no.1029

ISSN 13461451
蔵前工業会
東京工業大学同窓会誌
Journal of Tokyo Tech Alumni Association
no.1029
2012
New Year
■ 今、活躍中の同窓生
﹁まだやれる日本のために﹂
修電
池上 徹彦
電
氏
博電︶
S
43
S
40
委員長
宇宙開発委員会
︵
S
38
新年のごあいさつ
新年の挨拶
庄山 悦彦
(社)蔵前工業会理事長 (S34 電)
会員の皆様方には,ご家族ともどもお健やか
げます。卒業生の皆様方にもご支援をいただい
に新春を迎えられたことと,心からお喜び申し
ておりますが,更なるご支援と多数の皆様方の
上げます。
引き続きの基金へのご協力をお願いいたしま
昨年は 3 月に発生した東日本大震災を初め各
す。
種の災害,タイでの水害など自然災害が多く,
蔵前工業会の運営につきましては当面の課題
被災された皆様方に心よりのお見舞いを申し上
として,今春より一般社団法人への対応があり
げます。一日も早い復興を祈念しております。
ます。公益性を大切に,すでに支部及び関係者
また,各地で復興に向けて活躍しておられる皆
間で打ち合わせさせていただきましたが,将来
様方に敬意を表する次第です。
を考えた運営,組織にしたいと思います。社会
新しい年を迎えて,世界的な金融不安や日本
貢献の例として「蔵前理科教室ふしぎ不思議:
での円高・デフレの厳しさは継続しております
くらりか」,神奈川県支部や東京支部による学
が,今こそグローバルの見地に立って人財力を
生との対話「蔵前ゼミ」,各支部主催の「講演
高め,価値あるものづくりの創造,イノベー
会・セミナー」,若手にも参加して貰っている
ションを強力に推進していかなければなりませ
「蔵前経営者懇話会」,ベンチャーの育成のため
ん。日本のものづくりは世界的にも評価されて
の「蔵前ベンチャー賞」など,また海外留学生
おり,大きな発展の潜在力があり,更なる成長
による海外同窓会との連携も,今後共世界に貢
の可能性があると確信しています。
献する同窓会として推進して参りたいと思いま
蔵前工業会は,諸先輩のご努力や会員の皆さ
す。関係の皆さんの献身的なご努力に感謝し,
んの結束力と協力で,素晴らしい伝統を築いて
今後のご活躍をおおいに期待しております。
きました。これからもその目的にあるように,
更に,学生の皆さんも,いろいろなことを学
科学技術および工業の発展に貢献していきたい
ばれ,同窓のネットワークの一員として積極的
と思います。
に参加され,より充実した人生を送られること
さて母校は昨年 130 周年を迎えました。130
を期待しております。
周年の節目に世界最高の理工系総合大学を目指
厳しい経済環境は続きますが,このような時
し,
「東京工業大学基金」を設立し,
「研究」「教
代に直面しているだけに“蔵前人”には,科学
育」「貢献」というテーマにおいて,
“世界最高”
技術立国に向かっての共通の思いがあるように
の質を達成するためのアクションプランが積極
思います。本工業会の活動を通して,社会や世
的に展開されています。
界に貢献することができれば大きな同窓力の成
東工大が更なる研究開発・人づくりで世の中
果と思っています。
に貢献していただけるよう出来る限りの支援・
東工大の次なる発展を祈念し,今年が蔵前工
協力をしたいと考え「東工大基金支援会」を設
業会にとっても飛躍の年となることを願い,会
立し,蔵前工業会も全面的に支援しており,昨
員皆様の益々のご健勝とご発展を心から祈念
年の 130 周年を中間点として,2013 年迄を一
し,新年のご挨拶と致します。
つの区切りとして募金活動を継続推進しており
ます。東工大は社会の発展に大きく貢献してき
たことから多くの経営者,関係者にもその主旨
にご賛同いただき,協賛の輪を広げ各企業にも
広くご支援をいただいており,深く感謝申し上
4
1029
新年のごあいさつ
年頭に当たって
東京工業大学学長 伊賀 健一
(S38 電 S43 博電)
2012 年(平成 24 年)の辰年を迎えるにあたり,
まずは日本が大きな困難に直面することになった創
立 130 周年を迎えた 2011 年を振り返ってみること
にいたします。
3 月 11 日に発生した東日本大震災と津波は多くの
人々の命を奪い,原子力発電所をも襲いました。本
学では卒業式と入学式を中止し,学位授与は各学部,
各研究科において執り行いました。卒業生有志諸君
が“さくらプロジェクト”を即座に立ち上げ,被災
者支援活動を開始しました。蔵前工業会,大学も義
援金募集など支援に乗り出しました。また,全学を
あげて節電に取り組みました。消費電力の「見える
化」,「2つのカット(ピークと総量)」,エアコン使
用を控えるため前学期授業日程を前倒し実施,学生
諸君を省エネサポーターに任命し無駄な電力使用を
チェックするなど,様々な対策を講じました。また,
2 月に発行した本学オリジナルの科学技術専門の英
単語集「東工大英単」を,被災地の高等学校 353 校
へ進呈いたしました。
震災の影響で延期した 130 周年記念式典を 10 月 8
日に挙行いたしました。800 名を越える方々にご参
列いただいた式典では,本学出身の作曲家である河
野土洋氏の書き下ろし「東工大ファンファーレ」が,
東工大管弦楽団と混声合唱団コールクライネスに
よって初演されました。なお,コールクライネスは,
11 月の全日本合唱コンクールで 14 年連続金賞,さ
らに,今年は最優秀賞を受賞しました。
前述のコールクライネスをはじめ,昨年は学生
たちが国内で,世界で大活躍した年でもありまし
た。8 月,マサチューセッツ工科大学を舞台に開催
された IDC ロボットコンテスト大学国際交流大会
(International Design Contest)」 に お い て, 本 学 学
生の所属するチームが優勝しました。同月,琵琶湖
で飛んだマイスターの人力飛行機は順位こそ第2位
でしたが,機体は素晴らしい仕上がりで,パイロッ
トが直前で交代するなどの困難を経て健闘しました。
11 月,本学学生チームが国際的な生物学版のロボコ
ン,iGEM 世界大会で総合 TOP10%に入るとともに,
iGEMer 賞を獲得しました。同チームは国際生体分
子ロボコン(BIOMOD)でも準優勝ほか,「総合準
優勝」,
「優秀ビデオプレゼン部門賞 2 位」,
「プロジェ
クトアワード金賞」のトリプル受賞を達成していま
す。
このようなすばらしい学生たちをさらに育成すべ
く,国際的な舞台でリーダーシップをとれる博士人
材輩出を目指す「グローバルリーダー教育院」を 4
月に設置いたしました。選抜合宿を通過した学生た
ちが互いの専門領域を越えた共通の課題について活
発な討論を繰り広げています。
4 月,百年記念館展示部門が博物館として登録さ
れ,「東工大博物館」として新しくスタートいたしま
した。7 月には新図書館がグランドオープンし,新
しいキャンパスの顔となっております。
スパコン TSUBAME2.0 は今年も健闘し,性能ラ
ンキング TOP500 で世界5位に認定されました。そ
の後,「京」の登場で順位を1つ下げたものの,依然
世界で5指の性能を誇ります。TSUBAME2.0 は実
用面でも活躍し,今年度のスパコンの実用問題に対
する計算で 2.0 ペタフロップス(単精度)を達成し,
スパコンの世界最大の国際学会にてゴードン・ベル
賞の特別賞を受賞しました。
さて 2012 年から学部入学試験の方式が大きく変わ
ります。東工大は前期日程を重視するとともに,理
学部(第1類)と工学部(第2類∼第6類)は後期
入試を廃止し,それぞれ,推薦入試,AO入試を新
たに導入します。生命理工学部(第7類)は従来の
後期日程を実施します。
5 月には,本学全体としては初めての「ホームカ
ミング・デー」を開催予定です。卒業生のみなさん
を母校にお招きし,大学の近況をご覧いただくとと
もに,お互いに交流を深めて東工大ネットワークを
作ろうというものです。5 月 20 日すずかけ台,5 月
27 日大岡山での開催予定です。その頃には,現在
(2012 年 1 月)建設中のいくつかの建物も完成して
います。大岡山の「環境エネルギー棟」,すずかけ台
の「J3 棟」などです。キャンパスの整備も進む予定で,
大岡山の正門付近は旧図書館跡が整備されるに伴っ
て風景が変わっていきます。
小職が学長になったとき,「研究とともに,教育が
大学の使命であり,重要視すべし」と述べました。
これから教育への投資を考えねばならないところで
す。それには,130 周年記念事業で始まった「東工
大基金」を充実させ,「教育・研究・貢献」の3本柱
を大きく育てねばならないと考えます。産業も社会
も国際的な変化と広がりを見せる中,大学も脱皮の
時期です。改めて会員の皆様のご協力,ご支援をお
願いいたします。
1029
5
・C O N T E N T S
4
新年のごあいさつ 蔵前工業会 理事長 庄山 悦彦
東京工業大学 学長 伊賀 健一
8
開催通知
11
年賀氏名広告
16
第53回支部長会の報告
20
東工大便り 「学生は頑張っています。
」
23
今,活躍中の同窓生 「まだやれる日本のために」
宇宙開発委員会 委員長 池上 徹彦 氏
29
2011年度「蔵前ベンチャー賞」
,
「蔵前特別賞」 授与式・受賞者記念講演会
36
第3回 一橋大学・東京工業大学 合同移動講座 開催報告
38
蔵前人のキャンパスライフ メキシコ バハ・カリフォルニア自治大学 堀 沢子
42
ちょっと気になるミュウジアム 長野県飯山市 高橋まゆみ人形館
45
クラブ・学生活動紹介 韓国留学生会
46
研究室訪問 「人口減少時代の都市計画制度設計」 中井 検裕
49
著書
50
くらりかNEWS サイエンスアゴラ賞受章
鹿児島県支部 初のくらりか開催!
54 「東京工業大学 感謝の集い」開催
55
東工大基金寄附者芳名録(17)
57
第12回 KITCセミナー 開催報告
59
平成23年秋の叙勲・褒章受章者
60
タイ蔵前会 パイリン氏・CEO就任の祝賀会開催
60
求縁情報
61
しぶつうしん
64
同窓会
69
文苑
71
海外から 「過ぎし日の思い出」
天津蔵前会 于 敏
73
編集後記
73 『蔵前ジャーナル』投稿の際のお願い
広告掲載企業 掲載ページ
如水会館
株式会社 日立製作所
三菱重工業株式会社
株式会社 巴コーポレーション
株式会社 建設技術研究所
青和特許法律事務所
株式会社 ソリトンシステムズ
株式会社 キューピッド
富士通株式会社
富士通エフ・アイ・ピー株式会社
東京工業大学 世界文明センター
竹田印刷株式会社
株式会社 ぐるなび
株式会社 日立ソリューションズ
表2
3
6
10
14
15
22
35
52
53
58
70
74, 表 3
表4
2012 New Year
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7
開催
通知
■神奈川県支部新年会並びに
新会員歓迎会のお知らせ
2012.1・2・3・4
③「磁気ディスク装置と磁気テープ装置
当会幹事杉本行正氏(S40 電子)
の話」
日 時:平成 24 年 1 月 21 日(土)
12:00 ~ 14:00
参加費:講演会 500 円(会員,会員外共,学生は
会 場:川崎 BE(川崎駅ビル)
無料)
8階「カメリアホール」
JR 川崎駅を出て徒歩3分
申 込:2012 年 1 月 31 日(火)迄に,氏名,卒
交流会 500 円
T E L:044-200-6551
年(学生は学年)
,学科,交流会への参加・
会 費:3,000 円(蔵前カード持参の方2,500 円)
不参加を明記のうえ,E-mail で下記あて
申し込みをお願いいたします。
ただし平成 22 年度,23 年度入会の新会
員,還暦者は無料です。
申込先:蔵 前技術士会参加受付担当 太田尾 純
連絡先:蔵前工業会神奈川県支部
Email:[email protected]
神奈川県支部事務局長:大嶋 顕世
留守 Tel045-341-0577
この案内の詳細については変更がある場合があ
吉(S45 電子 S47 修)
E-mail:[email protected]
■第 3 回東工大 IT クラブ・
蔵前 IT コミュニティ合同セミナー
ります。
日 時:2012 年 2 月 7 日(火)
蔵前ジャーナル誌,蔵前ホームページの最新版
講演・討議会 18:00 ~ 20:00
をご覧ください。
交流会 20:00 ~ 21:00
場 所:講演・討議会
■蔵前技術士会 第 142 回 講演会
東工大蔵前会館くらまえホール
交流会
蔵前技術士会では,つぎのとおり 2 月度の講演
東工大蔵前会館ロイアルブルーホール
会を開催します。会員ならびに会員外の多数の皆
演 題:
「どうする日本の ICT -グローバル化と
様の参加をお待ちいたします。
日 時:2012 年 2 月 4 日(土)
今, 日 本 の I C T(Information &
講演会:13:30~15:30
Communication Technology)世界戦略に
交流会:15:45~16:45
ついては,極めて重要な時期を迎えてい
会 場:東工大蔵前会館1階
る。第一線の企業および国がどうしよう
ロイアルブルーホール
としているかをお話いただき,産・官・
東京都目黒区大岡山2-12-1
学の立場から討議をいただく。
東急目黒線・大井町線大岡山駅下車 1 分
パネラー:
講 演:次の3講演を予定しております。
山下 徹氏(S46 社工)
㈱ NTT データ社長
①「ワグネルと東京職工学校」
遠藤 信博氏(S56 博電子)
東 京工業大学博物館 特命教授・名
寺崎 明氏(S51 修電物)
②「当会の運営方針」
松岡 聡氏(H 5博東大情科)
当会会長佐鳥聡夫氏(S36 機)
誉教授道家達将氏
8
その将来」
1029
日本電気㈱社長
野村證券理事,
東工大客員教授,
元総務審議官
東工大学術国際情報センター教授
モデレータ:
込み下さい。
西村 吉雄氏(S46 博電子)
(氏名,卒業年科,現住所,電話番号,
早稲田大学客員教授,元東工大監事,
現又は元勤務先,見学会,懇親会の参加,
元日経エレクトロニクス編集長
会 費:講演・討議会 無料
不参加をご連絡下さい)
申込期限:平成 24 年 1 月 31 日(火)
交流会 3,000 円(学生は無料)
申込先:蔵前工業会蔵前ベンチャー相談室
■第 24 回「関西蔵前懇話会」
E-mail:[email protected]
勤
務先,所属役職,卒年,学科,交流会
日 時:2012 年 2 月 21 日(火)
参加の有無を記入ください。東工大学生
は申し込み不要。
場 所:蔵前工業会西日本センター
■蔵前工業会兵庫県支部
平成 23 年度見学会
18:30 - 20:30
(地下鉄四ツ橋線本町駅から徒歩 1 分)
会 費:500 円(蔵前カード提示者は 400 円)
(軽食を用意)
申 込:2 月 14 日(火)までに西日本センター
「川崎重工業㈱ 明石工場 ガスタービン生産工場」
([email protected])まで
見学先の概要:
話題提供1:くらりか関西 2011 活動報告
川崎重工業㈱明石工場は JR 西明石駅と山陽電
鵜野 幾雄(S38 化工 S40 修化工)元塩野義製薬
鉄林崎松江海岸駅との間にあり,竣工してから
昨年 2 月に「くらりか関西」が発足,関東での
昨年で 70 年になりました。現在は二輪車,ガ
教室テーマ,PPT 資料を有効利用,必要に応じ
スタービンエンジン,産業用ロボットなどを製
て改良,初年度目標の 20 教室を達成しました。
造しており,また全社の技術を統括する技術開
現在会員 8 名,協力会員 10 名で,会員増加が課
発本部が置かれています。それらの中から,航
題です。
空用および発電を中心とする産業用のガスター
話題提供2:イギリスの産業風景
ビンエンジンに関する見学を予定しています。
―ケンブリッジ大学在外研究記
見学スケジュール:
岡田 昌彰(H3 土 H6 修土 H9 博社)近畿大学
1 工場紹介・講演 14:30 ~ 15:45
イギリスにおける産業遺産,土木遺産の先進的
於:研修センター(正門そば)
な活用事例にスポットを当て,この国が伝統的に
⑴ 明石工場紹介(ビデオ)
もつ発想の面白さについて考究してみたいと思い
⑵ 講演①:航空用ターボファンエンジン
ます。
の開発
⑶ 講演②:産業用ガスタービンエンジン
の紹介
2 工場見学 15:45 ~ 17:00
⑴ 大型ファンエンジンテストセル
⑵ ガスタービン・コジェネレーション発電所
■神奈川県支部
第二回土曜講演会 のお知らせ
日 時:平成 24 年3月 10 日(土)
14:00 ~ 16:00
日 時:平成 24 年2月 15 日(水)
場 所:東工大すずかけ台キャンパス
(田園都市線すずかけ台駅すぐ)
すずかけ台ホール大学会館3F
多目的ホール
14:00 - 17:00
集合場所・時刻:JR 西明石駅新幹線側ロータリー
午後 2 時
参加費用:見学会 無料
講 師:高橋栄一氏
:懇親会 3,000 円 当日徴収
2000 円)
演 題:
「地球深部からの水が地震・火山活動を
起こす~大震災から 1 年を振り返って」
17:15 ~ 19:00 於:「川崎倶楽部」
申込先:原 且則 [email protected] にお申し
東京工業大学大学院・理工学研究科・地
球惑星科学専攻 教授
(蔵前カード提示:2500 円,同伴夫人
【概要】
1029
9
2011 年 3 月 11 日に発生したM 9.0 の東北地方
太平洋沖地震は,世界的に見ても最大級の地震で
■関西蔵前午餐会
した。この地震によって日本列島はプレートによ
日 時:平成 24 年 4 月 3 日(火)
る圧縮から解放され,マントルから地殻へ多量の
マグマが供給されつつあると考えられます。
場 所:中央電気クラブ317 号室
この講演では,巨大地震発生から 1 年を振り返
り,今後予想される地震・火山活動とその背後に
会 費:3,000 円(蔵前カード提示者は 2,500 円
ある地球深部にある水の役割について研究の最前
12:00~14:00
Tel06-6345-6351
になります)
演 題:「日本の住宅の歴史と,現代の住宅」
線を紹介いたします。
講 師:久保田 耕平氏(S43 年 建築)
会 費:500 円(当日会場にて)
申 込:3 月 23 日迄
定 員:100 名
申込み締切日:平成 24 年 2 月 29 日(水)
蔵前工業会西日本センター
連絡先:
E-mail:[email protected]
ご出席ご希望の方は事務局にご連絡ください。
Fax:06-6532-8759
蔵前工業会神奈川県支部事務局
世話人 池田 幸重郎,村木勝司,宮脇 隆夫
Email:[email protected]
事務局長 大嶋顕世
メッセージ:関西蔵前午餐会は蔵前工業会同窓会
留守 Tel 045-341-0577
員であればもちろんのこと,会員の推薦があれば
詳細については変更の可能性があります。
誰でも参加出来ます。また,
毎月の講演報告は「関
蔵前ホームページの最新版をご覧ください。
西5支部ホームページ」http://kan5.sakura.ne.jp/
でご覧いただけます。
名古屋市科学館(プラネタリウム)
総合建設業・鉄構製品製造業
本社:〒104-0054 東京都中央区勝どき 4-5-17 TEL.03-3533-5311
10
1029
新年のご挨拶を申し上げます。
東 京 工 業 大 学
理事・副学長
(渉外・情報担当) 大学院情報理工学研究科長
大学院総合理工学研究科長
小島 定吉
理事・副学長(研究担当)
原科 幸彦
飯塚 久夫
鈴木 啓介
関根 光雄
兼生命理工学部長
理事・副学長
(教育・国際担当) 大学院生命理工学研究科長
三島 良直
西森 秀稔
応用セラミックス研究所長
林 靜雄
精密工学研究所長
北條 春夫
資源化学研究所長
辰巳 敬
田辺 孝二
飯島 淳一
大学院理工学研究科理学系長 大学院社会理工学研究科長
兼理学部長
丸山 俊夫
理事・副学長
(企画・経営担当) 大学院理工学研究科工学系長 大学院イノベーション
マネジメント研究科長 事務取扱
兼工学部長
岡田 清
学長
伊賀 健一
監事
鈴木 基之
監事
清水 康敬
事務局長
山田 道夫
附属科学技術高等学校長
大即 信明
附属図書館長
酒井 善則
原子炉工学研究所長
有冨 正憲
11
1029
平松 一朗
中里 昌弘
迎 春
世界をリードできる人材育成を
千野
孝
本会会友
S 建
年頭のご挨拶を申し上げます
本会相談役
京浜急行電鉄㈱ 相談役
S 機
竹田印刷㈱ 名誉会長
S 無機
各務 芳樹
困難は人をきたえ、
危機はチャンスとせよ!
