土石流・流木対策の技術指針に関する講習会 - 計画例・設計例 - (財)砂防・地すべり技術センター 嶋 大尚 1 P.4 2 流域概要(流域面積:0.12km ) 架空の渓流 2 砂防基本計画(土石流・流木対策編)の策定 手順 • Step1 計画で扱う土砂量等 • Step2 土石流・流木処理計画 • Step3 土石流・流木対策施設配置計画 • Step4 除石計画策定 3 P.4 流域概要(谷次数) 0次谷とは、1/25,000地形図あるいは大縮尺の地形図を使用して等高線の凹み具合を 眺めて、凹んでいる等高線群の間口よりも奥行が小なる地形とする。(P.24) 0次谷の長さ(2.7土砂量等の算出方法) 流出土砂量を算出しようとする地点より上流域の1次谷の最上端 から流域の最遠点 までの流路谷筋に沿って計った距離(m)で支渓がある場合はその長さも加える。(P.25) 渓流の定義は、土石流危険渓流および土石流危 険区域調査要領(案)に従うものとする。(P.8) 現地調査の土砂生産特性、近傍流域の 既崩壊地等からも0次谷を判断する。 4 P.7 保全対象の設定 保全対象は、土石流危険渓流および土石流危険区域調査要 領(案)に基づき設定する。 (P.5) 保全対象:12戸の人家 3°まで 5 P.7 計画規模 計画規模の年超過確率の降雨量(原則として24時間雨量又 は日雨量の100年超過確率とする)に伴って発生する可能性 が高いと判断される土石流および土砂とともに流出する流木 等の流出量等を推定し、算出する。(P.6) 指針の対象外 なお、本指針は、大規模な山腹崩壊土砂がそのまま土石流 となるものや、崩壊または地すべり等により形成された天然 ダムの決壊による土石流、および火山噴火に伴って融雪に 起因する火山泥流、火口湖の決壊に起因する火山泥流を対 象外とする。 (P.6) 6 P.7 計画規模 この事例では、当該渓流における過去の土石流量等の 資料が無いことから、 計画規模は,100年超過確率とし、 100年超過確率の24時間雨量(Pp=406.6mm/24h)を 計画規模の降雨量とする。 7 P.7 計画基準点 一般には保全対象の上流や谷の出口、土石流の流下区間 の下流端を計画基準点とする。(P.6) 8 P.7 補助基準点 土砂移動の形態が変わる地点や支渓の合流部等において 土石流・流木処理計画上、必要な場合は、補助基準点を設 けるものとする。(P.6-7) 9 P.4 P.7 補助基準点(土砂移動形態) 補助基準点:必要があれば設ける。 (P.6-7) 10 P.7 事例で取り扱う渓流 この計画例では、補助基準点は必要でないため、設定していない。 11 Step1 P.8 計画で扱う土砂量等 1.指針の目的 砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)(以下、「本指 針」という)は、土石流および土砂とともに流出する流木等によ る土砂災害を防止するために、 ・・・・・・(P.2) 計画で扱う土砂量等は、 ■計画流出量(計画流出土砂量・計画流出流木量)、 ■計画流下許容量(計画流下許容土砂量・計画流下許容流木量)、 ■土石流ピーク流量である。 (P.7) 12 P.8 計画で扱う土砂量等 - 計画流出土砂量 - 「計画規模の土石流」により、計画基準点まで流出する土砂 量である。算出に際しては、土石流・流木対策施設が無い状 態を想定する。 (P.8) 2.7.1 計画流出土砂量の算出方法(P.22) 原則として、流出土砂量は、流域内の移動可能土砂量と、 「計画規模の土石流」によって運搬できる土砂量を比較して 小さい方の値とする。 13 P.8 流域内の移動可能土砂量の算出方法 ■崩壊可能土砂量を的確に推定できる場合(P.24) 流域内の移動可能土砂量( Vdy1 ) (P.22) Vdy1 = Vdy11 + Vdy12 (山腹の予想崩壊土砂量) 〔移動可能渓床堆積土砂量 +崩壊可能土砂量〕 Vdy11 = Ady11 × Ldy11 Ady11:移動可能渓床堆積土砂の 平均断面積(m2) 14 P.8 移動可能渓床堆積土砂の平均断面積 Bd:土石流発生時に侵食が予想される平均渓床幅(m) (P.22-23) De:土石流発生時に侵食が予想される渓床堆積土砂の平均深さ(m) 水源崩壊地調査、渓流調査等の結果に基づき算出する 山腹 Bd Ady11 = Bd × De De 渓床堆積土砂 露岩 De 地山に成育する 樹種 先駆樹種、 低木・草本 露岩 15 P.8 流域内の移動可能土砂量の算出方法 ■崩壊可能土砂量を的確に推定することが困難な場合 流域内の移動可能土砂量( Vdy1 ) (P.22) Vdy1 = Vdy11 + Vdy12 〔移動可能渓床堆積土砂量 +崩壊可能土砂量〕 0次谷を含めた式 Vdy12 = ∑ ( Ady12 × Ldy12 ) Ady12:0次谷における移動可能渓床堆積土砂量の平均断面積(m2)(P.25)16 0次谷における移動可能渓床堆積土砂の平均断面積 P.8 崩壊可能土砂量(Vdy12)を的確に推定することが困難な場合(P.25) 水源崩壊地調査、渓流調査等の結果に基づき算出する Bd:土石流発生時に侵食が予想される平均渓床幅(m) (P.22-23) De:土石流発生時に侵食が予想される渓床堆積土砂の平均深さ(m) 17 P.8-10 流域内の移動可能土砂量 • 当該渓流では,崩壊地からの崩壊可能土砂量を的 確に推定することが困難であるため,0次谷の崩壊 を含めた式により崩壊可能土砂量を算出するものと して,流域内の移動可能土砂量を算出する。 (P.22-25) 18 P.9 谷次数区分と渓流延長 (P.22-25) 水源崩壊地調査、渓流調査等の結果に基づき算出する 19 P.10 流域内の移動可能土砂量 計画基準点における移動可能渓床堆積土砂量 (P.22-25) 計画基準点における崩壊可能土砂量 計画基準点における流域内の移動可能土砂量 20 「計画規模の土石流」によって運搬できる土砂量(Vdy2) P.11 「計画規模の土石流」によって運搬できる土砂量は, 式(6)により算出する.(P.26) Vdy2= 103× Pp× A 1-Kv × Cd 1-Cd Kf2 式(6) • Pp :計画規模の年超過確率の降雨量(mm/24h) A : 流域面積(km2) • Cd : 土石流濃度 • Kv : 空ゲキ率(0.4程度) • Kf2: 流出補正率 21 「計画規模の土石流」によって運搬できる土砂量(Vdy2) P.11 • 土石流濃度(Cd)は,式(7)により算出する.