トゥ・ロック:3.0回転
最小回転半径:4.90m
■ブレーキ
前:
φ256mm Vディスク
後:
φ200mmドラム
■変速機
形式:5段M/T
ギヤ比/1000rpm時車速〈km/h〉
①3.64/7.2
②1.96/13.5
③1.27/20.8
④0.96/27.5
⑤0.80/33.0
最終減速比:4.17
クで、航続距離は720km以上が見込める。ポ
ロ・ブルーモーションのおよそ1290kmには遠
くおよばないが、アップを市街地での通勤にし
か使わない人であれば不満のない数字だろう。
RIDE&HANDLING
●乗り心地と操縦安定性
★★★★★★★☆☆☆
現代のシティカーの歴史は事実上、ミニと
フィアット500から始まっているため、カートの
■静粛性
アイドリング:39dB
3速最高回転時:75dB
3速48km/h走行時:60dB
3速80km/h走行時:65dB
3速113km/h走行時:68dB
ようなハンドリングでなければならないという
■安全装備
さを提 供することができないでいる。だが、
ABS, ESP, ASR
Euro N CAP/ 5ツ星
不文律ができてしまった。その結果、多くのク
ルマがこのアプローチに追随し、その結果、
荒れた英国の道路を走るのに必要なしなやか
アップは違う。VWは控えめなスプリングレー
トを選ぶ賢明な判断を下し、おかげで素人が
舗装したような路面の凹凸でさえ吸収できる能
力をアップにもたらした。大きなクルマのような
■発進加速
■中間加速〈秒〉
乾燥路面
実測車速mph
(km/h)
30 (48)
40 (64)
50 (80)
60 (97)
70 (113)
80 (129)
90 (145)
100 (161)
110 (177)
120 (193)
130 (209)
140 (225)
150 (241)
160 (257)
90
AUTOCAR 05/2012
mph (km/h)
秒
4.7
7.0
9.6
13.8
18.7
24.5
38.1
-
快適性は、アップをライバルと差別化しようと
■最高速
2nd
3rd
4th
5th
20-40 (32-64)
4.9
8.3 12.2 16.1
30-50 (40-80)
5.2
7.9 12.4 17.0
40-60 (64-97)
-
8.4 12.3 18.1
50-70 (80-113)
-
9.5 13.0 18.6
60-80 (97-129)
- 10.9 16.2 21.1
70-90 (113-145)
-
- 22.8
-
80-100 (129-161)
-
-
-
-
90-110 (145-177)
-
-
-
-
100-120 (161-193)
-
-
-
-
110-130 (177-209)
-
-
-
-
120-140 (193-225)
-
-
-
-
130-150 (209-241)
-
-
-
-
140-160 (193-257)
-
-
-
-
48km/h 137km/h 171km/h
6600rpm 6600rpm 5167rpm
1
3
5
したVWの努力の一面である。
これがアップの魅力の幅を拡げる、意義深
い側面になっている。扱いやすいサイズのク
ルマにありがちな、揺さぶられるような乗り心
地にうんざりさせられることの多い顧客から
2
は、歓迎されるはずである。しかし、なんの犠
4
89km/h 171km/h
6600rpm 6200rpm
*claimed
牲も伴わなかったわけではない。アップはVW
のほかのクルマに比べてコーナーでのロール
が大きく、ハイペースで走らせると落ち着きな
PORSCHE 911
く上下動する傾向が多少ある。また、高負荷
ROAD TEST
ROAD TEST No 5041
時にシフトチェンジすると、ボディが跳ねる傾
向も感じる。
VOLKSWAGEN UP
だが、ほとんどの問題はクルマの負担が大
きいときにのみ気づく程度であり、普通の速度
AUTOCAR VERDICT ★★★★★★★★☆☆
域であれば満足できる走りだ。ステアリングは
●オートカーの結論
手応えが軽く、駐車時と市街地では操りやす
「幅広い能力により、VWの新型車はクラストップになった」
い。それでいて市街地以外でも、フィードバッ
ク不足はV Wの技術による良好なフロントグ
TESTERS’ NOTES
●テスターのひと言コメント
リップに助けられ、ほとんど障害とならない。
車重の軽さと寸法の小ささは、走り全体にも
助手席側パワーウィンドウのスイッチが運転
席側にない。キャビンでコストダウンするにし
ても、
もっといい方法を見つけられなかったの
だろうか?
