祖父からの贈り物

みどりの賞
福岡県八女市
見崎中学校3年
てしまい、祖父を困らせてしまったことがあります。
でいました。しかし、大切にしていたその木を傷つけ
です。私はこの木を、小さい頃は﹁きいたん﹂と呼ん
くれた、とても大切でたくさんの思い出が詰まった木
れた時に祖父が記念にとわざわざ遠くから買ってきて
と三十メートルにもなる木です。この木は、私が生ま
木があります。﹁あすなろ﹂という種類で大きくなる
私の家には、今は亡き祖父にもらった私と同じ歳の
てしまいました。週末に祖父が来た時、祖父は枝の折
ボールが庭に植えてあった木に当たり、木の枝が折れ
い ま し た。 固 い ボ ー ル だ っ た せ い か、 友 達 が 投 げ た
私は近所の友達と家の前でドッチボールをして遊んで
ど、まったく気にかけてなどいませんでした。ある日、
もたくさんでき、ほぼ毎日のように遊び、木のことな
越しを手伝ってくれたのも、祖父でした。近所の友達
私は引越しをして、今の家に住み始めました。木の引
身長をぬかれる程になっていました。その頃ちょうど
祖父からの贈り物
私が、その木と出会ったのは、私が生まれて一週間
れた木を見て、一瞬悲しそうな顔をしながらも、泣い
福岡県知事賞
くらい経った頃です。祖父が、自分で私の家の庭に植
て謝る私に、﹁空ちゃんのせいじゃないけん、心配せ
山本 空
えてくれたそうです。それから私は、その木と一緒に
んでも大丈夫。﹂と優しく声をかけてくれました。多分、
成長していき、小学校に上がる頃には、私はその木に
みどりの賞
急車で運ばれたということを父から聞きました。私は
ました。しかし、数日後、祖父が山から転落して、救
んということをしてしまったのだろう、と深く反省し
祖父も悲しかっただろうと思います。私はその時、な
し、植えていたそうです。私は改めて祖父を尊敬しま
が、祖父は地域の公民館などの公共の場所に木を寄付
を思い出すような気がしました。後から聞いたのです
した。私はそこに行くと、木が好きだった祖父のこと
祖父が亡くなってからもうすぐ五年が経ちます。今
した。
した。急いで病院に行くと、寝たきりで昏睡状態の祖
でも私は、祖父母の家を訪ねると、まず仏壇にお参り
その時、自分がどん底に落ちたような気持ちになりま
父がいました。いつもの祖父と違い、たくさんの管に
をして、その後、父と一緒に祖父の山まで行って、お
の大きさになっています。花や実をつけてはいません
つながれていて、頭や手に包帯を巻かれており、私は
それから数日後、私と父で祖父が転落した山に行き
が、とても存在感があり、その木を見ると、祖父から
参りをします。祖父が、私に残してくれた、贈り物は
ました。そこは、祖父の所有していた山で、私は行っ
見守られているような気持ちになります。私はこの祖
怖くて祖父をじっと見ることもできませんでした。そ
たことがありませんでした。山に着くと、たくさんの
父からの贈り物を、大人になっても私の家の中心的存
十五年経った今、とても成長し、私の家の半分くらい
木が植えてあり、一つ一つの木に、祖父の手書きで木
在として残していきたいです。
れが祖父と会った最後でした。
の名前と植えた年月日を書いた板がぶら下げてありま