09/10 - AKchem.com

2009.10
2004.07
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-海外雑誌の主要タイトルとサブタイトル紹介による情報-
*記事の詳しい内容については、各誌をご覧ください。
海外雑誌:
Modern Plastics Worldwide;
Plastics Technology ;
Plastics Engineering ;
Kunststoffe International ;
その他
〈10 月度のトピックス〉
食品に触れる用具・容器・包装材料には、その安全性を確保するために様々な規制や基準が
あります。今月のトピックスは、これらの材料に関する EU の規制の概要と、それに対応した
BASF 社(独)のエンプラを含む樹脂の種類と用途を紹介した Kunststoffe International 8 月
号の記事を要約して紹介します。
●欧州の食品と接触する材料の規制概要
EU には食品と触れる材料に関する 3 つの規制や指令があります。1つは EU 規則 EC No.
1935/2004 で、材料の基本的な要求事項が示されており、通常の使用条件の下で、a)人の健康
を危険にさらしたり、b)食品の組成に許容範囲以上の変化をもたらしたり、c)食品の官能特性
(味、匂い等)に変質を引き起こすほど食品に移ることがあってはならないとされています。
2 つめは製造方法に関する規則 EC No.2023/2006 で、食品用途の GMP
(good manufacturing
practice、適正製造規範)が示されています。この規則は、食品接触材料が人の健康に害を与
え得る危険性を除外するために、サプライチェーンのすべての段階において品質保証システム
と品質管理システムを求めています。
もう1つの規制は EU 指令 2002/72/EC で、食品と接触するプラスチック材料の製造には、
指定されたモノマーと添加剤だけが使用可能であることを明記しています。
プラスチックを食品と接触する用途で使うときは、これらの 3 つの規則あるいは指令を守ら
ないといけません。
●BASF 社の対応
BASF 社が生産するプラスチックには、古くから食品包装等に使われているものもあれば、
自動車や家電が主な用途の PA 樹脂や PBT 樹脂が食品分野に使われることもあります。主用途
が他分野の製品には、末尾に FC(food contact)をつけて GMP 対応を示しているものもあり
ます。FC グレードのほとんどは、米国市場で必要な FDA の認可を取得しています。
GMP 対応の樹脂の製造には特別な設備とスタッフが必要で、さらに工程が長くなり管理項
目が増える等の理由で製造コストが高くなります。原料や用役にも制約があり、GMP 規則に
沿った物だけが使用可能で、例えばペレタイザーの冷却にはフレッシュな水を用いなければな
りません。 従ってこのような材料の価格は高くなりますが、そのかわりこれらの製品は GMP
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基準で生産され、品質保証書をつけて供給されます。食品接触認証は直接接触するものだけで
なく、ボトルを覆うシュリンクフィルムのような間接接触材料にも必要です。
本文中には同社のプラスチックの中で、このような用途で使われる製品の特徴や、主な具体
的用途が記載されています。下記の表はその内容を要約してまとめたものです。
樹脂の種類
製品名
食品関連用途の例
PA66
Ultramid○R A
やかん、コーヒーメーカー、台所用スパチュラ
PA6/6T
Ultramid○R T
多くの台所用品、食品生産用ベルトコンベア
PBT
Ultradur○R B
コーヒーメーカー、電気ポット、フライパンのふた、台
所用コンテナ、歯ブラシ、飲料カートンの多層ラミネー
トフィルムの 1 層、飲料や食品の缶のアルミニウムコイ
ルの被覆
POM
Ultraform○R
全自動コーヒーメーカー、食品産業のベルトコンベヤ
ー、食塩のグラインダー、食品計量器の歯車、シャワー
ヘッド、飲料水のフィッティング内部の部品
ポリスルホン
Ultrason○R S
ポリエーテルスルホン
Ultrason○R E
ポリフェニルスルホン
Ultrason○R P
包装材料、飲料水ろ過膜、電子レンジ皿、哺乳ビン
スチレン・ブタジエン・ブ Styroflex○R
コップ、航空機内食事用具、食肉用透明フィルム
ロックコポリマー
Styrolux○R
飲料ボトルのラッピング用シュリンクフィルム
SAN(St/AN)
Luran○R
サラダボウル、ミキサー、保存用ジャー
MABS(MMA/ABS)
Terlux○R
食品用途と、それ以外に医療、診断、化粧品
ASA(AN/St/アクリ Luran○R S
電子レンジオーブンのハウジング、ジューサーのろ過部
レート)
分
(Kunststoffe International 8 月号 p.48-51)