(P.26) ρtanθ Cd= (σ-ρ)(tanφ-tanθ) • • • • • • 式(7) Cd:土石流濃度 (0.30≦Cd≦0.9C*) σ:礫の密度 (2,600kg/m3) ρ:水の密度 (1,200kg/m3) φ:堆積土砂の内部摩擦角(35°) θ:計画基準点から上流200mの平均渓床勾配(°) C*:渓床堆積土砂の容積濃度(0.6) 本検討では、一般値を用いた。 22 「計画規模の土石流」によって運搬できる土砂量(Vdy2) P.11 流出補正率(Kf2)は、式(8)により算出する Kf2=0.05(logA-2.0)2+0.05 式(8) Kf2: 流出補正率(0.1≦Kf2≦0.5) A : 流域面積(km2) 0.6 K f 2 = 0.05 ( log A − 2.0 ) + 0.05 0.5 2 流 0.4 出 補 0.3 正 率 0.2 K f 20.1 0.0 0.01 0.1 1 流域面積 (km A 2) 10 23 「計画規模の土石流」によって運搬できる土砂量 P.12 基準点における土石流濃度(Cd)を以下の通り算出する (P.26) 1200× tan12.8° Cd= =0.412≒0.41 (2600-1200)(tan35° -tan12.8° ) 計画基準点における「計画規模の土石流」によって運搬できる土砂量 24 計画基準点における計画流出土砂量 P.12 2.7.1 計画流出土砂量の算出方法(P.22) 原則として、流出土砂量は、流域内の移動可能土砂量と、 「計画規模の土石流」によって運搬できる土砂量を比較して 小さい方の値とする。 25 P.13 計画流出流木量 - 発生流木量 - 計画流出流木量は、推定された発生流木量に流木流出率 を掛け合わせて算出する。 (P.27) 現況調査法は,代表的な林相の10m×10mの範囲のサン プリング調査とした.なお,10m×10mの範囲は,水平方 向にとるものとする. 渓岸斜面勾配等により水平方向に10m×10mの範囲をと ることが困難な場合,必要に応じて補正を行うものとする 土石流によって浸食が推定される平均渓床幅26 P.13 計画流出流木量 • 原則として流木の発生が予想される箇所に存在する樹木、 流木等の量、長さ、直径を直接的に調査する方法(以下、 「現況調査法」と呼ぶ。)を用いる。 (P.29) • ※樹高・胸高直径は,サンプリング調査結果に基づいて 10m×10mの範囲内に自生する立木1本毎に設定する.設 定した樹高・胸高直径により,10m×10mの範囲内の立木1 本毎に単木材積を算出し,その合計を100m2当りの材積 (∑Vwy2)とする. 27 P.13 発生流木量(Vwy) - サンプリング調査結果 - 今回の事例では、下記の通り、高さ20m、胸高直径0.3mのスギ が10m×10mの範囲内8本あった場合の算定である。 主要樹種 スギ(針葉樹) 100m2当りの本数 8本 樹高(Hw) 20m 胸高直径(Rw) 0.3m 28 P.13 谷次数区分と渓流延長 1次谷の上流端 29 発生流木量(Vwy) P.13 調査項目 調査結果 備考 計画基準点等から流域の最 遠点まで流路に沿って測っ た距離の総和(Ldy13) 0次谷:440m 180+260=440 1次谷:450m 380+70=450 平均渓床幅(Bd) 0次谷:3.0m 1次谷:5.0m 胸高係数(Kd) 0.47 胸高係数の図12(2)より(P.30) 単木材積(Vwy2) 0.66m3 Vwy2=3.14×20×0.32×0.47/4 100m2当りの材積(∑Vwy2) 5.28m3 ∑Vwy2=0.66×8 発生流木量(Vwy) 0次谷:70m3 Vwy=(Bd×Ldy13)×∑Vwy2/100 1次谷: 119m3 Vwy=189m3 (P.29-31) 30 P.13 計画流出流木量(Vw) • 流出流木率は,計画対象流域及び近傍流域に実績値が存 在する場合においては,これを用いても良いが,実績値がな い場合は一般値(0.8~0.9)を使用する. • 当該渓流は流木流出率の実績値がないことから,当該渓流 の流出流木率は,最も安全側の値として一般値の最大であ る0.9とする. (P.27-31) 計画流出流木量(Vw)=流木流出率×発生流木量(Vwy) =0.9×189(Vwy)≒170(m3) (P.27-31) 31 計画流出土砂量 P.14 390 0 270 2,250 凡 例 (m3) 崩壊可能土砂量 390 2,520 移動可能渓床堆 積土砂量 計画流出土砂量 2,910 2,910 計画流出土砂量 合流合計 (P.8) 32 計画流出流木量 P.15 37 133 凡 例 (m3) 計画流出流木量 170 170 計画流出流木量 合流合計 (P.9) 33 計画流下許容量(W) P.16 • (1)計画流下許容土砂量(Wd) 当該渓流では,0m3とする. 計画流下許容土砂量は、計画基準点より下流において災害 を発生することなく流れる土砂量である。(P.9) • (2)計画流下許容流木量(Ww) 当該渓流では,0m3とする. 計画流下許容流木量は計画基準点より下流で災害を引き起 こさない流木量である。(P.9) • (3)計画流下許容量(W) 当該渓流では,上記より0m3となる. 34 計画基準点における土石流ピーク流量 P.17 • 設計流量を求めるときにご説明致します。 35 Step2 P.22 土石流・流木処理計画 土石流・流木処理計画は、計画基準点等において、「計画規 模の土石流」および土砂とともに流出する流木等を合理的 かつ効果的に処理するよう土石流危険渓流ごとに策定する ものである。(P.10) • 当該渓流では,地 形条件や施工性 (流域内への進入 のし易さ等)を考慮 して,可能な限り下 流側に砂防設備を 配置することで土石 流および土砂ととも に流出する流木を 処理する計画とする. 36 P.22 土石流・流木処理計画の策定の基本 • 土石流・流木処理計画は,次式を満足するように策定する. 