韓
慶愈
S
機
本会会友
㈳日中科学技術文化センター 顧問
S 建
今 年は全て見える化の生 産 革 新の
達成を目指しています
長屋
稔
鈴木正一郎
王子製紙㈱ 代表取締役会長
S 機
S
機
本年も 皆様のご健勝とご繁栄を
心よりお祈り申し上げます
青和特許法律事務所 会長
S 化工
庄山 悦彦
本会理事長
㈱日立製作所 相談役
S 電
山内 尚隆
石井
仁
本会会友
本会会友
当 会は過 半 数の理 事が卒 業 生です 母校とのより緊密な協業に依り益々
是非入会して戴き活動して下さい 発展されますこと祈念申し上げます
本会会友 元東京支部長
エヌ・ピー・イー㈱ 代表取締役社長
S 機
石田
敬
田中
實
佐鳥 聡夫
本会相談役
蔵前技術士会会長
元気を周りに与える一年に
皆様のご入会をお待ちしております
したいものです
本会会友
S 化工
石井 昭三
蔵前工業会の発展を祈ります
支 部の点が線で 繋がり面 となれば 本誌の印刷・製本は弊社で行ってい 謹賀新年
日本列島は開発列島になるぜ
ます。 本年もよろしく。
阿部 昭三
本会八王子支部長
S 機門
田中 郁三
本会相談役
㈶理工学振興会 会長
S 教
明けましておめでとう。
前田豊三郎
本年もよい年でありますように
本会会友
㈱前田精密製作所 取締役相談役
S 機
海外同窓会の皆さんと連携し、
今後一層海外進出を計りましょう
柴生田 清
36
S
金門 S
無機
S
機
東京工業大学学長特別補佐(基金担当)
NPO法人 人間環境活性化研究会(略称HEARTの会)
1029
12
31
30
28
36
36
34
34
本会相談役
S 電気
遠藤 卓朗
本会相談役
S 機
23
27
26
本会会友
東工コーセン㈱ 社友
S 紡
17
本年も 皆様のご健勝とご繁栄を
今年も元気で楽しく行きましょう
心よりお祈り申し上げます
青木
朗
本会会友
青和特許法律事務所 名誉会長
S 紡
23
25
24
24
24
23
22
21
21
頌 春
年
2012
東工大の益々の発展と会員の皆々様 災害からの復興が進み、皆様に安ら 新年を迎え、皆様方のご活躍と
の御健勝を祈り上げます
かなる年となる事をお祈りします ご多幸を祈念申し上げます
橋本 元一
本会新潟県支部長 本会常務理事・蔵前経営者懇話会代表幹事
S 電子
修機 S 博機
白樫 正高
代表取締役会長・創業者
S
本会常務理事・編集部会長
千代田化工建設㈱ 相談役
S 生機 S 修生機
関
誠夫
迎 春
小野
功
東日本大震災からの復興を
お祈りします
鈴木 登夫
本会東京支部副支部長兼事務局長
㈱日立物流 代表執行役社長
S 電子
齊藤 十内
蔵前経営者懇話会 幹事
日本スピンドル製造㈱ 特別顧問
S 機 S 修生機
謹賀新年
久保征一郎
蔵前経営者懇話会 幹事
㈱ぐるなび 代表取締役社長
S 電
二〇一二年が明るい年になりますよ
う、祈念致します
本会理事・神奈川県支部幹事
S 修化
平山 (旧姓 村松)
南見子
本会常務理事・会員部会長
S 電 S 修電
太田 幸一
一陽来福 良い年でありますよう
機
本会常務理事・事務局長
S 電子
本房 文雄
迎 春 新 法 人、「 く らりか 」 で 社
迎 春
会貢献活動に参加をお願いします
本会理事
S 電 S 修電
平塚 芳隆
46
今城 康隆
S 機 S
滝
久雄
㈱ぐるなび
菊池 昌利
㈱巴コーポレーション 代表取締役
S 機
44
㈱EME 代表取締役
S 機
本会会友・大阪支部相談役
S 修原 S 博原
関口 光晴
43
鶴田 隆雄
一三〇 年の歴 史をふまえ、 世 界一の
良いことの
明けましておめでとうございます
積もり積もる年になりますように! 理工系大学を目指してください
44
本会常務理事・総務・経営企画部会長
本会神奈川県支部長
㈱日立ソリューションズ 取締役会長
S 経 S 修経 S 博経
S 電
43
謹賀新年 母校並びに本会の
ますますの発展を祈念いたします
53
45
46
冨士原英明
本会埼玉県支部長
S 機
塚田 忠夫
本会会友
大日本印刷㈱ 取締役
S 機 S 修機
修化工
42
本会副理事長・大学連携支援部会長
㈱NKB 取締役会長・創業者/
謹 賀 新 年 くらりかの活 動への一層 謹賀新年
のご支援をお願い致します
高橋 諄吉
化工 S
蔵前理科教室ふしぎ不思議(くらりか)代表
S
懇話会仲間との情報交換により、
大きく広がる世界を楽しんでください
泉妻 秀一
本会会友・経営者懇話会副代表幹事・事務局長
㈱ATジャパン 代表
S 化工
44
44
43
45
45
44
45
43
43
42
37
42
43
38
37
39
39
37
38
38
37
41
頌 春
年
2012
13
1029
金 S
S
修金
応物
母 校の益々の発 展と会 員の皆 様の
御多幸をお祈り申し上げます
本会熊本県支部長
熊本大学 学長
修化工 S 博化工
谷口
功
S 応化 S
47
蔵前工業会事務局一同
本会東京支部常任幹事
宇高国際特許事務所 所長
S 応化 S 修応化
45
山下 靖人
木下
仁
本会ネットワーク部会運営委員
㈱アールワークス 代表取締役社長
S 応物
本会東京支部監事
マップソリューション㈱ 代表取締役
清水建設㈱ 常務執行役員 設計本部長
S 電物
S 建 S 修建
日置
滋
本年も MiSoL
商圏分析
サー あけましておめでとうございます
ビスをご愛顧お願い申し上げます
53
宇高 克己
蔵前ゼミへのご参加、
謹賀新年
お待ちしております 本年もよろしくお願い申し上げます
45
本年も
よろしくお願い申し上げます。
本年が平和で素敵な一年であります
ように、心よりお祈りします
関山 定男
本会理事
S
鬼怒川ゴム工業㈱ 代表取締役 社長執行役員
46
鈴木 康志
本会システム担当
48
46
50
47
A
S
P
44
48
50
1029
14
頌 春
年
2012
SEIWA PATENT & LAW
〒105-8423 東京都港区虎ノ門3-5-1 虎ノ門37森ビル
電話03-5470-1900 FAX.03-5470-1911
URL:http://www.seiwapat.jp/
連絡先:森本博美
名誉会長
工学博士
弁理士
青 木 朗※
シニアパートナー
会 長
弁理士 石 田 敬※
所 長
弁理士 青 木 篤
弁理士 鶴 田 準 一※
弁護士
萩 尾 保 繁
弁理士
弁護士 永 井 紀 昭
弁護士 仁 田 陸 郎
弁理士 古 賀 哲 次※
弁理士 島 田 哲 郎※
パートナー
弁理士 南 山 知 広
弁理士 渡 邉 陽 一
弁理士 出 野 知※
弁理士 三 橋 真 二
弁理士 亀 松 宏
弁理士 伊 坪 公 一
弁理士 小 林 良 博
弁理士 水 野 みな子
弁理士 蛯 谷 厚 志※
弁理士 田 島 壽
弁理士 中 村 和 広
弁理士 森 本 有 一※
弁理士 廣 瀬 繁 樹※
弁護士
山 口 健 司
弁理士
相談役
弁護士 上 谷 清
常勤顧問
弁理士
技術士
弁理士
弁理士
弁理士
西 舘 和 之※
吉 田 維 夫※
福 本 積
西 山 雅 也
【法律部門】
薄 葉 健 司
石 神 恒太郎
弁護士 関 口 尚 久
弁護士
弁理士
弁護士
弁理士
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【商標部門】
弁理士 外 川 奈 美
弁理士 山 口 現
弁理士 大 橋 啓 輔
弁理士 遠 山 良 樹
【繊維部門】
弁理士 中 村 和 広
【意匠部門】
弁理士 川 崎 典 子
【機械部門】
弁理士 樋 口 外 治
弁理士 大 橋 康 史
弁理士 篠 崎 正 海
弁理士 今 枝 久 美
弁理士 谷 光 正 晴
弁理士 三 橋 庸 良※
弁理士 伊 藤 公 一※
弁理士 前 島 一 夫※
弁理士 曽 根 太 樹※
弁理士 伊 藤 健太郎※
弁理士 篠 田 拓 也
弁理士 田 原 正 宏
【化学部門】
弁理士 永 坂 友 康
弁理士 胡 田 尚 則
弁理士 吉 井 一 男※
弁理士
田 崎 豪 治※
技術士
弁理士 加 藤 憲 一※
弁理士 竹 内 浩 二
弁理士 関 根 宣 夫※
弁理士 小野田 浩 之※
弁理士 高 橋 正 俊
弁理士 堂 垣 泰 雄※
弁理士 小 林 直 樹※
弁理士 齋 藤 都 子
弁理士 三 間 俊 介
弁理士 河野上 正 晴※
弁理士 鈴 木 康 義※
弁理士 石 森 昭 慶
弁理士 塩 川 和 哉
弁理士 杉 山 弘 子※
弁理士 岩 出 昌 利
【生命科学部門】
工学博士
武 居 良太郎※
弁理士
弁理士 中 島 勝
弁理士 中 村 和 美※
弁理士 池 田 達 則
弁理士 佐々木 貴 英※
弁理士 北 谷 賢 次
弁理士 津 田 英 直
弁理士 鈴 木 啓 靖
弁理士 越阪部 倫 子
弁理士 伊 藤 洋 介
【電気部門】
弁理士 下 道 晶 久
弁理士 水 谷 好 男
弁理士 河 合 章
弁理士 小 林 龍
弁理士 河 野 努
弁理士 榎 原 正 巳
弁理士 宮 本 哲 夫
弁理士 中 村 健 一※
弁理士 森 啓
弁理士 遠 藤 力
【金属部門】
弁理士 中 村 朝 幸
弁理士 山 田 勇 毅※
弁理士 齋 藤 学
弁理士 德 永 英 男
【業務部門】
弁理士 笹 木 幸 雄
【IP情報室】
弁理士 平 田 学
内※は、
本学卒業生を示す
上記を含む本学卒業生が多数在籍中
詳しくは当所HPをご覧下さい
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第53回支部長会の報告
理事 平山南見子(S45 修 化学)
日時 平成23年11月18日(金)13:30∼19:00
会場 東工大蔵前会館・くらまえホール
第 53 回支部長会が 11 月 18 日,大岡山キャ
りも寄付者の数が大事であり,たとえ千円
ンパスの東工大蔵前会館で行われました。
でも多くの卒業生が協力してくれるのが望
全国 43 支部のうち,29 支部から支部長,同
ましいと思っている。支部長の皆様のご支
代理の方々が出席し,庄山理事長の挨拶にはじ
援をお願い申し上げたい。
まり,各部会から報告の後,伊賀学長から東工
大の近況についてのお話があり,最後に各支部
長による自己紹介,支部活動報告がありました。
2 本房事務局長による活動概況報告
・平成 23 年 9 月現在の会員数は学生会員を
会議の後,懇親会にうつり,庄山理事長の挨
除き約 52,400 名であり,そのうち会費を
拶の後,東工大新執行部の紹介があり,その後,
納めていただいている会員は 12,528 名で
田中實相談役の乾杯で開宴となり,参加者各位
あり,納入率は 23.9% である。支部別では,
からのスピーチをはさんで,和やかな交流の場
兵庫県支部が最も納入率が高く,次いで,
が続きました。
宮城県,京滋支部の順である。
以下に支部長会の概略を報告いたします。
・平成 22 年度の収支は,収入が繰越金から
の収入を除き,1 億 3863 万円であり,支
1 庄山理事長による開会挨拶
・東日本大震災並びにその影響による原発災
万円の黒字であった。なお,新法人移行に
害で被災され
対応するため,収支費用の内訳の区分け方
た皆様に,心
法が変わった。平成 22 年度決算における
からお見舞い
正味財産期末残高は 2 億 3610 万円(内,
申し上げたい。
固定資産 1 億 767 万円)となり,この金
また,被災会
額を基礎に公益事業に消費すべく公益目的
員,被災学生
支出計画を作成し,平成 24 年 4 月 1 日に
支援の為に多
一般社団法人への移行を目指し,認可申請
くの善意が寄
を行う。最終的には平成 23 年度末の正味
せられました
財産期末残高が公益目的支出計画の基礎と
こ と に 対 し,
なる。
この場をお借
・本部・支部の活動状況に関して,新しい事
りして御礼申
業区分けに基づいての説明があった。
し上げたい。
・また,東日本大震災で被災された会員の
庄山悦彦理事長
方々に対し,会員相互の連携と善意を表す
延期されていた東工大 130 周年記念式典
ために支援金の募集を実施したところ,会
が,10 月 8 日に挙行された。多くの先輩
員,国内支部,海外蔵前会から多数の支援
から受け継いだよき伝統を守っていきた
金が寄せられ,被災された会員と学生にお
い。
見舞い金を差し上げたこと,また,本部よ
・この震災の為
・130 周年事業として募金を行ってきてい
り岩手県支部,宮城県支部,福島県支部,
る。厳しい景気の中で企業にも応分のご協
茨城県支部にお見舞い金を送ったこと等の
力をいただいてきたが,卒業生個人からの
報告があった。
寄付がもう一歩というところである。額よ
16
出は特別支出を除き,1 億 3831 万円と 32
1029
3 課題報告と質疑応答
(1)
「新法人移行の進捗状況と支部の取組み」
⑥新規作成規程並びに改定規程・内規:代議
員選出規程,会費規程,理事会規程,各支
について
部規程(42 支部を予定)等約 50 の規程・
新法人移行特別部会の太田幸一副部会長
内規を改定
から,次の報告があった。
⑦代議員選挙スケジュール:新法人移行にあ
①新法人移行の進捗状況:9 月に内閣府に移
たって,平成 23 年度にすでに代議員選挙
行認可申請を行い,現在内閣府からの指摘
を実施しており,64 人の代議員が当選し
をもとに作業中
ている。今後は 2 年ごとに実施することに
②蔵前工業会の新定款:会員を正会員,登録
会員,学生会員等に再定義し,代議員制を
なっていて,次回は平成 25 年度に実施予
定である。
採用した。総会の構成員は代議員であり,
以上の報告に対し,支部総会について,代議
役員は理事長,副理事長,業務執行理事,
員選出と決算事項の承認との兼ね合いでの開催
理事,監事である。
時期についての質問があった。決算事項は幹事
③新法人法における支部の位置づけ:移行後
の支部活動は基本的に従来と同様である
会等での承認があれば,本部に報告ができる等,
柔軟に対応が可能であるとの説明があった。
が,一般社団法人としてのガバナンス上,
蔵前工業会全体として整合性ある事業推進
及び会計処理が必要
④公益目的支出計画:公益目的事業の継続事
(2)
「新しい会員管理システム」について
ネットワーク部会の倉沢仁部会長から次
の報告があった。
業1は科学技術振興事業,継続事業2は東
①背景:課題は新法人移行,正会員の拡大,
工大との連携及び支援事業/公益目的財産
会員サービスの向上等であり,新システム
額は 2 億 3,610 万円,支出計画の1年間の
導入の目的は「会員情報の管理と有効活
平均額は 1,010 万円,実施期間は 24 年間
用」,すなわち「会員活動活性化を支援す
⑤新法人の役員:理事長は定款の変更の案に
るシステム」である。
掲名(庄山悦彦現理事長),理事・監事は
②新システムのポイント:
(1)新法人制度へ
概ね現役員を継続,業務執行理事は4月開
の対応(代議員選挙制度,会計システムと
催予定の理事会にて,選任(手続きとして
の整合)(2)会員サービスの充実(多様
3 月 31 日退任,4 月 1 日就任―平成 23 年
な会費制度への対応,同報メール,宛名ラ
総会で説明済)
ベル作成)(3)情報一元化,精度向上(4)
質疑応答
1029
17
における本部で把握していない会員情報の活用
方法,単身赴任の場合など登録は実家・活動は
勤務地のような場合には支部独自データとして
保存,個人情報保護の観点から支部で得た独自
情報を本人の了承なしに本部へ情報提供をしな
いこと等について,支部情報管理者と意見を交
わしながら検討することとなった。
4 活動の活性化へ向けて
(1)
「会員部会の新たな取組み」について
質問に応える平塚理事
蔵前工業会の活動拡大支援(同期会等への
基礎データ提供,支部等への検索権限付与)
会員部会の太田幸一部会長から,次の報告
があった。
①同期会拡大の具体的アプローチ:同期会開
(5)多面的な現状分析手段の提供(6)支
催支援を現行の卒 20 年,卒 50 年に加え,
部機能の充実(支部情報管理者を支部毎に
入学後 10 年,卒 30 年,卒 40 年同期会を
複数設定)
(7)セキュリティ(データベー
拡大
スを相互に離れた地域で二重化等)
②学生会員組織化の構想:終身会員制度を入
③支部向け機能の紹介:画面により検索条件
学者及び在学生に導入,在学中に「類」ご
入力,検索結果,支部独自管理の情報等が
との幹事を選出し,拡大学生会員組織を立
示された。
ち上げる。
④開発&運用/サポート体制:
(1)東大,京
③支部活動活性化へ向けて:新法人化のため
大,阪大等の同窓会に提供中のサービスを
の支部規程作成,代議員選出を契機とした
カスタマイズして使用(2)原則 24 時間
活性化による地域としてまとまりのある水
365 日サービス,バックアップを別サイト
平連携,地域の著名人によるセミナーを支
に設置(3)支部情報管理者には事務局が
部で開催企画することによる地域貢献意識
通常時間にサポート
の高揚等
⑤スケジュール:平成 24 年 3 月より支部が
試用可能なテスト環境を提供予定
以上の報告に対し,意見の交換があり,支部
自己紹介する支部長
18
1029
(2)
「くらりかの新たな展開」について
①“くらりか”全般の状況〈科学技術部会〉
について,くらりか担当の平塚芳隆理事か
・2011 年 は 創
ら,平成 23 年度 275 教室超,参加児童 7,500
立 130 周 年
名超を予定しているとの活動中間報告が
の 年 で あ る。
あった。
現在,3 学部,
②“くらりか”の新たな展開として(1)千
7 大 学 院,5
葉県支部から「青少年のための科学の祭典」
研 究 所,30
等における活動(2)関西5支部から平成
センター等が
23 年度 4 ∼ 9 月に 20 教室(平均 35 名の
あり,世界大
参加)の開催等(3)静岡県支部から平成
学ランキン
23 年度は富士宮市,裾野市,三島市の 3
グ で 総 合 57
か所で児童約 250 名の参加(予定を含む)
位,日本では
を得て開催(4)鹿児島県支部から 11 月
4 位,理工系
に全校生徒数 13 名の伊佐市の小規模校で
で世界 20 位,
開催予定との報告があった。
日本で 3 位で
③支部による移動講座,科学技術セミナー,
記念講演会として,
(1)福岡県支部から小
倉高校での蔵前科学技術セミナー,一橋大
伊賀健一学長
ある。
・大学の役割として「ものつくり」をもう一
度掲げたい。
学・東工大合同移動講座(2)東海支部か
・大学力として,教育力,研究力,学生力,
ら蔵前科学技術セミナー(3)岡山県支部
経営力,組織力,国際発信力,社会・産業
から“土光敏夫記念講演会”について説明
貢献力,同窓力,文化・スポーツ力の 9 つ
があった。
を挙げられた。
④支部活性化についてのフリーディスカッ
・東工大の強みを活かし,その発展に向けた
ションでは,“くらりか”のような科学教
活動として,東工大―精華大(中国)ジョ
室は大学など,他でも行っているところが
イントデグリー・プログラム,4 大学連合,
あるが,バッティングしてもよいから思い
グローバルリーダー教育院等の推進をして
切ってやっていくとよい。小学校では各
いる。
テーブルに必ずアシスタントをつけ,失敗
・建物については,新エネルギー棟(Green
して科学をきらいになるようなことがない
Hills 緑が丘地区),産学共同研究棟(す
ようにする。鹿児島県のような小規模校で
の開催など「草の根」の精神も大切である。
ずかけ地区)が建設中である。
・東工大の目指すところは,高い専門性,広
青少年を科学少年に育成するとともに,企
い視野と自由の精神であり,「時代を創る
業との協同研究を進める重層的な社会貢献
知・技・志・和の理工人」として教育・研
を提案する等の意見がでた。
究・貢献を行っていく。
5 伊賀学長講演
「東工大の教育―これから」
学長からまず新学長選考をめぐっての経緯に
ついて説明があった。現在,新学長候補の研究
費に関わる特別調査委員会が立ち上がってお
り,その調査結果をまって新学長が決定される
予定である。伊賀学長は新しい学長が着任され
るまでの任期となっており,会員の皆様には今
後とも大学の運営についてご理解とご協力を賜
りたい。
1029
19
学生は頑張っています。
学務部学生支援課 秋友 豊香
まず始めに,昨年3月に発生しました東日本大震
パイロットが交通事故に遭う悲運に見舞われました
災で被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げま
が,昨年度のパイロットが短期間で代役を務め,見
す。
事8182.8メートルの記録で人力プロペラ機ディスタ
幸い東工大の学生やご家族で亡くなられた方はお
また,エコノムーブ部門(電気自動車)では11月
壊した学生や原発避難区域の学生も多数おり,大学
に開催されたNATS大会(省エネカー競技大会)
としても入学料及び授業料免除の実施や寄附金によ
において一般も含め12位という結果を残しました。
る奨学金の交付などの経済的支援を実施いたしまし
た。
「Challenge & Creation」をモットーに日夜「もの
づくり」に励んでいます。
また,蔵前工業会からも学生のために支援金を交
付いただき心からお礼申し上げます。
さて,東工大では東日本大震災による電力需要の
コール・クライネス
逼迫を受けて,前期は授業を5月の連休や土曜日に
伝統ある合唱サークルです。コール・クライネス
実施し,夏休みを当初予定より2週間繰り上げまし
はドイツ語で小さな合唱団という意味ですが,現在
た。学生にとっては,過密な授業日程でサークル等
では部員150名を擁する大合唱団です。
の活動時間も制限される中,今年度においても頑
張って活躍してくれました。
学生の活躍ぶりの一端をご紹介いたします。
マイスター
鳥人間コンテスト等でご存知の方も多い,来年創
立20周年を迎える学生サークルです。
人力飛行機部門では,本年度はコンテスト直前に
飛び立った Meister 機“凛”
20
ンス部門準優勝という輝かしい結果を残しました。
いでになりませんでしたが,自宅が全半壊,一部損
1029
11月に青森市で開催された第64回全日本合唱コ
ンクール全国大会・大学部門において金賞及び青森
県教育長賞を受賞し,大学部門1位となりました。
これによりコール・クライネスは14年連続金賞受
賞を達成し,来年度全国大会へのシード権も獲得し
ました。
震災の影響もあり困難に直面することもあったそ
うですが,
部員が一丸となって取り組んだ結果です。
「練習が命」をスローガンに美しいハーモニーを奏
でそれぞれ実施し,集まった寄附金は「東工大東日
本大震災義援金」として日本赤十字社を通じて被災
地に届けられました。
また,
「カガクを学んだ学生がイツカクル10年後
へ向けてできること」として,東工大で学んだこと
を10年後に活かすために未来の自分に対する誓い
をWEB上に公開しています。
SAKURA Project以外にも,震災以降,直接被災
地に赴いてボランティア活動に従事する学生や学内
で被災地向けに提供された不要パソコンのデータ消
去や被災地でのセッティング,津波等により破損し
コール・クライネス凱旋報告
た写真を洗浄して持ち主にお返しする写真洗浄ボラ
でています。
ンティアに関わる学生は延べ200名を超えていま
柔道・剣道
す。期間や従事する内容等はそれぞれですが,皆,
活動の中で「何か」を得ているようです。
全国6つの国立工業大学において開催される第
47回全国国立工業大学柔剣道大会において,柔道
このように,学生達はサークルやボランティア活
は団体戦優勝,剣道部は団体戦準優勝により見事総
動に積極的に取組み,元気に頑張っています。今後
合優勝を果たしました。
とも学生の活動につきまして,引き続きご支援,ご
来年度は東工大が当番大学ですので,より一層の
鞭撻くだるようよろしくお願いいたします。
練習成果が期待されます。
学生ボランティア活動
3月11日の東日本大震災の
悲惨な状況を目の当たりにし
て,
「 今, 何 か 行 動 し た い。
自分たちにできることは何
か。
」という熱い想いを持っ
た学生達が学内外において積
極的に活動を進めています。
そ の ひ と つ は,SAKURA
Projectで,「 今 で き る こ と 」
と「カガクを学んだ学生がイ
ツ カ ク ル10年 後 へ 向 け て で
きること」を考え,「今でき
ること」として学内での募金
活動を開始しました。3月に
大岡山で,5月にすずかけ台
写真洗浄ボランティア
1029
21
「まだやれる日本のために」
宇宙開発委員会 委員長
池上 徹彦
︵
電
S
38
氏
修電
S
40
博電︶
S
43
●プロフィール
いけがみ てつひこ 1940年生まれ。 年,東京工業大学助手。 年,日本
取締役・基礎技術
電 信 電 話 公 社 武 蔵 野 電 気 通 信 研 究 所 入 所。 年 ,
アドバンステクノロジ㈱ 代 表 取 締 役 社 長。 年,
総 合 研 究 所 長。 年,
会津大学副学長。2001年会津大学学長,産業技術総合研究所理事。 年,
文部科学省宇宙開発委員会委員。 年から現職。
96
N
