第5章 除塵について

第5章
除塵について
1. フィルターの必要性
清浄な空気は、人間が健康で快適な生活をする上で欠くことができません。近代産業の発展及び自動車の普及に伴って生じた
大気汚染とともに、気密性の高い室内での空気汚染は、今や人体に悪影響を及ぼすまでに進行し、大きな問題となってきました。
近年、春先によく見られる現象として花粉症があげられますが、換気による花粉の侵入を防止する要求が高まってきたのもその一つです。
塵埃の粒子径とフィルターの適用範囲を表-1に、外気浮遊塵埃濃度、室内発塵量の代表的なデータを表-2に示します。
除塵について
2. 塵埃に関するデータ
第5章
■表-1 エアロゾル粒子径と各種フィルターの適用範囲
エ ア ロ ゾ ル 粒 子 径 (μm)
0.001
0.01
固 体 粒 子
0.1
0.3
1
10
ヒューム
100
ダスト
液 体 粒 子
スプレー
ミスト
エ ア ロ ゾ ル 粒 子
泥
粘土
油煙
砂
フライアッシュ
石炭塵
たばこの煙
セメント
カーボン・ブラック
代表的粒子
1000
ZnOヒューム
花粉
海塩粒子
ウイルス
頭髪
頭髪
バクテリア
大気塵
中高性能フィルター
エアフィルター
微塵・粗塵フィルター
ULPA・HEPAフィルター
■表-2 代表的な塵埃濃度
種 類
外 気
浮遊塵埃濃度
室内発塵量
参考データ
大都市
0.1~0.15mg/m
地方都市
0.1mg/m3以下
工業地区
0.2mg/m3以上
一般事務所
10mg/h・人
店舗(物品販売)
5mg/h・人
喫煙しない用途
5mg/h・人
3
【参考】
1. 外気浮遊塵埃は塵埃の中心径は2.1μmといわれており、フィルターの性能試験粉体
としてJIS Z8901の試験用ダスト11種(平均径2.0μm)が適正とされています。
2. 事務所室内の塵埃は喫煙による影響が大きく、中心径は0.72μm。
フィルター性能試験粉体としてJIS Z8901の試験用ダスト14種(平均径0.8μm)
が適正とされています。
3. 店舗など喫煙しない部屋では塵埃の中心径はほぼ外気と同じと思われます。
4. 一般事務所の喫煙について
喫煙者率 約70%(成人男子)
平均喫煙本数 約1本/人・h(非喫煙者も含む)
たばこ1本の喫煙長 約4cm たばこ1本の発塵量 約10mg/本
3. ロスナイ用各種フィルターの集塵効率一覧表
フィルター種類
適 用 機 種
質量法
試験粉塵
JIS Z 8901
15種ダスト
不織布フィルター
高性能フィルター
SKU-AC・HCタイプ・SCH-ESHタイプ・ESタイプ
SCF-LSタイプ・LGH-N**RSタイプ・RXタイプ・RKSタイプ
LGH-N**RKXタイプ・CSタイプ・CXタイプ・CKSタイプ
LGH-N**RHWタイプ・RHPタイプ・DCタイプ・RDFタイプ
LBシリーズ・LPBシリーズ・LFシリーズ・LPタイプ
82%
LGH-N**RSタイプ・RXタイプ
LGH-N**RKSタイプ・RKXタイプ
LGH-N**RDFタイプ
LGH-N**CSタイプ・CXタイプ
LGH-N**CKSタイプ
LF-Xタイプ・LB-KXタイプ・LPB-KXタイプ
LB-DFタイプ
LP-Xタイプ
99%
PZ-N**RFM形
後取付可能
PZ-N**CFM形
後取付可能
PZ-N**LFM形 後取付可能
PZ-N**LBFM形 標準装備
PZ-N**LPFM形 後取付可能
MEMO
測 定 法
ASHRAE
計数法(DOP法)
比色法
大気塵
-
用 途
JIS 14種
DOP 0.3μm
DOP 0.8μm
-
-
熱交換
エレメントの
保護用
標準装備
65%
60%
25%
空気衛生環境の
確保
建築物衛生法
対応
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〈第5章 除塵について〉
4 . 集塵率測定法の比較
4. 集塵率測定法の比較
集塵率測定法には、質量法、比色法、計数法の3種類があるがそれぞれ特長があるため、用途によって使い分けします。
テスト方法
AIF
(質量法)
・アリゾナ街路じん
・カーボンブラック
・コットンリンター
72%
23%
5%
合
成
適用集塵機の種類
質量比
粘性・衝突捕集式
空気調和用フィルター
汚染度の減少
割合の比較
静電式集塵機繊維フィルター
(空調用)
DOPによって拡散される光
の電気的計数測定
計数比
アブソリュードフィルター
及び同形高性能フィルター
・フィルター通過風量
あらかじめ質量測定された
・あ らかじめ質量測定された
ダストを通す
フィルター上のダスト質量
質量比
プレフィルター
空調用フィルター
(粗塵用)
・フィルター通過風量
あらかじめ質量測定された
・あ らかじめ質量測定された
ダストを通す
フィルター上のダスト質量
大気塵
白紙沪紙の汚染度
DOP
(計数法)
Di-Octyl-Phthalateの煙の粒子
均一:0.3μm
DOPによって拡散される
光の電気的計数測定
白紙沪紙の汚染度
ASHRAE
(質量法)
・アリゾナ街路じん
・カーボンブラック
・コットンリンター
72%
23%
5%
合
成
ASHRAE
(比色法)
・アリゾナ街路じん
・カーボンブラック
・コットンリンター
72%
23%
5%
合
成
白紙沪紙の汚染度
白紙沪紙の汚染度
汚染度の減少
割合の比較
空調用フィルター