計画流出量 = 計画流下許容量 計画捕捉量X・計画堆積量Y・計画発生(流出)抑制量Z V-W-(X+Y+Z)=(Vd+Vw)-(Wd+Ww) -{(Xd+Xw)+(Yd+Yw)+(Zd+Zw)}=0 (P.11) d:土砂 w:流木 37 P.23 Step3 土石流・流木対策施設配置計画 【土砂移動 【土石流・流木処 【土石流・流木対策 の区間】 理計画上の機能】 施設の種類】 土石流・流木 対策施設 発生区間, 流下区間 流下区間, 堆積区間 土石流・流木の 土石流・流木 発生抑制 発生抑制工 土石流・ 流木の捕捉 土石流・流木 捕捉工 ・・・・ 土石流・流木対策施設の種類(P.42) 38 P.23 土石流・流木対策施設配置計画 (透過型の場合) • 当該流域においては,流域の特徴を総合的 に判断した結果,計画基準点付近に透過型 砂防えん堤1基を配置することとした. 39 P.23 透過型砂防えん堤の計画で扱う土砂量 旧指針と異なる点 計画堆砂勾配と 現渓床勾配の交点まで 透過型砂防えん堤の計画発生(流 出)抑制量を計上する。 40 P.26 除石を考慮した施設の効果 (透過型・不透過型) • 計画捕捉量 ・・・・除石(流木の除去を含む)により確保しなければならない。 なお、除石の考え方については本指針第4節を参照された い。 ・・・・(P.12) 第4節 除石(流木の除去を含む)計画 ・・・・また、土石流・流木処理計画上、除石(流木の除去を含 む)が必要となる場合は、搬出路を含め、あらかじめ搬出方 法を検討しておくものとする。 (P.54) 41 施設配置図(透過型の場合) P.24 砂防えん堤①(透過型)堤高9.0m (有効高7.0m) 計画捕捉量2,594m3 計画発生(流出)抑制量486m3 (除石計画有) 除石用搬出路計画ルート 0 200m 42 P.26 計画捕捉流木量 X w1 = K w1 × X • ここで、 X :土石流・流木対策施設の計画捕捉量(m3)、 X w1 :本えん堤の計画捕捉流木量(m3)、 K w1 :流木容積率である。 透過型砂防えん堤の場合、既往災害における流木捕捉 の実態から、K w1≦30%が得られている.(P.14) 計画捕捉流木量は、計画捕捉量の最大30% 43 P.26 計画流木発生抑制量 • 計画流木発生抑制量は土石流・流木対策施設により、 「計画規模の土石流」および土砂とともに流出する流木 の減少量である。(P.21) 44 P.26 計画流木発生抑制量 有効高7m 1/4.4 堆砂延長 • {5.0×(3×7.0×4.4)}×5.28/100≒24m3 平均渓床幅 堆砂延長 1m2当たりの材積(m3) 45 P.26 計画捕捉流木量 • 計画捕捉流木量の最大値は,透過型砂防えん堤で計画捕 捉量の30%である.このため,透過型砂防えん堤である砂 防えん堤①の計画流木捕捉量の最大値は,以下の通りとな る. • 砂防えん堤①:2,594×0.30=778.2m3>146m3=170-24 46 P.26 • • • • 土石流・流木捕捉工の効果量 (透過型の場合) ■整備率(計画基準点) 計画流出土砂量 2,910m3 計画流出流木量 170m3 施設効果量 3,080m3 (土砂2,910 m3,流木170 m3) 47 計画施設配置後の土砂収支図 (透過型の場合) P.26 390 0 0 0 270 2,250 0 0 390 2,520 凡 例(単位:m3) 崩壊可能土砂量 計画流出土砂量 施設効果量 移動可能渓床 堆積土砂量 計画捕捉土砂量 + 計画堆積土砂量 計画発生(流出) 抑制土砂量 計画流下許容土砂量 2,910 計画流出土砂量 計画基準点(砂防えん堤①) 2,448 462 0 合流合計 0 48 P.27 計画施設配置後の流木収支図 (透過型の場合) 凡 例(単位:m3) 37 0 0 133 0 0 37 133 計画流出流木量 施設効果量 計画捕捉流木量 + 計画堆積流木量 計画流木発生 抑制量 計画流下許容流木量 170 計画流出流木量 計画基準点(砂防えん堤①) 146 24 0 0 合流合計 49 Step4 P.28 除石(流木の除去を含む)計画 (透過型の場合) ■除石量 当該渓流では,土石流・流木処理計画において必要とする計画 捕捉量(X)を確保するため,除石(流木の除去を含む)計画を 策定する必要がある. 計画発生(流出)抑制量(Z)は除石の対象外 486 除石量=3,080-486=2,594m3 50 P.28 除石(流木の除去を含む)計画 (透過型の場合) • 除石により発生する土砂及び流木の処理 除石により発生する土砂及び流木は,図にルート を示した除石用搬出路を使用してダンプトラックによ り搬出する. • (3)除石の実施時期 除石(流木の除去を含む)には,定期的な点検に基 づいて平常時に流出する土砂及び流木を除去する 「定期的な除石(流木の除去を含む)」と,土石流発 生後等の緊急時に実施する「緊急除石(流木の除 去を含む)」とがあり,各々適切な時期に実施する. 51 P.29 Step3 土石流・流木対策施設配置計画 (不透過型の場合) • 当該流域においては,流域の特徴を総合的 に判断した結果,計画基準点付近に不透過 型砂防えん堤1基を配置することとした. 52 P.29 不透過型砂防えん堤の計画で扱う土砂量 旧指針と異なる点 計画堆砂勾配と 現渓床勾配の交点まで 53 P.32 • 除石を考慮した施設の効果 (不透過型) 計画捕捉量 ・・・・除石(流木の除去を含む)により確保しなければならない。なお、除石 の考え方については本指針第4節を参照されたい。 ・・・・(P.12) • 計画堆積量 ・・・・計画堆積量は、平常時の流水により堆積が進むことがあるため、土 石流・流木処理計画において必要とする容量を除石(流木の除去を含 む)等により確保しなければならない。なお、除石の考え方については本 指針第4節を参照されたい。 ・・・・(P.16) 第4節 除石(流木の除去を含む)計画 ・・・・また、土石流・流木処理計画上、除石(流木の除去を含む)が必要と なる場合は、搬出路を含め、あらかじめ搬出方法を検討しておくものとす る。 (P.54) 54 P.30-31 施設配置図(不透過型の場合) 砂防えん堤①(不透過型)堤高9.0m (有効高7.0m) 計画捕捉量1,175m3 計画堆積量1,419m3 計画発生(流出)抑制量486m3 (除石計画有) 除石用搬出路計画ルート 0 200m 55 P.32ー33 計画捕捉流木量 計画堆積流木量 X w1 = K w1 × X • ここで、 X :土石流・流木対策施設の 計画捕捉量・計画堆積量(m3)、 X w1:本えん堤の計画捕捉流木量・計画堆積流木量(m3)、 K w1:流木容積率である。 