〈主 要海外誌 記事のデ ィクショ ナリー〉
バイオプラスチック生産設備は 2012 年に 170 万トンで、PE、PVC や PA の計画もある
欧州バイオプラスチック協会の事務局長が、バイオプラスチックとして生分解性樹脂とバイ
オ資源由来の樹脂を取り上げ、市場規模の推移やメーカーの設備投資の状況、あるいは今後の
用途展開の可能性について述べています。
欧州のバイオプラスチック市場はこの数年間、年 20%以上で成長しています。一方世界全体
の生産設備の能力は、2008 年は 35 万トンですが、メーカー発表の数字をあわせると 2012 年
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末には 170 万トンになる見込みです。投資を計画しているメーカー名、樹脂のタイプおよび設
備規模と稼動年が一覧表で示されています。
樹脂の種類は PLA(ポリ乳酸)や PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)以外へも広がっ
ており、バイオ資源を原料とする PE 樹脂や PVC 樹脂も 2011 年前後から生産が始まる見込み
です。特に Bio-PE は Braskem 社と Dow-Crystalsev 社(共にブラジル)が、それぞれ 20 万
トンと 35 万トンの設備を計画しています。さらに PA 樹脂(Arkema、DuPont、BASF)やポ
リエステル樹脂(DuPont)も生産計画があります。これらは生分解性ではありませんが、化
石資源節約と CO2 排出削減につながります。現在、世界の全プラスチック生産量は約 2 億 5,000
万トンですが、原理的にはその 60%、つまり 1 億 5,000 万トンがバイオ燃料やバイオエタノー
ルから生産できると事務局長は言っています。
PLA の現在の用途は主に包装材料ですが、改質により耐熱性や耐微生物性が向上したものも
あり、携帯電話、スキー靴あるいは自動車の内装材等の耐久性を必要とする用途へも広がりつ
つあります。
(Kunststoffe International 8 月号 p.6-11)
EMS-CHEMIE の長繊維強化 PA 樹脂はダイカスト合金を上回る強度を有する
EMS-CHEMIE 社(スイス)の、長繊維 GF で強化した PA 樹脂 Grivory○R GVL の特徴に関
する紹介記事です。樹脂は芳香族構造を含む PA 樹脂です。長さ 10mm のペレットは、4,000
~16,000 本の長繊維 GF(40~60w%)を含み、通常の射出成形機で使用が可能です。得られ
る成形品には多量の長繊維 GF が網目状に存在して樹脂を補強しているので、ダイカスト合金
を上回るほどの強度を有すると紹介しています。成形品の樹脂を完全に除去して繊維だけ残っ
た状態でも、元の成形品の形状を維持している写真が紹介されています。
この材料は高温での機械的特性が優れ、標準的な GF 強化樹脂 Grivory○R G に比べて、加熱
撓み温度や高温での剛性が顕著に向上するので、より高い温度で使用できます。また 3 次元に
広がる繊維構造は、亀裂の生長防止に有効で、高いエネルギー吸収容量(耐衝撃性)と高剛性
を同時に満たす部品の製造が可能です。さらに非常に優れた耐クリープ性を有し、特に高負荷
で温度を上げたときのクリープ変形が小さいことを挙げています。そのほかに疲労強度、弾性
率、横剛性あるいは反り等について具体的な物性値や Grivory○R G に対する向上率を示して、
Grivory○R GVL が金属をしのぐ物性と軽量化を可能にする材料であることを伝えています。
(Kunststoffe International 8 月号 p.40-41)
Dow Chemical は PS、ABS、SAN、PC 等の事業の売却を計画
Dow Chemical 社(米)は事業ユニット StyronTM の売却を計画しています。この事業ユニ
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ットは、PS、ABS、SAN、PC、スチレンモノマー、スチレン-ブタジエンゴムとラテックスを
含み、あわせて年間約 50 億ドルの売上げがあります。また Dow と Chevron Phillips 社との合
弁事業 Americas Styrenics の Dow の比率 50%を含みます。同社はこの事業ユニットを 10~
20 億ドルで売ることを望んでいます。Dow の会長兼 CEO が、「これらは利益が出る良いビジ
ネスだが、今後のコア事業ではない。」と述べたことを報じています。 なお Dow Chemical 社
は、世界最大の PS メーカーで、マーケットシェアは 13%です。
(European Plastic News 9 月号 p.8)
Bayer MaterialScience は PC 樹脂の医療用途向け高流動グレードを上市
