豚の換気の基本と注意すべきポイント

豚の換気の基本と注意すべきポイント
アイオワ大学のエクステンションのマーク・ストーリーさんが養豚現場の換気と温度の関係を紹介していますので、ご
く一般論ですが載せてみたいと思います。
常々「環境調整は豚に聞け」という言葉を大事にしている。どんな建物でも通用するオールマイティな温度などない
のが実際だからである。この小論文で私が示したいことは、換気に関する要因や原則を総括しながら、あなたの農場
の豚、もっと言えば特定豚舎の豚に最適な環境設定をするにあたって考慮すべき情報をまとめてみることである。設
定が同じでも豚舎が違えば、換気システム、更には同じ農場でも季節が違えば適合しないことを肝に銘ずる必要があ
る。
熱交換-4つの基本的な原則
Energy Exchange – four basic methods:
● 伝導(Conduction) – 物理的な接触によって実体
あるものへ熱が伝わることで、床や壁がその例。
● 対流(Convection) – 空気や泥、水など実体ない
ものを介して熱が伝わることで、冷気の吹き込みは
マイナス要素だが、高温時にはプラス効果も期待
できる。
● 輻射(Radiation) – 輻射効果を狙って熱を伝える
仕組みで、例えば大きな窓のそばに立つと冬はよ
り寒く感じるが、夏は気温よりも暑く感じる。
● 蒸散(Evaporation) – 水が気化する際に熱を奪うことを利用した熱の伝え方で、呼吸がよい例。すなわち呼吸
器官内で水が気化することを利用したものがスプリンクラーやドリップのようなクーリングシステムである。図中のL
atent heatと同じ意味。
温度環境の調査
● 温度 – 温度計。気化や蒸散に影響大。
● 風速 – スモーク、デジタルその他のセンサーを用いて計る。気化や蒸散に影響。
● 表面温度 – 赤外線温度計。熱伝導や輻射に影響する。
● 相対湿度 – 湿度計。対流や蒸散に影響する。
これらの指標に加えて、実質的環境温度(EET)という指標があり、更に重要な概念である。
EETを計算する一つの方法
①豚の位置での温度、②すきま風、③断熱材性能、④床材のタイプ、などから総合的に合算して計算される指標が
EET、いわゆる実質的環境温度である。
それでは、断熱効果はどうだろうか。高い断熱効果があれば、ほとんど不変だが中程度ないしは、それほど断熱効
果がない場合には、それぞれ 2 度~16 度くらいの低下を考慮すべきだ。
更に床材のタイプでは、乾燥したコンクリートで 5 度、濡れたコンクリートで 10 度、ウーブン(金属)では 5 度の低下が
計算されている。プラスチックスノコでは断熱効果があるので 4 度弱の低下に抑えられるが、これらはピット下からの風
を無視した(ドボン)計測値なので注意すべきである。逆に麦わらやプレイウッド(合板材)では 3.9 度の温度上昇を見
込むと定義されている。
実質的環境温度の計算方法
①豚の位置での温度 ℃
②風速、あるいはすきま風など(-) ℃
③断熱性能(-) ℃
④床材のタイプ(+/-) ℃
効果的環境温度(EET) ℃
①温度:厳密には湿度も加味するが基本的に豚の位置での温度
②風速:豚の位置での風速
風速計によるチェック 体感温度の変化
30cm/秒
-5.6℃
45cm/秒
-7.2℃
150cm/秒
-15.6℃
③断熱性能
断熱性(気密性) 体感温度の変化
高
± 0℃
中
-1.9℃
低
-7.2℃
④床材のタイプ
床材
体感温度の変化
乾いたコンクリート
-5.0℃
濡れたコンクリート
-10.0℃
ウーブン
-5.0℃
プラスチック(テンダー)
-3.9℃
プレイウッド
+3.9℃
わら
+3.9℃
アイオワ州立大学エクステンション
EET(実質的環境温度)=豚の高さでの温度①-(②+③+④)として計算される(上記参照)。気密性は既にわか
っていることなので実際には大雑把に風速と床材だけでも目安になるだろう。
豚の体温は、ほぼ 38~39 度で体温維持能力も勿論備えてはいるが、それにはやはり限度がある。寒い時には震え、
局所血管の収縮などをして出来るだけ体温を逃がさないようにして耐え、暑い時は逆に荒い呼吸、体を広げて出来る
だけ冷えた床面に接触させたり泥や濡れた床面に触れて体温を逃がし、食欲も落として対応する。
下限限界温度(LCT)とは、餌を余計に食べて発熱促進してあげないといけない限界温度のことで、逆に上限限界
温度(UCT)とは、暑過ぎて生産性に支障を来たし始める警戒温度と考えたい。摂食を控え、涼しい環境が必要にな
る限界温度である。これ以上の温度になると著しく生産性が落ちるはずだから早急な対応が必要になる。
研究によれば華氏で1度(約 0.6℃)、EETが下がるたびに 60 ポンド以下(27kg 以下)の豚で一日 6.8g余計に餌を
食べる必要があり、80 ポンド以上(36.4kg 以上)だとその3倍の一日 20gが必要といわれている。ウィンドウレスの豚舎