T
T
10
サブプライムローンに端を発する世界同時不況の中,日本の景気は低
迷し,経費節減の対象を求めて,科学技術の研究開発費すら問題とされ
る時代となってしまった。
中でも,特に槍玉に挙げられることの多い宇宙開発であるが,いまや,
日本はアメリカ,ロシア,EU のみならず,中国の後塵をも拝し,イン
ドや韓国にも追いつかれそうな状況なのだという。
「不況」,「仕分け」
,
「震災」と苦境の続く中,日本の宇宙開発や科学
技術は何を目指し,どこへ進めばいいのか? 「ものを造るのは色恋沙汰」と語る生粋の蔵前人・池上徹彦氏に,日
68
94
N
T
T
71
07 98
本の科学技術の未来のために,敢えて苦言を呈していただいた。
(インタビュー・写真撮影 2011.9.8 文部科学省にて)
1029
23
Tetsuhiko Ikegami
■ 炎に包まれる東工大本館
高校の受験指導で「君はなぜ東工大に行きたいん
だ」と聞かれて「いや,うちの庭です」と言ったら,
「おまえは不真面目だ」と(笑)
。そういう意味では,
池上 大岡山キャンパスの南門の近くに,昔は資
今思うと科学少年というより,蔵前少年だった気が
源化学研究所がありましたよね。あそこから 20m ぐ
します。
らいのところに住んでいました。昭和 18 年,3 歳
のころから,25 年ぐらい住んでいたかな。ですから,
終戦直前には焼夷弾で火に包まれた本館を見て
いるのです。小さいながら,強い印象を受けました。
■ 目養い,耳養いの学部教育こそが
大学の基本
戦後は塀もありませんでしたし,ウサギのえさをや
るのも,
ギンナンの収穫もいつも東工大でした(笑)
。
―― 実際に入学されてみて,いかがでしたか。
あのころは窯業関係の造った面白い構造物が捨て
池上 僕が入学したころ,東工大は非常にユニー
てあったりしたので,その塊をうちへ持ってきたり。
クで,特に人文科学系の素晴らしい先生が集まっ
東工大べったりですね。
ていました。社会学の永井道雄先生や心理学の
5 月の全学祭では,当時珍しかった自動車に乗
宮城音弥先生,文化人類学の川喜田二郎先生と
せてもらったり,研究者に話を聞いたり,それがとて
か。蔵前少年の僕にとっては意外だったのですが,
も楽しみでした。母に言わせると「徹ちゃんは 2 日目
とても印象に残る講義でした。
の午後になると,とても悲しそうな顔をしていた」と。
もう一つ,学部 1,2 年のときにやった図学実習
1 年で一番楽しい時がこれで終わって,あとは来年
や学生実験をよく覚えています。試験管を使った化
まで待つしかないから(笑)
。
学実験や,木型に真赤に溶けた金属を流しこむ鋳
ですから,東工大に行くのは当然のことでした。
型の実習などです。こんな経験から,人の基本的
なキャラクターを作るのは,大学の学部教育でだと
思っています。いいものを見る,いいものを聞く,あ
るいは自分の手で何かをすることが大切で,そんな,
目や耳や皮膚感覚を養う場が,当時の東工大の学
部教育にはあったように思います。
学部の後半は,電気 B コース,今でいう電子工
学へ進みました。ところが森田清先生の電気磁気
の講義のマクスウェルの微分方程式だけが,よく分
からなかった。分からないところに突っ込んでしまう
という悪い癖があって,それで卒論では森田先生の
後継者だった末松先生の研究室に入ったのです。
当時は,レーザーが生まれ,量子エレクトロニクス
が生まれて 5 年目ぐらいでした。また,半導体物理
もピークでした。だから,それを組み合わせた半導体
レーザーの研究を大学院時代のテーマにしました。
末松先生から教わったのは,
「工学は有効数字
だ」ということ。これは,細かすぎる数字にこだわっ
たりせずに,常にシステム全体を考えろということ
だと思います。それと,皆さん信じないのですが,
Tetsuhiko Ikegami
24
1029
「礼儀作法が重要だ」と。その成果には自信がない
のですが,末松先生から礼儀作法を教わったのは
interview 今,活躍中の同窓生
(笑)。
「光ファイバー通信に使う半導体レーザーは,ひ
とつの光の波長で発信するようなレーザーでなけ
ればならない」
この結論を出したことが,NTT 時代の仕事の一
番の成果だと思っています。裏話があって,実験
のうまい町田君という技術者がいて,彼に実験をさ
せるとおかしな結果が出る。「おかしい」と言うと,
「まずは実験結果を見てくださいよ」と抵抗するわ
けです。結局,彼の実験が正しいことがわかり,こ
70年前の東工大。創立60周年記念会場の看板の向こうに
本館が見える。
れまた大学院時代から気になっていた雑音理論と
組み合わせて,この結論を出したのです。
これは,結果的には世界の標準になりました。
町田君がいなかったら,多分,この結論にたどり着
僕だけではないですか(笑)
。
いていなかった。「現場第一」と「人を大切にする」
昭和 34 年に東工大に入って,助手を終えたの
という僕の基本的発想はこのような経験から育っ
が 46 年ですから,ちょうど安保の前夜祭から後夜
たのだと思っています。
祭まで東工大にいたことになります。東工大は変
―― 実験の結果が理屈に合わないと,
「ばらつき
わっていて,学生,教官,それに対立しているはず
が出た」とか,
「条件が間違っている」とか言っ
の学生運動のセクトが一緒になって,国会にデモに
てボツにしてしまうケースが多いですものね。
行くとか,総合大学なら絶対に考えられないこともあ
池上 やはり,耳を養うこと,いろいろなことを聞くだ
りましたね(笑)
。
けの寛容度や好奇心が重要なのかもしれませんね。
当時,いわば原理主義的なセクトが幅を利かせる
その結果,アメリカのベル研究所の連中に,
「NTT
中で,菅直人君は全く違う動きをしていました。菅
の池上に抜かれた」と言わせました。勿論,日本
君の自信を持った活動にいたく感心し,それ以来,
企業の総力の結集のおかげでもありました。
若者はすごいぞという発想を持つようになりました。
これまで,光エレクトロニクス関連の仕事を 30 年
彼との出会いがなかったら,僕はもっと偉そうにし
やっていることになるのですが,研究現場にいたの
ていて,それでどこかで落っこちていたかもしれない
は,東工大の助手と NTT の研究室を含めても 13
(笑)
。
年だけなのです。NTT でも人事担当や研究所の
所長や子会社の社長など,企業経営を 12 年間も
■ 現場と人を大事にした結果
生まれた世界標準
やらされた。NTT がいかに人材不足だったかという
―― 卒業されてからの経緯をお願いします。
池上 43 年に博士課程を出て末松研の助手に
なったのですが,半導体レーザーが光通信の重要
なキーデバイスになりそうだということで,46 年に電
電公社の基礎研究所にヘッドハンティングされまし
た。公的機関への中途入社には苦労もありました
が,そのとき,
「人のいいところだけを見よう」と覚
悟を決めました。誰でもいいところはありますからね
1029
25
Tetsuhiko Ikegami
ことですね(笑)
。
が現実なのです。
NTT を退職した後,会津大に招請され,そこで
敗戦後,航空機の技術開発が禁じられて,日本
ソフトウエアを学び,また外人教員が 4 割いた会
の航空宇宙技術は世界から大変遅れてしまいまし
津大学の経営を 8 年間。そして,その後は宇宙
た。しかし,
糸川英夫博士のペンシル型ロケットをきっ
開発委員会です。まさか宇宙をやることになると
かけに,その発想を東大の宇宙科学研究所が引き
は思っていませんでした。 今年で 5 年目,しかも
継いで,約 15 年まえに「M-V」という固体ロケット
去年の 1 月からは委員長です。ずっと研究をやっ
を仕上げました。「はやぶさ」はこの M-V ロケット
ていたと思っていたのに,実は大半は組織経営
の 5 号機で打ち上げられています。僕は「はやぶさ」
分野をやらされていたのですね。今回,やっと気
は糸川さんから始まった exploration(宇宙探査)
が付きました(笑)。
の流れのひとつの完成物語と理解しています。
一方で,国から見ると,大学に国のロケットを任
せるわけにはいかない。それでできたのが,昔の
■ 糸川博士の 「ペンシルロケット」から
「はやぶさ」 の帰還まで
NASDA です。約 40 年前からアメリカに技術指導
を受け,最終的に,三菱重工が核となって日本独
自の H2A/H2B というロケットができました。あれを
――「はやぶさ」では,盛り上がりましたね。
仕上げたのはやはり国と産業界の力です。ところが,
池上 当初あの盛り上がりはよく分からなかったの
残念ながらその後の方向が未だに決まっていないの
です。失敗の連続だったのに,
「はやぶさ」が戻っ
です。
てきて,中年以上の女性も興奮した。息子のカプセ
また,ロケットは打ち上げのツールにすぎず,宇
ルは無事地球へ戻れたが,親は燃え尽きた。家庭
宙利用のための衛星が重要ですが,20 年前の日
の中での親子関係を彷彿とさせるものがあったので
米貿易の合意により,実用衛星は国際公開入札
しょうか(笑)
。
にすることになってしまった。当時,公開入札にし
―― 日本の宇宙開発の現状を教えてください。
たら,技術が未熟で価格競争力のない日本企業が
池上 今,宇宙開発のトップはもちろんアメリカで,
勝てるはずもなく,そこで実用ではない,研究開発
それからロシアがいて,そして EU。中国はもうEU
だというストーリーで,これまでやってきました。文科
と並んでいるという状況です。実力からいうと日本
省が JAXA を管轄しているのはこのためです。研
はすでに中国に抜かれています。インドや韓国もす
究開発用の官需の衛星となると贅沢なカスタムメー
ぐ後ろにいます。欧州の連中には,今や日本にとっ
ドとなってしまうので,世界の市場での通用はなか
て重要なのは中国のキャッチアップだとも言われて
なかむずかしい。これが日本の現状です。NTT
います。日本国内では気付いていませんが,それ
時代から,出口を見据えた研究開発を当然として
やってきた僕にとって,大きなフラストレーションと
なっています。
■ ミッションなき戦略の国,日本
―― 日本は国際協力にも参加していますね。
池上 国際宇宙ステーション(ISS)は宇宙開発
の唯一の国際協力の舞台で,日本の活躍は高く評
価されています。その経験もあって,莫大な費用が
「きぼう」日本実験棟の窓辺にて,
山崎(左),
野口両飛行士
(2010/4/12撮影)
出典:JAXA/NASA
26
1029
かかる宇宙開発は,できるだけ国際協力で進めよう
という流れになっています。また,地球環境維持,
interview 今,活躍中の同窓生
の参加は維持したい。それ
が国際協力の基本と思って
います。なんとなく撤退とな
れば,目標が共有できてい
ない日本はさらに孤立するで
しょう。
また,アメリカの宇宙開発
の場合はチームを作ってプ
ロジェクトの内容を事前にと
ことん議論し,この後に予算
を申請します。ところが,日
本では予算枠ありきの提案
公募のようなもので,
「いい
分離後のディスカバリー号から撮影された国際宇宙ステーション
(ISS)
(2011/3/7撮影)
出典:JAXA/NASA
提案があったら提案研究室
に金を付けますよ」と。あ
る意味,研究者にとっては
災害対策,テロ対策のためにいろいろな国の衛星
恵まれてはいるのですが,その大半は奇をてらって
の情報を共有しようとしているのですが,日本は自
世界の本流には乗れていないというのが現状です。
前主義に陥りやすく,蚊帳の外になりがちです。
宇宙先進国では“Mission to Mars”,将来人
類を火星に送ろうという壮大な目標を共有している
■ 目標達成のためのチームワーク
のですが,日本ではそのような議論は全くされていな
い。独自開発か国際協力かという議論もなしに,自
池上 エンジニアが人工物を造るということは色恋
前のロケットをという願望のみで先に進めない。しか
沙汰のようなところがあります。人間の好奇心,挑
も,官需の調達が仕事の霞ヶ関には,単年度予算
戦心,そして魂がこもっているのです。ところが,日
のルールがあるので,官僚の優秀さをもってしても火
本の大学の工学部の先生は,何かやって論文を書
星に行こうというのは無理ですよね(笑)
。また,日
いておしまいでしょう。サイエンスをやっている人なら
本は人命第一。官僚が責任を問われるので,人
ば,それでもいい。でも,工学関係の先生で論文を
身事故が起きそうなものには一切タッチしないという
書いて終わりというのは日本だけです。東工大には,
のがこれまでの日本の宇宙開発でした。
日本の工学をリードする立場として,
「工学とは一体
国際の場で協力するためには,共通の目標を共
何なのだ」ということを考えてほしいと思います。
有すればいいのに,残念ながら日本はその目標つく
りが得意ではない。ヨーロッパの政策研究者に言
われてショックを受けたのですが,
「日本は不思議な
国だ。『戦略』と言うが目標がない。でも結果的に
うまくいっている。目標がないのに結果的にうまくい
く戦略など,世界中で日本だけだ」と言うのです。
日本のプレゼンスを上げるには,きちんと国内外
の利害関係者と議論をし,目標を共有することが必
要です。少なくとも東日本大震災のときの海外の
心温まる支援・協力に応えるためにも,国際協力
でやっている宇宙ステーションプロジェクトへの日本
1029
27
Tetsuhiko Ikegami
―― ある私立大学は,ロボット研究所に研
究者を集め,システマチックに研究をして,
福島の原発にも,いいロボットを提供してい
るそうです。これこそ工学だと思います。
池上 同じ思いを持っています。アメリカ
などの国では,大学でやった成果は必ずど
こかで使おうとしている。使うことを前提に
やっているからこそ,宇宙や自然の大きな
力と,どう折り合いをつけるかに面白さがあ
るのです。
―― 先程の私立大学では,世界から人
材を集めてきて,縦割りではなく一つの固
まりとしてロボットを造っているそうです。振
地球に帰還する
「はやぶさ」 イラスト:池下章裕
り返って,東工大にはいい先生がたくさんおられる
第一原発の吉田所長もそうでした。菅さんもある意
のですが,ばらばらという印象を受けます。
味ではそうですね。逆境に強いのか弱いのか分か
池上 企業であれば重要なプロジェクトを開始する
らないけれども,みんなが逃げるところで最後まで逃
には,まずは社内の優秀な人材を集め,必要な資
げ損なっている。気がついて「よし,逃げよう」と
金を投入します。ところが競争的資金を勝ち取った
思うと,いつも誰もいない(笑)
。ひょっとしたら,そ
先生は,力のあるプロの研究者に協力をお願いす
れが東工大なのかもしれませんね。
るよりは「おれのカネ」で欲しかった装置購入に走り,
孤立してしまう例が多い。高い目標を達成するには
「カネ」はもとより「ヒト」がカギであることを忘れ,
結果としてセミプロの学生,ポスドクを相手にハンデ
キャップを背負って競争することになっています。
実は宇宙開発の分野でも似たようなことがおこり,
世界の主流のなかでのトップをめざすというよりは,
「初物ねらい」で結果として周辺で奮闘している。
もっと自信をもって「ヒト」第一の国境を越えたチー
ムワークで挑戦してほしい。タフな議論が行えるチー
ムワークつくりよりは「お友達仲間」になりがちな
日本では,世界からも孤立してしまいます。
■ まだ,やっていないことがあるからこそ,
日本は,まだやれる
池上 でも,だからこそ,池上的楽観主義で言えば,
まだまだやっていないことがあるからこそ,日本は,ま
だやれるのではないでしょうか。
少なくとも今の仕組みの中では,東工大の出身
者は,優秀な東大卒などの連中がやりたがらない難
しい分野に,いつも登場させられています。福島
28
1029
インタビューア 坪田 文
秋庭 人物写真撮影 那須野
誌面デザイン いりえ
賢亮(S43 金 S45 修金)
紀子
公紀
玉恵
KVA
KURAMAE VENTURE AWARD
2011年度「蔵前ベンチャー賞」,「蔵前特別賞」
授与式・受賞者記念講演会
蔵前工業会は 2007 年度から『蔵前ベンチャー賞』を設置しました。
『蔵前ベンチャー賞』の目的は 「 高い経営理念を持って,新しい技術,サービス,製品,ビジネス
モデル等を事業化することにより,新しい市場や雇用を創造したベンチャーを表彰する 」 ことにあり
ます。本年度は第 5 回になります。
また,2009 年度から『蔵前特
別賞』を新設しました。『蔵前特
別賞』は大企業も含めて,技術
革新,新製品開発,経営革新を
実現して,産業界に,特に顕著
に貢献した,個人または企業を
表 彰 し て い ま す。 今 回 受 賞 の
TDK は東工大の研究室から生ま
れたフェライトが基になって創
業され,世界的な大企業に発展
しました。
1.『蔵前ベンチャー賞』,『蔵前特別賞』の授与式,記念講演会
2011 年 11 月 25 日(金)東工大蔵前会館くらまえホールで行われました。
2011 年度蔵前ベンチャー賞
事業概要
白山工業㈱
社長 吉田 稔
1976 年 東工大機械物理工学科卒
1986 年 創 業。 防 災 シ ス テ ム 事 業 で は 世 界 最 大 規 模 の
1,700 箇所リアルタイム強震観測網の納入実績。産業機器
事業ではμ単位の位置決め精度スリッターの開発 ・ 製造・
販売を行っている。
㈱オロ
社長 川田 篤
1997 年 東工大電気電子工学科卒
1999 年創業。中小企業向け ERP(Enterprise Resource
Planning 統合業務パッケージ)をクラウドコンピューティ
ングによりに安価で簡便なものとして開発し,多くの導入実
績を持つ。
2011 年度蔵前特別賞
事業概要
TDK㈱
社長 上釜健宏
フェライトは 1930 年に東工大電気化学科加藤與五郎教授
と武井武助教授によって発見された。その工業化を目的と
して 1935 年に東京電気化学工業(現 TDK)が創業された。
技術開発を重視する経営により日本を代表する世界的な大
企業に成長した。
1029
29
KVA
2.『蔵前ベンチャー賞』授賞記念講演「おもしろいもの,つくろう」
白山工業株式会社 代表取締役社長 吉田 稔氏
はじめに
たのが白山工業
株 式 会 社 で す。
白川英樹さん(当
このたびは蔵前ベンチャー賞をいただき,光
時, 筑 波 大 学,
栄に存じます。ベンチャー企業というと急成長
後にノーベル化
のイメージがありますが,白山にはそんな成功
学賞受賞)等の
物語はありません。ただ,ほかの会社が思いつ
山 岳 部 の OB を
かないようなおもしろいものをつくろう,とい
は じ め, た く さ
う思いを実践してきたのみです。
んの人が激励し
学生時代
てくれました。
3 人の職人さんと,スリッターという薄い金
属材料を切断する機械作りがはじまります。
私は 1972 年に東工大に入学しました。その
同時に,小型計測器も作り始めました。野外
年に白山工業所を自営していた父が亡くなり,
調査の時に乾電池駆動の計測器がなくて苦労し
母が代表を継ぎました。
たためです。これが火山研究者の目に留まり,
4年になるとロボットを作りたくて機械物理
どこにマグマがあるかを調べる計測器へと発展
工学科の梅谷陽二先生の研究室に入りました。
しました。当時,まだサンプル段階だったフラッ
ここでは広瀬茂男さん(機械宇宙システム専攻
シュメモリを用いて超小型化を図ったもので
卓越教授)が博士課程にいて,伊能教夫さん(機
す。これが契機で現在白山の研究顧問をして頂
械制御システム専攻教授)が同級でした。
いている平林順一先生(東工大名誉教授,元火
私は家の仕事もロボット研究もせず,ワン
山学会会長)とお付き合いが始まりました。
ダーフォーゲル部と山岳部の両方で山登りに熱
1995 年,阪神大震災のあと東大地震研究所が,
中しました。大学院ではフィールドワークを目
全国を統一する「衛星通信テレメタリング地震
指し,名古屋大学水圏科学研究所に行きました。
観測システム」を構築する際,白山が観測設備
その樋口研究室は全国から山と探検を目指す人
を担当するチャンスにも恵まれました。有料を
が集まるところで,東工大の先輩の藤井理行さ
無料の UNIX に置き換え,PC ベースで観測網
ん(前・国立極地研究所所長)も居られました。
が構築できるようにして,多くの大学で使われ
ヒマラヤでの氷河調査,立山の多年性雪渓調
ることになりました。その後,多くの地震観測
査に熱中し,1983 年の博士課程満了とともに,
第 25 次南極地域観測隊に参加します。藤井さ
んと一緒の越冬で,日本隊で初めての 700 m
網をお手伝いさせていただきました。
時代の変化
を超える氷床掘削や,未知であったドームふじ
までのルート開拓など,未踏のフィールドの楽
しさを満喫しました。
今年 3 月 11 日に発生した東日本大震災の被
災地を回ると,とても信じられない光景の連続
でした。これからは観測だけではなく,研究成
起業
果を社会防災に役立てる仕組みが必要とされま
す。広瀬先生,翠川三郎先生(人間環境システ
30
越冬が終わって帰国したときに,母が脳卒中
ム専攻教授)と可搬型の地震動体験装置や,建
で倒れます。このときに自営業を改組して始め
物の被災度を即座に判定するシステムの開発を
1029
進めています。またワンダーフォーゲル部同期
社の製造能力を超えた受注があり,製造体制の
の縣厚伸さん(イオン株式会社執行役グループ
整備では蔵前工業会の多くの方々のサポートを
IT 責任者)とは,集客施設での人の安全と行
受けています。
動にかかわる研究を開始しました。
スリッターでは1μmの位置決めを実現し,
振り返るとずっと東工大の仲間に助けられて
きました。40 年もの長いお付き合いをいただ
従来の銅合金だけではなくリチウム電池の電極
いている素晴らしい仲間と東工大に本当に感謝
材料を切断する機器を開発しました。今年は弊
します。
3.『蔵前ベンチャー賞』授賞記念講演
株式会社オロ 代表取締役社長 川田 篤氏
はじめに
じて社員全員の
自己実現を達成
する。」となって
株式会社オロは 1999 年1月に私と現専務の
お り, 事 業 の 内
2名で創業しました。アイディアとテクノロ
容と言うよりも,
ジーをビジネスドメインにして,現在,事業内
組織と所属する
容は IT を活用して企業の内側を強くする「ク
社員そして関連
ラウド型統合業務システムの提供」と IT を活
する人々への幸
用して企業の外側を強くする「ウェブを中心と
せを追求すると
した企業コミュニケーションデザイン」の2つ
いう事を基本に考えていますので,現在の事業
の事業を行っております。現在は正社員数,国
モデルや構想があっての起業ではなく,起業し
内3拠点 170 名と中国に現地法人1拠点 30 名
てから徐々に確立された事業となっておりま
合わせて 200 名程度の規模となっております。
す。
創業の経緯
現在のビジネス
在学時より,日本のメーカーに代表される創
さて,会社設立後は,IT に関連する仕事で
業経営者の偉業に感銘を受けており,大企業へ
あればネットワークゲームの開発から,システ
の就職よりも起業して大きな企業を作りたいと
ムコンサルティングまで,出来る事は何でも幅
いう夢がありました。在学時代1年間アメリカ
広く対応しながら,とにかく懸命に働いていま
へ留学をさせて頂き,卒業後研究室の同期で
した。暫くすると,システム業界には大きな課
あった現専務の日野と一緒に自宅を使って受託
題がある事が見えてきました。よく言われてい
ソフトウェア開発の会社をスタートしました。
ることですが,システム(特にソフトウェア)
その後も,大学自体の友人や後輩を会社に呼ぶ
は開発者の人件費が原価のほぼ全てです。しか
ことで拡大をしたので,今でも役員及びコアメ
し一方でソフトウェアはコストをかけることな
ンバーの多くは東工大出身のメンバーで構成さ
く,簡単に複製する事ができます。そのような
れております。また,当社の経営理念は「社員
理由から,多くの人や企業が必要とするシステ
全員が世界に誇れる物(組織・製品・サービス)
ムというものは,本来は再利用を適切に行う事
を創造し,より多くの人々(同僚・家族・取引
で開発効率を上げる事になり,リーズナブルで
先・株主・社会)に対してより多くの幸せ・喜
かつ社会的にもエコなシステムが出来上がるは
びを提供する企業となる。そのための努力を通
ずです。しかし,システム業界では,中期的な
1029
31
KVA
視点よりも短期的な視点で設計・開発が行われ
することができています。インターネットを活
ている事が多く,再利用よりも使い捨てされる
用する仕事は先例や勝ちパターンが必ずしも決
システム開発が多く行われています。当社でも,
まっているものでは無いので,今でも毎回考え
いくつかの中堅企業の業務システムの開発を比
ながら試行錯誤の繰り返しです。
較的短期的な視点で作り続けてきましたが,ど
うにか同じシステムを複数の企業に利用して頂
これからの事
けないかと考え,今で言うクラウドという形式
でのシステム提供を行えるような開発体制を整