透過型砂防えん堤の場合、既往災害における流木捕捉の実 態から、 K w1=2%が得られている.(P.14) 計画捕捉流木量は、計画捕捉量の最大2% 56 P.33 計画流木発生抑制量 • 計画流木発生抑制量は土石流・流木対策施設により、 「計画規模の土石流」および土砂とともに流出する流木 の減少量である。(P.21) 有効高7mで透過型と同じため、 計画流木発生抑制量も透過型と同じ 24m3 57 計画流木発生抑制量 P.33 堆砂延長 有効高7m 1/4.4 • {5.0×(3×7.0×4.4)}×5.28/100≒24m3 平均渓床幅 堆砂延長 1m2当たりの材積(m3) 58 P.32 計画捕捉流木量 • 不透過型砂防えん堤の計画捕捉量に対するは、既往の捕 捉事例に基づいて求めるものとするが、対象渓流において 捕捉事例がない場合は、=2%としてよい。 (P.14) • 砂防えん堤①:1,072×0.02=21m3 59 P.33 計画堆積流木量 • 不透過型砂防えん堤の計画捕捉量に対するは、既往の捕 捉事例に基づいて求めるものとするが、対象渓流において 捕捉事例がない場合は、=2%としてよい。 (P.14) • 砂防えん堤①:1,492×0.02=28m3 60 土石流・流木捕捉工の効果量 (不透過型の場合) P.32 計画捕捉 計画捕捉 計画堆積 計画堆積 計画土石流 計画流木発 計画捕捉量 計画堆積量 計画発生抑制量 現渓床 平均 えん堤高 えん堤 土砂量 流木量 流木量 土砂量 発生抑制量 生抑制量 有効高 堆砂幅 3 3 勾配 (m) X(m Y(m Z(m3) ) ) 3 3 3 3 3 3 (m) (m) (m ) (m ) (m ) (m ) (m ) (m ) 砂防えん堤① 不透過型 1/ 4.4 10.0 9.0 7.0 1,057 21 1,078 1,391 28 1,419 462 24 486 施設名 型式 砂防えん堤① (副えん堤) 合 計 - - - - - - 5.0 - ※ - - - 1,057 97 118 - 1,175 - 1,391 - - 28 1,419 - - 462 - 24 486 ※副えん堤の堤高は、経験式に基づく重複高(重複高=(1/3~1/4)×えん堤高:河川砂防技術基準(案)設計編〔Ⅱ〕p15)の平均値に基礎の根入れ深(2.0m)を加えたものとした。(0.5mラウンド • • • • ■整備率(計画基準点) 計画流出土砂量 2,910m3 計画流出流木量 170m3 施設効果量 3,080m3 (土砂2,910 m3,流木 170 m3) 61 P.32 計画施設配置後の土砂収支図 (不透過型の場合) 390 0 0 0 270 2,250 0 0 390 2,520 凡 例(単位:m3) 崩壊可能土砂量 計画流出土砂量 施設効果量 移動可能渓床 堆積土砂量 計画捕捉土砂量 + 計画堆積土砂量 計画発生(流出) 抑制土砂量 計画流下許容土砂量 2,910 計画流出土砂量 計画基準点(砂防えん堤①) 2,448 462 0 合流合計 0 62 P.33 計画施設配置後の流木収支図 (不透過型の場合) 37 0 0 133 0 0 37 133 凡 例(単位:m3 ) 計画流出流木量 施設効果量 170 計画捕捉流木量 + 計画堆積流木量 計画流木発生 抑制量 計画流下許容流木量 計画基準点(砂防えん堤①) 計画流出流木量 146 24 0 0 合流合計 63 Step4 P.34 除石(流木の除去を含む)計画 (不透過型の場合) ■除石量 当該渓流では,土石流・流木処理計画において必要とする計画 捕捉量(X)、計画堆積量(Y)を確保するため,除石(流木の除 去を含む)計画を策定する必要がある. 計画発生(流出)抑制量(Z)は除石の対象外 486 除石量=3,080-486=2,594m3 64 P.34 除石(流木の除去を含む)計画 (不透過型の場合) • 除石により発生する土砂及び流木の処理 除石により発生する土砂及び流木は,図にルート を示した除石用搬出路を使用してダンプトラックによ り搬出する. • (3)除石の実施時期 除石(流木の除去を含む)には,定期的な点検に基 づいて平常時に流出する土砂及び流木を除去する 「定期的な除石(流木の除去を含む)」と,土石流発 生後等の緊急時に実施する「緊急除石(流木の除 去を含む)」とがあり,各々適切な時期に実施する. 65 土石流・流木対策設計技術指針に基づく設計例 設計例 透過型砂防えん堤 不透過型砂防えん堤 2つのタイプが異なる事例についてご説明します。 66 透過型砂防えん堤 67 土石流・流木対策設計技術指針に基づく 一般的な設計手順 • Step1 水通し断面の設計 • Step2 透過部断面・本体(基礎)・袖の設計 68 P.45 Step1 水通し断面の設計 • 水通し断面の設計に必要となる諸元 ①水通し幅、②水通し高さ 砂防えん堤の袖小口は原則として1:0.5またはこれより緩くする。(P.71) 69 P.45 水通し幅 • 透過型の場合、不透過型とは違って、 「2.7.5土石流の流速と水深の算出方法」を使っ て、Bda(流れの幅)を算出する。 70 P.46-48 Bdaの計算方法 「2.7.5土石流の流速と水深の算出方法」 • Bda=6.5m • Dd=1.11m • U=5.04m3/s 71 透過型砂防えん堤の場合の設計流量 P.38 設計流量 • 設計流量は、水通し断面を設計する際に用いる対 象流量のことで、土石流ピーク流量とする。 (P.75) 72 Step1 水通し断面の設計 P.38 水通しの高さ • 水通し高さの算定に必要となる諸元 ■土石流ピーク流量 ・・・・透過部(スリット部)閉塞後も安全に土石流ピーク流量 を流し得る断面とする。(p.78) 余裕高は考慮しなくても良い。 (p.78) 73 P.41 土石流ピーク流量の算定方法 • 土石流ピーク流量の算出に必要な諸元 ■1波の土石流により流出すると想定される土砂量(Vdqp) ①土石流ピーク流量を求める地点での土砂濃度Cd を用いて、土石流総流量ΣQを算出する ΣQ= C*× Vdqp Cd C*:渓床堆積土砂の容積濃度(0.6程度) ②土石流ピーク流量Qspを以下の式で算出する Qsp=0.01・ΣQ 74 1波の土石流により流出すると想定される土砂量(Vdqp) P.41 土砂量(Vdqp)の算出に必要な諸元 ■想定土石流流出区間 • ・・・・土砂量は、土石流・流木対策施設のない状態を想定し て、渓流長、侵食可能断面積を総合的に判断して最も土砂 量の多くなる「想定土石流流出区間」を設定し、この区間内 における移動可能土砂量と運搬可能土砂量のうち、比較し て小さい方の値とする。 (P.33) 75 P.17 想定土石流流出区間 • 想定土石流流出区間の設定に必要な諸元 • ■ピーク流量を求める地点 • ■渓床勾配10°以上の地点 76 P.17 想定土石流流出区間(縦断的) 「1波の土石流により流出すると想定される土砂量 」を算出 しようとしている地点、または「流下区間の下流端」(渓床 勾配10°地点)となる地点が想定土石流流出区間の下 流端となる。(P33のイメージ図より) 77 P.17 想定土石流流出区間(平面的) • 全支渓から同時に土砂が流出する例は少なく、その ため土石流ピーク流量の最大値は1洪水期間に複 数発生する土石流のうち、最大となる土砂量に対応 したものとなる。(P.32) 既設えん堤が無い状態を想定 78 想定土石流流出区間の候補 P.18 1 2 79 土砂量(Vdqp)の算出 P.17 • この事例では、 ■ピーク流量算出地点:計画基準点 ■計画基準点の渓床勾配:12.8° パターン1の移動可能土砂量:2,520m3 パターン2の移動可能土砂量:740m3 想定土石流流出区間:パターン1 80 事例における土砂量(Vdqp)の算出 P.17 • ・・・・土砂量は、土石流・流木対策施設のない状態を想定し て、渓流長、侵食可能断面積を総合的に判断して最も土砂 量の多くなる「想定土石流流出区間」を設定し、この区間内 における移動可能土砂量と運搬可能土砂量のうち、比較し て小さい方の値とする。 (P.33) 運搬可能土砂量:27,200m3 パターン1の移動可能土砂量:2,520m3 土砂量(Vdqp)=2,520m3 81 P.21 土石流ピーク流量Qsp (1)1波の土石流により流出すると想定される土砂量 (Vdqp) = 2,520m3 (2)土石流ピーク流量を求める地点での土砂濃度Cdを 用いて、土石流総流量ΣQを算出する ΣQ= C*× Vdqp Cd =3,700m3 Cd:計画基準点での土砂濃度(河床勾配2.8°) Cd=0.41≧0.3 C*:渓床堆積土砂の容積濃度:0.6 (3)土石流ピーク流量Qspを以下の式で算出する Qsp=0.01・ΣQ =37m3/s 82 水通し高さ P.41 • ここまでで水通し高さの算定に必要となる土 石流ピーク流量が算定できた。 83 透過型砂防えん堤の場合の設計水深 P.42 設計水深 • 設計水深は、①と②を比較し、大きい値とする。但し、 地形などの理由により水通し断面を確保できないと きは袖部を含めた断面によって対応することができ る。(P.75) ①土石流ピーク流量に対する越流水深の値 ②最大礫径の値:D95 84 Step1 水通し断面の設計 最大礫径D95 最大礫径の値(P.65) • 最大礫径は、砂防えん堤計画地点より上流および 下流各々200m間に存在する200個以上の巨礫 の粒径を測定して作成した頻度分布に基づく累積 値の95%に相当する粒径(D95)とする。測定の対 象となる巨礫は土石流のフロント部が堆積したと思 われる箇所で渓床に固まって堆積している巨礫群と し、砂防えん堤計画地点周辺の礫径分布を代表す るような最大礫径を設定するよう留意する。また、角 張っていたり材質が異なっていたり、明らかに山腹 より転がってきたと思われる巨礫は対象外とする。 85 P.42 • ②土石流ピーク流量に対する越流水深の値 2.7.5(P.35-36)の計算方法 本事例では、現渓床幅程度の値を採用し、6.5mとした。 事例の計算結果 • Z=1.3(m) 86 P.44 水通し高さの算出方法 • 水通し高さを算出するために必要な諸元 土石流の越流水深=1.3m 最大礫径D95=1.0m これらの大きい方を設計水深とする 設計水深=土石流の越流水深 =水通しの高さ=1.3m 87 Step1のまとめ • 水通し断面の設定 水通し幅=Bda=6.5m 想定土石流流出区間 パターン① → 移動可能土砂量・運搬可能土砂量の比較 → 1波の土石流により流出すると想定される土砂量 Vdqp=2,520m3 → 土石流ピーク流量 Qsp=36.9m3/s → 土石流の越流水深 = 1.3m 設計水深 = D95と土石流の越流水深の比較 = 1.3m 水通しの高さ = 1.3m 88 P.45 本事例における水通し断面 7.8m H.W.L 1:0.5 1.3m 1:0.5 6.5m 余裕高は考慮しなくてもよい。 89 P.49 Step2 透過部断面・本体(基礎) ・袖、非越流部の設計 ・透過部断面の設定に必要な諸元 ■土石流水深Dd=1.11m ■最大礫径D95=1.0m 90 P.49 透過部断面 • 透過部断面の設定について 機能 最下段の透過 水平純間隔 鉛直純間隔 部断面高さ 土石流の捕捉 D95×1.0 *1 D95×1.0 *1 土石流の水深 以下 *2 *1 上述の通り、水平純間隔・鉛直純間隔を最大礫径(D95)の 1.5倍まで広げることができる。 *2 上述の通り、最下段透過部断面高さを最大礫径(D95)の 1.5倍まで狭くすることができる。 91 P.49 本事例における透過部断面 透過部断面の幅 (水平純間隔) = <最大礫径1.0m>×1.0 = 1.0m → 1.0m 透過部断面の高さ(垂直純間隔) = <最大礫径1.0m>×1.0 = 1.0m → 1.0m 最下段の透過部断面高さ=<土石流の水深(Dd)(1.11m)以 下程度>=1.11m→1.1m 92 Step2 透過部断面・本体(基礎) ・袖、非越流部の設計 安定計算を実施するために必要な諸元 ■安定条件 ■砂防えん堤の自重および外力(設計外力) ■滑動に対する安全率 ■地盤の許容支持力 93 P.49 安定条件 ・土石流・流木捕捉工の不透過型砂防えん堤は、設計外力に ついて、その安定を保つため次の三つの条件を満たさなけ ればならない。 • 1. 