ニック・キャケット
プラスをもたらしている。車重は実測で945kg
でクラスの平均的な数値だが、大型のサルー
脱着式のGPSナビは素晴らしいが、露出し
た電極はウィンドスクリーンの丸い吸盤跡と
同じくらい、泥棒にとって格好の目印に見え
るかもしれない。
マット・プライアー
ンから乗り換える顧客にとっては、テンポのい
い発進が求められる市街地で扱いやすく感じ
るだろう。
ガラス製テールゲートの欠点として、V Wは
ちょうどいいサイズのバッジの下に、
トランク
キャッチを優雅に隠すことができなくなった。
マット・ソーンダーズ
BUYING&OWNING
●購入と維持
アップのコンセプトカーに込められていた大胆なエンジニアリン
グのアイディアを、利益を確保するために放棄したことは、
フォルク
スワーゲン自らが正直に認めている。だが、
ここはしばし、革新性の
欠如について目をつむろう。
そうすればこのアップが、VWが冷静に
計算し尽くした成功へのアプローチのよい見本であることが明らか
になる。あれだけ革新的でありながら、
トヨタiQが大ヒットモデルに
はなり得ていないことを忘れてはいけない。アップがフォックスと入
れ替わるモデルだと考えれば、前任モデルよりも完成されたクルマ
であることは明らかだ。
実際、
よくできたインテリア、
まずまずの乗り心地と洗練度、競争
力のある室内スペース、現実的な燃費、
そしてブランドの魅力を備
えたアップは、
このところ新型車の参入で活発化しているこのセグ
メントにおけるクラスリーダーである。
コンセプトカー段階での技術
的なオリジナリティによってもたらされるはずだったカリスマ性に欠
A
けると思うのは、理想主義者だけである。●
★★★★★★★★☆☆
主力クラスにおいては、VWのブランド名が
比較的高い価格を正当化できる要素になって
いることはV W自身も認めているが、アップは
古さが目立ってきたルポが、そのクラスで失っ
たシェアを取り返すことを目指したモデルであ
る。英国では
“Take Up”、
“ Move Up”、
“ High
Up”という3つのグレードが用意され、もっと
も安いモデルは邦貨換算約12 5万円で、バ
リューを売り物にする韓国製のライバルとも渡
り合える価格になっている。また、フィアット
JOBS FOR THE FACELIFT
●マイナーチェンジ時に望むこと
•3気筒エンジンの排気音をもっと静かにし
てほしい。
•すべてのモデルでCO₂排出量が100g/
kmを切るようにしてほしい。
•エンジンにターボチャージャーを装着して、
サスペンションを下げて、
アップGTIを造っ
てほしい。
500やフォードKaなどの欧州製の人気車よりも
安い。それに、装備が充実しているトップグ
フィエスタに肩を並べる。
でありながら、CO₂排出量は100g/kmを切っ
レード車の邦貨換算約160万円というプライス
ただし、アップには経済的なハンディキャッ
ていないのだ。ただし、ブルーモーションテク
は、より値打ちのある同社のポロやフォード・
プがひとつある。小さな3気筒エンジン搭載車
A
ノロジーモデルを選ぶと96g/kmである。
●
TOP FIVE
1st
VOLKSWAGEN
Up high up 1.0
車両価格
最高出力
最大トルク
0-97km/h加速
最高速度
燃料消費率
(混合)
車輌重量
(公称値)
CO₂排出量
われわれは
こう考える
結論
91
AUTOCAR 05/2012
2nd
HYUNDAI
i10 1.2 Style
3rd
TOYOTA
iQ 100G→
4th
KIA
5th
FIAT
Picanto 1.25 Equinox 3dr
500 1.2 SPORT
225.0万円
69ps/5500rpm
10.4kgm/3000rpm
12.9秒
(0-100km/h)
159km/h
20.9km/ℓ
990kg
113g/km
フォルクスワーゲン・
アップ ハイアップ1.0
ヒュンダイi10 1.2スタイル
トヨタiQ 100Gゴー
キア・ピカント1.25エキノクス 3ドア フィアット500 1.2スポーツ
邦貨換算約160万円
75ps/6200rpm
9.7kgm/3000-4300rpm
13.8秒
171km/h
21.3km/ℓ
929kg
108g/km
邦貨換算約145万円
85ps/6000rpm
12.3kgm/4000rpm
13.3秒
169km/h
21.7km/ℓ
996kg
108g/km
155.0万円
68ps/6000rpm
9.2kgm/4800rpm
15.3秒
(0-100km/h)
150km/h
20.8km/ℓ
890kg
110g/km
邦貨換算約180万円
85ps/6000rpm
12.3kgm/4000rpm
11.0秒
(0-100km/h)
171km/h
21.3km/ℓ
1025kg
109g/km
装備が充実し、
活気のある、
依然と
して素晴らしいクルマ。
ただし古くさ
くなりつつある。
もっと大きなクルマに匹敵する洗 スタイリッシュで室内が広く、運動 トレンディで魅力にあふれるが、平
練度を持つ革新的なシティカー。 性能も優れている。だが、
アップほ 凡な走りと高い価格が不満。
ライバルと比べると価格が高め。
ど成熟していない。
★★★★★★★★☆☆
★★★★★★★★☆☆
よくできたパッケージング、魅力、
ま
ずまずのバリュー。このクラスでも
トップにランクされるシティカー。
★★★★★★★★☆☆
★★★★★★★★☆☆
★★★★★★☆☆☆☆