Bayer MaterialScience 社(独)は、透析装置の部品、カテーテルコネクターやドラッグデ
リバリーのデバイスのような用途に適する PC 樹脂の新グレードを上市しました。 この樹脂
Makrolon○R Rx2435 は、強度と靭性のバランスが良く、しかも高流動性のため、今後ヘルス・
ケア市場で増大する薄肉用途に適応するものであると紹介しています。
(European Plastic News 9 月号 p.34)
DuPont の POM 樹脂をキャビネットのトレー固定具に採用
英国の Mailbox Mouldings 社が、医療用キャビネットのトレーアレスター(トレーの固定具)
の材料に、DuPont 社(米)の ポリアセタール樹脂(POM)Delrin○R を使ったことを紹介して
います。アレスターはトレーが偶然外れるのを防ぐと共に、中身を探しやすくするために斜め
に引き出すことを可能にしています。DuPont 社は、Delrin○R 樹脂は低摩擦・低摩耗で 15 年
以上の耐久性があると述べています。
(European Plastic News 9 月号 p.34)
Eastman Chemical は医療器具用の透明コポリエステル樹脂 Tritan™を上市
Eastman 社(米)は、優れた耐薬品性、熱安定性、加工性、透明性および耐加水分解性を有
する、新しい透明な医療器具向けのコポリエステル樹脂 Tritan™を上市しました。同社は、こ
の樹脂は PC 樹脂や PMMA 樹脂以上の性能や加工性を有し、健康上の懸念が議論されている
ビスフェノール A を使っていないことを PR しています。
この記事には樹脂の構造に関する記載がほとんどありませんが、後で紹介する Chemical &
Engineering 8 月 31 日号 p.20 の記事に詳しく書かれています。
(European Plastic News 9 月号 p.34)
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米国カ州高等裁判所は仮判決でスチレンを Proposition 65 リストに加えないよう命令
米国のカリフォルニア州高等裁判所は、州の環境保護当局が、人の健康を脅かす薬品リスト
Proposition 65(安全飲料水及び有害物質施行法令)にスチレンを加えてはならない、という
仮判決を下しました。 このリストには、癌や生殖毒性の原因になることで知られている化学物
質が挙げられています。裁判官は判決で、このリストにスチレンを加えることは、
「その製品の
使用に破壊的な影響を与えるだろう」と言ったと伝えています。
(Chemical & Engineering News 8 月 24 日号 p.25)
海中で PS 樹脂がモノマー~三量体に分解することを日本の研究者が発見
日本の研究者、道祖土勝彦(日大)と小寺洋一(産総研)等は、世界中の沿岸地域の砂と水
を分析して、その中にいろいろなポリマーの分解生成物を見つけました。 彼らはその原因を解
明するために、温度を変えてポリマーの熱劣化実験を行ない、30℃のような低温でも PS から
スチレンモノマー、二量体、三量体が生成することを確認しました。このような分解は外洋よ
りも沿岸近くの厳しい環境で起きる可能性が高いと彼らは考えています。
なお記事にはこの研究発表の出典が示されていません。今年 11 月 5 日に沖縄で開催される
『フォーラム 2009:衛生薬学・環境トキシコロジー』の一般ポスター発表で、本件に関連する
と思われる 2 件の発表があります。
(Chemical & Engineering News 8 月 24 日号 p.32)
DuPont はポリフッ化ビニルフィルム用原料モノマーと樹脂の生産設備増強を進める
DuPont 社(米)は、ポリフッ化ビニルフィルム(PVF)Tedlar○R の原料となる樹脂とモノマ
ーの生産設備増強のために、1億 2,000 万ドルの投資することを報じています。 Tedlar○R は、
太陽光発電モジュールを長期にわたり保護するためのバックシートに使われます。 新設備は
2010 年半ばに稼動の予定で、完成後の生産能力は現在の 2 倍になります。
同社の資料によれば、この投資は同社の公約の1つ「化石燃料への依存度の減少」に基づく
もので、太陽光発電市場は今後数年間で急成長し、Tedlar○R および関連する新製品の売上は、
2012 年までに 10 億ドルを超えると予想しています。
(Chemical & Engineering News 8 月 31 日号 p.16)
Eastman Chemical のポリエステル系樹脂 Tritan™が哺乳ビンに採用される
Eastman Chemical 社(米)のポリエステル系樹脂 Tritan™が、哺乳ビンの材料として採用
されました。この材料は、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール(TMCD)、1,4-シ