原則として、砂防えん堤の上流端に引張応力が生じない よう、砂防えん堤の自重および外力の合力の作用線が底部 の中央1/3以内に入ること。 • 2. 砂防えん堤底と基礎地盤との間で滑動を起こさないこと。 • 3. 砂防えん堤内に生ずる最大応力が材料の許容応力度を 超えないこと。地盤の受ける最大圧が地盤の許容支持力以 内であること。 94 流域概要と設計諸元 最大礫径 D95=1.0m 渓床堆積物の内部摩擦角 Φ=35° 水の密度 ρ=1,200kg/m3 (H=15m未満) 礫の密度 σ=2,600kg/m3 堆積土砂の容積土砂濃度 C*=0.6 透過型砂防えん堤 • えん堤有効高 H=7.0m • えん堤高 H=9.0m • • • • • 95 P.50 外力の組み合わせ(越流部) 平常時 土石流時 えん堤高 15m未満 ①堆砂圧、 ②土石流流体力、 ③本体自重、 ④土石流の重さ えん堤高 15m以上 堆砂圧、 土石流流体力、 本体自重、 土石流の重さ 洪水時 96 設計外力の作用位置 P.50 ④ ② ③ ① ① ③ 基礎地盤 ①堆砂圧、 ②土石流流体力、 ③本体自重、 ④土石流の重さ 97 滑動を起こさない条件 P.56 滑動に対する安全率Nは、岩盤基礎の場合にはせん 断強度(堤体又は基礎地盤のうち小さいほうのせん 断強度)を考慮しN=4.0とする。砂礫基礎ではせん 断強度を無視し、えん堤高が15m未満の場合を原 則としてN=1.2、えん堤高が15m以上の場合は、 N=1.5とする。(P.61) 98 本事例における滑動の安全率N P.56 • 本事例は、砂礫基礎で、堤高が15m未満のため、 せん断強度を無視し、安全率N=1.2とする。 • ただし、摩擦係数fは基礎地盤:礫層(密なもの)であ るため、f=0.6とする。 99 P.56 地盤の許容支持力 許容支持力qu:600kN/m2 …現場技術者のための砂防・地すべり・がけ崩れ・ 雪崩防止工事ポケットブック 100 P.49-56 安定計算 • 越流部本体の安定計算は、従来と同様です ので、 テキストのP.49-56をご覧下さい。 101 Step2 透過部断面・本体(基礎) ・袖、非越流部の設計 • 袖の設計を行うために、断面形状の考え方が 必要 ■袖の断面形状の考え方 102 P.57-58 袖部の断面形状 • 袖部の断面は次の四つの条件を満たす形状とする。 • ①袖部の上流のり勾配は直とすることを原則とする。 • ②袖部の下流のり勾配は直または、本体の下流のり勾配に 一致させる。 • ③袖部の下流のり勾配を本体の下流のり勾配に一致させた 場合、袖部の天端幅は1.5mを下限とする。 • ④本項で後述する設計外力に対して、袖部と本体の境界面 上におけるせん断摩擦安全率は4以上とする。 (P.70) 103 P.57 袖部の断面形状の検討方法 • 1.袖部と本体の境界面上におけるせん断摩擦安全率が4 未満となる場合、そのせん断摩擦安全率が4以上となるよう に、袖部を上流側に出して袖の天端幅を拡げるか、あるいは、 袖部の上流側に緩衝材等を設置して衝撃力を緩和する。 (P.70) • また、袖部破壊の主因である衝撃力は短期荷重であるため、 袖部と本体の境界面上に生じる引張応力は原則として許容 引張応力以下とする。なお、袖部と本体の境界面上に生じる 引張応力が許容引張応力を上回る場合、その引張応力を鉄 筋あるいは鉄骨で受け持たせるものとし、それらの鉄筋ある いは鉄骨は袖部と本体の境界面をまたぐように配置する。 (P.70) 104 P.57 袖部の断面形状の検討フロー 105 (P.57 -66) 非越流部 (袖部の破壊に対する構造計算) 検討に用いる外力(P.70) • 袖部の自重 • 土石流流体力 • 礫の衝撃力と流木の衝撃力を比較して大きい衝撃力 • 土石流流体力=50.06(kN/m) • 礫衝撃力=337.08(kN/m) (流木の衝撃力=158.56 (kN/m)) 流木のヤング係数、ポアソン比はテキストP.62に記載 106 P.64 袖のせん断摩擦安全率の検討 • 本事例では、非越流部の本体の天端幅を3.0mとし、 袖部の破壊に対する構造計算を実施した。 107 P.65 せん断安全率の検討 • せん断摩擦安全率は4以上 f× V+t c× L 0.7× 110.86+2760× 3.00 = =21.59>4.0 n= 387.14 H f:摩擦係数0.7 V:鉛直力(袖部自重) L:非越流部本体の天端幅3.0m τc:せん断強度2,760kN/m2 108 P.66 袖の補強に関する検討 許容圧縮応力度×1.5 • σmax=183.29kN/m2<6750kN/m2 • σmin=-109.38kN/m2>-337.5kN/m2 許容曲げ引張応力度×1.5 短期荷重なので 109 P.68 非越流部の安定計算 • 本体越流部と同様な安定条件 • 設計外力 平常時 洪水時 ①静水圧、 ②堆砂圧、 ③土石流流体力、 ④本体自重、 ⑤土石流の重さ えん堤高 15m未満 えん堤高 15m以上 土石流時 本体自重、 地震時慣性力、 静水圧、堆砂圧、 土石流流体力、 本体自重、 土石流の重さ、 揚圧力 110 外力の組み合わせ(非越流部) P.74-75 えん堤高15m未満 H=9.00m H’=1.30m 土石流時 最適断面の検討 B=2.61m W4 Pd1 W5 1:n=1:0.30 W 2 F PV1 Dd=1.11m PH2 PeH2 Pev1 PH1 W1 W3 1:m=1:0.30 2.70m 3.00m 2.70m H=9.00m Pe H1 原点 8.40m 111 P.76 112 不透過型砂防えん堤 113 土石流・流木対策設計技術指針に基づく 一般的な設計手順 • Step1 水通し断面の設計 • Step2 本体(基礎)・袖の設計 • Step3 前庭保護工の設計 114 P.90 Step1 水通し断面の設計 • 水通し断面の設計に必要となる諸元 ①水通し幅、②設計流量・水深、③余裕高 • 砂防えん堤の水通し断面は設計水深に余裕高を加えて決 定することを原則とする。なお、水通し幅は現渓床幅程度を 基本とし、3m以上を原則とする。 (p.65) 事例では、 現渓床幅=5.0m 砂防えん堤の袖小口は原則として1:0.5またはこれより緩くする。