当社の夢は設立当初より変わっておらず,テ
えました。それが現在の事業の一つの柱である
クノロジーとアイディアを活用しながら,世界
基幹業務システムのクラウド提供となっており
的な良い企業を作り上げ,そこに関連する全て
ます。当社のシステムは部門別採算管理と時間
の人達を幸せにして行きたいという事です。既
あたり採算管理という2つが大きな特徴となっ
存の事業領域での成長を着実に行いながら次の
ている統合業務システムです。特に日本の中堅
事業を考えて行きたいと思っております。また,
企業は,情報システム化による経営の効率化が
同時に日本という国境を意識すること無く,オ
遅れているという事もあり,お陰さまで,現在
ロというボーダーを世界に広げていくことで日
160 社を超える企業に基幹業務システムとして
本を代表する優良企業へと成長させて行きたい
選定して頂くことができました。
と真剣に思っています。まだまだ,未熟で小さ
また,もうひとつの事業の柱であるウェブを
な企業ですが,焦らず一歩一歩進んで行きたい
中心としたコミュニケーションデザインは,簡
と思っています。周りの人達に支えられて成長
単に言うとウェブに関わるワンストップサービ
させて頂いている事に感謝し,いつか,社会に
スみたいな事をやっていますが,こちらも設立
恩返しが出来るように頑張って参りますので今
時は行っておらず,たまたまお客さんから頼ま
後ともご指導のほど,どうぞ宜しくお願い致し
れた事業を真面目に取り組むことで信頼を得る
ます。
ことができ,紹介とリピートでこれまで成長を
32
1029
4.『蔵前特別賞』授賞記念講演
『東京工業大学,フェライト,そしてTDKの誕生』
TDK株式会社 技術企画部主幹 住田成和氏
日本が世界に誇る大発明「フェライト」
HDD 用 の 磁 気
ヘッドを開発し,
現 在 で は GMR
1930 年に東工大の加藤與五郎博士,武井武
や TMR ヘ ッ ド
博士によって世界で初めてフェライトが発明さ
の最先端技術か
れました。初代の齋藤憲三社長はフェライトを
らスピントロニ
工業化することを目的として,1935 年に TDK
ク ス( 電 子 の ス
を創立しました。TDK は世界に先駆けた,大
ピン + エレクト
学発のベンチャー企業でした。
ロニクスの造語)
TDK の旧社名は「東京電気化学工業」です。
フェライトが「東京工業大学電気化学科」で発
明されたことを誇りとして命名されました。
の時代を築きつつあります。これらは私たちの
日常生活を大きく変革させた技術革命でした。
最近では電気自動車やハイブリッド車,ス
TDK の創造の原点はフェライトであり,私た
マートフォーンに代表される携帯電話,PC や
ちは社是の「創造によって文化,産業に貢献す
TV にも TDK の電子部品が満載されています。
る」を心に刻んで,毎日の業務を推進しており
TDK が世界 No.1 の電子部品メーカーに成長で
ます。
きた恵まれた背景には,東工大におけるフェラ
フェライトから広がる技術革命
イトの発明を起源として脈々と受け継がれた
「磁性 DNA」と,常にチャレンジ精神に溢れる
技術者たちの「創造力 DNA」がありました。
東工大と TDK は「フェライトの発明と工業
化」によって,2009 年に IEEE マイルストー
最先端の技術と最近のトピックス
ンを共同受賞しました。これまでの受賞として,
八木宇田アンテナ,富士山レーダー,東海道新
フェライトの発明以降,磁石そして磁性材料
幹線,電子式卓上計算機,電子式水晶腕時計,
の進化には目を瞠るものがあります。およそ
世界標準ビデオ VHS,自動改札システム,ワー
10 年毎に新しい磁石材料が台頭してきました。
ド プ ロ セ ッ サ, 黒 部 川 第 四 発 電 所, 電 子 式
例えば 1960 年代の SmCo5 に続き,70 年代は
TV,太陽電池,衛星放送などが挙げられます。
Sm2Co17, そ し て 80 年 代 か ら は Nd2Fe14B
東工大と TDK の名誉あるこの共同受賞は,
がそれぞれの時代に開発され,その後ナノコン
フェライトが技術革命を引き起こし,世界の
ポジット材料が続きます。最近では地球規模で
人々に貢献してきた証と考えられます。TDK
の元素戦略が求められます。具体的には,希土
はフェライトコアから磁性材料の研究開発を進
類フリー磁石の創製が必須であり,これからの
めて,永久磁石,インダクター,電波吸収体な
電気自動車やハイブリッド車に不可欠なものと
どを生み出し,その基盤技術を圧電体や誘電体
なっています。TDK はフェライトで培ってき
のセラミックス材料の開発へつなげてきまし
た技術を活かして,新規磁石と磁性材料に新た
た。また磁気記録分野でも磁気テープが大きな
な革命を起こすべく,最先端の開発に挑戦して
ビジネスとして花開き,光ディスクや光磁気
います。
ディスクを次々に市場へ送り出しました。さら
HDD に用いられる薄膜磁気ヘッドは,記録
にコンピュータ社会の到来とともに,TDK は
ディスクメディアの表面で浮上させて作動させ
1029
33
KVA
ます。この磁気ヘッドをジャンボジェット機の
大きさに喩えると,ジェット機を地面からの高
度わずか 0.56mm(ミリメートル)で誤差なく
ところです。
TDK の社会貢献
正確に飛行させる技術と同じレベルなのです。
トンネル効果を用いた TMR ヘッドでは,1.5nm
TDK は世界陸上選手権大会のオフィシャル
(ナノメートル)の層をわずか数原子層レベル
パートナー,TDK オーケストラコンサートと
のエラーを許さずに造りこみます。私たちの
公開リハーサル,エレクトロニクス体験教室,
DNA 二重らせん構造の幅が約 2nm ですから,
はじめ自然環境を配慮した植林などの社会貢献
それよりもさらに小さな構造を TDK は人工的
事業を進めています。
に作製しています。
こうした技術を次世代のスピントロニクスの
TDK は世界の皆さまに愛される企業であり
続けたいと願っております。引き続き,ご指導,
高みへと導き,さらなる技術革新を進めている
ご鞭撻を賜れば幸甚に存じます。
5.感想
客へ価値の提供を行い,世界の oRo になって
くれそうです。
白山工業吉田社長講演は,人生の岐路に立っ
TDK 住田主幹講演は,まず東京電気化学創
た時に選んだ偶然が後から見るとすべて糸で繋
業時の東工大との関係を詳しくお話されまし
がっていたかのような必然に感じられます。本
た。世界的な大企業に成長した後も,他の追随
人の能力,探究心に加え,本人のまわりを取り
を許さない先端材料メーカーとして,日々イノ
巻く多くの友人の支援が今の白山工業をなして
ベーションを進めている創造力 DNA のお話は
いると考えると大変面白い話でした。
感動的でした。
オロ川田社長講演は,大学在学中から,起業
交流会では講演者を中心に活発な交流がされ
して事業を成長させてりっぱな会社にすること
ました。蔵前ベンチャー賞,特別賞が今後もベ
を目指して行動してきたというお話でした。い
ンチャーや企業の革新,活性化にお役に立てば
ままで顧客に価値を提供しつつ着実に成長して
と願っています。
きたという自信に満ちた講演に,プロの経営者
34
としてさらなる活躍を期待させる覚悟を感じま
蔵前ベンチャー相談室コーディネーター
した。これからも東工大らしく技術をもって顧
滝田勝久(S40 応物)記
1029
第3回 一橋大学・東京工業大学 合同移動講座 開催報告
蔵前工業会福岡県支部 評議員 中島 清(S54修化工)
合同移動講座について
学技術とこれか
ら」の講演があ
一橋大学同窓会である社団法人如水会は「広
り,最後に庄山
く一般の方に一橋大学を認知してもらうこと」
悦彦蔵前工業会
を趣旨に全国各都市を移動して開催する「移動
理事長(株式会
講座」を開催し,2008 年度までに 31 回の開催
社日立製作所相
を数えておりました。2009 年度からは蔵前工
談役)が座長と
業会も加わり,
「商」と「工」の両雄による「合
なって質疑応答
同移動講座」に名前を変え,第一回(2009 年
が行われまし
11 月 23 日)は浜松市,第二回(2010 年 12 月
た。
11 日)は神戸市で開催されました。第三回合
最後に全体の纏めとして,庄山理事長より,
同移動講座は,「科学技術と経済の挑戦∼日本
「本日4名の講師の方から,大変力強いお話を
復興のために∼」をテーマに 2011 年 12 月 18
たくさん頂きました。私は,今日の講義で教わっ
日(日)に福岡市のホテルオークラ福岡で約
たことを兎に角実行することが大事で,一にも
500 名の方に参加いただいて開催されました。
二にも実行ではないかと思っております。今日,
津田純嗣氏(S51 機)による基調講演
このように皆様方にお集まりいただき,話がで
きましたことを大変嬉しく思います。日本の復
講演会
興のためにそれぞれが全力で皆が同じ気持ちに
プログラムは,松本正義如水会理事長(住友
なってやれば,必ずや成し遂げられると信じま
電気工業株式会社社長)の開会の挨拶に始まり,
す。日本は世界から色々な意味で評価されてお
大田弘子氏(政策研究大学院大学教授・元経済
り,世界からもたくさんの応援をいただいてお
財政政策担当大臣)「日本経済の明日を切り拓
ります。被災地だけの問題ではなくて,日本全
く」と津田純嗣氏(株式会社安川電機取締役社
体の問題として,力強くやっていくことを誓い
長)「ロボットが日本を救う」の基調講演に続
たいと思います。」
いて,山内進氏(一橋大学長)「社会科学と震
と の 提 言 が な さ れ ま し た( 講 演 内 容 は 蔵 前
災・復興」と伊賀健一氏(東京工業大学長)「科
ジャーナル 2012 春号に掲載します)。
蔵前工業会会員・如水会会員集合写真
36
1029
準備委員会の活動について
主幹事は両同窓会が交互に担当することに
なっており,第三回開催は如水会が主幹事と
なって準備を進めました。7 月 25 日に 2011 年
12 月 18 日(日)にホテルオークラ福岡での開
催が両同窓会にて正式に決まりました。
主幹事担当側の名称を始めに置くことにして
いるため,第三回は 「 一橋大学・東京工業大学
参加者からの質問に応える講師陣
合同移動講座 in 福岡 」 と銘打ちました。
2011 年 8 月 3 日に両同窓会事務局と如水会
懇親会
福岡支部,蔵前工業会福岡県支部の関係者 11
講演会は定刻とおりに 13:30 開演,17:40 に
名がJR博多シティの中華飯店に集合して準備
終演となり,終演直後に一橋大学・東京工業大
委員会をキックオフし,以降,全6回の会合を
学の同窓生の集合写真撮影があり,計 140 名
経て合同移動講座の準備を進めてきました。
が写真に収まりました。撮影後は隣の懇親会会
合同移動講座終了後に続けて懇親会を開催す
場に移動し,18:05 から懇親会が始まりました。
ることとし,懇親会の内容も併行して準備を進
当日に東京まで帰る方々を考慮して,19:30
めました。
中締めの時間厳守で懇親会は進行されました。
合同移動講座会場は 500 名収容のホールを
如水会福岡支部長の椛浩氏(S41 社)による
確保しましたが,如水会福岡支部が中心となっ
開会挨拶の後,両同窓会員による和洋の祝典曲
て福岡市近郊在住の同窓生・市民への呼び掛け
の披露に移り,如水会の飯冨章宏氏(S54 経)
による参加が大きく伸びました。地元地銀の福
らによる能楽「如水の曲」,蔵前工業会の山口
岡銀行の如水会会員 21 名に参加いただきまし
幸志氏(H07 修知能)のアリア「誰も寝ては
た。
ならぬ」が格調高く響き渡りました。
蔵前工業会福岡県支部は,基調講演講師の津
一橋大学・如水会を代表して小川英治副学長
田純嗣氏(株式会社安川電機取締役社長,S51
による乾杯(スパークリングワイン)の発声の
機械)の安川電機から 50 名もの方が北九州地
後,懇談に入りました。懇親会終盤で,東京工
区から参加,JR九州からも福岡地区を中心に
業大学学歌斉唱,一橋大学「武蔵野深き」斉唱
8 名の方に参加いただきました。
の後で,一橋大学応援団によるエール交換が行
最終的に満席の 500 名の参加者となり,盛
われ,最後に蔵前工業会福岡県支部長の見月信
況のもと無事に終了する事が出来ました。関係
明氏(S54 制御)による閉会挨拶と如水会福岡
された皆様のご尽力に心から感謝いたします。
支部の眞鍋博俊氏(S49 商)らによる博多恒例
の「博多手一本」で格
好良く中締めを行って
いただきました。
85 分 間 と い う 限 ら
れた時間ながらも多く
の出し物があって,如
水会会員が経営する酒
蔵から福岡の地酒も振
舞われて,大変楽しく
両同窓生の交友を深め
ることができました。
懇親会での東工大大学歌斉唱
1029
37
キャンパスライフ
蔵前人の
私の東工大での生活は博士研究員(ポスドク)
としての勤務を含めると合計 12 年間に及んだ。
その後,大学院時代に結婚したエンジニアの夫
を日本に残してメキシコに渡り,バハ・カリフォ
ルニア自治大学理学部にて 2 度目のポスドク生
活の後,同大学教員として理学部,医学部での
勤務を経て現在の所属に至る。この間,メキシ
コでの出産も経験し,6 歳になる息子の子育て
も現在進行形である。仕事でもプライベートで
もハプニング続きの刺激の多いメキシコでの日
常,その一端を紹介したい。
摂氏 50 度の町 メヒカリ
メヒカリ市は,北メキシコの米墨国境に 100
年少し前に誕生した人口公称 80 万人ほどのバ
ハ ・ カリフォルニア州の州都である。アメリカ・
カリフォルニア州最南端のサンディエゴ市から
真東に 200 キロほどの距離にあるが,アリゾ
ナ・ソノラ砂漠の西端に位置するため,夏の暑
さは尋常ではない。6 月~ 9 月は連日摂氏 40
度超,最高気温が 50 度を超えた年もあり,夏
場の最低気温も 30 度超が普通である。冬は寒
暖の差が激しく,雪こそ降らないものの朝晩は
摂氏 2-3 度まで冷え込み,日中はカーエアコン
バハ・カリフォルニア自治大学
獣医科学研究所 教授
堀 沢子
(H4 生命理 H6 修バイオ H9 博バイオ)
が必要になるくらいのポカポカ陽気という日が
続く。夏の間は慣れるまでは毎日が熱中症との
闘いで,何ヶ月も連日連続運転する家の冷房代
やエアコン付き車の維持費などがばかにならな
い。そのためか,ティファナ市やその他の米墨
国境の都市部に比べると,中・高所得者層の住
民が占める割合が大きく,治安も良いほうと言
える。
バハ・カリフォルニア自治大学はメキシコ各
州にある州立総合大学のひとつで,メヒカリ,
ティファナ,エンセナーダの各市とその近郊の
キャンパス合わせて 30 の学部・研究所からな
り,学生約 4 万人が学んでいる。国内の大学ラ
ンキングには常に上位に名が上げられるが,ラ
ンキングは全くあてにならない。連邦政府から
大学に降りてくる予算の 90%以上は首都にあ
る国立メキシコ自治大学に集中しているので,
その他の州立大学はどこも似たりよったりでイ
38
1029
ンフラ整備,教育・研究の質とも深刻な問題を
抱えている。
キャンパスライフ
現在は,主に獣医学部や連携大学院のスペイ
ン語での講義・実習を1セメスターに平均 4 ~
5 科目,合計で週 10 コマ 20 時間以上担当して
いる。科目は分子生物学,細胞生物学,動物感
染症学,免疫学やバイオインフォマティクス,
論文ゼミなどである。スペイン語に苦労してい
た赴任当初に比べると,最近は講義準備も手を
昨年 6 月,アグアスカリエンテス州保健省の検査ラボにおいて「リアルタイム
PCRを用いた抗酸菌の検出法」
を出張講習したときの一コマ。当日はサッカー
ワールドカップのメキシコ戦の日と重なっており,この写真の直後から一人また
一人と参加者が消え,気がつくと皆となりの部屋にあるモニターに釘付けで試
合観戦している有様。
抜きがちになっているが,日本人が寄与した重
生方にいろいろ教わりながら,メキシコ国内で
要な発見などはついつい説明に熱がこもる。講
の疫学調査,診断法や自家製ワクチンの開発,
義以外の時間はおもに酪農・畜産業や公衆衛生
免疫病理学的研究などを細々と進めている。い
の観点から重要な動物の感染症に関する研究を
ま受け持っている大学院生は修士 1 名,博士 2
行っている。4 年ほど前からメインのテーマと
名,そのほかに医学部の連携大学院ではヒトの
しているのは牛や羊などの家畜に見られる感染
自己免疫病の免疫病理や,新生児のウイルス感
性の慢性腸炎であるヨーネ病という病気であ
染症に関するテーマで 2 名の博士課程の学生を
る。ヨーネ病を引き起こすヨーネ菌は結核など
指導中である。東工大では純粋な基礎科学のト
と同じ抗酸菌の一種であるが培養に非常に時間
レーニングを受けてきた私にとっては,実験室
がかかり最低でも 2 ヶ月,菌によっては単離培
の中の世界にとどまらず,酪農・畜産農家の人
養に 1 年以上かかるものもある。そのため研
たちや臨床の医師らとの交流を通じて技術移転
究者人口も少なく,生物学的にも病理学的にも
や研究のニーズを探り,プロジェクトを提案し
未知の部分が非常に多い。最近はクローン病と
て,ささやかな成果を出していくという作業は,
のかかわりなど公衆衛生上も興味ぶかい病原菌
社会とのつながりを実感できる新鮮な経験であ
である。獣医学のバックグラウンドを持たない
る。
私は,同僚の獣医師や国内外の共同研究者の先
ただし,日本では数日で結果が出せたよう
な簡単な実験も,こちらでは 1 ヶ
月~半年以上もかかることもある
など,さまざまな障害や社会シス
テムの欠陥があり,研究へのモチ
ベーションを保つのは容易ではな
い。たとえば,この夏以降のたっ
た数ヶ月の間ですら,車上荒らし
による財布の盗難,交通事故,車
や家のエアコンの故障(すぐに対
処しないと熱中症になる),停電
(カリフォルニア大停電,メキシ
コ側では復旧に 5 時間かかった),
人為ミスによる実験動物舎の断水
(気温が高いので 1 日断水すると
動物が衰弱),砂嵐(倒木による
研究所内の酪農場にて。バハ ・ カリフォルニア州では牛結核病やブルセラ病など,ヒトにも甚大な被害を引
き起こす病原菌に感染した乳牛が多い。アメリカ側ではメキシコ人やメキシコ系移民による汚染された生乳
や生チーズの持込みには特に神経を尖らせている。
1029
39
境のゲートに連なる車列に並ぶ。道路わきの鉄
柵を通じてアメリカ側は丸見えである。一日の
車両交通はおよそ 3 万台,待ち時間は 10 分~
1 時間程度であるが,時には 4,5 時間になるこ
ともあるので,私は待ち時間がほぼゼロの特急
レーンを利用できる有料のパスカードを取得し
ている。知り合いの中には,我が子の英語能力
の向上のためにと,小学校低学年から数年間,
時には中学終了までをアメリカ側の学校に通わ
せている家も多い。本来はアメリカ居住要件を
修理しても修理して直らない建物の一例。2010 年 4 月のメヒカリ地震で半
壊扱いとなった講義棟の 2ヵ月後のようす。 予算の名目上「建替え」とい
うことができず,あくまで補修,補強工事の名目でしかお金が下りないらしい。
過去の地震でも 3 度ほど補修されたこの建物も,
今回はついに躯体だけになっ
た挙句,
結局取り壊し,
予算もつかずにその後 1 年以上更地となっている。
「過
去 18 回にわたって雨漏り補修工事を繰り返すも,いまだに雨漏りしつづけて
いる建物」なんていうのも存在する。
満たしていなければ入学できないはずである
建物被害),大雨による洪水,車の冠水,地震,
う実態がある。非合法のメキシコ人日雇い労働
クレジットカードのクローン被害,などなどハ
者が実はアメリカ側の地元の経済にはなくては
プニングの連続である。皆が「研究どころでは
ならない存在,という構図と似ているのであろ
ない」日常を送っているので,講義だけをこな
う。
して,あとは副業や複数の仕事の掛け持ちに忙
が,予算不足が深刻なカリフォルニア州におい
て,学校側も生徒数を確保したいためにメキシ
コからの越境入学を見て見ぬふりしているとい
アメリカ側からも,安い医療・美容サービス,
しい大学教員が多い。予算もほとんどないので,
幼児教育,専門店での買い物・食事など様々な
お金のかかる分子生物学や細胞生物学の実験系
理由でメヒカリへ入ってくる。週末は飲酒で羽
の授業や実験を遂行するためには,とにかくリ
目をはずしたいアメリカの若者たちや,家族・
サイクルと節約のテクニック,大工仕事・電気
親戚と過ごすためにサンディエゴやロサンゼル
仕事なんでもござれの DIY 精神,最後はポケッ
スなどから戻ってくるメキシコ系移民の人たち
トマネーを使ってでも物や人を動かす覚悟が必
などで,アメリカ出国の車の渋滞が 1 時間以上
要である。幸いにも,ごく少数ではあるが,一
かかるのも珍しくない。
緒に研究の進展を喜び合えたり,励ましあった
世界中で最も貧富の差が激しい国境といわれ
りできる同僚がいるので,同じ価値観を共有で
る米墨国境を通るたびに,さまざまな社会層の
きる彼らの存在や,メキシコ人特有のジョーク
人たちの人間観察をする機会があり,日本のパ
ですべてを笑い飛ばす精神は,こちらが落ち込
スポートの有り難味を感じつつ,国とは何か,
んでいるときは大きな支えとなる。
国籍や国家観といったことをいろいろと考えさ
せられる。一人息子には,国境を通るたびに,
国境の生活
いろいろな実例をあげて,国が違えば言葉だけ
陸続きの国境というのは日本人には想像し難
いものであろう。国境の町のメキシコ人たちは
アメリカ側に行くことを「(塀の)向こう側(オ
トロ・ラド)に行く」という言い方をする。ア
メリカ側で働く日雇い労働者,週末だけの出稼
ぎアルバイト,転売目的で日用品・中古品の買
いつけに行く人,食事や買い物などなどアメ
リカに入る目的はさまざまである。自宅から車
で 10 分も走ると高速道路の料金所のような国
陸続きの国境。数十メートル先はアメリカ。
40
1029
でなく習慣も法律も違うとい
うこと説明しているが,果たし
てどのように感じているのだ
ろうか。北メキシコはメキシ
コの中央部,南部の地域に比べ
ると人々の風貌も街並みも,習
慣も非常にアメリカナイズさ
れている。メキシコ人は心情的
には反米で,ふだんはアメリカ
人を馬鹿にするジョークを連
発しているわりには,質の良い
物・サービスのあるアメリカ側
での買い物の便が良い国境の
町での生活が気に入って,よ
大学院修士課程の修了式にて。この年は式のマドリーナ(介添え人,後見人)として,はなむけの言葉を送り,
3 人の修了生達より感謝状を頂いた。卒業式や結婚式,
洗礼式など節目となるイベントでパドリーノもしくはマドリー
ナ役を依頼されるのは光栄なこととされ,将来にわたって交流が続くことが多い。
その町にはもう住めないと断言する人も多い。
毎日出勤時に砂埃の舞う砂漠の景色を見なが
私も,アメリカの物の豊かさとメキシコ人の大
ら「なぜ今自分はここにいるのか」と自問自答
家族の温もりとの両方をほどよく享受できてい
してみたり,実験に必要な試薬などポケットマ
る気がする。
ネーを出すことがあるたびに「そこまでする価
値があるのか,実験は趣味なのか,趣味を仕事
おわりに
にしていいのか」などなど考えつつも,結局は
自分がやりたいようにやってきた。遠くからい
つも応援してくれている夫が,メキシコに来る
東工大で過ごした 12 年に近い年月をここメ
ときに言ってくれた「好きなことをやればいい」
キシコで過ごし,そろそろ次のステップを考え
という言葉に大感謝である。メキシコ国立自治
るときが来ているようにも思う。研究者として
大学の知り合いの 70 歳を超える教授の言葉だ
は人並み以下の能力の私であるが,自分が学ん
が,なぜリタイアしようと思わないのか?と尋
だことを学生に伝える機会に恵まれ,元教え子
ねたときの返事として,「(メキシコは)政治も
達が州政府の家畜衛生や公衆衛生関連の役職に
腐敗し,マフィアとの麻薬戦争で世界に轟く治
ついて活躍している様子をうれしくみている。
安の悪さ,社会問題も山積して,絶望的になる
ことばかりだが,少な
くとも自分の研究の中
身については誰からも
邪魔をされない自由が
ある,それが一番の魅
力である。死ぬ前日ま
でラボに通いつづけら
れたら本望」と。不条
理なことが日常の国に
いるがゆえに,私も「学
問の自由」という言葉
の重要性と,大学に居
るということの心地よ
さを実感している。
メヒカリ地震の 1ヵ月後に主催したヨーネ病に関するミニシンポジウム。アルゼンチン,
メキシコ,
アメリカから 5 人の先生を招聘。
建物の外壁が剥がれ落ちたのを応急処置した痕がよくわかる。このシンポジウムをきっかけに,大学院の担当学生がアルゼンチ
ンやアメリカ,メキシコシティに短期,長期で研修に行けることとなった。各学期ごとに 1 回は外部から講師を招聘してこのよう
なイベントやセミナー,研修会などを企画,開催することを自分に課しているが,予算取得はむずかしい。
1029
41
高橋まゆみ人形館
長野県飯山市
昨年オープンした人気の人形館
高橋まゆみ。初めてこの名前を耳にする方も
多いのではないではないだろうか?
