最強の現場を目指し仮説検証重ねる ついに「ID倉庫」の姿が

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最強の現場を目指し仮説検証重ねる
ついに「ID倉庫」の姿が見えてきた
第 回
ベテラン作業員の勘と経験に頼った現場運営からの脱却
を目指し、
「 ID倉庫」をキーワードに新たなオペレーショ
ンの開発を進めてきた。スタッフ全員に「iPad mini」を
配布、データ分析と仮説検証を飽きずに繰り返した。そ
の結果、最高の効率を発揮する現場の姿が見えてきた。
(進行役:本誌編集部)
物流業の景色を変えよう
── 大 塚 倉 庫 は2 0 1 2 年 に社 員 と現 場ス
タッフ全 員に「 i P a d m i n i 」 を配 布
しました。その狙いは?
大 塚 倉 庫 西 牟 田 克 之 役 員 待 遇ロジスティ
クス本 部 長「 あまりにもアナログな物 流 業 界
ばその場で簡 易な見 積もりを提 示することが
しても、 商 品や出 荷の特 性をヒアリングすれ
グデータを活 用することで、 新たな顧 客に対
だけでなく荷主も共有できるようにする。ビッ
ごとの保管状況や出荷作業の進捗をわれわれ
進めていこうという考え方です。 そして商 品
数値化して、検証を繰り返すことで効率化を
出荷に至る各工程を作業単位・作業者単位で
レス化 し、『 見 え る化 』 す る。 入 庫・ 保 管・
した。 I Tツールを導 入して現 場をペーパー
そのキーワードとして『 I D 倉 庫 』 を掲げま
意とするシーオスさんに技術指導とシステム開
それを実 現するために物 流データの活 用を得
の切り口がID倉庫というコンセプトであり、
ンを新 た に開 発 す る必 要 が あ り ま し た。 そ
荷主の共同物流に対応した新しいオペレーショ
5 倍に膨れ上がっ ています。 多アイテム・ 多
増え まし た が、 アイテム数 は そ れ以 上 の2・
に打って出て以 降、 売り上げは約 1・ 6 倍に
処理していました。しかし、当社が拡大戦略
うに、荷主単位で担当者を置いて庫内作業を
内オペレーションは一般的なメーカー物流のよ
大塚倉庫・西牟田「それまでのわれわれの庫
の景 色を変えようというのが出 発 点でした。
できるようになると考えました」
発をお願いしました」
──大塚倉庫の取り組みを松島社長はどうご
たが、さらに現状の倍以上に事業を拡大しな
ました。 まさしくわれわれがやってきたこと
シーオス 松 島 聡 代 表 取 締 役 社 長「『 I D
倉 庫 』 のコンセプトは聞いてすぐにピンと来
覧になったのですか。
ければなりません。 それには経 営の在り方を
でしたから。ただし、『ビッグデータ』という
億 円ペースで伸ばしてきまし
全て見 直す必 要がありました。 現 場 作 業もベ
言 葉にみんなよくだまされてしまうのですが、
年 度 以 降、 年
テランの勘と経 験に頼っ た従 来のやり方では
データは何でもかんでも集めればいいという
は実は何も生まれない。 大 事なのは、 現 場は
いずれ限界が来てしまうことが明らかでした」
り上げは 年度時点で約430億円です。
「 それは売 上 高 1 千 億 円という経 営 目 標を
達 成する上でも必 要なことでした。 当 社の売
大塚倉庫 西牟田克之
ロジスティクス本部長兼
営業本部 国際物流部長
ものではない。 そうしたじゅうたん爆 撃から
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── 従 来のやり方のどこに問 題があったので
しょうか。
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企 画 広 告
されたのは、 トヨタ生 産 方 式の産みの親とし
大塚倉庫・西牟田「最初に松島社長から指示
分析軸は出てこない。そこを指導しました」
れを仮 説に当てていくというやり方でないと
説に必 要な範 囲と粒 度でデータを把 握し、 そ
こうあるべきだという仮 説であって、 その仮
大 塚 倉 庫・ 西 牟 田「 最 初はアイテム別の出 荷
ロセスを繰り返していきます」
して結 果を検 証して設 定を調 整するというプ