(P.71) 115 P.80ー81 不透過型砂防えん堤の場合の 設計流量 設計流量 • 砂防えん堤の設計流量は、計画規模の年超過確率の降雨 量と、既往最大の降雨量を比較し大きい方の値から算出さ れる「土砂含有を考慮した流量」(洪水時)と、土石流ピーク 流量(土石流時)とする。(P.64) 土砂の含有を考慮した流量 原則として、「土砂の含有を考慮した流量」は、計画規模の 年超過確率の降雨量と、既往最大の降雨量を比較し大き い方の値を用い、砂防基本計画策定指針(土石流・流木 対策編)2.7.4に示した方法(合理式)に基づき算出した清 水の対象流量の1.5倍とする。 116 Step1 水通し断面の設計 土砂含有を考慮した流量(事例の計算結果) P.80-81 • • 事例の計算結果 原則として、「土砂の含有を考慮した流量」は、計画規模の年超 過確率の降雨量と、既往最大の降雨量を比較し大きい方の値 を用い、砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)2.7.4に 示した方法に基づき算出した清水の対象流量の1.5倍とする。 (P.64) 24時間雨量 計画規模 406.6mm/24h 既往最大 350.0mm/24h • 2.7.4清水の対象流量の算出方法 (P.34) • 清水の対象流量は合理式により算出する。 土砂含有を考慮した流量=清水流量×1.5=6.48(m3/s) 117 P.86 ①土砂含有を考慮した流量に対する越流水深 の値(事例の計算結果) • 事例の計算結果 • m2:袖小口勾配=0.5 • C :流量係数=0.60 とすると Q ≒(0.71Dh+1.77B1)Dh 3/2 • Q :土砂含有を考慮した流量 (6.48m3/s) • B1:5.0m (現渓床幅程度の値を採用し、5.0mとした。 ) Q ≒(0.71Dh+1.77B1)Dh 3/2 Dh=0.8(m) 118 P.82ー85 土石流ピーク流量Qsp (1)1波の土石流により流出すると想定される土砂量(Vdqp) = 2,520m3 (2)土石流ピーク流量を求める地点での土砂濃度Cdを用いて、土 石流総流量ΣQを算出する ΣQ= C*× Vdqp Cd =3,700m3 Cd:計画基準点での土砂濃度(河床勾配12.8°) Cd=0.41≧0.3 C*:渓床堆積土砂の容積濃度:0.6 (3)土石流ピーク流量Qspを以下の式で算出する Qsp=0.01・ΣQ =37m3/s 119 P.87-88 • • ②土石流ピーク流量に対する越流水深の値 2.7.5(P.35-36)の計算方法 水通し幅は現渓床幅程度を基本とし、3m以上を原則とする。(P.65) 本事例では、現渓床幅程度の値を採用し、5.0mとした。 事例の計算結果 • Z=1.5(m) 120 P.89 不透過型砂防えん堤の場合の 設計水深 設計水深 • 設計流量を流しうる水通し部の越流水深を設計水深として定める。 (P.64) • ①土砂含有を考慮した流量に対する越流水深の値 土砂含有を考慮した流量に対する越流水深は、河川砂防技術基準(案) 設計編Ⅱ第3章に示された(3)式により算出する。 (P.64) • ②土石流ピーク流量に対する越流水深は計画堆砂勾配を用いて、砂防 基本計画指針(土石流・流木対策編)2.7.5に示した方法に基づき算出す る。 (P.64-65) • ③最大礫径の値:D95(P. 65) • 設計水深は①から③の値の内、最も大きい値とする。 (P. 64-65) ①土砂含有を考慮した流量に対する越流水深の値 ②土石流ピーク流量に対する越流水深の値 ③最大礫径の値:D95 121 Step1 水通し断面の設計 P.89 不透過型砂防えん堤の場合の 設計水深の算出結果 設計水深 • ①土砂含有を考慮した流量に対する越流水深 Dh=0.8(m) • ②土石流ピーク流量に対する越流水深 z=1.5(m) • ③最大礫径の値:D95(P. 65) D95 =1.0(m) • 設計水深は①から③の値の内、最も大きい値とする。 (P. 64-65) ②土石流ピーク流量に対する越流水深の値 z=1.5(m) 122 Step1 水通し断面の設計 余裕高 P.90 設計流量 (m3/s) 200未満 200~500 500以上 余裕高 (m) 0.6 0.8 1.0 渓床勾配 1/10以上 余裕高/設計水深 1/10~1/30 0.4 1/30~1/50 0.3 1/50~1/70 0.25 0.5 ②土石流ピーク流量に対する越流水深 z=1.5(m) 余裕高=z×0.5=0.75≒0.8 水通しの高さ=1.5+0.8=2.3(m) • 砂防えん堤の水通し断面は設計水深に余裕高を加えて決 定することを原則とする。・・・(P.65) 123 P.90 本事例における水通し断面 7.3m H.W.L 0.8m 1:0.5 1.5m 2.3m 1:0.5 5.0m 124 P.90 地形等の理由により水通し断面を確保できないときの 水通し断面 • 「土石流ピーク流量に対する越流水深」あるいは「最大礫径」 によって水通し断面を決定する場合において、地形等の理 由により水通し断面を確保できないときは袖部を含めた断面 によって対応することができる。但し、この場合、設計水深は 土砂含有を考慮した流量に対する越流水深の値とする。 (P.66) 125 Step2 本体(基礎)・袖の設計 ・本体の設計に必要な諸元 ■天端幅 ■下流のり勾配 ■上流のり勾配 126 P.91 本体の天端幅 砂防えん堤の本体の天端幅は、流出土砂等の 衝撃に耐えるとともに、水通し部では通過砂 礫の磨耗等にも耐えるような幅とする必要が ある。本体材料が無筋コンクリート製の場合 の天端幅は、衝突する最大礫径の2倍を原則 とする。ただし、天端幅は3m以上とし、必要と される天端幅が4mを超える場合には別途緩 衝材や盛土による保護、鉄筋、鉄骨による補 強により対応する。緩衝材の緩衝効果は試験 により確認する。 (P.67) 127 P.91 本事例における天端幅 本事例における、えん堤の天端幅は3.0mとした。 ここで、本体の天端幅は衝突する最大礫径(d95 =1.0m)の2倍の幅も満足できている。 128 P.101ー102 • • • 本体の下流のり勾配 砂防えん堤の下流のり面は、越流土砂による損傷を極力受けないように する。砂防えん堤の越流部における下流のりの勾配は一般に1:0.2とす る。(P.67) なお、粒径が細かく、中小出水においても土砂流出が少なく流域面積の 小さい渓流では、これより緩くすることができる。 