創作人形という分野において,個人の名前が
つく美術館は,全国的にみても非常に少ない。
もらっている。
ゆっくりと人形たちと向きあえるようにとの
配慮から,大部分がガラスの展示ケースではな
く,展示台の上にそのまま飾られている。顔の
皺ひとつひとつから細やかな顔の表情までじっ
くりと見ることができる。
年間 20 万人もの多くのお客様が訪れる場所…
となればなおさらである。
高橋まゆみ人形館は,長野県の最北端,飯山
市にある。人口わずか2万3千人。新潟県との
境に位置し,豪雪地として知られるこの場所
は,冬は市街地でも1m,山間部では3mを超
える雪が降り積もり1年の3分の1は雪で覆わ
れる。
決して便利とは言い難いこの場所に,人形館
がオープンしたのは昨年の4月。以来,ここを
「夕暮れの二人」
高橋さんの人形は,その作風から「ふるさと」
訪れるお客様はあとをたたない。多くのお客様
はこの場所に,何を感じ,何を求めてやってく
るのだろうか。
「懐かしさ」「素朴さ」「癒し」などのキーワー
ドで語られることが多い。
飯山で暮らす人たちがモデルとなっている作
品が多いため,そういった印象を受けるのかも
しれない。「結婚し,飯山の農家に嫁いで,人
形づくりを始め,自分のまわりにあるたくさん
の魅力的なものにあらためて気づかされた。年
高橋まゆみ人形館 外観
懐かしさを感じさせる素朴な人形たち
飯山は城下町である。城跡近くにある建物は,
どこか懐かしさを感じさせる。入口近くにある
庭では,農野菜が植えられ,収穫された野菜は
館内の喫茶コーナーで,採れたての味を食して
42
1029
「収穫」
米の実が 実る青空 ゆうゆうと
豊年の年 笑みがはじける
寄りの丸みを帯び
た背や,皺を刻ん
大切なものを人形という形に
だ顔に何ともいえ
「失われつつある情景,記憶にとどめておき
ない魅力を感じ
たい大切なものを,人形という形にして残して
る」と作家本人が
いきたい」と高橋さんはいう。
話すとおり,畑仕
それは,時に作家自身の感情を人形という形
事の様子をいきい
に残しておくという作業にもつながっている。
作品の中には,高橋さんの実母も登場する。
きと表現した作品
のモデルは,近所
実母は,くも膜下出血後,かれこれ 28 年ほど
のお爺ちゃんだっ
たり,親戚のお婆
ちゃんだったりす
る。
「ほうき売りのおばあさん」
おとくいを 巡りてたどる 棒の足
減らぬほうきと 道端の花
失われつつある情景を残したい
ほうき売りのおばあさんは,今も飯山までバ
スを乗り継ぎ,手づくりのほうきを一軒一軒売
り歩いている実在の人物がモデルである。ひと
昔前まで,飯山では,長い冬の間の手仕事とし
て,ほうきづくりに携わる人が多かったと聞く。
「母の手」
つらい時があった
何も語らず
寝たきりの母にもたれて
いつしか うとうと
どのくらい時がたったのだろう
ふと 目が覚めると
か細い 母の手が
私の肩を なでていた
人形たちの世界をはぐくんだ飯山の自然:春の菜の花畑
1029
43
寝たきりの生活をされている。私的な体験や感
情を表現した作品であるにも関わらず,見てい
る自分自身が体験したことのように心をわしづ
かみにされる。
人形という形に昇華され,普遍的なものとし
て私たち見るもの心に迫ってくるのである。
人形に自分自身を重ねあわせ,ついつい感情
移入してしまうのだ。
心をゆさぶるミュージアム
ここは,美術館らしくない。
ここを訪れた人々は,わいわい賑やかにお互
いの感想を言いあう。私はこうだった,昔はこ
うだったと。大声で笑いあい,時にじっと人形
の前に立ち止まり涙を流す。人形を見る視線の
先にあるのは,自分自身の人生なのだ。
見る人の心を揺さぶるものを,芸術と呼ぶの
であれば,これは間違いなく芸術である。人生
に優しく寄り添いあたたかく包んでくれる芸術。
こんな時代だからこそ,あなたの大切な人と
「さよならの時間」
また来るね…
ことばを残し 去る病室の 片すみで 手を振る母を 感じてる
一緒に,ぜひ足を運んでほしいミュージアムで
ある。
宮本 操(S52 修化工)記
ささやな日常をひろい集めて
高橋さんの人形には,人が生まれてから人生
を終えるまでの様々な場面が表現されている。
/新しい命を授かった喜び
/家族で賑やかに食卓を囲むしあわせ
/大好きな人の膝で耳かきの至福
/老いていく日常
/大切な人との永遠のお別れ
そんな人形たちを見ていると,自分の心の中
に閉まってあった大切な思い出がよみがえって
きて鼻の奥がツンツンする。
●高橋まゆみ人形館 利用案内
開 館 時 間:午前 9 時〜午後5時( 4 月〜 11 月)
午前 10 時〜午後4時(12 月〜 3 月)
※ 最終入館は閉館 30 分前まで
休 館 日:毎週水曜日,年末年始
入 館 料:一般 600 円
ア ク セ ス:JR飯山線飯山駅から徒歩 15 分
住
所:〒 389-2253
長野県飯山市飯山 2941 − 1
T E L:0269-67-0139
ホームページ:http://www.ningyoukan.net
44
1029
飯山の秋の景色
東工大
韓国留学生会
「東京工業大学韓国人留学生会」は 1961 年
に創立され,今年で 50 周年を迎えた歴史の古
い団体です。現在,東工大には学部生約 30 人,
大学院生約 120 人を合わせ,およそ 150 人の
韓国人留学生が在籍しており,毎日学業と研究
に励んでいます。これは東工大の外国人留学生
会の中では中国人留学生会に続く,2番目の規
模となります。
サッカーサークル
留学生会は,主に留学生間の情報交流と親睦
ねてきています。もちろん,本場の味が楽しめ
のために活動しています。留学生会長を含む委
るということから,来客された方々からはいつ
員会では,そのために常に学生の声を聞き,反
も好評を頂いています。昨年は新しい試みとし
映しようと努力しています。4月の新入生歓迎
て“韓流カフェ”を出店し,韓国の様々な文化
会をはじめ,花見大会,バーベキュー,体育大
の紹介や韓国語講座の開設などを通じて東工大
会,忘年会などのイベントを毎年開催していま
の学生,近所の住民との文化交流を図りました。
す。その中でも後期にすずかけ台キャンパスで
留学生会で一番力を入れているのは就職支援
行われる体育大会は一番多くの人が集まる行事
活動です。主に韓国の企業を招き,年におよそ
で,大会の後にはバーベキューをしながら楽し
20 回以上の会社説明会を開催することで,韓
い時間を過ごします。その時に行われる抽選会
国人留学生の就職活動を支援しております。そ
の景品も一つの楽しみです。
の結果,毎年多くの人が韓国有数の企業に就職
さらに留学生たちの要望に応えて数年前から
しています。
留学生会の中でサッカーチーム,テニス同好会
これからは韓国語教室の運営や文化交流活動
などのサークルを設けており,留学生会で運営
などで東工大の学生や地域社会の住民への対外
の全面的な支援をしています。このようなイベ
活動も積極的に展開していく予定であり,関心
ントやサークルでなくても留学生会の先輩・後
を持って見ていただきたいと思いますので,宜
輩はキャンパス内で会ったら,気軽に悩み事の
しくお願い致します。
相談ができるほどの仲の良さです。
(文:Park, Jonghyeob)
工大祭では模擬店企画としてチヂミ屋台を出
店してきました。毎年レシピを新しくしたり,
他の韓国料理をメニューに足したり,工夫を重
韓国留学生会の様子
留学生主催運動会後の懇親会
1029
45
NO.37
人口減少時代の
都市計画制度設計
大学院社会理工学研究科
社会工学専攻
中井 検裕
教授
(S55社工S57修社工)
1. 研究室を構えるまで
計画の考え方や技術が直接的に表れやすいヨー
ロッパの都市を見て,このような都市を作り上
私は 1976 年に本学の第 6 類に入学し,2 年
げる都市計画の仕組みの面白さに気づき,そこ
次の学科所属の際には,建築学科にしようか社
から都市計画の仕組みをテーマにして本格的に
会工学科にしようか迷ったが,もともと個別の
研究者への道を歩むようになった(図1)。も
建物のことよりはそれらが集まった都市のこと
ともとは 1 年間の留学予定だったのだが,たま
に関心があったので,結果的に社会工学科に進
たまロンドン大学で任期付き助手の職を得るこ
学した。高校までの実家は日本で最初のニュー
とができた幸運もあって,結果的にイギリスに
タウンとして有名な大阪の千里ニュータウンの
は 5 年近く滞在した。帰国後は,徐々にイギリ
すぐそばにあり,その建設を間近に見ながら
スから日本の都市計画の仕組み,さらにはその
育ったことや,ニュータウンの一画で開催され
ような仕組みを成立させている社会の背景や歴
た大阪万博に何度も足を運んだことが,今にし
史へと研究を展開させていたところ,1994 年
て思うと都市計画への関心の原点になっている
の 8 月に,東工大に戻って研究室を構えること
ような気もする。また,都市計画が専門の研究
となった。
室は,日本の大学の場合,建築か土木のいずれ
かにあるのが普通なのだが,本学では社会工学
というユニークな学科の中にあり,社会工学と
いう新しい学問領域への物珍しさもあった。
研究室は,その後まもなく日本都市計画学会
会長も務められた石原舜介先生の研究室に所属
した。当初は,土地や住宅の問題をモデルを使っ
て計量的に分析する研究に取り組んでいたが,
研究上の転機になったのは,博士課程でのイギ
リス留学であった。日本の都市と異なり,都市
46
1029
図1 世界で最初の田園都市(イギリス、レッチワース)
2.最近の研究テーマ
現在,研究室のスタッフは私と中西正彦助教,
学生は,学部学生 5 名,大学院修士課程 5 名,
ような制度設計を行えばよいか,新しい法制度
は都市にどのような変化をもたらすかの予測な
どがある。
研究室の研究活動に加え,私自身の現在の大
博士課程 9 名が所属している。社会人博士学生
きな研究テーマは,人口減少時代の都市のあり
が多いことも特徴で,9 名中 6 名が社会人であ
方と都市計画の制度設計である(図2)。現在,
る。留学生は中国が 1 名,インドネシアが 1 名,
世界の潮流として,都市計画の目標は持続可能
リトアニアが 1 名となっている。
な都市環境づくりに向いている。なかでも人口
実験系の研究室と異なり,私の研究室では1
減少・超高齢化社会を迎えたわが国では,都市
つのテーマについて学生が入れ替わりつつ長期
をどのように持続可能な構造に転換させるかが
間にわたって取り組むといったことはほとんど
急務になっている。現在の日本の都市計画の仕
なく,幅広い都市計画の領域から学生が自分の
組みは,人口増加・高度成長の時代にそれを前
関心にあわせてテーマの構築から始め,その過
提として作られてきたものであり,日本の都市
程でスタッフが緩やかに研究を誘導するという
計画は今まさにパラダイム転換が必要とされて
スタイルをとっている。結果として研究テー
いる。この意味では,都市計画は,本学の誇る
マは極めて広範囲にわたっており,詳しくは
ハイテク領域ではないけれども,社会的ニーズ
研究室のホームページ (http://www.soc.titech.
の極めて高い研究領域であると自負している。
ac.jp/~nakai/) を参照してほしいが,大きくは,
①都市の実態を詳細に解明する研究群,②社会
的技術としての都市を変える仕組みに関する研
究群に大別できる。ほんの一例を紹介すると,
3.研究と実践
都市計画の研究は大学の研究室で行われるも
①に属するものとしては,都市にはたとえば下
のの,その実践の場は,実際の都市という大学
北沢のように,必ずしも計画的に整備したわけ
の外にあり,研究と実践が車の両輪として,相
ではないにもかかわらず自然発生的に多くの人
互に作用しあいながら発展していくのが都市計
が集い,活気がある場所があるが,そのような
画という研究領域の特徴でもある。かつて私が
場の魅力はどのよう
に形成されるのか,
あるいは,地方都市
のシャッター商店街
といわれるような場
所ではどのように空
き店舗化が進行して
いくのか,といった
都市の変化のメカニ
ズムの解明などがあ
げられ,②に属する
ものには,現実の政
策への展開を意識
し,例えば費用をか
けずに市街地の緑を
増加させるにはどの
図2 郊外住宅地内の空き地・空き家の発生シミュレーション。左から現在、10 年後施策なし、10 年後隣地買い取り制度あり、
10 年後隣地買い取り+区画入れ替えあり
1029
47
図3 山梨県の広域都市計画マスタープラン(甲府盆地)
学生だった頃までは,実際の都市計画の少なか
際化に伴う周辺地域の再編計画の検討などを
らぬ部分は,大学の研究室が受託研究という形
行っている。また,東日本大震災以来関心が高
で引き受けていた。最近では民間のコンサルタ
まっているスマートコミュニティについて,本
ントが成長したことから,こういった形は少な
学のソリューション研究機構にある先進エネル
くなっているものの,依然,現場と近い距離を
ギー国際研究センターを介して,共同研究への
保つことによって研究に得られるものは少なく
参画も始まったところである。
ない。
もう1つの実践の形は,主たる都市計画の担
最近での実践の1つの形は,外部との共同研
い手である国や地方自治体といった行政の計画
究である。私の研究室でも,現在,UR 都市機
づくり,政策形成への関与である。各種の審議
構と数年にわたって老朽化した団地の望ましい
会や委員会への参加という形をとることが多い
再生の方策の検討や,民間企業と羽田空港の国
が,作業段階から計画策定やまちづくりに深く
図4 川崎駅東口駅前広場再整備(左:整備前、右:整備後)
48
1029
関わるケースも少なくない。最近で
は,山梨県で都市計画の広域マスター
プランを策定したケース(図3),川
崎市で JR 川崎駅東口の駅前広場を再
整備したケース(図4)(広場施設の
設計は本学建築学科の安田幸一教授が
担当)などがあり,いずれも県の職
員,市の職員たちと当初から緊密な議
論を繰り返しながら作り上げたもので
ある。こういった実践の場が,大学で
の研究と最も異なる点は,実践の場で
図5 研究室の集合写真(本年 9 月)
は利害が相反する多数の主体間の合意形成が不
ンバーの一員として活動していたが,6 月から
可欠であり,これらのケースでも,関係主体の
岩手県陸前高田市の復興支援に協力することと
意向調整にいずれも 6 年あまりを有している。
なり,以来,市役所による計画づくりのお手伝
いをしている。市役所の職員はもちろん,専門
4.東日本大震災の復興支援
家でさえ誰も経験したことのない状況下で,と
にもかくにも復興の大きな方向性を示した計画
このような研究室の日常に,今年は,3 月
が 11 月末にまとまり,今後は,区画整理事業
11 日の大震災からの復興支援が加わった。震
など具体的な復興事業の段階へと進んでいく
災復興に都市計画が不可欠なプロセスであるこ
が,長い復興への道のりに継続的に関わり,協
とは言うまでもない。震災後しばらくは,日本
力を続けることが,都市計画に関わる者として
都市計画学会を中心に,学会としての体制を整
の責務であると感じている。
えたり,あるいは提言をまとめたりする作業メ
(図5)
『対称性とはなにか』
発行:ソフトバンククリエイティブ㈱ サイエンス・アイ新書
定価:952 円+税
著者:広瀬 立成(S37 物 S42 博物)
物理法則は,対称性を基礎として作られている。たとえば,
鏡のなかの世界は,こちら側の世界を正確に映しだしている
し,また,ニュートン力学は,左側と右側のどちらの世界で
も正しく成り立つ。一方,原子や素粒子のミクロの世界では,
微少な対称性の破れが理論・実験の両面から確認されている。
このことの重要性は,2008年,日本の3人の物理学者(南部
陽一郎氏,小林誠氏,益川英敏氏)が,いずれも対称性の破
れに関する研究で,ノーベル賞を受賞したことからも理解で
きる。
本書では,マクロとミクロの世界の現象を対称性の視点か
らやさしく解説し,物質・宇宙の生成のしくみに迫る。
1029
49
「くらりか」
サイエンスアゴラ賞 受賞!