を工 程やレイアウトの設 計に落とし込む。 そ
その見 当が付く。 それが仮 説です。 その仮 説
業効率と保管効率が最高になるのか、おおよ
なった。移動の回数が減っているわけですから、
た。 それが今はどこにでも格 納できるように
別の場 所に一 時 置きしておく必 要がありまし
ていたので、そこが空くまで格納できなかった。
なった。 従 来は商 品ごとに保 管 場 所が決まっ
は確 実に速くなりました。 入 荷も格 段に楽に
「
『ID倉庫』も全く同じなんです。勘と経
験を頼りに作業指示を出していた世界を、デー
ンたちは当然ながら当初は強く反発した」
に変えようというのですから、 現 場のベテラ
きたところを、
〝 売れるものだけ作る 〟 よう
〝作れるだけ作る〟という考えでずっとやって
正反対にしようとする試みでした。それまで
は、 言ってみれば、 物の作り方をそれまでと
シーオス・ 松 島「 大 野さんのかんばん方 式と
作を読むことでした」
る。そうしたことがデータから分かってきた」
めに他の三 百 数 十 日の効 率が犠 牲になってい
が明けてからの1 週 間だけなんです。 そのた
し、 実 際にそこまで物 量が増えるのは海の日
乗り切ることを念 頭に現 場を設 計する。 しか
のイメージが頭 か ら離 れ な い の で、 ピークを
量が通 常の5 倍にも膨れあがる。 担 当 者はそ
夏場のピーク時には『ポカリスエット』の出荷
うちに見えてくるものがありました。 例えば、
落ちていませんでした。 しかし、 やっていく
そんなことする必 要があるのか今ひとつふに
に、 その都 度、 問い合わせをする必 要があり
ドライバー不足の有効な対策になるはずです。
で、配送の『誰でもできる化』を実現します。
します。同時にi P-honeを通じてドライ
バー に配 送ルートや納 品 方 法を指 示すること
トの実績値と積載率を分析し、運行を効率化
G P Sと配 車ソフトを連 携させて、 配 送ルー
入れていきます。 いわば『 I D 運 輸 』 です。
ために、ID倉庫の考え方を輸配送にも採り
せるのと並行して、安定的に商品を供給する
大塚倉庫・西牟田「まず今の仕組みを完成さ
──今後の展開は?
効率だけでなく作業品質も向上しています」
傾 向を
タと仮 説 に よ るロジスティクスに変 え る と い
次は『ID運輸』に展開
ましたが、ウェブ上に配送ステータスを公開し、
週 で分 析 し ろ と言 わ れ て も、 何 で
て知られる大野耐一さん(故人)の3冊の著
ギャップを乗り越えようとするときには一 体
──実際に効率は上がっていますか。
問い合わせしなくても納 品 状 況が分かる仕 組
医療材料の納品・管理を担
うロジスティクス企業メディカ
ルストリームとして2000年に創
業、03年シーオスに社名変更。
現在は通販などBtoC分野にも
進 出し、 システム構 築から現
場作業まで幅広い業務を行っ
ている。
大塚製薬をはじめ大塚グルー
プ各社の物流を担う。食品分
野では全国約50カ所にストック
ポイントを設置。そのインフラ
をベースとして、近年はグルー
プ以外の企業との共同物流「共
通プラットフォーム」事業を展
開している。
また、今まで荷主は納品状況を確認するため
何が起きるのか、 改 革にはどのような覚 悟が
大 塚 倉 庫・ 西 牟 田「 ま だ取 り組 み の途 中 で
みへ展開を進めていきます」
シーオス株式会社
うのは劇的な構造変化です。それだけ大きな
要るのか、
大野さんの著作を通じて最初に知っ
すが、新しい仕組みを入れた部分の出荷作業
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ておいてほしかったんです」
シーオス 松島聡 代表取締役社長
──次のステップは?
大塚倉庫株式会社
シーオス・ 松 島「 データの収 集です。 取り扱
いアイテムの重量と寸法、商品の仕様、入り数、
出荷明細、その商品の在庫はどこから補給さ
年分かき集めました。荷姿と入出荷の特
れてくるのかといっ た細かな実 績データを過
去
状のどこに問 題があるのか、 どう変えれば作
性を明らかにするためです。 それを見れば現
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