であれば低い温度や風速、そして濡れた床面などを考慮すべきである。
理想的な環境温度に比べて華氏で 5 度(約 3℃)下がるたびに、食下量が 10~15%落ち、一日平均増体も 10~
15%減少すると言われている。
ラジアントヒーターや赤外線ヒーターによるヒーティ
ング法を適用することで、部屋全体の温度を下げる
ことが出来る。豚が感じる体感温度が最適になるよう
に管理することがポイントである。この方法を採用し
ているのに加温しすぎては豚は暑くて寝ていられな
い。一方不十分な加温で豚が寒すぎて積み重なっ
てしまうのも問題である。豚が積み重なるのは温度
が低すぎるというシグナルである。
温度環境コントロールが行き届いた離乳舎
理想とされる換気量
それでは理想的な換気量は一体どのように計算するのだろうか。換気は温度と連動しており、温度設定で適切な換気
が与えられるように設計するのが普通である(外気が内部よりも低い時)。
推奨される換気量(CFM/頭)
体重 (kg)
寒い
普通
暑い
4.50 - 06.75
1
8
20
6.75 - 11.25
2
10
25
11.25 - 22.50
3
15
35
22.50 - 67.50
7
24
75
67.50 - 117.0
10
35
120
圧送量の推定(ファンの大きさ別)(10 インチ静圧下での CFM)
直径
回転数/分
HP
CFM
8”
1650
1/30
316
10”
1550
1/30
457
12”
1550
1/30
1,073
実際のファンの能力は
18”
1140
1/6
2,460
あくまでもメーカーからの
18”
1725
5/8
3,920
データを利用すること!
24”
855
1/3
4,310
24”
1140
7/8
5,990
その他- 36”インチファンでは約 10,000 CFM であり、48”インチでは 19,000 CFM の能力がある
必要な換気量の計算式
1 頭あたりに必要とされる換気量 × 在庫頭数 = 必要換気量
外気よりも低温である室内への入気口の広さ(面積)
必要換気量(CFM) ÷ 800 = Ft2
入気口の面積
(1ft2 =0.09m2 )
外気よりも低温である天井入気口の広さ(面積)
必要換気量(CFM) ÷ 400=
Ft2
換気目標は、湿度50~70%、入気スピードは分速240~300m(4~5m/秒)、静圧は0.05~0.10インチと
いう条件で簡易計算できるよう求めた計算式ですが、重要なのは風速やファンの効果を減退させる様々な要因です。
これは季節ごとに行なう機械の点検とともに常日頃からの清掃が効果を最大限に発揮するということです。
インレット周囲からのすきま風や吹き込みは時に注意しなければならない。それだけでなく冬季の開けっ放しのドア
を走る風、使用していない夏用ファンのカバーの破損なども注意を要する。インレットの問題がないかどうかもよく確か
めねばならない。インレットが少ない、あるいは閉じたインレットが多い場合
は、入気風速が異常に高まり、極端な風速の発生要因となる可能性があ
る。
夏場にドアを開けっ放しにすることでショートカットシステムになり速やか
に換気が出来る利点もある。インレットからの風速が急速に落ちて効果的に
温度が上昇する。照明、餌、更には水道管などが空気のスムーズな流れを
妨害する可能性もあるのでよく観察する必要がある。十分な天井裏のスペ
ースを取ることでスムーズに入気されることと、1cm程度の穴も塞ぐ必要が
あるでしょう。これによって。十分な静圧が確保できるのである。
管理は非常に重要である。湿度が高い場合は換気量を上げるかヒーター
をオンする。一方低すぎる場合は換気量を下げる。アンモニアが多い場合
は除糞をもっと頻繁に行いよく洗浄し、ガターにも水を張って換気量を上げ
る。また一酸化炭素が確認されたら、まずガスヒーターを掃除して適性に
調整し、排気の戻りを出来るだけ防ぐようにして換気量を上げる。更にダ
冬場は大ファンの開口部をしっかり塞ぐ
ストが多い場合には、洗浄が何よりで湿度を高め飼料管理
をきちんと行う、すなわちドロップパイプ、フィーダーの調整、
リッドの調整、ウェット&ドライフィーダーに切り替るなども一
つのヒントである。また飼料に1~2%の油脂を添加し埃が
舞い上がらないようにするのも一般的なダスト対策だ。
豚舎を管理していくマニュアルを作り上げていく一方、設
備や月令等が違えば当然すべての豚舎で同じ方法を取る
ことはできないことを考慮する。同様なセッティングで同じ位
の豚に同じような効果的な温度が与えられるようにするので
ある。あとは換気のセッティングを微妙に変化させて豚に最
すす病も環境問題のひとつの指標である
適な条件を与えられるようにしよう。
August 2006 マーク・ステーリー(アイオワ州立大学エクスステンション)
(2007 年 2 月 グローバルピッグファーム㈱
けだし豚舎(オガ床)、快適な環境で飼育される和豚もちぶた
典型的な和豚もちぶた