1 はじめに
(独)科学技術振興機構(以後 JST)主催の“サ
イエンスアゴラ 2011”が 11 月 19 ∼ 20 日に
東京都江東区の日本科学未来館,産業技術総合
研究所臨海副都心センター並びに東京都立産業
技術研究センターを会場として開催された。趣
意書によると“サイエンスは全ての人の生活に
大きな影響を及ぼす。今回の原発事故に見られ
るように,サイエンスと社会とのあり方を他人
任せではなく,自分のこととして考えることは
大事である。サイエンスコミュニケーション活
動を展開する広場(アゴラ)に専門家,大人か
ら子どもまで多様な人々が一堂に会してコミュ
サイエンスアゴラの会場となった日本科学未来館
2 くらりかの出展
ニケーションを深め,よりよい社会像や希望の
くらりかは“あっ 捨てないで! それで理科
持てる未来の構築への再スタートを切る”こと
遊びをしよう!”と言うタイトルで初出展した。
を目的として開催された。
家庭ゴミとして捨てられるような材料で楽器を
第 6 回目の今年度のテーマは「新たな科学
工作し,鳴らし,人が音を認識する過程での人
のタネをまこう−震災からの再生をめざして」
体の不思議さ・素晴らしさを参加者に学びとっ
である。181 の大学・学会・企業・団体が出展
てもらった。人間は素晴しい機能を持ち,この
した。天候が悪かったにも係わらず親子連れ,
素晴しさは必ずや復興に際しても素晴しい力を
修学旅行生,教育に携わる方々など 7000 名の
発揮できるに違いないとの思いをベースに企画
参加者があり,国内最大のサイエンスコミュニ
書を作成・提出し,採用された。
ケーションの場となった。
家庭からごみとして出される牛乳パック等を
再利用して二つの楽器を作り,実験をした。①
牛乳パックとペットボトルの蓋を用いて紙ホ
イッスルを作る ②ストローと紙コップを用い
てストロンボーンを作る。そして製作した楽器
で音を出し,紙ホイッスルではカルマン渦によ
り,ストローボーンではリードの振動により音
が出ることを参加者に分かってもらうよう努め
た。更に聴覚のメカニズムを知ることを通して
人体の不思議さや能力の素晴らしさも小学校高
学年以上には多少なりとも分かってもらえたと
思う。サイエンスアゴラでの出展の殆どが演示
であり参加者が工作をすることは稀であった。
我々はほぼマンツーマンで約 370 名の児童・
来場した子どもに説明する松本浩之(S36 機 S41 博機)氏
卓上にあるのは、筒の中のおが屑により音を可視化させる、手作りの「ク
ントの装置」
50
1029
生徒を中心にした参加者に工作指導や説明を行
い,参観していた保護者からは教室の引き合い
も頂いた。
我々のブースは会場の目抜き通りに面してい
たが,3m × 4m と狭く 10 人弱が工作すると手
狭であった。それでも,一角にに音を可視化す
る“クントの装置”や音と密接に関連する振動
を可視化する“クラドニの装置”を置いた。こ
れらはくらりかのメンバーが協力者の手助けも
得て,手作りで作ったものであるが,これらは
中々見られないこともあり保護者或いは理科教
育に関わりのある方々の関心は高かったようで
ある。
ストローボーンの指導をする篠崎正利(左・S42 応物)氏,高橋諄吉
(右・S37 化工 S39 修化工)くらりか代表
3 まとめ
ス部門」での賞を審査委員による審査結果とし
くらりかの企画は来場者人気投票で 5 位にラ
て他の5企画と共に受賞した。これは日々地道
ンクされた。また今年度から始まったサイエン
に努力してきたくらりか活動が,認められたも
スアゴラにふさわしいサイエンスの楽しさを共
ので嬉しく思います。
有する優れた企画としてサイエンスアゴラ賞が
(文責 S42 応物 雨谷俊彦)
もうけられたが,そのうちの「楽しいサイエン
鹿児島県支部 初の「くらりか」開催!
去る 11 月 25 日,鹿児島県支部 初のくらり
が裸で街を走
かを,伊佐市南永小学校にて開催しました。伊
り抜けたよう
佐市は県北端に位置し「鹿児島の北海道」と呼
な感動を経験
ばれる寒地ですが,晩秋のこの日,ぽかぽか陽
して欲しい。自作の浮沈子を小脇に「さよなら!
気と元気いっぱいな 1 年生から 6 年生までの
来年も来てね!!」と帰宅していく子供達を,
全校 13 名の子供達が私達を迎えてくれました。
そんな思いで見送った秋の夕べでした。鹿児島
本部から講
県支部としては,まずは県内の「特認校」を対
師として平
象に活動を広げていきたいと思っております。
塚理事,本
また,現在,小学校以外からのお声掛けも頂い
房事務局長
ております。あらゆるニーズに対応できるよう
に来鹿いた
行動に制限を設けず小さな支部ならではのフッ
だき,県支
トワークの軽さで活動していきたいと思ってお
部より6名
ります。今後ともご指導ご協力をよろしくお願
が参加い
い致します。
たしまし
平塚芳隆(S42 電 S44 修電)理事の話に眼を
輝かせる 1 年生
た。テーマ
は「浮沈子」。
ペットボトル中の小さな金魚が浮沈する現象に
隠れた物理法則を,平塚理事は子供達が身近に
感じられる例を用いて実に解り易く解説されま
した。この「小さな天才達」が,アルキメデス
「受講証明書」を手に記念撮影
1029
51
「東京工業大学 感謝の集い」 開催
東京工業大学では,11月19日(土)に東工大
蔵前会館くらまえホール及びロイアルブルーホールに
おいて,
東工大基金へのご寄附等東工大へご支援・
ご協力いただいた方々に対して,感謝の意を表する
「感謝の集い」を開催しました。
卒業生,名誉教授,企業の方及び学内関係者
計125名の方々にご出席いただき,最初にくらまえ
ホールにて東工大基金を活用した事業等の報告会
が行われました。報告会では学長からのお礼の挨
拶,岡田理事・副学長からの東工大基金実施事
伊賀学長
業報告に続き,基金を活用したそれぞれの事業に
参加した学生 5 名からの報告(東日本大震災被災
奨学生,SAKURA Project,海外渡航奨学生,ロ
ケットガール&ボーイ養成講座)が行われました。
その後,会場をロイアルブルーホールに移し,遠藤
元手島工業教育資金団理事長の挨拶・乾杯を皮
切りに交流会が始まりました。会場のあちらこちらで
歓談の輪が作られ,中には発表をした学生を囲んで
卒業生とで語られる姿も見受けられました。終始和
やかな雰囲気の中交流も深められ,三島理事・副
東日本大震災被災奨学生の報告
学長の挨拶をもって交流会は終了いたしました。
今後も東工大基金への寄附者の皆様に対し,本
学に親しんでいただくイベントを開催していく予定で
す。
東工大基金の寄附者様のご芳名につきましては,
蔵前ジャーナル及び東京工業大学創立 130 周年
ウェブサイ
ト
(http://www.130th.titech.ac.jp/guestlist/)
に掲載しておりますので,ご覧ください。
海外渡航奨学生の報告
※ 今回の「感謝の集い」は,東日本大震災の影響により,平成22年1月18日から平成23年7月31日までに東工大基金にご寄附いただいた方を
招待させていただきました。
(東工大基金募金本部)
54
1029
東工大基金寄附者芳名録⒄
財団法人東京工業大学後援会は平成 21 年 3 月末をもって解散し,その精神と機能は,平成 21 年 4 月に,
東京工業大学創立 130 周年を契機として設立した東京工業大学基金(東工大基金)に引き継がれ,新たな
ご寄附の窓口となりました。
東工大基金は,創立 130 周年事業および使途目的に応じた使用等,東工大をさらに発展させるために活
用させていただきます。また,従来通り税制上の優遇措置も受けることができます。人生の節目や記念日
などには,東工大にぜひご寄附をお願いいたします。
ご寄附のお申し込みにつきましては,振込用紙による方法およびインターネット募金システムによる方
法がございます。振込用紙のご請求やお問い合わせにつきましては,東工大基金機構募金本部(電話 035734-2415・2417, FAX 03-5734-2485, メール [email protected])までお願いいたします。
なお,社団法人蔵前工業会あてのご寄附も従来どおりお願いいたしております。
蔵前工業会事務局(電話 03-3748-2211)までご連絡ください。
◎H 23 年9月~ 10 月
寄附者(敬称略)
卒業年・学科
金額 目的
中島 幹
S42 修機械
100,000
匿名希望
100,000
西井 健吾
S32 機械
10,000
見月 信明
S54 制御
100,000
西村 保広
H20 電子物理
5,000
山下 隆司
S34 電気工学
100,000
岸井 貫
S36 学位
30,000
鄭 江明
S25 有機合成化学
20,000
横山 亮次
S19 応用化学
10,000
匿名希望
30,000
遠藤 純一
S36 機械
500,000
渡邉 浩
S36 化工
10,000
田中 實
S30 機械
宇高 克己
S47 修化工
1,000,000
並木 浩
S36 機械
20,000
三栖 邦博
S38 建築
100,000
太田 幸一
S45 修電気
100,000
田中 大介
S28 機械
10,000
南雲 宏一
S46 応用物理
50,000
山内 尚隆
S26 無機材料化学
300,000
松岡 濶
S32 物理学
3,000
藤井 光昭
名誉教授
山崎 万智子
現教職員
50,420
里 達雄
現教職員
田邉 耕次
現教職員
50,000
尾中 晋
現教職員
10,000
川嶋 健嗣
現教職員
近藤 留美子
現教職員
10,000
遠藤 悟
現教職員
植田 譲
現教職員
佐々木 聡
現教職員
10,000
田湯 智
現教職員
5,000
岡 眞
現教職員
篠田 浩一
現教職員
錦澤 滋雄
現教職員
10,000
加藤 之貴
現教職員
鈴木 美緒
現教職員
横山 壽治
現教職員
巾崎 潤子
現教職員
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S・T
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
寄附者(敬称略)
卒業年・学科
金額 目的
飯塚 久夫
現教職員
50,000
布施 新一郎
現教職員
1,000
楽水会
300,000
二木会(昭和 36 年化工卒同窓会)
40,000
日本アイ・ビー・エム株式会社
三菱ガス化学株式会社
日本電気株式会社
株式会社日立製作所
株式会社明電舎
森ビル株式会社
匿名匿額
27 名
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
佐鳥 聡夫
S36 機械
10,000 A
石川 堯
S21 電気工学
30,000 A
三橋 慶喜
S39 制御
30,000 A
鈴木 喜三郎
S30 機械
100,000 A
杉山 将
現教職員 A
岩崎 博史
現教職員 A
鷲山 夏沖
現教職員 A
灘岡 和夫
現教職員 A
Wiwut Tanthapanichakoon 現教職員 A
古田 健二
現教職員
10,000 A
河原 暲
現教職員
10,000 A・C
大成蔵前会 A・B・C
匿名匿額
2 名 A
匿名匿額
1 名 A・C
外山 咊之
寺田 耕輔
広瀬 茂男
匿名匿額
S33 電気工学
50,000
H22 博機械物理
100,000
現教職員
1 名
B
B
B
B
宮下 弘
村井 豊
内藤 繁
川上 和也
向井 一幸
鈴木 登夫
大原 清司
S51 修情報科学
10,000
S22 専門部機械
100,000
S23 窯業
10,000
H5 機械工学
S48 経営工学
30,000
S44 電子
1,000,000
S57 工学部学位
10,000
C
C
C
C
C
C
C
1029
55
寄附者(敬称略)
卒業年・学科
金額 目的
匿名希望
100,000
高橋 諄吉
S37 化学工学
100,000
伊野本 憲浩
H18 高分子工学
西島 昭雄
S43 機械
20,000
永井 洋
S30 電気
50,000
谷 順一
S44 土木工学
30,000
北原 和夫
名誉教授
10,000
辻 茂
名誉教授
50,000
幸島 司郎
退職教職員
宮原 正也
現教職員
新野 秀憲
現教職員
大谷 弘之
現教職員
南保 雅之
現教職員
10,000
堤 浩
現教職員
10,000
匿名匿額
2 名
倉田 知幸
谷 英樹
菊川 真
出井 敏夫
匿名匿額
S51 応物
100,000
H7 土木工学
100,000
H1 修化環工
100,000
S56 制
100,000
2 名
斎藤 肇
S55 物理
H5 修物理情報
寄附者(敬称略)
卒業年・学科
植田 賢
小林 隆夫
木下 裕子
匿名匿額
H12 経営工学
1,000
現教職員
現教職員
2 名
金額 目的
西沢 啓雄
匿名匿額
H13 修分生命
10,000 V
1 名 V
曽谷 保博
矢澤 治之
S55 機物
S43 土木
10,000 W
10,000 W
佐鳥 聡夫
S36 機械
10,000 ウ
平山 南見子
S45 修化学
小西 政彦
S55 機械工学
U
U
U・キ
U
100,000 オ
10,000 カ
E
E
E
E
E
北原 孝
現教職員
300,000 ク
50,000 Q
澤岡 昭
名誉教授
100,000 ケ
松岡 勉
S32 化学工学
10,000
森川 優
S55 修社会開発
20,000
菊地 勝昭
S41 修機械
10,000
匿名希望
10,000
中島 俊樹
S53 修電子物理
2,000
田中 實
S30 機械
10,000
中川 邦好
S28 旧無機材料
3,000
奥谷 宏邦
S39 制御
髙崎 秀平
S21 機械
5,000
匿名希望
2,000
匿名希望
2,000
金井 修次
S22 機械
2,000
末松 安晴
名誉教授
5,000
加藤 之貴
現教職員
関根 光雄
現教職員
10,000
和田 雄二
現教職員
匿名匿額
6 名
飯田 雅彦
C
C
C
C
C
C・U
C
C
C
C
C
C
C
C
C
T
T
T
T
T
T
T
T
T
T
T
T
T
T
T
T
T
10,000 U
高橋 俊郎
S28 旧機械 キ
株式会社ブリヂストン キ
S:すべての事業
A:国際的に活躍できる人材の養成のために
B:社会的課題の解決に挑戦のために
C:理工系の知による我が国の発展の先導のために
D:蔵前山岳会を通じて E:端艇部戸田艇庫改築資金
F:サッカー部 G:マイスターへ
H:ワンダーフォーゲル部のため
I:世界一流の工学系総合大学実現のため
J:基礎学力をもった大学院生の教育のため
K:図書の充実 L:清華大合同プログラム
M:自動車部 OB 会を通じて N:管弦楽団を通じて
O:無機材料工学教育支援を通じて
P:博士課程学生の支援
Q:すずかけ台キャンパスの環境整備
R:エルザヤン遺跡発掘 T:工大祭
U:被災学生支援
V:蔵前剣道会を通じて W:蔵前柔道会を通じて
X:バレーボール部 Y:バスケット部
Z:金融工学の発展を願って
ア:物理学科・専攻の皆様へ イ:中等教員の資質向上に
ウ:ヨット部 エ:学生の学習・生活等支援
オ:理工系女性人材の育成のために カ:アメフト部
キ:奨学金のため
ク:タイ連携大学院プロジェクト及びタイ関連事業
ケ:教育の充実
東工大基金寄附累計額(現金)
1,608,653,032 円
※2008 年 12 月 1 日から 2011 年 10 月 31 日現在まで(使途別・入金順)
部・サークル同窓会を通じたご寄附について
東工大基金では,部・サークル等の同窓会のネットワークを通じたご寄附の受付を開始しました。これは,ご寄附
の 10%を現役の部・サークル活動支援に活用し,構成員の皆様からのご寄附の累計が一定額に達した場合には,新
図書館に銘板を設置する取り組みです。
これまで,蔵前山岳会,ワンダーフォーゲル部 OB 会,自動車部 OB 部,窯業同窓会,管弦楽団同窓会,蔵前剣道会,
蔵前柔道会の皆様からご協力をいただきました。
本取り組みにご関心がありましたら,募金本部までお問い合わせください。
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1029
蔵前ベンチャー相談室
「第12回 KITCセミナー」開催報告
お詫びと訂正 No.1028の「第12回KITCセミナー開催報告」で掲載した内容は誤って原稿を取
り違えたものでした。ここに深くお詫びし,正しい原稿を掲載させていただきます。
蔵前ベンチャー相談室 KITC(蔵前ITコミュニティ)
ると,これからマーケットはどこに行くのか,どこが熱
はIT関係のベンチャー企業経営者と支援者の集まり
いところなのかが分かるように思います。
です。9月14日に東 工大 田町キャンパスにて東 工大
今のITの活用方法では消費者向けとビジネス向け
MOT田辺研究室協賛で「第12回KITCセミナー」が
の区分けが無くなってきています。SNSの使われ方を
開催されました。今回は東工大経営工学博士号(Ph.
見てもそれはわかります。
D.)をおもちの日本オラクル常務執行役員,保々雅世
イノベーションを起こすということは,決して大がか
氏を講師に迎え,
「内側から見たITトップ企業たち-
りな難しいことだけではなく,日々の小さな気づきが
そして次にくるのは?」というテーマで講演頂きました。
変化を起こし世界を変えるきっかけになります。日本
発のイノベーション,日本のユニークなモデルがどんど
んでてくることを期待しています。今後ITはどんどん
範囲が広がり,ITは今後ますます身近に使いやすく
なっていくはずです。ITという道具がそのいろいろな
思いつきや気づき,
「あったらいいな,できるといいな」
という夢を実現するのに役立てると思っています。み
なさんの,「あったらいいな,できるといいな」を実現
させてください。
講演の内容としては,まず,事例としてヨドバシカ
メラのITを駆使したビジネスモデルをあげられました。
ヨドバシカメラの成功要因は業界に先駆けてはじめた
ゴールドポイントカードによる顧客管理システムで,個
人としてデータをとらえ顧客情報や購買動向データを
店 舗 戦 略 やプロモーションに用いることと,SCM
(Supply Chain Management)システムを 導 入して,
データをもとに選定した重要品目情報と需要予測を
メーカーと共有することで仕入れ価格を押さえました。
講演会の後,東工大産学連携談話室で交流会を
この,前(顧客側)の仕組みと後ろ(サプライ側)の
行い,大企業幹部,ベンチャー経営者,ベンチャー
仕組みを連携させたことが一番のイノベーションのポ
支援者,学生と広範囲の交流が行われました。白熱
イントで,53万品目あるといわれる品ぞろえを持ちな
した議論が交わされるのと同時に,楽しい声が響く雰
がら売れ筋商品については高い在庫回転率を維持す
囲気は保々氏のお人柄によるものが大きかったのでは
る,すなわち値段が下がらない間に売り切る仕組みを
ないでしょうか。相互の人脈形成に大いに意味のある
ITで構築しました。ヨドバシカメラは,現在も同業者
場になりました。
の中で高利益率を維持しています。
今後も東工大・蔵前のIT系人脈形成のため,タイ
一方,いろいろな仕組みを企業に提供しているIT
ムリーなテーマでセミナーを開催する予定です。蔵前
業界ですが,この業界自体がビジネススピードが速く,
ベンチャー相談室のホームページに当日の様子を掲載
非常に変化が起こりやすいところです。
ここで今起こっ
しています。是非ご覧ください。http://kuramae-kvs.
ていることは,スピードを出すために買収という戦略
sakura.ne.jp/
で対応することです。ITソリューションの分野での主
またKITC( 蔵前ITコミュニティ)にご入会ご希望
要トップ企業はシステムの上位層から下位層まですべ
の方は上記ホームページから「事業紹介」-「ITG」へ
てを自社で供給する「スタック戦略」へとシフトしてお
とお進み下さい。
り,主要IT企業の買収の動きなどを俯瞰的に見てい
(記事・写真 小川義人(S45電物)
)
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平成 23 年 秋の叙勲・褒章受章者
瑞宝重光章
玉泉 八州男 氏
東京工業大学名誉教授
昭和40年
〃44年
〃55年
平成 7年
〃 8年
〃13年
東京工業大学講師
同
助教授
同
教授
千葉大学教授
東京工業大学名誉教授
帝京大学教授(平成18年3月まで)
瑞宝中綬章
中津山 幹男(S30 電 2 S32 修電)
山形大学名誉教授
昭和32年
〃40年
〃47年
平成 5年
山形大学工学部助手
工学博士(東京工業大学)
山形大学教授
山形大学退職
山形大学名誉教授
瑞宝中綬章
布村 成具 氏(S31 金 S33 修金 S36 博金)
東京工業大学名誉教授
昭和36年
〃40年
〃57年
平成 6年
〃 7年
〃16年
〃17年
〃20年
東京工業大学助手
同
助教授
同
教授(平成6年3月まで)
同
名誉教授
新潟工科大学教授(平成16年3月まで)
同
名誉教授
同
学長(平成23年3月まで)
学校法人新潟工科大学理事
同
評議員
同
常務理事
瑞宝単光章
鎌田 修一
東京工業大学職員
昭和46年
〃54年
平成12年
〃16年
〃22年
〃22年
東京工業大学理学部用務員
同
経理部経理課守衛
同
経理部主計課守衛長
同
財務部主計課守衛長
同
定年退職
同
財務部主計課守衛(再雇用)
紫綬褒章
岸本 健雄 氏
東京工業大学教授
昭和52年
〃53年
〃56年
〃62年
〃62年
生物科学総合研究機構
同
助手
岡崎国立共同研究機構助手
同
助教授
東京工業大学教授
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タイ蔵前会 パイリン氏・CEO 就任の祝賀会開催!