クロヘキサンジメタノール(CHDM)およびテレフタル酸ジメチルの 3 成分からなるポリエス
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テル樹脂です。TMCD はプロピレンから始まる 6 ステップで作られ、その途中の中間体の化学
名と、研究の歴史が紹介されています。
この樹脂は 2007 年末に上市され、家庭用品の用途でシェアを獲得しつつあります。同社に
よれば PC 樹脂の代替としてベビー哺乳瓶に使用されている材料は Tritan™、PE、透明 PP、
ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホンです。 Tritan™の製造コストは、PC と同
程度と推定されており、最も高価な原料は TMCD の 1.30 ドル/ポンドと報じています。
(Chemical & Engineering News 8 月 31 日号 p.20)
BASF はドイツの PA6 工場を閉鎖
BASF 社(独)が 2010 年末で Rudolstadt (独)の PA6 工場を閉鎖して、同社の Antwerp
(ベルギー)と Ludwigshafen(独) に生産を集中する計画を報じています。 Ludwigshafen
でも PA6 生産能力を削減する予定で、これに伴い 58 人が失業し、19 人がレイオフされると伝
えています。同じ内容を報じた他紙(Chemical & Engineering News 9 月 14 日号 p.18)の記
事によれば、閉鎖後の BASF 社の PA 樹脂生産能力は、6%減って 68 万トンです。
(Chemical Week 9 月 14/21 日号 p.5)
ドイツは燃料電池自動車用の水素供給の全国ネットワークを 2015 年までに構築
ドイツで、燃料電池自動車用の水素供給ネットワークを、2015 年までに国内に構築する国家
プロジェクトがスタートしました。参加企業は、自動車の Daimler 社、ガスの Linde 社(独)、
そしてエネルギー資源等の EnBW 社 (独)、OMV 社(オーストリア)、Shell(蘭)、Total
(仏)、 と Vattenfall (スウェーデン)で、推進の主体は NOW(Nationale Organisation
Wasserstoff)です。2015 年には世界中で数十万台の燃料電池自動車が走ると想定されていま
す。計画によると、第 1 段階では 2011 年までに 1 つの地域でネットワーク構築を行い、第 2
段階で 2015 年までに全国展開する予定です。
(Chemical Week 9 月 14/21 日号 p.5)
DuPont と Evonik Degussa はそれぞれ植物由来原料の PA 樹脂を上市
ひまし油から作られるセバシン酸を原料とするポリアミド樹脂 PA1010 が 2 社から発表され
ました。1つは DuPont 社(米)が国際プラスチック展示会 NPE2009(シカゴ)で同社の Zytel○R
RS の 1 グレードとして発表され、もう 1 つは Evonik Degussa 社(米)の VESTAMID○R Terra
のグレードの1つです。PA1010 は柔軟で、半透明の、 半結晶性 ナイロンです。物性的には
PA12 や 1212 と PA6 や 66 の間に位置するといわれ、ガソリン等に対する耐久性が高いので、
非強化タイプは燃料チューブなどに、また強化タイプは電子デバイスなどに使われます。
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また 2 社は PA610 も発表しており、これも原料はセバシン酸です。DuPont 社の Zytel○R PA610
はデンソー社(日)のラジエーターエンドタンクに使われています。
(Plastics Technology 9 月号 p.17)
SABIC は植物繊維で強化した PA6 樹脂を上市
SABIC Innovative Plastics 社(サウジアラビア)が、最近の NPE(国際プラスチック見本
市)で、天然繊維で強化された PA6 樹脂を発表しました。 製品名は LNP○R Thermocomp○R
PX07444 で、クラワ(curaua)というパイナップル科の植物の繊維で強化されています。こ
の繊維はハンモック、釣りライン、ロープ、ネット等に使われ、表面処理なしでナイロンと密
着します。クラワで強化した PA 樹脂は、ブラジルの自動車部品メーカーによってサンバイザ
ーのフレーム やブラケットに使われています。
記事には 20%クラワ繊維強化 PA6 樹脂の主要な物性が、非強化、20%GF 強化、20%タル
ク強化と比較して書かれており、比重は GF 強化より小さく、引張り強度や曲げ強度は非強化
と GF 強化の間の値であることが示されています。
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