下流のり勾配を緩くする場合は、土砂が活発に流送され始める流速U U (m/s)と、えん堤高H(m)より L = H 2 U gH H L で求められる勾配よりも急にする。ただし、1:1.0を上限とする。 土砂が活発に流送され始める流速U(m/s)は設計外力で用いた流速の 50%程度とする。 129 P.101-102 下流のり勾配 設計外力として用いた土石流流速 (5.04m/s) (P.67ー68) U=5.04(m/s)×0.5 =土砂が活発に流送され始める流速 えん堤高=9.0(m) L = H 2 2 U= × 2.52 = 0.38 gH 9.8 × 9.0 下流のり勾配は1:0.38よりも急にする必要がある。 130 流域概要と設計諸元 (不透過型砂防えん堤) 最大礫径 D95=1.0m (調査方法は後述) 渓床堆積物の内部摩擦角 Φ=35° 水の密度 ρ=1,200kg/m3 (H=15m未満) 礫の密度 σ=2,600kg/m3 堆積土砂の容積土砂濃度 C*=0.6 不透過型砂防えん堤 • えん堤有効高 H=7.0m • えん堤高 H=9.0m • • • • • 131 P.92 外力の組み合わせ(越流部) 平常時 えん堤高 15m未満 えん堤高 15m以上 静水圧、堆砂圧、 本体自重、揚圧力、 地震時慣性力、 地震時動水圧 土石流時 洪水時 ①静水圧、 ②堆砂圧、 ③土石流流体力、 ④本体自重、 ⑤土石流の重さ ①静水圧、 静水圧、堆砂圧、 土石流流体力、 本体自重、 土石流の重さ、 静水圧、堆砂圧、 本体自重、揚圧力 ②本体自重 揚圧力 132 P.92 外力の組み合わせ(越流部) えん堤高15m未満 土石流時 洪水時 133 土石流流体力の算定方法 P.100 F = Kn F Kh γd g : : : : γ cd Dd U2 g 土石流流体力 (kN/m) 係数 (1.0) 土石流の単位体積重量 (17.40kN/m3) 重力加速度 (9.8m/s2)m 2.7.5(P.35-36)の計算方法 Dd U : : 土石流の水深 土石流の流速 134 P.97-99 土石流の水深・流速 えん堤地点上流の代表的な断面 135 安定計算結果 P.101-106 下流のり勾配 0.20 0.25 0.30 0.35 0.2 - - - 49.28 0.25 - 47.25 49.28 51.30 47.25 49.28 51.30 53.33 49.28 51.30 53.33 55.35 51.30 53.33 55.35 57.38 上流の 0.30 り勾配 0.35 0.40 着色部の2つの組み合わせで堤体断面積が最小となるのり勾配 ここでは、上流 1:0.25 下流 1:0.25を採用することとした。 136 P.107 非越流部の本体の断面 • 非越流部の本体の断面は、越流部の本体と同一とすること を基本とするが、非越流部の本体の断面を越流部の本体部 の断面と変える場合や基礎地盤の条件が越流部と異なる場 合等は、非越流部について安定計算を行うものとする。 (P.69) ここでは、非越流部の本体の断面は、越流部の本体と同一とする。 137 P.107-108 袖部の断面形状 • 袖部の断面は次の四つの条件を満たす形状とする。 • ①袖部の上流のり勾配は直とすることを原則とする。 • ②袖部の下流のり勾配は直または、本体の下流のり勾配に 一致させる。 • ③袖部の下流のり勾配を本体の下流のり勾配に一致させた 場合、袖部の天端幅は1.5mを下限とする。 • ④本項で後述する設計外力に対して、袖部と本体の境界面 上におけるせん断摩擦安全率は4以上とする。 138 P.109ー116 袖部の断面形状の検討方法 • 1.袖部と本体の境界面上におけるせん断摩擦安全率が4 未満となる場合、そのせん断摩擦安全率が4以上となるよう に、袖部を上流側に出して袖の天端幅を拡げるか、あるいは、 袖部の上流側に緩衝材等を設置して衝撃力を緩和する。 (P.70) • また、袖部破壊の主因である衝撃力は短期荷重であるため、 袖部と本体の境界面上に生じる引張応力は原則として許容 引張応力以下とする。なお、袖部と本体の境界面上に生じる 引張応力が許容引張応力を上回る場合、その引張応力を鉄 筋あるいは鉄骨で受け持たせるものとし、それらの鉄筋ある いは鉄骨は袖部と本体の境界面をまたぐように配置する。 (P.70) 139 P.107 袖部の断面形状の検討フロー 140 (P.107 -116) 非越流部 (袖部の破壊に対する構造計算) 検討に用いる外力(P.106) • 袖部の自重 • 土石流流体力 • 礫の衝撃力と流木の衝撃力を比較して大きい衝撃力 • 土石流流体力=50.06(kN/m) • 礫衝撃力=551.85(kN/m) (流木の衝撃力=263.54 (kN/m)) 141 P. 115 袖のせん断摩擦安全率の検討 142 P.115 せん断安全率の検討 • せん断摩擦安全率は4以上 f× V+t c× L 0.7× 167.40+2760× 3.00 = =13.95>4.0 n= 601.91 H f:摩擦係数0.7 V:鉛直力(袖部自重) L:非越流部本体の天端幅3.0m τc:せん断強度2,760kN/m2 143 袖の補強に関する検討 P.115-116 許容圧縮応力度×1.5 • σmax=280.12kN/m2<6750kN/m2 • σmin=-168.52kN/m2>-337.5kN/m2 許容曲げ引張応力度×1.5 短期荷重なので 144 P.117-118 前庭保護工 副えん堤の位置 (半理論式・経験式 )L=17m 副えん堤天端の高さ (半理論式・経験式 ) H2=3~2.25m • 流木止め上流に必要な湛水池の幅 • • • • • • • 流木止め上流に必要な湛水池の面積は330m2であり、また、主,副えん 堤間の長さLは、17.0mであるため、湛水池の幅は以下の通りとなる。 Bw = Aw/L = 330/17.0 = 19.4m ・・・(95) Bw :流木止めの上流に必要な湛水池の幅(m) Aw :流木止めの上流に必要な湛水池の面積(m2) L :主,副えん堤間の長さ(m) 以上より、湛水池の幅は20.0mとする。 145 P.119 146
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