タイ蔵前会のメンバーは,パイリン氏(化工・
く頭をさげておりました。
浅野研・1985博士)が,PTT(タイ石油公社・タ
つづいて,AIT(30カ国から2000名の学生が学
イの最大企業)のCEO(最高経営責任者)兼社長
ぶ工業大学)副学長のヴィラス氏の挨拶や幹事の
に就任することを非常に喜び,8月20日祝賀会を
紹介があり,北原拠点長がTAISTの現状を説明し
アジアホテルで開催しました。
ました。
今回は,特に若いメンバーの参加が多く,62名
最後に,泰日技術工業大学(4000名の学生が日
の盛大な会となりました。
本語教育を基礎とした技術・工学を学んでいる)
祝賀会の前に,パイリン氏による石油企業の基
副学長のバンヂット氏の閉会の辞があり,散会し
調講演とサイアム・コマーシャル・バンク副社長
ました。
のアマリット氏(電子工学・1995博士)による銀
40年来の東工大・留学生が,今はタイ社会の中
行のシステム管理に関するセミナーがあり,質疑
枢を担って,活躍している姿を如実に現わした祝
応答も盛んでした。
賀会でした。
祝賀会では,羽田会長の挨拶(タイ語)があり,
タイ蔵前会会長 羽田 衛(S29繊)記
その中で蔵前工業会・
庄山理事長の祝辞を代
読しました。終わると,
大拍手があり,パイリ
ン氏は立ち上がって深
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たくさんの方からお問い合わせをいただいております。
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大 学院 修了 身 長172cm 体 重72kg 健 康 趣
味は将棋,水泳 印刷会社勤務 両親健在
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長174cm 体重69kg 趣味は野球,旅行,スポー
ツ観戦 国家公務員 主として東京勤務
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女性
F2954 正会員長女 S50年生 東京在 私大文学
部 卒 教 授 秘 書 身 長159cm 体 重50kg 健
康 趣味は旅行,食べ歩き 両親健在 居住どこ
でも良
F2958 正会員長女 S45年生 東京在 短大被服
科卒 アパレル勤務 身長154cm 体重41kg 健
康 趣味はフラダンス,音楽鑑賞,料理 両親健
在 同年までの方希望 東京居住希望です
・・・・・・・・・
■埼玉県支部
2011年秋季講演会報告
系,地球の誕生から現
在 至 る 137 億 年 の 歴
史を総括して述べられ
2011 年 10 月 22 日,埼玉県支部長冨士原英明氏
ました。大変雄大な内
(S37 機)を講師に迎え,大宮駅前のソニックシティ
容のため,現人類の発
ビルにおいて埼玉県支部の秋季講演会を開催しまし
生までで時間切れとな
た。
り,天の川銀河とアン
演題は「宇宙とこの世はどのようにしてできたの
ドロメダ銀河の合体
か ―137 億年の歴史―」。如水会ほか一般参加 4
(数千億年後)から宇
名を加え,計 25 名にご参加いただきました。
宙の大膨張(数千億年後)におよぶ宇宙の将来展望
講師は専門の機械工学以外にも広範な分野で研鑽
については次の機会に披瀝いただくことをお願いし
を究めておられ,今回の講演では宇宙の歴史につい
て,3 時間に及ぶ講演を締めくくって頂きました。
ての深い知見の一端を披露下さいました。
聴衆一同,日頃忘れがちな人類の過去,現在,未
講演は冒頭ダークマター,ダークエネルギーと
来についての振り返る機会となり,深い感慨を覚え
いった直近の天文学の課題に触れつつ宇宙の現状の
ました。
概観し,次に宇宙の誕生と各種元素の誕生から太陽
■くらりか関西協賛 燕友会野外
理科教室&懇親会開催報告
私ども燕友会は,関西蔵前工業会の若手グループ
山口健二(S37 化)記
あいにく雨天のためバーベキューを懇親会に変更
する形となりましたが,参加者 26 名(非蔵前会員
11 名,お子様 8 名を含む)にて実施することがで
きましたので報告します。
でございます。会社の枠にとらわれない情報交換,
家族間でのつながりを強めるという目的で活動して
理科教室は『紙飛行機を作ろう』という題目で,
おります。去る 10 月 22 日,くらりか関西様ご協
はじめに講師の先生より飛行機の歴史,安定飛行す
力の下,親子で取り組む理科教室とバーベキューを
る原理について説明いただき,続いて実際に牛乳
企画しました。
パックと食品トレイを利用して飛行機作成を行いま
当会は,「蔵前会員相互の情報共有の場」という
した。飛行機作成では,幼稚園から小学生まで幅広
これまでの目的に加え,
い年齢層の子供たちと,その親御様が協力,相談し
①「お子様が理科への好奇心を持つためのきっかけ
ながらひとつの作品を作り上げていきました。途中
として」
で行き詰まり駄々をこねてしまう子,一人でどんど
②「共同作業を通じて親子の絆を深める場として」
んと作り進めてしまう子,それぞれの個性を垣間見
③「蔵前会員,非会員,会社の枠を超えた情報交換
ることができました。それを見守り,または手をさ
の場として」
し伸べる親御様,そしてそれぞれ苦心して作り上げ
というこれまでに無い 3 つの目的を持つ公益事業
た飛行機を楽しそうに飛ばしている子供たちの様子
性の高い企画として提案しました。
を見ながら,企画者の立場ながら大きな感動を覚え
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ました。
をお持ちで普段蔵前工業会の活動にご参加できてい
その後の懇親会では,参加者の皆様から
ない皆様が参加しやすい会を企画して参りますの
「また企画があったら誘ってください」
で,皆様のより一層のご指導,ご助力を賜りたく,
「家に帰った後も楽しくて何度も飛ばして遊んでい
よろしくお願いします。
ました。」
前川倫宏(H18 電・電 H20 修物電シ)
というお言葉をいただくことができました。
燕友会一同これからも魅力的で若手,特にご家族
■2011年度アフタヌーンセミナー
兵庫県支部
※くらりか関西は東京工業大学の卒業生の集まりである(社)蔵前工業
会の公益事業の一環として,児童に理科に対する興味を呼び覚ますた
め,有志が結成したボランティア・グループです。
演頂きました。フクロウの静穏飛翔の原理を活かし
た翼型パンタグラフや,カワセミの嘴に近似させた
先頭車等,自然には学ぶべきことが多いことを説明
兵庫県支部では,去る 10 月 29 日(土),神戸元
頂きました。
町ラッセホールにてアフタヌーンセミナーを開催し
懇親会では,お二人の先生を交え,参加した方々
ました。今回,会員以外の一般参加者も募集し,公
との交友を深めることが出来ました。来年度もこの
開セミナーとして実施し,総勢 70 名が参加しまし
ようなセミナーを開催する予定ですので,近隣支部
た。
の皆様もご参加下さい。
初めに,
「お江戸の富の再分配」と題し,本学社
会理工学研究科 山室恭子先生(写真左)に講演頂
きました。江戸時代の 50 年に一度の武家の借金棒
引きについて,幕府,武家,商人の関係をストーリ
仕立てに,易しく説明頂きました。ギリシャ金融危
機に通じるものがありました。
次に,
「自然に学んだ 500 系新幹線とこれからの
新幹線,海外展開の展望」と題し,社団法人海外鉄
道技術協力協会参与 仲津英治先生(写真右)に講
■第23回「関西蔵前懇話会」
(関西5支部)
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ラ機ディスタンス部門において,最近では昨年度は
18,556 mを飛んで優勝,
今年も 2 位と活躍している。
芝崎氏が所属する蔵前京滋支部は 2008 年度から
11 月 16 日(水)夜,蔵前工業会西日本センター
「Meister」への応援を行っており,大会前日はドリ
にて標記の会を開催した。16 名の出席者があり,
ンク類を届けたり,大会当日は早朝から現地におい
今回も 2 名の方より話題を提供して頂いた。
て応援をおこなってきた(下図左の写真は,2011
まず,芝崎昭夫氏(S45 応化)が,琵琶湖「鳥人
年 7 月に開催された大会における蔵前京滋支部の応
間コンテスト」と題し講演された。「鳥人間コンテ
援の様子。前列左から3番目が芝崎氏)
。芝崎氏は,
スト」は民放において 1977 年から続く長寿番組で
TV を見ているとパイロットだけに目が行きがちだ
ある。東工大の学生サークル「Meister」のこの大
が,実際に現場で観戦すると「ものづくり」
,
「上下
会への参加の歴史は古く,飛距離を競う人力プロペ
関係を含めたチームワーク」という,現代の若者た
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ちにとって欠けていると思われる要素を目のあたり
わずか 0.65% の遅発性中性子が,核分裂から次の
にすることができると述べていた。「Meister の活
核分裂までの平均時間を長くすることにより,炉の
躍に向け,皆さんも現地彦根に応援に行って欲しい」
制御を容易にするという重要な役割を果たしている
という言葉で最後を締めくくった。
ということを力説された。
また一般には原子炉の
「臨
次に,鶴田隆雄氏(S42 修原子核 S45 博原子核)
界」という言葉は恐いものだというイメージがある
が,“原子炉の物理,核分裂の連鎖反応と臨界”と
が,「臨界」とは炉の出力の高低とは関係が無く,
題し講演された(前頁右写真)。鶴田氏は講演の中で,
単位時間あたりの核分裂の数が一定,すなわち出力
原子炉中での中性子の動きを,ビリヤードの球に例
が一定であれば臨界であるとの説明がなされ,我々
え,わかりやすく説明をした。
聴衆は目から鱗が落ちる思いであった。
特にウラン型原子炉の場合,全発生中性子のうち
■福岡県支部総会
および懇親行事開催
蔵前工業会福岡県支部懇親ゴルフ会は,2011 年
11 月 23 日(水)に福岡県北九州市若松区にある若
江原 靖人(H5 博高分子)記
学長 永島英夫先生),総会 ・ 懇親会が催され,2日
間にわたった年中行事をつつがなく終えることがで
きました。
(福岡県支部評議員中島清(S54 修化工)
記)
【懇親ゴルフ会成績】
松ゴルフ倶楽部で開催されました。朝方は雨が強く
氏名(敬称略)
最終卒年学科 順位(ネット)
降りましたがスタート前には小雨になり,天気は持
本房 文雄 S43 電子 優勝(75.0)
ち直しました。昼からは北風が大変強くなったため,
見月 信明 S54 制御 2位(75.4)
玄海灘沿いにある若松ゴルフ倶楽部のアウトコース
中島 清 S54 修化工 3位(76.0)
でのスコアメイクは困難を極めました。当日は若松
以上
ゴルフ倶楽部から南西 5km 弱の航空自衛隊芦屋基
地の航空ショーの日に当り,宮城県松島基地のブ
ルーインパルスの編隊が轟音を上げながらアクロ
バット飛行で上空を何度も通過する中でのラウンド
でした。僅か3名の超ミニコンペではありましたが,
大変友好を深めることができました。
ハンディキャップはダブルペリア方式で決め,成
績は下記の通りです。本部からお越し頂いた事務局
長の本房文雄さん(S43 電子)が,僅差ながらも優
勝を果たし,見事V4達成となりました。
前日の 11 月 22 日(火)午後には,福岡県支部
の講演会(九州大学 先導物質化学研究所教授 , 副
■埼玉県支部
2011年秋季見学会報告
埼玉県支部では定例行事として 2011 年 11 月 24
懇親ゴルフ会スタート前の撮影写真(雨が弱くなり小雨になった頃):
左から,中島清(S54 修化工), 本房文雄(S43 電子), 見月信明(S54
制御)< 敬称略 >
現 物 を 始 め 最 新 の 787 型 機 搭 載 エ ン ジ ン に 至 る
ジェットエンジンの貴重な現物やレプリカを目のあ
たりにし,昭島事業場では現役の自衛隊機搭載エン
ジン等の稼働中の整備ラインを見学できました。所
日(木)に株式会社 IHI 昭島・瑞穂両事業場およ
び所沢航空発祥記念館の見学会を行いました。当日
早朝 7 時にさいたま新都心駅に,一般参加者4名を
交え 21 名が集合,貸切バスの車中で冨士原支部長
のジェットエンジンの講義を伺って予備知識を整え
目的地へと向かいました。
IHI では瑞穂事業場の展示館で 1945 年夏終戦直
前に初飛行に成功した日本初のジェット戦闘機「橘
花」に搭載されたものと同型のネ 20 型エンジンの
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沢航空発祥記念館では歴史的な機体やエンジンおよ
今回の IHI の見学では埼玉県支部落合宏行様を始
び写真の展示で,わが国の航空の歴史に触れたほか,
め蔵前工業会員4名が懇切に説明,案内をして下さ
フライトシミュレーター体験,迫力ある大画面によ
いました。ここに厚くお礼申し上げます。
る実写映画「ランデブーパリ」鑑賞と多岐,多彩な
記事:山口健二(S37 化学)
展示を満喫し帰路につきました。
写真:石井正紀(S40 電子)
昭和29年卒窯業クラス会
中でも版画摺り師の説明が聞けたのは一同の喜びで
あった。この頃から落ちてきた雨は次第に激しくな
り清水寺の舞台を前にして遂にギブアップとなり,
今回は趣向を変えて関西蔵前工業会の賛同を頂
お互い八十路は入ったものの来年の健康を願い,京
き,平成 23 年 10 月4日の関西午餐会に特別参加
都駅で再会を約束して解散した。
した。民芸陶磁器の飾られた会場の祇園の料理店
古丸勇(S29 窯)記
十二段屋で「祖父河井寛次郎のこと」を学芸員の鷺
珠江様から経歴,作陶の姿勢そして交友の方々など
のお話を伺う。次いで五条坂の河井寛次郎記念館に
移動し,大先輩に当たる河井寛次郎(大正3年卒)
が作陶に使用した轆轤,登り窯や作品を拝観する。
此処は工房と同時に住居でもあって書斎や居間には
ご家族共々の生活の匂いや,屡々訪問された浜田庄
司(大正5年卒)や棟方志功なども偲ばれると云っ
た特異の博物館であった。
翌日は鴨川の水を産湯にした友人が案内役をかっ
て出てくれたため,稲荷神社では宮司さんの説明が
頂戴でき,次いで建仁寺や六波羅密寺を参拝したが,
昭和35年卒電気B同級会(35dB会) 一年振りの再会となった者も多く,出席出来なかっ
た友の消息,大地震と大津波,原子力発電所事故,
健康問題,趣味の話,等々,話題は尽きず,和気あ
毎年恒例となっているこの 35dB 会は,当初母校
いあいであった。会は,シュヴェルベンコール出身
の百三十周年に当たる平成 23 年の4月に同級会を
の神谷君の歌唱指導で,東京工業大学歌を全員で合
計画していたが,3月 11 日に発生した未曾有の東
唱し,来年の 10 月 12 日(金)に再会を約し散会
日本大震災の影響を受け,自粛して中止とした。
した。
しかし,大震災に伴う電力不足も漸く峠を越えた
来年度幹事は H19 年度の合意事項に則り,名簿
10 月 14 日,田町の産学連携談話室で午後6時から
開催することが出来た。
出席者は,池田忠俊,大石廸夫,大塚教夫,神谷
牧,川上常吉,日下秀夫,草間武夫,小泉欣美,佐
藤一成,庄司武之,高橋貞夫,高柳辰雄,中村信英,
中村寿,長谷川透,平崎宏,山崎真一,吉井征治,
(五十
音順,敬称略)の 18 名で,卒業以来,半世紀余を
経た今,すでに,後期高齢者の域に達しつつあり「遥
けくも来つるものかな」の感慨一汐である。また,
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稲荷神社にて,宮司さんと
1029
上順送りで,神谷君,羽仁君と決まった。
障の有る者はパスする事とした。
ただし,単に機械的順送りでは無く,幹事引受に支
蔵前懇話会10月例会
写真 草間,幹事 長谷川,大塚(記)
10 月 19 日会員 11 名参加,本学発祥
地にある榊神社を訪ねた。南側垣根沿い
に並ぶ記念碑の中に東京高等工業学校全
景(大正九年頃)があり,敷地 45,000
坪一杯に広がる校舎・煙吐く工場の写真
と 27 棟の詳細配置図が掲示されている。
(徳川幕府の年貢米貯蔵所・船着場,8
番堀を挟む位置に当る由。
(註)宮司さんの挨拶と由来を伺い,蔵
前橋から吾妻橋に至る 1km の散歩を楽
しみ,アサヒビル最上階喫茶室から完成
目前のスカイツリーを眺めてのビールを
味わった。隣接ビルの墨田区役所で展示
中の,1945 年 3 月大空襲の犠牲者を弔う 14 万枚か
ら成る折り鶴平和のオブジェ 2011 年版を見学,当
註:蔵前工業会誌 927 号 1947,11/12,p.32 ~ 40,古橋好夫氏(14 電)。
時を想起し,非業の死に遭った方々を偲んだ。
昭和32年機械工学卒業生が
奈良に集う
内藤新吉記
天で,奈良の秋を楽しみ,珍しい古代料理も味わっ
た。奈良はたびたび訪れたが,今回は特に印象に残
る旅だった。くりかえし下検分するなど関西在住幹
32 白星会の 2011 年クラス会が古都奈良で開催さ
事が周到な準備をしてくれたことに厚く御礼申し上
れた。ゴルフ組は 10 月 25 日に奈良に入り,26 日
げる。
朝から奈良国際ゴルフ倶楽部でコンペ。その他の会
昨年は東倉君をはじめ 4 人もの級友を見送り,寂
員は 26 日夕刻までに奈良入りし,クラシックホテ
しさは否めない。地方でクラス会を開催するのは次
ルとして名高い奈良ホテルに参集した。参加総数
第に難しくなるだろうが,できる限りこの会を続け
27 名。長年にわたり代表幹事を務めてくれた故東
ていきたいと思う。
倉康二君の夫人も参加して宴会で懇談。宴会場での
宮川清(S32 機)記
二次会とカラオケ,個室での三次
会まで話は尽きなかった。27 日
はバスで薬師寺,唐招提寺,平城
宮跡,東大寺,春日大社を巡った。
昼食は奈良パークホテル内の「萬
佳」で,復元創作された天平の宮
廷料理の一端を賞味した。来年に
企画されている卒業 55 周年全科
合同クラス会での再会を約して夕
刻解散した。
最 年 少 で も 77 歳, 最 高 は 80
歳ともなると全員かなり疲れも見
えたが,愉快に旅行を終えること
ができた。2 日ともこの上ない晴
平城宮跡で記念撮影
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昭和36年卒業50周年記念同期会
10 月 29 日 12 時 30 分から東工大蔵前会館くら
まえホールで,昭和 36 年卒業生の,卒業 50 周年
記念同期会を開催しました。卒業 20 周年,30 周年,
40 周年,45 周年と続けてきた同期会も今回は 50
周年という大きな節目を迎え,また東工大も創立
130 周年という記念すべき年でした。同期の卒業生
393 名に,入学が同期で卒業が遅れた者を加え 398
名のうち,物故者 45 名,連絡が取れない者 5 名を
除く 348 名の内 143 名が参加しました。会場には
れました。ギター伴奏の梶塚さんには,お二人の歌
東工大事務部のご厚意により創立 130 周年記念パー
を盛り上げて頂きました。最後はお二人の歌に合わ
ティーのとき展示した 130 年史写真集のパネルを
せ全員で「ふるさと」を唄い,快い想い出を作りま
展示することができ,雰囲気を盛り上げることがで
した。アンコールの声が高いなか,時間の関係で残
きました。
念ながら次のプログラムに進まざるを得ませんでし
小尾幹事(化学)の挨拶に続き,伊賀健一学長か
たが,Hosaka さんの CD のサイン会では沢山 CD
ら東工大の現状と将来についてお言葉を頂きまし
が捌け,本人も大喜びでした。続いて同期の前日本
た。出席率の最も高い電気化学科の浅田幹事の発声
山岳写真協会会長川井靖元君
(応化)
にムービーフォ
による乾杯のあと歓談に移り,皆よく食べ,よく飲
ト「世界名山の旅」を
み,良くしゃべり,学生時代に戻った気分で若返り
上映して貰いました。
ました。皆さんお酒で気分が乗ってきた頃,ボーカ
会も大変盛り上がって
ルでさらに宴が盛り上がりました。まず,かっては
いましたが,時間の制
歌手を目指していた大岡山のそば屋「志波田」の女
約もあり,
佐久間君
(化
将鈴木啓子さんの魅惑的な「ラストダンスは私に」
工)の関東一本締めで
に始まり,次には元東工大の研究生で,現在ラテン
再開を誓いつつ,同期
ボ ー カ ル 歌 手 と し て 日 本 で ナ ン バ ー ワ ン の Ben
会をお開きとしまし
Hosaka(本名 保坂 勉)さんの「べサメムーチョ」
た。
などポピュラーなラテンナンバーの美声に皆酔わさ
蔵前旅行会 平成23年
秋の 一泊旅行 (富士山周辺)
66
小尾欣一 記
は燃え尽きて,樹木形の空洞で,その原型が残った
もの。国の天然記念物で,
神秘性を感じた。次に,
「本
栖湖」へ。
今回の旅行のテーマは「富士山周辺の自然と神秘
千円札の図柄となった富士山の雄姿を眺めに北岸
の探究」である。
に。残念なことに,雲隠れ。千円札を出し,裏側を
11 月 7 日,参加者 30 名(内女性 7 名)を乗せた
見て想像する。
「西湖」
「河口湖」の北岸を回り,紅
バスは,新宿 8:15 分出発。中央自動車道・東富
葉を車窓より眺めながら「河口湖ミューズ館」に着
士五湖道路を経由し山中湖ICを下り,最初の訪問
く。創作人形作家の「与勇輝」の作品を鑑賞。その
は「富士山レーダードーム館」。
作品の殆どが子ども達で,
自然体で生き生きとした,
富士山頂の白く輝いていた「レーダードーム」は
温みのある木綿布を素材にしていて,見る者を幻想
35 年間の活躍を終え,この地に移設。体験学習施
の世界へと誘ってくれた。
設として生まれ変わった。建設当時の山頂での難工
17 時,
「富士サンライズ・リゾート・ホテル」に。
事,そして台風監視・天気予報の役割などが理解で
ゆっくり湯につかり,夕食。その後,貸切の演芸会
きた。今は気象衛星による観測に変わった。
場へ移動。先ず,蔵前観世会による「小袖曽我」の
昼食後は,珍しい「溶岩樹型」を見に 鳴沢村の
連吟から始まり,
ハート詩吟同好会による 「 富士山」
樹海入口に。太古の森林が富士山の噴火により流出
などの吟詠。小唄,長唄,カラオケで盛り上がる。
した溶岩流に包まれ,そのまま冷えて固まり,大木
このホテルは,各部屋からの富士山の絶景が売り物
1029
でしたが,翌朝もあいにく曇天,富士山のシルエッ
からの富士山の眺めは最高と聞く。