(微塵用)
静電式集塵機
JIS
(比色法)
JIS Z 8901による11種ダスト
白紙沪紙の汚染度
白紙沪紙の汚染度
汚染度の減少
割合の比較
空調用フィルター
JIS
(質量法)
JIS Z 8901による15種ダスト
質量比
プレフィルター
日本空気清浄協会
の静電式空気
清浄装置試験
(比色法)
JIS11種ダスト
汚染度の減少
割合の比較
静電式集塵機
・フィルター通過風量
あらかじめ質量測定された
・あ らかじめ質量測定された
ダストを通す
フィルター上のダスト質量
白紙沪紙の汚染度
白紙沪紙の汚染度
1.質量法
2.比色法
粗塵(10μm以上)除去を目的とするエアフィルターな
どの場合に使用します。
測定方法は、流入側と流出側との塵埃量の質量比によっ
て決定します。
流入側と流出側の空気を吸引ポンプでサンプリングして
沪紙を通過させ、両方の沪紙の汚染度が同一になるよう
サンプリング空気を調整して、両方のサンプリング空気
量比によって決定します。
流入側塵埃質量-流出側塵埃質量 ×100(%)
流入側塵埃質量
オリフィス
給塵装置
のぞき窓
ダスト容器
マノメータ
通過粉塵
捕集フィルター
性能試験装置
MEMO
かくはん翼
電動機
流出側サンプリング量-流入側サンプリング量 ×100(%)
流出側サンプリング量
圧損濃度
オリフィス
連結管 測定位置
整流格子
角ダクト
丸ダクト
連結管
送風機
整流格子 ベンチュリー管
粉塵室
バッフルプレート
エアー
連結管
フィルター
7°
以内
D
試験体
集塵率=
550
除塵について
効率表示法
NBS
(比色法)
集塵率=
37
流出粉塵
負荷測定法
200
第5章
流入粉塵
負荷測定法
テストダスト
整流格子
風量調節板
送風機
給塵口
給塵装置例
試験体 1/2
3D 2D 3.5D
絞り装置
2L
1/2
1/2
2L
267R
100R
5. 塵埃濃度の算出方法
〈第5章 除塵について〉
5. 塵埃濃度の算出方法
ロスナイを使用した空調システムを下図に示します。
■塵埃濃度検討図
高性能フィルターηO
室内機
(PAC)
EA
※塵埃濃度を求めるよう簡略化して図示しています。
QO・CO
OA
SA
Qi
ロスナイ本体
Qo: 外気取入量 m3/h
Qi : 室内機風量 m3/h(室内機の総計風量)
ηo: 高性能フィルター除塵効率%(比色法)
ηi: 室内機用フィルター除塵効率%(比色法)
Co: 外気浮遊塵埃濃度 mg/m3
Ci : 室内塵埃濃度 mg/m3
G : 室内発塵量 mg/h
SA
RA
室内機フィルターηi
Ci
このようなシステムで、各機器の性能が決まっていて室
内の塵埃濃度を求める場合と、室内の塵埃濃度を所定の
値にするために室内機のフィルター性能を求める場合が
あり、それは右式のようになります。
除塵について
G
第5章
Ci =
G+CO QO(1-ηO)
Qo+Qi ηi
ηi =
G+CO QO(1-ηO)-Ci QO
×100
Ci Qi
▶計算例
塵埃濃度検討図において、次のような設計条件の場合の室内塵埃濃度を求めます。
■空調の概要
空調面積
在室人員
外気取入量
100m2(事務所)
20名
25m3/h・人×20人=500m3/h
■使用機器
ロスナイ+
高性能フィルター
室内ユニット+
高性能フィルター
機 種
LGH-N50RS+高性能フィルター(PZ-N50RFM)
外気取入量
1台
フィルター除塵効率
500m3/h
65%(比色法)
機 種
風 量
フィルター除塵効率
PLFY-P71LMG1+高性能フィルター(PAC-KH33AF) 2台
15.5m3/min
65%(比色法)
■フィルター粒径別捕集率
99
98
比色法90%
フィルター
97
捕集率
・外気取入量
Qo=500m3/h ・室内機風量 Qi=15.5×2×60=1860m3/h
・高性能フィルター除塵効率
ηo=65%
(ηo´=91% 粒子径2.1μm※)
・室内機用フィルター除塵効率
ηi=65%
(ηi´=57% 粒子径0.72μm※)
・外気浮遊塵埃濃度
Co=0.1mg/m3
・室内発塵量
G=1人当たり発塵量×在室人員
=10mg/h・人×20人=200mg/h
以上より、室内塵埃濃度Ciを求めると、次のようになります。
(%)
200+0.1×500(1-0.65)
Ci=
500+1860×0.65 ≒0.127mg/m3(≒0.131mg/m3※)
比色法65%フィルター
95
93
90
重量法85%フィルター
80
70
50
30
0
重量法82%フィルター
0.3
1
2
3
粒子径(μ)
4
5
となり、建築基準法などで定められている塵埃濃度
0.15mg/m3以下となります。
また逆に、室内塵埃濃度Ci=0.15mg/m3とするための室
内機用フィルターの除塵効率を求めますと、
{
}
200+0.1×500(1-0.65)-0.15×500 ηi=
×100
0.15×1860
≒51%(≒46%※) となり、室内機フィルター防塵効率は最低51%(比色法)が必要であることを示しています。
※( )内数値は、外気浮遊塵埃平均径2.1μm、室内塵埃平均径0.72μmとし、粒径別除塵効率(右上図参照)を利用して計算した値を示します。
MEMO
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