技術開発レポート「熱源設備向け省エネ最適化制御システムの開発」

熱源設備向け省エネ最適化制御システムの開発
1. はじめに
均 3%程度であり最適化に十分使用できる。図 3 は最適運転
半導体や薬品系などのクリーンルームを有する工場で
の検証試験を行った時の結果である。冷水槽や温水槽をう
は,コージェネレーションシステムやボイラ,冷凍機等,
まく活用して夜間蓄熱を積極的に行っている。また,需要
多くの熱源機器が稼働しており,大量のエネルギーを消費
予測により蒸気吸収式冷凍機が最小限の台数となりガス使
している。近年の省エネニーズの高まりに応えるため,こ
用量を削減している。最適化効果の一日積算値は,省コス
れら熱源設備向けに,エネルギー需要の予測に基づく最適
トで 4.5%,省エネ,省 CO2 で 3%であった。効果は季節
により変動するが,通年では 3~5%の効果が実際に得られ
化制御システムを開発したので報告する。
2. 最適化制御システムの概要
ている。
図1に最適化制御システムの構成を示す。対象となる熱
源設備は多くの機器で構成されており,需要に応じて様々
予測値[MW]
実測値[MW]
誤差[%]
電力
60
予測値[t/h]
実測値[t/h]
誤差[%]
蒸気
8
10
な運転が可能となっている。クリーンルームを有する工場
の電力,冷水,温水,蒸気といったエネルギー需要は外気
5
0
0
-5
状態(温度と湿度)の影響をうけ,季節や昼夜によって大
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きく変動する。こういった熱源設備は,需要の変動要因を
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1 2 :0 0
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理解している運転員の経験により運用されていることが多
温水
実測値[G J/h]
誤差[%]
10
い。しかしながら,人による運転には自ずと限界がある。
0 :0 0
予測値[G J/h]
実測値[G J/h]
誤差[%]
予測値[G J/h]
冷水
60
18
5
0
0
-5
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6 :0 0
1 2 :0 0
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10
5
-5
最適化制御システムは,まず,気象予報や生産計画に基
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5
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づき,一日の需要変化を予測する。需要予測にはニューラ
図 2 需要予測結果
ルネット等を利用している。ただ,予測には必ず誤差が発
生するため,実需要を使って自動補正し精度を高めている。
燃料コスト差(最適-従来)
冷 凍機電力(従来)
燃 料流量(従来)
予測した需要に対して,各機器の特性や各種制約条件か
電力コスト差(最適-従来)
冷凍機電力(最適)
燃料流量(最適)
らなる最適化モデルを使用し,一日の運転コストが最小と
なる最適運転スケジュールを算出し各機器を制御する。こ
れにより熱源設備全体の最適化運転を実現している。また,
夜 間 電 力 活 用 :夜 間 の 積 極 的 な 蓄 熱 運 転
対象機器は自動発停されるため省力化にも有効である。
気象予報
最適化計算
需要予測計算
需要予測値
生産計画
(ニューラルネット等)
数理計画アルゴリズム
数理計画アルゴリズム
・混合整数0-1計画法
・混合整数0-1計画法
・非線形計画法
・非線形計画法
・動的計画法など
・動的計画法など
0
ガ ス 削 減 :需 要 予 測 に よ り 吸 収 冷 凍 機 の 稼 働 台 数 を 1 台 削 減
最適運転スケジュール
コージェネ
コージェネ
ボイラ
ボイラ 11
ボイラ
ボイラ 22
・・・
・・・
冷凍機
冷凍機 11
冷凍機
冷凍機 22
冷凍機
冷凍機 33
・・・
・・・
停止
起動
停止
22
23
0
1
2
3
4
5
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20
21
時刻
図 3 最適運転結果
最適化モデル
目的関数:1日の運転コスト最小(エネルギー使用量やCO
目的関数:1日の運転コスト最小(エネルギー使用量やCO22排出量の設定も可能)
排出量の設定も可能)
制約条件:・各時刻の需要量を満足する。
制約条件:・各時刻の需要量を満足する。
・季節別時間帯別の契約電力を越えない。
・季節別時間帯別の契約電力を越えない。
・各機器の特性式
コージェネ:燃料流量= ff(発生電力、大気温度)
(発生電力、大気温度)
・各機器の特性式 コージェネ:燃料流量=
燃料流量=
燃料流量= ff(蒸気流量、給水温度、大気温度)
(蒸気流量、給水温度、大気温度)
ボイラ:燃料流量=
ボイラ:燃料流量= ff(蒸気流量、給水温度、大気温度)
(蒸気流量、給水温度、大気温度)
数式化
冷凍機:消費電力=
冷凍機:消費電力= ff(冷水熱量、冷水温度、冷却水温度)
(冷水熱量、冷水温度、冷却水温度)
購入エネルギー
電力
(電力会社)
ガス
(ガス会社)
エネルギー需要
熱源設備
最適運用サーバ
電力
×1
4. ま と め
クリーンルームを負荷に持つ熱源設備の最適化制御シス
テムを開発し,現在順調に稼働している。また,需要予測
が難しいような工場の自家発設備(ボイラ,蒸気タービン・
・電力、冷水、温水、蒸気等の
発電機)の最適化制御システムについても制作中であり,
需要予測計算
・最適運転スケジュールの計算
CGS
×5
×4
蒸気
今夏稼働予定である。今後も,最適化技術を様々な省エネ
・最適運転制御指令の出力
吸収冷凍機
ボイラ
×7
ターボ冷凍機
冷水槽
施策に活用していく予定である。
冷水
気象情報
×4
ダブルバンドル
冷凍機
温水槽
文
サーバ
温水
既設監視制御装置
献
(1) 下川・山田:
“半導体工場における省エネ事例と熱源設備最適制御導
入について”,第1回エネルギー対策技術シンポジウム,日本能率セ
ンター (2002)
図 1 最適化制御システムの構成
3. 熱源設備への適用結果(1)
山田
図 2 は需要予測結果の一例である。予測誤差としては平
-5-
利広((株)東芝 電力システム社)
(平成 18 年 5 月 16 日受付)