非在来型エネルギー資源・オイルサンド事業

知っておきたい
第 28 回
非在来型エネルギー資源・オイルサンド事業
今回は非在来型エネルギー資源の中で、JX 開発が参画しているオイルサンド事業についてご紹介します。
非在来型エネルギー資源とは?
オイルサンドとは?
在来の油・ガス田では、流体が動きやすい地層
オイルサンドとは、流動性がない、高い粘度の油分を多く含む砂岩のことです。その油
スを生産しているのに対し、非在来型エネルギー
などで軽質の炭化水素成分を失い、重質分だけが残って高粘度となったものと考えら
的に割れ目を形成したり、熱を加えたり、砂ごと
カナダ・アルバータ州を中心とした地域には、大規模なオイルサンド鉱床が存在し、
発・生産する原油・天然ガス資源を指す言葉で
ビチューメンの採取にあたっては、砂ごと露天掘りで採掘する方法と、地下に水蒸
ド」や「シェールオイル」、天然ガス系では「シェー
なっていますが、JX 開発は、同地において、オイルサンドを露天掘りで採掘し、改質し
に井戸を掘り、主に圧力差を使って原油・天然ガ
資源とは、そのような地層以外の場所から、人工
採掘したりといった、従来とは異なる方法で開
す。代表的な例として、石油系では「オイルサン
ルガス」や「コールベッドメタン」などが挙げら
れます。
分は、地下深部で生成された原油が地表に近いところに移動した後、地下水との接触
れ、ビチューメンと呼ばれています。
採掘できるビチューメンは約3 , 000億バレルと推定されています。
気で熱を送り込んでビチューメンを流動化させる方法があり、現在では後者が主流と
て合成原油を生産するシンクルードプロジェクトに1992年から参画しており、今後
も数十年にわたり安定的に操業を続けられる埋蔵量を保有しています。
オイルサンドの採掘から生産まで
シンクルードプロジェクトにおいて、オイルサンドが採掘されてから石油製品として出荷されるまでのフローを示します。
●露天掘り
巨大パワーショベルと超巨大ダンプトラックを用いて、地層を切り崩し、オイルサンドを採掘・運搬します。採掘されたオイルサンド
は、粉砕機にかけて細かく砕かれた後、混合器で温水・蒸気と混ぜ合わせてスラリー※1 にして、次の抽出工程にパイプラインで送られま
す。なお、露天掘りされた後の採掘現場は、環境保全の観点から埋め戻し・整地をして原状回復されます。
※1:液体中に固体(砂泥・鉱物)が混じっている流動性のある混合物のこと。
①巨大パワーショベルを用いて
オイルサンドの層を削り出す
②世界最大級の超巨大ダンプトラック
露天掘りした地層は
原状回復
③原状回復した緑地に生息するバイソンの群れ
④粉砕機にかけた後、温水混合器に投入される
●抽出
この工程に送られた、オイルサンドを含むスラリーは、巨大な分離
機にかけられ、ビチューメン成分は泡状になって浮上して砂と分離
されます。続いてビチューメンを含む泡はナフサ※2 で希釈されて、
次の分離機で水分と分けられます。一方、分離機で分けられた砂な
どの固形分は、別の抽出装置でさらにビチューメン成分を取り除い
た後、採掘現場の埋め戻しに使われます。
抽出されたビチューメンは希釈材であるナフサと分離(99 % が回収
され再利用)され、アップグレード工程にパイプラインで送られます。
※2:沸点範囲が30∼230℃の直留軽質留分で粗製ガソリンとも呼ばれる。
●アップグレード
この工程では、ビチューメンを重質油分解装置や水素化分解装置
⑤抽出されたビチューメン
⑥抽出プラント
これらの装置はアップグレーダー
と呼ばれています。
にかけ、重質の炭化水素を熱分解することで、軽質・低硫黄・低粘度
の合成原油を生産します。
この工程で用いる装置群はアップグレーダーと呼ばれていますが、
アップグレーダーによる処理がシンクルードプロジェクトの特徴であ
り、多くの同業他社が流動性のないビチューメンをナフサなどで希釈し
て販売しているのに対し、シンクルードプロジェクトでは付加価値の高
い合成原油にして、パイプラインで北米各地に出荷しています。
⑦アップグレードされた合成原油
⑧アップグレーダー
画像出典について:⑥は Syncrude 社 HP より、そのほかは Canadian Oil Sands 社 HP より。