トが見えず残念。
昼食をすませて,山中湖「文学の森」を散策。
「三
二日目は,早朝「北口本宮富士浅間神社」を参拝。
島由紀夫文学館」「徳富蘇峰館」などを見学。多く
かって,富士山を神様として信仰し登山した時代の
の歌人・文人がここで過ごした事を知る。
その後,
「花
玄関口であった。参道の杉並木と石灯篭は,その歴
の都公園」経由して新宿へと帰路についた。
史を感じた。そして,9:30 分,森の中に黄色い建
終わりに,山中湖畔に別荘を持つ佐伯和良さんに
物が散在する「ファナック(株)」に到着。稲葉善
大変お世話になりました。この旅行の立案,そして
治社長(S48 機)のお出迎えの歓迎を受ける。映像
精通したガイド役。さらにバス内にて見た,晴天時の
による会社概要,そして展示室で商品の見学。機械
富士山などのビデオ映像の作製。深く感謝致します。
ロボット・サーボモータなど世界に展開,時代の要
文責 石井昭三
(S31 化工)
求にマッチしたロ
ボットの開発で発
展している事を知
る。
次は,山中湖周
辺巡りである。山
中湖の優れた自然
環境を活かした公
園「交流プラザ」
で途中下車,ここ
「る組」今年2度目のクラス会と
講演会講師招待
クラス会で藤家先生は全員の質問に対して丁寧に
答えられ,アルコールの量も増えたようであった。
このお元気さはゴルフのかつてのハンディが 10 で
S38 年入学の「る組」は 5 月の軽井沢に次いで
あったことに起因するのであろう。
11 月 10 日(木)にもクラス会を開いた。村上が企
最後に,来年もクラス会を開くことを誓って会場
画を担当している蔵前工業会東京支部講演会で,山
を後にした。
崎の紹介による東工大名誉教授,前原子力委員長の
文責:篠崎正利
藤家洋一先生の講演「日本はなぜ原子力を選択した
か」を全員が聴講し,そのまま先生をクラス会に招
待して,飲みながら生きた勉強会を行った。
蔵前工業会館での講演会では①原子力基本法は長
崎医大の永井隆博士の長崎原爆被災者救護報告書表
紙の結辞,つまり平和利用の精神を原則にしている
こと,② 100 年単位の研究期間が許されれば使用
済み燃料中の半減期1年以上の 28 種類の放射性核
種を全て核変換して放射能をなくすことが出来る技
術が開発できること,③レアメタルなど日本では得
られない元素を化学による錬金術ではなく核変換に
よって作り出すことが出来るということなどが心に
(後列向かって左から海老沢,佐藤(旧姓佐々木),山崎,篠崎;中央列
左から細坂,生駒,山本,村川:前列左から伊藤,村越,八百枝,藤家
先生,村上,瀧口)
残った。
卓球部還暦の会
集まりました。昭和 41 年卒の崎山さんの声かけで
始まった卓球部還暦の会は,年 1 〜 2 回のペース
で行われています。今回は昭和 45 年卒の担当で計
平成 23 年 11 月 12 日 17 〜 19 時に,目黒雅叙園
画しました。初参加の 48 年卒の方がたが沢山出席
おいて卓球部還暦の会を行いました。27 名の方が
しました。皆還暦を過ぎた人なので,ほとんどの方
1029
67
が定年になっており,現在はボランティアをされて
卓球部が関東学生卓球連盟リーグ 4 部で頑張ってい
いる方,新しい仕事を初めている方,悠々自適の方
るとの報告があり還暦を過ぎてもうれしい報告でし
など多彩で,それぞれの新しい老後(?)生活を楽
た。卒業して 40 年近くたって,旧交を深めること
しんでおられます。写真の見かけと実年齢は全く関
ができるのは,とても楽しく心地よいものです。
係なくなっているようです。恒例の近況報告を聞き,
担当:45 年卒(田淵,水野,片野,小宮)
懐かしくまた,楽しい時間を共有できました。とて
もいい老後を楽しんでおられる関戸さ
ん,未だに現役で,県大会などで優勝
や準優勝をされている 48 年卒の大沢
さん,現役時代はレギュラーでなかっ
たのに今では地区で卓球の指導をされ
ている木村さんや浅賀さん,蔵前工業
会で理科教育のボランティアで貢献し
ている平塚さん,皆 40 年前と同じで
とても元気です。
OB 会幹事の阿部さんからは現在の
第3回「不動産蔵前会」開催の
ご報告と入会のご案内
の提供もあり,大いに盛り上がりました。また,歓
談の場においては,比較的転職が多い当業界ならで
去る 2011 年 11 月 21 日,「第 3 回不動産蔵前会」
はの転職挨拶や独立報告が活発に行われ,業界少数
が開催されました。当初は建築学科出身の若手同業
派ながら蔵前ネットワークの力強さを実感しまし
者の会として始まりましたが,今回は学科を問わず
た。最後に,東京急行電鉄(東急ファシリティサー
幅広い年代から 61 名の参加を得ました。また業種
ビス出向)の池野朋彦氏(S 60 社工)からのご発
についても,不動産デベロッパーや不動産投資ファ
案で記念写真を撮影し,業界の健全な発展に資する
ンド等の「本業」に加え,生損保や信託銀行など金
ことを誓い合って散会となりました。
融機関や鉄道会社等の不動産部門,さらに不動産コ
次回は来年の秋頃に開催を考えておりますが,よ
ンサルティング業に至るまで,不動産に関わる様々
り広く参加を募集します。
不動産業従事者に限らず,
な立場の同窓生が集いました。
メーカーの不動産管理担当の方等も歓迎です。また
乾杯のご発声は公認会計士・税理士として独立開
40 代以上の先輩の方にも多く参加いただきたく存
業されている中澤省一郎先生(S58 社工 S60 修社工)
じます。ご参加,お問い合わせは,不動産蔵前会幹
にいただきました。その際,以前東工大に不動産学
事,三菱地所(三菱地所レジデンス出向)の丸山省
部開設の予定があったこと等,学問としての不動産
吾(H9 建,H11 修 建 ) ま で メ ー ル(shogo_
と東工大との意外に深いつながりが紹介されまし
[email protected])にてご一報ください。
た。その後,所属会社や参加者自身のアピール,不
動産マーケット分析等のための発表時間が設けられ
68
ました。中には「自社商品の蔵前会限定特別優待」
1029
文責 丸山省吾(H9 建 H11 修建)
くらまえ俳壇(選句 藤田美寛)
23 年 10 月抄
23 年 11 月抄
槍ヶ岳下りて一息夏終る
藤田美寛
鴨川の速き流れや野分あと
久保田耕平
夫婦して食後の薬秋の雨
杉本芊草
椅子の下蟋蟀の鳴く葬儀場
藤田佳津子
秋雨の昼の静かさ山の宿
池田土筆
秋雨来る無人の駅の窓硝子
高瀬千紫
書を閉じて古里夢む夜長かな
國司喬伸
仰向けの蝉のなきがら地に帰す
高木杜史
鉛筆を2Bに替え虫の貌
斎藤織女
草の実を勲章にして道迷ふ
田胡みどり
大津波に耐えて草の実結びをり
千田草芥
半月の湖上に冴えて観音寺
古谷昭雄
草の実を分けて辿りし秘湯かな
塚越芳枝
そこここに普段気付かぬ曼珠沙華
原 且則
烏瓜おおいつくして残暑なる
菊池昭武
味も香も好まぬ人もべったら市
二宮游仁
幼な子が草の実払う手と足に
高石遊行
草の実や蛇の抜け殻わが宿に
依田連平
テレビの音小さくしたり虫の声
三井澄水
菊咲く日また巡り来て交す笑み
穴原明司
秋雨の音を聞きつつ玉露飲む
内田咢鳥
母に問う草の実の名は懐かしく
青木陽二
しぐるるや抱き合っている道祖神
高木杜史
大挙して海上低く渡り鳥
原 且則
落葉焚き母が楽しむ日暮
青木陽二
木漏れ日を集める如く掃く落葉
杉本芊草
川下り紅葉の中の舟泊り
古谷昭雄
障害の子と公園の落葉掃く
高石遊行
初霜のすでに降るとう地震の街
近藤素石
二荒山巫女が掃き寄す紅落葉
内田咢鳥
大根の肩青くしてのり出せり
菊池昭武
原発の列の無残や冬構
千田草芥
みてみてと逆立ちくずれ小春空
斎藤織女
鳥渡るくの字くずれて湖のはて
久保田耕平
駅伝の応援楽し大根振り
藤田美寛
雲切れて紅葉突然喋り出す
穴原明司
秩父背にシャフトキルンの冬構え
高瀬千紫
端正な形して止まる冬の鳥
田胡みどり
初霜の無垢の光を惜しみけり
池田土筆
世事忘れ気楽に旅す渡り鳥
國司喬伸
ひろびろと大根畑の青さかな
三井澄水
小春日や胡弓にのせて太極拳
藤田佳津子
落葉散る掃き寄せられて庭の隅
塚越芳枝
☆ 蔵前工業会員(及び配偶者)の皆様の俳句を募集しています。 FAX047-438-0578 高瀬千紫宛お寄せください。☆
蔵前短歌会(平成23年10月,11月詠草)
選者 波克彦(歩道編集委員・現代歌人協会会員)
(本名・波々伯部自克 41 化工・46 化工(博))
二十歳から数えて既に四十年飽きることなく続く幸せ
同じこと繰り返し言う父親にそのとおりだと常にうなずく
宝塚歌劇に誘う雰囲気がちょっと違うと君は呟く
静かなる峠を登り来し時に月の光は我を照らせり
動きいし夜の白雲無くなりて北アルプスに月照り渡る
朔風の強く吹く朝自転車で駅へと急ぐ会議のある日
レモン生る街路樹の陰濃くなりて青き湖面につばめ飛び交ふ
麦秋の平原とほく町ありて白雲の影丘を流るる
在りし世の修道院は酒倉となりてうつつの老若憩ふ
血の巡り悪くなりしは老いゆゑか今まで知らぬしもやけに悩む
まだ穴に入るとも見えぬやまかがし谷津田の畦に日を浴びてをり
次男より古希の祝の新走何にたとへんこの酔ひ心地
看護婦は 「 おじさん元気を出しましょう」と子供に話す調子で話す
曇り日の空を見上げてため息す日本経済何時回復か
真夜中に目が覚め音のない世界我が人生を思い出す旅
八トンの黒き海豚が身の丈を超え空中に激しく跳ぬる
万座ビーチの宿より夕日の沈みゆく沖雲の見ゆ冬暖かく
六十五年前の激しき戦ひの記録の虚し資料館出で
折居 孝
同
同
藤田 良廣
同
同
土肥 義治
同
同
山本 伸一
同
同
廣谷 精
同
同
波 克彦
同
同
蔵前工業会員の方の短歌を募集します。毎月 10 日までに 1 - 10 首を以下の住所に送ってください(メー
ルで結構です)
。
〒 221-0852 横浜市神奈川区三ツ沢下町 27-24 TEL&FAX045-321-1704 [email protected]
1029
69
私たちが大切にしているのは
お客さまと心を通わせること。
ハードもソフトも大切ですが、
Heartがなければ、
お客さまのご満足は得られない
と考えるからです。
竹田印刷グループは、
お客さまからの信頼を第一に、
未来をみつめ、成長し続けます。
ペーパーメディア事業
人
Heart
「営業」+「ビジネス開発」+「技術開発」
読売新聞との合弁会社「東海プリントメディア株
式会社」
を設立し、新聞印刷事業を幅広く展開し
ています。
設備
Hard
ミスを未然に防ぐ
工程システム
ソリューション
Soft
顧客満足度
No.1サービス
名誉会長
各務芳樹(昭和25年 無機卒)
■ 本社・中部事業部 〒466-8512 名古屋市昭和区白金1-11-10
TEL:052-871-6351(大代表) FAX:052-872-1488
http://www.takeda-prn.co.jp
■ 関東事業部 〒114-0016 東京都北区上中里2-9-1 TEL:03-3913-5501(大代表) FAX:03-3919-9724
[お問合せ]TEL:03-3913-8600 営業部 吉田典昭
■ 関西事業本部 〒581-0038 大阪府八尾市若林町2-143 TEL:072-920-6770(代表) FAX:072-920-6115
過 ぎし昔の思い出
天津蔵前会 于 敏
機縁
ネオンの輝きでした。さながら美しい色彩の輝
く空中を走っているようでした。その日は青葉
私は 1943 年中国東北の辺境の町丹東に生ま
れました。4 歳の時に,父が過労のため亡くな
り,母親が苦労をしながら育ててくれたので,
母に報いるためにも小学校から大学まで勉学に
台にある東京工業大学の松風学舎でゆっくり休
み,日本の第一夜を過ごしました。
留学生活のスタート
励みました。
1976 年に中日技術交流会に参加した時のこ
日本は個人のプライバシーを尊重するため,
とです。通訳も訳せない技術関係の日本語を上
経済状況が許せば,一人で下宿します。私も同
海自動化研究所情報室の方が飛び入りで通訳し
じでした。公費留学の中国留学生の多くは,中
たのを見て,大変羨ましく,私も日本語を学ぼ
国人学生が集まる善隣会館や大森寮を宿舎とし
うと思いました。折り良く,天津放送局が放送
ましたが,私は横浜市緑区青葉台にある松風学
を開始した日本語講座を聞き,「あいうえお」
舎に寄宿することにしました。東京に着いた翌
から勉強を始めました。唐山大地震で被災して,
日,青葉台の電車駅で生まれて初めて券売機で
仮住まいしている間も休みませんでした。
乗車券を買い,一人で大岡山を目指しました。
1980 年,私はあるチャンスに恵まれました。
電車が次々と来ますが,何番線に乗ったらよい
その年,国家は外国留学を再開したのです。運
かよく判りません。私には“大岡山”の三文字
よく勤務先の推薦を受け,選抜試験を受験でき
は判りますが,日本語の発音は別です。アナウ
ることになりましたが,試験まで一ヶ月しかあ
ンスはすべて日本語で,しかも「身の回り品を
りませんでした。日中は勤務がありますから,
お忘れにならないように」などと,いろいろな
とにきは朝の 3,4 時まで勉強しました。こん
ことを言われるので,かえって聞き分けができ
な具合でしたから,一ヶ月の間に一回り痩せて
ません。立ち上がって耳をそばだても大わから
衣服が合わなくなってしまいました。しかし,
ずに,やっと大岡山の三文字を見たときには,
その努力のおかげで,無事公費留学生の試験に
既に通り過ぎていて,次の駅から戻ってくるし
合格することができました。
かありませんでした。
間もなく留学に出発するというときに,教育
やっとたどり着いた大岡山キャンパスで,教
部は我らを万里の長城に案内し,世界の東方に
務掛の方に連れられて工学部制御工学科の小林
厳と立つ万里の長城の登攀を体験させ,また閉
研究室に案内されました。小林彬先生は大変友
鎖を破り外国に行く厳しさも体験させました。
好的な方で,お昼には制御工学科の全教官が集
1982 年 10 月 4 日,生まれて始めて乗った飛
まった所で,私を紹介してくれました。私は知っ
行機が日本の成田空港に到着しました。少年時
ている限りの日本語で敬意を表し,学習への意
代から憧れていた日本に着いたのでした。タク
欲を述べました。これが東京工業大学の研究生
シーが東京に入って見たのは,高層ビルの林立,
としての 2 年間の留学生活のスタートでした。
1029
71
工業会海外蔵前会歓迎の夕べ”と“東京工業大
勉学の日々
学創立 130 周年記念式典”に出席することが
できました。その席で,庄山理事長,伊賀学長
研究室に慣れるために,私は毎朝早めに登校
し,日本語をマスターする一方で,研究課題に
のお話をじかにこの耳で聞きくことができ,感
激しました。
取り組みました。帰宅はときに最終電車で,翌
蔵前工業会と東京工業大学に役に立つ事があ
日の朝にやっと帰った事もありました。小林研
る時,呼んでください。私は今後先輩を見習っ
究室の設備は素晴らしく,加えて小林彬先生と
て,中国と日本の友好のために微力ながら貢献
山浦富雄助手の親切なご指導により,完成した
したいと思っています。日本東北大震災の復旧,
私の学術論文「用空間濾波器測量移動物体尺寸
復興の早いことを祈ります! 東京工業大学と
(空間フィルターを使用し移動物体の寸法を測
蔵前工業会の更なる発展を祈ります!
る)」は 1984 年の帰国前に日本電気学会で発
表し,高い評価をいただくとともに,学界誌に
がんばれ 東工大!
掲載されました。長い努力は無駄ではなかった
がんばろう 日本!
と,大変満足しました。この 2 年間は勉強に励
(柴生田 清 訳)
むのみで,風光明媚な日本を旅行することもで
きませんでしたが,論文発表後に日本の友人で
ある瀬在丸孝昭氏の協力を得て富士山に登頂し
ました。
【于氏略歴】
1943 年,中国遼寧省丹東市生まれ。1966 年,西安
電子科学技術大学卒業。卒業後中国船舶重工集団第
縁は繋がる
707 研究所にて研究に従事。1982 年,東工大留学。
日本から帰国して既に 27 年が過ぎましたが,
日本のことは忘れていません。日本人の礼儀正
しく,時間を守り,団結して協力し合い,慎み
1984 年,日本より帰国。帰国後中国船舶重工集団
第 707 研究所復職。高級工程師,処長,研究所副総
工程師,研究員(教授)。天津蔵前会会員。
深く,危機意識を持って,力いっぱい競争する
という精神は,私に強い影響を与えてくれまし
た。1996 年には私の一人
娘が日本に留学し,同じ東
工大の小林研究室で学び
ました。我が家と日本は本
当に縁があるようです。
昨 年 3 月, 東 日 本 大 震
災発生の報道を見て,妻と
共に胸が痛くて眠れませ
んでした。そして,「なで
しこジャパン」の活躍を見
て,今度はうれしくて眠れ
ませんでした。
昨年 10 月には,妻,娘,
そして孫娘と一緒に“蔵前
海外同窓会歓迎の夕べ(2011.10.7)に天津蔵前会の代表として来日し,訳者の柴生田氏と語る于さん一家
72
1029
2012 新年号 編集後記
様々な思いで 2012 年の元日を迎えられたことと
思います。昨年,日本は東日本大震災とそれに伴
って発生した福島第一原子力発電所の事故という
未曽有の体験をし,今日も尚,復旧・復興活動が
続けられています。早いもので,あと数ヶ月で 1
年を迎えようとしています。
「技術立国-日本」を,各分野で各方面から支え
ておられる会員諸氏にとって,衝撃的な惨事であ
ったと思います。
新しい年を迎えました。私は,昨年感じたあの
時のあの思いを忘れることなく,街づくり分野に
おける技術者の一人として奮励努力していきたい
と気持ちを新たにいたしました。
同窓会誌の編集委員として 4 年目を迎えます。
今年も引き続き親しみやすい同窓会誌を目指して
活動して参ります。本年も宜しくお願い申し上げ
ます。
會田和史(H 4 社 H 6 修社)
東京工業大学同窓会
蔵前工業会誌「蔵前ジャーナル 」
平成 24 年新年号 平成 24 年 1 月 20 日発行
〒 152-0033
東京都目黒区大岡山 2 丁目 12 番 1 号
東工大蔵前会館 4 階
TEL.03-3748-2211 FAX.03-3748-2213
E-mail でのお問い合わせ
・住所・勤務先・会誌送付先の変更
[email protected]
・蔵前ジャーナルへのご投稿
[email protected]
・その他
[email protected]
ホームページ http://www.kuramae.ne.jp
発 行 人 本房 文雄
印 刷 所 竹田印刷株式会社 Tel.03-3913-8600
表紙デザイン 富士ゼロックスシステムサービス株式会社/いりえ玉恵
●編集部会
部 会 長 関誠夫(S 43 生機 S 45 修生機)
委 員 坪田賢亮(S 43 金 S 45 修金)平山南見子(S 45 修化)
笹島和幸(S 51 生機 S 57 博生機)関口秀俊(S 60 化
工 H 2 博化工)柳沼義典(S 63 電子物 H 2 修電子シ)
柳田保子(H 2 生物 H 7 博 B テ)上坂泰史(H 3 社)會
田和史(H 4 社 H 6 修社)平井陽子(東工大事務局)
秋庭紀子(蔵前工業会・会誌編集担当)
『蔵前ジャーナル』投稿の際のお願い
2012春号
2012初夏号
2012盛夏号
2012秋号
2012冬号
2013新年号
発 行
4月1日
6月1日
8月1日
10月1日
12月1日
1月25日
投稿締切
2月10日
4月10日
6月10日
8月10日
10月10日
11月20日
① 600 字,写真 1 枚が原則 原則として投稿は 600 字以内,写真 1 点とさせていただきます。
② 投稿は最終版を グループでのチェックを終えて,最終版が確定してからご投稿ください。
③ 締め切りの徹底 上記の締め切り日をご確認のうえ,期限内にご投稿下さるようお願いします。
④ 写真は別ファイルで 写真は文章に貼り付けずに画像ファイルのままお送りください。
⑤ 代表者の一括投稿を グループの担当者が原稿の最終版と写真とを取りまとめてメールでの一括投稿を
お願いします。
ご投稿は [email protected] まで
・投稿は会費をお納めいただいている会員の方に限ります。
・記事の採否および掲載時期は編集部会で決定いたします。
・投稿者に文章の変更を求めることや,誌面の都合で変更,割愛することがあります。
・ご投稿いただいた原稿,写真,図版は原則として返却いたしません。
・編集日程の都合上,投稿原稿の校正のご希望にはお答えいたしかねます。
1029
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ぐるなび上海社 営業部
企画開発本部 サービス企画開発部門
ぐるなび上海社 営業部長
企画開発本部 EC事業推進部門
総合政策室 知的財産担当
(工学部経営システム工学科・H20年卒)
(大学院情報理工学研究科・H18年卒)
(大学院理工学研究科・H17年卒)
(工学部経営工学科・S62年卒)
(大学院理工学研究科・H8年卒)
王 月静
岡本 拓明
趙 剛
喜山 荘一
伊藤 夏香
総合政策室次長
香月 壯一
久保 征一郎
代表取締役社長
代表取締役会長・創業者
管理本部 法務コンプライアンス室長
鈴木 宏和
中井 博胤
(工学部経営工学科・S50年卒)
(工学部電気工学科・S44年卒)
(理工学部機械工学科・S38年卒)
(工学部土木工学科・S61年卒)
(大学院総合理工学研究科・H13年卒)
取締役 専務執行役員
滝 久雄
社 名 株式会社 ぐるなび
設立年月日 1989年10月2日
(会社設立)
2000年2月29日
(株式会社ぐるなび発足)
所 在 地 東京都千代田区有楽町1-2-2
東宝日比谷ビル
資 本 金 2,334百万円
事 業 内 容 インターネットを活用した飲食店向けPR・
販売促進等のサービス事業
従 業 員 数 単体:1,330名 連結:1,659名
※役員、アルバイトを含む総人員数
関 連 会 社 株式会社プロモーションコミュニティ
ぐるなび上海社
株式会社ぐるなび総研
株式会社ぐるなびサポートアソシエ
(2010年12月末)
100-0006 東京都千代田区有楽町1-2-2 東宝日比谷ビル
TEL : 03-3500-9700 FAX : 03-3500-9743
蔵前
JOURNAL
東京工業大学同窓会誌︻蔵前ジャーナル︼ 2012・新年号
no.1029
2012年1月 日発行 社団法人 蔵前工業会
〒152 0- 033 東京都目黒区大岡山2 - 1
- 東工大蔵前会館4階 ☎03 3- 748 2- 211
20
12